説明

洗濯機および洗濯機の除菌方法

【課題】洗濯機に収容された除菌対象物に対して、低コストで安全な方法により、除菌・脱臭を行うこと。
【解決手段】洗濯工程とは独立した工程で、オゾン量調整手段5、水噴霧装置6、ラジカル変換手段としての光照射装置7を含んでなる除菌デバイスを備え、除菌対象物15上に存在するオゾン量および水分量を調整して光を照射し、生成したラジカルが酸化分解をすることによって除菌対象物15の除菌および脱臭を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除菌デバイスを備えた洗濯機および洗濯機の除菌方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、生活習慣の多様化に伴い、洗濯機への高い除菌・脱臭機能が求められている。
【0003】
例えば、共働き家庭等、日常的に室内干しを余儀なくされる家庭などにおいて、室内干しを行った洗濯物は、天日干しに比べて洗濯物に細菌やカビが繁殖しやすくなる。特に、梅雨時期のような高湿時等では、この傾向は顕著であり、洗濯物が異臭を放つ場合も多々ある。
【0004】
このように、洗濯物の細菌やカビの繁殖を抑制するために、洗濯機を用いて除菌・抗菌処理を施すことは、衛生上非常に重要といえる。
【0005】
従来の洗濯機は、通常、水と洗剤と洗濯物とを洗濯機の内槽に収容して、内槽とともに内容物を回転運動させる洗い工程と、洗い工程後に排水・給水して、洗濯物に付着した洗剤を汚れとともに取り除くすすぎ工程、給水した洗濯物を内槽の回転により脱水する脱水工程を備えている。また、近年の代表的な洗濯機は、上記工程の最終工程もしくは独立工程として、洗濯物を乾燥する乾燥工程を備えている。上記の工程を組み合わせることにより、洗濯物の汚れや細菌を除去している。
【0006】
しかしながら、従来の洗濯機の洗濯および除菌方法では、洗濯物の細菌を十分に除去できていなかった。
【0007】
この課題に対し、銀イオンをすすぎ水に溶解させ、これにさらに光を照射することで、洗濯物の除菌効果を高める方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
また、放電デバイスからオゾンを発生させ、このオゾンを用いて洗濯物を除菌、脱臭する方法が知られている。この方法は、衣類をオゾンに曝すことによって行われる。しかし、オゾンは水に溶解しにくい性質があるため、衣類が水を多く含んでいると、衣類へのオゾンの溶解量が減少する。このため、脱水、乾燥後等の乾燥した状態でオゾンに曝し、オゾンによる除菌、脱臭を進める方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
このような通常の除菌方法では、洗濯物の除菌、脱臭を実施するためには、水による洗濯を行う必要がある。すわなち、洗濯物を十分に吸水させ、撹拌させる工程を経る。そのため、吸水および撹拌により型崩れ等の問題が生じる帽子や靴、人形等を、乾燥した状態でオゾンに曝して除菌、脱臭を実施する方法も開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−29560号公報
【特許文献2】特開2007−98021号公報
【特許文献3】特開2007−195896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前記従来の構成では、以下のような課題を有していた。
【0012】
まず、銀イオンを用いて除菌・脱臭を用いる方法では、除菌・脱臭の効果は高いものの、洗濯機の使用期間に見合う銀を用いるために、コストが高くなる。
【0013】
オゾンに衣類を曝して除菌を行う方法では、オゾン曝露だけで十分な効果を得るには、オゾンを高濃度にしなければならない。オゾンを高濃度にすると、洗濯機外部にオゾンが漏れた場合に人体に悪影響を及ぼす危険性があり、安全性の確保が困難となる。さらに、高濃度オゾン自身が、洗濯機の樹脂部品の劣化を促進させるという課題があった。
【0014】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、より低コストで安全性の確保しつつ、高い除菌・脱臭性能を有する洗濯機およびその除菌方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記従来の課題を解決するために、本発明の洗濯機の除菌方法は、洗濯工程とは独立した工程で、オゾン量調整手段、水分量調整手段、ラジカル変換手段としての光照射装置を含んでなる除菌デバイスを備え、前記オゾン量調整手段と水分量調整手段とを用いて、除菌対象物上に存在するラジカル原料としてのオゾン量および水分量を調整し、前記除菌対象物上の前記ラジカル原料を前記光照射装置を用いてラジカルに変換する除菌デバイスを用いたものである。
【0016】
この除菌デバイスは、オゾン量調整手段と水分量調整手段とを用いて、ラジカル原料であるオゾンと水分の量を最適に調整し、さらにラジカル変換手段である光照射の作用により、オゾンと水から、オゾンより活性が高く優れた除菌作用のあるヒドロキシラジカル等のラジカルを生成させる。そのラジカルによる高い酸化作用によって菌を分解することが可能となる。よって、オゾンが低濃度であっても、ラジカルによる高い除菌作用が期待できる。また、高価な金属を大量に使用する必要がない。
【発明の効果】
【0017】
本発明の洗濯機の除菌方法は、高価な金属を大量に用いることなく、また低濃度のオゾンを、より活性の高いラジカルに効率よく変換して除菌、脱臭に用いるものである。このため、低コストで安全性が確保しつつ、高い除菌・脱臭効果を発揮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1における洗濯機の断面構成図
【図2】同洗濯機の除菌方法の工程図
【図3】同洗濯機の除菌方法のその他の工程図
【図4】本発明の実施の形態3における洗濯機の断面構成図
【図5】同洗濯機の除菌方法の工程図
【図6】本発明の実施の形態4における洗濯機の除菌方法の工程図
【図7】従来の洗濯機の断面構成図
【発明を実施するための形態】
【0019】
第1の発明は、洗濯工程とは独立した工程で、オゾン量調整手段、水分量調整手段、ラジカル変換手段としての光照射装置を含んでなる除菌デバイスを備え、前記オゾン量調整手段と水分量調整手段とを用いて、除菌対象物上に存在するラジカル原料としてのオゾン量および水分量を調整し、前記除菌対象物上の前記ラジカル原料を前記光照射装置によってラジカルに変換する洗濯機の除菌方法とすることにより、除菌対象物上でヒドロキシラジカルがオゾンと水分と照射光とによって効率的に発生し、高い除菌効果を得ることがで
き、また、除菌デバイスを通常の洗濯工程とは独立した独立除菌工程で稼働させることで、帽子等の吸水や撹拌運動により型崩れしやすく通常の洗濯工程では洗濯できない布製品についても除菌効果が得られる。ここで、一般的に、気相オゾンが光励起により分解して励起酸素原子を生成し、この酸素原子が水分子と結合してヒドロキシラジカルを形成することが知られている。しかしながら、ヒドロキシラジカルの寿命が短いことから、内槽内部の空気中にヒドロキシラジカルが生成しても除菌対象物に到達することは稀であり、生成したヒドロキシラジカルが有効に用いることが出来ない。第1の発明の洗濯機の除菌方法では、除菌対象物上に存在するオゾン量と水分量とを調整し、除菌対象物に対して光照射を行う為、ヒドロキシラジカルが除菌対象物上に効率良く生成し、除菌対象物の除菌が良好に進行する。また、水分量調整手段により、除菌対象物が水分を含んでいるため、励起酸素原子がヒドロキシラジカルを生成しやすくなる。ただし、洗い工程もしくはすすぎ工程時のように除菌対象物の含んでいる水分が多すぎると、オゾンと水との親和性が低いために、除菌対象物へのオゾン含有量が低下し、光照射を行ってもヒドロキシラジカルの生成が抑制される。ここで、洗濯工程とは、通常の洗濯機に備わっている、洗い工程、すすぎ工程、脱水工程、乾燥工程を指す。
【0020】
第2の発明は、特に、第1の発明において、前記光照射装置が青色LEDである除菌デバイスを備えた洗濯機の除菌方法とすることを特徴としている。通常、オゾンから励起酸素原子を得る場合は、波長が紫外領域の高エネルギー光であることが望ましいが、現在市販されている紫外領域光の光源は、高コスト、エネルギー損失が大きい、強度が弱いという欠点が上げられる。この第2の発明のように、光照射装置の光源波長を紫外領域から可視領域とすることで、強度の強い光源が低コストで汎用的に得られることから、コストに対して高いラジカル変換効率を得ることが可能となる。また、光照射手段がLEDであることから、コンパクトとなり、洗濯機内部への設置が容易となる。さらに、青色光は、光単独で菌の成長を抑制する効果を有し、除菌効果を向上させる。
【0021】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明において、前記ラジカル変換手段を用いてラジカル原料をラジカルに変換する際に、昇温を行う除菌デバイスを備えた洗濯機の除菌方法とすることを特徴とする。この第3の発明のように、除菌対象物の昇温により、除菌対象物上に存在する菌の膜構造、酵素活性等に影響を及ぼし、ラジカルによる酸化分解による菌の損傷が促進され、除菌効果が増大する。
【0022】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか1つの発明において、前記水分量調整手段が水噴霧装置を用いている除菌デバイスを備えた洗濯機の除菌方法とすることを特徴としている。この第4の発明のように、水噴霧装置を用いることにより、洗濯機の内槽および内槽に収容された除菌対象物に均一に水を供給することが可能となる。
【0023】
第5の発明は、特に、第1〜4のいずれか1つの発明において、前記除菌対象物の量を、除菌対象物量検出手段により検出し、前記除菌対象物の量に従って、前記除菌対象物の水分量を調整する除菌デバイスを備えた洗濯機の除菌方法とすることを特徴とする。除菌対象物が洗濯機内部に投入された時点において、洗濯槽を回転させ、そのトルクを計測する等の、除菌対象物量検出手段を用いることにより、洗濯機の内槽に投入された除菌対象物の量が検知されるため、水分量調整手段によって、除菌対象物上の水分量をラジカルの高効率生成に適した量に調整することが可能となる。
【0024】
第6の発明は、特に、第1〜5のいずれか1つの発明の除菌方法を備えた洗濯機であり、オゾン量と水分量とを調整し、これに光照射するために、除菌対象物においてヒドロキシルラジカルが効率良く生成する。このため除菌効果を有する洗濯機を提供することができ、家庭での洗濯物除菌を効果的に行うことが可能となる。
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0026】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における洗濯機の断面構成図、図2は同洗濯機の除菌方法の工程図である。
【0027】
図1に示すように洗濯機の本体1は、外槽2と外槽2内に回転自在に設けられた内槽3を内蔵していて、外槽2と内槽3とで洗濯槽4を形成している。外槽2の前面側に設けた開口部2aの端周縁部の近傍には、オゾン量調整手段5と水噴霧装置(水分量調整手段)6と光照射装置7とを配置している。外槽2の下部には、排水路8の一端を接続し、排水路8には排水弁9を接続して洗濯槽4内の洗濯水を排水するようにしている。洗濯槽4への給水は給水路11の給水弁10を開き、洗濯槽4内に水を給水する。
【0028】
内槽3は、有底円筒形に形成され、その周面に外槽2内に通じる多数の通水孔3aが形成され、内周面の複数の位置には内方へ突出するバッフル12を設けている。内槽3の回転中心には、略傾斜方向に回転軸3bを設け、内槽3の軸心方向を背面側から正面側に向けて上向きに傾斜させて配設している。この回転軸3bに外槽2の背面側に取り付けたモータ13を連結し、内槽3を正転および逆転方向に回転駆動するようにしている。
また蓋14は、外槽2の正面側の上向き傾斜面に設けた開口部2aを開閉自在に覆っている。そしてこの蓋14を開くことにより、内槽3内に除菌対象物15を出し入れすることができる。蓋14は、上向き傾斜面に設けられているため、除菌対象物15の出し入れは腰を屈めることなく行うことができる。よって、このような構成の洗濯機は、横向きまたは上向きにある開口部から除菌対象物を出し入れする洗濯機の作業性の悪さを改善している。
【0029】
さらに制御装置16は、オゾン量調整手段5、水噴霧装置6、光照射装置7、排水弁9、給水弁10、モータ13の動作制御を行っている。
【0030】
次に、本発明の実施の形態1における洗濯機が行う除菌方法の動作について説明する。蓋14を開いて内槽3内に除菌対象物15および洗剤を投入して蓋14を閉め、洗濯機の運転を開始させると、開口部2aの端周縁部の近傍に位置する水噴霧装置6から、除菌対象物15が収容された内槽3内に水分が均等に行き渡るように所定時間噴霧される。
【0031】
次に、オゾン量調整手段5が、洗濯槽4の内部にオゾンを一定時間発生させ、同時に光照射装置7から除菌対象物15に光が照射され、除菌対象物15上の細菌が除かれる。
【0032】
上記の独立除菌工程が所定時間行われると、オゾン量調整手段5および光照射装置7が停止され、外槽2内に給水路11から所定量の注水がなされ、モータ13により内槽3が回転駆動されて洗い工程が開始される。内槽3の回転により、内槽3内に収容された除菌対象物15は、内槽3の内周面に設けられたバッフル12によって回転方向に持ち上げられ、持ち上げられた適当な高さから落下する撹拌動作が繰り返され、叩き洗いの作用により洗濯がなされる。
【0033】
所定時間の洗いが行われると、汚れた洗浄水は排水路8から排出される。そして内槽3を高速回転させる脱水動作により除菌対象物15に含まれた水分を大部分取り除き、その後、再び給水路11から注水してすすぎ工程が実施される。このすすぎ工程においても内槽3内に収容された除菌対象物15は、内槽3の回転によりバッフル12に持ち上げられ、落下する撹拌動作が繰り返される。
【0034】
所定時間のすすぎ工程が行われると、すすぎ水が排水路8から排出される。そして内槽3を高速回転させる脱水動作により除菌対象物15に含まれたすすぎ水を脱水し、脱水工程が終了する。
【0035】
脱水工程が終了した後の乾燥工程において、内槽3を高速回転させることにより内槽3内で除菌対象物15への送風と除菌対象物15自体の撹拌運動が行われる。また、洗濯槽4内の温度が上昇することにより、除菌対象物15が乾燥される。
【0036】
蓋14を光透過性材料により形成すると、光照射装置7の光に加えて室内照明の光を内槽3内に取り入れて、光による除菌効果を高めることができる。
【0037】
また、洗濯槽4を前上がりの傾斜角を有する構成とすること、さらに蓋14を光透過性材料により形成すると、光照射装置7の光に加えて室内照明の光を取り入れやすくすることができ、光による除菌効果を高めることができる。これは従来の水平方向に設けた蓋より、洗濯槽4を前上がりの傾斜角として傾斜させた蓋14の方が、同一面積であっても、より多くの拡散光を取り入れられるからである。
【0038】
なお、本発明の実施の形態1では、内槽3の回転中心を略傾斜方向の回転軸3bとし、内槽3の軸心方向を背面側から正面側に向けて上向きに傾斜させて配置している。しかし、内槽3の回転中心を略水平方向の回転軸とし、内槽3の軸心方向を略水平方向に配置してもよい。また、内槽3の回転中心を略垂直方向の回転軸とし、内槽3の軸心方向を略垂直方向に配置してもよい。
【0039】
また、本発明の実施の形態1では、外槽2の開口部2aの端周縁部の近傍にオゾン量調整手段5と水噴霧装置6と光照射装置7とを配置しているが、内槽3の回転中心の略延長上の内槽3もしくは蓋14に配置してもよい。
【0040】
また、除菌対象物の水分量を調整する水分量調整手段としては、水分を供給するものとしての水噴霧装置6のほか、水を除去するものとして、内槽の高速回転による脱水といった手段を用いる。
【0041】
さらに、制御装置16では独立除菌工程、洗い工程、すすぎ工程、脱水工程および乾燥工程の制御を行っている。
【0042】
図2に示すように、本発明の実施の形態1では、独立除菌工程、洗い工程、すすぎ工程、脱水工程、乾燥工程の順に行うことにより、除菌工程を構成していており、独立除菌工程においてのみ、オゾン調整手段5と水噴霧装置6と光照射装置7を使用しているが、光は単独でも除菌対象物15への細菌抑制効果があるため、独立除菌工程以外の、洗い工程、すすぎ工程、脱水工程、乾燥工程においても、光照射装置を動作させ、除菌対象物15に光照射しても、除菌効果を発揮することが可能となる。
【0043】
なお、本発明の実施の形態1では、洗い工程、すすぎ工程、脱水工程を各々1回ずつ行ったが、複数回実施してもよい。
【0044】
また、最後の乾燥工程については、実施しても実施しなくてもよい。
【0045】
また、独立除菌工程においては、本発明の実施の形態1では、洗濯槽4の回転運動は伴わないが、洗濯槽4の回転運動による除菌対象物15の撹拌を行うと、より除菌対象物15上に、オゾン、水分および光が均等に存在することとになり、より除菌効果が向上する。
【0046】
図3は、本発明の実施の形態1の洗濯機の他の例の工程図を示したもので、独立除菌工程のみを行うようにしたものである。
【0047】
前述の通り、帽子や人形、靴等の布製品は、上記の洗い工程、すすぎ工程、脱水工程を経ると型崩れを起こし易くなるため、通常の洗濯工程で洗濯することが困難となる。
【0048】
本発明の独立除菌工程を行うと、洗濯機の本体1内に投入した除菌対象物15は、型崩れを起こすことなく除菌されることが可能となる。
【0049】
ただし、独立除菌工程において、水噴霧装置により、若干量の水分を含むことになるため、独立除菌工程後に乾燥工程を実施してもよい。
【0050】
また、この独立除菌工程後の乾燥工程において、オゾン量調整手段5および光照射装置7を動作させてもよい。これにより、除菌対象物15上にオゾンを存在させ、光を照射させることによって、除菌対象物15への除菌効果をさらに促進させることが可能となる。
【0051】
オゾン量調整手段5について説明する。
【0052】
オゾン量調整手段5の構成は特に限定するものではないが、オゾン発生デバイスを有しており、制御装置16とリード線で接続されている。オゾン発生量は、電流もしくは通電時間を制御装置16にて制御することにより調整を行う。
【0053】
オゾン量調整手段5は外槽2の開口部2aの端周縁部近傍に設置され、内槽3の内側へのオゾン生成を行う。
【0054】
オゾンは、酸素等の通常大気中に含まれる成分よりも重い気体であるため、オゾン量調整手段5を開口部2aの端周縁部近傍の上部に設けると、上部から下部へオゾンが降下しながら移動するため、開口部2aの端周縁部近傍の下部、あるいは内槽3の回転中心の略延長上の蓋14に設けた場合に比べ、洗濯槽4内部にオゾンが隅々まで拡散しやすくなり、内槽3に収容された除菌対象物15の量に関わらず、除菌対象物15上にオゾンが存在することが可能となる。
【0055】
洗濯槽4の内部では、内槽3の回転によって除菌対象物15が回動するために水も飛散する。オゾン量調整手段5を開口部2aの端周縁部近傍の上部に設けると、水の飛散の影響を受けにくく、オゾン発生デバイスへの水による影響を防ぐことが可能となる。
【0056】
オゾン発生デバイスは、その発生方式を特に限定するものではなく、コロナ放電方式、無声放電方式等の種々の発生方法が採用可能である。
【0057】
次に、水分量調整手段としての水噴霧装置6について説明する。
【0058】
水噴霧装置6の構成は特に限定するものではないが、通常、給水路11から水を得る給水手段と、水を内槽3内へ噴霧する噴霧口を有しており、制御装置16とリード線で接続されている。噴霧される水分量は、電流量もしくは通電時間、給水弁の開閉時間、給水弁から水噴霧装置への流水量のいずれかを制御装置16にて制御することにより調整を行う。
【0059】
水噴霧装置6は、開口部2aの端周縁部近傍に設置され、内槽3の内側への水分噴霧を行う。
【0060】
ただし、水噴霧装置6を開口部2aの端周縁部近傍の上部に設置することにより、開口部2aの端周縁部近傍の下部、あるいは内槽3の回転中心の略延長上の蓋14に設けた場合に比べ、内槽3内部に噴霧水が隅々まで拡散しやすくなり、内槽3に収容された除菌対象物15の量に関わらず、除菌対象物15上に水分が行き渡り易くなる。
【0061】
また、水噴霧装置6を開口部2aの端周縁部近傍の上部に設置することにより、洗濯の各工程で飛散する水もしくは汚水の飛散を避けることが出来、水の噴霧口への影響を防ぐことが出来る。
【0062】
水噴霧口の構造および水噴霧装置6から噴霧される霧状水の粒径は、特に指定されるものではなく、水噴霧装置6から発生した水分が内槽3内部に拡散移動する状態であればよい。
【0063】
除菌対象物15の除菌・脱臭を行う場合、除菌対象物15上のオゾン濃度および水分量が重要な要因となる。
【0064】
除菌対象物15が付着している水分量は、除菌対象物15の量に対して30%以下が望ましい。それ以上の水分を含んでいる場合は、オゾンが水の存在により消滅してしまい、含有水分量の増加に伴い、オゾンおよびそれから生成されるラジカルによる除菌効果が軽減される。
【0065】
次に、光照射装置7について説明する。
【0066】
光照射装置7の構成は特に限定するものではないが、制御装置16とリード線で接続されており、光源を有している。
【0067】
光照射装置7は外槽2の開口部2aの端周縁部近傍に設置され、内槽3の内側に光を照射する。しかし、光照射装置7を洗濯槽4の開口部2aの端周縁部近傍の上部に設けると、光照射装置7を例えば外槽2の開口部2aの端周縁部近傍の下部、あるいは内槽3の回転中心の略延長上の蓋14に設けた場合に比べ、水の飛散の影響を受けにくく、効率よく内槽3内に光を照射することができる。
【0068】
また、光照射装置7を外槽2の開口部2aの端周縁部近傍の上部に設けると、洗濯時に生成する汚水が付着して汚れるのを防止できる。さらに、内槽3内の除菌対象物15から離れた位置において光を照射することができるので、光照射装置7の近くにおいて光が除菌対象物15によって遮られることを防止することができる。
【0069】
また光源としては、例えば紫外線光源の場合、ブラックライトや一般に用いられている殺菌灯などでもよいが、光照射装置7を洗濯機の本体1の内部に設置することから、光源を非常に小さくできるLEDが好適である。また、LEDは指向角(光の放射の角度:通常光軸上の光度1に対し光度が0.5になる角度)を約10°〜140°と目的に応じて選定可能である。さらにLEDは、350nm〜660nmの波長の発光が可能であり、紫外光、紫、青、緑、黄、赤、などの単色光や白色など、使用目的に応じた選択が可能である。
【0070】
光源をLEDとすることにより、光源を小さくすることができ、小さなスペースにコンパクトに配置することができる。また、LEDの構成によって照射する角度(指向角)を変えることができるので、内槽3内の照射範囲を任意に設定することができる。
【0071】
LEDは、大出力のものを1個使用してもよいが、大出力にすると温度上昇のために放熱構成が必要になる。また、寿命の点からも複数個に分散するほうが有利である。
【0072】
また、光照射装置7は、ガラス、メタクリル樹脂、PFA樹脂のいずれかからなる防水カバーを有していることが望ましい。
【0073】
一般に透明樹脂として用いられるPET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PC(ポリカーボネート)などは可視光の透過には優れているが、紫外光はほとんど透過しないのでLEDに紫外光を用いる場合は、防水カバーとしては適切ではない。光照射装置7紫外光を用いる場合は、上記メタクリル樹脂以外ではPFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体)、石英ガラス、硼珪酸ガラス、ソーダガラスなどのガラスが使用できる。
【0074】
以上のように、本実施の形態においては、オゾン量調整手段5と水噴霧装置6と光照射装置7とを動作させて、オゾンを光分解して生成した酸素原子を水と結合させて生じるホドロキシラジカルを除菌対象物15上に生成することにより、オゾンと光単体およびラジカルによる除菌作用が除菌対象物に起こり、低コストで安全性の高い、優れた除菌方法を有する洗濯機を提供可能となる。
【0075】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2における洗濯機は、本発明の実施の形態1において、光照射装置7として青色LEDを使用した構成をしている。
【0076】
以下、本発明の実施の形態2における洗濯機について、その動作、作用を説明するが、実施の形態1と同一構成については同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0077】
光照射装置7は、単数もしくは複数個の青色LEDを有する構成である。
【0078】
オゾンの光分解によるラジカルの原料となる酸素原子の収率を高めるには、光の波長は短く、光強度は強い程好ましい。
【0079】
市販されているLEDのうち、青色波長のものは、比較的安価で、強度の高い光を得ることが出来る。
【0080】
故に、除菌対象物15上にオゾンおよび水分が存在している状態で、青色可視光を照射することにより、高い除菌効果が期待できる。
【0081】
また、短波長で強度の高い光である青色光を除菌対象物15に照射すると、光照射のみで除菌や細菌繁殖を抑制する効果が得られる。
【0082】
なお、青色LEDの波長および領域幅は特に指定するものではないが、通常450nmまでの可視光LEDを指す。
【0083】
(実施の形態3)
図4は本発明の実施の形態3における洗濯機の断面構成図、図5は同洗濯機の除菌方法の工程図の一例である。
【0084】
以下、本発明の実施の形態3における洗濯機について、その動作、作用を説明するが、実施の形態1または2と同一構成については同一の符号を付してその詳細な説明は省略す
る。
【0085】
ヒートポンプユニット17は、ユニット内に圧縮機、吸熱器、放熱器を収容し、ユニットに設けられた吸熱器に吸熱器風路18を連結し、放熱器に放熱器風路19を連結して構成されており、吸熱器風路18と放熱器風路19とは空気風路としての空間を有しており、壁面との間に配置され、ヒートポンプユニット17と洗濯槽4とを接続している。
【0086】
ヒートポンプユニット17は、圧縮機の作動により冷媒が圧縮され、この圧力により冷媒は圧縮機から放熱器、吸熱器、圧縮機を循環する。圧縮された冷媒の熱は放熱器に流入することにより生成された加熱空気が放熱器風路19を通って、洗濯槽4内に送給される。
【0087】
除菌対象物の水分量を調整する水分量調整手段としては、水分を供給するものとしての水噴霧装置のほか、水を除去するものとしては、内槽の高速回転による脱水機に加え、ヒートポンプ等を用いた加熱乾燥を用いる。尚、本実施の形態3では、水分量調整手段の一つとしてヒートポンプを用いたが、通常のヒータを用いた乾燥ユニットももちろん用いることができる。
【0088】
この加熱空気は撹拌される除菌対象物15から水分を奪った吸湿空気となって吸熱器風路19を通過して、ヒートポンプユニット17へ送給される。吸熱器において、冷媒が減圧されて低圧となるため、顕熱と潜熱とが奪われて除湿され、除湿されて乾いた空気は放熱器に入って再び加熱される空気循環が形成される。
【0089】
独立除菌工程において、オゾン発生および光照射と同じときに、ヒートポンプユニット17を用いて、内槽3内の空気および除菌対象物15を昇温することにより、除菌対象物15上に存在する菌の膜構造、酸素活性等に影響を及ぼし、オゾンやラジカルによる酸化分解による菌の損傷が促進され、除菌効果が増大する。
【0090】
なお、本発明の実施の形態において、昇温手段としてヒートポンプユニット17を用いたが、特に限定するものではなく、通常のヒータを用いてもよい。ただし、昇温手段として、洗濯機に搭載されている既存の乾燥手段を用いることで、デバイスを追加搭載する必要がなく、コストの上昇が抑制される。
【0091】
独立除菌工程における昇温手段として用いたヒートポンプユニット17は、加熱、除湿するヒートポンプ方式の乾燥機能の構成は、ヒートポンプユニット17に収容された吸熱器で吸熱した熱を冷媒で回収して再び放熱器から放熱するので、圧縮機に入力したエネルギー以上の熱量を除菌対象物15に与えることができ、昇温の短縮と省エネルギーとを実現することが可能となる。
【0092】
(実施の形態4)
図4は、本発明の実施の形態4における洗濯機の断面構成図である。図6は同洗濯機の除菌方法の工程図の一例である。
【0093】
以下、本発明の実施の形態4における洗濯機について、その動作、作用を説明するが、実施の形態1から3のいずれかと同一構成については同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0094】
内槽3に収容された除菌対象物15の量は、洗濯槽4の正逆回転運動のトルクを電流値により検出することによって概算される。
【0095】
実施の形態4における洗濯機は、独立除菌工程の前段階で洗濯槽4の正逆回転運動を行い、その運動のトルクを検出することにより、独立除菌工程において必要なオゾン量および水分量を調整するものであり、これにより、過剰なオゾン発生や水噴霧を避け、ラジカル生成に適した条件を作成することが可能となる上、不要なエネルギー消費が抑制される。
【0096】
また、洗濯槽からオゾンが漏洩した場合においても、人体への安全性を確保することが可能となる。オゾンが必要以上に発生しないため、洗濯機に用いられる樹脂部品の劣化促進を抑制することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
以上のように、本発明にかかる洗濯機および洗濯機の除菌方法は、低濃度オゾンと市販の光源および水噴霧装置を用いて、除菌対象物の除菌および脱臭を行うことが可能となり、低コストと安全性を確保しつつ、高い除菌効果を得ることが可能となり、洗濯機以外の家庭用電気製品等の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0098】
5 オゾン量調整手段
6 水噴霧装置
7 光照射装置
15 除菌対象物
17 ヒートポンプユニット
18 吸熱器風路
19 放熱器風路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯工程とは独立した工程で、オゾン量調整手段、水分量調整手段、ラジカル変換手段としての光照射装置を含んでなる除菌デバイスを備え、前記オゾン量調整手段と水分量調整手段とを用いて、除菌対象物上に存在するラジカル原料としてのオゾン量および水分量を調整し、前記除菌対象物上の前記ラジカル原料を前記光照射装置によってラジカルに変換する除菌デバイスを備えた洗濯機の除菌方法。
【請求項2】
前記光照射装置が、青色LEDである請求項1記載の除菌デバイスを備えた洗濯機の除菌方法。
【請求項3】
前記ラジカル変換手段を用いてラジカル原料をラジカルに変換する際に、昇温を行う請求項1または2に記載の除菌デバイスを備えた洗濯機の除菌方法。
【請求項4】
前記水分量調整手段が、水噴霧装置を用いている請求項1〜3のいずれか1項に記載の除菌デバイスを備えた洗濯機の除菌方法。
【請求項5】
前記除菌対象物の量を、除菌対象物量検出手段により検出し、前記除菌対象物の量に従って、前記除菌対象物の水分量を調整する請求項1〜4のいずれか1項に記載の除菌デバイスを備えた洗濯機の除菌方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の除菌方法を備えた洗濯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−78658(P2011−78658A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234785(P2009−234785)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】