説明

洗濯機

【課題】洗濯物の噛み込みや挟み込みを防止し、また、パルセータを駆動するモータに加わる負荷トルクを低減することが可能な洗濯機を得る。
【解決手段】洗濯兼脱水槽の底部22の中央部分に、洗濯物を攪拌させる回転体であるパルセータ100を配した洗濯機であって、パルセータ100は、一端側を低くし、それに対向する他端側を高くしたことによる傾斜面110aが上面に形成されたベース部110と、ベース部110の上面の一端側から他端側に延びて立設された羽根120とを備え、洗濯兼脱水槽21においてパルセータ100の外側に位置する底壁22aの上面と、パルセータ100のベース部110の外周部分の上面とが面一となるように形成されているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯機に関し、さらに詳しくはパルセータ方式の洗濯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の洗濯機では、洗濯槽(又は洗濯兼脱水槽)の底部に回転自在に配置したパルセータと洗濯槽の周壁面との間の隙間に、例えば薄い靴下などの洗濯物が噛み込み、パルセータの回転負荷トルクが増大するという問題があった。そこで、これを解決するための技術が各種提案されており、例えば、パルセータの上面の形状を、周方向になだらかに隆起した複数の隆起部を有する構成として、パルセータ上に乗っている洗濯物に上向きの分力を繰り返し作用させる押し洗い力を発生させるとともに、洗濯槽の周壁面に、パルセータの隆起部の隆起形状に対応した突条片を立設することで、挟み込みを防止するようにした技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−304661号公報(図2、図8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、洗濯槽(又は洗濯兼脱水槽)とパルセータとは常に一体的に回転するのではなく、パルセータが洗濯槽に対して相対的に回転する場合もあり、この場合、洗濯槽の周壁面とパルセータの外周面との隙間の高さは、パルセータの回転によって変化することになり、この高さの変化が起因して、衣類の噛み込みなどの問題点を充分解決できていなかった。すなわち、例えばパルセータの隆起部の高さが低い部分と洗濯槽との間に形成された隙間に洗濯物が入り込んだ場合を考えると、パルセータの回転によって隆起部の位置が移動し、洗濯物が入り込んだ隙間部分の高さが徐々に高くなることにより、洗濯物が入り込んだまま抜け出せず、噛み込みが発生すると思われる。
【0005】
本発明はこのような点に鑑みなされたもので、洗濯物の噛み込みや挟み込みを防止し、また、パルセータを駆動するモータに加わる負荷トルクを低減することが可能な洗濯機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る洗濯機は、洗濯兼脱水槽の底部の中央部分に、洗濯物を攪拌させる回転体であるパルセータを配した洗濯機であって、パルセータは、一端側を低くし、それに対向する他端側を高くしたことによる傾斜面が上面に形成されたベース部と、該ベース部の上面の一端側から他端側に延びて立設された羽根とを備え、洗濯兼脱水槽においてパルセータの外側に位置する底壁の上面と、パルセータのベース部の外周部分の上面とが面一となるように形成されているものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、洗濯兼脱水槽においてパルセータの外側に位置する底壁の上面と、パルセータのベース部の外周部分の上面とが面一となるように形成し、パルセータの回転中、洗濯兼脱水槽とパルセータとの境界部分のそれぞれの高さ位置が相対的に変化しないようにしたため、隙間への洗濯物の噛み込みや挟み込みを防止でき、引いてはパルセータを駆動するモータに加わる負荷トルクを低減することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面について本発明の一実施の形態に係る洗濯機を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る洗濯機を説明する側面視の側面図である。
(洗濯機1)
図1において、洗濯機1は、一連の洗い行程とすすぎ行程と脱水行程と乾燥行程とを実行するものであって、洗濯兼脱水槽21を傾斜させた状態(回転軸を鉛直方向に対して傾けた状態)で洗い行程と乾燥行程とを実行し、洗濯槽を直立させた状態(回転軸を鉛直方向にした状態)で脱水行程(すすぎ行程を含む場合がある)とを実行するものである。したがって、図1に示す姿勢は、洗濯行程に対応している。
【0009】
(筐体2)
筐体2は断面矩形の筒状(略直方体に同じ)であって、天面には天面開口部3が形成され、天面開口部3には扉4が開閉自在に設置されている。また、天面開口部3の後方(図中、右側)には洗剤ケース60が設置されている。
また、筐体2に連なって底枠6が接続され、底枠6の底板には、遮音板7とゴム足8とが設置されている。
さらに、筐体2は四隅の上端部近くには吊り板9が設置され、吊り板9には吊り座10が設けられている。
【0010】
(水槽)
筐体2内に水槽11が収納されている。水槽11は天面が開放され、水槽底12が閉塞されたコップ状であって、水槽底12の近くで筐体2の四隅と同一位相に、バネ受け13が設置されている。
そして、水槽11は吊り棒14によって吊り下げられている。すなわち、吊り棒14の上端は吊り座10に係止し、下端はバネ15を介してバネ受け13によって支持されている。なお、後方の吊り棒14には吊り棒可動部16が設けられているから、吊り棒14可動部442が後方の吊り棒14を引き上げると、水槽11は前方に向かって傾動する。
【0011】
(脱水槽)
脱水槽(洗濯槽に同じ)21は、投入された洗濯物の洗いとすすぎと脱水と乾燥とに供するものであるから、洗濯兼脱水槽21あるいは洗濯兼脱水兼乾燥槽とも称呼されるものであり、以下では洗濯兼脱水槽21という。洗濯兼脱水槽21は水槽11に回転自在に配置されている。そして、水槽11が傾動するから、洗濯兼脱水槽21は水槽11と共に傾動するものである。したがって、洗濯行程における洗濯水の撹拌が促進され、洗浄効果が向上すると共に、乾燥行程においても洗濯物の撹拌が促進されるから、乾燥効率が向上する。
洗濯兼脱水槽21は、天面が開放され、洗濯兼脱水槽底部22が閉塞されたコップ状で、周壁23には脱水のための複数の通水孔24が形成され、天面の周囲にはバランサー25が設置されている。
【0012】
(パルセータ)
また、洗濯兼脱水槽21の底部22の中央部分には、投入された洗濯物および注水された水(以下「洗濯水」と称す)を攪拌する後述のパルセータ100を収容する収容部26が形成されており、収容部26に、パルセータ100が回転自在に配置されている。パルセータ100は、ベース部110と羽根120とから構成されたもので、その構造の詳細については後述する。
【0013】
パルセータ100のベース部110の下面には略半径方向に向かって複数の裏羽根31が設置され、複数の裏羽根31の下端部には、これらを連結する円環状板(以下「裏蓋32」と称す)32が設置されている。したがって、ベース部110の下面と裏蓋32の上面との間には、一対の裏羽根31に仕切られた複数の略角錐台状の空間(以下「加速流路」と称す)33が形成されている。
【0014】
また、裏蓋32の内周縁とパルセータ100の駆動軸34との間には円環状の隙間(以下「吸引口」と称す)35が形成され、水槽11の水槽底12には吸引口35に対峙する開口部(以下「循環口」と称す)36が形成されている。
よって、水中に没した状態で、パルセータ100を回転すると、加速流路33内の水は遠心力によって半径方向の外側に飛ばされるから、水槽底12と洗濯兼脱水槽底部22との間に貯まった洗濯水は、循環口36および吸引口35を通過して、加速流路33に吸い込まれることになる。このとき、加速流路33は回転する部材のみ(いわゆるロータ)によって形成されるから、回転する部材と回転しない部材と(いわゆるロータとステータと)から形成されるものよりも、ポンプ性能(吸引/吐出性能に同じ)が優れている。なお、パルセータ100は水槽11の水槽底12に軸受ベース・ステータを介して設置されたモータ37によって回転駆動されるものである。
【0015】
(循環水路41)
洗濯兼脱水槽21の周壁23の内側には、周方向に間隔を空けて3箇所に、鉛直方向(図中、上下方向)に延びる水路形成部材41aが装着されている。水路形成部材41aは、後述の図4に示すように、上下方向に延びる短冊状の板材を幅方向に折り曲げて形成されたもので、水路形成部材41aと周壁23との間の空間で循環水路41が形成されている。そして、循環水路41の上端には散水孔42が設けられている。
したがって、洗濯行程において、パルセータ100の回転によって吐出された洗濯水は、循環水路41を経由して散水孔42から洗濯兼脱水槽21内に噴射されることになる。したがって、水面の泡等が消されるから周囲が清浄に保たれる。
【0016】
(除湿手段)
さらに、水槽11には除湿手段51が設置されている。除湿手段51は乾燥行程において、洗濯兼脱水槽21から排出された湿った空気を案内する除湿風路52と、除湿風路52内に設置された除湿板53および乾燥フィルタ54と、除湿風路52に空気を吸引(洗濯兼脱水槽21に空気を送るに同じ)するファン・モータ55、ファン・モータ55によって送られた空気を加熱するヒータ56、ヒータ56によって加熱された空気を洗濯兼脱水槽21に案内する蛇腹57と、から形成されている。このとき、蛇腹57は可撓性または伸縮性を具備するから、水槽11の傾動に追従することができる。
なお、筐体2の天面には給水口58が設けられ、給水口58に注入された水は、分岐弁59によって分岐され、洗剤ケース60に注がれたり、あるいは除湿板53に注がれたりする。
【0017】
次に、本発明の特徴部分であるパルセータ100の構造について詳細に説明する。
図2は、図1のパルセータを示す斜視図、図3は、図1のパルセータ部分の拡大断面図、図4は、パルセータと水路との位置関係を説明するための説明斜視図である。
このパルセータ100は、一端側を低くし、それに対向する他端側を高くしたことによる傾斜面110aが上面に形成されたベース部110と、ベース部110の上面の一端側から他端側に延びて立設された羽根120とを備えている。
【0018】
ベース部110は、傾斜面110aを有する傾斜面部111と、傾斜面部111の外縁から立ち上がるように形成された周壁部112と、周壁部112の上端縁から洗濯兼脱水槽21の底壁22aに向けて延びるフランジ状の上面部113とから形成されている。周壁部112は、その高さが、傾斜面部111の傾斜の低い方から高い方に向かうにしたがって短くなるように形成されており、その周壁部112の上端縁に形成される上面部113の上面(ベース部110の外周の上面と同じ)が、洗濯兼脱水槽21の底壁22aの上面と面一になるように形成されている。ここで、本例のパルセータ100は、図3に示すように、ベース部110の傾斜面110aの低い方が、洗濯兼脱水槽21の底壁22aの高さ位置よりも低い高さ位置に位置するように収容部26に配置されるため、周壁部112を上記構成とすることで、パルセータ100の上面部113の上面が、洗濯兼脱水槽21の底壁22aの上面と面一となるようになっている。なお、洗濯兼脱水槽21の底壁22aとは、洗濯兼脱水槽21の底部22とは異なり、洗濯兼脱水槽21において洗濯空間の底を構成する部分を指している。
【0019】
また、パルセータ100は、洗濯工程中、洗濯兼脱水槽21に対して相対的に回転するが、上記構成とすることで、回転中常に、ベース部110の上面部113の上面と、洗濯兼脱水槽21の底壁22aの上面とが面一状態を保つ状態とすることができる。
【0020】
また、パルセータ100の周壁部112の外側に、もう一枚の周壁部112aを上面部113から下方に垂下するように形成している。これにより、パルセータ100の周壁部が2枚構造となり、パルセータ100の強度が向上している。
【0021】
パルセータ100の羽根120において、傾斜面110aの傾斜の低い方に対応する部分は、洗濯兼脱水槽21の底壁22aの上面よりも低い位置に位置しているが、傾斜面110aの高い方に対応する部分は、底壁22aの上面よりも上方に突出した状態となっている。そして、上方に突出した側の端面(パルセータ100の羽根120の長手方向の端面のうち、ベース部110の傾斜の高い側の端面)を、内方に向けて傾斜した傾斜面121としており、洗濯兼脱水槽21の周壁23に設けられた水路形成部材41aとの隙間が所定距離以上となるようにしている。本例では傾斜面121の最高位置と水路形成部材41aとの隙間が例えば25mm以上となるように設定している。
【0022】
上記構成において動作を説明する。なお、以下の動作説明では、本発明と直接関連する動作すなわち洗濯工程のみを説明し、その他の工程の説明については省略する。
洗濯工程において、モータ37によりパルセータ100が回転すると、パルセータ100の上に乗っている洗濯物が、パルセータ100の傾斜面110aの作用により上下に移動する。この際、従来構造では、パルセータ100が回転することにより洗濯兼脱水槽21とパルセータ100との間の隙間の高さが変化し、これにより隙間部分に例えば薄い靴下などの洗濯物が噛み込まれる現象が発生していたが、本例の構造では、パルセータ100の回転によって隙間部分の高さが変化することがないため、洗濯物の噛み込みを防止することができる。
【0023】
すなわち、本例の構造では、洗濯兼脱水槽21とパルセータ100との境界部分上のそれぞれの高さ位置、すなわち洗濯兼脱水槽21の底壁22aの上面と、パルセータ100のベース部110の上面部113の上面とが、パルセータ回転中、常に面一であるので、隙間に洗濯物が噛み込むのを防止することができる。また、仮にその隙間に靴下やブラウスの袖口等が入り込んでしまったとしても、その洗濯物の他の部分に作用する上向きの力により、洗濯物が上方に押し上げられ、隙間に入り込んだ部分が隙間から抜け出す。したがって、従来構造のように、隙間の奥に更に入り込んで挟み込まれるのを防止することができる。
【0024】
このように、洗濯物の噛み込みや挟み込みを防止することができるため、パルセータ100を駆動するモータ37の負荷トルクの増大や、洗濯物への損傷を防止することができる。
【0025】
また、洗濯兼脱水槽21の周壁23には、図4に示すように水路形成部材41aが内方側に突出して設けられているため、パルセータ100の羽根120においてベース部110の傾斜の高い側の端面が水路形成部材41aと対向する位置にきたときに隙間が狭くなるが、パルセータ100の羽根120の該当端面に傾斜面121を設けているので、洗濯物が挟み込むのを防止することができる。
【0026】
また、パルセータ100の周壁部112を2枚構造としたので、パルセータ100の強度アップを図ることができ、耐久性向上を図ることが可能である。
【0027】
なお、パルセータ100は、ベース部110と羽根120とが一体成形された一体成型品であってもよく、また、ベース部110と羽根120とを別部材として、それらを結合してなる組立品であってもよい。ベース部110と羽根120とを、樹脂などにより一体成型すれば、部品点数や組立作業性の点からコスト低減が図れる。一方、ベース部110と羽根120とを別部品とすれば、乾燥性能の観点から熱伝導性の良い金属材料(例えばステンレススチールなど)や、意匠性の観点から適宜に部材を選択できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施の形態に係る洗濯機を説明する側面視の側面図である。
【図2】図1のパルセータを示す斜視図である。
【図3】図1のパルセータ部分の拡大断面図である。
【図4】パルセータと水路との位置関係を説明するための説明斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
1 洗濯機、21 洗濯兼脱水槽、22 洗濯兼脱水槽底部、22a 底壁、23 周壁、26 収容部、41 循環水路、100 パルセータ、110 ベース部、110a 傾斜面、111 傾斜面部、112 周壁部、113 上面部、120 羽根、121 傾斜面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯兼脱水槽の底部の中央部分に、洗濯物を攪拌させる回転体であるパルセータを配した洗濯機であって、
前記パルセータは、一端側を低くし、それに対向する他端側を高くしたことによる傾斜面が上面に形成されたベース部と、該ベース部の上面の一端側から他端側に延びて立設された羽根とを備え、前記洗濯兼脱水槽において洗濯空間の底を構成する底壁の上面と、前記パルセータの前記ベース部の外周部分の上面とが面一となるように形成されていることを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
前記洗濯兼脱水槽の底部の中央部分には、前記パルセータを収容する収容部が形成されており、前記収容部に、前記パルセータの前記ベース部の傾斜面の低い方が、前記底壁の高さ位置よりも低い高さ位置に位置するように収容されており、前記パルセータが回転中常に、前記洗濯兼脱水槽の前記底壁の上面と、前記パルセータの前記ベース部の外周部の上面とが面一状態を保つように前記ベース部の形状が形成されていることを特徴とする請求項1記載の洗濯機。
【請求項3】
前記パルセータの前記ベース部は、前記傾斜面を有する傾斜面部と、該傾斜面部の外縁から立ち上がるように形成され、その立ち上がりの高さが、傾斜の低い方から高い方に向かうにしたがって短くなるように形成された周壁部と、該周壁部の上端縁から前記洗濯兼脱水槽の前記底壁に向けて延びるフランジ状の上面部とから形成され、前記上面部の上面が、前記洗濯兼脱水槽の前記底壁の上面と面一となるように形成されていることを特徴とする請求項2記載の洗濯機。
【請求項4】
前記羽根の長手方向の端面のうち、前記ベース部の傾斜の高い側の端面を、内方に向けて傾斜させた傾斜面としたことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の洗濯機。
【請求項5】
前記パルセータの前記周壁部を2枚構造としたことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の洗濯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−161370(P2008−161370A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−353203(P2006−353203)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000004422)日本建鐵株式会社 (152)
【Fターム(参考)】