説明

洗濯機

【課題】設置が容易かつ確実な遮音板を有し、異音(衝突音)の発生を防止すると共に、外部に音を漏らさない遮音性に優れた洗濯機を提供する。
【解決手段】洗濯機1の底板23に形成された開口部24が遮音板50によって覆われている。遮音板50は一方の側縁がコ字状に折り曲げられた矩形板であって、上面に弾性部材60が設置された平面部51と、上面側に折り曲げられた立ち上がり部52と、平面部51に平行の係止部53(係止爪54が形成されている)とを具備している。平面部51は底板23に設置された支持手段30に差し込まれ、係止爪54が底枠下部22に形成された係止孔26に係止する。よって、遮音板50は抜け出し不能であて、弾性部材60は平面部51と底板23とによって挟圧されるから、洗濯機1では異常音(衝突音)が生じることなく、内部から音が漏れることが防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洗濯機、特に、筐体の底板に形成された開口部を塞ぐ遮音板を有する洗濯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工場出荷の際、洗濯機の筐体内部に懸吊された水槽(内部に脱水洗濯槽が回転自在に設置されている)が搬送中に動かないようにするため支持材が設置されている。また、洗濯機の筐体の底板には開口部が形成されている。そして、洗濯機が載置面(たとえば、家庭の床や防水パン等)に載置される直前に、前記支持材は前記開口部を通過して撤去され、前記開口部は遮音板によって塞がれるものである。
このとき、洗濯機の運転中(特に、脱水中)に、遮音板が底板に当たって異常音(衝突音に同じ)が発生するため、これを防止しようとする発明が示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−146996号公報(第2−3頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された発明は、筐体の底板に遮音板取付板を設置し、遮音板取付板に形成された開口部の両側縁に沿って対向するガイドリブが形成され、対向するガイドリブの間に遮音板を差し込むものである。そして、ガイドリブは遮音板取付板の下方に向かって突出し、遮音板取付板のガイドリブの位置にはガイトリブ側に突出する凸部が形成されている。したがって、差し込まれた遮音板はガイトリブと凸部とによって圧接(挾持)されるから、凸部がない場合に比べ、差し込まれた遮音板はガイドリブ内を移動し難くなり(ガタ付かなくなり)、異常音が低減されるものである。なお、差し込まれた遮音板の一端は遮音板取付板にネジによって固定されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された発明には、以下のような問題があった。
(あ)脱水時の振動等による異音(衝突音)の発生を防止しようとすると、ガイトリブと凸部とによる圧接(挾持)を確実にする必要があるものの、圧接(挾持)を確実にしたのでは遮音板の差し込みが困難になるため、異音(衝突音)の発生を防止することができない。
(い)凸部が遮音板取付板から突出し、遮音板は凸部に当接するから、遮音板取付板と遮音板との間には隙間が形成され、該隙間から筐体の外にモータ等の音が漏れる。
(う)遮音板の一端は遮音板取付板にネジによって固定されるから、長期間に渡る使用によってネジが弛み、遮音板が移動(ズレ)して開口した範囲からモータ等の音が漏れるおそれがある。
(え)前記ネジの位置が筐体の底部であって、通常、筐体の側面から奥まった位置にあるため、洗濯機が載置面に載置された状態では、ネジを設置する作業が困難であると共に、ネジが設置された状況(あるいは、ネジの弛み状況)を確認する作業が困難である。
【0006】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、設置が容易かつ確実な遮音板を有し、異音(衝突音)の発生を防止すると共に、外部に音を漏らさない遮音性に優れた洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る洗濯機は、筐体の底板に形成されている開口部を覆うための遮音板と、
前記筐体の底板の前記開口部に沿って形成され、前記遮音板を少なくとも一方向から差し込み可能にする保持手段と、を有し、
前記遮音板に、前記開口部を封鎖自在または包囲自在な弾性部材が設置され、
前記遮音板が前記保持手段に差し込まれた際、前記遮音板が前記開口部を覆うと共に、前記弾性部材が前記筐体の底板と前記遮音板との隙間を封鎖することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
したがって、本発明に係る洗濯機は、遮音板が筐体の底板に形成された開口部を覆うと共に、弾性部材が筐体の底板と遮音板との隙間を封鎖するから、筐体の外部にモータ等の音が漏れることが防止される。また、遮音板に設置された弾性部材が筐体の底板に押し当てられるから、脱水時の振動によっても遮音板が移動しないで(ガタつかないで)異常音(衝突音)の発生が防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
[実施の形態1]
図1は本発明の実施の形態1に係る洗濯機を説明する、(a)は一部断面にした側面図、(b)は一部の側面視の拡大断面図、(c)は一部の背面視の拡大断面図である。なお、本図および以下の図において、各構成部材を模式的に示しているため、その寸法は正確でない。特に、薄板によって形成されている部材については、明りょうにするため、厚さを誇張して示している。また、各図において同じ部分または相当する部分には同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
【0010】
図1において、洗濯機1は、筐体10に水槽が懸吊され、水槽の内部には洗濯脱水槽が回転自在に設置されている(何れも図示しない)。なお、本発明は洗濯機の様式を限定するものではなく、洗濯に際し、洗濯脱水槽に設置されたパルセータが回転するパルセータ式、洗濯脱水槽自体が回転するドラム式、あるいは、洗濯脱水槽が傾動する傾動式等など、何れであってもよい。また、洗濯脱水槽に温風を供給して洗濯物を乾燥する手段が設置されたものであってもよい。
【0011】
(底枠)
筺体10は断面矩形の筒状(略直方体に同じ)であって、下部に底枠20が設置されている。底枠20は筺体10に連らなる底枠上部21と、底枠上部21に連なって底枠上部21よりも小さい底枠下部22とから形成され、底枠下部22の水平部(筐体の底板に同じ、以下「底板」と称す)23には開口部24が形成されている。また、底板の四隅にはゴム足25が設置されている。
さらに、底枠下部22の後面(図1の(a)、(b)において右側)には係止孔26が形成され、係止孔26に後記する遮音板50に形成された係止爪54が係止するものである。
【0012】
(保持手段)
底板23の下面で開口部24の周囲には、後記する遮音板50が差し込まれると共に、これを保持する保持手段30が設置されている。
保持手段30は、遮音板50の差し込み方向に略平行して設置され、遮音板50の差し込みを案内する案内保持手段31と、差し込まれた遮音板50を差し込みを止める差込奥側保持手段32と、から構成されている。
なお、遮音板50は洗濯機1の後方(図1の(a)、(b)において右側)から前方(図1の(a)、(b)において左側)に向かって差し込まれるものであるから、案内保持手段31は、洗濯機1の側面(図1の(c)において左側および右側)に沿って、差込奥側保持手段32は洗濯機1の前寄り(図1の(a)、(b)において左側)に、それぞれ設置されている。
【0013】
案内保持手段31は断面L字状であって、鉛直部311と水平部312とから形成され、差込奥側保持手段32も同様に断面L字状であって、鉛直部321と水平部322とから形成されている。なお、案内保持手段31および差込奥側保持手段32の数量は限定するものではない。また、以下の説明において、共通する内容を説明する場合には、単に保持手段30、鉛直部301および水平部302と総称する。
【0014】
(遮音板)
図2は本発明の実施の形態1に係る洗濯機に設置される遮音板を模式的に示す斜視図である。図2において、遮音板50は矩形板であって、一方の側縁がコ字状に折り曲げられ、広い範囲の平面部51と、平面部51に連なった立ち上がり部52と、係止部53と、から構成されている。そして、係止部53の先端(遮音板50の側縁に同じ)には断面台形状または断面三角形状の係止爪54が形成されている。係止爪54は係止部53の下面から突出した顎部を有しているから、係止爪54(係止部53に同じ)を係止孔26に押し込むと、係止爪54(または係止部53)は弾性変形して係止孔26を貫通し、前記顎部が立ち上がり部52に係止する。このとき、遮音板50の差込奥側の側縁(図1の(a)、(b)において左側)は差込奥側保持手段32によって支持されている(図1の(b)参照)。
【0015】
したがって、遮音板50を差し込むだけで、遮音板50を底板23に抜き出し不能に固定することができるから、作業が容易になると共に、固定が確実になる。特に、底枠下部22は筐体10の側面よりも奥まっているため、従来は、ネジを螺合する作業が困難であることから、作業に時間を費やすだけでなく、ネジの取付不良や取付忘れが生じ、結果として遮音効果が失われることがあった。
なお、係止爪54は上向きであってもよい。上向きにした場合、サービス性(取り外し易さ)や製造上(型の抜き)で更に都合がよい。
なお、係止部53(係止爪54が形成されている)が底枠下部22に形成された場合には、遮音板50の立ち上がり部52に係止孔26が形成されることになる。
さらに、遮音板50の平面部51に1または2以上の貫通孔を設け、該貫通孔によって筐体10内に生じた結露水等を筐体10の外に排出するようにしてもよい。
なお、貫通孔をできるだけ後方(背面側)に配置しておけば、使用者に音が伝わり難くなり不快感が防止される。また、貫通孔は、結露水の他、非常時の溢水の処理にも使用される。したがって、貫通孔はできるだけ低い位置に配置されるのが好ましい。
【0016】
(弾性部材)
図2において、遮音板50の平面部51に弾性部材60(断面を梨地にて示す)が設置されている。弾性部材60は、外周61が遮音板50の平面部51の大きさに略同じ環状であって、弾性部材60の厚さに平面部51の厚さを加えた厚さが、底板23と保持手段30の水平部302との隙間より大きくなっている。したがって、遮音板50が差込奥側保持手段32に止まるまで差し込まれた状態で、平面部51が開口部24を覆うと共に、弾性部材60の外周61に近い環状範囲が、底板23と平面部51とによって挟圧されている(図1参照)。
【0017】
このとき、弾性部材60の内周62の大きさが底板23に形成された開口部24より小さいため、弾性部材60の内周62に近い環状範囲は底板23から外れて挟圧されない。一方、弾性部材60の内周62の大きさを開口部24より大きくしておけば、弾性部材60は全面において底板23と平面部51とによって挟圧されることになる。
なお、弾性部材60の表面に底板23との摺動を滑らかにするために低摩擦係数の可撓性シート等を設置してもよく、また、弾性部材60は環状でない板状(内周62を具備しないもの)にしてもよい。たとえば、四角状や棒状の弾性部材を複数つなぎ合わせて使用してもよい。このとき、材料取りが容易になり、製造コストが低減する。
【0018】
(遮音効果)
以上の説明から明らかなように、遮音板50は筐体10の底板23の開口部24を覆うと共に、遮音板50と底板23との間には挟圧された弾性部材60が介在し、しかも、遮音板50は係止爪54と係止孔26とによって抜け出し不能に差し込まれている。したがって、筐体10内部からモータ等の音が外部に漏れ出すことがない。
また、遮音板50に設置された弾性部材60が底板23に押し当てられ、遮音板50と保持手段30とは挟圧された弾性部材60の反発力に移動困難(ガタつかないよう)に当接しているから、脱水時の振動によっても、異常音(衝突音)の発生が防止される。
【0019】
(遮音板のバリエーション)
図3〜図5は、図1および図2に示す遮音板のバリエーションを模式的に示す、図3は斜視図、図4は断面図、図5は一部の斜視図である。
図3および図4の(a)において、遮音板50aには円環でない弾性部材60aが設置されている。弾性部材60aは平面部51の縁から所定範囲だけ奥まった範囲に設置されている。したがって、弾性部材60aは保持手段30の直上にないものの、平面部51が保持手段30によって支持されるから、弾性部材60aは平面部51と底板23との間に挾持されることになる。
【0020】
図4の(b)において、遮音板50bは矩形の平面部51の差込奥側の側縁51bが係止部53側に曲げられ、側縁51bを除く範囲に、差込奥側が差込手前側より薄く形成された弾性部材60bが設置されている。なお、弾性部材60bは板状でも環状であってもよい。したがって、遮音板50bを差し込む作業が容易になる。
図4の(c)において、遮音板50cは矩形の平面部51の底板23の開口部24の周囲に沿って断続的に複数の弾性部材60cが設置されている。すなわち、遮音板50cが底板23に設置された際、挟圧された弾性部材60c同士の間には、上下方向に潰された隙間61cが形成されるものの、その範囲は狭いため、遮音効果を奏する。
【0021】
図4の(d)において、遮音板50dは矩形の平面部51の中央部に、差込手前側が深くなる凹部55が形成され、凹部55の差込手前側にドレン孔56が設けられている。
したがって、筐体10内に生じた結露水等は、凹部55に集められ、ドレン孔56から筐体10の外に排出されることになる。よって、筐体10の内部の清潔と機器の保全性とが向上する。
なお、凹部55として、差込手前側の所定範囲および差込奥側の所定範囲において大きな角度(図中、θ5、θ6)で傾斜し、これを除く範囲ではなだらかなテーパ状になっているが、本発明はかかる傾斜角度やテーパ角度を限定するものではなく、たとえば、平面部51の差込奥側の縁部からテーパ状に凹部を形成してもよい。
【0022】
図4の(e)において、遮音板50eは遮音板50dに形成されたドレン孔56を多孔質体57で覆ったものである。すなわち、多孔質体57は透水性(吸水性に同じ)を具備するから、筐体10内で発じた結露水等を外部に排出することができる。また、同時に、空気の振動を遮断するから、筐体10内で発生した音がドレン孔56を通過して外部に漏れることを防止する。
図4の(f)において、遮音板50eは多孔質体57が凹部55の内側(上側)に設置されていたのに対し、遮音板50fでは多孔質体57が凹部55の外側(下側)に設置されている。したがって、遮音板50eと同様の排出効果と遮音効果を奏すると共に、底板23の下方の風流れによって、多孔質体57の乾燥が促進される。
【0023】
図4の(g)において、遮音板50gは遮音板50dに形成されたドレン孔56を覆う多孔質体57が凹部55内に収納されている。すなわち、多孔質体57の上面が底板23の上面よりも高くないから、全面を覆う弾性部材60aや弾性部材60bを設置するのに好適である。
【0024】
図5において、遮音板50hの平面部51hは差込奥側(図中、左側)の幅が狭くなっている。すなわち、平面部51hは、差込奥側の角部に幅方向の面取り58が形成され、五角形を呈している。このとき、幅方向の面取り58の大きさや面取り角度(幅方向の呼び込み角度に同じ)は限定するものではない。したがって、遮音板50hを保持手段30に差し込む際、幅方向の面取り58が保持手段30(特に、案内保持手段31)に容易に侵入するから、差し込み作業が容易になる。
【0025】
一方、遮音板50hを設置するために、筐体10の底板23に形成されている開口部24を、遮音板50hの平面形状に相似する五角形にしてもよい。また、同様に、弾性部材60を五角形の環状にしてもよい。したがって、弾性部材60の量を抑えながら遮音効果を得ることができる。なお、遮音板50hが差込奥にまで差し込まれた際(設置状態)における、遮音板50hの位置を破線にて示している。
また、遮音板50hの筐体10の後側から前側に差し込むとき、差込奥側は筐体10の前側になる。そして、筐体10の前側は排水ホース(図示しない)等があり、これを底枠20に固定するため、開口部24を五角形にして底板23の面積を増やすことは、かかる固定に対しても好適である。
【0026】
(保持手段のバリエーション)
図6は、図1および図2に示す保持手段のバリエーションを模式的に示す側面図であって、(a)は案内保持手段、(b)は差込奥側保持手段である。
図6の(a)において、案内保持手段31a(図中、左側は側面視で手前を、右側は側面視で奥を、それぞれ図示している)は、鉛直部311と水平部312aとから形成され、水平部312aは傾斜し、差込手前側(図中、右側)が広くなっている。したがって、遮音板50の差し込みが容易になっている。なお、水平部312aの差込奥側に水平部を設ければ、遮音板50との当接面積を広くすることができる。
【0027】
図6の(b)において、差込奥側保持手段32aは、鉛直部321と水平部322aとから形成され、水平部322aは傾斜し、差込手前側(図中、右側)が広くなっている。したがって、遮音板50の差し込みが容易になっている。なお、水平部322aの差込奥側に水平部を設ければ、遮音板50との当接面積を広くすることができる。
【0028】
(差し込み方向のバリエーション)
図7は、図1に示す遮音板の差し込み方向のバリエーションを模式的に示す、底面を上方にした斜視図である。
図7の(a)は、図1に示すものに同じであって、遮音板50を筐体10の後方から、前方に向かって差し込んでいる。底枠下部22は筐体10よりも小さいため、底枠下部22は筐体10の側面より前後方向で後退しているものの、後退する量の少ない後方では、底枠下部22の後面を視認しながら差し込み作業をすることができるから、作業が容易になっている。
【0029】
図7の(b)は、遮音板50を筐体10の一方の側方から他方の側方に向かって差し込んでいる。底枠下部22は筐体10よりも小さいものの、側方(前後方向に垂直な方向)では、底枠下部22の側面の後退が少ないため、底枠下部22の側面を視認しながら差し込み作業をすることができるから、作業が容易になっている。
なお、差し込み方向はこれに限定するものではなく、遮音板50を筐体10の前方から、後方に向かって差し込んでもよい。また、差し込み方向の変更に伴って、保持手段30(案内保持手段31、差込奥側保持手段32)の配置は適宜変更されるものである。
【0030】
[実施の形態2]
図8は本発明の実施の形態2に係る洗濯機を説明する、(a)は一部を示す側面視の断面図、(b)は一部を示す背面図である。
図8において、洗濯機2は、底枠下部22の後方の面に、遮音板50の差し込みを容易にするための呼び込みガイド70を具備している。呼び込みガイド70は一対の断面L字部材70a、70bから構成され、それぞれ、底板23に垂直で下方に突出する鉛直部701a、701bと、差込手前側が低くなるように傾斜した呼び込み部702a、702bを具備している。そして、断面L字部材70a、70bの差込手前側の端面は、底枠下部22の後方の面と略同じ面内にあるため、断面L字部材70a、70bの差込手前側の端面を視認しながら、遮音板50を差し込むことができるから、差し込み作業が容易になる。なお、図8には、断面L字部材70b(鉛直部701bと呼び込み部702bとから構成される)のみ示している。
【0031】
[実施の形態3]
図9は本発明の実施の形態3に係る洗濯機を説明する一部を示す側面図であって、(a)は洗濯機を載置する前、(b)は洗濯機を載置した後である。図9において、洗濯機3には遮音板80が設置されている。
遮音板80は、平面部51の下面(立ち上がり部52の反対側)に設置された弾性部材90を有している。すなわち、遮音板50(実施の形態1、2)では、弾性部材60が平面部51の上面(立ち上がり部52側)に設置されていたから、遮音板80はこの点において遮音板50と相違し、その他の点においては同一である。そして、弾性部材90そのものは、弾性部材60(バリエーションである遮音板50a〜50hを含む、図4および図5参照)に同じである。
【0032】
このとき、平面部51の厚さ(H51)と弾性部材90(平面部51の下面に設置されている)の厚さ(H90)とを合わせた厚さが、ゴム足25の高さ(H25)より大きくなっている((H51+H90)>H25)。
したがって、洗濯機3が載置面9(床面、防水パン等)に載置されたとき、弾性部材90は載置面9と平面部51とによって挟圧され、高さの差((H51+H90)−H25)だけ圧縮されるから、その反発力によって平面部51は底板23に押し付けられることになる(図9の(b)参照)。
すなわち、平面部51は筐体10の開口部24を覆うと共に、底板に押し付けられるから、遮音効果と共に、異常音(衝突音)の発生が防止される。
【0033】
[実施の形態4]
図10は本発明の実施の形態4に係る洗濯機を説明する側面視の側面図である。図10において、洗濯機4は、筐体410内に、傾動自在に懸吊された水槽(貯水槽に同じ)を有している。また、筐体410の下部に連なる底枠420の底枠下部422は、筐体410よりも小さく、後方寄り(図中、左側)に配置されている。そして、底板423に形成された開口部424には遮音板50が設置されている。このとき、遮音板50は筐体10の後方から前方に向かって差し込まれたものである。
したがって、洗濯機4は洗濯機1、2(実施の形態1、2)と同様に、遮音板50の設置が容易かつ確実であって、異常(衝突音)の発生を防止すると共に、外部に音を漏らさない遮音性に優れている。また、遮音板50に替えて遮音板80を設置すれば、洗濯機3(実施の形態3)と同様の作用効果を奏するものである。
なお、洗濯機1〜3(実施の形態1〜3)は、洗濯機4から水槽を傾動させる機能を撤去したものに相当している。以下、洗濯機4について簡単に説明する。
【0034】
(洗濯機)
図10において、洗濯機4は、一連の洗い行程とすすぎ行程と脱水行程と乾燥行程とを実行するものであって、洗濯槽を傾斜させた状態(回転軸を鉛直方向に対して傾けた状態)で洗い行程と乾燥行程とを実行し、洗濯槽を直立させた状態(回転軸を鉛直方向にした状態)で脱水行程(すすぎ行程を含む場合がある)とを実行するものである。したがって、図10に示す姿勢は、洗濯行程に対応している。
【0035】
(筐体)
筺体410は断面矩形の筒状(略直方体に同じ)であって、天面には天面開口部411が形成され、天面開口部411には扉412が開閉自在に設置されている。また、天面開口部411の後方(図中、右側)には洗濯ケース413が設置されている。
また、筺体410のに連なって底枠420が接続され、底枠420の底板423(筐体410の低板に同じ)には、遮音板50とゴム足425とが設置されている。なお、遮音板50の設置要領は洗濯機1(実施の形態1)に同じであるから、説明を省略する。
さらに、筺体410は四隅の上端部近くには吊り板426が設置され、吊り板426には吊り座427が設けられている。
【0036】
(水槽)
筺体410内に水槽430が収納されている。水槽430は天面が開放され、水槽底431が閉塞されたコップ状であって、水槽底431の近くで筐体410の四隅と同一位相に、バネ受け432が設置されている。
そして、水槽430は吊り棒440によって吊り下げられている。すなわち、吊り棒440の上端は吊り座427に係止し、下端はバネ441を介してバネ受け432によって支持されている。なお、後方の吊り棒440には吊り棒可動部442が設けられているから、吊り棒可動部442が後方の吊り棒440を引き上げると、水槽430は前方に向かって傾動する。
【0037】
(脱水槽)
脱水槽(洗濯槽に同じ)450は、投入された衣類の洗いとすすぎと脱水と乾燥とに供するものであるから、洗濯兼脱水槽あるいは洗濯兼脱水兼乾燥槽とも称呼されるものである。脱水槽450は水槽430に回転自在に配置されている。そして、水槽430が傾動するから、脱水槽450は水槽430と共に傾動するものである。したがって、洗濯行程における洗濯水の撹拌が促進され、洗浄効果が向上すると共に、乾燥行程においても衣類の撹拌が促進されるから、乾燥効率が向上する。
脱水槽450は、天面が開放され、脱水槽底451が閉塞されたコップ状で、側面452には脱水のための複数の通水孔453が形成され、天面の周囲にはバランサー454が設置されている。
【0038】
(パルセータ)
また、脱水槽底451の内側には、投入された衣類および注水された水(以下「洗濯水」と称す)を攪拌するパルセータ460が回転自在に配置されている。パルセータ460のベース460aの上面には羽根460bが形成され、投入された衣類および注入された水を効率的に攪拌するようになっている。ベース460aの下面には略半径方向に向かって複数の裏羽根461が設置され、複数の裏羽根461の下端部には、これらを連結する円環状板(以下「裏蓋」と称す)462が設置されている。したがって、ベース460aの下面と裏蓋462の上面との間には、一対の裏羽根461に仕切られた複数の略角錐台状の空間(以下「加速流路」と称す)463が形成されている。
【0039】
また、裏蓋462の内周縁とパルセータ460の駆動軸464との間には円環状の隙間(以下「吸引口」と称す)465が形成され、水槽430の水槽底431には吸引口465に対峙する開口部(以下「循環口」と称す)435が形成されている。
よって、水中に没した状態で、パルセータ460を回転すると、加速流路463内の水は遠心力によって半径方向の外側に飛ばされるから、水槽底431と脱水槽底451との間に貯まった洗濯水は、循環口435および吸引口465を通過して、加速流路463に吸い込まれることになる。このとき、加速流路463は回転する部材のみ(いわゆるロータ)によって形成されるから、回転する部材と回転しない部材と(いわゆるロータとステータと)から形成されるものよりも、ポンプ性能(吸引/吐出性能に同じ)が優れている。なお、パルセータ460は水槽430の水槽底431に軸受ベース・ステータ471を介して設置されたモータ470によって回転駆動されるものである。
【0040】
(循環水路)
脱水槽450の側面の内側には、所定厚さ(半径方向の距離に同じ)で、所定幅(円周方向の距離に同じ)の循環水路455が鉛直方向(図中、上下方向)に形成され、循環水路455の上端には散水孔456が設けられている。
したがって、洗濯行程において、パルセータ460の回転によって吐出された洗濯水は、循環水路455を経由して散水孔456から脱水槽450内に噴射されることになる。したがって、水面の泡等が消されるから周囲が清浄に保たれる。
【0041】
(除湿手段)
さらに、水槽430には除湿手段480が設置されている。除湿手段480は乾燥行程において、脱水槽450から排出された湿った空気を案内する除湿風路481と、除湿風路481内に設置された除湿板482および乾燥フィルタ483と、除湿風路481に空気を吸引(脱水槽450に空気を送るに同じ)するファン・モータ484、ファン・モータ484によって送られた空気を加熱するヒータ485、ヒータ485によって加熱された空気を脱水槽450に案内する蛇腹486と、から形成されている。このとき、蛇腹486は可撓性または伸縮性を具備するから、水槽430の傾動に追従することができる。
なお、筐体410の天面には給水口414が設けられ、給水口414に注入された水は、分岐弁415によって分岐され、洗濯ケース413に注がれたり、あるいは除湿板482に注がれたりする。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は以上の構成であるから、設置が容易かつ確実な遮音板を有し、異音(衝突音)の発生を防止すると共に、外部に音を漏らさない遮音性に優れているから、各種家庭および業務用の洗濯機として広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施の形態1に係る洗濯機を説明する一部断面にした側面図等。
【図2】図1に示す洗濯機に設置される遮音板を模式的に示す斜視図。
【図3】図1および図2に示す遮音板のバリエーションを模式的に示す斜視図。
【図4】図1および図2に示す遮音板のバリエーションを模式的に示す断面図。
【図5】図1および図2に示す遮音板のバリエーションを模式的に示す斜視図。
【図6】図1および図2に示す保持手段のバリエーションを模式的に示す側面図。
【図7】図1に示す遮音板の差し込み方向のバリエーションを模式的に示す外観図。
【図8】本発明の実施の形態2に係る洗濯機を説明する側面視の断面図等。
【図9】本発明の実施の形態3に係る洗濯機を説明する一部を示す側面図。
【図10】本発明の実施の形態4に係る洗濯機を説明する側面視の側面図。
【符号の説明】
【0044】
1:洗濯機(実施の形態1)、2:洗濯機(実施の形態2)、3:洗濯機(実施の形態3)、4:洗濯機(実施の形態4)、9:載置面、10:筐体、20:底枠、21:底枠上部、22:底枠下部、23:底板、24:開口部、25:ゴム足、26:係止孔、30:保持手段、31:案内保持手段、32:差込奥側保持手段、50:遮音板、51:平面部、52:立ち上がり部、53:係止部、54:係止爪、55:凹部、56:ドレン孔、57:多孔質体、58:面取り、60:弾性部材、61:外周、61c:隙間、62:内周、70:呼び込みガイド(実施の形態2)、80:遮音板(実施の形態3)、90:弾性部材(実施の形態3)、410:筐体、411:天面開口部、412:扉、413:洗濯ケース、414:給水口、415:分岐弁、420:底枠、422:底枠下部、423:底板、424:開口部、425:ゴム足、426:吊り板、427:吊り板座、430:水槽、431:水槽底、432:バネ受け、435:循環口、440:吊り棒、441:バネ、442:吊り棒可動部、450:脱水槽、451:脱水槽底、452:側面、453:通水孔、454:バランサー、455:循環水路、456:散水孔、460:パルセータ、460a:ベース、460b:羽根、461:裏羽根、462:裏蓋、463:加速流路、464:駆動軸、465:吸引口、470:モータ、471:軸受ベース・ステータ、480:除湿手段、481:除湿風路、482:除湿板、483:乾燥フィルタ、484:モータ、485:ヒータ、486:蛇腹。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の底板に形成されている開口部を覆うための遮音板と、
前記筐体の底板の前記開口部に沿って形成され、前記遮音板を少なくとも一方向から差し込み可能にする保持手段と、を有し、
前記遮音板に、前記開口部を封鎖自在または包囲自在な弾性部材が設置され、
前記遮音板が前記保持手段に差し込まれた際、前記遮音板が前記開口部を覆うと共に、前記弾性部材が前記筐体の底板と前記遮音板との隙間を封鎖することを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
筐体の底板に形成されている開口部を覆うための遮音板と、
前記筐体の底板の前記開口部に沿って形成され、前記遮音板を少なくとも一方向から差し込み可能にする保持手段と、を有し、
前記遮音板に、前記筐体の底板に下方に向けて突出して設置されている足部の高さよりも厚い弾性部材が設置され、
前記遮音板が前記保持手段に差し込まれた状態で洗濯機が載置面に載置された際、前記遮音板が前記開口部を覆うと共に、圧縮された前記弾性部材によって、前記遮音板が前記筐体の底板に押し当てられることを特徴とする洗濯機。
【請求項3】
前記筐体の底板の前記遮音板の差込手前側に、前記遮音板の差し込みを容易にするガイド手段が形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の洗濯機。
【請求項4】
前記保持手段が1または2以上の断面略L字状部材であって、該断面略L字状部材の前記遮音板の差込手前側に、該差込手前側を広くする呼び込みテーパ部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の洗濯機。
【請求項5】
前記遮音板の差込奥側の縁部の一方または両方の角部に、該差込奥側の幅を狭くする幅方向テーパ部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の洗濯機。
【請求項6】
前記遮音板の差込奥側の縁部に、該差込奥側の厚さを薄くする厚さ方向テーパ部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の洗濯機。
【請求項7】
前記遮音板に、1または2以上の凹部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の洗濯機。
【請求項8】
前記遮音板を貫通する、1または2以上の水抜き孔が形成されていることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の洗濯機。
【請求項9】
前記水抜き孔が多孔質部材によって覆われていることを特徴とする請求項8記載の洗濯機。
【請求項10】
前記遮音板の差込手前側に係止用爪が形成され、
前記筐体に、前記係止用爪が係止自在な爪受け部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載の洗濯機。
【請求項11】
前記筐体が、前後方向に傾動自在な水槽を収納する前後方向に長い本体部と、前記底部を具備する前記本体部より前後方向の長さが短い底枠と、を具備し、
該底枠が前記本体部の後方寄りに配置されると共に、前記遮音板が後方側から差し込み可能であることを特徴とする請求項1乃至10の何れかに記載の洗濯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−161563(P2008−161563A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−356240(P2006−356240)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000004422)日本建鐵株式会社 (152)
【Fターム(参考)】