説明

洗車機

【課題】 本発明の課題は、側面ブラシがナンバープレートに引っ掛かってプレートやブラシを損傷させることがなく、しかも洗い残しをなくした洗車機を提供することにある。
【解決手段】 洗車機本体1に対する自動車Aの側面位置を検出する手段30a・30bと、検出手段で与える側面位置に基づいて自動車の幅方向の中心位置を検出する手段30cと、側面ブラシ4L・4Rにより車体側面のブラッシングから引き続いて車体前後面をブラッシングする際に、検出した車体中心位置CPから右(もしくは左)に所定距離ずらした位置CP’に側面ブラシ4L・4Rを閉じてから、そのずらした位置CP’と逆方向の車体中心位置CPから左(もしくは右)に所定距離ずらした位置CP”まで側面ブラシ4L・4Rを閉じたまま移動させた後、側面ブラシ4L・4Rを開くよう制御する手段30を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右一対の側面ブラシを備え、側面ブラシを車体形状に沿って開閉しつつブラッシングして、自動車車体の側面および前後面を自動洗浄する洗車機に関し、特に側面ブラシで車体前後面を洗浄する際に、ナンバープレートの破損を防止するための処理に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の洗車機として、本出願人は特許文献1を提案している。この洗車機は、門型に形成された本体を自動車を跨ぐように往復走行させ、この本体に備えた左右一対の側面ブラシにより自動車車体の側面および前後面をブラッシングするものであり、車体前面をブラッシングする際には自動車車体の中心位置を目標として側面ブラシを閉じ、側面ブラシを低速もしくは接触の程度を弱めることでナンバープレートの破損を防止している。
【0003】
ところで、左右の側面ブラシの合わせ位置には、洗い残しが生じやすく、自動車車体の中心位置でブラシを合わせると、その部分が集中的に洗い残しとなる欠点があった。
【特許文献1】特開2000−6774号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、側面ブラシがナンバープレートに引っ掛かってプレートやブラシを損傷させることがなく、しかも洗い残しをなくした洗車機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するため、左右一対の側面ブラシを備え、側面ブラシを車体形状に沿って開閉しつつブラッシングして、自動車車体の側面および前後面を洗浄する洗車機において、洗車機本体に対する自動車の側面位置を検出する手段と、該検出手段で与える側面位置に基づいて自動車の幅方向の中心位置を検出する手段と、前記側面ブラシにより車体側面のブラッシングから引き続いて車体前後面をブラッシングする際に、前記検出した車体中心位置から右もしくは左に所定距離ずらした位置に側面ブラシを閉じてから、そのずらした位置と逆方向の車体中心位置から左もしくは右に所定距離ずらした位置まで側面ブラシを閉じたまま移動させた後、側面ブラシを開くよう制御する手段とを備え、
前記側面ブラシを閉じた時の左右ブラシの接合面をナンバープレートの範囲内に設定したものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、側面ブラシをナンバープレートの中心位置からずれた位置に閉じてからナンバープレートの中心を挟んで対称の位置に左右側面ブラシを閉じたままスライドさせることで、ナンバープレートの破損を防止しながら、少ない動作(時間)で洗い残しを確実になくすことができる。
【実施例】
【0007】
以下、本発明の実施例について図面を基に説明する。図1は実施例の基本構成を示す正面図、図2は同じく側面図である。
1は洗車機本体で、左右一対のレール2,2上を往復走行し、レール2,2間に停車される自動車を跨ぐように移動する。3,4L,4Rは洗車機本体1に設けられる洗車処理装置としての回転ブラシで、3は車体面に沿って昇降動作し主に車体上面を洗浄する上面ブラシ、4L,4Rは車体面に沿って開閉動作し車体の側面および前後面を洗浄する左右一対の側面ブラシである。5,6L,6Rは洗車機本体1に設けられ洗浄後の車体の乾燥をはかる洗車処理装置としてのブロワノズルで、5は車体面に沿って昇降動作する上面ブロワノズル、6L,6Rは車体面に沿って出没動作する左右一対の側面ブロワノズルである。
【0008】
7は洗車機本体1の走行位置を検出する走行位置検出装置、8は本体1のブラシ3,4,4より前側の前縁部に設けられ自動車の車形を検出する車形検出装置である。走行位置検出装置7は、本体1の走行モータ9と、モータの駆動軸先端に接続されるエンコーダ10とを備え、走行モータ9の駆動に伴い本体1が単位距離走行する毎にエンコーダ10が出力するパルス信号をカウントすることで本体1の走行位置を検知する。車形検出装置8は、複数の発光素子を上下に配列させた発光部8aと、これに対向して複数の受光素子を上下に配列した受光部8bとを備え、両者間で光信号(赤外光)の授受を行い車体の上面位置を検知する。エンコーダ10のパルス信号に同期して車形検出装置8で車体の上面位置を検出することで、車形データが作成される。
【0009】
図3・4は側面ブラシ4L・4Rの構造を示す説明図であり、図3は平面から見た状態、図4は側面ブラシ4Lを正面から見た状態を示している。尚、左右の側面ブラシは同一の構成であるため、側面ブラシ4Lについて以下に説明する。
側面ブラシ4Lは、本体1の後方上部に横架されたガイドレール11上を走行するキャリア12Lと、キャリア12Lから吊下される回転軸13Lと、回転軸13Lの周囲に植毛される布製又は樹脂製のブラシ体14Lと、プーリ、ベルト等からなる連係装置15Lを介して回転軸13Lを駆動する正逆可能な回転モータ16Lとから構成され、ブラシ開閉装置17Lによってガイドレール11上を走行可能にされるとともに、ブラシ揺動装置18Lによって左右に揺動可能にされる。
【0010】
ブラシ開閉装置17Lは、側面ブラシを洗車機本体1の幅方向に開閉するもので、図3に示すように、ブラシ開閉用モータ19Lと、一端がキャリア12Lに接続され、他端がスプロケット20Lを介してブラシ開閉用モータ19Lの駆動軸に懸架されたチェーン21Lと、モータの駆動軸先端に接続されるブラシ開閉位置検出用のエンコーダ22Lとから構成されている。ブラシ揺動装置18Lは、側面ブラシのブラシ体14Lを垂直姿勢から下方が外側に開く揺動姿勢まで揺動可能とするもので、図4に示すように、キャリア12Lの上面において回転軸13Lの上端を連結固定する支持板23Lと、支持板23Lを一方向に揺動支持する支軸24Lと、支持板23が所定量θ1傾いた位置でスイッチングする第1近接スイッチ25Lと、支持板23Lが所定量θ2(>θ1)傾いた位置でスイッチングする第2近接スイッチ26Lとから構成されている。
【0011】
図5は実施例の制御系を説明するブロック図である。
30は洗車制御部で、車形検出装置8と、走行位置検出装置7のエンコーダ10と、ブラシ開閉装置17のエンコーダ22L・22Rと、ブラシ揺動装置18の各近接スイッチ25L・25R・26L・26Rと、洗車駆動部31が接続されている。洗車駆動部31には、走行位置検出装置7の走行モータ9と、側面ブラシ4の回転モータ16L・16Rと、ブラシ開閉装置17の開閉モータ19L・19Rが接続される他、上面ブラシ3、ブロワノズル5,6L・6Rの駆動系が接続されている。
【0012】
洗車制御部30では、車形検出装置8と走行エンコーダ10からの情報に基づいて自動車の上面形状を検出するとともに、ブラシ開閉装置17のエンコーダ22L・22Rとブラシ揺動装置18の各近接スイッチ25・26からの情報に基づいて自動車の側面位置を検出する。洗車駆動部31では、この洗車制御部30で検出した自動車の上面形状及び側面位置に基づいて側面ブラシ4の回転モータ16L・16R、開閉モータ19L・19R及び上面ブラシ3、ブロワノズル5,6・6を駆動する。
【0013】
洗車制御部30において、30aは左側面ブラシ4Lの開閉位置の検出部で、左側面ブラシ4Lを開閉するモータ19Lに付設されるエンコーダ22Lからのパルスをカウントして、ブラシ4Lの待機位置からの距離を測定する。30bは右側面ブラシ4Rの開閉位置の検出部で、右側面ブラシ4Rを開閉するモータ19Rに付設されるエンコーダ22Rからのパルスをカウントして、ブラシ4Rの待機位置からの距離を測定する。30cは自動車中心位置検出部で、左側面ブラシ位置検出部30aおよび右側面ブラシ位置検出部30bで与える各側面ブラシ位置に基づいて自動車の幅方向の中心位置を検出する。
【0014】
続いて、実施例の洗車時の動作について説明する。
自動車Aが所定の停車位置に停車されて、所定の洗車開始指令がなされると、洗車機本体1が往行を開始する。本体1の往行に伴い、走行位置検出装置7で本体1の走行位置を検出しながら、走行エンコーダ10からのパルス信号をトリガとして車形検出装置8で自動車の上面位置を取り込み、車形データを作成していく。作成される車形データは、自動車の上面輪郭データとなり、上面ブラシ・上面ブロワノズルの昇降制御に用いられる他、自動車の前端・後端を抽出して側面ブラシの制御に用いられる。
【0015】
以下、図6を基に側面ブラシの動作について説明していく。
(車体前端洗浄)
まず、自動車の前端aに対して、側面ブラシ4L・4Rを洗車機本体1の中心で閉じてアプローチさせ、側面ブラシが車体前端aの洗浄位置P1に達したら、本体1の走行を一旦停止させて車体の前端洗浄が行われる。車体の前端洗浄は、側面ブラシ4L・4Rのブラシ体14が内側から外側に向かって作用するように回転させながら、側面ブラシ4・4を左右に開いていくことで行われる。尚、前端洗浄の際に、自動車の前面に取り付けられたナンバープレートNP−fを破損させないよう、洗浄位置P1を実際の前端aから少し前方の位置(回転によりブラシ体14がの毛材が車体に触れる程度の位置)に設定している。これは、自動車Aの前端洗浄の段階で、自動車が洗車機本体の中心位置に対してどの程度ずれて停車されているのか、ナンバープレートが自動車のどの位置に取り付けられているのかが分からないためである。
【0016】
(車体側面洗浄)
側面ブラシ4L・4Rが待機位置まで開くと、本体1の往行を再開し、側面ブラシが車体前端aから距離S1だけ後方の位置P2に達したら、側面ブラシを閉じていき、左右の側面ブラシをそれぞれ上方が自動車A側に傾倒したハの字姿勢になるまで車体側面に押し付けて車体の側面洗浄が行われる。側面洗浄時は、側面ブラシ4を車体に押し付け、左右にそれぞれ所定量θ傾いた状態で行われる。車体変化により、この傾きは変化していくが、ブラシ揺動装置18の第1近接スイッチ25L・25Rでブラシの揺動角θが所定量θ1より小さくなったことが検出されると、ブラシ開閉装置17のブラシ開閉用モータ19L・19Rを駆動して側面ブラシを車体に接近させるようし、ブラシ揺動装置18の第2近接スイッチ26L・26Rで側面ブラシの揺動角θが所定量θ2になったことが検出されると、ブラシ開閉装置17のブラシ開閉用モータ19L・19Rを駆動して側面ブラシを車体から離させるようにして、ブラシの揺動角θを常にθ1<θ<θ2の範囲で保つように制御される。
【0017】
このとき、ブラシ開閉装置17はエンコーダ22L・22Rからのパルス信号に基づいて側面ブラシの開位置を検出して待機位置から車体までの距離を記憶していく。側面ブラシが車体後端bまで距離S2だけ前方の位置P3に達したら、その時点までに記憶した側面ブラシの開位置の中で最も開いた位置を取り出し、その位置に基づいて車体の幅方向の中心位置CWを検出する。車体中心位置CPの検出は、自動車中心位置検出部30cにおいて実行され、左側面ブラシ位置検出部30aで与えるブラシ4Lの待機位置から車体までの距離Alと、右側面ブラシ位置検出部30bで与えるブラシ4Rの待機位置から車体までの距離Arとを用いて、中心位置CP=(As−Al−Ar)/2の式によって求められる。値Asは待機位置にいるブラシ4L,4R間の距離に相当する定数である。
【0018】
(車体後端洗浄)
側面ブラシ4L・4Rが車体後端bの洗浄位置P4に達すると、本体1の走行を一旦停止させて車体の後端洗浄が行われる。車体の後端洗浄は、側面ブラシ4L・4Rのブラシ体14が内側から外側に向かって作用するように回転させながら、側面ブラシ4・4を閉じていくことで行われ、側面ブラシを閉じる位置は、車体の後面に取り付けられたナンバープレートNP−rを破損させないように設定される。リアナンバープレートNP−rは、車体の中心位置CPに取り付けられている場合がほとんどであるため、検出した車体の中心位置CPがナンバープレートの中心位置NCと等しいと判断し、図7に示すように、ナンバープレートの中心位置NCに対して、側面ブラシの閉じ位置CP’を設定し、その位置CP’に合わせて左右の側面ブラシ4L・4Rを閉じる(図7a)。この位置CP’は、ナンバープレートの全幅がほぼ300mmであることを考慮し、ナンバープレートの中心位置NCから左右いずれか(ここでは右)に100mm程度ずれた位置に設定される。その後、今度はナンバープレートの中心位置NCを挟んで位置Cp’と対称する位置CP”まで左右の側面ブラシを閉じたままスライドさせ(図7b)、車体の中心位置をラップさせながら洗浄した後、側面ブラシ4・4を左右に開いていく(図7c)ことで車体後端の洗浄が行われる。
【0019】
これまでの洗浄方法では、車体中心位置もしくはナンバープレートの中心位置に向けて左右の側面ブラシを閉じてブラッシングしていたので、左右ブラシの合わせ部分に互いの毛材が干渉し合ってできる洗い残しができていた。この洗い残しを解消するため、図8に示すように、車体中心位置に側面ブラシを閉じてから(図8a)、側面ブラシを閉じたまま左右にスライドさせ(図8b・c)、中心位置の洗浄をラップさせていたが、側面ブラシをナンバープレートの中心位置に閉じてから左右にスライドさせると洗車時間が長くなるとともに、ブラシのスライド幅が小さいことから洗浄のラップ量も不十分となり確実に洗い残しをなくすには至らない。これに対し、側面ブラシをナンバープレートの中心位置NCからずれた位置CP’に閉じてからナンバープレートの中心を挟んで対称の位置CP”に左右側面ブラシを閉じたままスライドさせることで、ナンバープレートの破損を防止しながら、少ない動作(時間)で洗い残しを確実になくすことができる。
【0020】
また、ナンバープレートを破損させる原因として、ナンバープレートの隅部に対して反対サイドのブラシが作用してめくり上げてしまうケースが最も多い。この点に関しても、左右の側面ブラシを閉じる位置CP’,CP”を車体中心からナンバープレートの範囲内でずらした位置に設定しているので、ナンバープレートの隅部に対して反対サイドの側面ブラシが作用することがなくなり、ナンバープレートを破損させることがない。
【0021】
こうして洗車機本体1の往行に伴う洗浄が終了すると、実行する洗車コースに応じて本体1の復行に伴う洗浄か乾燥が実行されることになる。復行で洗浄を実行する場合、車体の前端位置でも前記した車体後端洗浄と同様に、側面ブラシを車体の中心位置からずれた位置に閉じてから車体中心を挟んで対称する位置に側面ブラシを閉じたままスライドさせる動作を与えて、ナンバープレートの保護を図るようにしても良い。
【0022】
本発明は以上のように実施されて、ナンバープレートに対して側面ブラシ4,4が引っかかる問題を解消しながら、洗い残しが少なく、洗車時間も長くならない洗車機を提供するものである。尚、この発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の実施態様が可能である。例えば、上記実施例では門型洗車機に実施した例を示したが、コンベア式洗車機においても、洗車機本体の走行制御をコンベアによる自動車の搬送制御に代えて実施することにより、容易に実施可能である。また、ブラシやブロワのレイアウトが変えて、ドライブスルー方式の洗車機に応用することも可能である。更に、車体側面の位置を検出する手段として、側面ブラシの位置により算出する方法を採用したが、超音波や赤外線などの非接触式センサを用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例の洗車機の構成を示す正面説明図である。
【図2】実施例の洗車機の構成を示す側面説明図である。
【図3】実施例の側面ブラシ4を示す要部平面図である。
【図4】実施例の側面ブラシ4を示す要部正面図である。
【図5】実施例の制御系を示すブロック図である。
【図6】実施例の側面ブラシによる洗浄動作を示す説明図である。
【図7】実施例の車体後端洗浄動作を示す説明図である。
【図8】従来の車体後端洗浄動作を示す説明図である。
【符号の説明】
【0024】
1 洗車機本体
4L・4R 側面ブラシ
10 エンコーダ
22L・22R エンコーダ
30 洗車制御部
30a 左側面位置検出部
30b 右側面位置検出部
30c 中心位置検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の側面ブラシを備え、側面ブラシを車体形状に沿って開閉しつつブラッシングして、自動車車体の側面および前後面を洗浄する洗車機において、
洗車機本体に対する自動車の側面位置を検出する手段と、該検出手段で与える側面位置に基づいて自動車の幅方向の中心位置を検出する手段と、前記側面ブラシにより車体側面のブラッシングから引き続いて車体前後面をブラッシングする際に、前記検出した車体中心位置から右もしくは左に所定距離ずらした位置に側面ブラシを閉じてから、そのずらした位置と逆方向の車体中心位置から左もしくは右に所定距離ずらした位置まで側面ブラシを閉じたまま移動させた後、側面ブラシを開くよう制御する手段とを備え、
前記側面ブラシを閉じた時の左右ブラシの接合面をナンバープレートの範囲内に設定したことを特徴とする洗車機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate