洞道内空気の移動を考慮したケーブル導体温度推定方法、ケーブル導体温度推定システム、及びケーブル導体温度推定プログラム
【課題】 地中の洞道内に敷設された電力ケーブルの導体温度の変化を、洞道内空気の移動による影響を考慮して推定可能なシステム等を提供することを課題とする。
【解決手段】 ケーブル4が敷設された洞道1を横断する複数の解析面A〜Dを設定し、これらの解析面A〜D間で洞道内空気の移動に伴う空気温度の上流側から下流側への受け渡し処理を行いながら、これらの解析面A〜Dに熱伝導方程式に基づく有限要素法を適用して一定周期ごとに温度解析することにより、洞道内空気の移動による冷却効果を加味してケーブル導体温度の変化をシミュレーションする。
【解決手段】 ケーブル4が敷設された洞道1を横断する複数の解析面A〜Dを設定し、これらの解析面A〜D間で洞道内空気の移動に伴う空気温度の上流側から下流側への受け渡し処理を行いながら、これらの解析面A〜Dに熱伝導方程式に基づく有限要素法を適用して一定周期ごとに温度解析することにより、洞道内空気の移動による冷却効果を加味してケーブル導体温度の変化をシミュレーションする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に配設される電力ケーブルの導体温度、特にケーブルを配設した洞道内における空気流の移動を考慮してケーブル導体温度を有限要素法により推定する方法及びシステム、並びにその方法やシステムをコンピュータを用いて実現させるプログラムに関し、有限要素法を用いた温度解析技術の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
地中に配設される電力ケーブルには許容導体温度が設定されており、目標とする電流を通電したときに、導体温度がこの許容温度を超えないように、ケーブルの種類やサイズ等の仕様或いはケーブル管路の構成等を設計する必要があり、その目安として、日本電線工業会より電力ケーブル許容電流計算マニュアル(JCS168号E)が提供されている。
【0003】
しかし、このマニュアルでは、管路の周囲の土壌の熱容量や熱伝導率等の熱定数が安全サイドに設定された固定値とされており、そのため、導体温度の計算値が実際より高い値となって、徒に通電電流を制限したり、必要以上にケーブルをサイズアップするなどの無駄を生じていた。
【0004】
このような問題に対し、近年、電力ケーブルの効率的運用等を目的として、導体温度のより高精度な推定が試みられており、その一環として、ケーブル管路に隣接して埋設された空管路内の温度と、これらの管路の周辺の土壌温度及び土壌熱定数とを測定し、これらの実測データを電力ケーブル許容電流計算マニュアルに代入してケーブル導体温度を算出するようにした発明が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
この発明によれば、電力ケーブルを設置した管路周辺の土壌の温度や熱定数として従来より実際に近い値が採用されることになり、ケーブル導体温度がより精度よく推定されることになる。
【0006】
また、空管路内の温度や管路周辺における土壌の温度や熱定数等の実測に変え、通電電流による発熱量を算出すると共に、その発熱量と予め設定したケーブル管路やその周辺の土壌の熱定数等に基づいて、特定地点におけるケーブル導体温度を有限要素法を用いてシミュレーションすることが試みられており、その例として、本件出願人が先に特許出願した発明がある(特許文献2参照)。
【0007】
この発明によれば、土壌温度等の実測を要することなく、ケーブル敷設計画の段階で、ケーブル導体温度をその経時変化を含めてシミュレーションすることが可能となるが、特に、この特許文献2の発明では、当該地点における気象データを利用して地表面における熱収支量を算出し、これを有限要素解析のためのデータとして用いることにより、ケーブル導体温度の経時変化を、1日の間の時間による変化や1年の間の季節による変化等を含めて、一層精度よくシミュレーションすることが可能となる。
【0008】
さらに、本件出願人は、前記特許文献2の発明のバージョンアップとして、ケーブルに冷却水管路を並設した場合の冷却効果を加味してケーブル導体温度をシミュレーションする発明を提案したところである(特願2004−218894)。
【0009】
【特許文献1】特開2001−165781号公報
【特許文献2】特開2004−112964号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、前記の背景技術として開示したものは、いずれも電力ケーブルを収納した管路を地中に直接埋設した場合を想定したものであるが、実際には、周辺の環境等を考慮して一部区間に、或いは電力供給経路の全区間にわたって地中に洞道を設け、この中に電力ケーブル(及び冷却水管路)を配設することがある。この場合、洞道内には自然に或いは強制換気により空気の流れが生じ、これが電力ケーブルに対する冷却作用を果たすことになる。したがって、このように一部区間或いは全区間において電力ケーブルを洞道内に配設する場合には、導体温度のシミュレーションに際しては洞道内空気の移動による冷却効果を考慮しなければならないことになる。
【0011】
そこで、本発明は、電力ケーブルを地中の洞道内に配設した場合の洞道内空気の移動による冷却効果を考慮して導体温度の変化をシミュレーション可能な方法及びシステム、並びにこれをコンピュータを用いて実現するためのプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、本発明は次のように構成したことを特徴とする。
【0013】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、地中の洞道内に敷設された電力ケーブルの導体温度を有限要素法を用いて推定する方法に関するものであって、導体温度に影響するパラメータとして、前記ケーブルの通電電流に対応する発熱量と、ケーブル、洞道内空気及び洞道周辺構成要素の熱定数と、洞道内における空気の移動を考慮して算出した洞道内空気温度とを用い、前記ケーブルの導体温度を計算することを特徴とする。
【0014】
ここで、洞道周辺構成要素としては、地中に洞道を形成するための洞道壁や、その周辺の土壌等がある。
【0015】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の方法において、導体温度に影響するパラメータとして、さらに、洞道内に配設された管路内における冷却水の移動を考慮して算出した冷却水温度を用いることを特徴とする。
【0016】
さらに、請求項3に記載の発明は、前記請求項1又は請求項2に記載の方法において、導体温度に影響するパラメータとして、さらに、解析対象地域の気象データから算出される地表面における熱収支量を用いることを特徴とする。
【0017】
一方、請求項4に記載の発明は、地中の洞道内に敷設された電力ケーブルの導体温度を、洞道を横断する断面を解析面とし、この解析面の所定領域に有限要素法を適用して推定するシステムに関するものであって、ケーブル、洞道内空気及び洞道周辺構成要素の熱定数を記録した熱定数記録手段と、洞道及びその内外の構成を設定する洞道構成設定手段と、ケーブルへの通電電流を設定する通電電流設定手段と、洞道内における空気の移動に関するデータを設定する空気データ設定手段と、前記通電電流設定手段で設定された通電電流に基づいてケーブルの発熱量を算出する発熱量算出手段と、前記空気データ設定手段で設定された空気の移動に関するデータに基づいて洞道内空気温度を算出する空気温度算出手段と、前記洞道構成設定手段で設定された洞道及びケーブルの構成に基づいて、洞道を横断する解析面の所定解析領域を有限要素分割して解析モデルを作成するモデル作成手段と、前記熱定数記録手段に記録されている熱定数を用いて前記解析領域内の各節点についての熱容量マトリクス及び熱伝導マトリクスを作成するマトリクス作成手段と、前記発熱量算出手段及び空気温度算出手段でそれぞれ算出されたケーブルの発熱量及び洞道内空気温度に基づいて前記解析領域内の各節点についての熱荷重ベクトルを作成するベクトル作成手段と、前記マトリクス作成手段及びベクトル作成手段で作成された熱容量マトリクス、熱伝導マトリクス及び熱荷重ベクトルを用い、所定の初期状態から所定時間間隔で解析領域内の各節点温度を計算する節点温度計算手段とを有することを特徴とする。
【0018】
ここで、洞道周辺構成要素としては、地中に洞道を形成するための洞道壁や、その周辺の土壌等がある。そして、前記熱定数記録手段は、ケーブル、洞道内空気及び洞道周辺構成要素の比熱容量や熱伝導率(熱抵抗)等を記録するようになっている。
【0019】
また、洞道構成設定手段は、地中における洞道の位置及びその断面形状や、洞道内に配設されたケーブルの本数、直径、配設位置、さらに洞道周囲の洞道壁やその外側の土層の構成等を設定するようになっており、通電電流設定手段は、各ケーブルへの通電電流やその経時変化等を設定するようになっており、さらに、空気データ設定手段は、換気起動時や停止時における洞道内の風速や、換気スケジュール等を設定するようになっている。
【0020】
そして、請求項5に記載の発明は、前記請求項4に記載のシステムにおいて、洞道の所定区間に有限要素解析のための複数の解析面を設定する解析面設定手段が設けられていると共に、前記空気温度算出手段は、前記区間における空気の移動に対して最も上流側の解析面では洞道内空気温度を所定の温度に設定し、該解析面より下流側の各解析面については、上流側解析面における洞道内空気温度の変化に基づいて順次下流側解析面における洞道内空気温度を算出し、かつ、節点温度算出手段は、洞道内における空気に接する節点については前記空気温度算出手段で算出された洞道内空気温度を用いて、各解析面ごとに解析領域内の各節点温度を計算することを特徴とする。
【0021】
また、請求項6に記載の発明は、地中の洞道内に敷設された電力ケーブルの導体温度を、洞道を横断する断面を解析面とし、この解析面の所定領域に有限要素法を適用して推定するシステム、特に前記洞道内に冷却水管路が設けられている場合に適用されるシステムに関するものであって、ケーブル、洞道内空気、冷却水管路、該管路内の冷却水及び洞道周辺構成要素の熱定数を記録した熱定数記録手段と、洞道及びその内外の構成を設定する洞道構成設定手段と、ケーブルへの通電電流を設定する通電電流設定手段と、洞道内における空気の移動に関するデータを設定する空気データ設定手段と、冷却水管路内における冷却水の移動に関するデータを設定する冷却水データ設定手段と、前記通電電流設定手段で設定された通電電流に基づいてケーブルの発熱量を算出する発熱量算出手段と、前記空気データ設定手段で設定された空気の移動に関するデータに基づいて洞道内空気温度を算出する空気温度算出手段と、前記冷却水データ設定手段で設定された冷却水の移動に関するデータに基づいて冷却水温度を算出する冷却水温度算出手段と、前記洞道構成設定手段で設定された洞道、ケーブル及び冷却水管路の構成に基づいて、洞道を横断する解析面の所定解析領域を有限要素分割して解析モデルを作成するモデル作成手段と、前記熱定数記録手段に記録されている熱定数を用いて前記解析領域内の各節点についての熱容量マトリクス及び熱伝導マトリクスを作成するマトリクス作成手段と、前記発熱量算出手段、空気温度算出手段及び冷却水温度算出手段でそれぞれ算出されたケーブルの発熱量、洞道内空気温度及び冷却水温度に基づいて前記解析領域内の各節点についての熱荷重ベクトルを作成するベクトル作成手段と、前記マトリクス作成手段及びベクトル作成手段で作成された熱容量マトリクス、熱伝導マトリクス及び熱荷重ベクトルを用い、所定の初期状態から所定時間間隔で解析領域内の各節点温度を計算する節点温度計算手段とを有することを特徴とする。
【0022】
ここで、洞道構成設定手段は、地中における洞道の位置及びその断面形状や、洞道内に配設されたケーブル及び冷却水管路の本数、直径、配設位置、さらに洞道周囲の洞道壁やその外側の土層の構成等を記録するようになっており、また、冷却データ設定手段は、冷却水供給時の流速又は流量、冷却起動、停止条件等を設定するようになっている。なお、通電電流設定手段及び空気データ設定手段については、前記請求項4に記載の発明と同様である。
【0023】
そして、請求項7に記載の発明は、前記請求項6に記載のシステムにおいて、冷却水管路が設けられた洞道の所定区間に有限要素解析のための複数の解析面を設定する解析面設定手段が設けられていると共に、前記空気温度算出手段は、前記区間における空気の移動に対して最も上流側の解析面では洞道内空気温度を所定の温度に設定し、該解析面より下流側の各解析面については、上流側解析面における洞道内空気温度の変化に基づいて順次下流側解析面における洞道内空気温度を算出し、前記冷却水温度算出手段は、冷却水入口近傍の解析面における管路断面では冷却水温度を所定の入口温度に設定し、各解析面に位置する他の管路断面については、その上流側断面における冷却水温度の変化に基づいて順次下流側の断面における冷却水温度を算出し、かつ、節点温度算出手段は、洞道内における空気に接する節点については前記空気温度算出手段で算出された洞道内空気温度を用いて、冷却水管路内面の節点については前記冷却水温度算出手段で算出された冷却水温度を用いて、各解析面ごとに解析領域内の各節点温度を計算することを特徴とする。
【0024】
そして、請求項8に記載の発明は、前記請求項4から請求項7のいずれかに記載のシステムにおいて、各地域各時期の気象データを記録した気象データ記録手段と、指定された解析対象地域及び時期の気象データを前記気象データ記録手段から読み出し、その気象データに基づいて地表面の熱収支量を算出する熱収支量算出手段とが備えられ、ベクトル作成手段は、前記熱収支量算出手段で算出された地表面の熱収支量を用いて熱荷重ベクトルを作成することを特徴とする。
【0025】
また、請求項9に記載の発明は、地中の洞道内に敷設された電力ケーブルの導体温度を、洞道を横断する断面を解析面とし、この解析面の所定領域に有限要素法を適用して推定するプログラムに関するものであって、コンピュータを、ケーブル、洞道内空気及び洞道周辺構成要素の熱定数を記録する熱定数記録手段、洞道及びその内外の構成を設定する洞道構成設定手段、ケーブルへの通電電流を設定する通電電流設定手段、洞道内における空気の移動に関するデータを設定する空気データ設定手段、前記通電電流設定手段で設定された通電電流に基づいてケーブルの発熱量を算出する発熱量算出手段、前記空気データ設定手段で設定された空気の移動に関するデータに基づいて洞道内空気温度を算出する空気温度算出手段、前記洞道構成設定手段で設定された洞道及びケーブルの構成に基づいて、洞道を横断する解析面の所定解析領域を有限要素分割して解析モデルを作成するモデル作成手段、前記熱定数記録手段に記録されている熱定数を用いて前記解析対象領域内の各節点についての熱容量マトリクス及び熱伝導マトリクスを作成するマトリクス作成手段、前記発熱量算出手段及び空気温度算出手段でそれぞれ算出されたケーブルの発熱量及び洞道内空気温度に基づいて前記解析領域内の各節点についての熱荷重ベクトルを作成するベクトル作成手段、並びに、前記マトリクス作成手段及びベクトル作成手段で作成された熱容量マトリクス、熱伝導マトリクス及び熱荷重ベクトルを用い、所定の初期状態から所定時間間隔で解析領域内の各節点温度を計算する節点温度計算手段として機能させることを特徴とする。
【0026】
そして、請求項10に記載の発明は、前記請求項9に記載のプログラムにおいて、コンピュータを、洞道の所定区間に有限要素解析のための複数の解析面を設定する解析面設定手段として機能させると共に、前記空気温度算出手段として機能させるときは、前記区間における空気の移動に対して最も上流側の解析面では洞道内空気温度を所定の温度に設定し、該解析面より下流側の各解析面については、上流側解析面における洞道内空気温度の変化に基づいて順次下流側解析面における洞道内空気温度を算出するように機能させ、かつ、節点温度算出手段として機能させるときは、洞道内における空気に接する節点については前記空気温度算出手段で算出された洞道内空気温度を用いて、各解析面ごとに解析領域内の各節点温度を計算するように機能させることを特徴とする。
【0027】
また、請求項11に記載の発明は、地中の洞道内に敷設された電力ケーブルの導体温度を、洞道を横断する断面を解析面とし、この解析面の所定領域に有限要素法を適用して推定するプログラム、特に前記洞道内に冷却水管路が設けられている場合に用いられるプログラムに関するものであって、コンピュータを、ケーブル、洞道内空気、冷却水管路、該管路内の冷却水及び洞道周辺構成要素の熱定数を記録した熱定数記録手段、洞道及びその内外の構成を設定する洞道構成設定手段と、ケーブルへの通電電流を設定する通電電流設定手段、洞道内における空気の移動に関するデータを設定する空気データ設定手段、冷却水管路内における冷却水の移動に関するデータを設定する冷却水データ設定手段、前記通電電流設定手段で設定された通電電流に基づいてケーブルの発熱量を算出する発熱量算出手段、前記空気データ設定手段で設定された空気の移動に関するデータに基づいて洞道内空気温度を算出する空気温度算出手段、前記冷却水データ設定手段で設定された冷却水の移動に関するデータに基づいて冷却水温度を算出する冷却水温度算出手段、前記洞道構成設定手段で設定された洞道、ケーブル及び冷却水管路の構成に基づいて、洞道を横断する解析面の所定解析領域を有限要素分割して解析モデルを作成するモデル作成手段、前記熱定数記録手段に記録されている熱定数を用いて前記解析対象領域内の各節点についての熱容量マトリクス及び熱伝導マトリクスを作成するマトリクス作成手段、前記発熱量算出手段、空気温度算出手段及び冷却水温度算出手段でそれぞれ算出されたケーブルの発熱量、洞道内空気温度及び冷却水温度に基づいて前記解析領域内の各節点についての熱荷重ベクトルを作成するベクトル作成手段、並びに、前記マトリクス作成手段及びベクトル作成手段で作成された熱容量マトリクス、熱伝導マトリクス及び熱荷重ベクトルを用い、所定の初期状態から所定時間間隔で解析領域内の各節点温度を計算する節点温度計算手段として機能させることを特徴とする。
【0028】
そして、請求項12に記載の発明は、前記請求項11に記載のプログラムにおいて、コンピュータを、冷却水管路が設けられた洞道の所定区間に有限要素解析のための複数の解析面を設定する解析面設定手段として機能させると共に、前記空気温度算出手段として機能させるときは、前記区間における空気の移動に対して最も上流側の解析面では洞道内空気温度を所定の温度に設定し、該解析面より下流側の各解析面については、上流側解析面における洞道内空気温度の変化に基づいて順次下流側解析面における洞道内空気温度を算出するように機能させ、前記冷却水温度算出手段として機能させるときは、冷却水入口近傍の解析面における管路断面では冷却水温度を所定の入口温度に設定し、各解析面に位置する他の管路断面については、その上流側断面における冷却水温度の変化に基づいて順次下流側の断面における冷却水温度を算出するように機能させ、かつ、節点温度算出手段として機能させるときは、洞道内における空気に接する節点については前記空気温度算出手段で算出された洞道内空気温度を用いて、冷却水管路内面の節点については前記冷却水温度算出手段で算出された冷却水温度を用いて、各解析面ごとに解析領域内の各節点温度を計算するように機能させることを特徴とする。
【0029】
そして、請求項13に記載の発明は、前記請求項9から請求項12のいずれかに記載のプログラムにおいて、コンピュータを、各地域各時期の気象データを記録した気象データ記録手段、及び、指定された解析対象地域及び時期の気象データを前記気象データ記録手段から読み出し、その気象データに基づいて地表面の熱収支量を算出する熱収支量算出手段として機能させると共に、ベクトル作成手段として機能させるときは、前記熱収支量算出手段で算出された地表面の熱収支量を用いて熱荷重ベクトルを作成するように機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
前記の構成により、本願の各請求項に記載した発明によれば、それぞれ次のような効果が得られる。
【0031】
まず、本願の請求項1に記載の方法によれば、地中の洞道内に敷設された電力ケーブルの導体温度が、洞道内における空気の移動による冷却効果を含めて計算されることになる。したがって、例えば長距離に及ぶケーブル配設区間の全区間或いは一部区間について、ケーブルを洞道内に配設した場合の該ケーブル導体温度の変化のシミュレーションが精度よく行われることになる。その結果、必要以上に通電電流を抑制したり、ケーブルを必要以上にサイズアップしたりする無駄が回避され、電力輸送の効率の向上に寄与することになる。
【0032】
また、請求項2に記載の方法によれば、前記のような洞道内空気による冷却効果に加えて、洞道内に配設した冷却水管路による冷却効果も含めて、ケーブル導体温度の変化がシミュレーションされることになる。したがって、冷却水管路の配設設計を効果的に行うことが可能となる。
【0033】
さらに、請求項3の方法によれば、ケーブルの導体温度推定のためのパラメータとして、各地域の気象データに基づいて算出される地表面での熱収支量が考慮されるから、シミュレーションが一層現実に近い状態で行われることになり、電力輸送の効率化にさらに有効に寄与することになる。
【0034】
一方、請求項4に記載のシステムによれば、前記請求項1に記載の方法がコンピュータの中央処理装置、記録装置及び入出力装置等の各種ハードウェア資源を用いて具体的に実行されることになり、洞道内の空気の移動による冷却効果を反映したケーブル導体温度のシミュレーションをコンピュータを用いて行うことが可能となって、最適な電力ケーブル敷設の設計が容易にかつ迅速に行われることになる。
【0035】
そして、請求項5に記載のシステムによれば、複数の解析面を設定し、隣接解析面間で空気の移動による洞道内空気温度の受け渡しを行いながら、各解析面における導体温度のシミュレーションを行うから、空気の移動による冷却効果が正しく反映されて、シミュレーションが精度よく行われることになる。
【0036】
また、請求項6に記載のシステムによれば、請求項4のシステムの効果に加えて、洞道内に冷却水管路を配設した場合におけるケーブル導体温度の変化がコンピュータを用いてシミュレーションされることになり、冷却水管路の効果的な配設設計が容易にかつ迅速に行われることになる。
【0037】
そして、請求項7に記載のシステムによれば、複数の解析面を設定し、隣接解析面間で、空気の移動による洞道内空気温度の受け渡し、及び冷却水の移動による冷却水温度の受け渡しを行いながら、各解析面における導体温度のシミュレーションを行うから、空気及び冷却水の移動による冷却効果が正しく反映されて、シミュレーションが精度よく行われることになる。
【0038】
さらに、請求項8に記載のシステムによれば、前記請求項3に記載の方法と同様に、地表面における熱収支量をも含めてケーブル導体温度が計算されるので、シミュレーションがより現実に近い状態で行われることになる。
【0039】
そして、請求項9〜請求項13に記載のプログラムによれば、これらをコンピュータに搭載することにより、請求項4〜請求項8に記載のシステムと同様のシステムが構成されることになり、これらのシステムと同様の効果が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明に係るケーブル導体温度推定システムについてのものであるが、このシステムで用いられる方法及びそのプログラムは、本発明に係るケーブル導体温度推定方法及びケーブル導体温度推定用プログラムの実施の形態を構成する。
【0041】
また、以下の実施の形態に係るシステム及びプログラムは、ケーブルを洞道内に配設した洞道モデルのほかに、地中に埋設した埋設モデルについてのシミュレーションも可能とされている。ここで、本システムでシミュレーション可能な各モデルの構成について説明する。
【0042】
図1は、洞道モデルの構成を示すもので、洞道1は地中に設けられ、その周囲が壁面2によって囲われ、さらにその外側は土壌3で覆われている。そして、内部には電力ケーブル4が敷設されている。また、この洞道1には、地上から空気を取り入れるための吸気装置5a、地上に空気を排出するための排気装置5b及び洞道1内で空気を強制移動させる送風装置5c等が配設され、内部の強制換気が可能とされている。
【0043】
さらに、この洞道モデルにおいては、必要に応じて、洞道1内に冷却水管路6が配設される。この冷却水管路6は、図2に示すように、冷却水供給装置7から洞道1内を一方向に延びた後、所定位置でUターンして再び冷却水供給装置7に戻るように配設され、冷却水管路6の往路(以下、「Go管」という)の入口に前記供給装置7から送り出された一定温度(入口温度)の冷却水が、周囲の熱により温度上昇しながら、復路(以下、「Re管」という)によって冷却水供給装置7に戻され、該装置7によって前記入口温度に冷却された後、再びGo管の入口に供給されるように構成されている。
【0044】
一方、埋設モデルは、図3に示すように、電力ケーブル4を収納した管路8を直接地中に埋設した構成とされ、ケーブル4の周囲には管路8と土壌3とが存在することになる。また、必要に応じて、このケーブル管路8に沿わせて冷却水管路6が埋設される。この冷却水管路6は、前記洞道モデルの場合と同様、冷却水供給装置(図示せず)から延びるGo管と、Uターンして再び冷却水供給装置に戻るRe管とで構成され、Go管の入口に一定温度の冷却水が供給され、周辺を冷却することによって高温となった冷却水が前記冷却水供給装置に戻されるようになっている。
【0045】
なお、本実施の形態では、洞道モデル及び埋設モデルのそれぞれにおいて、冷却水管路6を配設しないモデルについてもケーブル導体温度のシミュレーションが可能とされている。
【0046】
次に、前記のようなモデルの設定ないしケーブル導体温度の解析を行うシステムの構成を説明する。
【0047】
図4に示すように、このシステムを構成するコンピュータ10は、その中心となる中央処理装置11と、各種条件の設定やシステムの制御等に用いられる入力装置12と、CD−ROM等の記録媒体20からプログラムや各種データ等の情報を読み込む読込み装置13と、該装置13によって読み込んだプログラムやデータ、さらには計算結果等を記録する記録装置14と、入力画面や計算結果等を表示する表示装置15と、計算結果等を印刷する印刷装置16とを有する。また、前記中央処理装置11には、処理中に一時的にデータを格納するメモリ17が付設されている。
【0048】
前記記録装置14には、この実施の形態では、土壌熱定数データベースDB1、洞道壁熱定数データベースDB2、管路壁熱定数データベースDB3、流体熱定数データベースDB4、管路寸法データベースDB5、ケーブルデータベースDB6、空気物性データベースDB7、冷却水物性データベースDB8、地温データベースDB9、気象データベースDB10、負荷率データベースDB11が記録されるようになっている。
【0049】
これらのデータベースの構成を順に説明すると、まず、土壌熱定数データベースDB1は、図5に示すように、解析対象地域の土壌の種類ごとに、その名前、質量密度、比熱、及び熱抵抗を記録するようになっている。
【0050】
また、洞道壁熱定数データベースDB2は、図6に示すように、洞道の周壁を構成する材料ごとに、その名前、質量密度、比熱、及び熱抵抗を記録するようになっている。
【0051】
また、管路壁熱定数データベースDB3は、図7に示すように、冷却水管路及び埋設モードで用いられるケーブル収納用管路について、材質ごとに、その名前、質量密度、比熱、及び熱抵抗を記録するようになっている。
【0052】
また、流体熱定数データベースDB4は、図8に示すように、静止状態及び流動状態の冷却水、静止状態及び流動状態の洞道内空気、及び埋設モデルで用いられるケーブル収納用管路内の空気について、それぞれ、質量密度、比熱、及び熱抵抗を記録するようになっている。
【0053】
また、管路寸法データベースDB5は、図9に示すように、冷却水管路及び埋設モードで用いられるケーブル収納用管路の各仕様ごとに、その仕様の名称と外径及び内径とを記録するようになっている。
【0054】
また、ケーブルデータベースDB6は、図10に示すように、各種類の電力ケーブルについて、適用電圧、種類名、心数、及びサイズをインデックスとして、線路を構成する導体、絶縁体及びシースについての外径、比熱容量、及び固有熱抵抗、並びに単位長さあたりの電気抵抗値であるRACの各値をそれぞれ記録するようになっている。
【0055】
また、空気物性データベースDB7は、図11に示すように、洞道内の空気の動粘性係数、プラントル数及び熱伝導率を温度ごとに記録するようになっている。
【0056】
同様に、冷却水物性データベースDB8は、図12に示すように、冷却水の動粘性係数、プラントル数及び熱伝導率を温度ごとに記録するようになっている。
【0057】
また、地温データベースDB9は、図13に東京のものを例にとって示すように、各地域ごとに、地表からの各深さの地温を月別に記録するようになっている。
【0058】
また、気象データベースDB10は、図14に東京のものを例にとって示すように、各地域ごとに、1年間の1時間ごとの気温、湿度、風速、日射量及び降水量の各データを記録するようになっている。
【0059】
さらに、負荷率データベースDB11は、図15に示すように、例えば斜線で示す8月の平日の14時等の1年中で最も電気使用量が多くなる時点の通電量を1としたときの各時点の通電量の比率を、月別、曜日別(日曜、平日、土曜)、及び時間別に示したデータを記録するようになっている。
【0060】
そして、前記記録装置14に記録されたプログラムは、中央処理装置11を作動させ、前記各データベースDB1〜DB11に記録されているデータと、入力装置12によって設定されるデータ等に基づき、洞道モデルか埋設モデルかに応じ、有限要素法を用いて、ケーブルを横断する解析面の所定解析領域内の各部の温度を所定の時間間隔で計算し、洞道内空気の移動や冷却水の移動による影響を反映したケーブル導体温度の変化をシミュレーションするように動作する。
【0061】
ここで、このプログラムによる有限要素法を用いたシミュレーションの理論的背景ないし計算方法について説明する。
【0062】
このシミュレーションは、次式、
KX(∂2θ/∂x2)+KY(∂2θ/∂y2)+Q
=ρC(∂θ/∂t) (1)
で示される2次元の熱伝導方程式を基礎とし、この式(1)を、洞道、ケーブル、冷却水管路等を地表面を含めて横断する所定の解析面について適用する。
【0063】
この式(1)は、解析面上の点(x,y)における各時刻tの温度θを示すものであり、KX、KYはX、Y方向の熱伝導係数、Qは単位時間、単位体積(面積)あたりの熱収支や内部発熱等に由来する熱量、ρは質量密度、Cは比熱である。
【0064】
この式(1)を、有限要素法の適用のためにマトリックス表示すると、
[C]・[dθ/dt]+[K]・[θ]=[Q] (2)
となる。
【0065】
ここで、[C]は熱容量マトリクス、[K]は熱伝導マトリクス、[θ]は節点温度ベクトル、[dθ/dt]は節点温度の時間微分ベクトル、[Q]は熱荷重ベクトルを示し、図16に示すように、解析面における所定の解析領域を多数の要素に有限要素分割して各節点に番号1…i…j…を付したときに、熱容量マトリックス[C]を構成する項Cijは、節点i,j間の比熱容量(比熱×質量密度:J/cm3・°K)とその間における体積に関連した値の積を示し、熱伝導マトリックス[K]を構成する項Kijは、節点i,j間の熱伝導率(J/sec・cm3・°K)とその間の体積に関連した値との積を示す。
【0066】
また、熱荷重ベクトル[Q]を構成する項Qjは、地表面上の節点の場合は、その節点によって代表される領域の地表面での単位面積、単位時間あたりの熱収支量q1(J/sec・cm2)とその領域の面積(解析面上の長さ×単位長さ)の積を、地中内の節点については、その節点によって代表される領域における単位体積、単位時間あたりの内部発熱量q2(J/sec・cm3)とその領域の体積(解析面上の面積×単位長さ)との積をそれぞれ示す。
【0067】
また、洞道内の空気接触面、即ち洞道壁内面、洞道内に配設されたケーブル及び冷却水管路の表面の節点についての熱荷重ベクトル[Q]の項Qjは、その節点によって代表される領域での単位面積、単位時間当たりの伝熱量q3(J/sec・cm2)とその領域の面積(解析面上の長さ×単位長さ)との積を示す。また、洞道内部については、洞道内空気を代表する単一の節点が設定されるが、その節点については、洞道内空気の単位面積、単位時間当たりの伝熱量q4(J/sec・cm2)と洞道内の空間断面積(洞道断面積からケーブル及び冷却水管路の断面積を差し引いた値)との積を示す。
【0068】
同様に、冷却水管路内面の節点についての熱荷重ベクトル[Q]の項Qjは、その節点によって代表される管路内面の領域での単位面積、単位時間当たりの伝熱量q5(J/sec・cm2)とその領域の面積(解析面上の長さ×単位長さ)との積を示す。また、冷却水管路内部については、冷却水を代表する単一の節点が設定されるが、その節点については、冷却水の単位面積、単位時間当たりの伝熱量q6(J/sec・cm2)と冷却水管路の断面積との積を示す。
【0069】
なお、節点が地表面上や洞道内或いは冷却管路内等になく、かつ内部発熱を伴わない領域にある場合には、Qj=0となる。
【0070】
そして、実際のシミュレーションに際しては、前記式(2)に基づき、各節点の時刻tの温度θtからΔt時間後の時刻t′(=t+Δt)における温度θt′を、次式、
(2[C]t″/Δt+[K]t″)[θ]t′=
(2[C]t″/Δt−[K]t″)[θ]t +2[Q]t″ (3)
に従って求めることになる。
【0071】
ここで、時刻t″は時刻tとt′の中間の時刻(=(t+Δt)/2)であって、この時刻t″について前記式(2)を示した式、
[C]t″・[dθ/dt]t″+[K]t″・[θ]t″=[Q]t″
に、
[θ]t″=([θ]t+[θ]t′)/2
[dθ/dt]t″=([θ]t′−[θ]t)/Δt
の関係を代入することにより、前記式(3)が得られる。
【0072】
そして、この式(3)において、熱容量マトリックス[C]t″を構成する各項(Cij)t″に各要素の比熱容量から求めた値を与え、熱伝導マトリックス[K]t″を構成する各項(Kij)t″に各要素の熱伝導率から求めた値を与えると共に、熱荷重ベクトル[Q]t″の各項(Qj)t″の値として、地表面上の節点、洞道内空気接触面や冷却管路内面の節点には、その節点によって代表される領域での時刻t″における伝熱量を与え、洞道内空気や冷却水を代表する節点には、該空気及び冷却水の時刻t″における伝熱量を与え、さらに、導体内部の節点には、その節点によって代表される領域内での時刻t″における発熱量を与える。
【0073】
また、節点温度ベクトルの初期値[θ]t=0としては、各節点の位置(深さ)や時期等に応じた地温を各項の値とするベクトルを与え、また、節点温度の時間微分ベクトルの初期値[dθ/dt]t=0として、各項の値が0のベクトルを与え、その状態から任意の期間、所定の解析周期Δtごとに節点温度ベクトル[θ]を順次算出する。
【0074】
なお、洞道内空気及び冷却水を代表する節点については、節点温度ベクトルの初期値は、定常状態(洞道内空気及び冷却水が停止してから十分時間がたった状態)から解析を開始する場合は、当該深さや時期等における地温と同じ温度とされるが、洞道内空気や冷却水が流れている状態或いは流れ始めたときから解析を開始する場合等は、別途設定された温度を初期値とする。
【0075】
また、各要素の比熱容量及び熱伝導率が時間の関数として与えられるときは、前記熱容量マトリクス[C]t″の各項の値、及び熱伝導マトリックス[K]t″の各項の値は、それぞれの時間に関する関数から求められるが、時間依存性がないときは一定値が用いられる。
【0076】
一方、このシミュレーションにおいて、熱荷重ベクトル[Q]の項Qjの値として与えられる地表面の節点における熱収支量q1(J/sec・cm2)、導体内部の節点における内部発熱量q2(J/sec・cm3)、洞道内空気接触面の節点における伝熱量q3(J/sec・cm2)、洞道内空気を代表する節点の伝熱量q4(J/sec・cm2)、冷却水管路内面の節点における伝熱量q5(J/sec・cm2)及び冷却水を代表する節点の伝熱量q6(J/sec・cm2)は、例えば次のように計算される。
【0077】
まず、地表面の単位時間、単位面積あたりの熱収支量q1を、
q1=日射吸収量(q11)
+大気から地表面への輻射量(q12)
−地表面から大気への輻射量(q13)
−地表面から大気への伝熱量(q14) (4)
と定義する。
【0078】
ここで、日射吸収量q11は、
q11=日射量×(1−地表面反射率)
である。
【0079】
また、大気から地表面への輻射量q12及び地表面から大気への輻射量q13は、σをステファンボルツマン定数(J/sec・cm2・°K4)とし、ε12、ε13を輻射率(無次元)、Tを大気温度(°K)、T′を地表面における当該要素の温度(°K)として、
q12=σ×ε12×T4
q13=σ×ε13×T′4
で示される。
【0080】
その場合に、大気から地表面への輻射量q12については、輻射率ε12は、例えば、
降水量なし、かつ湿度50%未満で、ε12=0.650
降水量なし、かつ湿度50%以上で、ε12=0.850
降水量ありで、 ε12=0.925
と設定する。
【0081】
また、地表面から大気への輻射量q13については、輻射率ε13は、降水量及び湿度に関係なく、
ε13=0.965
と設定する。
【0082】
さらに、地表面から大気への伝熱量q14は、
q14=ρ′×Cp×D×(T′−T)
と定義する。
【0083】
ここで、ρ′は空気密度(g/cm3)、Cpは空気の定圧比熱(J/g・°K)、T′は地表面における当該要素の温度(°K)、Tは大気温度(°K)であり、また、Dは外部拡散係数(cm/sec)であって、Uを風速として、例えば、
D=0.0027+0.031×U
と設定する。
【0084】
なお、前記の日射量、大気温度(気温)、湿度、降水量、風速は気象データベースDB10から読み出される。また、地表面反射率はプログラムに組み込まれた一定値が用いられるが、例えば土壌熱定数データベースDB1に地表面を構成する土壌ごとに反射率を記録しておき、それを読み出して用いるようにしてもよい。
【0085】
そして、式(4)で示される地表面でのトータルの熱収支量q1に各節点によって代表される地表面の領域の面積を掛けた値が、前述の式(3)における熱荷重ベクトル[Q]の地表面に位置する節点についての項Qjの値として用いられる。
【0086】
また、ケーブル導体における内部発熱量q2については、
q2=(I2×RAC)/S (5)
と定義する。
【0087】
この式(5)の分子は、ケーブルの単位長さあたりの発熱量(J/sec・cm)を示し、これをケーブルの導体部分の断面積Sで割った値が、導体の単位時間、単位体積あたりの内部発熱量(J/sec・cm3)となる。
【0088】
ここで、Iは電流(A)、RACはケーブルの単位長さあたりの抵抗(Ω/cm)であり、RACはケーブルデータベースDB6から求められる。また、電流Iは、別途設定された値と負荷率データベースDB11とを用いて求められる。
【0089】
そして、式(5)で示される内部発熱量q2にケーブル導体内の節点によって代表される領域の体積を掛けた値が、前述の式(3)における熱荷重ベクトル[Q]の当該節点についての項Qjの値として用いられる。
【0090】
さらに、洞道壁内面やケーブル及び冷却水管路表面等の洞道内空気接触面の節点の伝熱量q3、及び洞道内空気の伝熱量q4は、前記空気接触面と空気との間の熱伝達によるものとして求められ、図17に示すように、洞道内空気を代表する節点の温度をTa、空気接触面における各節点の温度をTfx(x=1、2、…、i、j、…、n、…)とすれば、
空気接触面における各節点の伝熱量q3は、
q3=α(Tfx−Ta) (6)
で示され、洞道内空気を代表する節点の伝熱量q4は、
q4=αΣ(Tfx−Ta) (7)
で示される。
【0091】
同様に、冷却水管路内面の伝熱量q5及び冷却水の伝熱量q6も、管路内面と冷却水との間の熱伝達によるものとして求められ、図18に示すように、冷却水を代表する節点の温度をTw、管路内面における各節点の温度をTgx(x=1、2、…)とすれば、
冷却水管路内面の各節点の伝熱量q5は、
q5=α′(Tgx−Tw) (8)
で示され、冷却水を代表する節点の伝熱量q6は、
q6=α′Σ(Tgx−Tw) (9)
で示される。
【0092】
そして、これらの値q3〜q6に当該節点で代表される領域の面積を掛けた値が、前述の式(3)で、熱荷重ベクトル[Q]の当該節点についての項Qjの値として用いられる。
【0093】
なお、前記式(6)、(7)におけるαは、洞道内における空気接触面の各節点と空気との間の平均熱伝達率であり、前記式(8)、(9)におけるα′は、冷却水管路内面の各節点と冷却水との間の平均熱伝達率であって、
α、α′=Nu・λ/d(単位:J/sec・cm2・℃)
で示される。
【0094】
ここで、λは空気又は冷却水の熱伝導率(J/sec・℃)、dは、洞道については、洞道内の空間断面積と等しい面積の円形の直径(等価径)(cm)であり、冷却水管路については、その管路内径(cm)である。
【0095】
また、Nuはヌセルト数であって、流速0の場合、即ち洞道内空気もしくは冷却水が停止しているときは、例えば、定常状態の層流熱伝達の式から、
Nu=3.66
とされ、空気や冷却水が移動している場合には、例えば、管内の乱流熱伝達の式、
Nu=0.023・Re0.8・Pr0.4
が用いられる。なお、Reはレイノルズ数、Prはプラントル数で、それぞれ
Re=ωd/ν
Pr=ν/a
であり、ωは洞道内空気又は冷却水の平均流速(cm/sec)、νは洞道内空気又は冷却水の動粘性係数(cm2/sec)、aは洞道内空気又は冷却水の温度伝導率(cm2/sec)である。
【0096】
したがって、洞道内空気又は冷却水が停止しているときは、前記平均熱伝達率は、
α、α′=3.66・λ/d
移動しているときは、
α、α′=0.023・(ωd/ν)0.8・(ν/a)0.4・λ/d
となる。
【0097】
そして、洞道内空気及び冷却水の熱伝導率λ、動粘性係数ν及びプラントル数Pr(=ν/a)は、図11、図12の空気物性データベースDB7、冷却水物性データベースDB8から、そのときの洞道内空気もしくは冷却水の温度に応じて読み取られる。
【0098】
また、径dは、洞道については予め設定されたデータから算出され、冷却水管路の場合は図9の管路寸法データベースDB5から読み取られる。さらに、平均流速ωは、洞道内空気については解析時に設定される風速から、冷却水については径dと予め設定された冷却水の流量とから求められる。
【0099】
ここで、図19に、各種条件で洞道内に空気を流したときのレイノルズ数Remin(空気温度:60℃)、Remax(空気温度:−20℃)を示すが、いずれも乱流条件の2320を超え、これらの条件での流れは乱流であることが示されている。
【0100】
同様に、図20に、冷却水管路として一般に使用される各内径の管路に、流量を異ならせて、0℃及び60℃の冷却水をそれぞれ流したときのレイノルズ数Remin(冷却水温度:0℃)、Remax(冷却水温度:60℃)を示すが、冷却水についても、いずれも乱流条件の2320を超え、これらの条件での流れは乱流であることが示されている。
【0101】
一方、前記式(6)、(7)における洞道内空気温度Ta、及び前記式(8)、(9)における冷却水温度Twは、詳細は後述するが、おおよそ次のような方法で求められる。
【0102】
つまり、ケーブル及び冷却水管路が配設された洞道を横断する複数の解析面を設定し、洞道内空気、及び冷却水の初期値を与えた上で、各解析面ごとに、ケーブルの内部発熱量や地表面における熱収支量などを考慮し、前記各式に基づいて、所定の時間間隔(解析周期)で有限要素解析を行う。これにより、各解析面の解析領域内の他の全ての節点と同時に、洞道内空気及び冷却水を代表する節点の温度Ta、Twが計算される。
【0103】
その場合に、洞道内では、強制換気或いは自然発生による空気の移動が生じている場合があり、また、冷却起動時には管路内を冷却水が移動するので、それらの流体の移動に対応させて、所定の解析周期ごとに、上流側の解析面から下流側の解析面へ、洞道内空気温度Ta及び冷却水温度Twを受け渡す処理を行う。
【0104】
この洞道内空気温度Ta及び冷却水温度Twの受け渡し処理は、洞道内空気又は冷却水の少なくとも一方が移動しているときは、まず、その移動によって空気又は冷却水が隣接解析面間を移動する時間のうちの最も長い時間、即ち全ての隣接解析面間で流体の移動が終了する時間(最長移動時間)を予め算出しておく。
【0105】
そして、解析開始時や流体が移動を開始した時点から前記最長移動時間が経過した直後の解析周期で、各解析面ごとに個別に全節点温度の計算をした後に、各解析面において、流体がその解析面から下流側の解析面まで流れるのに要する時間の間に温度がどのように変化したかを補間処理を行いながら算出し、その算出した温度を下流側の解析面における空気温度Ta及び冷却水温度Twとする。
【0106】
このようにして全ての解析面間で流体の移動が終了する解析周期ごとに受け渡し処理を行って得られた空気温度Taや冷却水温度Twを式(6)、(7)の空気温度、式(8)、(9)の冷却水温度として用いながら解析を続行することにより、洞道内空気の移動や冷却水の移動による冷却効果を反映しながら、各解析面におけるケーブル導体温度の変化がシミュレーションされることになる。
【0107】
以上のシミュレーション方法は、具体的には図4に示すコンピュータ10の記録装置14に記録媒体20から読み込まれて記録されたプログラム及び各種データベースDB1〜DB11、並びに入力装置12によって入力された各種データ等に基づき、中央処理装置11が実行することになり、以下、これらのシミュレーション動作をフローチャートやコンピュータ10の表示装置15に表示される画面を用いて説明する。
【0108】
まず、コンピュータ10上で当該システムを起動させると、表示装置15に、図21に示すモデル選択画面W1が表示され、この画面W1上で、解析しようとするモデルが洞道モデルか埋設モデルかの選択を行う。その場合に、冷却水管路が配設されているか否かの選択も併せて行う。
【0109】
これにより、図22のフローチャートに従って、解析対象モデルが、冷却水管路が配設されている冷却洞道モデル、冷却水管路が配設されていない非冷却洞道モデル、冷却水管路が配設されている冷却埋設モデル、冷却水管路が配設されていない非冷却埋設モデルのいずれであるかが決定される。
【0110】
ここで、以下の説明では、洞道内空気及び冷却水の両者について温度の受け渡し処理が行われる冷却洞道モデルを選択したものとして説明する。
【0111】
図23は、この冷却洞道モデルのメインルーチンのフローチャートを示し、まず、ステップS1で、コンピュータ10の表示装置15に表示される図24の画面W2上で、冷却水管路が配設されている区間に、該管路やケーブルを含めて洞道を横断する複数の解析面を設定する。その場合に、図25に示すように、冷却水供給装置7に最も近い位置に最初の解析面A(位置0.00)を設定し、管路6の折り返し点に向かって順次後続の解析面B、C、Dの位置を入力する。
【0112】
次に、メインルーチンのステップS2で、解析面上における洞道、ケーブル、冷却水管路の配置や洞道周辺の構成等、洞道構成の設定を行う。この設定は、図26に示す画面W3上で、次のように行われる。
【0113】
まず、解析面の番号、及び所定の解析領域の基準点に対する洞道基準点の位置(X座標)を入力した後、洞道のサイズとして、幅、高さ、壁厚、及び深さ(解析領域の基準点に対する洞道基準点のY座標)を入力する。
【0114】
次に、洞道周囲の土層について、その幅及び深さを設定する。この幅及び深さで示される領域が、当該解析面における解析領域となる。その場合に、自動設定チェックボックスをオンにすれば、この解析領域が洞道サイズ等に基づいて自動的に設定されるようになっている。また、土壌の種類が異なる土層が複数ある場合には、各層ごとに層厚を入力することになる(最下層の層圧は、上層の層圧と深さとから算出される)。
【0115】
また、ケーブルについては、線路数と、各線路についての1相布設タイプや3条俵積タイプ等の構成と、洞道内における配設位置(X座標、Y座標)と、各線路を構成するケーブルの電圧、種類、及びサイズ(芯数)等を設定する。このとき、ケーブルデータベースDB6から設定したケーブルについての各種データが読み出され、後の有限要素分割や解析に用いられる。図例の場合、線路数3で、各線路3条俵積タイプの場合を示している (図28参照)。
【0116】
さらに、冷却水管路については、管路の数、各管路についてのGo管及びRe管の中心位置、管路タイプを設定する。そして、管路タイプを設定することにより、その内、外径が管路寸法データベースDB5から読み出されて表示されるようになっている。
【0117】
これにより、解析領域における洞道に関する構成、及びその周囲の洞道壁や土層に関する構成、洞道内のケーブル及び冷却水管路の構成等、洞道及びその内外の構成が確定されることになり、その領域を有限要素分割してなる有限要素解析モデルが自動作成され、モデル全体が、図27に示すように画面W4に表示され、その要部が、図28に示すように画面W5に表示される。
【0118】
次に、メインルーチンのステップS3として、図29の画面W6上で土壌データを設定する。つまり、この画面W6に表示される入力用フォームには、記録装置14に記録されている土壌熱定数データベースDB1から読み出された土壌の種類がプルダウンメニューに表示されるので、その中から今回の解析対象となる土壌の種類を指定する。このとき、前記土壌熱定数データベースDB1から読み出されたその土壌の質量密度、比熱、熱抵抗等の熱定数が表示される。なお、土層が複数設定されている場合には、各土層ごとに種類を指定することになる。
【0119】
次に、メインルーチンのステップS4として、図30に示す画面W7上で洞道データを設定する。つまり、この画面W7に表示される入力用フォームには、記録装置14に記録されている洞道壁熱定数データベースDB2から読み出された洞道壁材料の種類がプルダウンメニューに表示されるので、その中から今回の解析対象となる洞道壁材料の種類を指定する。このとき、前記洞道壁熱定数データベースDB2から読み出されたその洞道壁材料の質量密度、比熱、熱抵抗等の熱定数が表示される。
【0120】
以上のようにして、画面W2で設定した複数の解析面の全てに対して、各種の設定を繰り返し行うことになるが、洞道及びその内外の構成要素の位置や形状等が全解析面で同一である場合には、画面W2において全解析面同一形状のチェックボックスをオンにすることにより、最初の解析面Aについて設定した構成がそのまま他の解析面いついても設定されることになる。
【0121】
そして、ステップS5で、全解析面に対する洞道及びその内外の構成を設定すれば、次に、ステップS6で、換気条件等の空気の移動に関するデータを設定する。この設定は、図31に示す画面W8上で行われ、まず、換気の起動及び停止のタイムスケジュールを設定し、また、換気起動時の風速、停止時の風速をそれぞれ設定する。
【0122】
その場合に、換気停止時については、完全に空気の移動が停止する場合と、自然に流れが発生する場合とがあるので、それらの場合の風速(0又は0より大きな値)を入力し、後者の場合には、換気起動時の流れの方向と同方向か逆方向かを指定する。また、洞道内空気の物性として、流動空気か静止空気かを指定し、さらに、洞道内空気の初期温度を設定する。なお、この初期温度については、気温データを参照して自動設定することもできるようになっている。
【0123】
次に、メインルーチンのステップS7で、冷却起動条件等の冷却水の移動に関するデータを設定する。この設定は、図32に示す画面W9を用いて行われ、冷却水の起動条件をケーブル通電電流かケーブル表面温度のいずれにするかを選択し、通電電流を選択したときには、冷却を開始する電流値と冷却を終了する電流値とを設定し、表面温度を選択したときは、冷却を開始する温度と冷却を終了する温度とを設定する。図例の場合、ケーブル表面温度の解析値が60℃を超えたときに冷却水を起動し、40℃まで低下すれば冷却水を停止することを示している。
【0124】
また、この画面W9では、冷却水の供給温度(入口温度)及び供給流量と、冷却水管路の折り返し部において、最終解析面上におけるGo管とRe管とで冷却水温度を同じにするか、Go管からRe管への温度の受け渡しを考慮するかを選択し、後者の場合は、最終解析面上におけるGo管からRe管までの冷却水の到達時間を入力するようになっている。
【0125】
以上の冷却水データの設定は、冷却水管路が複数ある場合には各管路ごとに行い、ステップS8で全管路についての設定の終了を判定するまで繰り返し実行する。
【0126】
さらに、メインルーチンのステップS9で、図33に示す画面W10を用いて通電条件の設定を行う。この画面W10には、線路番号ごとに、先に設定した線路構成等が表示される。そこで、番号が表示された線路について、ケーブルに通電する最大電流を入力すると共に、年上昇を考慮するか否かを選択し、考慮する場合には年上昇率を入力する。
【0127】
また、メインルーチンのステップS10で、図34に示す画面W11を用いて、解析対象地域に関するデータ、つまり、シミュレーションを行う地域とシミュレーションを開始する月とを設定する。これは、シミュレーション開始時に解析面の全領域の節点温度の初期値として、地温データベースDB9から読み出した当該地域各深さのシミュレーション開始月の地温を与え、かつ、気象データベースDB10から解析対象地域の各日時の気象データを読み出すためである。なお、解析開始等同時に空気や冷却水が移動を開始し、或いはこれらが移動している状態で解析を開始するときは、画面W8、W9で予め設定されている洞道内空気の初期温度及び冷却水の入口温度が用いられる。
【0128】
さらに、メインルーチンのステップS11で、図35に示す画面W12を用いて解析条件を設定する。即ち、この画面W12上で、今回のシミュレーションが初期解析であるかリスタート解析であるかを選択する。初期解析の場合は、解析期間を年数または終了時刻で指定すると共に、解析時間間隔の単位、例えば時間、日、月等と、計算結果の出力時間間隔を設定する。ここで、出力時間間隔は、解析周期Δtごとに行われる全解析の結果の出力か、別途入力する時間間隔かのいずれかを選択する。
【0129】
一方、リスタート解析の場合は、前記の設定に加えて、リスタートの基礎となるプロジェクトの名称及びそのプロジェクトを格納している記録装置14内の場所を指定すると共に、基礎となるプロジェクトの継続か中間時点からのリスタートかのいずれかを選択し、後者の場合は、リスタートする時点を指定する。また、リスタートに際して通電条件を変更する場合は、図33に示す画面W10で、通電電流の条件を再設定することになる。
【0130】
以上のようにして、すべての設定が終了し、設定されたデータがメモリ17に記録されると、メインルーチンのステップS12として、コンピュータ10の中央処理装置11がケーブルの導体温度シミュレーションのための解析処理を実行する。
【0131】
この処理動作については、改めて詳述するが、その解析処理が終了すれば、ステップS13として、その結果が例えば図36〜図38に示すように、コンピュータ10の表示装置15に表示され、また、要求に応じて印刷装置16によってプリントアウトされる。
【0132】
ここで、図36の画面W13は、解析開始後、所定時間経過時における洞道周辺の温度分布を示すものであり、図37の画面W14は、解析開始時からの洞道内空気温度の変化を示すものであり、図38の画面W15は、解析開始時からのケーブル導体温度の変化を示すものである。
【0133】
次に、前記メインルーチンのステップS12の解析処理実行時の動作を図39以下のサブルーチンのフローチャートに従って説明する。ここで、以下の説明では、図25に示すように、洞道及び冷却水管路を横断する4つの解析面A〜Dが設定されているものとする。
【0134】
まず、図39のフローチャートのステップS21で、メモリ17に記録され或いは記録装置14に記録されているデータベースから必要なデータを読み込み、次いでステップS22で、現時刻tに初期値0をセットする。
【0135】
そして、ステップS23で、現時点が予め図31の画面W8で設定した換気スケジュール等にてらして換気起動条件が成立しているか否かを判定し、成立している場合は、ステップS24で、風速を前記画面W8で設定した換気起動時の値にセットし、換気条件が成立していない場合は、ステップS25で、同じく画面W8で設定した換気停止時の値にセットする。
【0136】
次に、ステップS26で、解析時間間隔(解析周期)Δtを設定すると共に、各解析面間での空気移動時間及び冷却水移動時間のうちの最も長い最長移動時間Δtcを算出する。これらの移動時間は、空気については、各解析面間の距離と風速とに基づいて、冷却水については、各解析面間の距離と流量と管路断面積とに基づいて、それぞれ算出される。
【0137】
また、ステップS27で、現在、洞道内空気の風速が0より大という条件と、予め図32の画面W9で設定した冷却起動条件の少なくとも一方が成立しているか否かを判定する。そして、少なくとも一方の条件が成立しているとき、即ち洞道内空気又は冷却水の少なくとも一方が移動しているときは、ステップS28で、現在の時刻tを流体の温度受渡し基準時刻tpにセットする。なお、前記両条件とも成立していないとき、即ち洞道内空気及び冷却水の両者とも移動していないときは、この基準時刻tpのセットは行われない。
【0138】
そして、ステップS29で、時刻tに解析周期Δtを加算し、これを現時刻tとすると共に、ステップS30で、その時刻tが解析終了時刻に達しているか否かを判定する。
【0139】
解析開始当初は解析終了時刻に達していないから、次にステップS31を実行することになり、各解析面のそれぞれについて、前回の解析時刻(t-Δt)での解析領域内の全節点の温度から、現時刻tにおける全節点の温度を計算する。
【0140】
最初の解析時は、各節点の温度は初期値、即ち、洞道内空気を代表する節点については、図31に画面W8で設定した初期温度又は地温データベースDB9から読み取った深さ等に応じた地温、冷却水を代表する節点については、図32の画面W9で設定した入口温度又は深さ等に応じた地温、その他の節点については深さ等に応じた地温であり、これらの値から現在の温度を求めることになる。
【0141】
この前回解析時の値(又は初期値)から時間Δt後の現時刻tにおける各節点の温度を求める計算は、前述した式(1)〜(5)で示す理論に基き、図40にフローチャートを示すサブルーチンによって次のように行われる。ここで、熱容量マトリクス[C]及び熱伝導マトリクス[K]は温度及び時間に対する依存性を有しないものとし、前述の式(3)における[C]t″、[K]t″の各項の値は、いずれも各要素の熱定数を記録したデータベースDB1、DB2、DB3、DB4、DB6等から読み取られる値に基づいて算出される固定値とする。
【0142】
まず、ステップS41で、画面W4や画面W5に示すように有限要素分割された解析モデルについて、前記データベースから読み出した各要素の質量密度、比熱、及び比熱容量等のデータを用い、全解析対象領域にわたる各節点間の熱容量を算出し、これを各項の値とする熱容量マトリクス[C]を作成する。
【0143】
また、ステップS42で、同じく前記データベースから読み出した各要素の熱抵抗、固有熱抵抗等のデータを用い、全解析領域にわたる各節点間の熱伝導率を算出し、これを各項の値とする熱伝導マトリクス[K]を作成する。
【0144】
さらに、ステップS43で、当該時点における熱荷重ベクトル[Q]を作成する。この熱荷重ベクトル[Q]の各項のうち、地表面に位置する節点に対応する項の値q1は、気象データベースDB10から読み出した該当する地域の当該時点の気象データを用い、前述の式(4)に従って算出される熱収支量に基づいて設定される。
【0145】
また、ケーブルの導体内に位置する節点に対応する項の値q2は、負荷率データベースDB11から読み出した該当する月、曜日、時間の負荷率と図33の画面W10上で設定した最大電流及び年上昇率とから当該時点の通電電流を算出すると共に、その電流値と、ケーブルデータベースDB6から読み出した該当するケーブルのRACのデータとを用いて、前述の式(5)から算出される内部発熱量に基づいて設定される。
【0146】
さらに、洞道内における空気接触面の節点及び洞道内空気を代表する節点に対応する項の値q3、q4は、前回の解析によって得られた空気接触面の各接点の温度Tfx(x=1、2…)と空気温度Taとに基づき、前述の式(6)、(7)からそれぞれ求められ、同様に、冷却水管路内面の節点及び冷却水を代表する節点に対応する項の値q5、q6は、前回の解析によって得られた管路内面の各接点の温度Tgx(x=1、2…)と冷却水温度Twとに基づき、前述の式(8)、(9)からそれぞれ求められる。
【0147】
また、前記以外の土層中等に位置する節点に対応する項の値は0とされ、これにより、現時点における熱荷重ベクトル[Q]の各項の値が設定される。そして、この熱荷重ベクトル[Q]を前述の式(3)における[Q]t″とする。
【0148】
以上のようにして、熱容量マトリクス[C]、熱伝導マトリクス[K]、及び熱荷重ベクトル[Q]t″が作成されると、次にステップS44で、前述の式(3)にこれらを代入し、時刻tでの節点温度ベクトル[θ]tから、時間Δt後の節点温度ベクトル[θ]t′を求める。
【0149】
つまり、温度ベクトル[θ]tの各項の値として、まず、前述の初期値を代入することにより、節点温度ベクトルの初期値[θ]t=0を作成し、また、各項の値が0の節点温度の時間微分ベクトルの初期値[dθ/dt]t=0を作成すれば、これらを基礎としてΔt時間後の温度ベクトル[θ]t′が順次計算されることになる。そして、ステップS45で、このΔt時間後の温度ベクトル[θ]t′をメモリ17に記録する。
【0150】
このようにして、図38のフローチャートのステップS31で、各解析面A〜Dのそれぞれについて、解析領域内の全節点の温度が周期Δtごとに計算されることになる。
【0151】
次に、ステップS32で、現在、洞道内空気の風速が0より大という条件と、予め設定した冷却起動条件の少なくとも一方が成立しているか否かを判定する。そして、両条件とも成立していないとき、即ち洞道内空気及び冷却水の両者とも移動していないときは、ステップS33以下の温度の受け渡し処理を実行することなく、ステップS23〜S31を繰り返し実行する。つまり、この場合は、毎解析周期Δtごとに、各解析面A〜Dのそれぞれについて、全節点の温度を他の解析面から独立して順次求めることになる。
【0152】
一方、前記両条件の少なくとも一方が成立しているとき、即ち洞道内空気又は冷却水の少なくとも一方が移動しているときは、ステップS33で、現時刻tが、ステップS28でセットした温度受渡し基準時刻TpにステップS26で算出した流体の最長移動時間Δtcを加えた時刻(tp+Δtc)を超えているか否かを判定する。そして、この時刻(tp+Δtc)を超えていなければ、ステップS29〜S31を繰り返し実行し、毎解析周期Δtごとに、ステップS31により、各解析面A〜Dについて、前回解析時の各節点温度から現時刻tの節点温度を順次計算する。
【0153】
そして、現時刻tが前記温度受渡し基準時刻tpに最長移動時間Δtcを加えた時刻(tp+Δtc)を超えた時点で、流体の温度受け渡し処理を行う。
【0154】
即ち、まずステップS34で洞道内空気が移動中か否かを判定し、移動中の場合は、ステップS35で上流側の解析面から下流側の解析面への空気温度の受け渡し処理を実行し、また、ステップS36で冷却水が移動中か否かを判定し、移動中の場合は、ステップS37で同じく上流側の解析面から下流側の解析面への冷却水温度の受け渡し処理を実行する。この場合は、洞道内空気の風速が0より大の条件又は冷却起動条件の少なくとも一方が成立しているので、ステップS35の空気温度の受け渡し処理、又はステップS37の冷却水温度の受け渡し処理の少なくとも一方は必ず実行されることになる。
【0155】
以上のようにして、洞道内空気及び冷却水の両者とも移動していないときは、毎解析周期ごとに各解析面ごとに独立した節点温度の計算を行うと共に、洞道内空気又は冷却水の少なくとも一方が移動しているときは、その移動開始時にセットした温度受渡し基準時刻tpから、移動している流体の各解析面間での最長移動時間Δtcが経過するまでは、前記の場合と同様に、毎解析周期ごとに各解析面ごとに独立した節点温度の計算を行う。そして、基準時刻tpから最長移動時間Δtcが経過した直後の解析周期、即ち移動している流体が全ての解析面間で移動を終了した周期で、洞道内空気又は冷却水の少なくとも一方についての温度の受け渡し処理を行う。
【0156】
そして、この受け渡し処理が終了した時点で、なおも洞道内空気又は冷却水の少なくとも一方が移動しているときは、ステップS28で、その時刻tを改めて温度受渡し基準時刻tpに設定した上で、その時刻から流体の最長移動時間Δtcが経過した直後の解析周期で、再度受け渡し処理を行うことになる。このようにして、流体が移動している間は、全解析面間でその移動が終了した周期ごとに移動した流体の温度の受け渡し処理を行う。これにより、流体の移動に伴う温度の移動を反映して各解析面における節点温度が計算されることになる。
【0157】
次に、前記ステップS35の洞道内空気温度の受け渡し処理、及びステップS37の冷却水温度の受け渡し処理の具体的動作を説明する。
【0158】
まず、洞道内空気温度の受け渡し処理を説明すると、この処理は図41にフローチャート示すサブルーチンにより行われ、まず、ステップS51で、最も上流側の解析面Aにおける空気温度TAを予め設定された初期温度Taoにセットする。
【0159】
そして、この初期温度Taoに基づいて、ステップS52で解析面Bの空気温度TBを算出することになるが、この算出は、図42にフローチャートを示すサブルーチンに従って行われ、まず、ステップS61で、解析面A、B間の空気の移動時間Δtabを予め計算して記録してあるメモリ17から読み出し、次いで、ステップS62で、この移動時間Δtabが、iΔtよりも大きく、(i+1)Δtよりも小さくなるiを求める。つまり、空気が移動開始した時刻tpからカウントして、何回目と何回目の解析周期の間に時間Δtabが経過するかを求めるのである。
【0160】
そして、ステップS63で、基準時刻tpからカウントしてi回目の解析周期(時刻:tp+iΔt)で計算した空気温度TAiと、(i+1)回目の解析周期(時刻:tp+(i+1)Δt)で計算した空気温度TA(i+1)とをメモリ17から読み出し、図43に示すように、これらの値を線形補間して、解析面Aの時刻(tp+Δtab)における空気温度を算出し、これを解析面Bにおける温度受け渡し処理実行周期の空気温度TBとする。
【0161】
今、例えば解析面A、B間の空気の移動時間Δtabが、解析周期Δtの倍数で表示したときに、0.6Δtであるとすると、i=0となり、この場合、空気移動開始時刻(基準時刻)tpの周期で解析面Aで計算された空気温度TAと、次の周期(時刻:tp+Δt)で計算された空気温度TAとを、6:4の内分比で補間した値が今回の受け渡し周期での解析面Bの空気温度TBとなる。
【0162】
以下、同様にして、図41のフローチャートのステップS53では、解析面B、C間の空気移動時間Δtbcについて、ステップS54では、解析面C、D間の空気の移動時間Δtcdについて、それぞれ図42のフローチャートに示す処理と同様の処理を行い、解析面C、Dの受け渡し処理後の空気温度TC、TDを算出する。
【0163】
このようにして、受け渡し周期ごとに、上流側の解析面における空気温度が、次の解析面まで空気が移動するまでに要した時間の間に何度に変化したかを算出し、その算出した温度を、当該受け渡し周期で、次の解析面において計算した温度に置き換えて、その解析面の空気温度とするのである。
【0164】
なお、以上の説明は洞道内空気が解析面A側から解析面Dに向かって移動している場合であるが、解析面D側から解析面Aに向かって移動する場合の空気温度の受け渡し処理は図44のフローチャートに従って行われる。
【0165】
即ち、まず、ステップS71で、最も上流側の解析面Dにおける空気温度TDを予め設定された初期温度Taoにセットする。そして、この初期温度Taoに基づいて、ステップS72で解析面Cの空気温度TCを算出する。
【0166】
この温度TCの算出は、図45にフローチャートを示すサブルーチンに従って行われ、まず、ステップS81で、解析面D、C間の空気の移動時間Δtdcを予め計算して記録してあるメモリ17から読み出し、次いで、ステップS82で、この移動時間Δtdcが、iΔtよりも大きく、(i+1)Δtよりも小さくなるiを求める。
【0167】
そして、ステップS83で、解析面Dの基準時刻tpからカウントしてi回目の解析周期(時刻:tp+iΔt)で計算した空気温度TDiと、(i+1)回目の解析周期(時刻:tp+(i+1)Δt)で計算した空気温度TD(i+1)とをメモリ17から読み出し、前述の場合と同様に、これらの値を線形補間して、解析面Dにおける時刻(tp+Δtdc)における空気温度を算出し、これを、解析面Cにおける温度受け渡し処理実行周期の空気温度TCとする。
【0168】
そして、以下、同様にして、図44のフローチャートのステップS73では、解析面C、B間の空気移動時間Δtcbについて、ステップS74では、解析面B、A間の空気の移動時間Δtbaについて、それぞれ図45のフローチャートに示す処理と同様の処理を行い、解析面B、Aの受け渡し処理後の空気温度TB、TAを算出する。これにより、図39のフローチャートのステップS35の洞道内空気温度の受け渡し処理が終了することになる。
【0169】
一方、冷却水温度の受け渡し処理もほぼ同様に行われるが、この処理は図46にフローチャート示すサブルーチンにより行われ、まず、ステップS91で、解析面AのGo管の温度として、入口温度Twoを代入する。
【0170】
次いで、ステップS92で、解析面BのGo管の温度を算出することになるが、この算出は、図47に示すフローチャートに従って次のように行われる。
【0171】
即ち、ステップS101で、予め計算してメモリ17に記録してある解析面AのGo管から解析面BのGo管まで冷却水が移動する時間Δt′abを読み出し、次いで、ステップS102で、この移動時間Δt′abが、iΔtよりも大きく、(i+1)Δtよりも小さくなるiを求める。つまり、冷却水起動時からカウントして、何回目と何回目の解析周期の間に時間Δ′tabが経過するかを求めるのである。
【0172】
今、例えば、Δt′ab=1.6Δtであるとすると、i=1であって、この移動時間Δt′abは、温度受渡し基準時刻tpの後、1回目の解析周期と2回目の解析周期との間で経過することになる。
【0173】
そして、前記iを求めた後、次にステップS103で、解析面AのGo管のi回目の解析周期(時刻:tp+iΔt)における温度TAGiと、(i+1)回目の解析周期(時刻:tp+(i+1)Δt)における温度TAG(i+1)とをメモリ17から読み出し、これらの値を移動時間Δt′abの値に応じて線形補間し、これによって得られた値を、計算によって得られた値に代えて、解析面BのGo管温度TGBとする。
【0174】
図46のフローチャートのステップS93、S94の解析面CのGo管温度TCGの算出、解析面DのGo管温度TDGの算出も、図47にフローチャートを示すサブルーチンと同様のサブルーチンによって行われ、それぞれ上流側の解析面B、CにおけるGo管温度をそれぞれの解析面間での移動時間Δt′bc、Δt′cdに応じて補間した値を、当該温度受け渡し周期における解析面CのGo管温度TCG、解析面DのGo管温度TDGとする。
【0175】
また、図46のフローチャートのステップS95の冷却水管路の折り返し点における温度の受け渡し、即ち、解析面DにおけるGo管からRe管への温度の受け渡しは、図48にフローチャートを示すサブルーチンにより、次のように行われる。
【0176】
まず、ステップS111で、図32の画面W9で冷却水路について、最終解析面DでのGo管からRe管への冷却水温度の受け渡しをどのように設定したかを判定し、Go管温度とRe管温度とを同一にするものと設定した場合には、ステップS112で、解析面Cの温度から線形補間により求めた解析面DのGo管温TDGを、解析面DのRe管温度TDRとしても採用する。
【0177】
これに対して、最終解析面DのGo管からRe管への冷却水の移動にある程度の時間Δt′ddを要すると設定した場合は、ステップS113で、前記移動時間Δt′ddを読み出し、ステップS114で、その時間Δt′ddが、iΔtよりも大きく、(i+1)Δtよりも小さくなるiを求める。
【0178】
そして、このiを求めた後、次にステップS114で、解析面DのGo管のi回目の解析周期(時刻:tp+iΔt)における温度TDGiと、(i+1)回目の解析周期(時刻:tp+(i+1)Δt)における温度TDG(i+1)とをメモリ17から読み出し、これらの値を移動時間Δt′ddの値に応じて線形補間し、これによって得られた値を解析面DのRe管温度TDRとする。
【0179】
さらに、図46のフローチャートのステップS96で、解析面CのRe管の温度が、図49に示すフローチャートに従って次のように行われる。
【0180】
即ち、ステップS121で、メモリ17から、解析面DのRe管から解析面CのRe管まで冷却水が移動する時間Δt′dcを読み出し、次いで、ステップS122で、この移動時間Δt′dcが、iΔtよりも大きく、(i+1)Δtよりも小さくなるiを求める。
【0181】
そして、次にステップS123で、解析面DのRe管のi回目の解析周期(時刻:tp+iΔt)における温度TDRiと、(i+1)回目の解析周期(時刻:tp+(i+1)Δt)における温度TDR(i+1)とをメモリ17から読み出し、これらの値を移動時間Δt′cdの値に応じて線形補間して、解析面DのRe管の時刻(tp+Δt′dc)における温度を算出し、これを解析面CのRe管の温度受け渡し処理実行周期の冷却水温度TCRとする。
【0182】
さらに、図46のフローチャートのステップS97、S98による解析面BのRe管温度TBRの算出、及び解析面AのRe管温度TARの算出も、図47にフローチャートを示すサブルーチンと同様のサブルーチンによって行われ、それぞれ上流側の解析面C、BにおけるRe管温度をそれぞれの解析面間での移動時間Δt′cb、Δt′baに応じて補間した値を、当該温度受け渡し周期における解析面BのRe管温度TBR、及び解析面AのRe管温度TARとする。
【0183】
以上のようにして、図39のフローチャートのステップS37の冷却水温度の受け渡し処理が終了することになる。
【0184】
ここで、前記の空気温度の受け渡し処理及び冷却水温度の受け渡し処理を含むシミュレーション動作の全体を具体的に説明する。
【0185】
今、図25に示すように、ケーブル4が配設された洞道1内に冷却水供給装置7から延びて、Uターンした後、該冷却水供給装置7に戻る冷却水管路6が配設されているものとし、この冷却水管路6が配設された区間に洞道1を横断する4つの解析面A〜Dを設定したものとする。
【0186】
そして、まず、各隣接解析面間での空気移動時間Δtab、Δtbc、Δtcd、及び各解析面間での冷却水移動時間Δt′ab、Δt′bc、Δt′cd、Δt′dd、Δt′dc、Δt′cb、Δt′baのうちの最も長い最長移動時間Δtcを、空気については、各解析面間の距離と風速とに基づいて、冷却水については、各解析面間の距離と流量と管路断面積とに基づいて、それぞれ算出する。
【0187】
ここで、洞道内空気は解析面Aから解析面Dに向けて流れるものとする。さらに、冷却水移動時間のうち、Δt′ab、Δt′bc、Δt′cdはGo管の移動時間、Δt′dc、Δt′cb、Δt′baはRe管の移動時間を示すが、同一解析面間の移動時間はGo管とRe管とで等しいものとする。また、Δt′ddは、Go管で解析面Dを通過してからUターンして、Re管で解析面Dを通過するまでの時間である。
【0188】
そして、これらの移動時間を解析周期Δtの何倍かという形式で示したときに、例えば次のようになったものとする。
【0189】
(換気起動時の空気移動時間)
Δtab=0.4Δt
Δtbc=0.2Δt
Δtcd=0.6Δt
(換気停止時の空気移動時間)
Δtab=3.2Δt
Δtbc=1.6Δt
Δtcd=4.8Δt
(冷却起動時の冷却水移動時間)
Δt′ab=Δt′ba=1.6Δt
Δt′bc=Δt′cb=0.8Δt
Δt′cd=Δt′dc=2.4Δt
Δt′dd=1.2Δt
なお、換気停止時の風速が0に設定されている場合は、換気停止時の空気移動時間の算出は行われない。
【0190】
前記の例の場合、最長移動時間Δtcは、それぞれの状態で次のようになる。
【0191】
換気起動、冷却起動時:2.4Δt(冷却水の解析面C、D間の移動時間)
換気起動、冷却停止時:0.6Δt(空気の解析面C、D間の移動時間)
換気停止、冷却起動時:4.8Δt(空気の解析面C、D間の移動時間)
換気停止、冷却停止時:4.8Δt(空気の解析面C、D間の移動時間)
なお、換気停止時の風速が0の場合、冷却起動時の最長移動時間Δtcは、冷却水の最長移動時間2.4Δtとなり、冷却停止時は、温度の受け渡し処理は行われない。
【0192】
また、換気スケジュール、及び冷却起動条件、停止条件の成立により、例えば図50のタイムチャートに示すようなスケジュールで換気及び冷却が起動、停止するものとする。
【0193】
この場合の各解析面における空気温度及び冷却水温度の計算結果は図51に示す通りであるが、まず、解析開始時に、換気起動状態にあるから、解析面Aの洞道内空気温度TA0に空気温度の初期温度Taoがセットされる。また、解析面B〜Dの空気温度TB0〜TD0は、当該深さ等に応じた地温に等しい値となる。また、各解析面A〜DのGo管及びRe管の冷却水温度TAG0〜TDG0、TDR0〜TAR0については、冷却水は移動していないから、当該深さ等に応じた地温に等しい値がそれぞれセットされる。
【0194】
そして、解析開始時(時刻t=0)から3回目の解析周期(時刻t=3Δt)までの換気のみ起動した状態では、最長移動時間Δtcは、空気が解析面C、D間を移動する時間Δtcd=0.6Δtであるから、毎解析周期ごとに空気温度の受け渡し処理が行われることになる。
【0195】
つまり、1回目の解析周期Δtでは、解析面Aの空気温度TA1に前記初期温度Taoがセットされると共に、解析面Bの温度TB1については、計算された温度に変えて、解析面Aにおける最初の温度TA0(Tao)と計算によって得られた時刻Δtの温度TA1とを、Δtab=0.4Δtであるから、4:6の内分比で補間した値TA0−1とされる。
【0196】
同様に、解析面Cの温度TC1は、解析面Bにおける最初の温度TB0と計算によって得られた時刻Δtの温度TB1とを、Δtbc=0.2Δtであるから、2:8の内分比で補間した値TB0−1とされ、解析面Dの温度TD1は、解析面Cにおける最初の温度TC0と計算によって得られた時刻Δtの温度TC1とを、Δtcd=0.6Δtであるから、6:4の内分比で補間した値TC0−1とされる。
【0197】
また、次の解析周期2Δtでは、解析面Aの空気温度TA2には、再び前記初期温度Taoがセットされると共に、解析面Bの温度TB2については、計算された温度に変えて、解析面Aにおける1回目の解析周期で計算された温度TA1と今回の解析周期で計算された温度TA2とを、4:6の内分比で補間した値TA1−2とされる。
【0198】
同様に、解析面Cの温度TC1は、計算された温度に変えて、解析面Bにおける1回目の解析周期で計算された温度TB1と今回の解析周期で計算された温度TB2とを、2:8の内分比で補間した値、TB1−2とされ、解析面Dの温度TD2は、解析面Cにおける1回目の解析周期で計算された温度TC1と今回の解析周期で計算さ温度TC2とを、6:4の内分比で補間した値TC1−2とされる。
【0199】
さらに、3回目の解析周期3Δtにおいても同様に、解析面Aの空気温度TA2には初期温度Taoがセットされると共に、解析面B〜Dの温度TB3、TC3、TD3については、それぞれ計算された温度に変えて、上流側の解析面A〜Cにおいて2回目と3回目の解析周期で計算された温度をそれぞれの移動時間に応じた内分比で補間した値TA2-3、TB2−3、TC2−3とされる。
【0200】
なお、以上の解析開始から3回目の解析周期までの間は、冷却水は移動していないから、図51に示すように、各解析面のGo管温度TAG1〜TDG1、TAG2〜TDG2、TAG3〜TDG3、及びRe管温度TDR1〜TAR1、TDR2〜TAR2、TDR3〜TAR3は、それぞれの解析面で独立して計算された値がセットされる。
【0201】
次に、3回目の解析周期3Δtから9回目の解析周期9Δtまでは、換気が起動した状態で冷却も起動し、洞道内空気及び冷却水が共に移動することになる。この場合、まず、時刻3Δtで、解析面Aにおける冷却水のGo管温度TAG3に冷却水の入口温度Twoがセットされる。
【0202】
そして、この場合の流体の最長移動時間Δtcは、解析面C、D間の冷却水の移動時間Δt′cd(Δt′dc)=2.4Δtであるから、3解析周期ごとに温度の受け渡し処理が行われることになる。
【0203】
したがって、図51に示すように、4回目の解析周期4Δt、5回目の解析周期5Δt、7回目の解析周期7Δt、及び8回目の解析周期8Δtでは、洞道内空気及び冷却水とも、各解析面でそれぞれ独立して計算された温度となる。
【0204】
つまり、4回目の解析周期における各解析面の空気温度TA4〜TD4、冷却水のGo管温度TAG4〜TDG4、Re管温度TDR4〜TAR4、5回目の解析周期における各解析面の空気温度TA5〜TD5、冷却水のGo管温度TAG5〜TDG5、Re管温度TDR5〜TAR5、7回目の解析周期における各解析面の空気温度TA7〜TD7、冷却水のGo管温度TAG7〜TDG7、Re管温度TDR7〜TAR7、及び8回目の解析周期における各解析面の空気温度TA8〜TD8、冷却水のGo管温度TAG8〜TDG8、Re管温度TDR8〜TAR8は、いずれも各解析面で独立して計算された値がそのまま採用される。
【0205】
そして、6回目の周期、及び9回目の解析周期では、それぞれの解析面において温度の受け渡し処理が行われる。
【0206】
つまり、まず、6回目の解析周期では、解析面Aの空気温度TA6については、初期温度Taoがセットされると共に、解析面B〜Dの空気温度TB6、TC6、TD6については、上流側の解析面からの移動時間Δtab、Δtbc、ΔtcdがいずれもΔt未満であるので、上流側の解析面における3回目の解析周期3Δtで得られた受け渡し処理後の温度と、4回目の解析周期で各解析面で計算された温度とをそれぞれの移動時間に応じた内分比で補間した値TA3−4、TB3−4、TC3−4とされる。
【0207】
また、冷却水については、解析面AのGo管温度TAG6には、入口温度Twoがセットされると共に、解析面BのGo管温度TBG6は、Δt′ab=1.6Δtであるから、4回目の解析周期で解析面Aについて計算された温度TAG4と5回目の解析周期で計算された温度TAG5を、6:4の内分比で補間した値TAG4−5となり、解析面CのGo管温度TCG6は、Δt′bc=0.8Δtであるから、3回目の解析周期で解析面Bについて計算された温度TBG3と4回目の解析周期で計算された温度TBG4を、8:2の内分比で補間した値TBG3−4となり、解析面DのGo管温度TDG6は、Δt′cd=2.4Δtであるから、5回目の解析周期で解析面Cについて計算された温度TCG5と6回目の解析周期で計算された温度TCG6を、4:6の内分比で補間した値TCG5−6となる。
【0208】
また、Re管温度については、解析面DのRe管温度TDR6については、Δt′dd=1.2Δtであるから、その上流側の解析面DのGo管について4回目の解析周期で計算された値TDG4と5回目の解析周期で計算された値TDG5とを2:8の内分比で補間した値TDG4−5となる。なお、解析面DのRe管温度TDR6については、予め設定しておくことにより、その上流側の解析面DにおけるGo管温度TDG6と同じ温度にセットする場合もある。
【0209】
以下、解析面C〜AのRe管温度TCR6、TBR6、TAR6についても、同様に、上流側の解析面をそれぞれの移動時間に応じて補間した値TDR5−6(Δt′dc=2.4Δt)、TCR3−4(Δt′cb=0.8Δt)、TBR4−5(Δt′ba=1.6Δt)とされる。
【0210】
そして、9回目の解析周期ついても、6回目の解析周期と全く同様に、解析面Aの空気温度TA9及び冷却水のGo管温度TAG9に初期温度Tao、入口温度Twoがそれぞれセットされると共に、他の解析面については、上流側の解析面における温度を移動時間に応じて補間した値に置き換えられる。
【0211】
さらに、9回目の解析周期9Δtから15回目の解析周期15Δtまでは、冷却が起動し、換気が停止した状態となるが、洞道内には自然の空気の流れが発生しているものとする。
【0212】
そして、この場合の流体の最長移動時間Δtcは、解析面C、D間の換気停止時の空気の移動時間移動時間Δtcd=4.8Δtであるから、5解析周期ごとに温度の受け渡し処理が行われることになる。
【0213】
したがって、図51に示すように、10回目の解析周期10Δt、11回目の解析周期11Δt、12回目の解析周期12Δt、及び13回目の解析周期13Δtでは、洞道内空気及び冷却水とも、各解析面でそれぞれ独立して計算された温度となる。つまり、各解析周期の空気温度TA10〜TD10、TA11〜TD11、TA12〜TD12、TA13〜TD13、冷却水のGo管温度TAG10〜TDG10、TAG11〜TDG11、TAG12〜TDG12、TAG13〜TDG13、及び冷却水のRe管温度TDR10〜TAR10、TDR11〜TAR11、TDR12〜TAR12、TDR13〜TAR13は、いずれも各解析面で独立して計算された値がそのまま採用される。
【0214】
そして、換気が停止してから5回目、即ち最初から14回目の周期14Δtでは、それぞれの解析面において温度の受け渡し処理が行われる。
【0215】
つまり、まず、解析面Aの空気温度TA14については、初期温度Taoがセットされると共に、解析面B〜Dの空気温度TB14、TC14、TD14については、上流側の解析面からの移動時間Δtab、Δtbc、Δtcdに応じて、上流側の解析面で計算された温度を補間した値TA12−13(Δtab=3.2Δt)、TB10−11(Δtbc=1.6Δt)、TC13−14(Δtcd=4.8Δt)とされる。
【0216】
また、冷却水については、解析面AのGo管温度TAG14には、入口温度Twoがセットされると共に、解析面B〜DのGo管温度TBG14、TCG14、TDG14は、上流側の解析面からの移動時間に応じて、上流側の解析面で計算された温度を補間した値TAG12−13(Δt′ab=3.2Δt)、TBG10−11(Δt′bc=1.6Δt)、TDG13−14(Δt′cd=4.8Δt)とされ、同様に、Re管温度TDR14、TCR14、TBR14、TAR14については、TDG10−11(又はTDG14)、TDR13−14、TDCR10−11、TBR12−13とされる。
【0217】
そして、15回目の解析周期15Δtで、冷却も停止されるが、この場合、空気は換気停止時の風速で移動しているから、時刻14Δt以後も、空気温度については、5解析周期ごとに、前記時刻14Δtの場合と同様の受け渡し処理が行われる。この場合、冷却水温度の受け渡し処理は行われない。
【0218】
なお、換気停止時の風速が0の場合は、時刻9Δtから冷却が停止する時刻15Δtまでの間、冷却水についての最長移動時間Δtc(解析面C、D間の冷却水移動時間Δt′cd=2.4Δt)に基づいて、3周期ごとに冷却水の受け渡し処理が行われることになる。この場合、空気温度の受け渡し処理は行われない。そして、冷却も停止する時刻15Δt以後は、空気温度及び冷却水温度のいずれの受け渡し処理も行われず、各解析周期ごとに、各解析面でそれぞれ独立して計算された値が採用される。
【0219】
以上は、図21の画面W1で冷却水管路ありの冷却洞道モデルを選択した場合の冷却洞道モデルについての説明であるが、洞道モデルで冷却水管路なしを選択すれば、図22のフローチャートの非冷却洞道モデルについての解析が開始されることになる。
【0220】
この場合のメインルーチンは、図52に示すフローチャートに従って動作することになるが、図23の冷却洞道モデルのメインルーチンと比較すると、非冷却洞道モデルについてのフローチャートでは、冷却洞道モデルのフローチャートのステップS7、S8の冷却条件の設定ステップが存在しない。
【0221】
そして、この相違に伴い、ステップS132の洞道構成の設定では、図53に画面W16を示すように、冷却水管路の設定が行われず、また、冷却洞道モデルの画面W9による冷却水データの設定が行われない。
【0222】
その他のステップS131、S133、S134、S136〜S139の解析面の設定、土壌データの設定、洞道データの設定、空気データの設定、通電条件の設定、地域データの設定、解析条件の設定等は、冷却洞道モデルの画面W6〜W8、W10〜W12と同様の画面を用いて、冷却洞道モデルの場合と同様に行われる。
【0223】
また、ステップS141の解析結果の出力も同様に行われるが、ステップS140の解析処理は、非冷却洞道モデルの場合、図54にフローチャートを示すサブルーチンによって行われる。
【0224】
このサブルーチンを冷却洞道モデルの図39に示すサブルーチンと比較すると、非冷却洞道モデルのサブルーチンでは、ステップS157、S162で、流体の移動を判定する場合に空気の移動のみを判定する点で冷却洞道モデルの場合と相違し、また、冷却洞道モデルのサブルーチンのステップS36、S37による冷却水温度の受け渡し処理が存在しない点で相違する。
【0225】
一方、ステップS161の各解析面ごとの節点温度の計算は、冷却洞道モデルの図40にフローチャートを示すサブルーチンと同様のサブルーチンによって行われ、また、ステップS165の空気温度の受け渡し処理についても、冷却洞道モデルの図41、図42、図44、図45にフローチャートを示すサブルーチンと同様のサブルーチンによって行われる。
【0226】
したがって、図51に示す具体的な計算例についても、空気温度については全く同じ結果となり、冷却水温度に関する計算が行われない点を除いて、冷却洞道モデルの場合と同様に行われることになる。
【0227】
さらに、この実施の形態においては、図21の画面W1で選択することにより、埋設モデルについても、図22に示すように、冷却水管路ありの冷却埋設モデルと、冷却水管路なしの非冷却埋設モデルについて解析可能とされており、次に、これらのモデルを選択した場合について説明する。
【0228】
まず、冷却埋設モデルを選択した場合は、図55にフローチャートを示すメインルーチンが実行され、ステップS172で、洞道構成の設定に変え、図56の画面W17を用いて埋設構成を設定することになる。この場合、ケーブルは管路に収納された状態で埋設され、その埋設パターンや、ケーブル管路、冷却水管路等に関するデータが設定される。
【0229】
この埋設構成の設定により、図57の画面W18に示すような全体解析モデルが作成され、また、ステップS173、174として、この画面W18上で、土壌に関するデータやケーブルに関するデータが設定され、このケーブルデータの設定により、図58の画面W19に示すように、解析モデルの要部を及びケーブル管路部分を拡大した要部解析モデルが表示される。
【0230】
そして、ステップS176で、各冷却水管路について、冷却水の移動等に関する冷却水データが設定されると共に、ステップS178〜S180で、通電条件、地域データ、及び解析条件がそれぞれ設定されるが、これらの設定は、図23にフローチャートを示す冷却洞道モデルについての設定動作と同じである。
【0231】
この冷却埋設モデルのステップS181による解析処理は、図59にフローチャートを示すサブルーチンによって行われる。
【0232】
即ち、まず、ステップS191で、必要なデータを読み込み、次いでステップS192で、現時刻tに初期値0を代入する。そして、ステップS193で、解析周期Δtを設定すると共に、各解析面間での冷却水の移動時間のうちの最も長い最長移動時間Δtcを、各解析面間の距離と流量と管路断面積とに基づいて算出する。
【0233】
また、ステップS194で、現在、冷却起動条件が成立しているか否かを判定し、成立しているときは、ステップS195で、現在の時刻tを温度受渡し基準時刻tpにセットする。そして、ステップS196で、時刻tに解析周期Δtを加算して現時刻tを更新すると共に、ステップS197で、その時刻tが解析終了時刻に達したか否かを判定する。
【0234】
解析開始当初は解析終了時刻に達していないから、次にステップS198を実行し、各解析面のそれぞれについて、前回の解析時刻(t-Δt)での解析領域内の全節点の温度から、現時刻tにおける全節点の温度を計算することになるが、最初の解析時は、各節点の値は初期値(図13の地温データベースDB9から読み取った深さ等に応じた地温、冷却水を代表する節点については、画面上で設定された入口温度又は深さ等に応じた地温)にセットされているから、これらの初期値から現時刻tにおける各節点温度を計算することになる。この節点温度の計算は、冷却洞道モデルについて説明した図40にフローチャートを示すサブルーチンと同様のサブルーチンによって行われる。
【0235】
次に、ステップS199で、現在、冷却起動条件が成立しているか否か、即ち冷却水が移動しているか否かを判定し、移動していないときは、ステップS200以下の冷却水温度の受け渡し処理を実行することなく、ステップS196〜S198を繰り返し実行し、毎解析周期ごとに、各解析面のそれぞれについて、全節点の温度を他の解析面から独立して順次求めることになる。
【0236】
一方、前記冷却起動条件が成立しているとき、即ち冷却水が移動しているときは、ステップS200で、現時刻tが、前記ステップS195で設定した温度受渡し基準時刻Tpに、前記ステップS192で設定した最長移動時間Δtcを加えた時刻(tp+Δtc)を超えているか否かを判定する。そして、この時刻(tp+Δtc)を超えていなければ、ステップS196〜S198を繰り返し実行し、毎解析周期ごとに、各解析面について、前回解析時の各節点温度から現時刻tにおける節点温度を計算する。
【0237】
そして、現時刻tが前記温度受渡し基準時刻tpに最長移動時間Δtcを加えた時刻(tp+Δtc)を超えた時点で、ステップS201の冷却水温度の受け渡し処理を実行する。
【0238】
この処理は、冷却洞道モデルについて用いた図46〜図49にフローチャートを示すサブルーチンと同様のサブルーチンに従って行われ、これにより、前述のように、各解析面間で冷却水の移動が終了した直後の解析周期ごとに、上流側の解析面における冷却水移動時間の間の温度変化が算出されて、その算出された温度が、当該受け渡し周期における下流側解析面の冷却水温度とされる。
【0239】
そして、ステップS202で冷却停止条件が成立しているか否かを判定し、成立していなければ、前記ステップS195で、現時刻tを改めて温度受渡し基準時刻tpにセットした上で、温度受け渡し処理を含む同様の計算を繰り返し、また、冷却停止条件が成立しているときは、次に、ステップS194で冷却起動条件の成立を判定するまで、各解析周期ごとに、ステップS198の各解析面ごとに独立した節点温度の計算を行う。
【0240】
したがって、この場合は、冷却水管路をケーブル管路に並設して埋設した冷却埋設モデルにおいて、冷却水の移動による冷却効果を反映した導体温度のシミュレーションが行われることになる。
【0241】
さらに、冷却なしの埋設モデルを選択した場合は、図22の非冷却埋設モデルについてのシミュレーションが行われることになり、この場合、図60にフローチャートを示すメインルーチンが実行されることになるが、このモデルでは、空気や冷却水の移動に伴う温度の受け渡し処理は行われないので、解析面は一つしか設定されない。
【0242】
したがって、ステップS211〜S213の管路の埋設構成の設定、土壌データの設定、ケーブルデータの設定等の動作は、図61に示す画面W20を用いて、1回だけ行われる。その他のステップS214〜S216の通電条件、地域データ、解析条件等の設定は、図55の冷却埋設モデルと同様に行われる。
【0243】
この非冷却埋設モデルの場合のステップS217の解析処理は、図62にフローチャートを示すサブルーチンによって実行され、まず、ステップS221で、必要なデータを読み込み、次いでステップS222で、現時刻tに初期値0を代入する。また、ステップS223で、解析時間間隔Δtを設定する。
【0244】
そして、ステップS224で、現時刻tに解析周期Δtを加算して現時刻tを更新すると共にすると共に、ステップS225で、その時刻tが解析終了時刻に達しているか否かを判定する。
【0245】
解析開始当初は解析終了時刻に達していないから、次にステップS226を実行し、各解析面のそれぞれについて、前回の解析時刻(t-Δt)での解析領域内の全節点の温度から、現時刻tにおける全節点の温度を計算することになるが、最初の解析時は、各節点の初期値(図13の地温データベースDB9から読み取った深さ等に応じた地温)から現時刻tにおける節点温度を計算することになる。
【0246】
そして、前回の解析時の値(又は初期値)から時間Δt後の現時刻tにおける各節点温度を、冷却洞道モデルについて説明した図40にフローチャートを示すサブルーチンによって計算する。
【0247】
この動作を解析終了時刻まで、周期Δごとに繰り返し行うことにより、非冷却埋設モデルにおいて、所定の解析面におけるケーブルの発熱や地表面における熱収支等を反映したケーブル導体温度の変化がシミュレーションされることになる。
【産業上の利用可能性】
【0248】
以上のように、本発明によれば、地中の洞道内に配設された電力ケーブルの導体温度の変化を、洞道内の空気の移動による冷却効果を加味してシミュレーションすることが可能となる。これにより、電力ケーブル線路の敷設設計等に際して、必要以上のケーブル通電電流の抑制やケーブルのサイズアップ等を回避して、効率的な電力ケーブルの設計や運用が可能となり、電力輸送技術の分野に寄与することになる。
【図面の簡単な説明】
【0249】
【図1】本発明の対象となる洞道モデルの構成例の説明図である。
【図2】洞道内に配設される冷却水管路の説明図である。
【図3】本発明の実施形態で対象となる埋設モデルの構成例の説明図である。
【図4】本発明の実施の形態の全体の構成を示すシステム図である。
【図5】同実施の形態で用いられる土壌熱定数データベースの構成図である。
【図6】洞道壁熱定数データベースの構成図である。
【図7】管路壁熱定数データベースの構成図である。
【図8】流体熱定数データベースの構成図である。
【図9】管路寸法データベースの構成図である。
【図10】ケーブルデータベースの構成図である。
【図11】空気物性データベースの構成図である。
【図12】冷却水物性データベースの構成図である。
【図13】地温データベースの構成図である。
【図14】気象データベースの構成図である。
【図15】負荷率データベースの構成図である。
【図16】熱容量マトリクス及び熱伝導マトリクスの説明図である。
【図17】洞道内部の有限要素解析モデルの説明図である。
【図18】冷却水管路の有限要素モデルの説明図である。
【図19】洞道内空気の乱流判定データの説明図である。
【図20】冷却水の乱流判定データの説明図である。
【図21】解析モデル選択画面の説明図である。
【図22】解析モデルを決定するフローチャートである。
【図23】冷却洞道モデルの解析メインルーチンのフローチャートである。
【図24】解析面設定画面の説明図である。
【図25】解析面の説明図である。
【図26】洞道構成設定画面の説明図である。
【図27】全体解析モデルを示す画面の説明図である。
【図28】解析モデルの要部を示す画面の説明図である。
【図29】土壌データ設定画面の説明図である。
【図30】洞道データ設定画面の説明図である。
【図31】空気データ設定画面の説明図である。
【図32】冷却水データ設定画面の説明図である。
【図33】通電条件設定画面の説明図である。
【図34】地域データ設定画面の説明図である。
【図35】解析条件設定画面の説明図である。
【図36】解析結果として洞道周辺の温度分布を示す画面の説明図である。
【図37】同じく洞道内空気温度の変化を示す画面の説明図である。
【図38】同じくケーブル導体温度の変化を示す画面の説明図である。
【図39】コンピュータによる解析処理動作を示すフローチャートである。
【図40】節点温度計算サブルーチンのフローチャートである。
【図41】空気温度受け渡し処理サブルーチンのフローチャートである。
【図42】解析面Bの空気温度算出サブルーチンのフローチャートである。
【図43】受渡し温度を求める補間方法の説明図である。
【図44】逆方向の空気温度受け渡し処理サブルーチンのフローチャートである。
【図45】解析面Cの空気温度算出サブルーチンのフローチャートである。
【図46】冷却水温度受け渡し処理サブルーチンのフローチャートである。
【図47】解析面BのGo管温度算出サブルーチンのフローチャートである。
【図48】解析面DのRe管温度算出サブルーチンのすフローチャートである。
【図49】解析面CのRe管温度算出サブルーチンのフローチャートである。
【図50】換気及び冷却の起動停止スケジュールの一例を示すタイムチャートである。
【図51】各解析面における温度受渡しの一例を示す表である。
【図52】非冷却洞道モデルの解析メインルーチンのフローチャートである。
【図53】洞道構成設定画面の説明図である。
【図54】コンピュータによる解析処理動作を示すフローチャートである。
【図55】冷却埋設モデルの解析メインルーチンのフローチャートである。
【図56】埋設構成設定画面の説明図である。
【図57】全体解析モデルを示す画面の説明図である。
【図58】解析モデルの要部を示す画面の説明図である。
【図59】コンピュータによる解析処理動作を示すフローチャートである。
【図60】非冷却埋設モデルの解析メインルーチンのフローチャートである。
【図61】埋設構成設定画面の説明図である。
【図62】コンピュータによる解析処理動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0250】
1 洞道
4 ケーブル
6 冷却水管路
10 コンピュータ
11 中央処理装置
12 入力装置
13 読込み装置
14 記録装置
15 表示装置
16 印刷装置
17 メモリ
DB1〜DB11 データベース
A〜D 解析面
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に配設される電力ケーブルの導体温度、特にケーブルを配設した洞道内における空気流の移動を考慮してケーブル導体温度を有限要素法により推定する方法及びシステム、並びにその方法やシステムをコンピュータを用いて実現させるプログラムに関し、有限要素法を用いた温度解析技術の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
地中に配設される電力ケーブルには許容導体温度が設定されており、目標とする電流を通電したときに、導体温度がこの許容温度を超えないように、ケーブルの種類やサイズ等の仕様或いはケーブル管路の構成等を設計する必要があり、その目安として、日本電線工業会より電力ケーブル許容電流計算マニュアル(JCS168号E)が提供されている。
【0003】
しかし、このマニュアルでは、管路の周囲の土壌の熱容量や熱伝導率等の熱定数が安全サイドに設定された固定値とされており、そのため、導体温度の計算値が実際より高い値となって、徒に通電電流を制限したり、必要以上にケーブルをサイズアップするなどの無駄を生じていた。
【0004】
このような問題に対し、近年、電力ケーブルの効率的運用等を目的として、導体温度のより高精度な推定が試みられており、その一環として、ケーブル管路に隣接して埋設された空管路内の温度と、これらの管路の周辺の土壌温度及び土壌熱定数とを測定し、これらの実測データを電力ケーブル許容電流計算マニュアルに代入してケーブル導体温度を算出するようにした発明が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
この発明によれば、電力ケーブルを設置した管路周辺の土壌の温度や熱定数として従来より実際に近い値が採用されることになり、ケーブル導体温度がより精度よく推定されることになる。
【0006】
また、空管路内の温度や管路周辺における土壌の温度や熱定数等の実測に変え、通電電流による発熱量を算出すると共に、その発熱量と予め設定したケーブル管路やその周辺の土壌の熱定数等に基づいて、特定地点におけるケーブル導体温度を有限要素法を用いてシミュレーションすることが試みられており、その例として、本件出願人が先に特許出願した発明がある(特許文献2参照)。
【0007】
この発明によれば、土壌温度等の実測を要することなく、ケーブル敷設計画の段階で、ケーブル導体温度をその経時変化を含めてシミュレーションすることが可能となるが、特に、この特許文献2の発明では、当該地点における気象データを利用して地表面における熱収支量を算出し、これを有限要素解析のためのデータとして用いることにより、ケーブル導体温度の経時変化を、1日の間の時間による変化や1年の間の季節による変化等を含めて、一層精度よくシミュレーションすることが可能となる。
【0008】
さらに、本件出願人は、前記特許文献2の発明のバージョンアップとして、ケーブルに冷却水管路を並設した場合の冷却効果を加味してケーブル導体温度をシミュレーションする発明を提案したところである(特願2004−218894)。
【0009】
【特許文献1】特開2001−165781号公報
【特許文献2】特開2004−112964号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、前記の背景技術として開示したものは、いずれも電力ケーブルを収納した管路を地中に直接埋設した場合を想定したものであるが、実際には、周辺の環境等を考慮して一部区間に、或いは電力供給経路の全区間にわたって地中に洞道を設け、この中に電力ケーブル(及び冷却水管路)を配設することがある。この場合、洞道内には自然に或いは強制換気により空気の流れが生じ、これが電力ケーブルに対する冷却作用を果たすことになる。したがって、このように一部区間或いは全区間において電力ケーブルを洞道内に配設する場合には、導体温度のシミュレーションに際しては洞道内空気の移動による冷却効果を考慮しなければならないことになる。
【0011】
そこで、本発明は、電力ケーブルを地中の洞道内に配設した場合の洞道内空気の移動による冷却効果を考慮して導体温度の変化をシミュレーション可能な方法及びシステム、並びにこれをコンピュータを用いて実現するためのプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、本発明は次のように構成したことを特徴とする。
【0013】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、地中の洞道内に敷設された電力ケーブルの導体温度を有限要素法を用いて推定する方法に関するものであって、導体温度に影響するパラメータとして、前記ケーブルの通電電流に対応する発熱量と、ケーブル、洞道内空気及び洞道周辺構成要素の熱定数と、洞道内における空気の移動を考慮して算出した洞道内空気温度とを用い、前記ケーブルの導体温度を計算することを特徴とする。
【0014】
ここで、洞道周辺構成要素としては、地中に洞道を形成するための洞道壁や、その周辺の土壌等がある。
【0015】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の方法において、導体温度に影響するパラメータとして、さらに、洞道内に配設された管路内における冷却水の移動を考慮して算出した冷却水温度を用いることを特徴とする。
【0016】
さらに、請求項3に記載の発明は、前記請求項1又は請求項2に記載の方法において、導体温度に影響するパラメータとして、さらに、解析対象地域の気象データから算出される地表面における熱収支量を用いることを特徴とする。
【0017】
一方、請求項4に記載の発明は、地中の洞道内に敷設された電力ケーブルの導体温度を、洞道を横断する断面を解析面とし、この解析面の所定領域に有限要素法を適用して推定するシステムに関するものであって、ケーブル、洞道内空気及び洞道周辺構成要素の熱定数を記録した熱定数記録手段と、洞道及びその内外の構成を設定する洞道構成設定手段と、ケーブルへの通電電流を設定する通電電流設定手段と、洞道内における空気の移動に関するデータを設定する空気データ設定手段と、前記通電電流設定手段で設定された通電電流に基づいてケーブルの発熱量を算出する発熱量算出手段と、前記空気データ設定手段で設定された空気の移動に関するデータに基づいて洞道内空気温度を算出する空気温度算出手段と、前記洞道構成設定手段で設定された洞道及びケーブルの構成に基づいて、洞道を横断する解析面の所定解析領域を有限要素分割して解析モデルを作成するモデル作成手段と、前記熱定数記録手段に記録されている熱定数を用いて前記解析領域内の各節点についての熱容量マトリクス及び熱伝導マトリクスを作成するマトリクス作成手段と、前記発熱量算出手段及び空気温度算出手段でそれぞれ算出されたケーブルの発熱量及び洞道内空気温度に基づいて前記解析領域内の各節点についての熱荷重ベクトルを作成するベクトル作成手段と、前記マトリクス作成手段及びベクトル作成手段で作成された熱容量マトリクス、熱伝導マトリクス及び熱荷重ベクトルを用い、所定の初期状態から所定時間間隔で解析領域内の各節点温度を計算する節点温度計算手段とを有することを特徴とする。
【0018】
ここで、洞道周辺構成要素としては、地中に洞道を形成するための洞道壁や、その周辺の土壌等がある。そして、前記熱定数記録手段は、ケーブル、洞道内空気及び洞道周辺構成要素の比熱容量や熱伝導率(熱抵抗)等を記録するようになっている。
【0019】
また、洞道構成設定手段は、地中における洞道の位置及びその断面形状や、洞道内に配設されたケーブルの本数、直径、配設位置、さらに洞道周囲の洞道壁やその外側の土層の構成等を設定するようになっており、通電電流設定手段は、各ケーブルへの通電電流やその経時変化等を設定するようになっており、さらに、空気データ設定手段は、換気起動時や停止時における洞道内の風速や、換気スケジュール等を設定するようになっている。
【0020】
そして、請求項5に記載の発明は、前記請求項4に記載のシステムにおいて、洞道の所定区間に有限要素解析のための複数の解析面を設定する解析面設定手段が設けられていると共に、前記空気温度算出手段は、前記区間における空気の移動に対して最も上流側の解析面では洞道内空気温度を所定の温度に設定し、該解析面より下流側の各解析面については、上流側解析面における洞道内空気温度の変化に基づいて順次下流側解析面における洞道内空気温度を算出し、かつ、節点温度算出手段は、洞道内における空気に接する節点については前記空気温度算出手段で算出された洞道内空気温度を用いて、各解析面ごとに解析領域内の各節点温度を計算することを特徴とする。
【0021】
また、請求項6に記載の発明は、地中の洞道内に敷設された電力ケーブルの導体温度を、洞道を横断する断面を解析面とし、この解析面の所定領域に有限要素法を適用して推定するシステム、特に前記洞道内に冷却水管路が設けられている場合に適用されるシステムに関するものであって、ケーブル、洞道内空気、冷却水管路、該管路内の冷却水及び洞道周辺構成要素の熱定数を記録した熱定数記録手段と、洞道及びその内外の構成を設定する洞道構成設定手段と、ケーブルへの通電電流を設定する通電電流設定手段と、洞道内における空気の移動に関するデータを設定する空気データ設定手段と、冷却水管路内における冷却水の移動に関するデータを設定する冷却水データ設定手段と、前記通電電流設定手段で設定された通電電流に基づいてケーブルの発熱量を算出する発熱量算出手段と、前記空気データ設定手段で設定された空気の移動に関するデータに基づいて洞道内空気温度を算出する空気温度算出手段と、前記冷却水データ設定手段で設定された冷却水の移動に関するデータに基づいて冷却水温度を算出する冷却水温度算出手段と、前記洞道構成設定手段で設定された洞道、ケーブル及び冷却水管路の構成に基づいて、洞道を横断する解析面の所定解析領域を有限要素分割して解析モデルを作成するモデル作成手段と、前記熱定数記録手段に記録されている熱定数を用いて前記解析領域内の各節点についての熱容量マトリクス及び熱伝導マトリクスを作成するマトリクス作成手段と、前記発熱量算出手段、空気温度算出手段及び冷却水温度算出手段でそれぞれ算出されたケーブルの発熱量、洞道内空気温度及び冷却水温度に基づいて前記解析領域内の各節点についての熱荷重ベクトルを作成するベクトル作成手段と、前記マトリクス作成手段及びベクトル作成手段で作成された熱容量マトリクス、熱伝導マトリクス及び熱荷重ベクトルを用い、所定の初期状態から所定時間間隔で解析領域内の各節点温度を計算する節点温度計算手段とを有することを特徴とする。
【0022】
ここで、洞道構成設定手段は、地中における洞道の位置及びその断面形状や、洞道内に配設されたケーブル及び冷却水管路の本数、直径、配設位置、さらに洞道周囲の洞道壁やその外側の土層の構成等を記録するようになっており、また、冷却データ設定手段は、冷却水供給時の流速又は流量、冷却起動、停止条件等を設定するようになっている。なお、通電電流設定手段及び空気データ設定手段については、前記請求項4に記載の発明と同様である。
【0023】
そして、請求項7に記載の発明は、前記請求項6に記載のシステムにおいて、冷却水管路が設けられた洞道の所定区間に有限要素解析のための複数の解析面を設定する解析面設定手段が設けられていると共に、前記空気温度算出手段は、前記区間における空気の移動に対して最も上流側の解析面では洞道内空気温度を所定の温度に設定し、該解析面より下流側の各解析面については、上流側解析面における洞道内空気温度の変化に基づいて順次下流側解析面における洞道内空気温度を算出し、前記冷却水温度算出手段は、冷却水入口近傍の解析面における管路断面では冷却水温度を所定の入口温度に設定し、各解析面に位置する他の管路断面については、その上流側断面における冷却水温度の変化に基づいて順次下流側の断面における冷却水温度を算出し、かつ、節点温度算出手段は、洞道内における空気に接する節点については前記空気温度算出手段で算出された洞道内空気温度を用いて、冷却水管路内面の節点については前記冷却水温度算出手段で算出された冷却水温度を用いて、各解析面ごとに解析領域内の各節点温度を計算することを特徴とする。
【0024】
そして、請求項8に記載の発明は、前記請求項4から請求項7のいずれかに記載のシステムにおいて、各地域各時期の気象データを記録した気象データ記録手段と、指定された解析対象地域及び時期の気象データを前記気象データ記録手段から読み出し、その気象データに基づいて地表面の熱収支量を算出する熱収支量算出手段とが備えられ、ベクトル作成手段は、前記熱収支量算出手段で算出された地表面の熱収支量を用いて熱荷重ベクトルを作成することを特徴とする。
【0025】
また、請求項9に記載の発明は、地中の洞道内に敷設された電力ケーブルの導体温度を、洞道を横断する断面を解析面とし、この解析面の所定領域に有限要素法を適用して推定するプログラムに関するものであって、コンピュータを、ケーブル、洞道内空気及び洞道周辺構成要素の熱定数を記録する熱定数記録手段、洞道及びその内外の構成を設定する洞道構成設定手段、ケーブルへの通電電流を設定する通電電流設定手段、洞道内における空気の移動に関するデータを設定する空気データ設定手段、前記通電電流設定手段で設定された通電電流に基づいてケーブルの発熱量を算出する発熱量算出手段、前記空気データ設定手段で設定された空気の移動に関するデータに基づいて洞道内空気温度を算出する空気温度算出手段、前記洞道構成設定手段で設定された洞道及びケーブルの構成に基づいて、洞道を横断する解析面の所定解析領域を有限要素分割して解析モデルを作成するモデル作成手段、前記熱定数記録手段に記録されている熱定数を用いて前記解析対象領域内の各節点についての熱容量マトリクス及び熱伝導マトリクスを作成するマトリクス作成手段、前記発熱量算出手段及び空気温度算出手段でそれぞれ算出されたケーブルの発熱量及び洞道内空気温度に基づいて前記解析領域内の各節点についての熱荷重ベクトルを作成するベクトル作成手段、並びに、前記マトリクス作成手段及びベクトル作成手段で作成された熱容量マトリクス、熱伝導マトリクス及び熱荷重ベクトルを用い、所定の初期状態から所定時間間隔で解析領域内の各節点温度を計算する節点温度計算手段として機能させることを特徴とする。
【0026】
そして、請求項10に記載の発明は、前記請求項9に記載のプログラムにおいて、コンピュータを、洞道の所定区間に有限要素解析のための複数の解析面を設定する解析面設定手段として機能させると共に、前記空気温度算出手段として機能させるときは、前記区間における空気の移動に対して最も上流側の解析面では洞道内空気温度を所定の温度に設定し、該解析面より下流側の各解析面については、上流側解析面における洞道内空気温度の変化に基づいて順次下流側解析面における洞道内空気温度を算出するように機能させ、かつ、節点温度算出手段として機能させるときは、洞道内における空気に接する節点については前記空気温度算出手段で算出された洞道内空気温度を用いて、各解析面ごとに解析領域内の各節点温度を計算するように機能させることを特徴とする。
【0027】
また、請求項11に記載の発明は、地中の洞道内に敷設された電力ケーブルの導体温度を、洞道を横断する断面を解析面とし、この解析面の所定領域に有限要素法を適用して推定するプログラム、特に前記洞道内に冷却水管路が設けられている場合に用いられるプログラムに関するものであって、コンピュータを、ケーブル、洞道内空気、冷却水管路、該管路内の冷却水及び洞道周辺構成要素の熱定数を記録した熱定数記録手段、洞道及びその内外の構成を設定する洞道構成設定手段と、ケーブルへの通電電流を設定する通電電流設定手段、洞道内における空気の移動に関するデータを設定する空気データ設定手段、冷却水管路内における冷却水の移動に関するデータを設定する冷却水データ設定手段、前記通電電流設定手段で設定された通電電流に基づいてケーブルの発熱量を算出する発熱量算出手段、前記空気データ設定手段で設定された空気の移動に関するデータに基づいて洞道内空気温度を算出する空気温度算出手段、前記冷却水データ設定手段で設定された冷却水の移動に関するデータに基づいて冷却水温度を算出する冷却水温度算出手段、前記洞道構成設定手段で設定された洞道、ケーブル及び冷却水管路の構成に基づいて、洞道を横断する解析面の所定解析領域を有限要素分割して解析モデルを作成するモデル作成手段、前記熱定数記録手段に記録されている熱定数を用いて前記解析対象領域内の各節点についての熱容量マトリクス及び熱伝導マトリクスを作成するマトリクス作成手段、前記発熱量算出手段、空気温度算出手段及び冷却水温度算出手段でそれぞれ算出されたケーブルの発熱量、洞道内空気温度及び冷却水温度に基づいて前記解析領域内の各節点についての熱荷重ベクトルを作成するベクトル作成手段、並びに、前記マトリクス作成手段及びベクトル作成手段で作成された熱容量マトリクス、熱伝導マトリクス及び熱荷重ベクトルを用い、所定の初期状態から所定時間間隔で解析領域内の各節点温度を計算する節点温度計算手段として機能させることを特徴とする。
【0028】
そして、請求項12に記載の発明は、前記請求項11に記載のプログラムにおいて、コンピュータを、冷却水管路が設けられた洞道の所定区間に有限要素解析のための複数の解析面を設定する解析面設定手段として機能させると共に、前記空気温度算出手段として機能させるときは、前記区間における空気の移動に対して最も上流側の解析面では洞道内空気温度を所定の温度に設定し、該解析面より下流側の各解析面については、上流側解析面における洞道内空気温度の変化に基づいて順次下流側解析面における洞道内空気温度を算出するように機能させ、前記冷却水温度算出手段として機能させるときは、冷却水入口近傍の解析面における管路断面では冷却水温度を所定の入口温度に設定し、各解析面に位置する他の管路断面については、その上流側断面における冷却水温度の変化に基づいて順次下流側の断面における冷却水温度を算出するように機能させ、かつ、節点温度算出手段として機能させるときは、洞道内における空気に接する節点については前記空気温度算出手段で算出された洞道内空気温度を用いて、冷却水管路内面の節点については前記冷却水温度算出手段で算出された冷却水温度を用いて、各解析面ごとに解析領域内の各節点温度を計算するように機能させることを特徴とする。
【0029】
そして、請求項13に記載の発明は、前記請求項9から請求項12のいずれかに記載のプログラムにおいて、コンピュータを、各地域各時期の気象データを記録した気象データ記録手段、及び、指定された解析対象地域及び時期の気象データを前記気象データ記録手段から読み出し、その気象データに基づいて地表面の熱収支量を算出する熱収支量算出手段として機能させると共に、ベクトル作成手段として機能させるときは、前記熱収支量算出手段で算出された地表面の熱収支量を用いて熱荷重ベクトルを作成するように機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
前記の構成により、本願の各請求項に記載した発明によれば、それぞれ次のような効果が得られる。
【0031】
まず、本願の請求項1に記載の方法によれば、地中の洞道内に敷設された電力ケーブルの導体温度が、洞道内における空気の移動による冷却効果を含めて計算されることになる。したがって、例えば長距離に及ぶケーブル配設区間の全区間或いは一部区間について、ケーブルを洞道内に配設した場合の該ケーブル導体温度の変化のシミュレーションが精度よく行われることになる。その結果、必要以上に通電電流を抑制したり、ケーブルを必要以上にサイズアップしたりする無駄が回避され、電力輸送の効率の向上に寄与することになる。
【0032】
また、請求項2に記載の方法によれば、前記のような洞道内空気による冷却効果に加えて、洞道内に配設した冷却水管路による冷却効果も含めて、ケーブル導体温度の変化がシミュレーションされることになる。したがって、冷却水管路の配設設計を効果的に行うことが可能となる。
【0033】
さらに、請求項3の方法によれば、ケーブルの導体温度推定のためのパラメータとして、各地域の気象データに基づいて算出される地表面での熱収支量が考慮されるから、シミュレーションが一層現実に近い状態で行われることになり、電力輸送の効率化にさらに有効に寄与することになる。
【0034】
一方、請求項4に記載のシステムによれば、前記請求項1に記載の方法がコンピュータの中央処理装置、記録装置及び入出力装置等の各種ハードウェア資源を用いて具体的に実行されることになり、洞道内の空気の移動による冷却効果を反映したケーブル導体温度のシミュレーションをコンピュータを用いて行うことが可能となって、最適な電力ケーブル敷設の設計が容易にかつ迅速に行われることになる。
【0035】
そして、請求項5に記載のシステムによれば、複数の解析面を設定し、隣接解析面間で空気の移動による洞道内空気温度の受け渡しを行いながら、各解析面における導体温度のシミュレーションを行うから、空気の移動による冷却効果が正しく反映されて、シミュレーションが精度よく行われることになる。
【0036】
また、請求項6に記載のシステムによれば、請求項4のシステムの効果に加えて、洞道内に冷却水管路を配設した場合におけるケーブル導体温度の変化がコンピュータを用いてシミュレーションされることになり、冷却水管路の効果的な配設設計が容易にかつ迅速に行われることになる。
【0037】
そして、請求項7に記載のシステムによれば、複数の解析面を設定し、隣接解析面間で、空気の移動による洞道内空気温度の受け渡し、及び冷却水の移動による冷却水温度の受け渡しを行いながら、各解析面における導体温度のシミュレーションを行うから、空気及び冷却水の移動による冷却効果が正しく反映されて、シミュレーションが精度よく行われることになる。
【0038】
さらに、請求項8に記載のシステムによれば、前記請求項3に記載の方法と同様に、地表面における熱収支量をも含めてケーブル導体温度が計算されるので、シミュレーションがより現実に近い状態で行われることになる。
【0039】
そして、請求項9〜請求項13に記載のプログラムによれば、これらをコンピュータに搭載することにより、請求項4〜請求項8に記載のシステムと同様のシステムが構成されることになり、これらのシステムと同様の効果が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明に係るケーブル導体温度推定システムについてのものであるが、このシステムで用いられる方法及びそのプログラムは、本発明に係るケーブル導体温度推定方法及びケーブル導体温度推定用プログラムの実施の形態を構成する。
【0041】
また、以下の実施の形態に係るシステム及びプログラムは、ケーブルを洞道内に配設した洞道モデルのほかに、地中に埋設した埋設モデルについてのシミュレーションも可能とされている。ここで、本システムでシミュレーション可能な各モデルの構成について説明する。
【0042】
図1は、洞道モデルの構成を示すもので、洞道1は地中に設けられ、その周囲が壁面2によって囲われ、さらにその外側は土壌3で覆われている。そして、内部には電力ケーブル4が敷設されている。また、この洞道1には、地上から空気を取り入れるための吸気装置5a、地上に空気を排出するための排気装置5b及び洞道1内で空気を強制移動させる送風装置5c等が配設され、内部の強制換気が可能とされている。
【0043】
さらに、この洞道モデルにおいては、必要に応じて、洞道1内に冷却水管路6が配設される。この冷却水管路6は、図2に示すように、冷却水供給装置7から洞道1内を一方向に延びた後、所定位置でUターンして再び冷却水供給装置7に戻るように配設され、冷却水管路6の往路(以下、「Go管」という)の入口に前記供給装置7から送り出された一定温度(入口温度)の冷却水が、周囲の熱により温度上昇しながら、復路(以下、「Re管」という)によって冷却水供給装置7に戻され、該装置7によって前記入口温度に冷却された後、再びGo管の入口に供給されるように構成されている。
【0044】
一方、埋設モデルは、図3に示すように、電力ケーブル4を収納した管路8を直接地中に埋設した構成とされ、ケーブル4の周囲には管路8と土壌3とが存在することになる。また、必要に応じて、このケーブル管路8に沿わせて冷却水管路6が埋設される。この冷却水管路6は、前記洞道モデルの場合と同様、冷却水供給装置(図示せず)から延びるGo管と、Uターンして再び冷却水供給装置に戻るRe管とで構成され、Go管の入口に一定温度の冷却水が供給され、周辺を冷却することによって高温となった冷却水が前記冷却水供給装置に戻されるようになっている。
【0045】
なお、本実施の形態では、洞道モデル及び埋設モデルのそれぞれにおいて、冷却水管路6を配設しないモデルについてもケーブル導体温度のシミュレーションが可能とされている。
【0046】
次に、前記のようなモデルの設定ないしケーブル導体温度の解析を行うシステムの構成を説明する。
【0047】
図4に示すように、このシステムを構成するコンピュータ10は、その中心となる中央処理装置11と、各種条件の設定やシステムの制御等に用いられる入力装置12と、CD−ROM等の記録媒体20からプログラムや各種データ等の情報を読み込む読込み装置13と、該装置13によって読み込んだプログラムやデータ、さらには計算結果等を記録する記録装置14と、入力画面や計算結果等を表示する表示装置15と、計算結果等を印刷する印刷装置16とを有する。また、前記中央処理装置11には、処理中に一時的にデータを格納するメモリ17が付設されている。
【0048】
前記記録装置14には、この実施の形態では、土壌熱定数データベースDB1、洞道壁熱定数データベースDB2、管路壁熱定数データベースDB3、流体熱定数データベースDB4、管路寸法データベースDB5、ケーブルデータベースDB6、空気物性データベースDB7、冷却水物性データベースDB8、地温データベースDB9、気象データベースDB10、負荷率データベースDB11が記録されるようになっている。
【0049】
これらのデータベースの構成を順に説明すると、まず、土壌熱定数データベースDB1は、図5に示すように、解析対象地域の土壌の種類ごとに、その名前、質量密度、比熱、及び熱抵抗を記録するようになっている。
【0050】
また、洞道壁熱定数データベースDB2は、図6に示すように、洞道の周壁を構成する材料ごとに、その名前、質量密度、比熱、及び熱抵抗を記録するようになっている。
【0051】
また、管路壁熱定数データベースDB3は、図7に示すように、冷却水管路及び埋設モードで用いられるケーブル収納用管路について、材質ごとに、その名前、質量密度、比熱、及び熱抵抗を記録するようになっている。
【0052】
また、流体熱定数データベースDB4は、図8に示すように、静止状態及び流動状態の冷却水、静止状態及び流動状態の洞道内空気、及び埋設モデルで用いられるケーブル収納用管路内の空気について、それぞれ、質量密度、比熱、及び熱抵抗を記録するようになっている。
【0053】
また、管路寸法データベースDB5は、図9に示すように、冷却水管路及び埋設モードで用いられるケーブル収納用管路の各仕様ごとに、その仕様の名称と外径及び内径とを記録するようになっている。
【0054】
また、ケーブルデータベースDB6は、図10に示すように、各種類の電力ケーブルについて、適用電圧、種類名、心数、及びサイズをインデックスとして、線路を構成する導体、絶縁体及びシースについての外径、比熱容量、及び固有熱抵抗、並びに単位長さあたりの電気抵抗値であるRACの各値をそれぞれ記録するようになっている。
【0055】
また、空気物性データベースDB7は、図11に示すように、洞道内の空気の動粘性係数、プラントル数及び熱伝導率を温度ごとに記録するようになっている。
【0056】
同様に、冷却水物性データベースDB8は、図12に示すように、冷却水の動粘性係数、プラントル数及び熱伝導率を温度ごとに記録するようになっている。
【0057】
また、地温データベースDB9は、図13に東京のものを例にとって示すように、各地域ごとに、地表からの各深さの地温を月別に記録するようになっている。
【0058】
また、気象データベースDB10は、図14に東京のものを例にとって示すように、各地域ごとに、1年間の1時間ごとの気温、湿度、風速、日射量及び降水量の各データを記録するようになっている。
【0059】
さらに、負荷率データベースDB11は、図15に示すように、例えば斜線で示す8月の平日の14時等の1年中で最も電気使用量が多くなる時点の通電量を1としたときの各時点の通電量の比率を、月別、曜日別(日曜、平日、土曜)、及び時間別に示したデータを記録するようになっている。
【0060】
そして、前記記録装置14に記録されたプログラムは、中央処理装置11を作動させ、前記各データベースDB1〜DB11に記録されているデータと、入力装置12によって設定されるデータ等に基づき、洞道モデルか埋設モデルかに応じ、有限要素法を用いて、ケーブルを横断する解析面の所定解析領域内の各部の温度を所定の時間間隔で計算し、洞道内空気の移動や冷却水の移動による影響を反映したケーブル導体温度の変化をシミュレーションするように動作する。
【0061】
ここで、このプログラムによる有限要素法を用いたシミュレーションの理論的背景ないし計算方法について説明する。
【0062】
このシミュレーションは、次式、
KX(∂2θ/∂x2)+KY(∂2θ/∂y2)+Q
=ρC(∂θ/∂t) (1)
で示される2次元の熱伝導方程式を基礎とし、この式(1)を、洞道、ケーブル、冷却水管路等を地表面を含めて横断する所定の解析面について適用する。
【0063】
この式(1)は、解析面上の点(x,y)における各時刻tの温度θを示すものであり、KX、KYはX、Y方向の熱伝導係数、Qは単位時間、単位体積(面積)あたりの熱収支や内部発熱等に由来する熱量、ρは質量密度、Cは比熱である。
【0064】
この式(1)を、有限要素法の適用のためにマトリックス表示すると、
[C]・[dθ/dt]+[K]・[θ]=[Q] (2)
となる。
【0065】
ここで、[C]は熱容量マトリクス、[K]は熱伝導マトリクス、[θ]は節点温度ベクトル、[dθ/dt]は節点温度の時間微分ベクトル、[Q]は熱荷重ベクトルを示し、図16に示すように、解析面における所定の解析領域を多数の要素に有限要素分割して各節点に番号1…i…j…を付したときに、熱容量マトリックス[C]を構成する項Cijは、節点i,j間の比熱容量(比熱×質量密度:J/cm3・°K)とその間における体積に関連した値の積を示し、熱伝導マトリックス[K]を構成する項Kijは、節点i,j間の熱伝導率(J/sec・cm3・°K)とその間の体積に関連した値との積を示す。
【0066】
また、熱荷重ベクトル[Q]を構成する項Qjは、地表面上の節点の場合は、その節点によって代表される領域の地表面での単位面積、単位時間あたりの熱収支量q1(J/sec・cm2)とその領域の面積(解析面上の長さ×単位長さ)の積を、地中内の節点については、その節点によって代表される領域における単位体積、単位時間あたりの内部発熱量q2(J/sec・cm3)とその領域の体積(解析面上の面積×単位長さ)との積をそれぞれ示す。
【0067】
また、洞道内の空気接触面、即ち洞道壁内面、洞道内に配設されたケーブル及び冷却水管路の表面の節点についての熱荷重ベクトル[Q]の項Qjは、その節点によって代表される領域での単位面積、単位時間当たりの伝熱量q3(J/sec・cm2)とその領域の面積(解析面上の長さ×単位長さ)との積を示す。また、洞道内部については、洞道内空気を代表する単一の節点が設定されるが、その節点については、洞道内空気の単位面積、単位時間当たりの伝熱量q4(J/sec・cm2)と洞道内の空間断面積(洞道断面積からケーブル及び冷却水管路の断面積を差し引いた値)との積を示す。
【0068】
同様に、冷却水管路内面の節点についての熱荷重ベクトル[Q]の項Qjは、その節点によって代表される管路内面の領域での単位面積、単位時間当たりの伝熱量q5(J/sec・cm2)とその領域の面積(解析面上の長さ×単位長さ)との積を示す。また、冷却水管路内部については、冷却水を代表する単一の節点が設定されるが、その節点については、冷却水の単位面積、単位時間当たりの伝熱量q6(J/sec・cm2)と冷却水管路の断面積との積を示す。
【0069】
なお、節点が地表面上や洞道内或いは冷却管路内等になく、かつ内部発熱を伴わない領域にある場合には、Qj=0となる。
【0070】
そして、実際のシミュレーションに際しては、前記式(2)に基づき、各節点の時刻tの温度θtからΔt時間後の時刻t′(=t+Δt)における温度θt′を、次式、
(2[C]t″/Δt+[K]t″)[θ]t′=
(2[C]t″/Δt−[K]t″)[θ]t +2[Q]t″ (3)
に従って求めることになる。
【0071】
ここで、時刻t″は時刻tとt′の中間の時刻(=(t+Δt)/2)であって、この時刻t″について前記式(2)を示した式、
[C]t″・[dθ/dt]t″+[K]t″・[θ]t″=[Q]t″
に、
[θ]t″=([θ]t+[θ]t′)/2
[dθ/dt]t″=([θ]t′−[θ]t)/Δt
の関係を代入することにより、前記式(3)が得られる。
【0072】
そして、この式(3)において、熱容量マトリックス[C]t″を構成する各項(Cij)t″に各要素の比熱容量から求めた値を与え、熱伝導マトリックス[K]t″を構成する各項(Kij)t″に各要素の熱伝導率から求めた値を与えると共に、熱荷重ベクトル[Q]t″の各項(Qj)t″の値として、地表面上の節点、洞道内空気接触面や冷却管路内面の節点には、その節点によって代表される領域での時刻t″における伝熱量を与え、洞道内空気や冷却水を代表する節点には、該空気及び冷却水の時刻t″における伝熱量を与え、さらに、導体内部の節点には、その節点によって代表される領域内での時刻t″における発熱量を与える。
【0073】
また、節点温度ベクトルの初期値[θ]t=0としては、各節点の位置(深さ)や時期等に応じた地温を各項の値とするベクトルを与え、また、節点温度の時間微分ベクトルの初期値[dθ/dt]t=0として、各項の値が0のベクトルを与え、その状態から任意の期間、所定の解析周期Δtごとに節点温度ベクトル[θ]を順次算出する。
【0074】
なお、洞道内空気及び冷却水を代表する節点については、節点温度ベクトルの初期値は、定常状態(洞道内空気及び冷却水が停止してから十分時間がたった状態)から解析を開始する場合は、当該深さや時期等における地温と同じ温度とされるが、洞道内空気や冷却水が流れている状態或いは流れ始めたときから解析を開始する場合等は、別途設定された温度を初期値とする。
【0075】
また、各要素の比熱容量及び熱伝導率が時間の関数として与えられるときは、前記熱容量マトリクス[C]t″の各項の値、及び熱伝導マトリックス[K]t″の各項の値は、それぞれの時間に関する関数から求められるが、時間依存性がないときは一定値が用いられる。
【0076】
一方、このシミュレーションにおいて、熱荷重ベクトル[Q]の項Qjの値として与えられる地表面の節点における熱収支量q1(J/sec・cm2)、導体内部の節点における内部発熱量q2(J/sec・cm3)、洞道内空気接触面の節点における伝熱量q3(J/sec・cm2)、洞道内空気を代表する節点の伝熱量q4(J/sec・cm2)、冷却水管路内面の節点における伝熱量q5(J/sec・cm2)及び冷却水を代表する節点の伝熱量q6(J/sec・cm2)は、例えば次のように計算される。
【0077】
まず、地表面の単位時間、単位面積あたりの熱収支量q1を、
q1=日射吸収量(q11)
+大気から地表面への輻射量(q12)
−地表面から大気への輻射量(q13)
−地表面から大気への伝熱量(q14) (4)
と定義する。
【0078】
ここで、日射吸収量q11は、
q11=日射量×(1−地表面反射率)
である。
【0079】
また、大気から地表面への輻射量q12及び地表面から大気への輻射量q13は、σをステファンボルツマン定数(J/sec・cm2・°K4)とし、ε12、ε13を輻射率(無次元)、Tを大気温度(°K)、T′を地表面における当該要素の温度(°K)として、
q12=σ×ε12×T4
q13=σ×ε13×T′4
で示される。
【0080】
その場合に、大気から地表面への輻射量q12については、輻射率ε12は、例えば、
降水量なし、かつ湿度50%未満で、ε12=0.650
降水量なし、かつ湿度50%以上で、ε12=0.850
降水量ありで、 ε12=0.925
と設定する。
【0081】
また、地表面から大気への輻射量q13については、輻射率ε13は、降水量及び湿度に関係なく、
ε13=0.965
と設定する。
【0082】
さらに、地表面から大気への伝熱量q14は、
q14=ρ′×Cp×D×(T′−T)
と定義する。
【0083】
ここで、ρ′は空気密度(g/cm3)、Cpは空気の定圧比熱(J/g・°K)、T′は地表面における当該要素の温度(°K)、Tは大気温度(°K)であり、また、Dは外部拡散係数(cm/sec)であって、Uを風速として、例えば、
D=0.0027+0.031×U
と設定する。
【0084】
なお、前記の日射量、大気温度(気温)、湿度、降水量、風速は気象データベースDB10から読み出される。また、地表面反射率はプログラムに組み込まれた一定値が用いられるが、例えば土壌熱定数データベースDB1に地表面を構成する土壌ごとに反射率を記録しておき、それを読み出して用いるようにしてもよい。
【0085】
そして、式(4)で示される地表面でのトータルの熱収支量q1に各節点によって代表される地表面の領域の面積を掛けた値が、前述の式(3)における熱荷重ベクトル[Q]の地表面に位置する節点についての項Qjの値として用いられる。
【0086】
また、ケーブル導体における内部発熱量q2については、
q2=(I2×RAC)/S (5)
と定義する。
【0087】
この式(5)の分子は、ケーブルの単位長さあたりの発熱量(J/sec・cm)を示し、これをケーブルの導体部分の断面積Sで割った値が、導体の単位時間、単位体積あたりの内部発熱量(J/sec・cm3)となる。
【0088】
ここで、Iは電流(A)、RACはケーブルの単位長さあたりの抵抗(Ω/cm)であり、RACはケーブルデータベースDB6から求められる。また、電流Iは、別途設定された値と負荷率データベースDB11とを用いて求められる。
【0089】
そして、式(5)で示される内部発熱量q2にケーブル導体内の節点によって代表される領域の体積を掛けた値が、前述の式(3)における熱荷重ベクトル[Q]の当該節点についての項Qjの値として用いられる。
【0090】
さらに、洞道壁内面やケーブル及び冷却水管路表面等の洞道内空気接触面の節点の伝熱量q3、及び洞道内空気の伝熱量q4は、前記空気接触面と空気との間の熱伝達によるものとして求められ、図17に示すように、洞道内空気を代表する節点の温度をTa、空気接触面における各節点の温度をTfx(x=1、2、…、i、j、…、n、…)とすれば、
空気接触面における各節点の伝熱量q3は、
q3=α(Tfx−Ta) (6)
で示され、洞道内空気を代表する節点の伝熱量q4は、
q4=αΣ(Tfx−Ta) (7)
で示される。
【0091】
同様に、冷却水管路内面の伝熱量q5及び冷却水の伝熱量q6も、管路内面と冷却水との間の熱伝達によるものとして求められ、図18に示すように、冷却水を代表する節点の温度をTw、管路内面における各節点の温度をTgx(x=1、2、…)とすれば、
冷却水管路内面の各節点の伝熱量q5は、
q5=α′(Tgx−Tw) (8)
で示され、冷却水を代表する節点の伝熱量q6は、
q6=α′Σ(Tgx−Tw) (9)
で示される。
【0092】
そして、これらの値q3〜q6に当該節点で代表される領域の面積を掛けた値が、前述の式(3)で、熱荷重ベクトル[Q]の当該節点についての項Qjの値として用いられる。
【0093】
なお、前記式(6)、(7)におけるαは、洞道内における空気接触面の各節点と空気との間の平均熱伝達率であり、前記式(8)、(9)におけるα′は、冷却水管路内面の各節点と冷却水との間の平均熱伝達率であって、
α、α′=Nu・λ/d(単位:J/sec・cm2・℃)
で示される。
【0094】
ここで、λは空気又は冷却水の熱伝導率(J/sec・℃)、dは、洞道については、洞道内の空間断面積と等しい面積の円形の直径(等価径)(cm)であり、冷却水管路については、その管路内径(cm)である。
【0095】
また、Nuはヌセルト数であって、流速0の場合、即ち洞道内空気もしくは冷却水が停止しているときは、例えば、定常状態の層流熱伝達の式から、
Nu=3.66
とされ、空気や冷却水が移動している場合には、例えば、管内の乱流熱伝達の式、
Nu=0.023・Re0.8・Pr0.4
が用いられる。なお、Reはレイノルズ数、Prはプラントル数で、それぞれ
Re=ωd/ν
Pr=ν/a
であり、ωは洞道内空気又は冷却水の平均流速(cm/sec)、νは洞道内空気又は冷却水の動粘性係数(cm2/sec)、aは洞道内空気又は冷却水の温度伝導率(cm2/sec)である。
【0096】
したがって、洞道内空気又は冷却水が停止しているときは、前記平均熱伝達率は、
α、α′=3.66・λ/d
移動しているときは、
α、α′=0.023・(ωd/ν)0.8・(ν/a)0.4・λ/d
となる。
【0097】
そして、洞道内空気及び冷却水の熱伝導率λ、動粘性係数ν及びプラントル数Pr(=ν/a)は、図11、図12の空気物性データベースDB7、冷却水物性データベースDB8から、そのときの洞道内空気もしくは冷却水の温度に応じて読み取られる。
【0098】
また、径dは、洞道については予め設定されたデータから算出され、冷却水管路の場合は図9の管路寸法データベースDB5から読み取られる。さらに、平均流速ωは、洞道内空気については解析時に設定される風速から、冷却水については径dと予め設定された冷却水の流量とから求められる。
【0099】
ここで、図19に、各種条件で洞道内に空気を流したときのレイノルズ数Remin(空気温度:60℃)、Remax(空気温度:−20℃)を示すが、いずれも乱流条件の2320を超え、これらの条件での流れは乱流であることが示されている。
【0100】
同様に、図20に、冷却水管路として一般に使用される各内径の管路に、流量を異ならせて、0℃及び60℃の冷却水をそれぞれ流したときのレイノルズ数Remin(冷却水温度:0℃)、Remax(冷却水温度:60℃)を示すが、冷却水についても、いずれも乱流条件の2320を超え、これらの条件での流れは乱流であることが示されている。
【0101】
一方、前記式(6)、(7)における洞道内空気温度Ta、及び前記式(8)、(9)における冷却水温度Twは、詳細は後述するが、おおよそ次のような方法で求められる。
【0102】
つまり、ケーブル及び冷却水管路が配設された洞道を横断する複数の解析面を設定し、洞道内空気、及び冷却水の初期値を与えた上で、各解析面ごとに、ケーブルの内部発熱量や地表面における熱収支量などを考慮し、前記各式に基づいて、所定の時間間隔(解析周期)で有限要素解析を行う。これにより、各解析面の解析領域内の他の全ての節点と同時に、洞道内空気及び冷却水を代表する節点の温度Ta、Twが計算される。
【0103】
その場合に、洞道内では、強制換気或いは自然発生による空気の移動が生じている場合があり、また、冷却起動時には管路内を冷却水が移動するので、それらの流体の移動に対応させて、所定の解析周期ごとに、上流側の解析面から下流側の解析面へ、洞道内空気温度Ta及び冷却水温度Twを受け渡す処理を行う。
【0104】
この洞道内空気温度Ta及び冷却水温度Twの受け渡し処理は、洞道内空気又は冷却水の少なくとも一方が移動しているときは、まず、その移動によって空気又は冷却水が隣接解析面間を移動する時間のうちの最も長い時間、即ち全ての隣接解析面間で流体の移動が終了する時間(最長移動時間)を予め算出しておく。
【0105】
そして、解析開始時や流体が移動を開始した時点から前記最長移動時間が経過した直後の解析周期で、各解析面ごとに個別に全節点温度の計算をした後に、各解析面において、流体がその解析面から下流側の解析面まで流れるのに要する時間の間に温度がどのように変化したかを補間処理を行いながら算出し、その算出した温度を下流側の解析面における空気温度Ta及び冷却水温度Twとする。
【0106】
このようにして全ての解析面間で流体の移動が終了する解析周期ごとに受け渡し処理を行って得られた空気温度Taや冷却水温度Twを式(6)、(7)の空気温度、式(8)、(9)の冷却水温度として用いながら解析を続行することにより、洞道内空気の移動や冷却水の移動による冷却効果を反映しながら、各解析面におけるケーブル導体温度の変化がシミュレーションされることになる。
【0107】
以上のシミュレーション方法は、具体的には図4に示すコンピュータ10の記録装置14に記録媒体20から読み込まれて記録されたプログラム及び各種データベースDB1〜DB11、並びに入力装置12によって入力された各種データ等に基づき、中央処理装置11が実行することになり、以下、これらのシミュレーション動作をフローチャートやコンピュータ10の表示装置15に表示される画面を用いて説明する。
【0108】
まず、コンピュータ10上で当該システムを起動させると、表示装置15に、図21に示すモデル選択画面W1が表示され、この画面W1上で、解析しようとするモデルが洞道モデルか埋設モデルかの選択を行う。その場合に、冷却水管路が配設されているか否かの選択も併せて行う。
【0109】
これにより、図22のフローチャートに従って、解析対象モデルが、冷却水管路が配設されている冷却洞道モデル、冷却水管路が配設されていない非冷却洞道モデル、冷却水管路が配設されている冷却埋設モデル、冷却水管路が配設されていない非冷却埋設モデルのいずれであるかが決定される。
【0110】
ここで、以下の説明では、洞道内空気及び冷却水の両者について温度の受け渡し処理が行われる冷却洞道モデルを選択したものとして説明する。
【0111】
図23は、この冷却洞道モデルのメインルーチンのフローチャートを示し、まず、ステップS1で、コンピュータ10の表示装置15に表示される図24の画面W2上で、冷却水管路が配設されている区間に、該管路やケーブルを含めて洞道を横断する複数の解析面を設定する。その場合に、図25に示すように、冷却水供給装置7に最も近い位置に最初の解析面A(位置0.00)を設定し、管路6の折り返し点に向かって順次後続の解析面B、C、Dの位置を入力する。
【0112】
次に、メインルーチンのステップS2で、解析面上における洞道、ケーブル、冷却水管路の配置や洞道周辺の構成等、洞道構成の設定を行う。この設定は、図26に示す画面W3上で、次のように行われる。
【0113】
まず、解析面の番号、及び所定の解析領域の基準点に対する洞道基準点の位置(X座標)を入力した後、洞道のサイズとして、幅、高さ、壁厚、及び深さ(解析領域の基準点に対する洞道基準点のY座標)を入力する。
【0114】
次に、洞道周囲の土層について、その幅及び深さを設定する。この幅及び深さで示される領域が、当該解析面における解析領域となる。その場合に、自動設定チェックボックスをオンにすれば、この解析領域が洞道サイズ等に基づいて自動的に設定されるようになっている。また、土壌の種類が異なる土層が複数ある場合には、各層ごとに層厚を入力することになる(最下層の層圧は、上層の層圧と深さとから算出される)。
【0115】
また、ケーブルについては、線路数と、各線路についての1相布設タイプや3条俵積タイプ等の構成と、洞道内における配設位置(X座標、Y座標)と、各線路を構成するケーブルの電圧、種類、及びサイズ(芯数)等を設定する。このとき、ケーブルデータベースDB6から設定したケーブルについての各種データが読み出され、後の有限要素分割や解析に用いられる。図例の場合、線路数3で、各線路3条俵積タイプの場合を示している (図28参照)。
【0116】
さらに、冷却水管路については、管路の数、各管路についてのGo管及びRe管の中心位置、管路タイプを設定する。そして、管路タイプを設定することにより、その内、外径が管路寸法データベースDB5から読み出されて表示されるようになっている。
【0117】
これにより、解析領域における洞道に関する構成、及びその周囲の洞道壁や土層に関する構成、洞道内のケーブル及び冷却水管路の構成等、洞道及びその内外の構成が確定されることになり、その領域を有限要素分割してなる有限要素解析モデルが自動作成され、モデル全体が、図27に示すように画面W4に表示され、その要部が、図28に示すように画面W5に表示される。
【0118】
次に、メインルーチンのステップS3として、図29の画面W6上で土壌データを設定する。つまり、この画面W6に表示される入力用フォームには、記録装置14に記録されている土壌熱定数データベースDB1から読み出された土壌の種類がプルダウンメニューに表示されるので、その中から今回の解析対象となる土壌の種類を指定する。このとき、前記土壌熱定数データベースDB1から読み出されたその土壌の質量密度、比熱、熱抵抗等の熱定数が表示される。なお、土層が複数設定されている場合には、各土層ごとに種類を指定することになる。
【0119】
次に、メインルーチンのステップS4として、図30に示す画面W7上で洞道データを設定する。つまり、この画面W7に表示される入力用フォームには、記録装置14に記録されている洞道壁熱定数データベースDB2から読み出された洞道壁材料の種類がプルダウンメニューに表示されるので、その中から今回の解析対象となる洞道壁材料の種類を指定する。このとき、前記洞道壁熱定数データベースDB2から読み出されたその洞道壁材料の質量密度、比熱、熱抵抗等の熱定数が表示される。
【0120】
以上のようにして、画面W2で設定した複数の解析面の全てに対して、各種の設定を繰り返し行うことになるが、洞道及びその内外の構成要素の位置や形状等が全解析面で同一である場合には、画面W2において全解析面同一形状のチェックボックスをオンにすることにより、最初の解析面Aについて設定した構成がそのまま他の解析面いついても設定されることになる。
【0121】
そして、ステップS5で、全解析面に対する洞道及びその内外の構成を設定すれば、次に、ステップS6で、換気条件等の空気の移動に関するデータを設定する。この設定は、図31に示す画面W8上で行われ、まず、換気の起動及び停止のタイムスケジュールを設定し、また、換気起動時の風速、停止時の風速をそれぞれ設定する。
【0122】
その場合に、換気停止時については、完全に空気の移動が停止する場合と、自然に流れが発生する場合とがあるので、それらの場合の風速(0又は0より大きな値)を入力し、後者の場合には、換気起動時の流れの方向と同方向か逆方向かを指定する。また、洞道内空気の物性として、流動空気か静止空気かを指定し、さらに、洞道内空気の初期温度を設定する。なお、この初期温度については、気温データを参照して自動設定することもできるようになっている。
【0123】
次に、メインルーチンのステップS7で、冷却起動条件等の冷却水の移動に関するデータを設定する。この設定は、図32に示す画面W9を用いて行われ、冷却水の起動条件をケーブル通電電流かケーブル表面温度のいずれにするかを選択し、通電電流を選択したときには、冷却を開始する電流値と冷却を終了する電流値とを設定し、表面温度を選択したときは、冷却を開始する温度と冷却を終了する温度とを設定する。図例の場合、ケーブル表面温度の解析値が60℃を超えたときに冷却水を起動し、40℃まで低下すれば冷却水を停止することを示している。
【0124】
また、この画面W9では、冷却水の供給温度(入口温度)及び供給流量と、冷却水管路の折り返し部において、最終解析面上におけるGo管とRe管とで冷却水温度を同じにするか、Go管からRe管への温度の受け渡しを考慮するかを選択し、後者の場合は、最終解析面上におけるGo管からRe管までの冷却水の到達時間を入力するようになっている。
【0125】
以上の冷却水データの設定は、冷却水管路が複数ある場合には各管路ごとに行い、ステップS8で全管路についての設定の終了を判定するまで繰り返し実行する。
【0126】
さらに、メインルーチンのステップS9で、図33に示す画面W10を用いて通電条件の設定を行う。この画面W10には、線路番号ごとに、先に設定した線路構成等が表示される。そこで、番号が表示された線路について、ケーブルに通電する最大電流を入力すると共に、年上昇を考慮するか否かを選択し、考慮する場合には年上昇率を入力する。
【0127】
また、メインルーチンのステップS10で、図34に示す画面W11を用いて、解析対象地域に関するデータ、つまり、シミュレーションを行う地域とシミュレーションを開始する月とを設定する。これは、シミュレーション開始時に解析面の全領域の節点温度の初期値として、地温データベースDB9から読み出した当該地域各深さのシミュレーション開始月の地温を与え、かつ、気象データベースDB10から解析対象地域の各日時の気象データを読み出すためである。なお、解析開始等同時に空気や冷却水が移動を開始し、或いはこれらが移動している状態で解析を開始するときは、画面W8、W9で予め設定されている洞道内空気の初期温度及び冷却水の入口温度が用いられる。
【0128】
さらに、メインルーチンのステップS11で、図35に示す画面W12を用いて解析条件を設定する。即ち、この画面W12上で、今回のシミュレーションが初期解析であるかリスタート解析であるかを選択する。初期解析の場合は、解析期間を年数または終了時刻で指定すると共に、解析時間間隔の単位、例えば時間、日、月等と、計算結果の出力時間間隔を設定する。ここで、出力時間間隔は、解析周期Δtごとに行われる全解析の結果の出力か、別途入力する時間間隔かのいずれかを選択する。
【0129】
一方、リスタート解析の場合は、前記の設定に加えて、リスタートの基礎となるプロジェクトの名称及びそのプロジェクトを格納している記録装置14内の場所を指定すると共に、基礎となるプロジェクトの継続か中間時点からのリスタートかのいずれかを選択し、後者の場合は、リスタートする時点を指定する。また、リスタートに際して通電条件を変更する場合は、図33に示す画面W10で、通電電流の条件を再設定することになる。
【0130】
以上のようにして、すべての設定が終了し、設定されたデータがメモリ17に記録されると、メインルーチンのステップS12として、コンピュータ10の中央処理装置11がケーブルの導体温度シミュレーションのための解析処理を実行する。
【0131】
この処理動作については、改めて詳述するが、その解析処理が終了すれば、ステップS13として、その結果が例えば図36〜図38に示すように、コンピュータ10の表示装置15に表示され、また、要求に応じて印刷装置16によってプリントアウトされる。
【0132】
ここで、図36の画面W13は、解析開始後、所定時間経過時における洞道周辺の温度分布を示すものであり、図37の画面W14は、解析開始時からの洞道内空気温度の変化を示すものであり、図38の画面W15は、解析開始時からのケーブル導体温度の変化を示すものである。
【0133】
次に、前記メインルーチンのステップS12の解析処理実行時の動作を図39以下のサブルーチンのフローチャートに従って説明する。ここで、以下の説明では、図25に示すように、洞道及び冷却水管路を横断する4つの解析面A〜Dが設定されているものとする。
【0134】
まず、図39のフローチャートのステップS21で、メモリ17に記録され或いは記録装置14に記録されているデータベースから必要なデータを読み込み、次いでステップS22で、現時刻tに初期値0をセットする。
【0135】
そして、ステップS23で、現時点が予め図31の画面W8で設定した換気スケジュール等にてらして換気起動条件が成立しているか否かを判定し、成立している場合は、ステップS24で、風速を前記画面W8で設定した換気起動時の値にセットし、換気条件が成立していない場合は、ステップS25で、同じく画面W8で設定した換気停止時の値にセットする。
【0136】
次に、ステップS26で、解析時間間隔(解析周期)Δtを設定すると共に、各解析面間での空気移動時間及び冷却水移動時間のうちの最も長い最長移動時間Δtcを算出する。これらの移動時間は、空気については、各解析面間の距離と風速とに基づいて、冷却水については、各解析面間の距離と流量と管路断面積とに基づいて、それぞれ算出される。
【0137】
また、ステップS27で、現在、洞道内空気の風速が0より大という条件と、予め図32の画面W9で設定した冷却起動条件の少なくとも一方が成立しているか否かを判定する。そして、少なくとも一方の条件が成立しているとき、即ち洞道内空気又は冷却水の少なくとも一方が移動しているときは、ステップS28で、現在の時刻tを流体の温度受渡し基準時刻tpにセットする。なお、前記両条件とも成立していないとき、即ち洞道内空気及び冷却水の両者とも移動していないときは、この基準時刻tpのセットは行われない。
【0138】
そして、ステップS29で、時刻tに解析周期Δtを加算し、これを現時刻tとすると共に、ステップS30で、その時刻tが解析終了時刻に達しているか否かを判定する。
【0139】
解析開始当初は解析終了時刻に達していないから、次にステップS31を実行することになり、各解析面のそれぞれについて、前回の解析時刻(t-Δt)での解析領域内の全節点の温度から、現時刻tにおける全節点の温度を計算する。
【0140】
最初の解析時は、各節点の温度は初期値、即ち、洞道内空気を代表する節点については、図31に画面W8で設定した初期温度又は地温データベースDB9から読み取った深さ等に応じた地温、冷却水を代表する節点については、図32の画面W9で設定した入口温度又は深さ等に応じた地温、その他の節点については深さ等に応じた地温であり、これらの値から現在の温度を求めることになる。
【0141】
この前回解析時の値(又は初期値)から時間Δt後の現時刻tにおける各節点の温度を求める計算は、前述した式(1)〜(5)で示す理論に基き、図40にフローチャートを示すサブルーチンによって次のように行われる。ここで、熱容量マトリクス[C]及び熱伝導マトリクス[K]は温度及び時間に対する依存性を有しないものとし、前述の式(3)における[C]t″、[K]t″の各項の値は、いずれも各要素の熱定数を記録したデータベースDB1、DB2、DB3、DB4、DB6等から読み取られる値に基づいて算出される固定値とする。
【0142】
まず、ステップS41で、画面W4や画面W5に示すように有限要素分割された解析モデルについて、前記データベースから読み出した各要素の質量密度、比熱、及び比熱容量等のデータを用い、全解析対象領域にわたる各節点間の熱容量を算出し、これを各項の値とする熱容量マトリクス[C]を作成する。
【0143】
また、ステップS42で、同じく前記データベースから読み出した各要素の熱抵抗、固有熱抵抗等のデータを用い、全解析領域にわたる各節点間の熱伝導率を算出し、これを各項の値とする熱伝導マトリクス[K]を作成する。
【0144】
さらに、ステップS43で、当該時点における熱荷重ベクトル[Q]を作成する。この熱荷重ベクトル[Q]の各項のうち、地表面に位置する節点に対応する項の値q1は、気象データベースDB10から読み出した該当する地域の当該時点の気象データを用い、前述の式(4)に従って算出される熱収支量に基づいて設定される。
【0145】
また、ケーブルの導体内に位置する節点に対応する項の値q2は、負荷率データベースDB11から読み出した該当する月、曜日、時間の負荷率と図33の画面W10上で設定した最大電流及び年上昇率とから当該時点の通電電流を算出すると共に、その電流値と、ケーブルデータベースDB6から読み出した該当するケーブルのRACのデータとを用いて、前述の式(5)から算出される内部発熱量に基づいて設定される。
【0146】
さらに、洞道内における空気接触面の節点及び洞道内空気を代表する節点に対応する項の値q3、q4は、前回の解析によって得られた空気接触面の各接点の温度Tfx(x=1、2…)と空気温度Taとに基づき、前述の式(6)、(7)からそれぞれ求められ、同様に、冷却水管路内面の節点及び冷却水を代表する節点に対応する項の値q5、q6は、前回の解析によって得られた管路内面の各接点の温度Tgx(x=1、2…)と冷却水温度Twとに基づき、前述の式(8)、(9)からそれぞれ求められる。
【0147】
また、前記以外の土層中等に位置する節点に対応する項の値は0とされ、これにより、現時点における熱荷重ベクトル[Q]の各項の値が設定される。そして、この熱荷重ベクトル[Q]を前述の式(3)における[Q]t″とする。
【0148】
以上のようにして、熱容量マトリクス[C]、熱伝導マトリクス[K]、及び熱荷重ベクトル[Q]t″が作成されると、次にステップS44で、前述の式(3)にこれらを代入し、時刻tでの節点温度ベクトル[θ]tから、時間Δt後の節点温度ベクトル[θ]t′を求める。
【0149】
つまり、温度ベクトル[θ]tの各項の値として、まず、前述の初期値を代入することにより、節点温度ベクトルの初期値[θ]t=0を作成し、また、各項の値が0の節点温度の時間微分ベクトルの初期値[dθ/dt]t=0を作成すれば、これらを基礎としてΔt時間後の温度ベクトル[θ]t′が順次計算されることになる。そして、ステップS45で、このΔt時間後の温度ベクトル[θ]t′をメモリ17に記録する。
【0150】
このようにして、図38のフローチャートのステップS31で、各解析面A〜Dのそれぞれについて、解析領域内の全節点の温度が周期Δtごとに計算されることになる。
【0151】
次に、ステップS32で、現在、洞道内空気の風速が0より大という条件と、予め設定した冷却起動条件の少なくとも一方が成立しているか否かを判定する。そして、両条件とも成立していないとき、即ち洞道内空気及び冷却水の両者とも移動していないときは、ステップS33以下の温度の受け渡し処理を実行することなく、ステップS23〜S31を繰り返し実行する。つまり、この場合は、毎解析周期Δtごとに、各解析面A〜Dのそれぞれについて、全節点の温度を他の解析面から独立して順次求めることになる。
【0152】
一方、前記両条件の少なくとも一方が成立しているとき、即ち洞道内空気又は冷却水の少なくとも一方が移動しているときは、ステップS33で、現時刻tが、ステップS28でセットした温度受渡し基準時刻TpにステップS26で算出した流体の最長移動時間Δtcを加えた時刻(tp+Δtc)を超えているか否かを判定する。そして、この時刻(tp+Δtc)を超えていなければ、ステップS29〜S31を繰り返し実行し、毎解析周期Δtごとに、ステップS31により、各解析面A〜Dについて、前回解析時の各節点温度から現時刻tの節点温度を順次計算する。
【0153】
そして、現時刻tが前記温度受渡し基準時刻tpに最長移動時間Δtcを加えた時刻(tp+Δtc)を超えた時点で、流体の温度受け渡し処理を行う。
【0154】
即ち、まずステップS34で洞道内空気が移動中か否かを判定し、移動中の場合は、ステップS35で上流側の解析面から下流側の解析面への空気温度の受け渡し処理を実行し、また、ステップS36で冷却水が移動中か否かを判定し、移動中の場合は、ステップS37で同じく上流側の解析面から下流側の解析面への冷却水温度の受け渡し処理を実行する。この場合は、洞道内空気の風速が0より大の条件又は冷却起動条件の少なくとも一方が成立しているので、ステップS35の空気温度の受け渡し処理、又はステップS37の冷却水温度の受け渡し処理の少なくとも一方は必ず実行されることになる。
【0155】
以上のようにして、洞道内空気及び冷却水の両者とも移動していないときは、毎解析周期ごとに各解析面ごとに独立した節点温度の計算を行うと共に、洞道内空気又は冷却水の少なくとも一方が移動しているときは、その移動開始時にセットした温度受渡し基準時刻tpから、移動している流体の各解析面間での最長移動時間Δtcが経過するまでは、前記の場合と同様に、毎解析周期ごとに各解析面ごとに独立した節点温度の計算を行う。そして、基準時刻tpから最長移動時間Δtcが経過した直後の解析周期、即ち移動している流体が全ての解析面間で移動を終了した周期で、洞道内空気又は冷却水の少なくとも一方についての温度の受け渡し処理を行う。
【0156】
そして、この受け渡し処理が終了した時点で、なおも洞道内空気又は冷却水の少なくとも一方が移動しているときは、ステップS28で、その時刻tを改めて温度受渡し基準時刻tpに設定した上で、その時刻から流体の最長移動時間Δtcが経過した直後の解析周期で、再度受け渡し処理を行うことになる。このようにして、流体が移動している間は、全解析面間でその移動が終了した周期ごとに移動した流体の温度の受け渡し処理を行う。これにより、流体の移動に伴う温度の移動を反映して各解析面における節点温度が計算されることになる。
【0157】
次に、前記ステップS35の洞道内空気温度の受け渡し処理、及びステップS37の冷却水温度の受け渡し処理の具体的動作を説明する。
【0158】
まず、洞道内空気温度の受け渡し処理を説明すると、この処理は図41にフローチャート示すサブルーチンにより行われ、まず、ステップS51で、最も上流側の解析面Aにおける空気温度TAを予め設定された初期温度Taoにセットする。
【0159】
そして、この初期温度Taoに基づいて、ステップS52で解析面Bの空気温度TBを算出することになるが、この算出は、図42にフローチャートを示すサブルーチンに従って行われ、まず、ステップS61で、解析面A、B間の空気の移動時間Δtabを予め計算して記録してあるメモリ17から読み出し、次いで、ステップS62で、この移動時間Δtabが、iΔtよりも大きく、(i+1)Δtよりも小さくなるiを求める。つまり、空気が移動開始した時刻tpからカウントして、何回目と何回目の解析周期の間に時間Δtabが経過するかを求めるのである。
【0160】
そして、ステップS63で、基準時刻tpからカウントしてi回目の解析周期(時刻:tp+iΔt)で計算した空気温度TAiと、(i+1)回目の解析周期(時刻:tp+(i+1)Δt)で計算した空気温度TA(i+1)とをメモリ17から読み出し、図43に示すように、これらの値を線形補間して、解析面Aの時刻(tp+Δtab)における空気温度を算出し、これを解析面Bにおける温度受け渡し処理実行周期の空気温度TBとする。
【0161】
今、例えば解析面A、B間の空気の移動時間Δtabが、解析周期Δtの倍数で表示したときに、0.6Δtであるとすると、i=0となり、この場合、空気移動開始時刻(基準時刻)tpの周期で解析面Aで計算された空気温度TAと、次の周期(時刻:tp+Δt)で計算された空気温度TAとを、6:4の内分比で補間した値が今回の受け渡し周期での解析面Bの空気温度TBとなる。
【0162】
以下、同様にして、図41のフローチャートのステップS53では、解析面B、C間の空気移動時間Δtbcについて、ステップS54では、解析面C、D間の空気の移動時間Δtcdについて、それぞれ図42のフローチャートに示す処理と同様の処理を行い、解析面C、Dの受け渡し処理後の空気温度TC、TDを算出する。
【0163】
このようにして、受け渡し周期ごとに、上流側の解析面における空気温度が、次の解析面まで空気が移動するまでに要した時間の間に何度に変化したかを算出し、その算出した温度を、当該受け渡し周期で、次の解析面において計算した温度に置き換えて、その解析面の空気温度とするのである。
【0164】
なお、以上の説明は洞道内空気が解析面A側から解析面Dに向かって移動している場合であるが、解析面D側から解析面Aに向かって移動する場合の空気温度の受け渡し処理は図44のフローチャートに従って行われる。
【0165】
即ち、まず、ステップS71で、最も上流側の解析面Dにおける空気温度TDを予め設定された初期温度Taoにセットする。そして、この初期温度Taoに基づいて、ステップS72で解析面Cの空気温度TCを算出する。
【0166】
この温度TCの算出は、図45にフローチャートを示すサブルーチンに従って行われ、まず、ステップS81で、解析面D、C間の空気の移動時間Δtdcを予め計算して記録してあるメモリ17から読み出し、次いで、ステップS82で、この移動時間Δtdcが、iΔtよりも大きく、(i+1)Δtよりも小さくなるiを求める。
【0167】
そして、ステップS83で、解析面Dの基準時刻tpからカウントしてi回目の解析周期(時刻:tp+iΔt)で計算した空気温度TDiと、(i+1)回目の解析周期(時刻:tp+(i+1)Δt)で計算した空気温度TD(i+1)とをメモリ17から読み出し、前述の場合と同様に、これらの値を線形補間して、解析面Dにおける時刻(tp+Δtdc)における空気温度を算出し、これを、解析面Cにおける温度受け渡し処理実行周期の空気温度TCとする。
【0168】
そして、以下、同様にして、図44のフローチャートのステップS73では、解析面C、B間の空気移動時間Δtcbについて、ステップS74では、解析面B、A間の空気の移動時間Δtbaについて、それぞれ図45のフローチャートに示す処理と同様の処理を行い、解析面B、Aの受け渡し処理後の空気温度TB、TAを算出する。これにより、図39のフローチャートのステップS35の洞道内空気温度の受け渡し処理が終了することになる。
【0169】
一方、冷却水温度の受け渡し処理もほぼ同様に行われるが、この処理は図46にフローチャート示すサブルーチンにより行われ、まず、ステップS91で、解析面AのGo管の温度として、入口温度Twoを代入する。
【0170】
次いで、ステップS92で、解析面BのGo管の温度を算出することになるが、この算出は、図47に示すフローチャートに従って次のように行われる。
【0171】
即ち、ステップS101で、予め計算してメモリ17に記録してある解析面AのGo管から解析面BのGo管まで冷却水が移動する時間Δt′abを読み出し、次いで、ステップS102で、この移動時間Δt′abが、iΔtよりも大きく、(i+1)Δtよりも小さくなるiを求める。つまり、冷却水起動時からカウントして、何回目と何回目の解析周期の間に時間Δ′tabが経過するかを求めるのである。
【0172】
今、例えば、Δt′ab=1.6Δtであるとすると、i=1であって、この移動時間Δt′abは、温度受渡し基準時刻tpの後、1回目の解析周期と2回目の解析周期との間で経過することになる。
【0173】
そして、前記iを求めた後、次にステップS103で、解析面AのGo管のi回目の解析周期(時刻:tp+iΔt)における温度TAGiと、(i+1)回目の解析周期(時刻:tp+(i+1)Δt)における温度TAG(i+1)とをメモリ17から読み出し、これらの値を移動時間Δt′abの値に応じて線形補間し、これによって得られた値を、計算によって得られた値に代えて、解析面BのGo管温度TGBとする。
【0174】
図46のフローチャートのステップS93、S94の解析面CのGo管温度TCGの算出、解析面DのGo管温度TDGの算出も、図47にフローチャートを示すサブルーチンと同様のサブルーチンによって行われ、それぞれ上流側の解析面B、CにおけるGo管温度をそれぞれの解析面間での移動時間Δt′bc、Δt′cdに応じて補間した値を、当該温度受け渡し周期における解析面CのGo管温度TCG、解析面DのGo管温度TDGとする。
【0175】
また、図46のフローチャートのステップS95の冷却水管路の折り返し点における温度の受け渡し、即ち、解析面DにおけるGo管からRe管への温度の受け渡しは、図48にフローチャートを示すサブルーチンにより、次のように行われる。
【0176】
まず、ステップS111で、図32の画面W9で冷却水路について、最終解析面DでのGo管からRe管への冷却水温度の受け渡しをどのように設定したかを判定し、Go管温度とRe管温度とを同一にするものと設定した場合には、ステップS112で、解析面Cの温度から線形補間により求めた解析面DのGo管温TDGを、解析面DのRe管温度TDRとしても採用する。
【0177】
これに対して、最終解析面DのGo管からRe管への冷却水の移動にある程度の時間Δt′ddを要すると設定した場合は、ステップS113で、前記移動時間Δt′ddを読み出し、ステップS114で、その時間Δt′ddが、iΔtよりも大きく、(i+1)Δtよりも小さくなるiを求める。
【0178】
そして、このiを求めた後、次にステップS114で、解析面DのGo管のi回目の解析周期(時刻:tp+iΔt)における温度TDGiと、(i+1)回目の解析周期(時刻:tp+(i+1)Δt)における温度TDG(i+1)とをメモリ17から読み出し、これらの値を移動時間Δt′ddの値に応じて線形補間し、これによって得られた値を解析面DのRe管温度TDRとする。
【0179】
さらに、図46のフローチャートのステップS96で、解析面CのRe管の温度が、図49に示すフローチャートに従って次のように行われる。
【0180】
即ち、ステップS121で、メモリ17から、解析面DのRe管から解析面CのRe管まで冷却水が移動する時間Δt′dcを読み出し、次いで、ステップS122で、この移動時間Δt′dcが、iΔtよりも大きく、(i+1)Δtよりも小さくなるiを求める。
【0181】
そして、次にステップS123で、解析面DのRe管のi回目の解析周期(時刻:tp+iΔt)における温度TDRiと、(i+1)回目の解析周期(時刻:tp+(i+1)Δt)における温度TDR(i+1)とをメモリ17から読み出し、これらの値を移動時間Δt′cdの値に応じて線形補間して、解析面DのRe管の時刻(tp+Δt′dc)における温度を算出し、これを解析面CのRe管の温度受け渡し処理実行周期の冷却水温度TCRとする。
【0182】
さらに、図46のフローチャートのステップS97、S98による解析面BのRe管温度TBRの算出、及び解析面AのRe管温度TARの算出も、図47にフローチャートを示すサブルーチンと同様のサブルーチンによって行われ、それぞれ上流側の解析面C、BにおけるRe管温度をそれぞれの解析面間での移動時間Δt′cb、Δt′baに応じて補間した値を、当該温度受け渡し周期における解析面BのRe管温度TBR、及び解析面AのRe管温度TARとする。
【0183】
以上のようにして、図39のフローチャートのステップS37の冷却水温度の受け渡し処理が終了することになる。
【0184】
ここで、前記の空気温度の受け渡し処理及び冷却水温度の受け渡し処理を含むシミュレーション動作の全体を具体的に説明する。
【0185】
今、図25に示すように、ケーブル4が配設された洞道1内に冷却水供給装置7から延びて、Uターンした後、該冷却水供給装置7に戻る冷却水管路6が配設されているものとし、この冷却水管路6が配設された区間に洞道1を横断する4つの解析面A〜Dを設定したものとする。
【0186】
そして、まず、各隣接解析面間での空気移動時間Δtab、Δtbc、Δtcd、及び各解析面間での冷却水移動時間Δt′ab、Δt′bc、Δt′cd、Δt′dd、Δt′dc、Δt′cb、Δt′baのうちの最も長い最長移動時間Δtcを、空気については、各解析面間の距離と風速とに基づいて、冷却水については、各解析面間の距離と流量と管路断面積とに基づいて、それぞれ算出する。
【0187】
ここで、洞道内空気は解析面Aから解析面Dに向けて流れるものとする。さらに、冷却水移動時間のうち、Δt′ab、Δt′bc、Δt′cdはGo管の移動時間、Δt′dc、Δt′cb、Δt′baはRe管の移動時間を示すが、同一解析面間の移動時間はGo管とRe管とで等しいものとする。また、Δt′ddは、Go管で解析面Dを通過してからUターンして、Re管で解析面Dを通過するまでの時間である。
【0188】
そして、これらの移動時間を解析周期Δtの何倍かという形式で示したときに、例えば次のようになったものとする。
【0189】
(換気起動時の空気移動時間)
Δtab=0.4Δt
Δtbc=0.2Δt
Δtcd=0.6Δt
(換気停止時の空気移動時間)
Δtab=3.2Δt
Δtbc=1.6Δt
Δtcd=4.8Δt
(冷却起動時の冷却水移動時間)
Δt′ab=Δt′ba=1.6Δt
Δt′bc=Δt′cb=0.8Δt
Δt′cd=Δt′dc=2.4Δt
Δt′dd=1.2Δt
なお、換気停止時の風速が0に設定されている場合は、換気停止時の空気移動時間の算出は行われない。
【0190】
前記の例の場合、最長移動時間Δtcは、それぞれの状態で次のようになる。
【0191】
換気起動、冷却起動時:2.4Δt(冷却水の解析面C、D間の移動時間)
換気起動、冷却停止時:0.6Δt(空気の解析面C、D間の移動時間)
換気停止、冷却起動時:4.8Δt(空気の解析面C、D間の移動時間)
換気停止、冷却停止時:4.8Δt(空気の解析面C、D間の移動時間)
なお、換気停止時の風速が0の場合、冷却起動時の最長移動時間Δtcは、冷却水の最長移動時間2.4Δtとなり、冷却停止時は、温度の受け渡し処理は行われない。
【0192】
また、換気スケジュール、及び冷却起動条件、停止条件の成立により、例えば図50のタイムチャートに示すようなスケジュールで換気及び冷却が起動、停止するものとする。
【0193】
この場合の各解析面における空気温度及び冷却水温度の計算結果は図51に示す通りであるが、まず、解析開始時に、換気起動状態にあるから、解析面Aの洞道内空気温度TA0に空気温度の初期温度Taoがセットされる。また、解析面B〜Dの空気温度TB0〜TD0は、当該深さ等に応じた地温に等しい値となる。また、各解析面A〜DのGo管及びRe管の冷却水温度TAG0〜TDG0、TDR0〜TAR0については、冷却水は移動していないから、当該深さ等に応じた地温に等しい値がそれぞれセットされる。
【0194】
そして、解析開始時(時刻t=0)から3回目の解析周期(時刻t=3Δt)までの換気のみ起動した状態では、最長移動時間Δtcは、空気が解析面C、D間を移動する時間Δtcd=0.6Δtであるから、毎解析周期ごとに空気温度の受け渡し処理が行われることになる。
【0195】
つまり、1回目の解析周期Δtでは、解析面Aの空気温度TA1に前記初期温度Taoがセットされると共に、解析面Bの温度TB1については、計算された温度に変えて、解析面Aにおける最初の温度TA0(Tao)と計算によって得られた時刻Δtの温度TA1とを、Δtab=0.4Δtであるから、4:6の内分比で補間した値TA0−1とされる。
【0196】
同様に、解析面Cの温度TC1は、解析面Bにおける最初の温度TB0と計算によって得られた時刻Δtの温度TB1とを、Δtbc=0.2Δtであるから、2:8の内分比で補間した値TB0−1とされ、解析面Dの温度TD1は、解析面Cにおける最初の温度TC0と計算によって得られた時刻Δtの温度TC1とを、Δtcd=0.6Δtであるから、6:4の内分比で補間した値TC0−1とされる。
【0197】
また、次の解析周期2Δtでは、解析面Aの空気温度TA2には、再び前記初期温度Taoがセットされると共に、解析面Bの温度TB2については、計算された温度に変えて、解析面Aにおける1回目の解析周期で計算された温度TA1と今回の解析周期で計算された温度TA2とを、4:6の内分比で補間した値TA1−2とされる。
【0198】
同様に、解析面Cの温度TC1は、計算された温度に変えて、解析面Bにおける1回目の解析周期で計算された温度TB1と今回の解析周期で計算された温度TB2とを、2:8の内分比で補間した値、TB1−2とされ、解析面Dの温度TD2は、解析面Cにおける1回目の解析周期で計算された温度TC1と今回の解析周期で計算さ温度TC2とを、6:4の内分比で補間した値TC1−2とされる。
【0199】
さらに、3回目の解析周期3Δtにおいても同様に、解析面Aの空気温度TA2には初期温度Taoがセットされると共に、解析面B〜Dの温度TB3、TC3、TD3については、それぞれ計算された温度に変えて、上流側の解析面A〜Cにおいて2回目と3回目の解析周期で計算された温度をそれぞれの移動時間に応じた内分比で補間した値TA2-3、TB2−3、TC2−3とされる。
【0200】
なお、以上の解析開始から3回目の解析周期までの間は、冷却水は移動していないから、図51に示すように、各解析面のGo管温度TAG1〜TDG1、TAG2〜TDG2、TAG3〜TDG3、及びRe管温度TDR1〜TAR1、TDR2〜TAR2、TDR3〜TAR3は、それぞれの解析面で独立して計算された値がセットされる。
【0201】
次に、3回目の解析周期3Δtから9回目の解析周期9Δtまでは、換気が起動した状態で冷却も起動し、洞道内空気及び冷却水が共に移動することになる。この場合、まず、時刻3Δtで、解析面Aにおける冷却水のGo管温度TAG3に冷却水の入口温度Twoがセットされる。
【0202】
そして、この場合の流体の最長移動時間Δtcは、解析面C、D間の冷却水の移動時間Δt′cd(Δt′dc)=2.4Δtであるから、3解析周期ごとに温度の受け渡し処理が行われることになる。
【0203】
したがって、図51に示すように、4回目の解析周期4Δt、5回目の解析周期5Δt、7回目の解析周期7Δt、及び8回目の解析周期8Δtでは、洞道内空気及び冷却水とも、各解析面でそれぞれ独立して計算された温度となる。
【0204】
つまり、4回目の解析周期における各解析面の空気温度TA4〜TD4、冷却水のGo管温度TAG4〜TDG4、Re管温度TDR4〜TAR4、5回目の解析周期における各解析面の空気温度TA5〜TD5、冷却水のGo管温度TAG5〜TDG5、Re管温度TDR5〜TAR5、7回目の解析周期における各解析面の空気温度TA7〜TD7、冷却水のGo管温度TAG7〜TDG7、Re管温度TDR7〜TAR7、及び8回目の解析周期における各解析面の空気温度TA8〜TD8、冷却水のGo管温度TAG8〜TDG8、Re管温度TDR8〜TAR8は、いずれも各解析面で独立して計算された値がそのまま採用される。
【0205】
そして、6回目の周期、及び9回目の解析周期では、それぞれの解析面において温度の受け渡し処理が行われる。
【0206】
つまり、まず、6回目の解析周期では、解析面Aの空気温度TA6については、初期温度Taoがセットされると共に、解析面B〜Dの空気温度TB6、TC6、TD6については、上流側の解析面からの移動時間Δtab、Δtbc、ΔtcdがいずれもΔt未満であるので、上流側の解析面における3回目の解析周期3Δtで得られた受け渡し処理後の温度と、4回目の解析周期で各解析面で計算された温度とをそれぞれの移動時間に応じた内分比で補間した値TA3−4、TB3−4、TC3−4とされる。
【0207】
また、冷却水については、解析面AのGo管温度TAG6には、入口温度Twoがセットされると共に、解析面BのGo管温度TBG6は、Δt′ab=1.6Δtであるから、4回目の解析周期で解析面Aについて計算された温度TAG4と5回目の解析周期で計算された温度TAG5を、6:4の内分比で補間した値TAG4−5となり、解析面CのGo管温度TCG6は、Δt′bc=0.8Δtであるから、3回目の解析周期で解析面Bについて計算された温度TBG3と4回目の解析周期で計算された温度TBG4を、8:2の内分比で補間した値TBG3−4となり、解析面DのGo管温度TDG6は、Δt′cd=2.4Δtであるから、5回目の解析周期で解析面Cについて計算された温度TCG5と6回目の解析周期で計算された温度TCG6を、4:6の内分比で補間した値TCG5−6となる。
【0208】
また、Re管温度については、解析面DのRe管温度TDR6については、Δt′dd=1.2Δtであるから、その上流側の解析面DのGo管について4回目の解析周期で計算された値TDG4と5回目の解析周期で計算された値TDG5とを2:8の内分比で補間した値TDG4−5となる。なお、解析面DのRe管温度TDR6については、予め設定しておくことにより、その上流側の解析面DにおけるGo管温度TDG6と同じ温度にセットする場合もある。
【0209】
以下、解析面C〜AのRe管温度TCR6、TBR6、TAR6についても、同様に、上流側の解析面をそれぞれの移動時間に応じて補間した値TDR5−6(Δt′dc=2.4Δt)、TCR3−4(Δt′cb=0.8Δt)、TBR4−5(Δt′ba=1.6Δt)とされる。
【0210】
そして、9回目の解析周期ついても、6回目の解析周期と全く同様に、解析面Aの空気温度TA9及び冷却水のGo管温度TAG9に初期温度Tao、入口温度Twoがそれぞれセットされると共に、他の解析面については、上流側の解析面における温度を移動時間に応じて補間した値に置き換えられる。
【0211】
さらに、9回目の解析周期9Δtから15回目の解析周期15Δtまでは、冷却が起動し、換気が停止した状態となるが、洞道内には自然の空気の流れが発生しているものとする。
【0212】
そして、この場合の流体の最長移動時間Δtcは、解析面C、D間の換気停止時の空気の移動時間移動時間Δtcd=4.8Δtであるから、5解析周期ごとに温度の受け渡し処理が行われることになる。
【0213】
したがって、図51に示すように、10回目の解析周期10Δt、11回目の解析周期11Δt、12回目の解析周期12Δt、及び13回目の解析周期13Δtでは、洞道内空気及び冷却水とも、各解析面でそれぞれ独立して計算された温度となる。つまり、各解析周期の空気温度TA10〜TD10、TA11〜TD11、TA12〜TD12、TA13〜TD13、冷却水のGo管温度TAG10〜TDG10、TAG11〜TDG11、TAG12〜TDG12、TAG13〜TDG13、及び冷却水のRe管温度TDR10〜TAR10、TDR11〜TAR11、TDR12〜TAR12、TDR13〜TAR13は、いずれも各解析面で独立して計算された値がそのまま採用される。
【0214】
そして、換気が停止してから5回目、即ち最初から14回目の周期14Δtでは、それぞれの解析面において温度の受け渡し処理が行われる。
【0215】
つまり、まず、解析面Aの空気温度TA14については、初期温度Taoがセットされると共に、解析面B〜Dの空気温度TB14、TC14、TD14については、上流側の解析面からの移動時間Δtab、Δtbc、Δtcdに応じて、上流側の解析面で計算された温度を補間した値TA12−13(Δtab=3.2Δt)、TB10−11(Δtbc=1.6Δt)、TC13−14(Δtcd=4.8Δt)とされる。
【0216】
また、冷却水については、解析面AのGo管温度TAG14には、入口温度Twoがセットされると共に、解析面B〜DのGo管温度TBG14、TCG14、TDG14は、上流側の解析面からの移動時間に応じて、上流側の解析面で計算された温度を補間した値TAG12−13(Δt′ab=3.2Δt)、TBG10−11(Δt′bc=1.6Δt)、TDG13−14(Δt′cd=4.8Δt)とされ、同様に、Re管温度TDR14、TCR14、TBR14、TAR14については、TDG10−11(又はTDG14)、TDR13−14、TDCR10−11、TBR12−13とされる。
【0217】
そして、15回目の解析周期15Δtで、冷却も停止されるが、この場合、空気は換気停止時の風速で移動しているから、時刻14Δt以後も、空気温度については、5解析周期ごとに、前記時刻14Δtの場合と同様の受け渡し処理が行われる。この場合、冷却水温度の受け渡し処理は行われない。
【0218】
なお、換気停止時の風速が0の場合は、時刻9Δtから冷却が停止する時刻15Δtまでの間、冷却水についての最長移動時間Δtc(解析面C、D間の冷却水移動時間Δt′cd=2.4Δt)に基づいて、3周期ごとに冷却水の受け渡し処理が行われることになる。この場合、空気温度の受け渡し処理は行われない。そして、冷却も停止する時刻15Δt以後は、空気温度及び冷却水温度のいずれの受け渡し処理も行われず、各解析周期ごとに、各解析面でそれぞれ独立して計算された値が採用される。
【0219】
以上は、図21の画面W1で冷却水管路ありの冷却洞道モデルを選択した場合の冷却洞道モデルについての説明であるが、洞道モデルで冷却水管路なしを選択すれば、図22のフローチャートの非冷却洞道モデルについての解析が開始されることになる。
【0220】
この場合のメインルーチンは、図52に示すフローチャートに従って動作することになるが、図23の冷却洞道モデルのメインルーチンと比較すると、非冷却洞道モデルについてのフローチャートでは、冷却洞道モデルのフローチャートのステップS7、S8の冷却条件の設定ステップが存在しない。
【0221】
そして、この相違に伴い、ステップS132の洞道構成の設定では、図53に画面W16を示すように、冷却水管路の設定が行われず、また、冷却洞道モデルの画面W9による冷却水データの設定が行われない。
【0222】
その他のステップS131、S133、S134、S136〜S139の解析面の設定、土壌データの設定、洞道データの設定、空気データの設定、通電条件の設定、地域データの設定、解析条件の設定等は、冷却洞道モデルの画面W6〜W8、W10〜W12と同様の画面を用いて、冷却洞道モデルの場合と同様に行われる。
【0223】
また、ステップS141の解析結果の出力も同様に行われるが、ステップS140の解析処理は、非冷却洞道モデルの場合、図54にフローチャートを示すサブルーチンによって行われる。
【0224】
このサブルーチンを冷却洞道モデルの図39に示すサブルーチンと比較すると、非冷却洞道モデルのサブルーチンでは、ステップS157、S162で、流体の移動を判定する場合に空気の移動のみを判定する点で冷却洞道モデルの場合と相違し、また、冷却洞道モデルのサブルーチンのステップS36、S37による冷却水温度の受け渡し処理が存在しない点で相違する。
【0225】
一方、ステップS161の各解析面ごとの節点温度の計算は、冷却洞道モデルの図40にフローチャートを示すサブルーチンと同様のサブルーチンによって行われ、また、ステップS165の空気温度の受け渡し処理についても、冷却洞道モデルの図41、図42、図44、図45にフローチャートを示すサブルーチンと同様のサブルーチンによって行われる。
【0226】
したがって、図51に示す具体的な計算例についても、空気温度については全く同じ結果となり、冷却水温度に関する計算が行われない点を除いて、冷却洞道モデルの場合と同様に行われることになる。
【0227】
さらに、この実施の形態においては、図21の画面W1で選択することにより、埋設モデルについても、図22に示すように、冷却水管路ありの冷却埋設モデルと、冷却水管路なしの非冷却埋設モデルについて解析可能とされており、次に、これらのモデルを選択した場合について説明する。
【0228】
まず、冷却埋設モデルを選択した場合は、図55にフローチャートを示すメインルーチンが実行され、ステップS172で、洞道構成の設定に変え、図56の画面W17を用いて埋設構成を設定することになる。この場合、ケーブルは管路に収納された状態で埋設され、その埋設パターンや、ケーブル管路、冷却水管路等に関するデータが設定される。
【0229】
この埋設構成の設定により、図57の画面W18に示すような全体解析モデルが作成され、また、ステップS173、174として、この画面W18上で、土壌に関するデータやケーブルに関するデータが設定され、このケーブルデータの設定により、図58の画面W19に示すように、解析モデルの要部を及びケーブル管路部分を拡大した要部解析モデルが表示される。
【0230】
そして、ステップS176で、各冷却水管路について、冷却水の移動等に関する冷却水データが設定されると共に、ステップS178〜S180で、通電条件、地域データ、及び解析条件がそれぞれ設定されるが、これらの設定は、図23にフローチャートを示す冷却洞道モデルについての設定動作と同じである。
【0231】
この冷却埋設モデルのステップS181による解析処理は、図59にフローチャートを示すサブルーチンによって行われる。
【0232】
即ち、まず、ステップS191で、必要なデータを読み込み、次いでステップS192で、現時刻tに初期値0を代入する。そして、ステップS193で、解析周期Δtを設定すると共に、各解析面間での冷却水の移動時間のうちの最も長い最長移動時間Δtcを、各解析面間の距離と流量と管路断面積とに基づいて算出する。
【0233】
また、ステップS194で、現在、冷却起動条件が成立しているか否かを判定し、成立しているときは、ステップS195で、現在の時刻tを温度受渡し基準時刻tpにセットする。そして、ステップS196で、時刻tに解析周期Δtを加算して現時刻tを更新すると共に、ステップS197で、その時刻tが解析終了時刻に達したか否かを判定する。
【0234】
解析開始当初は解析終了時刻に達していないから、次にステップS198を実行し、各解析面のそれぞれについて、前回の解析時刻(t-Δt)での解析領域内の全節点の温度から、現時刻tにおける全節点の温度を計算することになるが、最初の解析時は、各節点の値は初期値(図13の地温データベースDB9から読み取った深さ等に応じた地温、冷却水を代表する節点については、画面上で設定された入口温度又は深さ等に応じた地温)にセットされているから、これらの初期値から現時刻tにおける各節点温度を計算することになる。この節点温度の計算は、冷却洞道モデルについて説明した図40にフローチャートを示すサブルーチンと同様のサブルーチンによって行われる。
【0235】
次に、ステップS199で、現在、冷却起動条件が成立しているか否か、即ち冷却水が移動しているか否かを判定し、移動していないときは、ステップS200以下の冷却水温度の受け渡し処理を実行することなく、ステップS196〜S198を繰り返し実行し、毎解析周期ごとに、各解析面のそれぞれについて、全節点の温度を他の解析面から独立して順次求めることになる。
【0236】
一方、前記冷却起動条件が成立しているとき、即ち冷却水が移動しているときは、ステップS200で、現時刻tが、前記ステップS195で設定した温度受渡し基準時刻Tpに、前記ステップS192で設定した最長移動時間Δtcを加えた時刻(tp+Δtc)を超えているか否かを判定する。そして、この時刻(tp+Δtc)を超えていなければ、ステップS196〜S198を繰り返し実行し、毎解析周期ごとに、各解析面について、前回解析時の各節点温度から現時刻tにおける節点温度を計算する。
【0237】
そして、現時刻tが前記温度受渡し基準時刻tpに最長移動時間Δtcを加えた時刻(tp+Δtc)を超えた時点で、ステップS201の冷却水温度の受け渡し処理を実行する。
【0238】
この処理は、冷却洞道モデルについて用いた図46〜図49にフローチャートを示すサブルーチンと同様のサブルーチンに従って行われ、これにより、前述のように、各解析面間で冷却水の移動が終了した直後の解析周期ごとに、上流側の解析面における冷却水移動時間の間の温度変化が算出されて、その算出された温度が、当該受け渡し周期における下流側解析面の冷却水温度とされる。
【0239】
そして、ステップS202で冷却停止条件が成立しているか否かを判定し、成立していなければ、前記ステップS195で、現時刻tを改めて温度受渡し基準時刻tpにセットした上で、温度受け渡し処理を含む同様の計算を繰り返し、また、冷却停止条件が成立しているときは、次に、ステップS194で冷却起動条件の成立を判定するまで、各解析周期ごとに、ステップS198の各解析面ごとに独立した節点温度の計算を行う。
【0240】
したがって、この場合は、冷却水管路をケーブル管路に並設して埋設した冷却埋設モデルにおいて、冷却水の移動による冷却効果を反映した導体温度のシミュレーションが行われることになる。
【0241】
さらに、冷却なしの埋設モデルを選択した場合は、図22の非冷却埋設モデルについてのシミュレーションが行われることになり、この場合、図60にフローチャートを示すメインルーチンが実行されることになるが、このモデルでは、空気や冷却水の移動に伴う温度の受け渡し処理は行われないので、解析面は一つしか設定されない。
【0242】
したがって、ステップS211〜S213の管路の埋設構成の設定、土壌データの設定、ケーブルデータの設定等の動作は、図61に示す画面W20を用いて、1回だけ行われる。その他のステップS214〜S216の通電条件、地域データ、解析条件等の設定は、図55の冷却埋設モデルと同様に行われる。
【0243】
この非冷却埋設モデルの場合のステップS217の解析処理は、図62にフローチャートを示すサブルーチンによって実行され、まず、ステップS221で、必要なデータを読み込み、次いでステップS222で、現時刻tに初期値0を代入する。また、ステップS223で、解析時間間隔Δtを設定する。
【0244】
そして、ステップS224で、現時刻tに解析周期Δtを加算して現時刻tを更新すると共にすると共に、ステップS225で、その時刻tが解析終了時刻に達しているか否かを判定する。
【0245】
解析開始当初は解析終了時刻に達していないから、次にステップS226を実行し、各解析面のそれぞれについて、前回の解析時刻(t-Δt)での解析領域内の全節点の温度から、現時刻tにおける全節点の温度を計算することになるが、最初の解析時は、各節点の初期値(図13の地温データベースDB9から読み取った深さ等に応じた地温)から現時刻tにおける節点温度を計算することになる。
【0246】
そして、前回の解析時の値(又は初期値)から時間Δt後の現時刻tにおける各節点温度を、冷却洞道モデルについて説明した図40にフローチャートを示すサブルーチンによって計算する。
【0247】
この動作を解析終了時刻まで、周期Δごとに繰り返し行うことにより、非冷却埋設モデルにおいて、所定の解析面におけるケーブルの発熱や地表面における熱収支等を反映したケーブル導体温度の変化がシミュレーションされることになる。
【産業上の利用可能性】
【0248】
以上のように、本発明によれば、地中の洞道内に配設された電力ケーブルの導体温度の変化を、洞道内の空気の移動による冷却効果を加味してシミュレーションすることが可能となる。これにより、電力ケーブル線路の敷設設計等に際して、必要以上のケーブル通電電流の抑制やケーブルのサイズアップ等を回避して、効率的な電力ケーブルの設計や運用が可能となり、電力輸送技術の分野に寄与することになる。
【図面の簡単な説明】
【0249】
【図1】本発明の対象となる洞道モデルの構成例の説明図である。
【図2】洞道内に配設される冷却水管路の説明図である。
【図3】本発明の実施形態で対象となる埋設モデルの構成例の説明図である。
【図4】本発明の実施の形態の全体の構成を示すシステム図である。
【図5】同実施の形態で用いられる土壌熱定数データベースの構成図である。
【図6】洞道壁熱定数データベースの構成図である。
【図7】管路壁熱定数データベースの構成図である。
【図8】流体熱定数データベースの構成図である。
【図9】管路寸法データベースの構成図である。
【図10】ケーブルデータベースの構成図である。
【図11】空気物性データベースの構成図である。
【図12】冷却水物性データベースの構成図である。
【図13】地温データベースの構成図である。
【図14】気象データベースの構成図である。
【図15】負荷率データベースの構成図である。
【図16】熱容量マトリクス及び熱伝導マトリクスの説明図である。
【図17】洞道内部の有限要素解析モデルの説明図である。
【図18】冷却水管路の有限要素モデルの説明図である。
【図19】洞道内空気の乱流判定データの説明図である。
【図20】冷却水の乱流判定データの説明図である。
【図21】解析モデル選択画面の説明図である。
【図22】解析モデルを決定するフローチャートである。
【図23】冷却洞道モデルの解析メインルーチンのフローチャートである。
【図24】解析面設定画面の説明図である。
【図25】解析面の説明図である。
【図26】洞道構成設定画面の説明図である。
【図27】全体解析モデルを示す画面の説明図である。
【図28】解析モデルの要部を示す画面の説明図である。
【図29】土壌データ設定画面の説明図である。
【図30】洞道データ設定画面の説明図である。
【図31】空気データ設定画面の説明図である。
【図32】冷却水データ設定画面の説明図である。
【図33】通電条件設定画面の説明図である。
【図34】地域データ設定画面の説明図である。
【図35】解析条件設定画面の説明図である。
【図36】解析結果として洞道周辺の温度分布を示す画面の説明図である。
【図37】同じく洞道内空気温度の変化を示す画面の説明図である。
【図38】同じくケーブル導体温度の変化を示す画面の説明図である。
【図39】コンピュータによる解析処理動作を示すフローチャートである。
【図40】節点温度計算サブルーチンのフローチャートである。
【図41】空気温度受け渡し処理サブルーチンのフローチャートである。
【図42】解析面Bの空気温度算出サブルーチンのフローチャートである。
【図43】受渡し温度を求める補間方法の説明図である。
【図44】逆方向の空気温度受け渡し処理サブルーチンのフローチャートである。
【図45】解析面Cの空気温度算出サブルーチンのフローチャートである。
【図46】冷却水温度受け渡し処理サブルーチンのフローチャートである。
【図47】解析面BのGo管温度算出サブルーチンのフローチャートである。
【図48】解析面DのRe管温度算出サブルーチンのすフローチャートである。
【図49】解析面CのRe管温度算出サブルーチンのフローチャートである。
【図50】換気及び冷却の起動停止スケジュールの一例を示すタイムチャートである。
【図51】各解析面における温度受渡しの一例を示す表である。
【図52】非冷却洞道モデルの解析メインルーチンのフローチャートである。
【図53】洞道構成設定画面の説明図である。
【図54】コンピュータによる解析処理動作を示すフローチャートである。
【図55】冷却埋設モデルの解析メインルーチンのフローチャートである。
【図56】埋設構成設定画面の説明図である。
【図57】全体解析モデルを示す画面の説明図である。
【図58】解析モデルの要部を示す画面の説明図である。
【図59】コンピュータによる解析処理動作を示すフローチャートである。
【図60】非冷却埋設モデルの解析メインルーチンのフローチャートである。
【図61】埋設構成設定画面の説明図である。
【図62】コンピュータによる解析処理動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0250】
1 洞道
4 ケーブル
6 冷却水管路
10 コンピュータ
11 中央処理装置
12 入力装置
13 読込み装置
14 記録装置
15 表示装置
16 印刷装置
17 メモリ
DB1〜DB11 データベース
A〜D 解析面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中の洞道内に敷設された電力ケーブルの導体温度を有限要素法を用いて推定する方法であって、
導体温度に影響するパラメータとして、前記ケーブルの通電電流に対応する発熱量と、ケーブル、洞道内空気及び洞道周辺構成要素の熱定数と、洞道内における空気の移動を考慮して算出した洞道内空気温度とを用い、前記ケーブルの導体温度を計算することを特徴とする洞道内空気の移動を考慮したケーブル導体温度推定方法。
【請求項2】
前記請求項1に記載の方法において、
導体温度に影響するパラメータとして、さらに、洞道内に配設された管路内における冷却水の移動を考慮して算出した冷却水温度を用いることを特徴とする洞道内空気の移動を考慮したケーブル導体温度推定方法。
【請求項3】
前記請求項1又は請求項2に記載の方法において、
導体温度に影響するパラメータとして、さらに、解析対象地域の気象データから算出される地表面における熱収支量を用いることを特徴とする洞道内空気の移動を考慮したケーブル導体温度推定方法。
【請求項4】
地中の洞道内に敷設された電力ケーブルの導体温度を、洞道を横断する断面を解析面とし、この解析面の所定領域に有限要素法を適用して推定するシステムであって、
ケーブル、洞道内空気及び洞道周辺構成要素の熱定数を記録した熱定数記録手段と、
洞道及びその内外の構成を設定する洞道構成設定手段と、
ケーブルへの通電電流を設定する通電電流設定手段と、
洞道内における空気の移動に関するデータを設定する空気データ設定手段と、
前記通電電流設定手段で設定された通電電流に基づいてケーブルの発熱量を算出する発熱量算出手段と、
前記空気データ設定手段で設定された空気の移動に関するデータに基づいて洞道内空気温度を算出する空気温度算出手段と、
前記洞道構成設定手段で設定された洞道及びケーブルの構成に基づいて、洞道を横断する解析面の所定解析領域を有限要素分割して解析モデルを作成するモデル作成手段と、
前記熱定数記録手段に記録されている熱定数を用いて前記解析領域内の各節点についての熱容量マトリクス及び熱伝導マトリクスを作成するマトリクス作成手段と、
前記発熱量算出手段及び空気温度算出手段でそれぞれ算出されたケーブルの発熱量及び洞道内空気温度に基づいて前記解析領域内の各節点についての熱荷重ベクトルを作成するベクトル作成手段と、
前記マトリクス作成手段及びベクトル作成手段で作成された熱容量マトリクス、熱伝導マトリクス及び熱荷重ベクトルを用い、所定の初期状態から所定時間間隔で解析領域内の各節点温度を計算する節点温度計算手段とを有することを特徴とする洞道内空気の移動を考慮したケーブル導体温度推定システム。
【請求項5】
前記請求項4に記載のシステムにおいて、
洞道の所定区間に有限要素解析のための複数の解析面を設定する解析面設定手段が設けられていると共に、
前記空気温度算出手段は、前記区間における空気の移動に対して最も上流側の解析面では洞道内空気温度を所定の温度に設定し、該解析面より下流側の各解析面については、上流側解析面における洞道内空気温度の変化に基づいて順次下流側解析面における洞道内空気温度を算出し、かつ、
節点温度算出手段は、洞道内における空気に接する節点については前記空気温度算出手段で算出された洞道内空気温度を用いて、各解析面ごとに解析領域内の各節点温度を計算することを特徴とする洞道内空気の移動を考慮したケーブル導体温度推定システム。
【請求項6】
地中の洞道内に冷却水管路と共に敷設された電力ケーブルの導体温度を、洞道を横断する断面を解析面とし、この解析面の所定領域に有限要素法を適用して推定するシステムであって、
ケーブル、洞道内空気、冷却水管路、該管路内の冷却水及び洞道周辺構成要素の熱定数を記録した熱定数記録手段と、
洞道及びその内外の構成を設定する洞道構成設定手段と、
ケーブルへの通電電流を設定する通電電流設定手段と、
洞道内における空気の移動に関するデータを設定する空気データ設定手段と、
冷却水管路内における冷却水の移動に関するデータを設定する冷却水データ設定手段と、
前記通電電流設定手段で設定された通電電流に基づいてケーブルの発熱量を算出する発熱量算出手段と、
前記空気データ設定手段で設定された空気の移動に関するデータに基づいて洞道内空気温度を算出する空気温度算出手段と、
前記冷却水データ設定手段で設定された冷却水の移動に関するデータに基づいて冷却水温度を算出する冷却水温度算出手段と、
前記洞道構成設定手段で設定された洞道、ケーブル及び冷却水管路の構成に基づいて、洞道を横断する解析面の所定解析領域を有限要素分割して解析モデルを作成するモデル作成手段と、
前記熱定数記録手段に記録されている熱定数を用いて前記解析領域内の各節点についての熱容量マトリクス及び熱伝導マトリクスを作成するマトリクス作成手段と、
前記発熱量算出手段、空気温度算出手段及び冷却水温度算出手段でそれぞれ算出されたケーブルの発熱量、洞道内空気温度及び冷却水温度に基づいて前記解析領域内の各節点についての熱荷重ベクトルを作成するベクトル作成手段と、
前記マトリクス作成手段及びベクトル作成手段で作成された熱容量マトリクス、熱伝導マトリクス及び熱荷重ベクトルを用い、所定の初期状態から所定時間間隔で解析領域内の各節点温度を計算する節点温度計算手段とを有することを特徴とする洞道内空気の移動を考慮したケーブル導体温度推定システム。
【請求項7】
前記請求項6に記載のシステムにおいて、
冷却水管路が設けられた洞道の所定区間に有限要素解析のための複数の解析面を設定する解析面設定手段が設けられていると共に、
前記空気温度算出手段は、前記区間における空気の移動に対して最も上流側の解析面では洞道内空気温度を所定の温度に設定し、該解析面より下流側の各解析面については、上流側解析面における洞道内空気温度の変化に基づいて順次下流側解析面における洞道内空気温度を算出し、
前記冷却水温度算出手段は、冷却水入口近傍の解析面における管路断面では冷却水温度を所定の入口温度に設定し、各解析面に位置する他の管路断面については、その上流側断面における冷却水温度の変化に基づいて順次下流側の断面における冷却水温度を算出し、かつ、
節点温度算出手段は、洞道内における空気に接する節点については前記空気温度算出手段で算出された洞道内空気温度を用いて、冷却水管路内面の節点については前記冷却水温度算出手段で算出された冷却水温度を用いて、各解析面ごとに解析領域内の各節点温度を計算することを特徴とする洞道内空気の移動を考慮したケーブル導体温度推定システム。
【請求項8】
前記請求項4から請求項7のいずれかに記載のシステムにおいて、
各地域各時期の気象データを記録した気象データ記録手段と、
指定された解析対象地域及び時期の気象データを前記気象データ記録手段から読み出し、その気象データに基づいて地表面の熱収支量を算出する熱収支量算出手段とが備えられ、
ベクトル作成手段は、前記熱収支量算出手段で算出された地表面の熱収支量を用いて熱荷重ベクトルを作成することを特徴とする洞道内空気の移動を考慮したケーブル導体温度推定システム。
【請求項9】
地中の洞道内に敷設された電力ケーブルの導体温度を、洞道を横断する断面を解析面とし、この解析面の所定領域に有限要素法を適用して推定するプログラムであって、
コンピュータを、ケーブル、洞道内空気及び洞道周辺構成要素の熱定数を記録する熱定数記録手段、
洞道及びその内外の構成を設定する洞道構成設定手段、
ケーブルへの通電電流を設定する通電電流設定手段、
洞道内における空気の移動に関するデータを設定する空気データ設定手段、
前記通電電流設定手段で設定された通電電流に基づいてケーブルの発熱量を算出する発熱量算出手段、
前記空気データ設定手段で設定された空気の移動に関するデータに基づいて洞道内空気温度を算出する空気温度算出手段、
前記洞道構成設定手段で設定された洞道及びケーブルの構成に基づいて、洞道を横断する解析面の所定解析領域を有限要素分割して解析モデルを作成するモデル作成手段、
前記熱定数記録手段に記録されている熱定数を用いて前記解析対象領域内の各節点についての熱容量マトリクス及び熱伝導マトリクスを作成するマトリクス作成手段、
前記発熱量算出手段及び空気温度算出手段でそれぞれ算出されたケーブルの発熱量及び洞道内空気温度に基づいて前記解析領域内の各節点についての熱荷重ベクトルを作成するベクトル作成手段、並びに、
前記マトリクス作成手段及びベクトル作成手段で作成された熱容量マトリクス、熱伝導マトリクス及び熱荷重ベクトルを用い、所定の初期状態から所定時間間隔で解析領域内の各節点温度を計算する節点温度計算手段として機能させることを特徴とする洞道内空気の移動を考慮したケーブル導体温度推定プログラム。
【請求項10】
前記請求項9に記載のプログラムにおいて、
コンピュータを、洞道の所定区間に有限要素解析のための複数の解析面を設定する解析面設定手段として機能させると共に、
前記空気温度算出手段として機能させるときは、前記区間における空気の移動に対して最も上流側の解析面では洞道内空気温度を所定の温度に設定し、該解析面より下流側の各解析面については、上流側解析面における洞道内空気温度の変化に基づいて順次下流側解析面における洞道内空気温度を算出するように機能させ、かつ、
節点温度算出手段として機能させるときは、洞道内における空気に接する節点については前記空気温度算出手段で算出された洞道内空気温度を用いて、各解析面ごとに解析領域内の各節点温度を計算するように機能させることを特徴とする洞道内空気の移動を考慮したケーブル導体温度推定プログラム。
【請求項11】
地中の洞道内に冷却水管路と共に敷設された電力ケーブルの導体温度を、洞道を横断する断面を解析面とし、この解析面の所定領域に有限要素法を適用して推定するプログラムであって、
コンピュータを、ケーブル、洞道内空気、冷却水管路、該管路内の冷却水及び洞道周辺構成要素の熱定数を記録した熱定数記録手段、
洞道及びその内外の構成を設定する洞道構成設定手段と、
ケーブルへの通電電流を設定する通電電流設定手段、
洞道内における空気の移動に関するデータを設定する空気データ設定手段、
冷却水管路内における冷却水の移動に関するデータを設定する冷却水データ設定手段、
前記通電電流設定手段で設定された通電電流に基づいてケーブルの発熱量を算出する発熱量算出手段、
前記空気データ設定手段で設定された空気の移動に関するデータに基づいて洞道内空気温度を算出する空気温度算出手段、
前記冷却水データ設定手段で設定された冷却水の移動に関するデータに基づいて冷却水温度を算出する冷却水温度算出手段、
前記洞道構成設定手段で設定された洞道、ケーブル及び冷却水管路の構成に基づいて、洞道を横断する解析面の所定解析領域を有限要素分割して解析モデルを作成するモデル作成手段、
前記熱定数記録手段に記録されている熱定数を用いて前記解析対象領域内の各節点についての熱容量マトリクス及び熱伝導マトリクスを作成するマトリクス作成手段、
前記発熱量算出手段、空気温度算出手段及び冷却水温度算出手段でそれぞれ算出されたケーブルの発熱量、洞道内空気温度及び冷却水温度に基づいて前記解析領域内の各節点についての熱荷重ベクトルを作成するベクトル作成手段、並びに、
前記マトリクス作成手段及びベクトル作成手段で作成された熱容量マトリクス、熱伝導マトリクス及び熱荷重ベクトルを用い、所定の初期状態から所定時間間隔で解析領域内の各節点温度を計算する節点温度計算手段として機能させることを特徴とする洞道内空気の移動を考慮したケーブル導体温度推定プログラム。
【請求項12】
前記請求項11に記載のプログラムにおいて、
コンピュータを、冷却水管路が設けられた洞道の所定区間に有限要素解析のための複数の解析面を設定する解析面設定手段として機能させると共に、
前記空気温度算出手段として機能させるときは、前記区間における空気の移動に対して最も上流側の解析面では洞道内空気温度を所定の温度に設定し、該解析面より下流側の各解析面については、上流側解析面における洞道内空気温度の変化に基づいて順次下流側解析面における洞道内空気温度を算出するように機能させ、
前記冷却水温度算出手段として機能させるときは、冷却水入口近傍の解析面における管路断面では冷却水温度を所定の入口温度に設定し、各解析面に位置する他の管路断面については、その上流側断面における冷却水温度の変化に基づいて順次下流側の断面における冷却水温度を算出するように機能させ、かつ、
節点温度算出手段として機能させるときは、洞道内における空気に接する節点については前記空気温度算出手段で算出された洞道内空気温度を用いて、冷却水管路内面の節点については前記冷却水温度算出手段で算出された冷却水温度を用いて、各解析面ごとに解析領域内の各節点温度を計算するように機能させることを特徴とする洞道内空気の移動を考慮したケーブル導体温度推定プログラム。
【請求項13】
前記請求項9から請求項12のいずれかに記載のプログラムにおいて、
コンピュータを、各地域各時期の気象データを記録した気象データ記録手段、及び、指定された解析対象地域及び時期の気象データを前記気象データ記録手段から読み出し、その気象データに基づいて地表面の熱収支量を算出する熱収支量算出手段として機能させると共に、
ベクトル作成手段として機能させるときは、前記熱収支量算出手段で算出された地表面の熱収支量を用いて熱荷重ベクトルを作成するように機能させることを特徴とする洞道内空気の移動を考慮したケーブル導体温度推定プログラム。
【請求項1】
地中の洞道内に敷設された電力ケーブルの導体温度を有限要素法を用いて推定する方法であって、
導体温度に影響するパラメータとして、前記ケーブルの通電電流に対応する発熱量と、ケーブル、洞道内空気及び洞道周辺構成要素の熱定数と、洞道内における空気の移動を考慮して算出した洞道内空気温度とを用い、前記ケーブルの導体温度を計算することを特徴とする洞道内空気の移動を考慮したケーブル導体温度推定方法。
【請求項2】
前記請求項1に記載の方法において、
導体温度に影響するパラメータとして、さらに、洞道内に配設された管路内における冷却水の移動を考慮して算出した冷却水温度を用いることを特徴とする洞道内空気の移動を考慮したケーブル導体温度推定方法。
【請求項3】
前記請求項1又は請求項2に記載の方法において、
導体温度に影響するパラメータとして、さらに、解析対象地域の気象データから算出される地表面における熱収支量を用いることを特徴とする洞道内空気の移動を考慮したケーブル導体温度推定方法。
【請求項4】
地中の洞道内に敷設された電力ケーブルの導体温度を、洞道を横断する断面を解析面とし、この解析面の所定領域に有限要素法を適用して推定するシステムであって、
ケーブル、洞道内空気及び洞道周辺構成要素の熱定数を記録した熱定数記録手段と、
洞道及びその内外の構成を設定する洞道構成設定手段と、
ケーブルへの通電電流を設定する通電電流設定手段と、
洞道内における空気の移動に関するデータを設定する空気データ設定手段と、
前記通電電流設定手段で設定された通電電流に基づいてケーブルの発熱量を算出する発熱量算出手段と、
前記空気データ設定手段で設定された空気の移動に関するデータに基づいて洞道内空気温度を算出する空気温度算出手段と、
前記洞道構成設定手段で設定された洞道及びケーブルの構成に基づいて、洞道を横断する解析面の所定解析領域を有限要素分割して解析モデルを作成するモデル作成手段と、
前記熱定数記録手段に記録されている熱定数を用いて前記解析領域内の各節点についての熱容量マトリクス及び熱伝導マトリクスを作成するマトリクス作成手段と、
前記発熱量算出手段及び空気温度算出手段でそれぞれ算出されたケーブルの発熱量及び洞道内空気温度に基づいて前記解析領域内の各節点についての熱荷重ベクトルを作成するベクトル作成手段と、
前記マトリクス作成手段及びベクトル作成手段で作成された熱容量マトリクス、熱伝導マトリクス及び熱荷重ベクトルを用い、所定の初期状態から所定時間間隔で解析領域内の各節点温度を計算する節点温度計算手段とを有することを特徴とする洞道内空気の移動を考慮したケーブル導体温度推定システム。
【請求項5】
前記請求項4に記載のシステムにおいて、
洞道の所定区間に有限要素解析のための複数の解析面を設定する解析面設定手段が設けられていると共に、
前記空気温度算出手段は、前記区間における空気の移動に対して最も上流側の解析面では洞道内空気温度を所定の温度に設定し、該解析面より下流側の各解析面については、上流側解析面における洞道内空気温度の変化に基づいて順次下流側解析面における洞道内空気温度を算出し、かつ、
節点温度算出手段は、洞道内における空気に接する節点については前記空気温度算出手段で算出された洞道内空気温度を用いて、各解析面ごとに解析領域内の各節点温度を計算することを特徴とする洞道内空気の移動を考慮したケーブル導体温度推定システム。
【請求項6】
地中の洞道内に冷却水管路と共に敷設された電力ケーブルの導体温度を、洞道を横断する断面を解析面とし、この解析面の所定領域に有限要素法を適用して推定するシステムであって、
ケーブル、洞道内空気、冷却水管路、該管路内の冷却水及び洞道周辺構成要素の熱定数を記録した熱定数記録手段と、
洞道及びその内外の構成を設定する洞道構成設定手段と、
ケーブルへの通電電流を設定する通電電流設定手段と、
洞道内における空気の移動に関するデータを設定する空気データ設定手段と、
冷却水管路内における冷却水の移動に関するデータを設定する冷却水データ設定手段と、
前記通電電流設定手段で設定された通電電流に基づいてケーブルの発熱量を算出する発熱量算出手段と、
前記空気データ設定手段で設定された空気の移動に関するデータに基づいて洞道内空気温度を算出する空気温度算出手段と、
前記冷却水データ設定手段で設定された冷却水の移動に関するデータに基づいて冷却水温度を算出する冷却水温度算出手段と、
前記洞道構成設定手段で設定された洞道、ケーブル及び冷却水管路の構成に基づいて、洞道を横断する解析面の所定解析領域を有限要素分割して解析モデルを作成するモデル作成手段と、
前記熱定数記録手段に記録されている熱定数を用いて前記解析領域内の各節点についての熱容量マトリクス及び熱伝導マトリクスを作成するマトリクス作成手段と、
前記発熱量算出手段、空気温度算出手段及び冷却水温度算出手段でそれぞれ算出されたケーブルの発熱量、洞道内空気温度及び冷却水温度に基づいて前記解析領域内の各節点についての熱荷重ベクトルを作成するベクトル作成手段と、
前記マトリクス作成手段及びベクトル作成手段で作成された熱容量マトリクス、熱伝導マトリクス及び熱荷重ベクトルを用い、所定の初期状態から所定時間間隔で解析領域内の各節点温度を計算する節点温度計算手段とを有することを特徴とする洞道内空気の移動を考慮したケーブル導体温度推定システム。
【請求項7】
前記請求項6に記載のシステムにおいて、
冷却水管路が設けられた洞道の所定区間に有限要素解析のための複数の解析面を設定する解析面設定手段が設けられていると共に、
前記空気温度算出手段は、前記区間における空気の移動に対して最も上流側の解析面では洞道内空気温度を所定の温度に設定し、該解析面より下流側の各解析面については、上流側解析面における洞道内空気温度の変化に基づいて順次下流側解析面における洞道内空気温度を算出し、
前記冷却水温度算出手段は、冷却水入口近傍の解析面における管路断面では冷却水温度を所定の入口温度に設定し、各解析面に位置する他の管路断面については、その上流側断面における冷却水温度の変化に基づいて順次下流側の断面における冷却水温度を算出し、かつ、
節点温度算出手段は、洞道内における空気に接する節点については前記空気温度算出手段で算出された洞道内空気温度を用いて、冷却水管路内面の節点については前記冷却水温度算出手段で算出された冷却水温度を用いて、各解析面ごとに解析領域内の各節点温度を計算することを特徴とする洞道内空気の移動を考慮したケーブル導体温度推定システム。
【請求項8】
前記請求項4から請求項7のいずれかに記載のシステムにおいて、
各地域各時期の気象データを記録した気象データ記録手段と、
指定された解析対象地域及び時期の気象データを前記気象データ記録手段から読み出し、その気象データに基づいて地表面の熱収支量を算出する熱収支量算出手段とが備えられ、
ベクトル作成手段は、前記熱収支量算出手段で算出された地表面の熱収支量を用いて熱荷重ベクトルを作成することを特徴とする洞道内空気の移動を考慮したケーブル導体温度推定システム。
【請求項9】
地中の洞道内に敷設された電力ケーブルの導体温度を、洞道を横断する断面を解析面とし、この解析面の所定領域に有限要素法を適用して推定するプログラムであって、
コンピュータを、ケーブル、洞道内空気及び洞道周辺構成要素の熱定数を記録する熱定数記録手段、
洞道及びその内外の構成を設定する洞道構成設定手段、
ケーブルへの通電電流を設定する通電電流設定手段、
洞道内における空気の移動に関するデータを設定する空気データ設定手段、
前記通電電流設定手段で設定された通電電流に基づいてケーブルの発熱量を算出する発熱量算出手段、
前記空気データ設定手段で設定された空気の移動に関するデータに基づいて洞道内空気温度を算出する空気温度算出手段、
前記洞道構成設定手段で設定された洞道及びケーブルの構成に基づいて、洞道を横断する解析面の所定解析領域を有限要素分割して解析モデルを作成するモデル作成手段、
前記熱定数記録手段に記録されている熱定数を用いて前記解析対象領域内の各節点についての熱容量マトリクス及び熱伝導マトリクスを作成するマトリクス作成手段、
前記発熱量算出手段及び空気温度算出手段でそれぞれ算出されたケーブルの発熱量及び洞道内空気温度に基づいて前記解析領域内の各節点についての熱荷重ベクトルを作成するベクトル作成手段、並びに、
前記マトリクス作成手段及びベクトル作成手段で作成された熱容量マトリクス、熱伝導マトリクス及び熱荷重ベクトルを用い、所定の初期状態から所定時間間隔で解析領域内の各節点温度を計算する節点温度計算手段として機能させることを特徴とする洞道内空気の移動を考慮したケーブル導体温度推定プログラム。
【請求項10】
前記請求項9に記載のプログラムにおいて、
コンピュータを、洞道の所定区間に有限要素解析のための複数の解析面を設定する解析面設定手段として機能させると共に、
前記空気温度算出手段として機能させるときは、前記区間における空気の移動に対して最も上流側の解析面では洞道内空気温度を所定の温度に設定し、該解析面より下流側の各解析面については、上流側解析面における洞道内空気温度の変化に基づいて順次下流側解析面における洞道内空気温度を算出するように機能させ、かつ、
節点温度算出手段として機能させるときは、洞道内における空気に接する節点については前記空気温度算出手段で算出された洞道内空気温度を用いて、各解析面ごとに解析領域内の各節点温度を計算するように機能させることを特徴とする洞道内空気の移動を考慮したケーブル導体温度推定プログラム。
【請求項11】
地中の洞道内に冷却水管路と共に敷設された電力ケーブルの導体温度を、洞道を横断する断面を解析面とし、この解析面の所定領域に有限要素法を適用して推定するプログラムであって、
コンピュータを、ケーブル、洞道内空気、冷却水管路、該管路内の冷却水及び洞道周辺構成要素の熱定数を記録した熱定数記録手段、
洞道及びその内外の構成を設定する洞道構成設定手段と、
ケーブルへの通電電流を設定する通電電流設定手段、
洞道内における空気の移動に関するデータを設定する空気データ設定手段、
冷却水管路内における冷却水の移動に関するデータを設定する冷却水データ設定手段、
前記通電電流設定手段で設定された通電電流に基づいてケーブルの発熱量を算出する発熱量算出手段、
前記空気データ設定手段で設定された空気の移動に関するデータに基づいて洞道内空気温度を算出する空気温度算出手段、
前記冷却水データ設定手段で設定された冷却水の移動に関するデータに基づいて冷却水温度を算出する冷却水温度算出手段、
前記洞道構成設定手段で設定された洞道、ケーブル及び冷却水管路の構成に基づいて、洞道を横断する解析面の所定解析領域を有限要素分割して解析モデルを作成するモデル作成手段、
前記熱定数記録手段に記録されている熱定数を用いて前記解析対象領域内の各節点についての熱容量マトリクス及び熱伝導マトリクスを作成するマトリクス作成手段、
前記発熱量算出手段、空気温度算出手段及び冷却水温度算出手段でそれぞれ算出されたケーブルの発熱量、洞道内空気温度及び冷却水温度に基づいて前記解析領域内の各節点についての熱荷重ベクトルを作成するベクトル作成手段、並びに、
前記マトリクス作成手段及びベクトル作成手段で作成された熱容量マトリクス、熱伝導マトリクス及び熱荷重ベクトルを用い、所定の初期状態から所定時間間隔で解析領域内の各節点温度を計算する節点温度計算手段として機能させることを特徴とする洞道内空気の移動を考慮したケーブル導体温度推定プログラム。
【請求項12】
前記請求項11に記載のプログラムにおいて、
コンピュータを、冷却水管路が設けられた洞道の所定区間に有限要素解析のための複数の解析面を設定する解析面設定手段として機能させると共に、
前記空気温度算出手段として機能させるときは、前記区間における空気の移動に対して最も上流側の解析面では洞道内空気温度を所定の温度に設定し、該解析面より下流側の各解析面については、上流側解析面における洞道内空気温度の変化に基づいて順次下流側解析面における洞道内空気温度を算出するように機能させ、
前記冷却水温度算出手段として機能させるときは、冷却水入口近傍の解析面における管路断面では冷却水温度を所定の入口温度に設定し、各解析面に位置する他の管路断面については、その上流側断面における冷却水温度の変化に基づいて順次下流側の断面における冷却水温度を算出するように機能させ、かつ、
節点温度算出手段として機能させるときは、洞道内における空気に接する節点については前記空気温度算出手段で算出された洞道内空気温度を用いて、冷却水管路内面の節点については前記冷却水温度算出手段で算出された冷却水温度を用いて、各解析面ごとに解析領域内の各節点温度を計算するように機能させることを特徴とする洞道内空気の移動を考慮したケーブル導体温度推定プログラム。
【請求項13】
前記請求項9から請求項12のいずれかに記載のプログラムにおいて、
コンピュータを、各地域各時期の気象データを記録した気象データ記録手段、及び、指定された解析対象地域及び時期の気象データを前記気象データ記録手段から読み出し、その気象データに基づいて地表面の熱収支量を算出する熱収支量算出手段として機能させると共に、
ベクトル作成手段として機能させるときは、前記熱収支量算出手段で算出された地表面の熱収支量を用いて熱荷重ベクトルを作成するように機能させることを特徴とする洞道内空気の移動を考慮したケーブル導体温度推定プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図61】
【図62】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図61】
【図62】
【公開番号】特開2006−250689(P2006−250689A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−67242(P2005−67242)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(302064762)株式会社日本総合研究所 (367)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(302064762)株式会社日本総合研究所 (367)
【Fターム(参考)】
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