説明

活性炭を含む吸着剤、その製造方法およびその使用

流体流れ、例えば、石炭ガス化プロセスにおいて生成された炭素燃焼排ガス流れまたは合成ガス流れ等から、有毒物質を削減するために適合された吸着体、およびかかる吸着剤の製造方法。吸着体は、複数の細孔を画定する活性炭マトリックス、硫黄および流体流れからの有毒物質の削減を促進するために適合された添加剤を含む。吸着剤は、例えば、ヒ素、カドミウム、水銀およびセレンを、ガス流れから削減するのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、内容が、全体的に参考文献として本明細書において援用される2007年2月28日出願の米国仮特許出願第60/904,113号明細書および2007年5月14日出願の米国特許出願第11/803,368号明細書の優先権を主張する。
【政府関連情報】
【0002】
本発明は、Department of Energy−NETLによるUniversity of North Dakota−Energy and Environmental Research Centerより与えられた協定No.DE−PS26−04NT42249−4Bに従って、政府によりなされた。政府が本発明に一定の権利を有する。
【技術分野】
【0003】
本発明は、活性炭を含む吸着体に関する。特に、本発明は、活性炭と硫黄とを含み、流体流れ、例えば、ガス流れから、有毒物質を削減することのできる吸着体、およびかかる吸着体の製造方法、およびかかる有害物質の削減におけるかかる吸着体の使用に関する。本発明は、例えば、炭素燃焼から生じる排ガス流れから水銀を削減するのに有用である。
【背景技術】
【0004】
水銀は、自然状態で、潜在的な有毒種(例えば、メチル水銀)へと変換される可能性のある地球汚染物質で、混入物でもある。大気に放出される水銀は、地球に堆積する前に、数千マイル移動する。研究によれば、大気中の水銀は、排出源近くの領域にも堆積し得る。人間、特に子供が水銀を吸い込むと、様々な健康上の問題を引き起こす可能性がある。
【0005】
石炭火力発電所、医療および都市廃棄物燃焼施設所は、水銀の大気放出に関係する人的活動の主な原因である。米国においては、年間48トンの水銀が、石炭火力発電所から放出されている。しかしながら、これまでのところ、相応なコストで利用可能な、特に元素水銀の放出を制御するための、水銀の放出を制御する有効な技術はない。
【0006】
元素水銀および酸化水銀を制御するのに有望であることが示されている最新技術は、活性炭注入(ACI)である。ACIプロセスには、活性炭粉末を排ガス流れへ注入し、織物繊維(FF)または静電集塵装置(ESP)を用いて、水銀を吸着した活性炭粉末を集めることが含まれる。通常、ACI技術では、所望の水銀除去レベル(>90%)を達成するには、高い炭素対Hg比が必要とされ、吸着剤材料のコストが高くなる。高い炭素対Hg比は、ACIが炭素粉末の水銀収着能を効率的に利用していないということである。ACI技術に関連する主な問題はコストである。1台のみの粒子収集システムを用いる場合は、汚染された活性炭粉末と混合されるために、フライアッシュの商業的価値が犠牲となる。2台の別個の粉末収集器を備え、フライアッシュ用の第1の収集器と、活性炭粉末用の第2の収集器またはバグハウスとの間に活性炭吸着剤を注入するシステムを用いてもよい。高収集効率のバグハウスを、発電設備に据え付けてもよい。しかしながら、これらの手段はコストがかかり、特に、小さな発電設備では、実際的でない。
【0007】
高濃度のSOおよびHClを含む瀝青炭排ガス中の水溶性(酸化)水銀が主な水銀種であるため、瀝青炭火力発電所は、NOxおよび/またはSO制御技術と組み合わせて湿式スクラバーを用いて、90%水銀を除去することができる。水銀排出制御もまた、微粒子排出制御の副次効果として達成される。キレート化剤を湿式スクラバーに加えて、水銀が再び排出されるのを防いでもよい。しかしながら、金属スクラバー機器の腐食と、キレート化溶液の処理の問題のために、キレート化剤はコストを増加させる。しかしながら、元素水銀は、亜瀝青炭または亜炭石炭の排ガス中、主要水銀種であり、湿式スクラバーは、追加の化学薬品をシステムに添加しないと、元素水銀を除去するのに有効ではない。先行技術には、様々な化学薬品をガス流れに添加して、水銀の除去を補助することが開示されている。しかしながら、追加の潜在的に環境に有害な材料を排ガスシステムに追加することは望ましくない。
【0008】
特定の工業ガス、例えば、石炭ガス化において生成される合成ガスは、水銀に加えて、ヒ素、カドミウムおよびセレン等の有毒物質を含有している。合成ガスが工業および/または家庭用に供給される前に、これら毒性物質が全て実質的に削減されるのが極めて望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
水銀および/またはその他の毒性物質を、流体流れ、例えば、排ガス流れおよび合成ガスから除去できる、活性炭粉末のみよりも高い能力を備えた吸着剤材料がまさに必要とされている。かかる吸着材料が、固定床等、手ごろなコストで製造でき、都合よく用いることができるのが望ましい。
【0010】
本発明はこの必要性を満たすものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このように、本発明の第1の態様によれば、
複数の細孔を画定する活性炭マトリックスと、
硫黄と、
As、Cd、HgおよびSeのうち少なくとも1つを流体流れから除去するのを促進するために適合された添加剤と
を含む吸着体であって、
添加剤が、細孔の壁表面に実質的に分布しており、
吸着体が、炭素、硫黄含有無機材料および添加剤以外の無機材料を10重量%未満(ある実施形態においては8重量%未満、他の実施形態においては5重量%未満、他の実施形態においては3重量%未満、他の実施形態においては1重量%未満)含む、吸着体が提供される。
【0012】
本発明のある実施形態によれば、吸着体はモノリスの形態にある。ある実施形態によれば、吸着体は、ガスおよび液体が通過する複数のチャネルを備えたモノリシックハニカムの形態にある。
【0013】
本発明の吸着体のある実施形態によれば、硫黄が、活性炭マトリックス全体に分布している。ある実施形態によれば、硫黄は、活性炭マトリックス全体に実質的に均一に分布している。
【0014】
本発明の吸着体のある実施形態によれば、硫黄の少なくとも一部が、活性炭マトリックスに共有結合している。
【0015】
本発明の吸着体のある実施形態によれば、活性炭マトリックスが、複数のナノスケールの細孔を画定している。
【0016】
本発明の吸着体のある実施形態によれば、添加剤が、ナノスケール細孔の少なくとも一部の壁表面に存在している。
【0017】
本発明の吸着体のある実施形態によれば、硫黄が、ナノスケール細孔の少なくとも一部の壁表面に存在している。
【0018】
本発明の吸着体のある実施形態によれば、活性炭マトリックスが、複数のマイクロスケール細孔をさらに画定している。
【0019】
本発明の吸着体のある実施形態によれば、大半の添加剤が、マイクロスケール細孔の壁表面に存在している。他の実施形態によれば、少なくとも60モル%(ある実施形態においては少なくとも65モル%、ある実施形態においては少なくとも70モル%、ある実施形態においては少なくとも75モル%、ある実施形態においては少なくとも80モル%、ある実施形態においては少なくとも85モル%、ある実施形態においては少なくとも90モル%)の添加剤が、マイクロスケール細孔の壁表面に存在している。
【0020】
本発明の吸着体のある実施形態によれば、添加剤の少なくとも一部が、マイクロスケール細孔の壁表面にコーティング層を形成している。
【0021】
本発明の吸着体のある実施形態によれば、硫黄の少なくとも一部が、Hgと化学的に(例えば、共有)結合可能な状態で存在している。
【0022】
本発明の吸着体のある実施形態によれば、細孔の壁表面にある少なくとも10モル%(ある実施形態においては少なくとも20モル%、ある実施形態においては少なくとも30モル%、ある実施形態においては少なくとも40モル%、ある実施形態においては少なくとも50モル%、ある実施形態においては少なくとも60モル%、ある実施形態においては少なくとも70モル%)の硫黄は、XPSにより測定すると、実質的にゼロ価である。
【0023】
本発明のある実施形態によれば、吸着体は、無機フィラーをさらに含む。
【0024】
本発明の吸着体のある実施形態によれば、無機フィラーは、シリカ、ムライト、コージエライト、アルミナ、その他の酸化物ガラス、その他のセラミック材料、その他の耐火材料、ならびにこれらのうち少なくとも2つの混合物および組合せから選択される。
【0025】
本発明の吸着体のある実施形態によれば、添加剤は、(i)アルカリおよびアルカリ土類金属のハロゲン化物、酸化物および水酸化物、(ii)貴金属およびその化合物、(iii)バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ニオブ、モリブデン、銀、タングステンおよびランタノイドの酸化物、硫化物および塩、ならびに(iv)(i)、(ii)および(iii)のうち2つ以上の組合せおよび混合物から選択される。
【0026】
本発明の吸着体のある実施形態によれば、添加剤は、(i)マンガンの酸化物、硫化物および塩、(ii)鉄の酸化物、硫化物および塩、(iii)(i)とKIの組合せ、(iv)(ii)とKIの組合せ、ならびに(v)(i)、(ii)、(iii)および(iv)のうち2つ以上の混合物および組合せから選択される。本発明のある実施形態によれば、吸着体は、有毒物質の除去を促進する添加剤として、アルカリ土類金属水酸化物、例えば、Ca(OH)を含む。
【0027】
本発明のある実施形態によれば、吸着体は、合計で少なくとも90重量%(ある実施形態においては少なくとも95重量%、他の実施形態においては少なくとも98重量%)の活性炭、硫黄および添加剤を含む。
【0028】
本発明のある実施形態によれば、吸着体は、50重量%〜97重量%(ある実施形態においては60重量%〜97重量%、他の実施形態においては85重量%〜97重量%、他の実施形態においては90重量%〜97重量%)の炭素を含む。
【0029】
本発明のある実施形態によれば、吸着体は、1重量%〜20重量%(ある実施形態においては1重量%〜15重量%、他の実施形態においては3重量%〜8重量%)の硫黄を含む。
【0030】
本発明のある実施形態によれば、吸着体は、1重量%〜25重量%(ある実施形態においては1重量%〜20重量%、他の実施形態においては1重量%〜15重量%、他の実施形態においては3重量%〜10重量%)添加剤を含む。
【0031】
本発明のある実施形態によれば、吸着体は、50〜2000m・g−1、ある実施形態においては200〜2000m・g−1、他の実施形態においては400〜1500m・g−1の比表面積を有する。
【0032】
本発明のある実施形態によれば、吸着体は、25〜500セル・インチ−2(3.88〜77.5セル・cm−2)、他の実施形態においては50〜200セル・インチ−2(7.75〜31.0セル・cm−2)、他の実施形態においては、50〜100セル・インチ−2(7.75〜15.5セル・cm−2)のセル密度を有するモノリシックハニカムである。
【0033】
本発明のある実施形態によれば、吸着体は、複数のチャネルを有するモノリシックハニカム体であり、チャネルの一部は、吸着体の一端で塞がっており、チャネルの一部は、吸着体の他端で塞がっている。ある実施形態によれば、1つのチャネルが一端で塞がっていると、それに隣接した少なくとも大半(ある実施形態においては全て)のチャネルが他端で塞がっている。
【0034】
本発明のある実施形態によれば、吸着体は、RFG1(以下に定義)に対して、少なくとも90%、ある実施形態においては少なくとも95%、他の実施形態においては少なくとも98%、他の実施形態においては少なくとも99%の初期Hg除去効率を有する。本発明のある実施形態によれば、吸着体は、RFG2(以下に定義)に対して、少なくとも0.95%、ある実施形態においては少なくとも95%、他の実施形態においては少なくとも98%、他の実施形態においては少なくとも99%の初期Hg除去効率を有する。本発明のある実施形態によれば、吸着体は、RFG3(以下に定義)に対して、少なくとも0.95%、ある実施形態においては少なくとも95%、他の実施形態においては少なくとも98%、他の実施形態においては少なくとも99%の初期Hg除去効率を有する。
【0035】
本発明のある実施形態によれば、吸着体は、RFG1(以下に定義)に対して、少なくとも0.05mg・g−1、ある実施形態においては少なくとも0.10mg・g−1、他の実施形態においては少なくとも0.15mg・g−1、他の実施形態においては少なくとも0.20mg・g−1、他の実施形態においては少なくとも0.30mg・g−1のHg除去能を有する。本発明のある実施形態によれば、吸着体は、RFG2(以下に定義)に対して、少なくとも0.05mg・g−1、ある実施形態においては少なくとも0.10mg・g−1、他の実施形態においては少なくとも0.15mg・g−1、他の実施形態においては少なくとも0.20mg・g−1、他の実施形態においては少なくとも0.30mg・g−1のHg除去能を有する。本発明のある実施形態によれば、吸着体は、RFG3(以下に定義)に対して、少なくとも0.05mg・g−1、ある実施形態においては少なくとも0.10mg・g−1、他の実施形態においては少なくとも0.15mg・g−1、他の実施形態においては少なくとも0.20mg・g−1、他の実施形態においては少なくとも0.30mg・g−1のHg除去能を有する。
【0036】
本発明の第2の態様は、複数の細孔を画定する活性炭マトリックスと、硫黄と、As、Cd、Hgおよび/またはSe等の毒性物質を流体流れから除去するのを促進するために適合された少なくとも1種類の添加剤とを含み、添加剤が、活性炭マトリックスの細孔の壁表面に実質的に分布しており、炭素、硫黄含有無機材料および添加剤以外の無機材料を10重量%未満(ある実施形態においては8重量%未満、他の実施形態においては5重量%未満)含む、吸着体を製造する方法であって、
(A)炭素原料と、硫黄原料と、任意のフィラー材料とを含むバッチ混合物材料で形成されたバッチ混合体を提供する工程と、
(B)バッチ混合体に、O欠乏雰囲気において高炭化温度を与えることにより、バッチ混合体を炭化して、炭化バッチ混合体を形成する工程と、
(C)炭化バッチ混合体を、COおよび/またはHO含有雰囲気中、高活性温度で活性化して、複数の細孔を画定する炭素マトリックスを含む活性体を形成する工程と、
(D)添加剤を、活性体の炭素マトリックスの細孔の壁表面に充填する工程と
を含む。
【0037】
本発明の方法のある実施形態によれば、工程(A)において、炭素原料は、合成炭素含有ポリマー材料、活性炭粉末、炭粉、コールタールピッチ、石油ピッチ、木粉、セルロースおよびその誘導体、小麦粉、くるみ粉、デンプン、コークス、石炭またはこれらのうち2つ以上の混合物または組合せを含む。
【0038】
本発明の方法のある実施形態によれば、工程(A)において、硫黄原料は、硫黄粉末、硫黄含有粉末樹脂、硫化物、硫酸塩およびその他の硫黄含有化合物、またはこれらのうち2つ以上の混合物または組合せを含む。
【0039】
本発明の方法のある実施形態によれば、工程(A)は、硫黄含有粒子が分布した予備重合炭素含有ポリマー材料を含むバッチ混合物材料で形成されたバッチ混合体を提供することを含む。
【0040】
本発明の方法のある実施形態によれば、工程(A)において、フィラー材料は、ムライト、コージエライト、シリカ、アルミナ、その他の酸化物ガラス、その他の酸化物セラミックまたはその他の耐火材料を含む。
【0041】
本発明の方法のある実施形態によれば、工程(A)において、バッチ混合物材料は、フェノール樹脂またはフルフリルアルコールに基づく樹脂を含む。
【0042】
本発明の方法のある実施形態によれば、工程(A)において、バッチ混合物は、硬化温度で熱処理すると硬化可能である。
【0043】
本発明の方法のある実施形態によれば、工程(A)は、バッチ混合物材料を押出して、押出しバッチ混合体を形成する工程(A1)を含む。
【0044】
本発明の方法のある実施形態によれば、工程(A)は、工程(A1)の後に、
押出しバッチ混合体を硬化温度で硬化して、硬化バッチ混合体を得る工程(A2)
を含む。
【0045】
本発明の方法のある実施形態によれば、工程(A)において、押出しバッチ混合体は、複数のチャネルを有するモノリシックハニカムの形状を採る。
【0046】
本発明の方法のある実施形態によれば、工程(C)の後、吸着体は、複数のチャネルを有するモノリシックハニカムの形状を採る。
【0047】
本発明の方法のある実施形態によれば、バッチ混合物材料は、工程(C)の終わりに、吸着体が、炭素、硫黄および添加剤以外の無機材料を10重量%未満(ある実施形態においては8重量%未満、他の実施形態においては5重量%未満、他の実施形態においては3重量%未満、他の実施形態においては1重量%未満)含むように選択される。
【0048】
本発明の方法のある実施形態によれば、工程(C)の後、このようにして得られた吸着体は、50〜2000m・g−1、他の実施形態においては100〜1500m・g−1、他の実施形態においては100〜1200m・g−1、他の実施形態においては200〜1800m・g−1、他の実施形態においては400〜1500m・g−1の表面積を有する。
【0049】
本発明の方法のある実施形態によれば、工程(D)は、
活性体に添加剤を含む液体材料を含浸する工程(D1)と、
含浸活性体を乾燥して、活性炭マトリックスを含む吸着体を形成する工程(D2)と
を含む。
【0050】
本発明の方法のある実施形態によれば、工程(D)は、
活性体を、添加剤を含む雰囲気に晒す工程(DA)
を含む。
【0051】
本発明の方法のある実施形態によれば、工程(D)において、添加剤は、Ca(OH)等のアルカリ土類金属水酸化物を含む。
【0052】
本発明の他の態様は、As、Cd、Seおよび/またはHgを流体流れから削減する方法に係り、吸着体を、前述したとおり、流体流れ(ガス流れ等)に配置することを含む。本方法のある実施形態によれば、流体流れは、水銀を含むガス流れであり、少なくとも10モル%、ある実施形態においては少なくとも30モル%、ある実施形態においては少なくとも40モル%、ある実施形態においては少なくとも50モル%、他の実施形態においては少なくとも60モル%の水銀は元素状態にある。
【0053】
有毒物質を削減する方法のある実施形態によれば、ガス流れは、水銀と、30体積ppm未満のHClとを含む。
【0054】
有毒物質を削減する方法のある実施形態によれば、ガス流れは、水銀と、少なくとも3体積ppmのSOとを含む。
【0055】
本発明のある実施形態は以下の利点を有する。第1に、高比表面積と、毒性物質を吸着または収着を促進できる多数の活性部位を有する吸着材料を製造して、有害物質、特に、ヒ素、カドミウム、水銀および/またはセレン、特に、水銀の削減に有効に用いることができる。第2に、本発明のある実施形態の吸着材料は、酸化した水銀ばかりでなく、元素水銀の収着にも有効である。さらに、本発明のある実施形態による吸着体は、高および低濃度のHClを有する排ガスから水銀を除去するのに有効であることが分かっている。最後だが大切なのは、本発明のある実施形態による吸着体は、高濃度のSOを有する排ガスから水銀を除去するのに有効であることが分かっていることである。
【0056】
本発明のさらなる特徴および利点は、以下の詳細な説明に述べられており、一部は、その説明から当業者には容易に明らかであるか、または記載された説明およびその特許請求の範囲、並びに添付の図面に示されたように本発明を実施することによって認識されるであろう。
【0057】
先の一般的な説明および以下の詳細な説明は、本発明の単なる例示であり、特許請求の範囲に記載された本発明の性質および特徴を理解するための概要または構成を提供することが意図されているのが理解されよう。
【0058】
添付の図面は、本発明をさらに理解するために含まれており、本明細書に包含され、その一部を構成する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】含浸添加剤を含む本発明の実施形態の吸着体の、ある一定の試験時間にわたる水銀除去能を示す図である。
【図2】大量の無機フィラーと含浸添加剤とを含む比較の吸着体の、ある一定の試験時間にわたる水銀除去能を示す図である。
【図3】本発明のハニカム吸着体の断面のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
別記しない限り、成分の質量パーセント、寸法、および明細書と特許請求の範囲に用いられる特定の物理的特性の値などの全ての数字は、全ての場合において「約」という用語により修飾されているものとして理解すべきである。明細書および特許請求の範囲に用いられる正確な数値は、本発明の追加の実施の形態を構成することを理解すべきである。実施例に開示された数値の精度を確実にするために労力が払われてきた。しかしながら、任意の測定数値は、それぞれの測定技法において見られる標準偏差から生じるある誤差を本来含み得る。
【0061】
本発明を説明し請求する本明細書で用いる不定冠詞「1つ(a、an)」は、「少なくとも1つ」を意味し、明確に反対が示されていない限り、「1つのみ」に限定してはならない。このように、例えば、「1種類の水銀含有化合物」には、文脈上明白に指示がない限り、2種類以上のかかる水銀含有化合物を有する実施形態が含まれる。
【0062】
本明細書で用いる、ある成分の「重量%」または「重量パーセント」あるいは「重量百分率」は、特に反対が述べられていない限り、その成分を含む組成または物品の総質量に基づくものである。本明細書で用いる、パーセンテージは全て、別記しない限り、吸着体の総重量の重量による。ガスのppmは全て、別記しない限り、容積による。
【0063】
本出願において、別記しない限り、吸着体に存在する各元素は集合的に、例えば、酸化状態にある各元素で参照される。このように、本明細書で用いる「硫黄」という用語には、特に、元素硫黄(0)、硫酸塩(+6)、亜硫酸塩(+4)および硫化物(−2)をはじめとする全ての酸化状態にある硫黄元素が含まれる。
【0064】
「イン・サイチュで押し出された」とは、硫黄および/または添加剤等の関連材料が、原料の少なくとも一部をバッチ混合物材料へと組み込むことによって、本体へと導入されて、押出し体が組み込まれた原料を含むようにすることを意味する。
【0065】
硫黄、添加剤またはその他の材料の、本発明の吸着体、押出しバッチ混合体またはバッチ混合物材料の断面への分布は、これらに限られるものではないが、マイクロプローブ、XPS(X線光電子分光分析)および質量分析と組み合わせたレーザーアブレーションをはじめとする様々な技術により測定することができる。
【0066】
吸着体またはその他の本体のある平坦な断面にある材料(例えば、硫黄、添加剤等)の分布を特定する方法論を以下に説明する。この方法論は、本出願において「分布特定法」と呼ぶ。
【0067】
合計断面が500μm×500μmを超える場合には、少なくとも500μm×500μmのサイズの断面の目標試験領域を選択する。500μm×500μm以下の全断面だと単一の目標試験領域となる。目標試験領域の合計数はp(正の整数)である。
【0068】
各目標試験領域は、多数の別個の20μm×20μmゾーンへと格子で分割される。40μm以上の有効面積(後述)を有するゾーンのみを検討し、40μm未満の有効面積を有するゾーンは後述するデータ処理において破棄する。このように、目標試験領域の全正方形試料ゾーンの全有効面積(ATE)は、
【数1】

【0069】
である。式中、ae(i)は、ゾーンiの有効面積、nは目標試験領域中の四角形試料ゾーンの合計数、ai(i)≧40μmである。平方マイクロメートルでの個々の正方形ゾーンae(i)の面積は、
ae(i)=400−av(i)
で計算する。式中、av(i)は四角形ゾーンi内の10μmより大きなボイド、細孔または空き領域の平方マイクロメートルでの合計面積である。
【0070】
各正方形ゾーンiを測定して、硫黄について単位有効面積当たりの硫黄原子のモル、または添加剤の場合には他の関連材料のモルで表わされる平均濃度C(i)を得る。C(i)(i=1〜n)を全て降順でリストして、順列CON(1)、CON(2)、CON(3)…CON(n)を形成する。CON(1)は、全nゾーン中最も高いC(i)であり、CON(n)は、全nゾーン中最も低いC(i)である。最高濃度の目標試験領域における全nゾーンの5%の算術平均濃度は、CON(max)である。
【数2】

【0071】
最低濃度の目標試験領域における全nゾーンの5%の算術平均濃度は、CON(min)である。
【数3】

【0072】
目標試験領域の算術平均濃度は、CON(av)である。
【数4】

【0073】
全てのp目標試験領域について、全てのCON(av)(k)(k=1〜p)を降順でリストして、順列CONAV(1)、CONAV(2)、CONAV(3)…CONAV(p)を形成する。CONAV(1)は全p目標試験領域中最も高いCON(av)(k)であり、CONAV(p)は、全p目標試験領域中最も低いCON(av)(p)である。全p目標試験領域の算術平均濃度は、CONAV(av)である。
【数5】

【0074】
関連材料が本体、活性炭マトリックスまたは材料全体に分布している本発明の本体または材料のある実施形態において、各目標試験領域において、その分布は、CON(av)/CON(min)≦30およびCON(max)/CON(av)≦30である。他の実施形態においては、CON(av)/CON(min)≦20およびCON(max)/CON(av)≦20が望ましい。他の実施形態においては、CON(av)/CON(min)≦15およびCON(max)/CON(av)≦15が望ましい。他の実施形態においては、CON(av)/CON(min)≦10およびCON(max)/CON(av)≦10が望ましい。他の実施形態においては、CON(av)/CON(min)≦5およびCON(max)/CON(av)≦5が望ましい。他の実施形態においては、CON(av)/CON(min)≦3およびCON(max)/CON(av)≦3が望ましい。他の実施形態においては、CON(av)/CON(min)≦2およびCON(max)/CON(av)≦2が望ましい。
【0075】
「均一分布」されるある材料または成分を、本出願による本体または材料において「均一分布」させるには、分布特定法は、各目標試験領域において、全てのCON(m)について、0.1n≦m≦0.9n:≦0.5≦CON(m)/CON(av)≦2を満たす。
【0076】
ある実施形態においては、0.6≦CON(m)/CON(av)≦1.7が望ましい。他の実施形態においては、0.7≦CON(m)/CON(av)≦1.4が望ましい。他の実施形態においては、0.8≦CON(m)/CON(av)≦1.2が望ましい。他の実施形態においては、0.9≦CON(m)/CON(av)≦1.1が望ましい。ある実施形態においては、全てのCON(m)が、0.05n≦m≦0.95n:0.5≦CON(m)/CON(av)≦2であり、ある実施形態においては、0.6≦CON(m)/CON(av)≦1.7である。他の実施形態においては、0.7≦CON(m)/CON(av)≦1.4が望ましい。他の実施形態においては、0.8≦CON(m)/CON(av)≦1.2が望ましい。他の実施形態においては、0.9≦CON(m)/CON(av)≦1.1が望ましい。本発明の本体(吸着体、押出し混合体等)および材料のある実施形態においては、各個々の目標試験領域に関して、この段落で上述した特徴のいずれか1つに加えて、全てのp目標試験領域に関する関連材料(例えば、硫黄、添加剤等)の分布に、全てのCONAV(k)について、0.1p≦k≦0.9p:0.5≦CONAV(k)/CONAV(av)≦2である。ある実施形態においては、0.6≦CONAV(k)/CONAV(av)≦1.7が望ましい。他の実施形態においては、0.7≦CONAV(k)/CONAV(av)≦1.4が望ましい。他の実施形態においては、0.8≦CONAV(k)/CONAV(av)≦1.2が望ましい。他の実施形態においては、0.9≦CONAV(k)/CONAV(av)≦1.1が望ましい。他の実施形態においては、0.95≦CONAV(k)/CONAV(av)≦1.05が望ましい。ある実施形態においては、全CONAV(k)について、0.05p≦k≦0.95p:0.5≦CONAV(k)/CONAV(av)≦2であり、ある実施形態においては、0.6≦CONAV(k)/CONAV(av)≦1.7が望ましい。他の実施形態においては、0.7≦CONAV(k)/CONAV(av)≦1.4が望ましい。他の実施形態においては、0.8≦CONAV(k)/CONAV(av)≦1.2が望ましい。他の実施形態においては、0.9≦CONAV(k)/CONAV(av)≦1.1が望ましい。他の実施形態においては、0.95≦CONAV(k)/CONAV(av)≦1.05が望ましい。
【0077】
本発明の第1の態様は、石炭ガス化プロセスにおいて生成される石炭燃焼または廃棄物焼却または合成ガスから生じる排ガス流れ等の流体流れから、水銀およびその他の有毒物質を削減するために適合された吸着体に関する。上述したとおり、かかるガス流れは、除去手順を行う前は、As、CdおよびSe等、様々な量の水銀および/またはその他の毒性物質を含有していることが一般的に知られている。これらガス流れにおいて水銀を削減することが主な懸案事項の1つである。水銀は、原料(例えば、瀝青炭、亜瀝青炭、都市廃棄物および医療廃棄物)および処理条件によって、かかるガス流れ中、様々な比率で元素状態または酸化状態で存在し得る。
【0078】
本発明の吸着体は、活性炭マトリックスと、硫黄と、処理している流体流れからヒ素、カドミウム、水銀および/またはセレンを除去するのを促すために適合された添加剤とを含む。添加剤は、典型的に、金属元素を含む。物理および化学吸着を組み合わせることにより、本発明の吸着体は、元素状態と酸化状態の両方で水銀を結合およびトラップすることができるものと考えられる。本発明のある実施形態の吸着体および材料は、排ガス流れにおいて元素状態で水銀を除去するのに特に有効である。元素水銀を除去するのに通常あまり有効でないある先行技術に比べ、これは特に有利である。
【0079】
本発明の吸着体は、様々な形状を採り得る。例えば、吸着体は、粉末、ペレットまたは押出されたモノリスであってよい。本発明の吸着体は、処理される流体流れが流れる固定吸着床に組み込んでもよい。ある実施形態において、火力発電所において石炭燃焼排ガスまたは石炭ガス化プロセスで生成された合成ガスを処理するのに用いるときは特に、ガス流れが低圧力降下で通過する固定床が極めて望ましい。このためには、固定床に充填された吸着ペレットによって、十分なガス通路が得られるのが望ましい。ある実施形態において、本発明の吸着体は、多数のチャネルを有する押出されたモノリシックハニカムの形態にあるのが特に有利である。ハニカムのセル密度を押出しプロセス中調節して、使用時の様々な程度の圧力降下を達成することができる。ハニカムのセル密度は、ある実施形態においては25〜500セル・インチ−2(3.88〜77.5セル・cm−2)、他の実施形態においては50〜200セル・インチ−2(7.75〜31.0セル・cm−2)、他の実施形態においては50〜100セル・インチ−2(7.75〜15.5セル・cm−2)である。ガス流れと吸着体材料間をより密に接触させるには、ある実施形態においては、チャネルの一部が吸着体の一端で塞がれ、チャネルの一部が吸着体の他端で塞がれている。ある実施形態において、吸着体の各端、塞がれた、および/または塞がれていないチャネルが市松パターンを形成するのが望ましい。ある実施形態において、1つのチャネルが一端(「参照端」と呼ぶ)で塞がれていて、吸着体の反対端は塞がれていない場合、それに隣接した(当該のチャネルと少なくとも1つの壁を共有する)チャネルの少なくとも大半(他の実施形態においては好ましくは全て)が、吸着体の他端で塞がれているが、参照端では塞がれていないのが望ましい。多数のハニカムを、様々なやり方で積み重ねて、異なる使用条件の必要性を満たす様々なサイズ、使用期間等を有する実際の吸着床を形成することができる。
【0080】
石炭発電所の排ガス流れから水銀を削減するのに、典型的にその高比面積のために、活性炭が用いられてきた。しかしながら、前述したとおり、活性炭のみでは、十分な除去能がない。水銀削減のために、硫黄と活性炭の組合せを用いることが先行技術において提案された。かかる組合せは、水銀削減能に関して活性炭のみよりもやや改善を示すが、固定床を用いるときは特に、水銀除去効率のさらに高い吸着体が極めて望ましい。
【0081】
本明細書で用いる「活性炭マトリックス」とは、相互接続炭素および/または粒子により形成された網を意味する。活性炭材料に典型的なように、マトリックスは、複数の相互接続細孔を画定する壁を含む。活性炭マトリックスは、硫黄および添加剤と共に、吸着体の骨格構造を与える。さらに、活性炭マトリックスの細孔の大きな累積的面積が、水銀収着が直接生じるか、または硫黄および添加剤が分布される複数の部位を与え、さらに水銀収着を促進する。
【0082】
本発明のある実施形態において、吸着体は、50重量%〜97重量%、ある実施形態においては60重量%〜97重量%、他の実施形態においては85重量%〜97重量%の炭素を含む。後述する吸着体を製造する本発明の方法に従って、本発明の吸着体を製造するプロセス中に、同じレベルの炭化および活性化を用いた場合、これより高い濃度の炭素だと、通常、より大きな気孔率につながる。
【0083】
本発明の吸着体中の活性炭マトリックスにより画定された細孔は、直径が10nm以下のナノスケール細孔と、直径が10nmを超えるマイクロスケール細孔の2つに分類される。本発明の吸着体中の細孔サイズ分布は、例えば、窒素吸着等、当該技術分野において利用できる技術を用いることにより測定できる。ハニカム吸着体中、直径が10nmを超えるセルは、本出願の意味においては、マイクロスケール細孔とみなされる。押し出されたハニカム構造における大半のセルは10nmを超える直径を有するという点で、その大半はマイクロスケール細孔とみなされる。ナノスケール細孔とマイクロスケール細孔の表面の両方が併せて、本発明の吸着体の全体の高比面積を与える。本発明の吸着体のある実施形態において、ナノスケール細孔の壁表面は、吸着体の比面積の少なくとも50%に相当する。他の実施形態において、ナノスケール細孔の壁表面は、吸着体の比面積の少なくとも60%に相当する。他の実施形態において、ナノスケール細孔の壁表面は、吸着体の比面積の少なくとも70%に相当する。他の実施形態において、ナノスケール細孔の壁表面は、吸着体の比面積の少なくとも80%に相当する。他の実施形態において、ナノスケール細孔の壁表面は、吸着体の比面積の少なくとも90%に相当する。
【0084】
本発明の吸着体には、高比表面積という特徴がある。本発明のある実施形態において、吸着体は、50〜2000m・g−1の比面積を有する。他の実施形態において、本発明の吸着体は、100〜1800m・g−1の比面積を有する。他の実施形態において、本発明の吸着体は、200〜1500m・g−1の比面積を有する。他の実施形態において、本発明の吸着体は、300〜1200m・g−1の比面積を有する。吸着体の高比面積によって、毒性物質の収着のための多くの活性部位を材料に提供することができる。しかしながら、吸着体の比面積が大きすぎる、例えば、2000m・g−1を超えると、吸着体は多孔性となりすぎ、吸着体の機械的完全性が損なわれる。吸着体の強度を、ある閾値要件に適合させる必要のある実施形態については望ましくない。
【0085】
前述および後述するとおり、本発明の吸着体は、ある量の無機フィラー材料を含む。吸着体の高比表面積を得るには、無機フィラーが含まれる場合には、かかる無機フィラーおよびそれ自体が多孔性で、吸着体の高比面積に部分的に寄与するのが望ましい。それでも、上述したとおり、本発明の吸着体の高比面積の大半に、細孔、特に、活性炭マトリックスのナノスケール細孔がある。活性炭に匹敵する比表面積を有する無機フィラーは、通常、本発明の吸着体に含めるのは難しいか、またはコストがかかる。従って、典型的な機械的補強材と共に、無機フィラーが最終吸着体に取り込まれ、吸着体の全体の比表面積を損なう傾向もある。これは極めて望ましくない。上述したとおり、吸着体の高表面積は、通常、有害物質の収着のための活性部位(有害物質を収着可能な活性部位、有害物質の直接収着を促進できる硫黄、および有害物質の収着を促進可能な添加剤)がより多くあることを意味する。さらに、吸着体の活性収着部位の3つの部類に隣接していると、全体の収着能を伝導する。大量の無機フィラーの組み込みにより、炭素マトリックス中の添加剤および硫黄が希釈され、これらの3つの部類の活性部位間の全体の平均距離が付加される。従って、本発明の吸着体の、炭素、硫黄含有無機材料および添加剤以外の無機材料のパーセンテージは比較的低い。本発明の吸着体は、炭素、硫黄含有無機材料および添加剤以外の無機材料を10重量%未満(ある実施形態においては8重量%未満、他の実施形態においては5重量%未満、他の実施形態においては3重量%未満、他の実施形態においては2重量%未満)含む。
【0086】
添加剤は、典型的に、金属元素を含む。接触の際に、処理している流体流れから、有害物質または化合物、特に、水銀、ヒ素、カドミウムおよびセレンの除去を促進することのできる添加剤を、本発明の吸着体に含めることができる。添加剤は、次のやり方の1つ以上の機能を果たす。特に、かかる有害物質の除去を促進するために、(i)有害物質を一時的または永久的に化学収着(例えば、共有および/またはイオン結合により)する、(ii)有害物質を一時的または永久的に物理収着する、(iii)吸着体の他の成分により、有害物質の反応/収着を触媒する、(iv)有害物質の周囲雰囲気との反応を触媒して、互いに変換させる、(v)吸着体の他の成分に既に吸着された有害物質をトラップする、(vi)有害物質の活性吸着部位への移動を促す。貴金属(Ru、Th、Pd、Ag、Re、Os、Ir、PtおよびAu)および遷移金属ならびにその化合物は、かかるプロセスを触媒するのに有効であることが知られている。本発明の吸着体に含めることのできる添加剤としては、上述した貴金属およびこれらの化合物、アルカリおよびアルカリ土類ハロゲン化物、酸化物および過酸化物、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ニオブ、モリブデン、銀、タングステンおよびランタノイドの酸化物、硫化物および塩が例示されるが、これらに限られるものではない。添加剤中の金属元素は、様々な価数とすることができる。例えば、鉄が添加剤に含まれている場合には、+3、+2または0価または異なる価数の混合で存在し、金属鉄(0)、FeO、Fe、Fe、FeS、FeCl、FeCl、FeSO等として存在することができる。他の例を挙げると、マンガンが添加剤に存在している場合には、+4、+2または0価または異なる価数の混合で存在し、金属マンガン(0)、MnO、MnO、MnS、MnCl、MnCl、MnSO等として存在することができる。
【0087】
本発明の吸着体のある実施形態において、有利に含まれる添加剤は、アルカリハロゲン化物、マンガンおよび鉄の酸化物、硫化物および塩である。本発明の吸着体のある実施形態において、有利に含まれる添加剤は、KIとマンガンの酸化物、硫化物および塩の組合せ、KIと鉄の酸化物、硫化物および塩の組合せ、またはKIとマンガンおよび鉄の酸化物、硫化物および塩の組合せである。これらの組合せは、水銀、特に、元素水銀をガス流れから除去するのに特に有効であることが分かっている。
【0088】
本発明のある実施形態によれば、吸着体は、有毒物質の除去を促進する添加剤として、アルカリ土類金属水酸化物、例えば、Ca(OH)を含む。実験によれば、Ca(OH)は、ヒ素、カドミウムおよびセレンをガス流れから除去するのを促進するのに特に有効であることが示された。
【0089】
本発明の吸着体に存在する添加剤の量は、用いる特定の添加剤、吸着体を用いる用途、吸着体の所望の有毒物質除去能および効率に応じて異なる。本発明の吸着体のある実施形態において、含まれる添加剤の量は、合計吸着体の1重量%〜20重量%、他の実施形態においては2重量%〜18重量%、他の実施形態においては5重量%〜15重量%、他の実施形態においては5重量%〜10重量%である。
【0090】
本発明の吸着体の添加剤または本体の分布は、活性炭マトリックスの壁表面に主に限定される。このように、特定の添加剤の存在は、例えば、(i)ナノスケール細孔の壁表面、(ii)マイクロスケール細孔の壁表面、(iii)吸着体が多数のセルを備えたハニカム形状を採る場合には、セルの壁、および(iv)吸着体が、多数のセルを備えたハニカムの形状を採る場合には、セル壁を形成する吸着材料の薄い上部層とすることができる。ある実施形態において、添加剤の一部は、吸着体の他の成分、例えば、炭素や硫黄と化学的に結合していてもよい。他の実施形態において、添加剤の一部は、活性炭マトリックスまたはその他の成分と物理的に結合していてもよい。さらに他の実施形態において、添加剤の一部は、ナノスケールまたはマイクロスケールサイズの粒子の形態で吸着体中に存在している。ある実施形態において、多数の添加剤が本発明の吸着体中に存在しており、添加剤のうち少なくとも2種類は、密に、実質的に均一に互いに混合されている。他の実施形態において、多数の添加剤は、本発明の吸着体に存在しており、少なくとも2種類の添加剤が、吸着体の特定の細孔の表面に別個の層を形成する。層は、互いに近接させるか、またはある材料、例えば、他の添加剤および/または硫黄含有材料により分離することができる。
【0091】
本発明の吸着体のある実施形態において、少なくとも大半、ある実施形態においては少なくとも60%、他の実施形態においては少なくとも70%、他の実施形態においては少なくとも80%、他の実施形態においては少なくとも90%の添加剤が、マイクロスケール細孔の壁表面(これに限られるものではないが、ハニカム吸着体のセルの壁表面)に分布している。
【0092】
本発明の吸着体のある実施形態において、吸着体に分布された添加剤について、各目標試験領域におけるその分布は、分布特定法に従って、CON(max)/CON(min)≧100である。他の実施形態においては、CON(max)/CON(min)≧200である。他の実施形態においては、CON(max)/CON(min)≧300である。他の実施形態においては、CON(max)/CON(min)≧400である。他の実施形態においては、CON(max)/CON(min)≧500である。他の実施形態においては、CON(max)/CON(min)≧1000である。他の実施形態においては、CON(max)/CON(av)≧50である。他の実施形態においては、CON(max)/CON(av)≧100である。他の実施形態においては、CON(max)/CON(av)≧200である。他の実施形態においては、CON(max)/CON(av)≧300である。他の実施形態においては、CON(max)/CON(av)≧400である。他の実施形態においては、CON(max)/CON(av)≧500である。他の実施形態においては、CON(max)/CON(av)≧1000である。
【0093】
本発明の吸着体のある実施形態において、吸着体に分布された添加剤について、全p目標試験領域におけるその分布は、CONAV(1)/CONAV(n)≧2である。他の実施形態においては、CONAV(1)/CONAV(n)≧5である。他の実施形態においては、CONAV(1)/CONAV(n)≧8である。他の実施形態においては、CONAV(1)/CONAV(n)≧10である。他の実施形態においては、CONAV(1)/CONAV(n)≧20である。他の実施形態においては、CONAV(1)/CONAV(n)≧30である。他の実施形態においては、CONAV(1)/CONAV(av)≧1.5である。他の実施形態においては、CONAV(1)/CONAV(av)≧2である。他の実施形態においては、CONAV(1)/CONAV(av)≧3である。他の実施形態においては、CONAV(1)/CONAV(av)≧4である。他の実施形態においては、CONAV(1)/CONAV(av)≧5である。他の実施形態においては、CONAV(1)/CONAV(av)≧8である。他の実施形態においては、CONAV(1)/CONAV(av)≧10である。
【0094】
本発明の吸着体は硫黄を含む。硫黄は、例えば、元素硫黄(0価)、硫化物(−2価)、亜硫酸塩(+4価)、硫酸塩(+6価)の形態で存在してもよい。硫黄の少なくとも一部が、流体流れから除去される毒性物質と化学的に結合できる価数の状態で存在しているのが望ましい。そのためには、硫黄の少なくとも一部が−2および/またはゼロ価で存在しているのが望ましい。硫黄の中には、活性炭マトリックスの壁表面に化学的または物理的に結合していてもよいものがある。硫黄の一部は、添加剤に化学的または物理的に結合し、上述したとおり、例えば、硫化物(FeS、MnS、Mo等)の形態であってもよい。吸着体において、ある実施形態においては少なくとも10モル%、ある実施形態においては少なくとも20モル%、ある実施形態においては少なくとも30モル%、ある実施形態においては少なくとも40モル%、ある実施形態においては少なくとも50モル%、ある実施形態においては少なくとも60モル%、ある実施形態においては少なくとも70モル%の硫黄がゼロ価であるのが望ましい。
【0095】
実験によれば、硫黄注入活性炭が、水銀に加えて、ヒ素、カドミウムおよびセレンをガス流れから除去するのに有効であることが分かった。実験によれば、元素硫黄を含む吸着体は、元素硫黄がないが、実質的に同じ合計硫黄濃度のものよりも水銀除去能が高い傾向にあることが分かった。
【0096】
本発明の吸着体に存在する硫黄の量は、用いる特定の添加剤、用いる吸着体の用途ならびに吸着体の所望の有毒物質除去能および効率に応じて異なる。本発明の吸着体のある実施形態において、含まれる硫黄の量は、1重量%〜20重量%、ある実施形態においては1重量%〜15重量%、他の実施形態においては2重量%〜10重量%、他の実施形態においては3重量%〜8重量%である。
【0097】
本発明の吸着体のある実施形態において、硫黄は、活性炭マトリックスの細孔の壁表面に実質的に分布している。本発明のある実施形態において、硫黄は活性炭マトリックス全体に分布している。「活性炭マトリックス全体に分布」とは、硫黄が吸着体の外側表面またはセル壁だけでなく、吸着体の奥深くにも存在することを意味している。このように、硫黄は、例えば、(i)ナノスケール細孔の壁表面に、(ii)マイクロスケール細孔の壁表面に、(iii)活性炭マトリックスの壁構造に埋まった状態で、および(iv)活性炭マトリックスの壁構造に部分的に埋め込まれた状態で存在し得る。(iii)および(iv)の状況では、硫黄は、吸着体の特定の細孔の壁構造の一部を実際に形成する。従って、ある実施形態において、硫黄の中には、吸着体の他の成分、例えば、炭素または添加剤と化学的に結合しているものがある。他の実施形態において、硫黄の中には、活性炭マトリックスまたはその他の成分と物理的に結合しているものがある。さらに他の実施形態において、硫黄の中には、ナノスケールまたはマイクロスケールサイズの粒子の形態で吸着体に存在しているものがある。
【0098】
本発明による吸着体またはその他の本体における硫黄の分布は、上述した分布特定法により測定および特定することができる。
【0099】
ある実施形態において、目標試験領域における硫黄の分布は、CON(max)/CON(min)≧100である。他の実施形態においては、CON(max)/CON(min)≧200である。他の実施形態においては、CON(max)/CON(min)≧300である。他の実施形態においては、CON(max)/CON(min)≧400である。他の実施形態においては、CON(max)/CON(min)≧500である。他の実施形態においては、CON(max)/CON(min)≧1000である。他の実施形態においては、CON(max)/CON(av)≧50である。他の実施形態においては、CON(max)/CON(av)≧100である。他の実施形態においては、CON(max)/CON(av)≧200である。他の実施形態においては、CON(max)/CON(av)≧300である。他の実施形態においては、CON(max)/CON(av)≧400である。他の実施形態においては、CON(max)/CON(av)≧500である。他の実施形態においては、CON(max)/CON(av)≧1000である。
【0100】
本発明の吸着体のある実施形態において、吸着体に分布された添加剤について、全p目標試験領域におけるその分布は、以下のとおりである。
【0101】
CONAV(1)/CONAV(n)≧2である。他の実施形態においては、CONAV(1)/CONAV(n)≧5である。他の実施形態においては、CONAV(1)/CONAV(n)≧8である。他の実施形態においては、CONAV(1)/CONAV(n)≧1.5である。他の実施形態においては、CONAV(1)/CONAV(av)≧2である。他の実施形態においては、CONAV(1)/CONAV(av)≧3である。他の実施形態においては、CONAV(1)/CONAV(av)≧4である。他の実施形態においては、CONAV(1)/CONAV(av)≧5である。他の実施形態においては、CONAV(1)/CONAV(av)≧8である。他の実施形態においては、CONAV(1)/CONAV(av)≧10である。
【0102】
本発明の吸着体の他の実施形態において、吸着体に分布された硫黄に関して、各目標試験領域における分布は、CON(av)/CON(min)≦30である。他の実施形態においては、CON(av)/CON(min)≦20である。他の実施形態においては、CON(av)/CON(min)≦15である。他の実施形態においては、CON(av)/CON(min)≦10である。他の実施形態においては、CON(av)/CON(min)≦5である。他の実施形態においては、CON(av)/CON(min)≦3である。他の実施形態においては、CON(av)/CON(min)≦2である。他の実施形態においては、CON(max)/CON(av)≦30である。他の実施形態においては、CON(max)/CON(av)≦20である。他の実施形態においては、CON(max)/CON(av)≦15である。他の実施形態においては、CON(max)/CON(av)≦10である。他の実施形態においては、CON(max)/CON(av)≦5である。他の実施形態においては、CON(max)/CON(av)≦3である。他の実施形態においては、CON(max)/CON(av)≦2である。
【0103】
本発明の吸着体のある実施形態において、硫黄の分布は、各目標試験領域において、CON(av)/CON(min)≦30およびCON(max)/CON(av)≦30である。他の実施形態においては、CON(av)/CON(min)≦20およびCON(max)/CON(av)≦20であるのが望ましい。他の実施形態においては、CON(av)/CON(min)≦15およびCON(max)/CON(av)≦15であるのが望ましい。他の実施形態においては、CON(av)/CON(min)≦10およびCON(max)/CON(av)≦10であるのが望ましい。他の実施形態においては、CON(av)/CON(min)≦5およびCON(max)/CON(av)≦5が望ましい。他の実施形態においては、CON(av)/CON(min)≦3およびCON(max)/CON(av)≦3であるのが望ましい。他の実施形態においては、CON(av)/CON(min)≦2およびCON(max)/CON(av)≦2であるのが望ましい。
【0104】
本発明の吸着体のある実施形態において、吸着体に分布された硫黄について、全p目標試験領域におけるその分布は、CONAV(1)/CONAV(n)≧2である。他の実施形態においては、CONAV(1)/CONAV(n)≧5である。他の実施形態においては、CONAV(1)/CONAV(n)≧8である。他の実施形態においては、CONAV(1)/CONAV(n)≧1.5である。他の実施形態においては、CONAV(1)/CONAV(av)≧2である。他の実施形態においては、CONAV(1)/CONAV(av)≧3である。他の実施形態においては、CONAV(1)/CONAV(av)≧4である。他の実施形態においては、CONAV(1)/CONAV(av)≧5である。他の実施形態においては、CONAV(1)/CONAV(av)≧8である。他の実施形態においては、CONAV(1)/CONAV(av)≧10である。
【0105】
本発明の吸着体のある実施形態において、硫黄は、前述した分布特定法に従って活性炭マトリックス全体に均一に分布している。各目標試験領域において、全てのCON(m)(式中、0.1n≦m≦0.9nである)について、0.5≦CON(m)/CON(av)≦2である。ある実施形態においては、0.6≦CON(m)/CON(av)≦1.7が望ましい。他の実施形態においては、0.7≦CON(m)/CON(av)≦1.4が望ましい。他の実施形態においては、0.8≦CON(m)/CON(av)≦1.2が望ましい。他の実施形態においては、0.9≦CON(m)/CON(av)≦1.1が望ましい。ある実施形態において、全てのCON(m)(式中、0.05n≦m≦0.95nである)について、0.5≦CON(m)/CON(av)≦2である。ある実施形態においては、0.6≦CON(m)/CON(av)≦1.7である。他の実施形態においては、0.7≦CON(m)/CON(av)≦1.4が望ましい。他の実施形態においては、0.8≦CON(m)/CON(av)≦1.2が望ましい。他の実施形態においては、0.9≦CON(m)/CON(av)≦1.1が望ましい。本発明の本体(吸着体、押出し混合体等)および材料のある実施形態において、各個々の目標試験領域について、この段落で上述した特徴のいずれかに加えて、全てのp目標試験領域についての関連材料(例えば、硫黄、添加剤等)の分布は、全てのCONAV(k)(式中、0.1p≦k≦0.9pである)について、0.5≦CONAV(k)/CONAV(av)≦2である。ある実施形態においては、0.6≦CONAV(k)/CONAV(av)≦1.7である。他の実施形態においては、0.7≦CONAV(k)/CONAV(av)≦1.4が望ましい。他の実施形態においては、0.8≦CONAV(k)/CONAV(av)≦1.2が望ましい。他の実施形態においては、0.9≦CONAV(k)/CONAV(av)≦1.1が望ましい。他の実施形態においては、0.95≦CONAV(k)/CONAV(av)≦1.05が望ましい。ある実施形態において、全てのCONAV(k)(式中、0.05p≦k≦0.95pである)について、0.5≦CONAV(k)/CONAV(av)≦2である。ある実施形態においては、0.6≦CONAV(k)/CONAV(av)≦1.7である。他の実施形態においては、0.7≦CONAV(k)/CONAV(av)≦1.4が望ましい。他の実施形態においては、0.8≦CONAV(k)/CONAV(av)≦1.2が望ましい。他の実施形態においては、0.9≦CONAV(k)/CONAV(av)≦1.1が望ましい。他の実施形態においては、0.95≦CONAV(k)/CONAV(av)≦1.05が望ましい。
【0106】
本発明のある実施形態において、硫黄は、マイクロスケール細孔の壁表面の大半に存在している。本発明の他の実施形態において、硫黄は、マイクロスケール細孔の壁表面の少なくとも75%、他の実施形態においては少なくとも90%、他の実施形態においては少なくとも95%、他の実施形態においては少なくとも98%、さらに他の実施形態においては少なくとも99%に存在している。
【0107】
本発明のある実施形態において、硫黄は、ナノスケール細孔の壁表面の少なくとも20%、他の実施形態においては少なくとも30%、他の実施形態においては少なくとも40%、他の実施形態においては少なくとも50%、他の実施形態においては少なくとも60%、他の実施形態においては少なくとも70%、他の実施形態においては少なくとも80%、他の実施形態においては少なくとも85%に存在している。本発明のある実施形態において、吸着体の比面積の大半は、ナノスケール細孔の壁表面により提供される。これらの実施形態においては、ナノスケール細孔の壁表面に高パーセンテージ(少なくとも40%、ある実施形態においては少なくとも50%、他の実施形態においては少なくとも60%、他の実施形態においては少なくとも75%)で硫黄が分布されているのが望ましい。
【0108】
本発明のある実施形態において、活性炭、硫黄および添加剤に加えて、吸着体は無機フィラーをさらに含んでいてもよい。かかる無機フィラーは、特に、コストを下げ、吸着体の物理(熱膨張係数、破壊係数等)または化学特性(耐水性、耐高温性、耐食性等)を改善するために含まれる。かかる無機フィラーは、酸化物ガラス、酸化物セラミックまたは特定の耐火材料とすることができる。本発明の吸着体に含まれる無機フィラーとしては、シリカ、アルミナ、ジルコン、ジルコニア、ムライト、コージエライト、耐火材料等が例示されるがこれらに限られるものではない。本発明の吸着体のある実施形態において、無機フィラーはそれ自体、多孔性である。無機フィラーの高空隙率によって、比面積を過度に損なうことなく、吸着体の機械的強度を改善することができる。無機フィラーは、吸着体全体に分布していてよい。無機フィラーは、吸着体に分布された極小粒子の形態で存在してもよい。吸着体の用途およびその他の要因に応じて、ある実施形態において、吸着体は、例えば、10重量%まで、他の実施形態においては8重量%まで、他の実施形態においては5重量%まで、他の実施形態においては3重量%まで、他の実施形態においては1重量%までの無機フィラーを含む。
【0109】
本発明のある実施形態における吸着材料は、石炭ガス化プロセス中に生成された典型的な合成ガス流れからヒ素、水銀およびセレンを除去することができることが実証された。本発明の吸着体は、排ガス流れから水銀を除去するのに特に有効であることが分かった。本発明のある実施形態における吸着体は、この毒性物質を含むガス流れからカドミウムを除去するのに有効であると考えられる。ある毒性物質、例えば、水銀に対する吸着材料の除去能は、典型的に、初期除去効率と長期除去効率の2つのパラメータにより特定される。水銀については、以下の手順を用いて、請求項に示した初期水銀除去効率および長期水銀除去能を特定する。
【0110】
試験する吸着体を、固定床に充填し、特定の組成を有する160℃の対照排ガスを、7500hr−1の空間速度で通す。ガス流れにおける水銀濃度を、吸着床前後で測定する。いつでも、即時水銀除去効率(Eff(Hg))は、
Eff(Hg)=(C−C)/C×100%
で計算される。式中、Cは吸着床直前の排ガス流れ中のμg・m−3での合計水銀濃度であり、Cは吸着床直後のμg・m−3での合計水銀濃度である。初期水銀除去効率は、初期の試験吸着材料充填後、最初の1時間の試験中の平均水銀除去効率と定義される。典型的に、固定吸着床の水銀除去効率は、吸着床への水銀の添加が増えるにつれて、徐々に減少する。水銀除去効率は、水銀除去効率が上記の試験条件下で90%まで減少するまで、吸着体材料の単位質量当たりの吸着床にトラップされた水銀の合計量と定義される。水銀除去能は、典型的に、吸着材料1グラム当たりにトラップされる水銀のmg(mg・g−1)で表わされる。
【0111】
例示の試験対照排ガス(RFG1と呼ぶ)は、O5体積%、CO14体積%、SO1500ppm、NOx300ppm、HCl100ppm、Hg20−25μg・m−3、N残部の組成を有し、NOは、NO、NOおよびNOの組合せであり、Hgは元素水銀(Hg(0)、50〜60モル%)と酸化水銀(40〜50モル%)の組合せである。本発明のある実施形態において、RFG1に対する本発明の吸着体の初期水銀除去効率は、少なくとも91%、ある実施形態においては少なくとも92%、他の実施形態においては少なくとも95%、他の実施形態においては少なくとも97%、他の実施形態においては少なくとも98%、他の実施形態においては少なくとも99%、他の実施形態においては少なくとも99.5%である。
【0112】
本発明のある実施形態において、吸着材料は、高濃度のHCl(例えば、20ppm、30ppm、50ppm、70ppm、100ppm、150ppm、200ppm)および低濃度のHCl(例えば、10ppm、8ppm、5ppm、3ppm、1ppm、0.5ppm)同様に、O5%、CO14%、SO1500ppm、NO300ppm、Hg20−25μg・m−3を含む排ガスについて少なくとも91%の高初期水銀除去効率を有すると有利である。「高濃度のHCl」とは、処理ガス中のHCl濃度が少なくとも20ppmであることを意味する。「低濃度のHCl」とは、処理ガス中のHCl濃度が、最大で10ppmであることを意味する。本発明のある実施形態の吸着体は、O5%、CO14%、SO1500ppm、NO300ppm、HCl5ppm、Hg20−25μg・m−3、N残部の組成を有する排ガス(RFG2と呼ぶ)について、少なくとも91%(ある実施形態においては、少なくとも95%、他の実施形態においては、少なくとも98%、他の実施形態においては、少なくとも99.0%、他の実施形態においては、少なくとも99.5%)の高初期水銀除去効率を有すると有利である。低HCl排ガスについての本発明の吸着材料のこれらの実施形態の高水銀除去効率は、先行技術に比べて特に有利である。活性炭粉末の注入を含む先行技術のプロセスでは、適切な初期水銀除去効率とするには、典型的に、HClを排ガスに添加する必要がある。低HCl濃度で高水銀効率を示す本発明の実施形態によって、HClをガス流れに注入する必要なく、排ガス流れからの水銀の効率的および効果的な除去が可能となる。
【0113】
本発明のある実施形態において、吸着材料は、高濃度のSO(例えば、5ppm、8ppm、10ppm、15ppm、20ppm、30ppm)および低濃度のSO(例えば、0.01ppm、0.1ppm、0.5ppm、1ppm、2ppm)同様に、O5%、CO14%、SO1500ppm、NO300ppm、Hg20−25μg・m−3を含む排ガスについて少なくとも91%の高初期水銀除去効率を有すると有利である。「高濃度のSO」とは、処理ガス中のSOの濃度が少なくとも3ppmであることを意味する。「低濃度のSO」とは、処理ガス中のSO濃度が3ppm未満であることを意味する。本発明のある実施形態の吸着体は、O5%、CO14%、SO1500ppm、NO300ppm、SO5ppm、Hg20−25μg・m−3、N残部の組成を有する排ガス(RFG3と呼ぶ)について、少なくとも91%(ある実施形態においては、少なくとも95%、他の実施形態においては、少なくとも98%)の高初期水銀除去効率を有すると有利である。高SO排ガスについての本発明の吸着体の、ある実施形態の高水銀除去効率は、先行技術に比べて特に有利である。活性炭粉末の注入を含む先行技術のプロセスでは、適切な初期水銀除去効率および水銀除去能とするには、典型的に、SOを排ガスから除去する必要がある。高SO濃度で高水銀効率を示す本発明の実施形態によって、SOをガス流れから予め除去する必要なく、排ガス流れからの水銀の効率的および効果的な除去が可能となる。
【0114】
さらに、本発明のある実施形態において、吸着材料は、RFG1に対して、少なくとも0.10mg・g−1、ある実施形態においては少なくとも0.15mg・g−1、ある実施形態においては少なくとも0.20mg・g−1、ある実施形態においては少なくとも0.25mg・g−1、ある実施形態においては少なくとも0.30mg・g−1の高水銀除去能を有すると有利である。
【0115】
さらに、本発明のある実施形態において、吸着材料は、RFG2に対して、少なくとも0.10mg・g−1、ある実施形態においては少なくとも0.15mg・g−1、ある実施形態においては少なくとも0.20mg・g−1、ある実施形態においては少なくとも0.25mg・g−1、ある実施形態においては少なくとも0.30mg・g−1の高水銀除去能を有すると有利である。このように、これらの実施形態による吸着体は、低HCl排ガス流れに対して高水銀除去能を有する。これは、先行技術の水銀削減プロセスに比べて特に有利である。
【0116】
さらに、本発明のある実施形態において、吸着材料は、RFG3に対して、少なくとも0.10mg・g−1、ある実施形態においては少なくとも0.15mg・g−1、ある実施形態においては少なくとも0.20mg・g−1、ある実施形態においては少なくとも0.25mg・g−1、ある実施形態においては少なくとも0.30mg・g−1の高水銀除去能を有すると有利である。このように、これらの実施形態による吸着体は、高SO排ガス流れに対して高水銀除去能を有する。これは、先行技術の水銀削減プロセスに比べて特に有利である。
【0117】
本発明の他の態様は、ヒ素、カドミウム、水銀および/またはセレン等の誘導物質および/または化合物を削減するために、それらを含むガス流れおよび流体流れをはじめとする流体流れを処理する方法における本発明の吸着材料の使用である。かかる方法には、典型的に、本発明の吸着体を流体流れに配置する工程が含まれる。かかる処理方法は、流体流れから水銀を削減するのに特に有利である。
【0118】
本発明のある実施形態の吸着体が持つ、流体流れから元素水銀を除去する優れた能力のために、本方法の特に有利な実施形態は、少なくとも10モル%の水銀が元素状態にある、水銀を含むガス流れに吸着体を配置することを含む。ある実施形態において、ガス流れに含まれる水銀の少なくとも20%、他の実施形態においては少なくとも30%、他の実施形態においては少なくとも40%、他の実施形態においては少なくとも50%、他の実施形態においては少なくとも60%、他の実施形態においては少なくとも70%が元素状態にある。
【0119】
本発明のある実施形態の吸着体が持つ、流体流れから元素水銀を除去する優れた能力のために、ガス流れがHClを非常に低レベルで含んでいても、本方法の特に有利な実施形態は、水銀と、50体積ppm未満、ある実施形態においては40体積ppm未満、他の実施形態においては30体積ppm未満、他の実施形態においては20体積ppm未満、他の実施形態においては10体積ppm未満のHCl濃度でHClとを含むガス流れに、吸着体を配置することを含む。
【0120】
本発明のある実施形態の吸着体が持つ、流体流れから元素水銀を除去する優れた能力のために、ガス流れがSOを高レベルで含んでいても、本方法の特に有利な実施形態は、水銀と、少なくとも3体積ppm、ある実施形態においては少なくとも5体積ppm、他の実施形態においては少なくとも8体積ppm、他の実施形態においては少なくとも10体積ppm、他の実施形態においては少なくとも20体積ppmのSO濃度でSOとを含むガス流れに、吸着体を配置することを含む。
【0121】
本発明の第3の態様は、本発明の吸着体を製造する方法に関する。概して、本方法には、
(A)炭素原料と、硫黄原料と、任意のフィラー材料とを含むバッチ混合物材料で形成されたバッチ混合体を提供する工程と、
(B)バッチ混合体に、O欠乏雰囲気において高炭化温度を与えることにより、バッチ混合体を炭化して、炭化バッチ混合体を形成する工程と、
(C)炭化バッチ混合体を、COおよび/またはHO含有雰囲気中、高活性温度で活性化して、複数の細孔を画定する炭素マトリックスを含む活性体を形成する工程と、
(D)添加剤を、活性体の炭素マトリックスの細孔の壁表面に充填する工程と
を含む。
【0122】
ある実施形態において、炭素原料は、合成炭素含有ポリマー材料、活性炭粉末、炭粉、コールタールピッチ、石油ピッチ、木粉、セルロースおよびその誘導体、小麦粉、くるみ粉、デンプン、コークス、石炭またはこれらのうち2つ以上の混合物または組合せを含む。これらの材料は全て、本発明の吸着体の最終活性炭マトリックスに少なくとも部分的に保持できる分子レベルで構造単位に炭素原子を含む特定の成分を含む。
【0123】
一実施形態において、合成ポリマー材料は、周囲温度で溶液または低粘度液体の形態の合成樹脂とすることができる。あるいは、合成ポリマー材料は、周囲温度で固体で、加熱またはその他の手段により液化することができる。有用なポリマー炭素原料としては、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂(例えば、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール等)が例示される。さらに、一実施形態において、例示の粘度が約50〜100cpsの比較的低粘度の炭素前駆体(例えば、熱硬化性樹脂)が好ましい。他の実施形態において、高炭素収率樹脂を用いることができる。高炭素収率とは、樹脂の出発重量の約10%以上が、炭化により炭素に変換されることを意味する。他の実施形態において、合成ポリマー材料は、フェノール樹脂またはフラン樹脂等のフルフラルアルコール系樹脂を含むことができる。フェノール樹脂は、その低粘度、高炭素収率、他の前駆体と比べて硬化時の高度の架橋、および低コストのためにここでも好ましい。好適なフェノール樹脂は、プリオフェン樹脂等のレゾール樹脂が例示される。好適なフラン液体樹脂は、QO Chemicals Inc,IN,U.S.AのFurcab−LPが例示される。本発明の合成炭素前駆体として用いるのに好適な固体樹脂としては、固体フェノール樹脂またはノボラックが例示される。さらに、ノボラックと、1種類以上のレゾール樹脂の混合物も好適なポリマー炭素原料として用いることができると考えられる。合成樹脂は、バッチ混合物材料を形成するために他の材料と混合するとき、予備硬化されるか、または未硬化である。合成樹脂が予備硬化される場合、予備硬化材料は、硫黄または予備充填された任意の無機フィラーを含んでいてよい。前述したとおり、ある実施形態においては、硬化性未硬化樹脂が、バッチ混合物材料中の炭素原料の一部として含まれているのが望ましい。硬化性材料は、ある反応、例えば、連鎖伝播、架橋等を行って、温和な熱処理、照射、化学活性等のような硬化条件にすると高度の重合がなされた硬化材料を形成する。
【0124】
本発明のある実施形態において、押出しプロセスに典型的に用いられる有機バインダーは、炭素原料の一部でもある。用いることのできる例示のバインダーは、セルロースエーテル等の可塑有機バインダーである。典型的なセルロースエーテルとしては、メチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシブチル−セルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロースおよびこれらの混合物が挙げられる。さらに、メチルセルロースおよび/またはメチルセルロース誘導体が、本発明の実施において有機バインダーとして特に好適である。メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはこれらの組合せが好ましい。
【0125】
炭化可能な有機フィラーを、本発明の方法のある実施形態において炭素原料の一部として用いてもよい。例示の炭化可能なとしては、天然と合成、疎水性と親水性、繊維状と非繊維状フィラーの両方が含まれる。例えば、ある天然フィラーは、針葉樹、例えば、マツ、トウヒ、アメリカスギ等、広葉樹、例えば、セイヨウトネリコ、ブナノキ、カバノキ、カエデ、オーク等、おがくず、シェル繊維、例えば、粉砕アーモンド殻、ヤシ殻、アプリコット殻、ピーカン殻、ウォルナット殻等、綿繊維、例えば、綿フロック、綿布、セルロース繊維、綿シード繊維、刻んだ植物繊維、例えば、麻、ヤシ繊維、ジュート、サイザルおよびその他の材料、例えば、トウモロコシの穂軸、かんきつ系果肉(乾燥)、大豆ミール、ピートモス、小麦粉、羊毛、トウモロコシ、ジャガイモ、米、タピオカ等である。ある合成材料は、再生セルロース、レーヨン布、セロファン等である。特に好適な炭化繊維フィラーは、International Filler Corporation,North Tonawanda,N.Y.より供給されるセルロース繊維である。この材料のふるい分析は次のとおりである。40メッシュ(420マイクロメートル)では1〜2%、100メッシュ(149マイクロメートル)では90〜95%、200メッシュ(74マイクロメートル)では55〜60%である。ある疎水性有機合成フィラーは、ポリアクリロニトリル繊維、ポリエステル繊維(フロック)、ナイロン繊維、ポリプロピレン繊維(フロック)または粉末、アクリル繊維または粉末、アラミド繊維、ポリビニルアルコール等である。かかる有機繊維状フィラーは、炭素原料の一部として、一部、バッチ混合体への機械特性向上剤として、一部、炭化の際に大半が蒸発する一時細孔形成剤として機能する。
【0126】
硫黄原料としては、硫黄粉末、硫黄含有粉末樹脂、硫化物、硫酸塩およびその他の硫黄含有化合物、またはこれらのうち2種類以上の混合物または組合せが例示されるが、これらに限られるものではない。硫黄含有化合物としては、硫化水素および/またはその塩、二硫化炭素、二酸化硫黄、チオフェン、硫黄無水物、硫黄ハロゲン化物、硫黄エステル、亜硫酸、スルファシッド、スルファトール、スルファミン酸、スルファン、スルファン類、硫酸およびその塩、亜硫酸塩、スルホ酸、スルホベンジドおよびこれらの混合物を例示することができる。元素硫黄粉末を用いるとき、一実施形態において、約100マイクロメートルを超えない平均粒径を有するのが好ましい。さらに、ある実施形態において、元素硫黄粉末の平均粒径は、約10マイクロメートルを超えないのが好ましい。
【0127】
無機フィラーは、バッチ混合物材料中に存在させる必要はない。しかしながら、存在する場合には、フィラー材料は、例えば、酸化物ガラス、酸化物セラミックまたはその他の耐火材料とすることができる。用いることのできる例示の無機フィラーとしては、酸素含有鉱物またはその塩、例えば、クレイ、ゼオライト、タルク等、炭酸塩、例えば、炭酸カルシウム、アルミノシリケート、例えば、カオリン(アルミノシリケートクレイ)、フライアッシュ(発電所での石炭燃焼後に得られるアルミノシリケート)、シリケート、例えば、ウォラストナイト(メタケイ酸カルシウム)、チタネート、ジルコネート、ジルコニア、ジルコニアスピネル、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ムライト、アルミナ、アルミナ三水和物、ベーマイト、尖晶石、長石、アタパルジャイト及びアルミノケイ酸塩繊維、コージエライト粉末等である。特に適合した無機フィラーの例をいくつか挙げると、コージエライト粉末、タルク、クレイおよびアルミノシリケート繊維、例えば、Carborundum Co.Niagara Falls,N.Y.よりFiberfaxという名称で提供されるもの、ならびにこれらの組合せである。Fiberfaxアルミノシリケート繊維は、直径が約2〜6マイクロメートルで長さが約20〜50マイクロメートルの寸法である。無機フィラーのさらなる例としては、様々なカーバイド、例えば、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化アルミニウム、炭化ジルコニウム、炭化ホウ素および炭化アルミニウムチタン、カーボネートまたはカーボネート含有鉱物、例えば、重曹、ナーコライト、方解石、ハンクス石およびリオットタイト、ならびに窒化物、例えば、窒化ケイ素が挙げられる。
【0128】
バッチ混合物材料は、さらに、他の成分、例えば、形成助剤、一時的フィラー(成形体にボイドを残すために、後の炭化および/または活性化工程中に典型的に排除されるフィラー材料)等を含んでいてもよい。このためには、例示の形成助剤は、石鹸、脂肪酸、例えば、オレイン、リノール酸等、ポリオキシエチレンステアレート等またはこれらの組合せを含むことができる。一実施形態において、ステアリン酸ナトリウムが好ましい形成助剤である。任意の押出し助剤の最適量は、組成およびバインダーに応じて異なる。バッチの押出しおよび硬化特性を改善するのに有用な他の添加剤は、リン酸および油である。リン酸は、硬化速度を改善し、吸収能を増大する。含まれる場合、バッチ混合物材料中、典型的に約0.1重量%〜5重量%である。さらに、油添加によって、押出しが補助される結果、表面積および多孔性が増大し得る。このためには、任意の油は、バッチ混合物材料の約0.1〜5重量%の量で添加することができる。用いることのできる例示の油としては、約250〜1000の分子量を有し、パラフィン系および/または芳香族系および/または脂環式化合物を含有する石油系油である。主としてパラフィンおよび脂環式構造で構成されたいわゆるパラフィン系油が好ましい。これらには、一般的に市販の油中に存在しているもののような、錆抑制剤または酸化抑制剤のような添加物が含有されていてよい。いくつか有用な油を挙げると、3M Co.の3イン1油またはReckitt and Coleman Inc.,Wayne,N.J.の3イン1家庭用油である。他の有用な油としては、ポリ(アルファオレフィン)、エステル、ポリアルキレングリコール、ポリブテン、シリコーン、ポリフェニルエーテル、CTFE油およびその他の市販の油をベースとする合成油が挙げられる。ヒマワリ油、ゴマ油、落花生油等のような植物油も有用である。約10〜300cps、好ましくは約10〜150cpsの粘度を有する油が、特に適している。
【0129】
所望の細孔構造を得るには、任意の細孔形成剤を、バッチ混合物材料に組み込むことができる。一実施形態において、例示の細孔形成剤としては、ポリプロピレン、ポリエステルまたはアクリル粉末または繊維が挙げられ、これらは、高温(>400℃)で不活性雰囲気内で分解して、残渣をほとんど、または全く残さない。あるいは、他の実施形態において、好適な細孔形成剤は、粒子膨張のために、マクロ細孔を形成することができる。例えば、塩酸、硫酸または硝酸等の酸を含有するインターカレートグラファイトは、酸が結果として膨張するために、加熱するとマクロ細孔を形成する。さらに、マクロ細孔は、特定の一時材料を溶解することによっても形成することができる。例えば、所望の細孔サイズに対応する粒子サイズを有する重曹、炭酸カルシウムまたは石灰石粒子は、炭素質材料と共に押出して、モノリシック吸着剤を形成することができる。重曹、炭酸カルシウムまたは石灰石は、炭化および活性化プロセス中水溶性酸化物を形成し、これは後にろ過して、モノリシック吸着剤を水に浸すことによりマクロ細孔を形成することができる。
【0130】
最終吸着体全体に硫黄を分布させるには、炭素原料および硫黄原料をよく混合して、バッチ混合物材料を形成するのが極めて望ましい。このためには、様々な原料を、微粉末、または可能であれば溶液の形態で提供して、有効な混合機器を用いてよく混合するのが望ましい。粉末を用いるとき、ある実施形態においては、平均サイズは100μm以下、他の実施形態においては、10μm以下、他の実施形態においては、1μm以下である。
【0131】
様々な装置および方法を用いて、バッチ混合体の所望の形状へと、バッチ混合物材料を形成してもよい。例えば、押出し、成形、加圧成形等を、バッチ混合体の成形に用いてよい。この中で、ある実施形態においては、押出しが特に好ましい。押出しは、標準的な押出し機(単軸、二軸等)およびカスタム押出しダイを用いて、ハニカム、ペレット、ロッド等といった様々な形状および寸法を有する吸着体を作製することができる。押出しは、流体通路として作用する複数の空のチャネルを有するモノリシックハニカムを作製するのに特に好適である。押出しは、押出しプロセス中に、全原料を非常によく混合できるという点で有利である。
【0132】
本発明のある実施形態において、バッチ混合物材料は、未硬化の硬化性材料を含むのが望ましい。これらの実施形態において、バッチ混合体形成の際に、吸着体を、典型的に、硬化状態とする、例えば、熱処理して、硬化性成分が硬化し、その結果、硬化したバッチ混合体が形成される。硬化したバッチ混合体は、未硬化のものに比べて良好な機械特性を有する傾向があり、下流処理工程において取扱いが良好になる。さらに、特定の理論に縛るものでも縛られる必要もないが、硬化工程によって、炭素骨格を有するポリマー網となり、後の炭化および硬化工程中、炭素網の形成を伝導する。ある実施形態において、硬化は、通常、大気圧で空気中でなされ、典型的に、約100℃〜約200℃の温度で、約0.5〜約5.0時間にわたって形成されたバッチ混合体を加熱することによりなされる。あるいは、ある前駆体(例えば、フルフリルアルコール)を用いて、室温で酸添加物等の硬化添加剤を添加することにより、硬化することもできる。硬化は、一実施形態において、炭素中で有毒物質吸着添加剤分布の均一性を保持するのに役立つ。
【0133】
バッチ混合体の形成、その乾燥または任意の硬化の後、成形体に炭化工程を行って、バッチ混合体(硬化または未硬化)を、O欠乏雰囲気において高炭化温度で加熱する。炭化温度は、600〜1200℃、ある実施形態においては、700〜1000℃とすることができる。炭化雰囲気は、主に、非反応性ガス、例えば、N、Ne、Ar、これらの混合物等を含む不活性なものとすることができる。O欠乏雰囲気中での炭化温度で、バッチ混合体に含まれる有機物質は分解されて、炭素質残渣が残る。予測されるように、複雑な化学反応がこの高温工程で生じる。かかる反応には、特に、
(i)炭素原料の分解により、炭素質体が残る、
(ii)硫黄原料の分解、
(iii)硫黄原料と炭素原料の反応、
(iv)硫黄原料と炭素の反応、および
(v)添加材原料と炭素の反応
が含まれる。
【0134】
正味の影響としては、特に、(1)硫黄の再分布、(2)硫黄原料(硫酸塩、亜硫酸塩等)からの元素硫黄の形成、(3)硫黄原料(元素硫黄等)からの硫黄含有化合物の形成、および(4)炭素網の形成が挙げられる。硫黄(特に元素状態にあるもの)の一部は、炭化中の炭化雰囲気により押し流される。
【0135】
炭化工程により、硫黄が分布された炭素質体が得られる。しかしながら、この炭化バッチ混合体は、典型的に、流体流れから有毒物質を有効に吸収するのに望ましい比表面積は有していない。高比表面積を有する最終吸着体を得るには、炭化されたバッチ混合体を、高活性温度で、COおよび/またはHO含有雰囲気においてさらに活性化する。活性化温度は、600℃〜1000℃、ある実施形態においては、600℃〜900℃である。この工程中、炭化バッチ混合体の炭素質構造の一部は、温和に酸化され、
CO(g)+C(s)→2CO(g)、
O(g)+C(s)→H(g)+CO(g)、
炭素質材料の構造がエッチングされ、複数の細孔をナノスケールおよびマイクロスケールで画定する活性炭マトリックスが形成される。活性条件(時間、温度および雰囲気)を調節して、所望の比面積および組成を備えた最終製品を製造することができる。炭化工程と同様に、この活性工程の高温のために、複雑な化学反応および物理変化が生じる。活性工程の最後に、硫黄が活性炭マトリックス全体に分布しているのが極めて望ましい。活性化工程の最後に、硫黄が活性炭マトリックス全体に実質的に均一に分布しているのが極めて望ましい。活性化工程の最後に、細孔の壁表面積の少なくとも30%、ある実施形態においては少なくとも40%、他の実施形態においては少なくとも50%、他の実施形態においては少なくとも60%、他の実施形態においては少なくとも80%に硫黄が存在している。
【0136】
本発明の方法のある実施形態において、全硫黄原料は、イン・サイチュでの形成、例えば、イン・サイチュでの押出し、成形等により、バッチ混合体に含められる。このプロセスには、特に、(a)硫黄を活性炭本体に充填する後の工程(例えば、含浸)を省いて、潜在的にプロセス工程を減じ、全体のプロセス収率を増大し、プロセスコストを減じる、(b)含浸により典型的に得られるものよりも、吸着体中の硫黄のより均一な分布が得られる、および(c)長い使用期間にわたって、処理される流体流れのフローに耐え得る、硫黄の耐久性のある強固な固定が吸着体において得られる、という利点がある。硫黄含浸の結果、大きな細孔(マイクロメートル規模のもの)のセル壁および壁表面に含浸種の優先的な分布が得られる。含浸硫黄含有種を、ナノスケール細孔の壁表面へ高パーセンテージで充填することは、時間がかかり難しい。400〜2000m・g−1の高比面積の活性炭の表面積の大半が、ナノスケール細孔に寄与する。このように、典型的な含浸工程で、かかる活性炭材料の比面積の大半に硫黄含有種を充填させるのは難しいと考えられる。さらに、典型的な含浸工程により、大きな細孔のセル壁および/または壁表面上で、厚く、比較的密な層となって、小さな細孔へ出入りする流体通路が塞がれて、活性炭の吸収機能を効率的に減じるものと考えられる。さらに、典型的な含浸工程において含浸硫黄含有種の吸着体における固定は、主に、比較的弱い物理力によるものであり、流体流れで長く使用するには不十分と考えられる。
【0137】
それにもかかわらず、上述したとおり、ある実施形態においては、全硫黄を、活性炭マトリックス全体に、ましては実質的に均一に、分布させる必要は必ずしもない。これらの実施形態においては、全ての硫黄原料がイン・サイチュで、バッチ混合体へ形成されるわけではない。活性化工程後、特定の硫黄含有材料の含浸工程を実施してもよいものと考えられる。あるいは、活性化工程後、活性体を硫黄含有雰囲気により処理する工程を実施してもよい。
【0138】
活性化の際、添加剤を本発明の吸着体に充填する。添加剤原料としては、アルカリおよびアルカリ土類のハロゲン化物、酸化物および水酸化物、貴金属粉末および液体分散液または固体状態での貴金属の化合物、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ニオブ、モリブデン、銀、タングステンおよびランタノイドの酸化物、硫化物および塩が挙げられるがこれらに限られるものではない。添加剤原料中の金属元素は、様々な価数とすることができる。例えば、鉄が添加剤原料に含まれる場合には、+3、+2または0価または異なる価数の混合物として存在してよく、金属鉄(0)、FeO、Fe、Fe、FeS、FeCl、FeCl、FeSO等として存在することができる。他の例では、マンガンが添加剤中に存在する場合には、+4、+2または0価または異なる価数の混合物として存在してよく、金属マンガン(0)、MnO、MnO、MnS、MnCl、MnCl、MnSO等として存在することができる。鉄化合物(酸化物、硫化物、塩等)とアルカリ金属ハロゲン化物(例えば、KI等)の組合せ、またはマンガン化合物(酸化物、硫化物、塩等)とアルカリ金属ハロゲン化物(例えば、KI等)の組合せ、または鉄化合物、マンガン化合物およびアルカリ金属ハロゲン化物の組合せが、高初期水銀除去効率にとって特に有利であることが分かった。添加剤原料の特に有利な例としては、FeSOとKIの組合せ、およびMnSOとKIの組合せが挙げられる。
【0139】
様々な充填プロセスを用いることができる。溶液、スラリー、エマルジョン等による含浸を用いてもよい。多数の添加剤原料を用いる場合、同時に、様々な順番で連続して、または多数の含浸サイクルで含浸させて、添加剤の最終吸着体における所望の分布を得る。比較的低沸点または容易に昇華する揮発性添加剤(例えば、KI)については、添加剤含有雰囲気による充填を用いると効率的である。通常、短時間で、吸着体本体に極めて均一な分布を得られる充填プロセスが好ましい。湿式含浸等の湿式充填を用いる場合は、充填プロセスは、典型的に、本体を乾燥して、マイクロスケール細孔、およびセルの壁がある場合には、その表面に添加剤を残すサブステップが含まれる。さらに、初期の充填工程後に熱処理工程を実施してもよく、表面に堆積した添加剤原料を、ナノスケール細孔にさらに拡散させるか、または化学反応を実施して、所望の添加剤を細孔および/またはセル壁表面に形成する。
【0140】
本発明の活性吸着体を形成したら、ペレット化、研削、スタッキングによる組み立て等、後仕上げ工程を行う。本発明の様々な形状および組成の吸着体を、固定床に充填し、処理する流体流れに配置する。
【0141】
本発明を以下の限定されない実施例によりさらに説明する。
【実施例】
【0142】
実施例1
Georgia Pacific Coの粘度が100〜200cpのフェノールレゾール樹脂を、10重量%の硫黄粉末および3.5重量%のリン酸と混合した。混合物を乾燥し、150℃で固体塊へと硬化した。この塊を、平均粒子サイズ15マイクロメートルの微細固体粉末まで研削した。液体フェノール樹脂44.7重量%、硬化硫黄−フェノール樹脂粉末混合物18重量%、硫黄9.8重量%、BH40セルロース繊維19.5重量%、メトセルF240バインダー4.5重量%、リン酸1.5重量%および3イン1油1重量%を含有する押出しバッチをマラーで混合し、押出しダイを通して押し出した。優れた品質のハニカム押出し物がこのバッチから得られた。ハニカムを150℃で硬化し、窒素中900℃で6時間炭化してから、二酸化炭素中900℃で活性化させて、水銀除去用の活性炭ハニカムを得た。
【0143】
実施例2
実施例1の硫黄含有樹脂粉末68重量%、BH40セルロース繊維20重量%、F240メトセル8重量%、LIGA1重量%、3イン1油3重量%および上乗せ添加の水50重量%をマラーで混合し、ハニカムへと押し出した。この場合も優れた品質のハニカム押出し物が得られた。これらのハニカムを150℃で硬化し、窒素中900℃で炭化し、二酸化炭素中で活性化した。
【0144】
実施例3
Durex Corporation(Durez29217)の平均粒子サイズが22マイクロメートルのフェノールエポキシノボラック62重量%、硫黄9重量%、BH40セルロース繊維18重量%、F240メトセル8重量%、LIGA1重量%、3イン1油2重量%および上乗せ添加の水45重量%をマラーで混合し、ハニカムへと押し出した。この場合も優れた品質のハニカム押出し物が得られた。これらのハニカムを硬化し、炭化し、硫黄含有炭素ハニカムを得るために活性化した。
【0145】
実施例4
Georgia Pacific(GP5520)のフェノールエポキシノボラック63重量%、硫黄12重量%、BH40セルロース繊維13重量%、F240メトセル10重量%、LIGA1重量%、3イン1油1重量%および上乗せ添加の水50重量%をマラーで混合し、ハニカムへと押し出した。この組成物も良好な品質のハニカム押出し物が得られた。これらの試料を前述したとおり熱処理して、硫黄含有ハニカムを得た。
【0146】
本発明の試料吸着材料、および比較例の本発明ではない吸着材料の水銀除去能について試験した。結果を図1および2に示す。これらの図において、Hg(0)は元素水銀を表わし、Hg(T)は合計水銀を表わす。CHgは、水銀の濃度(元素および/または合計)を表わす。これらの図において、垂直軸は、出口ガスにおける水銀濃度、水平軸は試験時間である。試験の開始時は、試験した吸着体が通り抜けたため、水銀濃度は試験においては高くして開始した(図に示すとおり、最初の10〜12時間程度)。試験した吸着体をガス流れに配置したら、出口ガス中の水銀濃度は急激に落ちた。
【0147】
図1は、含浸添加剤を含む本発明の吸着体のある一定の試験時間にわたる水銀除去能を示す図である。この吸着体は、無機フィラー、すなわち、炭素、硫黄、硫黄化合物および添加剤以外の無機材料は実質的に含まない。この吸着剤中の添加剤は、FeSOおよびKIであった。この図には、180時間までの長い試験時間にわたって一定して高い水銀除去効率が示されている。
【0148】
図2は、含浸添加剤と大量(約45重量%)の無機フィラー(コージエライト)を含む比較例の吸着体のある一定の試験時間にわたる水銀除去能を示す図である。この吸着体中の添加剤は、FeSOおよびKIであった。この図には、試験の約24時間後の水銀除去効率の急激な降下が示されている。
【0149】
図1および2によれば、本発明の吸着体中の少量の無機フィラーによって、高い水銀除去効率につながることが分かる。
【0150】
図3は、本発明によるハニカム吸着体の断面の一部のSEM写真である。写真によれば、セル壁表面およびセル壁表面の下の狭い層における添加剤(白色部)の優先的分布が明らかに分かる。
【0151】
本発明の範囲および精神から逸脱することなく、本発明に様々な修正および変更を行えることは、当業者には明白であろう。このように、添付の請求項およびその等価物の範囲内であれば、本発明の修正および変形が本発明には包含されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の細孔を画定する活性炭マトリックスと、
硫黄と、
As、Cd、HgおよびSeのうち少なくとも1つを流体流れから除去するのを促進するために適合された添加剤と
を含む吸着体であって、
前記添加剤が、前記細孔の壁表面に実質的に分布しており、
前記吸着体が、炭素、硫黄含有無機材料および前記添加剤以外の無機材料を10重量%未満含むことを特徴とする吸着体。
【請求項2】
モノリスであることを特徴とする請求項1に記載の吸着体。
【請求項3】
前記添加剤が、(i)アルカリおよびアルカリ土類金属のハロゲン化物、酸化物および水酸化物、(ii)貴金属およびその化合物、(iii)バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ニオブ、モリブデン、銀、タングステンおよびランタノイドの酸化物、硫化物および塩、ならびに(iv)(i)、(ii)および(iii)のうち2つ以上の組合せおよび混合物から選択されることを特徴とする請求項1に記載の吸着体。
【請求項4】
前記添加剤が、(i)マンガンの酸化物、硫化物および塩、(ii)鉄の酸化物、硫化物および塩、(iii)(i)とKIの組合せ、(iv)(ii)とKIの組合せ、ならびに(v)(i)、(ii)、(iii)および(iv)のうち2つ以上の混合物および組合せから選択されることを特徴とする請求項1に記載の吸着体。
【請求項5】
前記添加剤が、Ca(OH)等のアルカリ土類水酸化物を含むことを特徴とする請求項1に記載の吸着体。
【請求項6】
複数の細孔を画定する活性炭マトリックスと、硫黄と、As、Cd、Hgおよび/またはSeの流体流れからの除去を促進するために適合された少なくとも1つの添加剤とを含み、前記添加剤が、前記活性炭マトリックスの前記細孔の壁表面に実質的に分布しており、炭素、硫黄含有無機材料および前記添加剤以外の無機材料を10重量%未満含む、吸着体を製造する方法であって、
(A)炭素原料と、硫黄原料と、任意のフィラー材料とを含むバッチ混合物材料で形成されたバッチ混合体を提供する工程と、
(B)前記バッチ混合体に、O欠乏雰囲気において高炭化温度を与えることにより、前記バッチ混合体を炭化して、炭化バッチ混合体を形成する工程と、
(C)前記炭化バッチ混合体を、COおよび/またはHO含有雰囲気中、高活性温度で活性化して、複数の細孔を画定する炭素マトリックスを含む活性体を形成する工程と、
(D)前記添加剤を、前記活性体の前記炭素マトリックスの前記細孔の壁表面に充填する工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
工程(A)において、前記炭素原料が、合成炭素含有ポリマー材料、活性炭粉末、炭粉、コールタールピッチ、石油ピッチ、木粉、セルロースおよびその誘導体、小麦粉、くるみ粉、またはこれらのうち2つ以上の混合物または組合せを含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程(D)において、前記添加剤が、アルカリおよびアルカリ土類のハロゲン化物、酸化物および硫化物、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ニオブ、モリブデン、銀、タングステンおよびランタノイドの塩ならびにこれらの混合物および組合せから選択されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項9】
工程(D)において、前記添加剤が、KI、マンガン、鉄の酸化物、硫化物および塩ならびにこれらの混合物および組合せから選択されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項10】
工程(A)において、前記押出しバッチ混合体が、複数のチャネルを有するモノリシックハニカムの形状を採ることを特徴とする請求項6に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−520046(P2010−520046A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−551696(P2009−551696)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【国際出願番号】PCT/US2008/002493
【国際公開番号】WO2008/106111
【国際公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】