説明

流体の運搬圧送車両及び、その圧送方法

【課題】アジテータ機能と、流体を横方向に送る機能を併せ持ち、かつ経済的な流体の運搬圧送車両と、その圧送方法を提供すること。
【解決手段】セメント系スラリー物を運搬・圧送可能な運搬圧送車両であって、前記運搬車両は、流体の撹拌を行うミキサ手段と、前記ミキサ手段の出入口の近傍であって高所に設置される圧送装置と、を含み、前記圧送装置は、流体貯留部を具備し、前記流体貯留部は、前記ミキサ手段の出入口に連通する流入口と、下部に流出口と、を具備し、前記流出口は、開閉可能な開閉手段と、延長ホースを着脱可能な連結手段と、を有することを特徴とする、流体の運搬圧送車両および、その車両を用いた流体の圧送方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モルタル、セメントミルク、エアーモルタル、エアーミルク、CBモルタル、泥水、流動化処理土等の流体(以下、セメント系スラリー物とする)を運搬・圧送可能な、流体の運搬圧送車両及び、その圧送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セメント系スラリー物の運搬方法として一般的な方法は、生コンクリートを運搬するアジテータ車や、泥水などを主に運搬するタンク車、バキューム車などが知られている。
アジテータ車は、製造プラントでドラム内に生コンクリートの投入を受け、この生コンクリートが分離しないように、ドラムを連続的に回転させて生コンクリートの撹拌を行いながら、建設工事の施工現場などの目的地に搬送して排出する。
また、その流体の打設方法には、直投、あるいはシュートやホッパーちょうちんシュートなどのホースを用いるか、ポンプ車を用いて打設されてきた。
【特許文献1】特開2003−246239号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の運搬車両、例えばアジテータ車は、吐出口があるのみで、車両に備え付けられているシュートにより、別に用意されたホッパーやポンプ車に吐き出していた。
したがって、吐き出し時、アジテータ車のみの機能によっては、アジテータ車の近接直下に打設するのが精一杯で、横方向に遠くへ送ることができない。また、吐き出し時に流体が飛散し、打設場所が汚れてしまうという問題があった。
【0004】
また、タンク車、バキューム車などでは、ホースに接続することによって落差あるいは空気圧で横方向にかなり遠くまで圧送することが可能なため、打設場所が汚れることは少ないが、運搬時における流体物の撹拌機能が無いため、運搬中に流体物が分離し、粗流分が沈殿してしまう欠点を持っているほか、車両価格が高いため、経済性が悪いという問題があった。
【0005】
従って、本発明の目的は、アジテータ機能と、流体を横方向に送る機能を併せ持ち、かつ経済的な流体の運搬圧送車両と、その圧送方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記のような課題を解決するために、本願の第1発明は、セメント系スラリー物を運搬・圧送可能な運搬圧送車両であって、前記運搬車両は、流体の撹拌を行うミキサ手段と、前記ミキサ手段の出入口の近傍であって高所に設置される圧送装置と、を含み、前記圧送装置は、流体貯留部を具備し、前記流体貯留部は、前記ミキサ手段の出入口に連通する流入口と、下部に流出口と、を具備し、前記流出口は、開閉可能な開閉手段と、延長ホースを着脱可能な連結手段と、を有することを特徴とする、流体の運搬圧送車両を提供するものである。
【0007】
本願の第2発明は、本願の第1発明に記載の流体の運搬圧送車両において、前記流体貯留部を可撓性を有する材料によって形成したことを特徴とする、流体の運搬圧送車両を提供するものである。
【0008】
本願の第3発明は、本願の第1発明又は第2発明に記載の流体の運搬圧送車両において、前記流体貯留部内部に、セメント系スラリー物を一方向に移送するスクリュー体を付加したことを特徴とする、流体の運搬圧送車両を提供するものである。
【0009】
本願の第4発明は、本願の第1発明又は第2発明に記載の流体の運搬圧送車両を使用し、前記連結手段に延長ホースを接続し、前記開閉手段を開放し、セメント系スラリー物の位置エネルギーを利用して、セメント系スラリー物を作業箇所まで圧送することを特徴とする、流体の圧送方法を提供するものである。
【0010】
本願の第5発明は、本願の第3発明に記載の流体の運搬圧送車両を使用し、前記連結手段に延長ホースを接続し、前記開閉手段の開放と、前記スクリュー体の回転を行って、セメント系スラリー物の位置エネルギーと前記スクリュー体の回転搬送を併用して、セメント系スラリー物を作業箇所まで圧送することを特徴とする、流体の圧送方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、上記した課題を解決するための手段により、次のような効果を得ることができる。
【0012】
<1>運搬時に流体が分離することなく、現場においても、流体の品質を確保したまま圧送することができる。
【0013】
<2>圧送管と流体との摩擦による損失エネルギーと、当該流体が有する位置エネルギーが等しくなる距離まで流体を圧送することができ、シュートやポケット、ポンプ車などの圧送装置を用いることなく、従来より遠い距離まで流体を送ることができる。
【0014】
<3>セメント系スラリー物の吐き出し時に流体が飛散しないため、打設箇所をよごすことなく圧送することができる。
【0015】
<4>圧送装置の設置コストが低く、経済的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【実施例1】
【0017】
図1に本発明の運搬圧送車両の外観図を示す。
本発明は、セメント系スラリー物を運搬・圧送可能な運搬圧送車両であって、前記運搬車両は、流体の撹拌を行うミキサ手段1と、前記ミキサ手段の出入口の近傍であって高所に設置される圧送装置2と、を含み、前記圧送装置2は、流体貯留部21を具備し、前記流体貯留部21は、前記ミキサ手段1の出入口に連通する流入口211と、下部に流出口212と、を具備し、前記流出口212は、開閉可能な開閉手段213と、延長ホースを着脱可能な連結手段214と、を有することを特徴とする。
【0018】
図2に本発明の圧送装置の断面図を示す。
前記圧送装置2は、一般的なアジテータ車に設けられたミキサ手段1の出入口の近傍であって高所に設置される。
前記圧送装置2に具備された流体貯留部21は、前記セメント系スラリー物3の位置エネルギーを保つための圧力を維持できる機構を有し、前記ミキサ手段1の出入口に連通する流入口211を有し、前記流入口211は、前記ミキサ手段1から吐き出されたセメント系スラリー物3を内部に取り込む。
前記流体貯留部21を形成する材質は鉄板に限られず、ゴムや布など、可撓性性を有する材質でもよい。
前記流体貯留部21の下部に流出口212を形成し、前記流出口212には開閉手段213を設けて、開閉自在に構成し、延長ホース4を着脱可能な連結手段214を設ける。
前記開閉手段213は、バルブやゲートなどの、公知の開閉機構を用いるものとし、前記開閉手段213を完全に閉じておくことで、前記流体貯留部21に取り込まれたセメント系スラリー物3が外部に流れることなく、位置エネルギーが保持されるほか、開閉量によって、前記流体貯留部21の内部に取り込まれたセメント系スラリー物3の圧力と吐出量の制御を行うことができる。
前記連結手段214は、セメント系スラリー物3の圧送に耐えうる強度を有する公知のジョイント具などを用いることができる。
延長ホース4の取り付けは、セメント系スラリー物3の圧送時のみ行っても良いし、あらかじめ取り付けておいても良い。
【0019】
次に、本発明に係る運搬圧送車両を用いた流体の運搬方法及び圧送方法を示す。
【0020】
セメント系スラリー物3の運搬時には、前記流体貯留部21の流出口211の開閉手段213を閉じ、前記ミキサ手段1により、内部のセメント系スラリー物3の撹拌を行いながら運搬する。
セメント系スラリー物3の吐出時には、図3に示すように、流出口212の連結手段214に延長ホース4を接続し、前記開閉手段213を開放して、セメント系スラリー物3を打設箇所まで圧送する。
打設箇所までの途上に複数の支持台5を設け、前記延長ホース4の高さを保持して、適当な傾斜を設けることにより、セメント系スラリー物3の圧送をスムーズに行うこともできる。
セメント系スラリー物3の圧送距離Lは流体の比重をγt、圧力式から打設箇所の高低差をH、流体とホースの1mあたりの抵抗値をαとすると
【0021】
[数1]
L=(γt・H)/α
【0022】
で表される。
【実施例2】
【0023】
図4に本発明に係る圧送装置2の他の実施例を示す。
前記流体貯留部21の内部に、セメント系スラリー物3を一方向に移送するスクリュー体216を付加することにより、セメント系スラリー物の位置エネルギーと前記スクリュー体216の回転搬送を併用して、セメント系スラリー物3を更に遠い距離まで圧送することができる。
【0024】
また、圧送装置2と打設箇所までの距離の長さに応じて、前記流体貯留部21の内部にバーチカルポンプなどの簡易な圧送装置を適宜取り付けることにより、圧送距離の調整を行うことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の運搬圧送車両の外観図。
【図2】本発明の圧送装置の断面図。
【図3】本発明の圧送装置を使用した流体の圧送方法を示す図。
【図4】本発明の圧送装置の他の実施例の断面図。
【符号の説明】
【0026】
1・・・ミキサ手段
2・・・圧送装置
21・・流体貯留部
211・流入口
212・流出口
213・開閉手段
214・連結手段
215・モータ
216・スクリュー体
3・・・セメント系スラリー物
4・・・延長ホース
5・・・支持台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント系スラリー物を運搬・圧送可能な運搬圧送車両であって、
前記運搬車両は、流体の撹拌を行うミキサ手段と、前記ミキサ手段の出入口の近傍であって高所に設置される圧送装置と、を含み、
前記圧送装置は、流体貯留部を具備し、
前記流体貯留部は、前記ミキサ手段の出入口に連通する流入口と、
下部に流出口と、を具備し、
前記流出口は、開閉自在な開閉手段と、延長ホースを着脱可能な連結手段と、を有することを特徴とする、
流体の運搬圧送車両。
【請求項2】
請求項1に記載の流体の運搬圧送車両において、前記流体貯留部を可撓性を有する材料によって形成したことを特徴とする、流体の運搬圧送車両。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の流体の運搬圧送車両において、前記流体貯留部内部に、セメント系スラリー物を一方向に移送するスクリュー体を付加したことを特徴とする、流体の運搬圧送車両。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の流体の運搬圧送車両を使用し、前記連結手段に延長ホースを接続し、前記開閉手段を開放し、セメント系スラリー物の位置エネルギーを利用して、セメント系スラリー物を作業箇所まで圧送することを特徴とする、
流体の圧送方法。
【請求項5】
請求項3に記載の流体の運搬圧送車両を使用し、前記連結手段に延長ホースを接続し、前記開閉手段の開放と、前記スクリュー体の回転を行って、セメント系スラリー物の位置エネルギーと前記スクリュー体の回転搬送を併用して、セメント系スラリー物を作業箇所まで圧送することを特徴とする、
流体の圧送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−334833(P2006−334833A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−159879(P2005−159879)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(501451956)アルマーレエンジニアリング株式会社 (5)
【Fターム(参考)】