説明

流体分離装置

【課題】
流体混合物からこれに混和しない液体を分離する装置であって、ストリップ絡まりのない流体分離装置を提供する。
【解決手段】
容器内の流体混合物から、これに混和しない第1の流体を分離する装置であり、第1の流体に対して親和性を有する材料からなる無端柔軟ストリップ、共働して当該ストリップを前進させる第1の前進部材と第2の前進部材、ガイド部材からなる装置である。この第1の前進部材と第2の前進部材はそれぞれ共働面を有し、これらがストリップに係合して、ストリップを第1の流体に接触する位置、接触しない位置、そして再び接触する位置へとストリップの連続部分を前進させる。装置には、ストリップが前進する際に、ストリップと容器内の第1の流体の接触状態を維持させる手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には流体を分離するための装置に関し、より具体的にはマシニングセンタにおいて使用される切削剤から混入油を除去するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体混合物からある種の流体を分離することが望まれる多種多様な場面が存在する。例えば、多くの機械作業において、潤滑及び冷却を目的として切削工具が被加工物に係合する箇所に水溶性切削剤が噴霧または流される。この切削剤はその後タンクに回収され、可能な限り長く引き続き使用するためにリサイクルされる。この種の水溶性切削剤は極めて高価であるので、このような切削剤を可能な限り長く使用可能な状態に保つことが有利である。典型的な機械作業においては、作動部分の潤滑のために潤滑油も用いられる。最終的には、この潤滑油は、水溶性切削剤が回収されるタンクの中にポタポタ落ちるかあるいは流れ込む。タンク内において、潤滑油は切削剤よりも軽量及び低濃度であるため、切削剤の表面上に浮揚する。代表的には「混入油」と称されるこのような潤滑油は、結局のところ、水溶性切削剤が収容されているタンク内の細菌を増殖されるため、腐敗臭を生じ、水溶性切削剤の使用期間を短くすることとなる。さらに、環境上の問題から、油で汚染された水溶性切削剤は有害廃棄物として処理しなければならず、その廃棄は環境面及び経済面での関心事となっている。
【0003】
機械作業に伴ってタンクに収容される水溶性切削剤の表面から混入油を除去するために数多くの分離あるいは掬い取り装置が長年にわたって開発されている。このような装置の一つにはディスクスキマーがあり、水溶性切削剤の表面に集まった混入油に接触するように延伸するディスクを有するものである。タンク内の流体表面に近接したディスクが回転することによってタンクから混入油が除去される。混入油は、ディスクからブレードによって擦り取られ、回収されて除去される。ベルトスキマーも同様に使用される。このようなスキマーとしては、水溶性切削剤の表面から混入油を除去するための無端ベルトを使用している。ディスクスキマー同様、混入油は、ベルトから擦り取られ、回収されて除去される。
【0004】
水溶性切削剤の表面から混入油を除去するためには、さらにチューブスキマーを用いることも可能である。混入油と切削剤とを含むタンクの側面にチューブスキマーを取り付け切削剤の表面の混入油の中に柔軟な無端小径チューブを送り込む。そして、チューブはは外面上に混入油を回収してスクレーパーへと送り、ここで、混入油は除去されて廃棄用容器に溜められる。しかしながら、従来のチューブスキマーにおいては、チューブの巻付けや絡まりが頻繁に問題となる。
【特許文献1】米国特許第7,104,407号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明は、上記の問題を解決し、ストリップ絡まりがなくスムーズにストリップを前進させる流体分離装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明における一態様において、装置は、容器内の液体混合物からある種の流体(第1の流体)を分離する。第1の流体は、流体混合物中の1つあるいはそれ以上の他の流体と実質的に混和しないものである。この装置は、第1の流体に対して親和性を有する材料からなる柔軟な無端ストリップを備える。第1の前進部材と第2の前進部材とが共働してストリップの連続部分を順次、第1の流体と接触しない位置から第1の流体と接触する位置へ、そして再び第1の流体と接触しない位置へと前進させる。第1及び第2の前進部材はそれぞれ共働面を有し、この共働面が、共働面間に位置するストリップの一部に十分な力を付加して、ストリップのその部分と積極的に係合し、第1及び第2の前進部材相互の動作がストリップの連続部分を、ストリップが第1及び第2の前進部材の共働面の間に入って当該共働面と係合する入口位置から、ストリップが第1及び第2の前進部材の共働面の間から外へ出る出口位置まで順次前進させる。ガイド部材が出口位置に配置され、出口位置において、ストリップが第1前進部材の共働面との係合から離れるように案内する一方、第2前進部材の共働面とは継続して係合するように案内する。この装置はさらに、ストリップの連続部分が順次前進させられるときに、ストリップの連続部分が容器内の第1流体と接触状態を保つようにする手段を有する。
【0007】
別の態様においては、第1前進部材は第1の円形回転ギアを備え、第2前進部材は第2の円形回転ギアを備えるものとすることができる。それぞれの円形回転ギアは、ギアの外周縁に、他方の円形回転ギアのギア歯と噛合するギア歯を有するものとすることができ、それぞれのギアの共働面は、噛合するギア歯の半径内方向でギアの回転軸に向けて凹ませた凹部を有する無端共働面とすることができる。
【0008】
さらに別の態様において、ガイド部材の一部は、第1ギアの噛合ギア歯の半径内方向に凹ませた第1ギアの共働面のよって形成される第1の円形回転ギアの凹部内に設けられている。特定の態様においては、第1の円形回転ギアの凹部内に設けられたガイド部材の当該一部は、ストリップに対向する表面を有し、このストリップに対向する表面は、ストリップの外面の形状を略補完する形状を有する。
【0009】
さらに別の態様において、第1の円形回転ギア、第2の円形回転ギア及びガイド部材は、ストリップが容器内の第1液体から、第2の円形回転ギアの共働面、入口位置、第1の円形回転ギアと第2の円形回転ギアの共働面の間、出口位置、そして、第2の円形回転ギアの共働面上にありつつ第1の円形回転ギアの共働面からは離れるように順次前進させられるように設けられる。
【0010】
別の態様において、ストリップは断面略円形状を有するチューブからなり、第1の円形回転ギアの共働面、第2の円形回転ギアの共働面、及び、ストリップに対向する第1のギアの噛合ギア歯の内方向に凹ませて第1のギアの共働面に形成した第1の円形回転ギアの凹部内に設けられたガイド部材の一部分の表面は、このチューブの略円形の断面に大体一致している。
【0011】
さらに別の態様において、装置は、ストリップの連続部分が連続的に前進する際に、第1の流体とストリップの連続部分とが接触する結果としてストリップの連続部分に回収された第1の流体をストリップの連続部分から除去する手段を有している。このストリップの連続部分から第1の流体を除去する手段は、ストリップの連続部分が一対の前進部材の共働面の入口位置の手前で第1の流体が除去されるような位置に設けられている。
【0012】
さらに別に態様において、装置は、ストリップの連続部分から除去された第1の流体を保持するための手段を有し、特定の態様においては、この第1の流体を保持する手段は、保持容器とすることができる。
【0013】
さらに別の態様において、装置は、第1の流体の除去手段から、ストリップから除去された第1の流体を保持する手段へと、第1の流体を案内する手段を有している。特定の態様においては、この案内する手段は、ストリップの連続部分から除去された第1の流体を受けて、第1の流体を重力によって下方向に保持容器へと案内する傾斜面とすることができる。
【0014】
別の態様において、ストリップは断面略円形状のチューブとすることができる。特定の態様においては、この装置は、ストリップの連続部分がその中を通るスクレーピング環を具備しており、当該スクレーピング環は、ストリップの連続部分がスクレーピング環の中を通過する際にストリップの連続部分に集まった第1の流体を除去するのに十分な小さな内径を有する。さらに、このスクレーピング環は、ストリップの連続部分がスクレーピング環を通る際にストリップに随伴して動かないように固定することができる。スクレーピング環は、ストリップの連続部分が一対の前進部材の共働面と接触する前に、第1の流体がストリップの連続部分から除去されるような位置に設けることができる。
【0015】
さらに別の態様において、ストリップの連続部分は、ストリップの連続部分が第1の流体を通って前進する際に第1及び第2の円形回転ギアの下方に配置され、ストリップの連続部分を第1の流体と接触状態に維持する手段は、ストリップの連続部分がその中を通る重り環からなるものとすることができる。この重り環は、ストリップの連続部分を容器内の第1の流体と接触状態に維持するために十分な重量を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本願発明における前述及びその他の特徴と利点とは、添付図面を参照しながら説明する以下の記述によって明確なものとなる。図面において、発明の説明を容易にする目的で、図面中の同一部材には同一の符号を使用し、一部の特徴や部材は、若干概略的に示されている場合がある。
【0017】
発明の原理の理解を容易にする目的で、図面に示されている発明の実施例を参照しながら説明するが、本願発明は図面又は以下の説明における詳細な構造や部材の配置に限定されるものではない。本願発明による他の実施例も可能であり、本発明はここで記載された以外の方法で実施され得るものである。さらに、本発明の説明に用いた専門用語や言葉遣いは、本発明の理解を容易にするに用いたものであって、発明を限定するものでない。例えば、「処理流体」という表現は、機械加工の切削及び冷却機能との関連において用いられる切削剤だけではなく、例えば、洗浄液、機械加工の途中で液体不純物を集めそこから液体不純物が除去する金属加工液などのその他の流体も含むものである。さらに、「混入油」という表現は、例えば切削油、潤滑油、ウェイ油、ミル油、油圧液あるいは処理液に対して混和又は溶解しないその他の液体など、機械加工において処理流体を汚染するおそれがあるあらゆる流体を総称して用いている。また、「含油処理流体」という表現は、この明細書においては、混入油を高濃度に含む処理流体を総称して用いている。
【0018】
図1において流体混合物から第1の流体を分離するための装置である第1の実施例が示されている。図示されている装置は、本発明の特徴を有するチューブスキマーからなる。図示されている実施例のチューブスキマーは、流体混合物が収容されている(図示せず)処理流体タンク又は容器、あるいは、当該処理流体タンクに隣接する他の適当な構造物に取り付けられる支持台10を有する。機械作業において、処理流体タンクには、代表的には、例えば切削剤などの処理流体、及び、この切削剤に殆ど混和せず、その表面に浮遊している混入油が収容されている。なお、本発明の装置は、機械作業において切削剤から混入油を分離するための使用に限定されるものではなく、容器内の流体混合物から当該混合物中の1つ以上の他の流体に対して殆ど混和しない第1の流体を分離するような一般的な場合にも使用されるものである。
【0019】
このチューブスキマーは、流体混合物中の第1の液体、例えば、混入油、に対して親和性を有する材料からなる無端柔軟ストリップを備える。図示される実施例において、この柔軟なストリップ材は、断面略円形で、曲がり易いポリエチレンなどの材料のチューブ12からなり、その連続部分は、ギアボックス又はハウジング14を介して矢印16が示す方向へ継続的に順次前進させられる。チューブ12の連続部分は、入口18を通ってギアボックス14内へ、出口20を通ってギアボックス14の外へと前進する。柔軟なストリップ12の長さと直径は、どのようなものであってもよい。柔軟なストリップ材は、必ずしもチューブ状、又は、断面円形状である必要はない。例えば、ストリップを堅固な材料からなるものとし、その断面は長方形又は正方形であってもよい。さらに、ストリップは、その材料が分離される流体に対して親和性を有する限り、ポリエチレン以外の材料から形成してもよい。チューブ12の連続部分がギアボックス14を通って前進する態様に関しては以下に詳述する。
【0020】
本発明の装置は、さらにチューブの連続部分が連続的に順次ギアボックス14及び混入油を通って前進する際に、チューブ12の連続部分を混入油と接触させるように保持する手段を有している。図1においても最もよく示されているが、チューブ12の連続部分は、ギアボックス14の下方に配置されている。図示されている発明の実施例において、チューブ12の連続部分を混入油と接触させて保持する手段は、略環状の重り又は重り環22からなり、チューブ12を重り環の内径に通して取り付けている。この重り環は、チューブ12の連続部分が前進するときに、その連続部分を混入油と接触させておくのに十分な重量を有する適切な寸法を有する。チューブ12を混入油と接触させるように保持するためにはどのような適切な種類の重り部材を用いてもよく、この重り部材は、環状又はリング状である必要はない。さらに、代案として、チューブ12の連続部分を混入油と接触させて保持する手段を浮揚性のある材料とし、チューブ12の連続部分を処理流体タンク内の混入油の表面又はその近傍に垂下させるのに十分な浮力を有する適切な寸法のフロートとすることができる。これにより、チューブ12の連続部分が前進するとき、当該連続部分は混入油との接触を保つことのなる。チューブ12が処理流体タンク内の含油処理流体に接触すると、チューブは混入油に対して親和性を有するため、含油処理流体の混入油がチューブ12に引き付けられてチューブ12の表面上に集まる。
【0021】
本発明の装置はさらに、チューブの連続部分が連続的に順次前進する間に混入油とチューブの連続部分が接触する結果としてチューブの連続部分の上に集まった混入油を、チューブ12の連続部分から除去する手段を設けることができる。図示されている本発明の実施例における混入油除去手段は、ギアボックス14の入口18の外側に設けられているスクレーパー17からなる。チューブ12の連続部分が順次前進するとき、混入油とチューブが接触した結果チューブ上に集まった混入油が除去される。スクレーパー17は、チューブ12がギアボックス14を通って前進してギアボックス内の構成部材と接触する前に、チューブ12の連続部分から混入油が除去されるような位置に配置されている。スクレーパー17は、略環状構造、即ち、スクレーピング環からなり、これがチューブ12の外周面を囲んで係合していることで、チューブ12がスクレーピング環17を通ってギアボックス14内へと前進するにときにチューブ12の外周面から混入油を掻き取る。したがって、スクレーピング環17は、チューブの連続部分がスクレーピング環を通過する際にチューブ12の連続部分に集まった混入油が掻き取られて除去され得るように十分小さい内径を有している。スクレーピング環17は、チューブ12が略水平に位置する場所(例えば、ギアボックス14の入口に隣接する場所)でチューブ12と係合している。チューブから掻き取られた混入油を、スクレーピング環17からのそのような混入油を保存する手段、例えば、混入油保持容器、即ち、貯留タンク(図示せず)へと重力により方向付ける手段によって、チューブ12から掻き取られた混入油は受容される。スクレーピング環17は、例えばセラミックあるいはステンレス鋼など、油による損傷に耐性のある適切な材料からなる。スクレーピング環17は、ハウジング14の入口18近傍に設けられたキャップ19に当接する。その結果、スクレーピング環17は、チューブの連続部分がスクレーピング環を通って通過する際にも、チューブ12と共に動くことなく固定され、さらにスクレーピング機能を奏することが可能となる。
【0022】
チューブ12から除去された混入油の方向付して案内する手段は、図示された本発明の実施例によると、チューブ12から除去された混入油を受容するスクレーパー17の下に設けられた混入油ドレイン26からなる。混入油ドレイン26は、傾斜面23によって混入油貯留タンク又は保持容器(図示されない)と流動上連通しているため、チューブ12の連続部分から除去された混入油は傾斜面23によって重力に従って保持容器内へと下方に方向付けられる。混入油ドレイン26及び混入油貯留タンクは、例えばステンレス鋼など、油による損傷に耐性のある適切な材料からなる。図1において示されているように、混入油ドレイン26は、支持台10内に組み込まれていてもよいし、混入油ドレイン26を別体の構造物として設けてもよい。
【0023】
図示される本発明の実施例におけるチューブスキマーは、さらにモータ(図示せず)を収容するモータハウジング28を有している。モータハウジング28は、ハウジング内のモータに容易にアクセスするために取り外し可能なカバー29を有している。モータは、後述するように、ハウジング14内に収容されるスキマーの構成部材を駆動する駆動シャフトを有し、チューブ12の連続部分が前進する際に切削剤の表面から混入油を取上げ、この混入油をスクレーピング環17へと送るためにチューブ12の連続部分を前進させる。チューブスキマーは、チューブ12を一方方向に前進させるように図示されているが、可逆モータを用いてチューブ12をいずれの方向にも前進可能とすることもできる。この場合、チューブスキマーはギアボックス14の出口20に別のスクレーピング環を備え、チューブがギアボックス14の中に入る前にチューブ12の連続部分から混入油を除去するようにすることができる。この場合にも、出口20の下に混入油ドレインを設けることとなる。
【0024】
図2、3、4の実施例において、ギアボックス14とその中に設けられたチューブスキマーの構成部材がさらに詳細に示されている。図3の分解斜視図がギアボックス内部の全ての構成部材を示している。ギアボックス14は、下部ハウジング部34と上部ハウジング部36からなる。下部ハウジング部34にはクリップ30、上部ハウジング部36にはこれに対応する孔部32が設けられており、当該孔部を通ってクリップ30が延び、上下部ハウジング部を相互に固定する。これら上部及び下部ハウジング部は、上部ハウジング部の開口部31を通って下部ハウジング部34の突起38に固定される固定具によってさらに相互に固定され得る。固定具は、突起38のネジ付き腔に螺合するネジとするこができる。
【0025】
ギアボックス14内には第1の前進部材と第2の前進部材が設けられており、これらは共働して、チューブ12形状のストリップの連続部分を、第1の流体あるいは混入油と接触しない位置からこれに接触する位置、さらに再び接触しない位置へと前進させる。第1及び第2の前進部材はそれぞれ共働面を有し、これら共働面の間のストリップまたはチューブ12の一部に十分な力を付加して当該一部と積極的に係合するので、第1及び第2の前進部材の相互間の動きが連続的にストリップまたはチューブの連続部分を、ストリップが第1及び第2の前進部材の共働面の間に入って当該共働面と係合する入口位置からストリップが第1及び第2の前進部材の共働面の間から外に出る出口位置まで前進させる。より具体的には、下部ハウジング部34において、第1の前進部材が第1の円形回転ギア44を、第2の前進部材が第2の円形回転ギア42を備えるギアリング機構を有する。各円形回転ギアはそれぞれ、ギアの外周囲に噛合ギア歯と、噛合ギア歯の半径内方向でギアの回転軸方向に凹ませている無端共働面45、43を有する。
【0026】
ギア42、44の回転により、ギアボックス14そして切削剤の表面に浮遊している混入油を通ってチューブの連続部分を順次前進さることにより、チューブ12は第1の流体と接触しない位置から第1の流体と接触する位置へ、さらに再び第1の流体と接触しない位置へと進む。ギアボックス14には、ギア42及び44を駆動するモータハウジング28内のモータの駆動シャフトが受容されている。駆動シャフトは、上部ハウジング部36の孔部48を通ってハウジング14内に入ってギア44に固定されるが、これに代えて駆動シャフトをギア42に固定することも可能である。ギア42と44は、反対方向に回転する。即ち、図2を上部から見た場合、ギア42は時計回りに回転し、一方ギア44は反時計回りに回転する。このようなギア42、44の反対方向への回転によってギア間にピンチポイントが生まれ、ピンチポイントによってチューブ12の連続部分が前進させられる。上部ハウジング部36はギアボックスの構成部材の防護カバーを構成し、構成部材の防護のみならず、オペレータの安全レベルを高めることにもなる。
【0027】
ギア42、44とチューブ12のみが示されている図4において最もよく示されているが、ギア42、44の共働面43、45は、それぞれ無端共働面を構成し、チューブ12の一部に十分な力を付与してこれと係合するので、ギア42、44の相対的な動きによって継続的に順次チューブ12の連続部分を、チューブが第1及び第2の円形回転ギア44、42の共働面45、43の間に入ってこれらと係合する入口位置39(図2参照)から、チューブが第1及び第2の円形回転ギアの共働面45、43の間から外へ出る出口位置41(図2参照)へと前進させる。図2は、ギアボックスの内部構成部材を図示するために上部ハウジング部36を取り除いた状態のギアボックス14の平面図である。
【0028】
必須ではないものの、ギア42、44の共働面43、45は、それぞれチューブの断面円形状を略補完する凹面形状とすることができる。共働面43と45の間にピンチポイントを生じさせる本発明のギア形状によりチューブに対する駆動グリップが向上し、従来のチューブスキミング装置において生じていたチューブの巻付きや絡まりの問題が軽減する。
【0029】
図2及び図3に示すように、ギアボックス14にはさらに、ギアボックス14を通ってチューブ12を案内するガイド50及び52が設けられている。入口側チューブガイド50は下部ハウジング部34内に設けられて、チューブ12を凹部43内に受けて第1のギア42の第1部分に沿ってピンチポイントへと方向付ける役目を果たす。出口側チューブガイド52も下部ハウジング部34に設けられ、チューブ12を凹部43内に受けてピンチポイントから出たチューブ12を、第1ギア42の第2の部分に沿って導く。入口側チューブガイド50と出口側チューブガイド52とは、チューブ12がギアボックス14を通って移動する間、入口側チューブガイド50、ピンチポイントまたは出口側チューブガイド52のうちいずれか1つと実質的に常時接触しているように構成されている。
【0030】
図5及び図6に、本発明の第2の実施例が図示されている。特に図5には、図1乃至図4のギアボックス14に代えて用いることができるギアボックスの構造が図示されている。図5のギアボックスは、ギアボックスの上部ハウジング部36が取り外された状態で示され、図1乃至図4における円形回転ギア42及び44(図5では断面図として示されている)を含むギアボックスの全ての構成部材が示されている。図1乃至図4を参照した前述のギアボックス14とその機能に関する説明は、図5のギアボックスについても同様である。しかしながら、図5におけるギアボックスは、さらに、出口位置41にガイド部材62を備えており、ストリップまたはチューブ12を、出口位置41において、第1の前進部材又は第1の円形回転ギア44の共働面45との係合から解放しつつ、第2の前進部材又は第2の円形回転ギア42の共働面43と引続き係合するように案内する。こうしてガイド部材62は、チューブ12が第1の円形回転ギア44の共働面45とは継続的な接触を維持して第1の円形回転ギアと共に進むことを防止し、第2の円形回転ギア42と共に引き続き進むようにする。
【0031】
図5が示すように、出口位置41に隣接して最初にストリップまたはチューブ12と係合するガイド部材62の部分64を、第1の円形回転ギア44の凹部43内に設けることができる。この凹部43は、第1の円形回転ギアの共働面45を第1の円形回転ギアの噛合ギア歯の内方に凹ませて形成している。さらに、ストリップに面するガイド部材62の当該部分64の表面66は、第2の円形回転ギア42の共働面の表面形状と実質的に同じ形状とすることができる。より具体的には、ストリップが略円形状断面を有するチューブ12である場合、第1の円形回転ギア44の共働面45、第2の円形回転ギア42の共働面43及びガイド要素の当該部分64のストリップに面する表面66は、いずれもチューブの略円形状断面と一致するものとすることができる。
【0032】
上述の通り、第1の円形回転ギア44、第2の円形回転ギア42及びガイド要素62は、ストリップ12を、容器内の第1の流体から、第2の円形回転ギア42の共働面43、入口位置39、第1の円形回転ギア44と第2の円形回転ギア42のそれぞれの共働面45及び43の間、出口位置41へと、そして、第2の円形回転ギア42の共働面34に進めて第1の円形回転ギア44の共働面45から離れるように、連続的に順次前進させるべく構成されている。
【0033】
既に述べたように、チューブ12の前進方向は、時計回りであっても反対時計回りであってもよい。チューブが反時計回り方向に前進するように構成する場合、図5によると、位置41が入口位置になり、位置39が出口位置となる。この場合、ガイド部材62は、位置39に設けられる。あるいは位置39及び41の両方にガイド部材を設けることも可能である。
【0034】
本発明の上記説明から、当業者はその改善態様、変更態様及び変形態様に思い付くと思われるが、これらは、本発明の説明と添付の特許請求項の範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の態様による流体分離装置の斜視図である。
【図2】図1の装置の特定の部材の平面図である。
【図3】図2が示す部材を含む、図1の装置の特定の部材の分解斜視図である。
【図4】図2及び図3が示すギア機構の端面図であって、ギア機構によって前進させられる無端チューブ材がギア機構に設けられている状態を示す。
【図5】本発明の第2の実施例による特定の部材の平面図である。
【図6】本発明の第2の実施例によるガイド部材の斜視図である。
【符号の説明】
【0036】
12 ストリップ又はチューブ
17 スクレーパー又はスクレーピング環
22 重り環
42 第2の円形回転ギア
43 第2の円形回転ギアの共働面又は凹部
44 第1の円形回転ギア
45 第1の円形回転ギアの共働面又は凹部
62 ガイド部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内の流体混合物から、混合物中の1以上の他の流体と実質的に混和しない第1の流体を分離するための装置であって、
第1の流体に対して親和性を有する材料からなる無端柔軟ストリップと、
第1の前進部材と第2の前進部材であって、共働してストリップの連続部分を継続的に、第1の流体と接触しない位置から第1の流体と接触する位置へそして再び第1の流体と接触しない位置へと前進させるものであり、この第1の前進部材と第2の前進部材はそれぞれ共働面を有し、共働面の間においてストリップの一部に対して十分な力を付与して当該一部と積極的に係合し、これによって第1及び第2の前進部材の相互の動きが連続してストリップまたはチューブの連続部分を、ストリップが第1及び第2の前進部材の共働面の間から中に入ってこれら共働面と係合する入口位置から、ストリップが第1及び第2の前進部材の共働面の間から外に出る出口位置まで前進させるものと、
出口位置に設けられたガイド部材であって、出口位置において第1の前進部材の共働面との係合からストリップを解放する一方、第2の前進部材の共働面とは継続的に係合するように導くものと、
ストリップの連続部分が連続的に前進する際に、ストリップの連続部分と容器内の第1の流体の接触を維持させる手段と、
を有することを特徴とする装置。
【請求項2】
第1の前進部材が第1の円形回転ギアを、第2の前進部材が第2の円形回転ギアを有することを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
各円形回転ギアはその外周囲にギア歯を有し、このギア歯は他方の円形回転ギアのギア歯と噛合するものであり、それぞれのギアの共働面は、噛合ギア歯の半径内方向にギアの回転軸に向かって凹ませてなる無端共働面からなることを特徴とする請求項2記載の装置。
【請求項4】
ガイド要素の一部は第1の円形回転ギアの凹部内に設けられ、この凹部は、第1のギアの共働面を第1のギアの噛合ギア歯の半径内方向に凹ませて形成していることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
第1のギアの噛合ギア歯の半径内方向に凹ませた第1のギアの共働面によって成形された第1の円形回転ギアの凹部内に設けられているガイド部材の一部は、ストリップに対向する表面を有し、このストリップに対向する表面は、ストリップの外面の形状を補完するような形状を有することを特徴とする請求項4記載の装置。
【請求項6】
第1の円形回転ギア、第2の円形回転ギア及びガイド要素は、ストリップが容器内の第1の流体から順次第2の円形回転ギアの共働面、入口位置、第1の円形回転ギアと第2の円形回転ギアの共働面の間、出口位置、そして、第2の円形回転ギアの共働面に向かう一方で第1の円形回転ギアの共働面からは離れるように順次前進するように設けられることを特徴とする請求項5記載の装置。
【請求項7】
ストリップは断面略円形状のチューブからなり、第1の円形回転ギアの共働面、第2の円形回転ギアの共働面、及び、ストリップに対向する第1のギアの噛合ギア歯の内方向に凹ませた第1円形回転ギアの凹部内に設けられるガイド部材の当該一部の表面は、チューブの略円形の断面に一致するものであることを特徴とする請求項6記載の装置。
【請求項8】
ストリップの連続部分が連続的に前進する際に、第1の流体とストリップの連続部分との接触の結果としてストリップの連続部分に集まった第1の流体をストリップの連続部分から除去する手段を有し、このストリップの連続部分から第1の流体を除去する手段は、ストリップの連続部分が入口位置に入る手前で第1の流体が除去されるような位置に設けられていることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項9】
ストリップの連続部分から除去された第1の流体を保持する手段を有することを特徴とする請求項8記載の装置。
【請求項10】
ストリップから除去された第1の流体を、第1の流体を除去する手段から第1の流体を保持する手段へと導く手段を有することを特徴とする請求項9記載の装置。
【請求項11】
ストリップが断面略円形状のチューブからなることを特徴とする請求項10記載の装置。
【請求項12】
ストリップの連続部分が通過するスクレーピング環を有し、このスクレーピング環は、ストリップの連続部分がスクレーピング環を通る結果として起こり得るストリップに随伴する動きを防止するために固定され、ストリップの連続部分がスクレーピング環の中を通過する際にストリップの連続部分に集まった第1の流体を除去するのに十分小さな内径を有し、さらに、ストリップの連続部分が入口位置に入る手前で第1の流体がストリップの連続部分から除去されるように配置されていることを特徴とする請求項11記載の装置。
【請求項13】
ストリップの連続部分から除去された第1の流体を保持するための保持容器を有することを特徴とする請求項12記載の装置。
【請求項14】
ストリップの連続部分から除去された第1の流体を受けて、第1の流体を重力によって下方に向けて保持容器へと案内する傾斜面を有することを特徴とする請求項13記載の装置。
【請求項15】
ストリップの連続部分は、ストリップの連続部分が第1の流体を通って前進する際に第1及び第2の円形回転ギアの下方に配置され、ストリップの連続部分を第1の流体と接触状態に維持する手段はストリップの連続部分がその中を通過する重り環からなり、この重り環は、ストリップの連続部分を容器内の第1の流体と接触状態に維持するために十分な重量を有することを特徴とする請求項6記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−55417(P2008−55417A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−214225(P2007−214225)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【出願人】(598088011)田中インポートグループ株式会社 (3)
【Fターム(参考)】