流体取扱装置の操作方法
【課題】評価対象となる特定物質の精製、回収、検査を簡単に且つより一層効率的に行うことができる流体取扱装置の操作方法を提供する。
【解決手段】第2収容部22内の特定物質を含んだ混合液33を第2収容部22内に挿入したピペット32によって繰り返し吸引・排出するだけで、第1収容部21内の混合液33を繰り返し強制的に正逆両方向に流動させて、混合液33を粒子としてのビーズ30の表面に万遍なく接触させることができ、特定物質をビーズ30に簡単に且つ効率的に捕捉させることができる。
【解決手段】第2収容部22内の特定物質を含んだ混合液33を第2収容部22内に挿入したピペット32によって繰り返し吸引・排出するだけで、第1収容部21内の混合液33を繰り返し強制的に正逆両方向に流動させて、混合液33を粒子としてのビーズ30の表面に万遍なく接触させることができ、特定物質をビーズ30に簡単に且つ効率的に捕捉させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体物質に代表される機能性物質などの試料を分析する試料分析装置として使用可能な流体取扱装置の操作方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、タンパク質などの生体物質を特異的に検出する方法として、特定の生体物質に対する抗体を用いて抗原抗体反応を起こさせ、その反応物を視覚的に認識または分光学的に測定することによってその生体物質を検出する様々な方法が知られている。
【0003】
現在、タンパク質などの生体物質の抗原抗体反応による反応物を定量する方法として、ELISA(Enzyme−Linked ImmunoSorbent Assay)(酵素結合免疫吸着検定法)などの方法が広く採用されている。これらの方法では、一般にマイクロウェル(以下「ウェル」という)と呼ばれる多数の微小凹部の配列が形成されたマイクロウェルプレートと呼ばれる試料分析装置を使用し、目的物質である特定の生体物質に対する抗体を捕体としてウェルの壁面にコートし、この捕体によって目的物質を捕捉し、目的物質と抗体との間の抗原抗体反応による反応物を蛍光や発光試薬などにより測定することによって目的物質を検出する。
【0004】
一般に、ELISAなどのマイクロウェルプレートを用いた方法では、目的物質を含む検体や抗体試薬などの液体を反応液としてウェル内に満たして反応させている。この反応は、ウェル内に満たされた液体中の成分が分子拡散によって移動し、ウェルの底面や内壁に達したときに初めて起こる。そのため、マイクロウェルプレートを静置した場合には、理論的な反応時間は、ウェル内に満たされた液体中の成分の拡散時間に依存している。液体中の分子は、周囲の分子と衝突しながら移動しているため、その拡散の速さは非常に遅く、目的物質が分子量7万程度のタンパク質である場合には、希薄な水溶液の状態(室温)で0.5〜1×10−6cm2/秒程度である。そのため、ウェル内の液体中において、ウェルの底面や内壁から離れた位置にある目的物質は、実用的な測定時間内ではほとんど反応することができない。また、マイクロウェルプレートでは、反応効率を向上させるために、反応部であるウェル内の底面や壁面を反応液と万遍なく接触させることが有効であるので、反応に必要な量の液体に比べて、より多くの量の液体が必要になる。
【0005】
このように、ELISAなどのマイクロウェルプレートを用いた従来の方法では、抗原抗体反応が捕捉用抗体をコートしたウェルの壁面のみで進行するため、ウェルに加えた液体中に含まれる目的物質、抗体、基質などがウェル内で浮遊、還流、沈下してウェルの壁面に到達した後に反応するまで放置しなければならず、反応効率が悪いという問題がある。また、多数のウェルに細分化されているマイクロウェルプレートでは、各々のウェルに加える液体の量が制限されているので、測定感度が低下するという問題もある。
【0006】
また、ELISAなどの方法において測定感度の向上や測定時間の短縮を図るために、反応面(捕捉面)となるウェルの底面に微細な凹凸を設けることによって、反応面の表面積を大きくして測定感度を高めることができるマイクロプレートが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、マイクロチップのマイクロチャネル内に反応固相として固体微粒子(ビーズ)を配置させることにより、反応面の表面積を増大して、微小空間における反応効率を高めることができるマイクロチップも提案されている(例えば、特許文献2参照)。さらに、各ウェルの底面部の中央に小径の凹部を設けることにより、反応面の表面積を増大し且つ試料を節約することができるマイクロプレートも提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
しかしながら、特許文献1に提案されたマイクロプレートは、測定感度を向上させることができるが、反応効率を向上させることができないという問題がある。また、特許文献2に提案されたマイクロチップは、一般にELISAなどの方法に使用されるマイクロウェルプレートではなく、マイクロチャネル構造のマイクロチップであるため、反応効率を向上させることができるものの、多検体の測定に適していない。さらに、特許文献3に提案されたマイクロプレートは、ある程度反応面の表面積を増大して反応効率や測定感度を向上させることができるものの、反応効率や測定感度の向上は十分ではないという問題を有していた。
【0008】
そこで、本願の出願人は、上記のような従来技術の問題を解消するためのものとして、多検体の測定を行う試料分析装置として使用した場合に、簡単な構造で反応効率および測定感度を向上させ且つ反応時間および測定時間を短縮することができる流体取扱装置を既に案出した(特許文献4参照)。
【特許文献1】特開平9−159673号公報(段落番号0009−0010)
【特許文献2】特開2001−4628号公報(段落番号0005−0006)
【特許文献3】特開平9−101302号公報(段落番号0010−0011)
【特許文献4】特開2007−279018号公報(段落番号0007−0009)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、近時、本願の出願人に対し、評価対象となる特定物質の精製、回収、検査を簡単に且つより一層効率的に行うことができる流体取扱装置の操作方法の提供が望まれていた。
【0010】
本発明は、このような要望に応えるために案出されたものであり、ウェル内において液体を強制的に流動させたり、抽出したりすることの可能な流体取扱装置の操作方法を提供することを目的とし、評価対象となる特定物質の精製、回収、検査等を簡単に且つより一層効率的に行うことができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、装置本体に形成された液体収容室に、第1収容部及び第2収容部が形成され、第1収容部内に、特定物質を捕捉することが可能な表面積増大部材を収容してなる流体取扱装置の操作方法に関するものである。この発明の流体取扱装置の操作方法は、(1)前記液体収容室内に、前記特定物質を含む液体を注入した後、(2)前記第2収容部内において、液体の吸引・排出が可能な液体操作具によって前記液体の吸引・排出を繰り返し行うことにより、前記第1収容部と前記第2収容部とを繰り返し行き来する前記液体の流れを生じさせ、前記表面積増大部材と前記液体とを強制的に接触させることによって、前記特定物質を前記表面積増大部材に捕捉する、ことを特徴としている。
【0012】
請求項2の発明は、装置本体に形成された液体収容室に、第1収容部及び第2収容部が形成され、第1収容部内に、特定物質を捕捉することが可能な表面積増大部材を収容してなる流体取扱装置の操作方法に関するものである。この発明の流体取扱装置の操作方法は、(1)前記液体収容室内に、前記特定物質を含む液体を注入した後、(2)前記第2収容部内において、液体の吸引・排出が可能な液体操作具によって前記液体の吸引・排出を繰り返し行うことにより、前記第1収容部と前記第2収容部とを繰り返し行き来する前記液体の流れを生じさせ、前記表面積増大部材と前記液体とを強制的に接触させることによって、前記特定物質を前記表面積増大部材に捕捉し、(3)次に、前記液体収容室内の前記液体収容室内の前記液体を、前記第2収容部内から前記液体操作具によって吸い取り、強制的に排出し、(4)次に、前記第2収容部内から前記液体操作具によって強制的に排出した前記液体から前記特定物質を抽出する、ことを特徴としている。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明に係る流体取扱装置の操作方法において、前記第1収容部及び前記第2収容部が、液体連通路が形成された仕切壁によって仕切られ、前記第1収容部と前記第2収容部が、前記仕切壁の前記液体連通路を介して連通されている、ことを特徴としている。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかの発明に係る流体取扱装置の操作方法において、前記表面積増大部材が、前記液体連通路を通過しない粒径の粒子である、ことを特徴としている。
請求項5の発明は、装置本体に形成された液体収容室を、液体連通路が形成された仕切壁によって第1収容部と第2収容部とに分け、前記第1収容部内に、前記液体連通路を通過しない粒径の特定物質を捕捉可能な粒子を収容してなる流体取扱装置の操作方法に関するものである。この流体取扱装置は、(1)前記液体収容室内に、特定物質とその特定物質以外の物質を含む混合液を注入した後、(2)前記第2収容部内に、液体の吸引・排出が可能な液体操作具を挿入し、(3)前記第2収容部内の前記混合液を前記液体操作具によって繰り返し吸引・排出することにより、前記液体連通路を介して前記第1収容部内と前記第2収容部内とを繰り返し行き来する前記混合液の流れを生じさせ、前記第1収容部内の前記混合液を繰り返し強制的に正逆両方向に流動させて、前記粒子に前記特定物質を捕捉させた後、(4)前記液体収容室内の前記混合液を、前記第2収容部内から前記液体操作具によって吸い取り、(5)前記液体収容室内に、洗浄液を注入した後、(6)前記第2収容部内に、前記液体操作具を挿入し、(7)前記第2収容部内の前記洗浄液を前記液体操作具によって繰り返し吸引・排出することにより、前記液体連通路を介して前記第1収容部内と前記第2収容部内とを繰り返し行き来する前記洗浄液の流れを生じさせ、前記第1収容部内の前記洗浄液を繰り返し強制的に正逆両方向に流動させて、前記第1収容部内に残る残渣を洗い流した後、(8)前記液体収容室内の前記洗浄液を前記第2収容部内から前記液体操作具によって吸い取って洗浄作業を終了し、前記第1収容部内の前記粒子に前記特定物質のみを捕捉させて前記混合液から前記特定物質を抽出することを特徴としている。
【0015】
請求項6の発明は、請求項5の流体取扱装置の操作方法に関し、(9)前記洗浄作業終了後、前記液体収容室内に溶離液を注入し、(10)前記第2収容部内に、前記液体操作具を挿入し、(11)前記第2収容部内の前記溶離液を前記液体操作具によって繰り返し吸引・排出することにより、前記液体連通路を介して前記第1収容部内と前記第2収容部内とを繰り返し行き来する前記溶離液の流れを生じさせ、前記第1収容部内の前記溶離液を繰り返し強制的に正逆両方向に流動させて、前記粒子から前記特定物質を解離させた後、(12)前記液体収容室内の前記溶離液を前記第2収容部内から前記液体操作具によって吸い取って、前記特定物質のみを回収することを特徴としている。
【0016】
請求項7の発明は、請求項5の流体取扱装置の操作方法に関し、(9)前記洗浄作業終了後、前記粒子に捕捉している特定物質又はその特定物質と結合して前記第1収容部内に留まっている物質と反応し得る物質aを含む検査試薬1を、前記液体収容室内に注入し、(10)前記第2収容部内に、前記液体操作具を挿入し、(11)前記第2収容部内の前記検査試薬1を前記液体操作具によって繰り返し吸引・排出することにより、前記液体連通路を介して前記第1収容部内と前記第2収容部内とを繰り返し行き来する前記検査試薬1の流れを生じさせ、前記第1収容部内の前記検査試薬1を繰り返し強制的に正逆両方向に流動させた後、(12)前記液体収容室内の前記検査試薬1を、前記第2収容部内から前記液体操作具によって吸い取り、(13)次に、前記液体収容室内に、洗浄液を注入した後、(14)前記第2収容部内に、前記液体操作具を挿入し、(15)前記第2収容部内の前記洗浄液を前記液体操作具によって繰り返し吸引・排出することにより、前記液体連通路を介して前記第1収容部内と前記第2収容部内とを繰り返し行き来する前記洗浄液の流れを生じさせ、前記第1収容部内の前記洗浄液を繰り返し強制的に正逆両方向に流動させて前記第1収容部内に残る余剰の物質aを洗い流した後、(16)前記液体収容室内の洗浄液を前記第2収容部内から前記液体操作具によって吸い取り、(17)次に、前記物質aを認識する酵素が結合した物質bを含む検査試薬2を、前記液体収容室内に注入し、(18)前記第2収容部内に、前記液体操作具を挿入し、(19)前記第2収容部内の前記検査試薬2を前記液体操作具によって繰り返し吸引・排出することにより、前記液体連通路を介して前記第1収容部内と前記第2収容部内とを繰り返し行き来する前記検査試薬2の流れを生じさせ、前記第1収容部内の前記検査試薬2を繰り返し強制的に正逆両方向に流動させた後、(20)前記液体収容室内の前記検査試薬2を、前記第2収容部内から前記液体操作具によって吸い取り、(21)次に、前記液体収容室内に、洗浄液を注入した後、(22)前記第2収容部内に、前記液体操作具を挿入し、(23)前記第2収容部内の前記洗浄液を前記液体操作具によって繰り返し吸引・排出することにより、前記液体連通路を介して前記第1収容部内と前記第2収容部内とを繰り返し行き来する前記洗浄液の流れを生じさせ、前記第1収容部内の前記洗浄液を繰り返し強制的に正逆両方向に流動させて前記第1収容部内に残る余剰物質bを洗い流した後、(24)前記液体収容室内の洗浄液を前記第2収容部内から前記液体操作具によって吸い取り、(25)次に、前記第1収容部から基質試薬を注入し、前記基質試薬を前記酵素と反応させて発色又は発光させ、前記第2収容部内に収容されている液体の吸光度測定、発光測定、蛍光測定のいずれかを行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、第2収容部内の特定物質を含んだ液体を第2収容部内に挿入した液体操作具によって繰り返し吸引・排出するだけで、第1収容部内の液体を繰り返し強制的に正逆両方向に流動させて、液体を表面積増大部材の表面に万遍なく接触させることができ、特定物質を表面積増大部材の表面に簡単に且つ効率的に捕捉させることができる。
【0018】
また、請求項2の発明によれば、特定物質の精製作業を簡単に且つ効率的に完了させることができる。
【0019】
また、請求項3の発明によれば、液体収容室を仕切壁によって第1収容部と第2収容部とに分けることにより、様々な形態の表面積増大部材を第1収容部内に充填させることができる。
【0020】
また、請求項4の発明によれば、表面積増大部材が粒子であることにより、液体を強制的に流動させた際に粒子が浮遊して、液体と粒子とが接触し易くなる。
【0021】
また、請求項5の発明によれば、特定物質捕捉工程と洗浄工程とを、同一の操作方法によって簡単に且つ効率的に行うことができる。
【0022】
請求項6の発明によれば、特定物質の精製作業を簡単に且つ効率的に完了させることができる結果、特定物質の回収作業も簡単に且つ効率的に行うことができる。
【0023】
請求項7の発明によれば、特定物質の精製作業を簡単に且つ効率的に完了させることができ、精製した特定物質を別の容器に移動させることなくそのまま(流体取扱装置に収容したまま)吸光度測定、発光測定、蛍光測定等の測定を行うことができる。その結果、請求項7の発明は、粒子に捕捉された特定物質の有無、捕捉量等も簡単に且つ効率的に検査又は測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係る流体取扱装置の操作方法を図面に基づき詳述する。
【0025】
(流体取扱装置)
図1〜図2は、本発明に係る流体取扱装置1の実施形態を示す図である。このうち、図1は、流体取扱装置の全体を示す斜視図である。また、図2は、流体取扱装置を分解して示す斜視図である。これらの図に示す本実施形態の流体取扱装置1は、一般にマイクロウェルプレートと呼ばれる多検体の測定を目的とした試料分析装置として使用することができ、枠体2とこの枠体2に着脱可能に組み付けられる装置本体(ウェルストリップ)3とから構成されている(図2参照)。なお、図1に示す流体取扱装置1は、装置本体3が枠体2の長手方向に沿って12列並べて配置され、一列の装置本体3に8個の液体収容室(ウェル)4が形成されており、合計96個の液体収容室4がマトリックス状に配置されているが、これに限られず、装置本体3の1個又は適宜個数のみを枠体2に組み付けるようにしてもよい。
【0026】
図1及び図2に示すように、枠体2は、四側壁5〜8によって取り囲まれる空間(平面形状が矩形形状の空間)10を有しており、ポリスチレン(PS),ポリカーボネート(PC),ポリメタクリル酸メチル(PMMA)などの樹脂材料またはガラス材料により形成されている。なお、枠体2は、例えば、SBS(Society for Biomolecular Screening)規格のマイクロウェルプレート用の枠体のような標準的な規格の枠体を使用してもよい。
【0027】
図2に示すように、装置本体3は、細長い角棒状のボディ部11と、このボディ部11の長手方向両端部の上面側から長手方向へ沿って突出する薄板状の鍔部12,12とを有している。そして、この装置本体3は、ボディ部11を枠体2の空間10内に収容し、鍔部12,12を枠体2の対向する側壁5,7の上面5a,7aに載せることにより、枠体2に着脱可能に組み付けられるようになっている(図1参照)。この装置本体3は、枠体2と同様に、ポリスチレン(PS),ポリカーボネート(PC),ポリメタクリル酸メチル(PMMA)などの樹脂材料またはガラス材料により形成されている。なお、この装置本体3は、蛍光測定に使用する場合、蛍光測定時のバックグラウンドの上昇を抑えるために、光を透過し難い部材(例えば、黒色の部材)で形成することが好ましい。
【0028】
図3及び図4に示すように、装置本体3のボディ部11には、その上方へ向けて開口する有底筒状の凹みである液体収容室4が等間隔で8個形成されている。この液体収容室4は、底部13側に位置する小径丸穴部14と、ボディ部11の上面11a側に位置する大径丸穴部15と、大径丸穴部15から一方向(図6の左方向)へ張り出すように形成された張出凹部16と、を有している。そして、この液体収容室4は、図3及び図7に示すように、大径丸穴部15と小径丸穴部14とが同心円状に形成され、大径丸穴部15と小径丸穴部14との接続部分が大径丸穴部15から小径丸穴部14に向かって斜め下方へ傾斜するテーパ面17になっている。また、液体収容室4の張出凹部16は、図6に示すように、大径丸穴部15からボディ部11の側面11b,11cに沿って延びるように形成された一対の側面16a,16aと、この一対の側面16a,16aの張出端部に略直交する側面16bと、大径丸穴部15に向かって斜め下方へ滑らかに降下する曲面状の傾斜面16cと、を有している(図7参照)。そして、ボディ部11の上面11aにおける液体収容室4の開口縁は、四角形の一辺側を半円形としたような形状に形成されている。このような形状の液体収容室4は、張出凹部16の底面となる部分が大径丸穴部15に向かって斜め下方へ滑らかに降下する曲面状の傾斜面16cであり、大径丸穴部15と小径丸穴部14の接続部分が大径丸穴部15から小径丸穴部14に向かって斜め下方へ傾斜するテーパ面17であるため、張出凹部16から大径丸穴部15を経て小径丸穴部14へ向かって液体が円滑に流れ、また、小径丸穴部14から大径丸穴部15を経て張出凹部16へ向かって液体が円滑に流れるようになっている。
【0029】
図5乃至図7に示すように、装置本体3の液体収容室4には、液体収容室4内を第1収容部(特定物質吸着領域)21と第2収容部(液体操作領域)22とに2分する円筒状の仕切壁23が取り付けられている。仕切壁23は、中空の円筒体であり、その下端部が液体収容室4の小径丸穴部14に嵌合された状態で固定(例えば、接着、溶着、又は圧入で固定)されている。また、この仕切壁23は、図8乃至図10に詳細を示すように、その下端部23aから母線方向へ沿って延びて内部空間24と外部25とを連通するスリット(液体連通路)26が周方向に沿ってほぼ等間隔で複数形成されている。仕切壁23のスリット26は、第1収容部21の下部(仕切壁23の外部に位置する大径丸穴部15の下部)に収容されるビーズ(粒子)30が通過し得ない程度の幅寸法に形成され、大径丸穴部15と拡張凹部16との接続部を越える位置までの長さ寸法に形成されている(図6及び図7参照)。なお、図10に示すように、本実施形態において、仕切壁23には12個のスリット26が形成されている。そして、このスリット26は、図10に示すように、仕切壁23の内部空間24と外部25を放射状に貫通するように形成されているが、これに限られず、図11に示すように、3個の平行なスリット26,26,26を1グループとして、90°の間隔で4グループのスリット26を形成し、これら12個のスリット26で仕切壁23の内部空間24と外部25とを連通するようにしてもよい。
【0030】
図6及び図7に示すように、ビーズ30は、例えば、スリット26の幅寸法を0.2mmとすると、そのスリット26の幅寸法よりも大きな粒径(0.2mmを越える粒径)のものが使用される。このビーズ30は、捕捉する特定物質によって異なる材料のものが使用される。例えば、特定物質がタンパク質の場合には、ビーズ30の材質としてセルロースを選定することができる。また、特定物質が核酸である場合には、ビーズ30の材質としてシリカを選定することができる。なお、本実施形態においては、後述する流体取扱装置の操作方法に関連して、Ni−NTAアガロースビーズが使用されるが、ビーズ30の材質としてこれらの材質に限定されるものではない。
【0031】
そして、このようなビーズ30は、図12に示すように、50%スラリー31の状態でピペット(液体操作具)32に吸引された後(図12(a)参照)、ピペット32によって50%スラリー31の状態で第1収容部21に注入される(図12(b)参照)。第1収容部21内に注入されたスラリー31のビーズ30が第1収容部21内に残留し、スラリー31の液体31aが仕切壁23のスリット26を通過して第2収容部22内に流入する。その後、第2収容部22内に挿入したピペット32によって液体収容室4内の液体31aが吸い取られると(図12(c)参照)、第1収容部21内の下部に多数のビーズ30のみが充填された状態になり(図12(d)参照)、装置本体3が完成する。
【0032】
なお、第1収容部21内に充填される表面積増大部材30Aとしては、本実施形態にて示すビーズ30に限らず、特開昭62−122586号公報に開示されているような多孔性のシート状のものを、複数の層を形成するように筒状に丸めて、図13(a),(b)に示すように第1収容部21内に配置してもよい。また、第1収容部21内に配置する表面積増大部材30Aが一体化された円環形状のものであれば、仕切壁23が形成されていない液体収容室4内に円環形状の表面積増大部材30Aを配置するだけで、第1収容部21Aと第2収容部22Aを形成することができる。
【0033】
(流体取扱装置の操作方法1)
以下、特定物質を精製するための流体取扱装置の操作方法を説明する。
【0034】
<ステップ1>
まず、特定物質(例えば、His−Tag付融合タンパク質)とその特定物質以外の物質を含む混合液(サンプル)33を、ピペット32によって所定量(例えば、200μL)だけ吸引する(図15(a)参照)。
【0035】
<ステップ2>
次に、ピペット32に吸引されたサンプル33が、装置本体3の液体収容室4(好ましくは第1収容部21)内に注入される(図15(b)参照)。
【0036】
<ステップ3>
次に、装置本体3の第2収容部22内にピペット32を挿入し、そのピペット32によってサンプル33の吸引と排出を繰り返す(ピペッティングを行う)。これにより、仕切壁23のスリット26を介して第1収容部21と第2収容部22内を繰り返し行き来するサンプル33の流れが生じ、第1収容部21のサンプル33が繰り返し強制的に正逆両方向に流動させられ、その流動するサンプル33によってビーズ30が第1収容部21の上方へ向けて巻き上げられたり、また、その流動するサンプル33によってビーズ30が第1収容部21の下方へ向けて沈下させられる(図15(c)〜(d)参照)。すなわち、第2収容部22内のピペット32によってサンプル33が吸引された後、その吸引されたサンプル33がピペット32から第2収容部22内に排出されると、第1収容部21の下部から上方へ向かうサンプル33の流れが生じ、第1収容部21の下部に位置するビーズ30がそのサンプル33の流れによって巻き上げられ、ビーズ30の表面にサンプル33が万遍なく接触し、ビーズ30の表面に特定物質が効率的に捕捉される。続いて、第2収容部22内のピペット32によってサンプル33が吸引されると、第1収容部21内の上部から下部へ向かうサンプル33の流れが生じ、巻き上げられたビーズ30が第1収容部21の下部に沈下させられる。このようなピペット32によるサンプル33の吸引・排出が繰り返し行われることにより、特定物質がビーズ30の表面に短時間で効率的に捕捉される。なお、第2収容部22内において、ピペット32によってピペッティングを行う場合には、ピペット32の先端を小径丸穴部14と大径丸穴部15との接続部に近傍に位置させることが好ましい(図7参照)。このようにすれば、ピペット32によるピペッティング時において、第1収容部21内のビーズ30を巻き上げる効果が高く、ビーズ30への特定物質の捕捉が促進される。
【0037】
<ステップ4>
次に、第2収容部22からピペット32によって液体収容室4内のサンプル33を吸い取る。
【0038】
<ステップ5>
次に、ピペット32によって洗浄液34(例えば、PBS−0.05%Tween20を250μl)を液体収容室4内に注入し(図16(a)参照)、第2収容部22内においてピペット32によって洗浄液34の吸引・排出(ピペッティング)を行うことにより、液体収容室4、仕切壁23、及びビーズ30の洗浄を簡単に且つ効率的に行う(図16(b)参照)。次に、液体収容室4内の洗浄液34を第2収容部22内に挿入されたピペット32によって吸い取り、洗浄作業を終了する。これにより、ビーズ30の表面に特定物質のみを捕捉させた状態にすることができ、特定物質の精製作業が終了する。
【0039】
以上のような流体取扱装置1の操作方法1によれば、図18のように、第2収容部22内においてピペット32で吸引したサンプル33を第1収容部21から注入する作業を繰り返す操作方法に比較し(図18(c)〜(d)参照)、短時間で且つ効率的に特定物質を精製することができる。なお、図18(a)〜(b)は、図15(a)〜(b)と同様である。)
(流体取扱装置の操作方法2)
以下、特定物質を回収するための流体取扱装置1の操作方法を図7及び図17に基づき説明する。
【0040】
まず、上述した特定物質の精製作業における洗浄作業が終了した後、液体収容室4内(好ましくは第1収容部21内)に溶離液(例えば、イミダゾール液)を注入し、その溶離液を第2収容部22内に挿入したピペット32によって繰り返し吸引・排出(ピペッティング)することにより、スリット26を介して第1収容部21内と第2収容部22内とを繰り返し行き来する溶離液の流れを生じさせ、第1収容部21内の溶離液を繰り返し強制的に正逆両方向に流動させて、特定物質をビーズ30の表面から簡単に且つ効率的に解離させる。次に、液体収容室4内の溶離液を第2収容部22内に挿入したピペット32によって吸い取って、特定物質のみを回収する。これにより、特定物質の回収作業が終了する。
【0041】
(流体取扱装置の操作方法3)
以下、特定物質を検出するための流体取扱装置の操作方法を図7及び図17に基づき説明する。
【0042】
<ステップ6>
まず、上述した特定物質の精製作業における洗浄作業が終了した後、ビーズ30の表面に捕捉している特定物質又はその特定物質と結合して第1収容部21内に留まっている物質と反応し得る物質a(例えば、ピオチン標識抗体)を含む検査試薬1を、液体収容室4内(好ましくは、第1収容部21内)に注入する。
【0043】
<ステップ7>
次に、第2収容部22内にピペット32を挿入し、第2収容部22内の検査試薬1をピペット32によって繰り返し吸引・排出(ピペッティング)することにより、仕切壁23のスリット26を介して第1収容部21内と第2収容部22内とを繰り返し行き来する検査試薬1の流れを生じさせ、第1収容部21内の検査試薬1を繰り返し強制的に正逆両方向に流動させる。
【0044】
<ステップ8>
次に、液体収容室4内の検査試薬1を、第2収容部22内からピペット32によって吸い取る。
【0045】
<ステップ9>
次に、液体収容室4内に洗浄液(例えば、PBS−0.05%Tween20)を注入した後、第2収容部22内にピペット32を挿入し、第2収容部22内の洗浄液をピペット32によって繰り返し吸引・排出(ピペッティング)することにより、仕切壁23のスリット26を介して第1収容部21内と第2収容部22内とを繰り返し行き来する洗浄液の流れを生じさせ、第1収容部21内の洗浄液を繰り返し強制的に正逆両方向に流動させて第1収容部21内に残る余剰の物質aを洗い流す。その後、液体収容室4内の洗浄液を第2収容部22内からピペット32によって吸い取る。
【0046】
<ステップ10>
次に、物質aを認識する酵素が結合した物質b(例えば、HRP標識ストレプトアビジン)を含む検査試薬2を、液体収容室4内(好ましくは、第1収容部21内)に注入する。
【0047】
<ステップ11>
次に、第2収容部4内にピペット32を挿入し、第2収容部22内の検査試薬2をピペット32によって繰り返し吸引・排出(ピペッティング)することにより、仕切壁23のスリット26を介して第1収容部21内と第2収容部22内とを繰り返し行き来する検査試薬2の流れを生じさせ、第1収容部21内の検査試薬2を繰り返し強制的に正逆両方向に流動させる。
【0048】
<ステップ12>
次に、液体収容室4内の検査試薬2を、第2収容部22内からピペット32によって吸い取る。
【0049】
<ステップ13>
次に、液体収容室4内に洗浄液(例えば、PBS−0.05%Tween20)を注入した後、第2収容部22内にピペット32を挿入し、第2収容部22内の洗浄液をピペット32によって繰り返し吸引・排出(ピペッティング)することにより、仕切壁23のスリット26を介して第1収容部21内と第2収容部22内とを繰り返し行き来する洗浄液の流れを生じさせ、第1収容部21内の洗浄液を繰り返し強制的に正逆両方向に流動させて第1収容部21内に残る余剰物質bを洗い流した後、液体収容室4内の洗浄液を第2収容部22内からピペット32によって吸い取る。
【0050】
<ステップ14>
次に、第1収容部21から基質試薬(例えば発色させるための試薬TMB)を注入し、基質試薬を酵素と反応させて発光させ、第2収容部22内に特定波長の光を照射して、第2収容部22内に収容されている液体の吸光度を測定する。これにより、ビーズ30に捕捉された特定物質の有無、捕捉量を短時間で且つ効率的に調べることができる。
【0051】
(流体取扱装置の操作方法1及び3の応用例)
以下、流体取扱装置の操作方法1及び3の応用例を説明する。
【0052】
本応用例は、操作方法1のステップ1における混合液として、His−tag付Rasタンパク質とRafタンパク質が独立した状態で内在している細胞に刺激(EGF:上皮成長因子)を与えた後、この細胞の可溶性画分をバッファー(PBS)で希釈した混合液を使用し、操作方法1のステップ1〜5を順に実施する。その結果、ビーズ30には、His−tag付Rasタンパク質が短時間で効率的に捕捉され、His−tag付Rasタンパク質とRafタンパク質が結合した状態で固定されている。
【0053】
次に、操作方法3のステップ6における検査試薬1として、Rafタンパク質と結合する抗体(anti−Raf Mouse由来 lgG抗体:物質a)を含む検査試薬1を使用し、操作方法3のステップ6〜9を実施する。
【0054】
次に、操作方法3のステップ10における検査試薬2として、Rafタンパク質と結合する抗体(anti−MouseIgG Seep由来 lgG抗体)を認識するHRP標識二次抗体(物質b)を含む検査試薬2を使用し、操作方法3のステップ10〜13を実施する。
【0055】
次に、操作方法3のステップ14における基質試薬として、発色試薬TMBを使用し、操作方法3のステップ14を実施し、発色試薬TMBと液体収容室内の酵素とを反応させて発光させ、第2収容部内に特定波長(例えば、450nm)の光を照射して、第2収容部内に収容されている液体の吸光度を調べる。この第2収容部内の液体の吸光度合によって、His−tag付Rasタンパク質がどれだけRafタンパク質と結合した状態で存在しているか(刺激によってどれだけ結合したか)を調べることが可能となる。
【0056】
本応用例によれば、特定物質の精製及び検査を短時間で且つ効率的に実施することができる。
【0057】
(装置本体の他の変形例)
図19は、装置本体3の他の変形例を示す断面図であり、図7に示した装置本体3の構成の一部を変更したものの断面図である。なお、図19に示した装置本体3は、図7の装置本体3の構成に対応する部分に図7と同一の符号を付し、図7に示した装置本体3の説明と重複する説明を省略する。
【0058】
この図19に示す装置本体3は、液体収容室4の底部13に、円筒状の仕切壁23の外径寸法よりも小径の貫通穴35が形成されている。仕切壁23の下端部23aには底面部36が一体に形成され、有底筒状の第1収容部材が形成されている。この第1収容部材を、液体収容室4内の小径丸穴部14に嵌合させることで貫通穴35が塞がれる。
【0059】
このような構成の本変形例に係る装置本体3は、図7に示した装置本体3に代えて使用することができる。
【0060】
(本発明に係る流体取扱装置の操作方法の適用例)
本発明に係る流体取扱装置1の操作方法は、ピペットを操作することにより実行することができるため、人間の手に代え、ロボット等の機械によってピペット(液体操作具)を操作することによって、各ステップを自動的に実行することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明による流体取扱装置の実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1の流体取扱装置の枠体と装置本体を示す斜視図である。
【図3】装置本体のボディ部及び鍔部の平面図である。
【図4】図3のX1−X1線に沿って切断して示す断面図である。
【図5】装置本体の部分的分解斜視図である。
【図6】装置本体の部分的平面図である。
【図7】図6のX2−X2線に沿って切断して示す断面図である。
【図8】仕切壁の正面図である。
【図9】図8の仕切壁の縦断面図である。
【図10】図8のX3−X3線に沿って切断して示す断面図である。
【図11】図10に示す仕切壁の変形例を示す断面図である。
【図12】流体取扱装置の液体収容室内にビーズを充填するステップを示す図である。
【図13】図13(a)は装置本体の第1変形例を示す部分的平面図であり、図13(b)は図13(a)のX4−X4線に沿って切断して示す断面図である。
【図14】図14(a)は装置本体の第2変形例を示す部分的平面図であり、図14(b)は図14(a)のX5−X5線に沿って切断して示す断面図である。
【図15】流体取扱装置の操作方法1を説明するためのサンプル取扱状態を示す図である。
【図16】流体取扱装置の操作方法1を説明するための洗浄状態を示す図である。
【図17】液体収容室とピペットとを模式的に示す図である。
【図18】図15のサンプル取扱状態との比較例を示す図である。
【図19】装置本体の他の変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0062】
1……流体取扱装置、3……装置本体(ウェルストリップ)、4……液体収容室(ウェル)、21,21A……第1収容部、22,22A……第2収容部、23……仕切壁、26……スリット、30……ビーズ(粒子:表面積増大部材)、30A……表面積増大部材30A、32……ピペット
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体物質に代表される機能性物質などの試料を分析する試料分析装置として使用可能な流体取扱装置の操作方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、タンパク質などの生体物質を特異的に検出する方法として、特定の生体物質に対する抗体を用いて抗原抗体反応を起こさせ、その反応物を視覚的に認識または分光学的に測定することによってその生体物質を検出する様々な方法が知られている。
【0003】
現在、タンパク質などの生体物質の抗原抗体反応による反応物を定量する方法として、ELISA(Enzyme−Linked ImmunoSorbent Assay)(酵素結合免疫吸着検定法)などの方法が広く採用されている。これらの方法では、一般にマイクロウェル(以下「ウェル」という)と呼ばれる多数の微小凹部の配列が形成されたマイクロウェルプレートと呼ばれる試料分析装置を使用し、目的物質である特定の生体物質に対する抗体を捕体としてウェルの壁面にコートし、この捕体によって目的物質を捕捉し、目的物質と抗体との間の抗原抗体反応による反応物を蛍光や発光試薬などにより測定することによって目的物質を検出する。
【0004】
一般に、ELISAなどのマイクロウェルプレートを用いた方法では、目的物質を含む検体や抗体試薬などの液体を反応液としてウェル内に満たして反応させている。この反応は、ウェル内に満たされた液体中の成分が分子拡散によって移動し、ウェルの底面や内壁に達したときに初めて起こる。そのため、マイクロウェルプレートを静置した場合には、理論的な反応時間は、ウェル内に満たされた液体中の成分の拡散時間に依存している。液体中の分子は、周囲の分子と衝突しながら移動しているため、その拡散の速さは非常に遅く、目的物質が分子量7万程度のタンパク質である場合には、希薄な水溶液の状態(室温)で0.5〜1×10−6cm2/秒程度である。そのため、ウェル内の液体中において、ウェルの底面や内壁から離れた位置にある目的物質は、実用的な測定時間内ではほとんど反応することができない。また、マイクロウェルプレートでは、反応効率を向上させるために、反応部であるウェル内の底面や壁面を反応液と万遍なく接触させることが有効であるので、反応に必要な量の液体に比べて、より多くの量の液体が必要になる。
【0005】
このように、ELISAなどのマイクロウェルプレートを用いた従来の方法では、抗原抗体反応が捕捉用抗体をコートしたウェルの壁面のみで進行するため、ウェルに加えた液体中に含まれる目的物質、抗体、基質などがウェル内で浮遊、還流、沈下してウェルの壁面に到達した後に反応するまで放置しなければならず、反応効率が悪いという問題がある。また、多数のウェルに細分化されているマイクロウェルプレートでは、各々のウェルに加える液体の量が制限されているので、測定感度が低下するという問題もある。
【0006】
また、ELISAなどの方法において測定感度の向上や測定時間の短縮を図るために、反応面(捕捉面)となるウェルの底面に微細な凹凸を設けることによって、反応面の表面積を大きくして測定感度を高めることができるマイクロプレートが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、マイクロチップのマイクロチャネル内に反応固相として固体微粒子(ビーズ)を配置させることにより、反応面の表面積を増大して、微小空間における反応効率を高めることができるマイクロチップも提案されている(例えば、特許文献2参照)。さらに、各ウェルの底面部の中央に小径の凹部を設けることにより、反応面の表面積を増大し且つ試料を節約することができるマイクロプレートも提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
しかしながら、特許文献1に提案されたマイクロプレートは、測定感度を向上させることができるが、反応効率を向上させることができないという問題がある。また、特許文献2に提案されたマイクロチップは、一般にELISAなどの方法に使用されるマイクロウェルプレートではなく、マイクロチャネル構造のマイクロチップであるため、反応効率を向上させることができるものの、多検体の測定に適していない。さらに、特許文献3に提案されたマイクロプレートは、ある程度反応面の表面積を増大して反応効率や測定感度を向上させることができるものの、反応効率や測定感度の向上は十分ではないという問題を有していた。
【0008】
そこで、本願の出願人は、上記のような従来技術の問題を解消するためのものとして、多検体の測定を行う試料分析装置として使用した場合に、簡単な構造で反応効率および測定感度を向上させ且つ反応時間および測定時間を短縮することができる流体取扱装置を既に案出した(特許文献4参照)。
【特許文献1】特開平9−159673号公報(段落番号0009−0010)
【特許文献2】特開2001−4628号公報(段落番号0005−0006)
【特許文献3】特開平9−101302号公報(段落番号0010−0011)
【特許文献4】特開2007−279018号公報(段落番号0007−0009)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、近時、本願の出願人に対し、評価対象となる特定物質の精製、回収、検査を簡単に且つより一層効率的に行うことができる流体取扱装置の操作方法の提供が望まれていた。
【0010】
本発明は、このような要望に応えるために案出されたものであり、ウェル内において液体を強制的に流動させたり、抽出したりすることの可能な流体取扱装置の操作方法を提供することを目的とし、評価対象となる特定物質の精製、回収、検査等を簡単に且つより一層効率的に行うことができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、装置本体に形成された液体収容室に、第1収容部及び第2収容部が形成され、第1収容部内に、特定物質を捕捉することが可能な表面積増大部材を収容してなる流体取扱装置の操作方法に関するものである。この発明の流体取扱装置の操作方法は、(1)前記液体収容室内に、前記特定物質を含む液体を注入した後、(2)前記第2収容部内において、液体の吸引・排出が可能な液体操作具によって前記液体の吸引・排出を繰り返し行うことにより、前記第1収容部と前記第2収容部とを繰り返し行き来する前記液体の流れを生じさせ、前記表面積増大部材と前記液体とを強制的に接触させることによって、前記特定物質を前記表面積増大部材に捕捉する、ことを特徴としている。
【0012】
請求項2の発明は、装置本体に形成された液体収容室に、第1収容部及び第2収容部が形成され、第1収容部内に、特定物質を捕捉することが可能な表面積増大部材を収容してなる流体取扱装置の操作方法に関するものである。この発明の流体取扱装置の操作方法は、(1)前記液体収容室内に、前記特定物質を含む液体を注入した後、(2)前記第2収容部内において、液体の吸引・排出が可能な液体操作具によって前記液体の吸引・排出を繰り返し行うことにより、前記第1収容部と前記第2収容部とを繰り返し行き来する前記液体の流れを生じさせ、前記表面積増大部材と前記液体とを強制的に接触させることによって、前記特定物質を前記表面積増大部材に捕捉し、(3)次に、前記液体収容室内の前記液体収容室内の前記液体を、前記第2収容部内から前記液体操作具によって吸い取り、強制的に排出し、(4)次に、前記第2収容部内から前記液体操作具によって強制的に排出した前記液体から前記特定物質を抽出する、ことを特徴としている。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明に係る流体取扱装置の操作方法において、前記第1収容部及び前記第2収容部が、液体連通路が形成された仕切壁によって仕切られ、前記第1収容部と前記第2収容部が、前記仕切壁の前記液体連通路を介して連通されている、ことを特徴としている。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかの発明に係る流体取扱装置の操作方法において、前記表面積増大部材が、前記液体連通路を通過しない粒径の粒子である、ことを特徴としている。
請求項5の発明は、装置本体に形成された液体収容室を、液体連通路が形成された仕切壁によって第1収容部と第2収容部とに分け、前記第1収容部内に、前記液体連通路を通過しない粒径の特定物質を捕捉可能な粒子を収容してなる流体取扱装置の操作方法に関するものである。この流体取扱装置は、(1)前記液体収容室内に、特定物質とその特定物質以外の物質を含む混合液を注入した後、(2)前記第2収容部内に、液体の吸引・排出が可能な液体操作具を挿入し、(3)前記第2収容部内の前記混合液を前記液体操作具によって繰り返し吸引・排出することにより、前記液体連通路を介して前記第1収容部内と前記第2収容部内とを繰り返し行き来する前記混合液の流れを生じさせ、前記第1収容部内の前記混合液を繰り返し強制的に正逆両方向に流動させて、前記粒子に前記特定物質を捕捉させた後、(4)前記液体収容室内の前記混合液を、前記第2収容部内から前記液体操作具によって吸い取り、(5)前記液体収容室内に、洗浄液を注入した後、(6)前記第2収容部内に、前記液体操作具を挿入し、(7)前記第2収容部内の前記洗浄液を前記液体操作具によって繰り返し吸引・排出することにより、前記液体連通路を介して前記第1収容部内と前記第2収容部内とを繰り返し行き来する前記洗浄液の流れを生じさせ、前記第1収容部内の前記洗浄液を繰り返し強制的に正逆両方向に流動させて、前記第1収容部内に残る残渣を洗い流した後、(8)前記液体収容室内の前記洗浄液を前記第2収容部内から前記液体操作具によって吸い取って洗浄作業を終了し、前記第1収容部内の前記粒子に前記特定物質のみを捕捉させて前記混合液から前記特定物質を抽出することを特徴としている。
【0015】
請求項6の発明は、請求項5の流体取扱装置の操作方法に関し、(9)前記洗浄作業終了後、前記液体収容室内に溶離液を注入し、(10)前記第2収容部内に、前記液体操作具を挿入し、(11)前記第2収容部内の前記溶離液を前記液体操作具によって繰り返し吸引・排出することにより、前記液体連通路を介して前記第1収容部内と前記第2収容部内とを繰り返し行き来する前記溶離液の流れを生じさせ、前記第1収容部内の前記溶離液を繰り返し強制的に正逆両方向に流動させて、前記粒子から前記特定物質を解離させた後、(12)前記液体収容室内の前記溶離液を前記第2収容部内から前記液体操作具によって吸い取って、前記特定物質のみを回収することを特徴としている。
【0016】
請求項7の発明は、請求項5の流体取扱装置の操作方法に関し、(9)前記洗浄作業終了後、前記粒子に捕捉している特定物質又はその特定物質と結合して前記第1収容部内に留まっている物質と反応し得る物質aを含む検査試薬1を、前記液体収容室内に注入し、(10)前記第2収容部内に、前記液体操作具を挿入し、(11)前記第2収容部内の前記検査試薬1を前記液体操作具によって繰り返し吸引・排出することにより、前記液体連通路を介して前記第1収容部内と前記第2収容部内とを繰り返し行き来する前記検査試薬1の流れを生じさせ、前記第1収容部内の前記検査試薬1を繰り返し強制的に正逆両方向に流動させた後、(12)前記液体収容室内の前記検査試薬1を、前記第2収容部内から前記液体操作具によって吸い取り、(13)次に、前記液体収容室内に、洗浄液を注入した後、(14)前記第2収容部内に、前記液体操作具を挿入し、(15)前記第2収容部内の前記洗浄液を前記液体操作具によって繰り返し吸引・排出することにより、前記液体連通路を介して前記第1収容部内と前記第2収容部内とを繰り返し行き来する前記洗浄液の流れを生じさせ、前記第1収容部内の前記洗浄液を繰り返し強制的に正逆両方向に流動させて前記第1収容部内に残る余剰の物質aを洗い流した後、(16)前記液体収容室内の洗浄液を前記第2収容部内から前記液体操作具によって吸い取り、(17)次に、前記物質aを認識する酵素が結合した物質bを含む検査試薬2を、前記液体収容室内に注入し、(18)前記第2収容部内に、前記液体操作具を挿入し、(19)前記第2収容部内の前記検査試薬2を前記液体操作具によって繰り返し吸引・排出することにより、前記液体連通路を介して前記第1収容部内と前記第2収容部内とを繰り返し行き来する前記検査試薬2の流れを生じさせ、前記第1収容部内の前記検査試薬2を繰り返し強制的に正逆両方向に流動させた後、(20)前記液体収容室内の前記検査試薬2を、前記第2収容部内から前記液体操作具によって吸い取り、(21)次に、前記液体収容室内に、洗浄液を注入した後、(22)前記第2収容部内に、前記液体操作具を挿入し、(23)前記第2収容部内の前記洗浄液を前記液体操作具によって繰り返し吸引・排出することにより、前記液体連通路を介して前記第1収容部内と前記第2収容部内とを繰り返し行き来する前記洗浄液の流れを生じさせ、前記第1収容部内の前記洗浄液を繰り返し強制的に正逆両方向に流動させて前記第1収容部内に残る余剰物質bを洗い流した後、(24)前記液体収容室内の洗浄液を前記第2収容部内から前記液体操作具によって吸い取り、(25)次に、前記第1収容部から基質試薬を注入し、前記基質試薬を前記酵素と反応させて発色又は発光させ、前記第2収容部内に収容されている液体の吸光度測定、発光測定、蛍光測定のいずれかを行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、第2収容部内の特定物質を含んだ液体を第2収容部内に挿入した液体操作具によって繰り返し吸引・排出するだけで、第1収容部内の液体を繰り返し強制的に正逆両方向に流動させて、液体を表面積増大部材の表面に万遍なく接触させることができ、特定物質を表面積増大部材の表面に簡単に且つ効率的に捕捉させることができる。
【0018】
また、請求項2の発明によれば、特定物質の精製作業を簡単に且つ効率的に完了させることができる。
【0019】
また、請求項3の発明によれば、液体収容室を仕切壁によって第1収容部と第2収容部とに分けることにより、様々な形態の表面積増大部材を第1収容部内に充填させることができる。
【0020】
また、請求項4の発明によれば、表面積増大部材が粒子であることにより、液体を強制的に流動させた際に粒子が浮遊して、液体と粒子とが接触し易くなる。
【0021】
また、請求項5の発明によれば、特定物質捕捉工程と洗浄工程とを、同一の操作方法によって簡単に且つ効率的に行うことができる。
【0022】
請求項6の発明によれば、特定物質の精製作業を簡単に且つ効率的に完了させることができる結果、特定物質の回収作業も簡単に且つ効率的に行うことができる。
【0023】
請求項7の発明によれば、特定物質の精製作業を簡単に且つ効率的に完了させることができ、精製した特定物質を別の容器に移動させることなくそのまま(流体取扱装置に収容したまま)吸光度測定、発光測定、蛍光測定等の測定を行うことができる。その結果、請求項7の発明は、粒子に捕捉された特定物質の有無、捕捉量等も簡単に且つ効率的に検査又は測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係る流体取扱装置の操作方法を図面に基づき詳述する。
【0025】
(流体取扱装置)
図1〜図2は、本発明に係る流体取扱装置1の実施形態を示す図である。このうち、図1は、流体取扱装置の全体を示す斜視図である。また、図2は、流体取扱装置を分解して示す斜視図である。これらの図に示す本実施形態の流体取扱装置1は、一般にマイクロウェルプレートと呼ばれる多検体の測定を目的とした試料分析装置として使用することができ、枠体2とこの枠体2に着脱可能に組み付けられる装置本体(ウェルストリップ)3とから構成されている(図2参照)。なお、図1に示す流体取扱装置1は、装置本体3が枠体2の長手方向に沿って12列並べて配置され、一列の装置本体3に8個の液体収容室(ウェル)4が形成されており、合計96個の液体収容室4がマトリックス状に配置されているが、これに限られず、装置本体3の1個又は適宜個数のみを枠体2に組み付けるようにしてもよい。
【0026】
図1及び図2に示すように、枠体2は、四側壁5〜8によって取り囲まれる空間(平面形状が矩形形状の空間)10を有しており、ポリスチレン(PS),ポリカーボネート(PC),ポリメタクリル酸メチル(PMMA)などの樹脂材料またはガラス材料により形成されている。なお、枠体2は、例えば、SBS(Society for Biomolecular Screening)規格のマイクロウェルプレート用の枠体のような標準的な規格の枠体を使用してもよい。
【0027】
図2に示すように、装置本体3は、細長い角棒状のボディ部11と、このボディ部11の長手方向両端部の上面側から長手方向へ沿って突出する薄板状の鍔部12,12とを有している。そして、この装置本体3は、ボディ部11を枠体2の空間10内に収容し、鍔部12,12を枠体2の対向する側壁5,7の上面5a,7aに載せることにより、枠体2に着脱可能に組み付けられるようになっている(図1参照)。この装置本体3は、枠体2と同様に、ポリスチレン(PS),ポリカーボネート(PC),ポリメタクリル酸メチル(PMMA)などの樹脂材料またはガラス材料により形成されている。なお、この装置本体3は、蛍光測定に使用する場合、蛍光測定時のバックグラウンドの上昇を抑えるために、光を透過し難い部材(例えば、黒色の部材)で形成することが好ましい。
【0028】
図3及び図4に示すように、装置本体3のボディ部11には、その上方へ向けて開口する有底筒状の凹みである液体収容室4が等間隔で8個形成されている。この液体収容室4は、底部13側に位置する小径丸穴部14と、ボディ部11の上面11a側に位置する大径丸穴部15と、大径丸穴部15から一方向(図6の左方向)へ張り出すように形成された張出凹部16と、を有している。そして、この液体収容室4は、図3及び図7に示すように、大径丸穴部15と小径丸穴部14とが同心円状に形成され、大径丸穴部15と小径丸穴部14との接続部分が大径丸穴部15から小径丸穴部14に向かって斜め下方へ傾斜するテーパ面17になっている。また、液体収容室4の張出凹部16は、図6に示すように、大径丸穴部15からボディ部11の側面11b,11cに沿って延びるように形成された一対の側面16a,16aと、この一対の側面16a,16aの張出端部に略直交する側面16bと、大径丸穴部15に向かって斜め下方へ滑らかに降下する曲面状の傾斜面16cと、を有している(図7参照)。そして、ボディ部11の上面11aにおける液体収容室4の開口縁は、四角形の一辺側を半円形としたような形状に形成されている。このような形状の液体収容室4は、張出凹部16の底面となる部分が大径丸穴部15に向かって斜め下方へ滑らかに降下する曲面状の傾斜面16cであり、大径丸穴部15と小径丸穴部14の接続部分が大径丸穴部15から小径丸穴部14に向かって斜め下方へ傾斜するテーパ面17であるため、張出凹部16から大径丸穴部15を経て小径丸穴部14へ向かって液体が円滑に流れ、また、小径丸穴部14から大径丸穴部15を経て張出凹部16へ向かって液体が円滑に流れるようになっている。
【0029】
図5乃至図7に示すように、装置本体3の液体収容室4には、液体収容室4内を第1収容部(特定物質吸着領域)21と第2収容部(液体操作領域)22とに2分する円筒状の仕切壁23が取り付けられている。仕切壁23は、中空の円筒体であり、その下端部が液体収容室4の小径丸穴部14に嵌合された状態で固定(例えば、接着、溶着、又は圧入で固定)されている。また、この仕切壁23は、図8乃至図10に詳細を示すように、その下端部23aから母線方向へ沿って延びて内部空間24と外部25とを連通するスリット(液体連通路)26が周方向に沿ってほぼ等間隔で複数形成されている。仕切壁23のスリット26は、第1収容部21の下部(仕切壁23の外部に位置する大径丸穴部15の下部)に収容されるビーズ(粒子)30が通過し得ない程度の幅寸法に形成され、大径丸穴部15と拡張凹部16との接続部を越える位置までの長さ寸法に形成されている(図6及び図7参照)。なお、図10に示すように、本実施形態において、仕切壁23には12個のスリット26が形成されている。そして、このスリット26は、図10に示すように、仕切壁23の内部空間24と外部25を放射状に貫通するように形成されているが、これに限られず、図11に示すように、3個の平行なスリット26,26,26を1グループとして、90°の間隔で4グループのスリット26を形成し、これら12個のスリット26で仕切壁23の内部空間24と外部25とを連通するようにしてもよい。
【0030】
図6及び図7に示すように、ビーズ30は、例えば、スリット26の幅寸法を0.2mmとすると、そのスリット26の幅寸法よりも大きな粒径(0.2mmを越える粒径)のものが使用される。このビーズ30は、捕捉する特定物質によって異なる材料のものが使用される。例えば、特定物質がタンパク質の場合には、ビーズ30の材質としてセルロースを選定することができる。また、特定物質が核酸である場合には、ビーズ30の材質としてシリカを選定することができる。なお、本実施形態においては、後述する流体取扱装置の操作方法に関連して、Ni−NTAアガロースビーズが使用されるが、ビーズ30の材質としてこれらの材質に限定されるものではない。
【0031】
そして、このようなビーズ30は、図12に示すように、50%スラリー31の状態でピペット(液体操作具)32に吸引された後(図12(a)参照)、ピペット32によって50%スラリー31の状態で第1収容部21に注入される(図12(b)参照)。第1収容部21内に注入されたスラリー31のビーズ30が第1収容部21内に残留し、スラリー31の液体31aが仕切壁23のスリット26を通過して第2収容部22内に流入する。その後、第2収容部22内に挿入したピペット32によって液体収容室4内の液体31aが吸い取られると(図12(c)参照)、第1収容部21内の下部に多数のビーズ30のみが充填された状態になり(図12(d)参照)、装置本体3が完成する。
【0032】
なお、第1収容部21内に充填される表面積増大部材30Aとしては、本実施形態にて示すビーズ30に限らず、特開昭62−122586号公報に開示されているような多孔性のシート状のものを、複数の層を形成するように筒状に丸めて、図13(a),(b)に示すように第1収容部21内に配置してもよい。また、第1収容部21内に配置する表面積増大部材30Aが一体化された円環形状のものであれば、仕切壁23が形成されていない液体収容室4内に円環形状の表面積増大部材30Aを配置するだけで、第1収容部21Aと第2収容部22Aを形成することができる。
【0033】
(流体取扱装置の操作方法1)
以下、特定物質を精製するための流体取扱装置の操作方法を説明する。
【0034】
<ステップ1>
まず、特定物質(例えば、His−Tag付融合タンパク質)とその特定物質以外の物質を含む混合液(サンプル)33を、ピペット32によって所定量(例えば、200μL)だけ吸引する(図15(a)参照)。
【0035】
<ステップ2>
次に、ピペット32に吸引されたサンプル33が、装置本体3の液体収容室4(好ましくは第1収容部21)内に注入される(図15(b)参照)。
【0036】
<ステップ3>
次に、装置本体3の第2収容部22内にピペット32を挿入し、そのピペット32によってサンプル33の吸引と排出を繰り返す(ピペッティングを行う)。これにより、仕切壁23のスリット26を介して第1収容部21と第2収容部22内を繰り返し行き来するサンプル33の流れが生じ、第1収容部21のサンプル33が繰り返し強制的に正逆両方向に流動させられ、その流動するサンプル33によってビーズ30が第1収容部21の上方へ向けて巻き上げられたり、また、その流動するサンプル33によってビーズ30が第1収容部21の下方へ向けて沈下させられる(図15(c)〜(d)参照)。すなわち、第2収容部22内のピペット32によってサンプル33が吸引された後、その吸引されたサンプル33がピペット32から第2収容部22内に排出されると、第1収容部21の下部から上方へ向かうサンプル33の流れが生じ、第1収容部21の下部に位置するビーズ30がそのサンプル33の流れによって巻き上げられ、ビーズ30の表面にサンプル33が万遍なく接触し、ビーズ30の表面に特定物質が効率的に捕捉される。続いて、第2収容部22内のピペット32によってサンプル33が吸引されると、第1収容部21内の上部から下部へ向かうサンプル33の流れが生じ、巻き上げられたビーズ30が第1収容部21の下部に沈下させられる。このようなピペット32によるサンプル33の吸引・排出が繰り返し行われることにより、特定物質がビーズ30の表面に短時間で効率的に捕捉される。なお、第2収容部22内において、ピペット32によってピペッティングを行う場合には、ピペット32の先端を小径丸穴部14と大径丸穴部15との接続部に近傍に位置させることが好ましい(図7参照)。このようにすれば、ピペット32によるピペッティング時において、第1収容部21内のビーズ30を巻き上げる効果が高く、ビーズ30への特定物質の捕捉が促進される。
【0037】
<ステップ4>
次に、第2収容部22からピペット32によって液体収容室4内のサンプル33を吸い取る。
【0038】
<ステップ5>
次に、ピペット32によって洗浄液34(例えば、PBS−0.05%Tween20を250μl)を液体収容室4内に注入し(図16(a)参照)、第2収容部22内においてピペット32によって洗浄液34の吸引・排出(ピペッティング)を行うことにより、液体収容室4、仕切壁23、及びビーズ30の洗浄を簡単に且つ効率的に行う(図16(b)参照)。次に、液体収容室4内の洗浄液34を第2収容部22内に挿入されたピペット32によって吸い取り、洗浄作業を終了する。これにより、ビーズ30の表面に特定物質のみを捕捉させた状態にすることができ、特定物質の精製作業が終了する。
【0039】
以上のような流体取扱装置1の操作方法1によれば、図18のように、第2収容部22内においてピペット32で吸引したサンプル33を第1収容部21から注入する作業を繰り返す操作方法に比較し(図18(c)〜(d)参照)、短時間で且つ効率的に特定物質を精製することができる。なお、図18(a)〜(b)は、図15(a)〜(b)と同様である。)
(流体取扱装置の操作方法2)
以下、特定物質を回収するための流体取扱装置1の操作方法を図7及び図17に基づき説明する。
【0040】
まず、上述した特定物質の精製作業における洗浄作業が終了した後、液体収容室4内(好ましくは第1収容部21内)に溶離液(例えば、イミダゾール液)を注入し、その溶離液を第2収容部22内に挿入したピペット32によって繰り返し吸引・排出(ピペッティング)することにより、スリット26を介して第1収容部21内と第2収容部22内とを繰り返し行き来する溶離液の流れを生じさせ、第1収容部21内の溶離液を繰り返し強制的に正逆両方向に流動させて、特定物質をビーズ30の表面から簡単に且つ効率的に解離させる。次に、液体収容室4内の溶離液を第2収容部22内に挿入したピペット32によって吸い取って、特定物質のみを回収する。これにより、特定物質の回収作業が終了する。
【0041】
(流体取扱装置の操作方法3)
以下、特定物質を検出するための流体取扱装置の操作方法を図7及び図17に基づき説明する。
【0042】
<ステップ6>
まず、上述した特定物質の精製作業における洗浄作業が終了した後、ビーズ30の表面に捕捉している特定物質又はその特定物質と結合して第1収容部21内に留まっている物質と反応し得る物質a(例えば、ピオチン標識抗体)を含む検査試薬1を、液体収容室4内(好ましくは、第1収容部21内)に注入する。
【0043】
<ステップ7>
次に、第2収容部22内にピペット32を挿入し、第2収容部22内の検査試薬1をピペット32によって繰り返し吸引・排出(ピペッティング)することにより、仕切壁23のスリット26を介して第1収容部21内と第2収容部22内とを繰り返し行き来する検査試薬1の流れを生じさせ、第1収容部21内の検査試薬1を繰り返し強制的に正逆両方向に流動させる。
【0044】
<ステップ8>
次に、液体収容室4内の検査試薬1を、第2収容部22内からピペット32によって吸い取る。
【0045】
<ステップ9>
次に、液体収容室4内に洗浄液(例えば、PBS−0.05%Tween20)を注入した後、第2収容部22内にピペット32を挿入し、第2収容部22内の洗浄液をピペット32によって繰り返し吸引・排出(ピペッティング)することにより、仕切壁23のスリット26を介して第1収容部21内と第2収容部22内とを繰り返し行き来する洗浄液の流れを生じさせ、第1収容部21内の洗浄液を繰り返し強制的に正逆両方向に流動させて第1収容部21内に残る余剰の物質aを洗い流す。その後、液体収容室4内の洗浄液を第2収容部22内からピペット32によって吸い取る。
【0046】
<ステップ10>
次に、物質aを認識する酵素が結合した物質b(例えば、HRP標識ストレプトアビジン)を含む検査試薬2を、液体収容室4内(好ましくは、第1収容部21内)に注入する。
【0047】
<ステップ11>
次に、第2収容部4内にピペット32を挿入し、第2収容部22内の検査試薬2をピペット32によって繰り返し吸引・排出(ピペッティング)することにより、仕切壁23のスリット26を介して第1収容部21内と第2収容部22内とを繰り返し行き来する検査試薬2の流れを生じさせ、第1収容部21内の検査試薬2を繰り返し強制的に正逆両方向に流動させる。
【0048】
<ステップ12>
次に、液体収容室4内の検査試薬2を、第2収容部22内からピペット32によって吸い取る。
【0049】
<ステップ13>
次に、液体収容室4内に洗浄液(例えば、PBS−0.05%Tween20)を注入した後、第2収容部22内にピペット32を挿入し、第2収容部22内の洗浄液をピペット32によって繰り返し吸引・排出(ピペッティング)することにより、仕切壁23のスリット26を介して第1収容部21内と第2収容部22内とを繰り返し行き来する洗浄液の流れを生じさせ、第1収容部21内の洗浄液を繰り返し強制的に正逆両方向に流動させて第1収容部21内に残る余剰物質bを洗い流した後、液体収容室4内の洗浄液を第2収容部22内からピペット32によって吸い取る。
【0050】
<ステップ14>
次に、第1収容部21から基質試薬(例えば発色させるための試薬TMB)を注入し、基質試薬を酵素と反応させて発光させ、第2収容部22内に特定波長の光を照射して、第2収容部22内に収容されている液体の吸光度を測定する。これにより、ビーズ30に捕捉された特定物質の有無、捕捉量を短時間で且つ効率的に調べることができる。
【0051】
(流体取扱装置の操作方法1及び3の応用例)
以下、流体取扱装置の操作方法1及び3の応用例を説明する。
【0052】
本応用例は、操作方法1のステップ1における混合液として、His−tag付Rasタンパク質とRafタンパク質が独立した状態で内在している細胞に刺激(EGF:上皮成長因子)を与えた後、この細胞の可溶性画分をバッファー(PBS)で希釈した混合液を使用し、操作方法1のステップ1〜5を順に実施する。その結果、ビーズ30には、His−tag付Rasタンパク質が短時間で効率的に捕捉され、His−tag付Rasタンパク質とRafタンパク質が結合した状態で固定されている。
【0053】
次に、操作方法3のステップ6における検査試薬1として、Rafタンパク質と結合する抗体(anti−Raf Mouse由来 lgG抗体:物質a)を含む検査試薬1を使用し、操作方法3のステップ6〜9を実施する。
【0054】
次に、操作方法3のステップ10における検査試薬2として、Rafタンパク質と結合する抗体(anti−MouseIgG Seep由来 lgG抗体)を認識するHRP標識二次抗体(物質b)を含む検査試薬2を使用し、操作方法3のステップ10〜13を実施する。
【0055】
次に、操作方法3のステップ14における基質試薬として、発色試薬TMBを使用し、操作方法3のステップ14を実施し、発色試薬TMBと液体収容室内の酵素とを反応させて発光させ、第2収容部内に特定波長(例えば、450nm)の光を照射して、第2収容部内に収容されている液体の吸光度を調べる。この第2収容部内の液体の吸光度合によって、His−tag付Rasタンパク質がどれだけRafタンパク質と結合した状態で存在しているか(刺激によってどれだけ結合したか)を調べることが可能となる。
【0056】
本応用例によれば、特定物質の精製及び検査を短時間で且つ効率的に実施することができる。
【0057】
(装置本体の他の変形例)
図19は、装置本体3の他の変形例を示す断面図であり、図7に示した装置本体3の構成の一部を変更したものの断面図である。なお、図19に示した装置本体3は、図7の装置本体3の構成に対応する部分に図7と同一の符号を付し、図7に示した装置本体3の説明と重複する説明を省略する。
【0058】
この図19に示す装置本体3は、液体収容室4の底部13に、円筒状の仕切壁23の外径寸法よりも小径の貫通穴35が形成されている。仕切壁23の下端部23aには底面部36が一体に形成され、有底筒状の第1収容部材が形成されている。この第1収容部材を、液体収容室4内の小径丸穴部14に嵌合させることで貫通穴35が塞がれる。
【0059】
このような構成の本変形例に係る装置本体3は、図7に示した装置本体3に代えて使用することができる。
【0060】
(本発明に係る流体取扱装置の操作方法の適用例)
本発明に係る流体取扱装置1の操作方法は、ピペットを操作することにより実行することができるため、人間の手に代え、ロボット等の機械によってピペット(液体操作具)を操作することによって、各ステップを自動的に実行することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明による流体取扱装置の実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1の流体取扱装置の枠体と装置本体を示す斜視図である。
【図3】装置本体のボディ部及び鍔部の平面図である。
【図4】図3のX1−X1線に沿って切断して示す断面図である。
【図5】装置本体の部分的分解斜視図である。
【図6】装置本体の部分的平面図である。
【図7】図6のX2−X2線に沿って切断して示す断面図である。
【図8】仕切壁の正面図である。
【図9】図8の仕切壁の縦断面図である。
【図10】図8のX3−X3線に沿って切断して示す断面図である。
【図11】図10に示す仕切壁の変形例を示す断面図である。
【図12】流体取扱装置の液体収容室内にビーズを充填するステップを示す図である。
【図13】図13(a)は装置本体の第1変形例を示す部分的平面図であり、図13(b)は図13(a)のX4−X4線に沿って切断して示す断面図である。
【図14】図14(a)は装置本体の第2変形例を示す部分的平面図であり、図14(b)は図14(a)のX5−X5線に沿って切断して示す断面図である。
【図15】流体取扱装置の操作方法1を説明するためのサンプル取扱状態を示す図である。
【図16】流体取扱装置の操作方法1を説明するための洗浄状態を示す図である。
【図17】液体収容室とピペットとを模式的に示す図である。
【図18】図15のサンプル取扱状態との比較例を示す図である。
【図19】装置本体の他の変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0062】
1……流体取扱装置、3……装置本体(ウェルストリップ)、4……液体収容室(ウェル)、21,21A……第1収容部、22,22A……第2収容部、23……仕切壁、26……スリット、30……ビーズ(粒子:表面積増大部材)、30A……表面積増大部材30A、32……ピペット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体に形成された液体収容室に、第1収容部及び第2収容部が形成され、第1収容部内に、特定物質を捕捉することが可能な表面積増大部材を収容してなる流体取扱装置の操作方法において、
前記液体収容室内に、前記特定物質を含む液体を注入した後、
前記第2収容部内において、液体の吸引・排出が可能な液体操作具によって前記液体の吸引・排出を繰り返し行うことにより、前記第1収容部と前記第2収容部とを繰り返し行き来する前記液体の流れを生じさせ、前記表面積増大部材と前記液体とを強制的に接触させることによって、前記特定物質を前記表面積増大部材に捕捉する、
ことを特徴とする流体取扱装置の操作方法。
【請求項2】
装置本体に形成された液体収容室に、第1収容部及び第2収容部が形成され、第1収容部内に、特定物質を捕捉することが可能な表面積増大部材を収容してなる流体取扱装置の操作方法において、
前記液体収容室内に、前記特定物質を含む液体を注入した後、
前記第2収容部内において、液体の吸引・排出が可能な液体操作具によって前記液体の吸引・排出を繰り返し行うことにより、前記第1収容部と前記第2収容部とを繰り返し行き来する前記液体の流れを生じさせ、前記表面積増大部材と前記液体とを強制的に接触させることによって、前記特定物質を前記表面積増大部材に捕捉し、
次に、前記液体収容室内の前記液体収容室内の前記液体を、前記第2収容部内から前記液体操作具によって吸い取り、強制的に排出し、
次に、前記第2収容部内から前記液体操作具によって強制的に排出した前記液体から前記特定物質を抽出する、
ことを特徴とする流体取扱装置の操作方法。
【請求項3】
前記第1収容部及び前記第2収容部が、液体連通路が形成された仕切壁によって仕切られ、
前記第1収容部と前記第2収容部が、前記仕切壁の前記液体連通路を介して連通されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の流体取扱装置の操作方法。
【請求項4】
前記表面積増大部材が、前記液体連通路を通過しない粒径の粒子である、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の流体取扱装置の操作方法。
【請求項5】
装置本体に形成された液体収容室を、液体連通路が形成された仕切壁によって第1収容部と第2収容部とに分け、前記第1収容部内に、前記液体連通路を通過しない粒径の特定物質を捕捉可能な粒子を収容してなる流体取扱装置の操作方法において、
前記液体収容室内に、特定物質とその特定物質以外の物質を含む混合液を注入した後、
前記第2収容部内に、液体の吸引・排出が可能な液体操作具を挿入し、
前記第2収容部内の前記混合液を前記液体操作具によって繰り返し吸引・排出することにより、前記液体連通路を介して前記第1収容部内と前記第2収容部内とを繰り返し行き来する前記混合液の流れを生じさせ、前記第1収容部内の前記混合液を繰り返し強制的に正逆両方向に流動させて、前記粒子に前記特定物質を捕捉させた後、
前記液体収容室内の前記混合液を、前記第2収容部内から前記液体操作具によって吸い取り、
前記液体収容室内に、洗浄液を注入した後、
前記第2収容部内に、前記液体操作具を挿入し、
前記第2収容部内の前記洗浄液を前記液体操作具によって繰り返し吸引・排出することにより、前記液体連通路を介して前記第1収容部内と前記第2収容部内とを繰り返し行き来する前記洗浄液の流れを生じさせ、前記第1収容部内の前記洗浄液を繰り返し強制的に正逆両方向に流動させて、前記第1収容部内に残る残渣を洗い流した後、
前記液体収容室内の前記洗浄液を前記第2収容部内から前記液体操作具によって吸い取って洗浄作業を終了し、前記第1収容部内の前記粒子に前記特定物質のみを捕捉させて前記混合液から前記特定物質を抽出する、
ことを特徴とする流体取扱装置の操作方法。
【請求項6】
前記洗浄作業終了後、前記液体収容室内に溶離液を注入し、
前記第2収容部内に、前記液体操作具を挿入し、
前記第2収容部内の前記溶離液を前記液体操作具によって繰り返し吸引・排出することにより、前記液体連通路を介して前記第1収容部内と前記第2収容部内とを繰り返し行き来する前記溶離液の流れを生じさせ、前記第1収容部内の前記溶離液を繰り返し強制的に正逆両方向に流動させて、前記粒子から前記特定物質を解離させた後、
前記液体収容室内の前記溶離液を前記第2収容部内から前記液体操作具によって吸い取って、前記特定物質のみを回収する、
ことを特徴とする請求項5記載の流体取扱装置の操作方法。
【請求項7】
前記洗浄作業終了後、前記粒子に捕捉されている特定物質又はその特定物質と結合して前記第1収容部内に留まっている物質と反応し得る物質aを含む検査試薬1を、前記液体収容室内に注入し、
前記第2収容部内に、前記液体操作具を挿入し、
前記第2収容部内の前記検査試薬1を前記液体操作具によって繰り返し吸引・排出することにより、前記液体連通路を介して前記第1収容部内と前記第2収容部内とを繰り返し行き来する前記検査試薬1の流れを生じさせ、前記第1収容部内の前記検査試薬1を繰り返し強制的に正逆両方向に流動させた後、
前記液体収容室内の前記検査試薬1を、前記第2収容部内から前記液体操作具によって吸い取り、
次に、前記液体収容室内に、洗浄液を注入した後、
前記第2収容部内に、前記液体操作具を挿入し、
前記第2収容部内の前記洗浄液を前記液体操作具によって繰り返し吸引・排出することにより、前記液体連通路を介して前記第1収容部内と前記第2収容部内とを繰り返し行き来する前記洗浄液の流れを生じさせ、前記第1収容部内の前記洗浄液を繰り返し強制的に正逆両方向に流動させて前記第1収容部内に残る余剰の物質aを洗い流した後、
前記液体収容室内の洗浄液を前記第2収容部内から前記液体操作具によって吸い取り、
次に、前記物質aを認識する酵素が結合した物質bを含む検査試薬2を、前記液体収容室内に注入し、
前記第2収容部内に、前記液体操作具を挿入し、
前記第2収容部内の前記検査試薬2を前記液体操作具によって繰り返し吸引・排出することにより、前記液体連通路を介して前記第1収容部内と前記第2収容部内とを繰り返し行き来する前記検査試薬2の流れを生じさせ、前記第1収容部内の前記検査試薬2を繰り返し強制的に正逆両方向に流動させた後、
前記液体収容室内の前記検査試薬2を、前記第2収容部内から前記液体操作具によって吸い取り、
次に、前記液体収容室内に、洗浄液を注入した後、
前記第2収容部内に、前記液体操作具を挿入し、
前記第2収容部内の前記洗浄液を前記液体操作具によって繰り返し吸引・排出することにより、前記液体連通路を介して前記第1収容部内と前記第2収容部内とを繰り返し行き来する前記洗浄液の流れを生じさせ、前記第1収容部内の前記洗浄液を繰り返し強制的に正逆両方向に流動させて前記第1収容部内に残る余剰物質bを洗い流した後、
前記液体収容室内の洗浄液を前記第2収容部内から前記液体操作具によって吸い取り、
次に、前記第1収容部から基質試薬を注入し、前記基質試薬を前記酵素と反応させて発色又は発光させ、前記第2収容部内に収容されている液体の吸光度測定、発光測定、蛍光測定のいずれかを行う、
ことを特徴とする請求項5記載の流体取扱装置の操作方法。
【請求項1】
装置本体に形成された液体収容室に、第1収容部及び第2収容部が形成され、第1収容部内に、特定物質を捕捉することが可能な表面積増大部材を収容してなる流体取扱装置の操作方法において、
前記液体収容室内に、前記特定物質を含む液体を注入した後、
前記第2収容部内において、液体の吸引・排出が可能な液体操作具によって前記液体の吸引・排出を繰り返し行うことにより、前記第1収容部と前記第2収容部とを繰り返し行き来する前記液体の流れを生じさせ、前記表面積増大部材と前記液体とを強制的に接触させることによって、前記特定物質を前記表面積増大部材に捕捉する、
ことを特徴とする流体取扱装置の操作方法。
【請求項2】
装置本体に形成された液体収容室に、第1収容部及び第2収容部が形成され、第1収容部内に、特定物質を捕捉することが可能な表面積増大部材を収容してなる流体取扱装置の操作方法において、
前記液体収容室内に、前記特定物質を含む液体を注入した後、
前記第2収容部内において、液体の吸引・排出が可能な液体操作具によって前記液体の吸引・排出を繰り返し行うことにより、前記第1収容部と前記第2収容部とを繰り返し行き来する前記液体の流れを生じさせ、前記表面積増大部材と前記液体とを強制的に接触させることによって、前記特定物質を前記表面積増大部材に捕捉し、
次に、前記液体収容室内の前記液体収容室内の前記液体を、前記第2収容部内から前記液体操作具によって吸い取り、強制的に排出し、
次に、前記第2収容部内から前記液体操作具によって強制的に排出した前記液体から前記特定物質を抽出する、
ことを特徴とする流体取扱装置の操作方法。
【請求項3】
前記第1収容部及び前記第2収容部が、液体連通路が形成された仕切壁によって仕切られ、
前記第1収容部と前記第2収容部が、前記仕切壁の前記液体連通路を介して連通されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の流体取扱装置の操作方法。
【請求項4】
前記表面積増大部材が、前記液体連通路を通過しない粒径の粒子である、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の流体取扱装置の操作方法。
【請求項5】
装置本体に形成された液体収容室を、液体連通路が形成された仕切壁によって第1収容部と第2収容部とに分け、前記第1収容部内に、前記液体連通路を通過しない粒径の特定物質を捕捉可能な粒子を収容してなる流体取扱装置の操作方法において、
前記液体収容室内に、特定物質とその特定物質以外の物質を含む混合液を注入した後、
前記第2収容部内に、液体の吸引・排出が可能な液体操作具を挿入し、
前記第2収容部内の前記混合液を前記液体操作具によって繰り返し吸引・排出することにより、前記液体連通路を介して前記第1収容部内と前記第2収容部内とを繰り返し行き来する前記混合液の流れを生じさせ、前記第1収容部内の前記混合液を繰り返し強制的に正逆両方向に流動させて、前記粒子に前記特定物質を捕捉させた後、
前記液体収容室内の前記混合液を、前記第2収容部内から前記液体操作具によって吸い取り、
前記液体収容室内に、洗浄液を注入した後、
前記第2収容部内に、前記液体操作具を挿入し、
前記第2収容部内の前記洗浄液を前記液体操作具によって繰り返し吸引・排出することにより、前記液体連通路を介して前記第1収容部内と前記第2収容部内とを繰り返し行き来する前記洗浄液の流れを生じさせ、前記第1収容部内の前記洗浄液を繰り返し強制的に正逆両方向に流動させて、前記第1収容部内に残る残渣を洗い流した後、
前記液体収容室内の前記洗浄液を前記第2収容部内から前記液体操作具によって吸い取って洗浄作業を終了し、前記第1収容部内の前記粒子に前記特定物質のみを捕捉させて前記混合液から前記特定物質を抽出する、
ことを特徴とする流体取扱装置の操作方法。
【請求項6】
前記洗浄作業終了後、前記液体収容室内に溶離液を注入し、
前記第2収容部内に、前記液体操作具を挿入し、
前記第2収容部内の前記溶離液を前記液体操作具によって繰り返し吸引・排出することにより、前記液体連通路を介して前記第1収容部内と前記第2収容部内とを繰り返し行き来する前記溶離液の流れを生じさせ、前記第1収容部内の前記溶離液を繰り返し強制的に正逆両方向に流動させて、前記粒子から前記特定物質を解離させた後、
前記液体収容室内の前記溶離液を前記第2収容部内から前記液体操作具によって吸い取って、前記特定物質のみを回収する、
ことを特徴とする請求項5記載の流体取扱装置の操作方法。
【請求項7】
前記洗浄作業終了後、前記粒子に捕捉されている特定物質又はその特定物質と結合して前記第1収容部内に留まっている物質と反応し得る物質aを含む検査試薬1を、前記液体収容室内に注入し、
前記第2収容部内に、前記液体操作具を挿入し、
前記第2収容部内の前記検査試薬1を前記液体操作具によって繰り返し吸引・排出することにより、前記液体連通路を介して前記第1収容部内と前記第2収容部内とを繰り返し行き来する前記検査試薬1の流れを生じさせ、前記第1収容部内の前記検査試薬1を繰り返し強制的に正逆両方向に流動させた後、
前記液体収容室内の前記検査試薬1を、前記第2収容部内から前記液体操作具によって吸い取り、
次に、前記液体収容室内に、洗浄液を注入した後、
前記第2収容部内に、前記液体操作具を挿入し、
前記第2収容部内の前記洗浄液を前記液体操作具によって繰り返し吸引・排出することにより、前記液体連通路を介して前記第1収容部内と前記第2収容部内とを繰り返し行き来する前記洗浄液の流れを生じさせ、前記第1収容部内の前記洗浄液を繰り返し強制的に正逆両方向に流動させて前記第1収容部内に残る余剰の物質aを洗い流した後、
前記液体収容室内の洗浄液を前記第2収容部内から前記液体操作具によって吸い取り、
次に、前記物質aを認識する酵素が結合した物質bを含む検査試薬2を、前記液体収容室内に注入し、
前記第2収容部内に、前記液体操作具を挿入し、
前記第2収容部内の前記検査試薬2を前記液体操作具によって繰り返し吸引・排出することにより、前記液体連通路を介して前記第1収容部内と前記第2収容部内とを繰り返し行き来する前記検査試薬2の流れを生じさせ、前記第1収容部内の前記検査試薬2を繰り返し強制的に正逆両方向に流動させた後、
前記液体収容室内の前記検査試薬2を、前記第2収容部内から前記液体操作具によって吸い取り、
次に、前記液体収容室内に、洗浄液を注入した後、
前記第2収容部内に、前記液体操作具を挿入し、
前記第2収容部内の前記洗浄液を前記液体操作具によって繰り返し吸引・排出することにより、前記液体連通路を介して前記第1収容部内と前記第2収容部内とを繰り返し行き来する前記洗浄液の流れを生じさせ、前記第1収容部内の前記洗浄液を繰り返し強制的に正逆両方向に流動させて前記第1収容部内に残る余剰物質bを洗い流した後、
前記液体収容室内の洗浄液を前記第2収容部内から前記液体操作具によって吸い取り、
次に、前記第1収容部から基質試薬を注入し、前記基質試薬を前記酵素と反応させて発色又は発光させ、前記第2収容部内に収容されている液体の吸光度測定、発光測定、蛍光測定のいずれかを行う、
ことを特徴とする請求項5記載の流体取扱装置の操作方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2010−38596(P2010−38596A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−199156(P2008−199156)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【出願人】(000208765)株式会社エンプラス (403)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【出願人】(000208765)株式会社エンプラス (403)
【Fターム(参考)】
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