説明

流体圧シリンダ

【課題】流量調整弁等を利用しなくても、ワークに作用する慣性力を抑え、これによってワークの位置決め精度を高めることができると共に、ピストンのストローク長を維持した状態で全長を短縮することができる流体圧シリンダを提供する。
【解決手段】流体圧シリンダ10は、シリンダチューブ12の先端開口部を閉塞するカラー部材18と、シリンダチューブ12の後端開口部に挿入された状態で該後端開口部を閉塞するエンドプレート22と、シリンダチューブ12の内周面に開口して圧力流体が流通する第1ポート28と第2ポート30と、を備える。エンドプレート22の外周内縁には、環状溝87が形成され、ピストン14は、エンドプレート22に接触することにより前記環状溝87との間で空間S2を形成すると共に、前記第2ポート30のシリンダチューブ12内側の開口部を最大90%まで閉塞する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力流体の作用下にピストンを軸線方向に沿って変位させる流体圧シリンダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ワーク等の搬送手段として、位置決め及び種々の産業機械を駆動する駆動手段として流体圧シリンダが広汎に用いられている。
【0003】
一般的に、流体圧シリンダは、流体供給ポートから供給される圧力流体によってシリンダチューブ内に設けられたピストンが軸線方向に沿って変位し、前記ピストンに連結されたピストンロッドを介してワークの搬送、位置決め等を行っている(特許文献1参照)。
【0004】
この種のシリンダに関し、近年では、流体圧シリンダの小型化、特に、ピストン(ピストンロッド)のストローク長を維持した状態で流体圧シリンダの軸線方向の長さ(流体圧シリンダの全長)を短縮することが希求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−240936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に係る流体圧シリンダでは、ピストンの変位開始時及び停止時にワークに対して慣性力が作用する。そのため、ワークの種類等によっては、該慣性力によって前記ピストンロッドに対する前記ワークの位置がずれてワークの位置決め精度が低下する可能性がある。
【0007】
この種の不都合を克服するために、流量調整弁が用いられることがある。すなわち、ピストンの変位開始動作や停止動作を行う際に、流量調整弁によってシリンダチューブ内への圧力流体の流入量やシリンダチューブからの圧力流体の流出量を調整することにより、ワークに作用する慣性力を抑えることができる。
【0008】
しかし、流量調整弁を組み込むこと自体コストが掛かる上に、該流量調整弁等の制御が煩雑になるおそれがある。
【0009】
本発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、流量調整弁等を利用しなくても、ワークに作用する慣性力を抑え、これによってワークの位置決め精度を高めることができると共に、ピストンのストローク長を維持した状態で全長を短縮することができる流体圧シリンダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願の請求項1で特定される発明は、シリンダチューブ内に変位可能に設けられたピストンと、前記ピストンに連結されたピストンロッドと、前記ピストンロッドが挿通された状態で前記シリンダチューブの一端開口部を閉塞する第1閉塞部材と、前記シリンダチューブの他端開口部に挿入された状態で該他端開口部を閉塞する第2閉塞部材と、前記シリンダチューブの内周面に開口して圧力流体が流通する第1ポートと第2ポートと、を備えた流体圧シリンダであって、前記第1閉塞部材の内端面には、前記シリンダチューブの軸線方向に沿って前記ピストンに向けて突出する円形状凸部が形成され、前記ピストンには、前記円形状凸部が外嵌可能な凹部が形成され、前記第2閉塞部材の内周縁部には、環状溝が形成され、前記ピストンは、前記第2閉塞部材に接触することにより前記環状溝との間で受圧室を形成すると共に、前記第2ポートのシリンダチューブ内側の開口部を最大90%まで閉塞することを特徴とする。
【0011】
本願の請求項1で特定される発明によれば、ピストンが第2閉塞部材に接触した状態で、例えば、圧力流体供給源から第2ポートに圧力流体を供給すると、該圧力流体は、前記第2ポートのシリンダチューブ内側の開口部にて適度の流量に絞られて受圧室に流入されることとなる。これにより、該受圧室への圧力流体の流入量を好適に少なくすることができるので、ピストンの加速度を小さくすることができる。よって、前記ピストンの第1閉塞部材側への変位開始動作時に、流量調整弁等を利用しなくても、ワークに作用する慣性力を抑えることができる。
【0012】
また、前記第2ポートから導かれた圧力流体の作用下でピストンが第1閉塞部材側に変位すると、前記第1閉塞部材の円形状凸部が前記ピストンの凹部に外嵌される。これにより、第1ポートに導かれる流体(圧力流体)は、前記円形状凸部と前記凹部の隙間で絞られるので、前記第1閉塞部材と前記ピストンの間に存在する流体の圧力が高まり、該ピストンが減速することとなる。よって、ピストンの第1閉塞部材側での停止動作時に、流量調整弁を利用しなくても、ワークに作用する慣性力を抑えることができる。
【0013】
さらに、前記第1ポートから導かれた圧力流体の作用下で前記ピストンが第2閉塞部材側に変位すると、前記第2ポートのシリンダチューブ内側の開口部は、ピストンによって徐々に覆われることとなる。これにより、前記第2ポートに導かれる流体(圧力流体)は、該開口部で絞られるので、前記第2閉塞部材と前記ピストンの間に存在する流体の圧力が高まり、該ピストンが徐々に減速することとなる。よって、ピストンの第2閉塞部材側での停止動作時に、流量調整弁を利用しなくても、ワークに作用する慣性力を抑えることができる。
【0014】
さらにまた、第1閉塞部材に形成された円形状凸部がピストンに形成された凹部に外嵌可能となっているので、該ピストンのストローク長を維持した状態で流体圧シリンダの全長が短縮される。
【0015】
本願の請求項2で特定される発明は、請求項1記載の流体圧シリンダにおいて、前記ピストンは、前記円形状凸部に接触することにより前記第1閉塞部材との間で受圧室を形成すると共に、前記第1ポートの前記シリンダチューブ内側の開口部を最大90%まで閉塞することを特徴とする。
【0016】
本願の請求項2で特定される発明によれば、ピストンの第2閉塞部材側への変位開始動作時に、流量調整弁を利用しなくても、ワークに作用する慣性力を抑えることができる。また、前記第2ポートからシリンダチューブ内に流入される圧力流体の作用下でピストンが第1閉塞部材側に変位した際に、前記第1ポートの開口部が前記ピストンによって徐々に覆われることとなるので、前記ピストンの第1閉塞部材側での停止動作時に、ワークに作用する慣性力をさらに抑えることができる。
【0017】
本願の請求項3で特定される発明は、請求項2記載の流体圧シリンダにおいて、前記ピストンは、前記第2閉塞部材に接触した状態で、前記第2ポートの前記シリンダチューブ内側の開口部を70%閉塞し、前記円形状凸部に接触した状態で、前記第1ポートの前記シリンダチューブ内側の開口部を70%閉塞することを特徴とする。
【0018】
本願の請求項3で特定される発明によれば、ピストンが第2閉塞部材に接触した状態で、第2ポートのシリンダチューブ内側の開口部の30%が受圧室に連通し、前記ピストンが円形状凸部に接触した状態で、第1ポートのシリンダチューブ内側の開口部の30%が受圧室に連通するので、流体圧シリンダの軸方向の長さを可及的に少なくして一層の小型化に資すると共に、グリス等の異物が連通部位に閉塞することを防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明によれば、圧力流体供給源から第2ポートに導かれた圧力流体が該第2ポートのシリンダチューブ内側の開口部にて適度の流量に絞られて受圧室に流入されるので、ピストンの第1閉塞部材側への変位開始動作時に、該ピストンの加速度を小さくすることができる。また、前記ピストンの第1閉塞部材側での停止動作時に、円形状凸部と凹部の隙間で第1ポートに導かれる流体が絞られるので、該ピストンを減速させることができる。さらに、前記ピストンの第2閉塞部材側での停止動作時に、該ピストンによって第2ポートのシリンダチューブ内側の開口部が徐々に覆われるので、該ピストンを徐々に減速させることができる。すなわち、流量調整弁等を利用しなくても、ワークに作用する慣性力を抑えることができ、これによってワークの位置決めを高精度に行うことができる。なお、前記円形状凸部が前記凹部に外嵌可能となっているので、ピストンのストロークを維持した状態で流体圧シリンダの全長を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る流体圧シリンダの外観斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿った断面図である。
【図3】本発明に係る流体圧シリンダの分解断面図である。
【図4】図2のIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】ピストンがロッドエンド側に変位した状態を示す断面図である。
【図6】本発明の変形例に係る流体圧シリンダの断面図である。
【図7】図6に示す流体圧シリンダにおいてピストンがロッドエンド側に変位した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る流体圧シリンダについて好適な実施形態を例示し、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
図1及び図2に示すように、流体圧シリンダ10は、略直方体状に形成された筒状のシリンダチューブ12と、前記シリンダチューブ12内に摺動可能に設けられたピストン14と、前記ピストン14に連結されたピストンロッド16と、前記シリンダチューブ12の先端開口部(矢印X1方向の開口部)を閉塞するカラー部材(第1閉塞部材)18と、前記カラー部材18の矢印X1方向の移動を阻止するための止め輪20と、前記シリンダチューブ12の後端開口部(矢印X2方向の開口部)を閉塞するエンドプレート(第2閉塞部材)22とを備える。
【0023】
前記カラー部材18の内端面、エンドプレート22の内端面、及び、シリンダチューブ12の内周面によってシリンダ室24が形成されることとなる(図2参照)。カラー部材18の構造については追って説明する。
【0024】
シリンダチューブ12は、例えば、アルミニウム合金等の金属材料で構成され、その外周面には、ピストン14の位置を検出可能な不図示のセンサ(磁気センサ)が装着される複数(図1では8個)のセンサ溝26がシリンダチューブ12の軸線方向(矢印X方向)に沿って延在している。
【0025】
図2及び図3に示すように、シリンダチューブ12には、中央よりやや矢印X1方向寄りに位置する第1ポート28と、矢印X2方向の端部近傍に位置する第2ポート30とが形成されている。
【0026】
第1ポート28は、螺子溝が刻設された第1接続孔32と、前記第1接続孔32に連通すると共にシリンダチューブ12の内周面に開口する第1連通孔34とを有している。なお、第1接続孔32と第1連通孔34それぞれの中心線は略一致している。
【0027】
第2ポート30は、螺子溝が刻設された第2接続孔36と、前記第2接続孔36に連通すると共にシリンダチューブ12の内周面に開口する第2連通孔38を有している。なお、前記第2連通孔38の中心線は、第2接続孔36の中心線よりも矢印X2方向にオフセットしている。
【0028】
第2接続孔36の大きさは、第1接続孔32の大きさと略同一に設定され、第2連通孔38の大きさは、第1連通孔34の大きさと略同一に設定されている。この場合、第1接続孔32、第2接続孔36には、図示しない外部機器が接続され、例えば、圧縮エア等の圧力流体の流通に資する。
【0029】
シリンダチューブ12の内周面のうち、矢印X1方向の端部には、カラー部材18装着用の第1溝部40と、止め輪20装着用の第2溝部42がそれぞれ環状に形成されている。止め輪20はC字状であり、カラー部材18の軸方向の移動を阻止するために用いられる。
【0030】
また、シリンダチューブ12の内周面のうち、矢印X2方向の端部には、エンドプレート22装着用の第3溝部44が環状に形成されている。なお、第1及び第3溝部40、44の溝深さは、略同一に設定されている。
【0031】
ピストン14は、矢印X方向に変位可能な状態でシリンダ室24内に設けられている。これにより、シリンダ室24は、第1ポート28に連通する第1シリンダ室24aと、第2ポート30に連通する第2シリンダ室24b(図5参照)とに分割される。
【0032】
また、ピストン14は、円板状に形成されたピストン本体48と、前記ピストン本体48の一方の端面(背面)からカラー部材18側に突出した環状凸部50とを含む。
【0033】
前記ピストン本体48の外周縁は面取りされると共にその略中央部には、軸線に沿って貫通孔52が形成されている。
【0034】
該貫通孔52には、ピストンロッド16の一端部が挿通されピストン本体48とピストンロッド16とが一体化される。前記ピストンロッド16の他端部は、カラー部材18を貫通してシリンダチューブ12の外方に延在する。なお、ピストン本体48に設けられた環状溝54に樹脂等で構成されたピストンパッキン56が装着され、環状凸部50に設けられた環状溝58に磁性体60が装着される。前記磁性体60は、第1連通孔34を閉塞しない位置に設けられている。前記環状凸部50の形成によってピストン本体48の一端部側に凹部62が形成されることになる。
【0035】
カラー部材18は、例えば、アルミニウム合金等の金属材料で構成され、その軸心に沿ってピストンロッド16が貫通する挿通孔64が形成されている。
【0036】
前記挿通孔64は止め輪20側で拡径して、環状溝66が形成され、この環状溝66に樹脂等で構成されたロッドパッキン68が装着されている。一方、挿通孔64のエンドプレート22側には、カラー部材18に潤滑油を貯留するためのオイルポケット70が形成されている。
【0037】
前記のように構成されるカラー部材18は、シリンダチューブ12の第1溝部40に装着される大径部72と、シリンダチューブ12の内周面に接触する中径部74と、前記中径部74に連設されてピストン14の凹部62に嵌合する小径部(円形状凸部)76とを含む。
【0038】
この場合、小径部76の直径は前記凹部62の直径よりも若干小さく、しかも該小径部76の軸方向の長さは前記凹部62の深さよりも長い。なお、カラー部材18に設けられた環状溝78に樹脂等で構成されたOリング80が装着される。
【0039】
エンドプレート22は、例えば、アルミニウム合金等の金属材料で構成され、上述した第3溝部44に装着されるエンドプレート本体84と、エンドプレート本体84の一端面からカラー部材18側に突出する第1突出部86と、エンドプレート本体84の他端面から外方へと突出する第2突出部88とを含む。なお、エンドプレート本体84、第1突出部86、及び、第2突出部88は、一体的に形成されるものであって全体としてディスク状である。
【0040】
また、エンドプレート22は、シリンダチューブ12の後端開口部を介して該シリンダチューブ12内に挿入配置された状態で、該シリンダチューブ12の一端部を加締めることにより固定される。このとき、シリンダチューブ12には、第3溝部44よりも半径方向内側に突出した張出部92が環状に形成される。そして、図5から諒解されるように、第2突出部88の外周面と張出部92の間には、隙間Aが形成される。
【0041】
第1突出部86の形成によって、エンドプレート本体84の一端面に環状溝87が形成され、第2突出部88の形成によって、前記エンドプレート本体84の他端面に環状溝89が形成される。
【0042】
第1及び第2突出部86、88の外径は、任意に設定可能である。本実施形態では、例えば、第1突出部86の外径は小径部76の外径と略同一に設定され、第2突出部88の外径はシリンダチューブ12の内径よりも小さく且つ前記第1突出部86の外径よりも大きく設定されている。
【0043】
第1突出部86の軸方向の突出量は、第2連通孔38の孔径よりも小さく設定されている。具体的には、第1突出部86の突出量は、例えば、第2連通孔38の内径の1/3程度の大きさに設定される。例えば、第1突出部86の突出量は、小径部76の突出量と環状凸部50の突出量の差と略同一の大きさに設定することが好ましい。なお、第2突出部88の突出量は、任意に設定可能であるが、製品完成時にシリンダチューブ12の端面12aと面一になる程度の突出量であり、詳しくは、第2突出部88の突出量は、製品完成時に該第2突出部88の外端面88aが前記シリンダチューブ12の端面12aよりも若干内側(ピストン14側)に位置するような突出量であるのが好ましい。
【0044】
以上のように構成される流体圧シリンダ10では、ピストン14がカラー部材18を構成する小径部76の内端面に接触した状態(図5の状態:以下、第1の状態と呼ぶことがある。)で、中径部74の内端面、小径部76の外周面、ピストン本体48の背面、環状凸部50の内周面、環状凸部50の内端面、及び、シリンダチューブ12の内周面で囲まれた領域に空間(受圧室)S1が形成されることとなる。
【0045】
そして、図4に示すように、第1連通孔34は、ピストン14の外周面に臨むと共に、ピストン14の外周面によって最大90%まで閉塞される。これにより、空間S1(シリンダ室24a)への圧力流体の流入量やシリンダ室24aからの圧力流体の流出量を第1連通孔34の開口部で適度に絞ることができる。
【0046】
好ましくは、第1連通孔34は、ピストン14の外周面によって70%閉塞されるのがよい。これにより、第1の状態で、第1連通孔34の開口部の30%が空間S1に連通するので、流体圧シリンダ10の軸方向の長さを可及的に少なくして一層の小型化に資すると共に第1連通孔34の開口部のうち前記空間S1との連通部分が、グリス等の異物によって閉塞されることを防止することができるからである。
【0047】
一方、ピストン14が第1突出部86の内端面に接触した状態(図2の状態:以下、第2の状態と呼ぶことがある。)で、ピストン14の上端面、第1突出部86の外周面、エンドプレート本体84の内端面、及び、シリンダチューブ12の内周面によって空間(受圧室)S2が形成される。なお、空間S2の体積(容積)は、空間S1の体積(容積)よりも大きく設定されている。
【0048】
そして、第2連通孔38は、ピストン14の外周面に臨むと共に、ピストン14の外周面によって最大90%まで閉塞される。これにより、空間S2(シリンダ室24b)への圧力流体の流入量やシリンダ室24bからの圧力流体の流出量を第2連通孔38の開口部で適度に絞ることができる。
【0049】
好ましくは、第2連通孔38は、ピストン14の外周面によって70%閉塞されるのがよい。これにより、第2の状態で、第2連通孔38の開口部の30%が空間S2に連通するので、流体圧シリンダ10の軸方向の長さを可及的に少なくして小型化に資すると共に第2連通孔38の開口部のうち前記空間S2との連通部分が、グリス等の異物によって閉塞されることを防止することができるからである。
【0050】
本実施形態では、上述したように、第2突出部88の外周面と張出部92の間には、隙間Aが形成されているので、シール部材を設けなくても、所望のシール性を確保することが可能となる。よって、部品点数が削減されるので、流体圧シリンダ10の製造コストを削減することができる。
【0051】
また、図示しないリング部材を前記隙間Aに装着することにより、流体圧シリンダ10の位置決めを簡単に行うこともできる。
【0052】
さらに、矢印X方向において、第2突出部88の外端面88aがシリンダチューブ12の端面12aよりも矢印X1方向(ピストン14側)に若干ずれて位置しているので、前記第2突出部88の外端面88aよりも矢印X2方向に前記シリンダチューブ12の端面12aが位置するようにエンドプレート22をシリンダチューブ12に加締める場合と比較して、流体圧シリンダ10の全長を短縮することができる。
【0053】
次に、本発明に係る流体圧シリンダ10の動作及び作用について説明する。
【0054】
第2の状態において、第1ポート28を大気開放した状態で、図示しない圧力流体供給源から第2接続孔36に圧力流体(例えば、圧縮エア)を供給すると、前記圧力流体が第2連通孔38のシリンダチューブ12内側の開口部にて適度(例えば、30%程度)の流量に絞られて空間S2(第2シリンダ室24b)に流入される。
【0055】
そして、前記空間S2に導かれた圧力流体の作用下にピストン14が矢印X1方向(先端側)に変位する。このとき、ピストン14の加速度は、空間S2の圧力流体の流入量に比例するので、圧力流体の供給開始時において、ピストン14の加速度は適度に小さくなる。つまり、ピストン14の先端側への飛び出しが抑制される。
【0056】
ピストン14が矢印X1方向に移動すると、第2シリンダ室24bに連通する第2連通孔38の開口部の面積比率が徐々に大きくなる、言い換えると、第2連通孔38の開口部の第2シリンダ室24bに対する連通面積が徐々に増加するので、圧力流体の該第2シリンダ室24bへの流入量(単位時間当たりの流入量)が徐々に増加する。これにより、ピストン14の加速度が上昇する。
【0057】
次いで、第2連通孔38の開口部の全てが第2シリンダ室24bに臨むようになり、ピストン14が定速で矢印X1方向に変位することとなる。
【0058】
その後、ピストン14の凹部62がカラー部材18の小径部76に嵌合すると、環状凸部50と前記小径部76の間の隙間によって、第1連通孔34に導かれる流体の流量が制限される(少なくなる)ため、凹部62内の流体の圧力が次第に高くなる。これにより、ピストン14の変位動作が制約されることとなるため、該ピストン14が徐々に減速される。つまり、凹部62内の流体がピストン14のクッション効果(エアークッション効果)として作用する。
【0059】
続いて、ピストン14が減速されながら矢印X1方向にさらに変位すると、第1連通孔34のシリンダチューブ12内側の開口部が環状凸部50によって徐々に覆われることとなる。これにより、第1連通孔34に導かれる第2シリンダ室24b内の流体は、該第1連通孔34の開口部で絞られるので、第2シリンダ室24b内の流体の圧力が高まり、該ピストン14がさらに減速される。
【0060】
そして、ピストン本体48の凹部62を形成する壁部が小径部76の内端面に接触したときに、ピストン14が停止されて第1の状態となる(図5参照)。このとき、ピストン14とカラー部材18の間に空間S1が形成されると共に、第1連通孔34の開口部の一部(例えば、70%)が環状凸部50によって覆われることとなる。
【0061】
一方、図示しない切替弁の切替作用下に、圧力流体の供給を第2ポート30から第1ポート28へと切り替えると、前記圧力流体供給源から第1接続孔32に圧力流体が供給され、該圧力流体が第1連通孔34のシリンダチューブ12内側の開口部にて適度に(例えば、30%程度)の流量に絞られて空間S1(第1シリンダ室24a)に流入される。
【0062】
そして、前記空間S1に導かれた圧力流体の作用下にピストン14が矢印X2方向(後端側)に変位する。このとき、ピストン14の加速度は、空間S1の圧力流体の流入量に比例するので、ピストン14の変位開始動作時において、ピストン14の加速度は適度に小さくなる。
【0063】
なお、この場合、空間S1の体積が空間S2の体積よりも大きく設定されているので、ピストン14のエンドプレート22側への変位開始動作時の加速度は、ピストン14のカラー部材18側への変位開始動作時の加速度よりも大きくなる。
【0064】
ピストン14が矢印X2方向に移動すると、第1シリンダ室24aに連通する第1連通孔34の開口部の面積比率が徐々に大きくなる、言い換えると、第1連通孔34の開口部の第1シリンダ室24aに対する連通面積が徐々に増加するので、圧力流体の該第1シリンダ室24aへの流入量(単位時間当たりの流入量)が徐々に増加する。これにより、ピストン14が徐々に加速されることとなる。
【0065】
そして、第1連通孔34の開口部の全てが第1シリンダ室24aに臨むようになり、ピストン14が定速で矢印X2方向に変位することとなる。
【0066】
その後、ピストン14が矢印X2方向に変位することにより、第2連通孔38のシリンダチューブ12内側の開口部がピストン14によって徐々に覆われることとなる。これにより、第2連通孔38に導かれる第2シリンダ室24b内の流体は、該第2連通孔38の開口部で絞られるので、第2シリンダ室24b内の流体の圧力が高まり、該ピストン14が減速される。
【0067】
そして、ピストン本体48の上面が第1突出部86の内端面に接触したときに、ピストン14が停止されて第2の状態に復帰する。このようにして、シリンダ室24に内装されたピストン14を軸線方向に沿って往復運動させることができる。
【0068】
上述したように、本実施形態に係る流体圧シリンダ10を用いれば、ピストン14の変位開始動作時(ワークの変位開始時)及びピストン14の停止動作時(ワークの停止時)に、ワークに作用する慣性力を好適に抑えることができる。これにより、シリンダ室24への圧力流体の流入量を調整可能な流量調整弁等を利用しなくても、該ワークの位置決め精度を向上させることができる。
【0069】
本実施形態に係る流体圧シリンダ10によれば、ピストン14を矢印X1方向に変位させる際に、凹部62を小径部76に外嵌させることができるので、該凹部62及び小径部76を設けない場合と比較して、ピストン14のストロークを維持した状態で流体圧シリンダ10の全長を短縮することができる。
【0070】
(変形例)
次に、変形例に係る流体圧シリンダ100について図6及び図7を参照しながら説明する。なお、本変形例は、上述した実施の形態と共通する構成には同一の参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0071】
図6に示すように、本変形例に係る流体圧シリンダ100では、カラー部材102を構成する小径部104と、ピストン106を構成する環状凸部108の構造が異なる。具体的には、小径部104の端面(ピストン本体48に対向する面)には、バイパス孔110が形成されており、該小径部104の外周面に形成された環状溝112に樹脂等で構成されたOリング114が装着されている。バイパス孔110は、小径部104の外周面のうち環状溝112よりも中径部74側の部位に開口している。
【0072】
また、環状凸部108の内周面のうち、前記バイパス孔110の開口部116に対応する部位には、矢印X1方向に向かうに従って外径側に広がるテーパ部118が形成されている。
【0073】
本変形例に係る流体圧シリンダ100によれば、第2接続孔36に圧力流体を供給してピストン106を矢印X1方向に変位させると、ピストン106の凹部62がカラー部材102の小径部104に嵌合する。このとき、嵌合の初期段階では、環状凸部108及び小径部104の間の隙間とバイパス孔110とによって、第1連通孔34に導かれる流体の流量が制限されてピストン106が徐々に減速される。
【0074】
そして、図7に示すように、ピストン106が矢印X1方向にさらに変位すると、Oリング114が環状凸部108の内周面に摺接して該隙間の流体の流通を遮断するため、言い換えると、ピストン106の凹部62内の流体がバイパス孔110のみを流通するようになるため、第1連通孔34に導かれる流体の流量がさらに制限される。これにより、ピストン106が一層減速されることになる。つまり、前記バイパス孔110は、ピストン106のクッション効果(エアークッション効果)として作用する。なお、このとき、該開口部116から導かれた流体は、該テーパ部118によって環状凸部108と中径部74の間の隙間に好適に案内される。
【0075】
本発明は上記した実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは当然可能である。
【符号の説明】
【0076】
10…流体圧シリンダ 12…シリンダチューブ
14…ピストン 16…ピストンロッド
18…カラー部材(第1閉塞部材) 22…エンドプレート(第2閉塞部材)
28…第1ポート 30…第2ポート
62…凹部 76…小径部(円形状凸部)
87…環状溝 S1〜S3…空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダチューブ内に変位可能に設けられたピストンと、
前記ピストンに連結されたピストンロッドと、
前記ピストンロッドが挿通された状態で前記シリンダチューブの一端開口部を閉塞する第1閉塞部材と、
前記シリンダチューブの他端開口部に挿入された状態で該他端開口部を閉塞する第2閉塞部材と、
前記シリンダチューブの内周面に開口して圧力流体が流通する第1ポートと第2ポートと、を備えた流体圧シリンダであって、
前記第1閉塞部材の内端面には、前記シリンダチューブの軸線方向に沿って前記ピストンに向けて突出する円形状凸部が形成され、
前記ピストンには、前記円形状凸部が外嵌可能な凹部が形成され、
前記第2閉塞部材の内周縁部には、環状溝が形成され、
前記ピストンは、前記第2閉塞部材に接触することにより前記環状溝との間で受圧室を形成すると共に、前記第2ポートのシリンダチューブ内側の開口部を最大90%まで閉塞することを特徴とする流体圧シリンダ。
【請求項2】
請求項1記載の流体圧シリンダにおいて、
前記ピストンは、前記円形状凸部に接触することにより前記第1閉塞部材との間で受圧室を形成すると共に、前記第1ポートの前記シリンダチューブ内側の開口部を最大90%まで閉塞することを特徴とする流体圧シリンダ。
【請求項3】
請求項2記載の流体圧シリンダにおいて、
前記ピストンは、前記第2閉塞部材に接触した状態で、前記第2ポートの前記シリンダチューブ内側の開口部を70%閉塞し、前記円形状凸部に接触した状態で、前記第1ポートの前記シリンダチューブ内側の開口部を70%閉塞することを特徴とする流体圧シリンダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−36494(P2013−36494A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170888(P2011−170888)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000102511)SMC株式会社 (344)
【Fターム(参考)】