説明

流体流から毒性金属を除去するプロセス

流体流からAs,Cd,HgおよびSeの内の少なくとも1種類を除去するプロセスにおいて、(I)複数の細孔を画成する活性炭基質;硫黄;および流体流からのAs,Cs,HgおよびSeの内の少なくとも1種類の除去を促進するために適合された添加剤を有してなるA群の収着材料の複数のA群の粒子を提供する工程であって、この添加剤が活性炭基質の全体に渡り分布している工程、および(II)この流体流をA群の収着材料の複数のA群の粒子に接触させる工程を有してなるプロセスが開示されている。このプロセスは、粉末注入、収着剤充填床、収着剤流動床、およびそれらのそれらの組合せを含み得る。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、ここに引用する、2007年8月29日に出願された米国仮特許出願第60/966657号への優先権の恩恵を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、流体流から毒性金属を除去するプロセスおよび毒性元素を除去するそのようなプロセスのための収着剤(sorbent)粒子を製造するプロセスに関する。特に、本発明は、毒性元素を含む流体流を、活性炭と硫黄を含み、ガス流などの流体流から毒性元素を除去できる収着材料の粒子と接触させる工程を有してなる毒性元素除去プロセス、および空気乾燥法によりそのような収着材料の粒子を製造するプロセスに関する。本発明は、例えば、炭素の燃焼から生じる燃焼排ガスから水銀を除去するのに有用である。
【背景技術】
【0003】
水銀は、地球上の汚染物質であり、かつ自然の条件下で潜在的に毒性である種(例えば、メチル水銀)に転換され得る汚染物質である。大気中に排出された水銀は、地球に堆積する前に、数千キロメートルも移動し得る。大気からの水銀は排出源の近くの区域に堆積し得ることが研究により示されている。人間、特に子供が水銀を摂取すると、様々な健康問題を生じ得る。
【0004】
石炭火力発電所および医療廃棄物や都市ゴミの焼却が、大気への水銀排出に関連する人間の活動の大元である。毎年、米国で石炭火力発電所から排出される水銀は48トンであると推測されている。しかしながら、これまで、適切な費用で利用できる、特に、水銀元素の排出低減のための、効果的な水銀排出低減技術はない。
【0005】
水銀元素並びに酸化された水銀を制限する見込みのある最新技術は活性炭注入(ACI)である。ACIプロセスは、活性炭粉末を燃焼排ガス流中に注入し、繊維性フィルタ(FF)または静電集塵機(ESP)を用いて、水銀を吸着した活性炭粉末を収集する各工程を含む。一般に、活性炭粉末材料の性能により制限される、ACI技術では、所望の水銀除去レベル(>90%)を達成するために高い炭素対Hg比が必要であり、この結果、収着材料の費用が高くなってしまう。この高い炭素対Hg比は、従来の活性炭材料を使用したACI技術では、炭素粉末の水銀収着能力を効率的に利用していないことを示唆している。
【0006】
水溶性(酸化された)水銀は、高濃度のSO2およびHClを含む歴青炭中の主な水銀種であるので、歴青炭の火力発電所は、NOxおよび/またはSO2制御技術と組み合わせて洗浄装置を使用して、90%の水銀を除去できるであろう。水銀排出低減は、粒状物質排出低減の同時利益として達成できる。キレート剤を洗浄装置に加えて、水銀が再度排出されるのを防いでもよい。しかしながら、キレート剤は、金属洗浄装置の腐食とキレート溶液の処理の問題のために、費用がかかる。しかしながら、水銀元素は、歴青炭や褐炭の燃焼排ガスにおける主な水銀源であり、洗浄装置は、その系に追加の化学物質を加えない限り、水銀元素の除去にとっては効果的ではない。従来技術には、水銀の除去を支援するためにガス流に様々な化学物質を添加することが開示されている。しかしながら、燃焼排ガス系中に追加の潜在的に環境に有害な物質を添加することは望ましくない。
【0007】
石炭のガス化において生成される合成ガスなどのある産業用ガスは、水銀に加え、ヒ素、カドミウムおよびセレンなどの毒性元素を含有する可能性がある。合成ガスが産業用途および/または住居用途に供給される前に、これらの毒性元素の全てを実質的に除去することが極めて望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
燃焼排ガスおよび合成ガスなどの流体流から水銀および/または他の毒性元素を高容量で除去できる収着材料および/またはプロセスが本当に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明において、流体流からAs,Cd,HgおよびSeの内の少なくとも1種類を除去するプロセスであって、
(I) 複数の細孔を画成する活性炭基質、
硫黄、および
流体流からのAs,Cd,HgおよびSeの内の少なくとも1種類の除去を促進するために適合された添加剤、
を含むA群の収着材料の複数のA群の粒子を提供する工程であって、この添加剤が、活性炭基質の全体に渡り分布している工程、および
(II) 流体流を複数のA群の粒子に接触させる工程、
を有してなるプロセスが提供される。
【0010】
本発明のプロセスのある実施の形態によれば、工程(I)は、
(I.1) A群の収着材料から実質的になる、少なくとも1mm3の公称容積を有する前駆収着体を提供する工程、および
(I.2) 前駆収着体を粉砕して、複数のA群の粒子を形成する工程、
を含む。
【0011】
本発明のプロセスのある実施の形態によれば、工程(I.1)で、前駆収着体において、硫黄が活性炭基質の全体に渡り分布している。
【0012】
本発明のプロセスのある実施の形態によれば、工程(I.1)で、前駆収着体において、添加剤が活性炭基質中に実質的に均一に分布している。
【0013】
本発明のプロセスのある実施の形態によれば、工程(I.1)で、前駆収着体において、硫黄が活性炭基質中に実質的に均一に分布している。
【0014】
本発明のプロセスのある実施の形態によれば、工程(I.1)は、以下の工程:
(A) 炭素源材料、硫黄源材料、添加剤源材料および随意的な充填材料を含むバッチ混合材料から形成されたバッチ混合体を提供する工程であって、添加剤源材料がこの混合体中に実質的に均一に分布している工程、
(B) このバッチ混合体をO2欠乏雰囲気内で高温炭化温度に曝露することによって、バッチ混合体を炭化する工程、および
(C) 炭化したバッチ混合体をCO2および/またはH2O含有雰囲気内で高温活性化温度で活性化させる工程、
を含む。
【0015】
本発明のプロセスのある実施の形態によれば、工程(I)は、以下の工程:
(a) 炭素源材料、硫黄源材料、添加剤源材料および随意的な充填材料を含む複数のバッチ混合物粒子を提供する工程であって、添加剤源材料がこの粒子中に実質的に均一に分布している工程、
(b) このバッチ混合物粒子をO2欠乏雰囲気内で高温炭化温度に曝露することによって、バッチ混合物粒子を炭化する工程、および
(c) 炭化したバッチ混合物粒子をCO2および/またはH2O含有雰囲気内で高温活性化温度で活性化させる工程、
を含む。
【0016】
直ぐ上に記載された本発明の実施の形態のある特別な実施の形態によれば、工程(a)は、
(a1) 炭素源材料、硫黄源材料、添加剤源材料および随意的な充填材料を混合して、実質的に均一な混合物を得る工程、
(a2) この混合物から湿った粒子を形成する工程、および
(a3) 湿った粒子を乾燥させて、乾燥したバッチ混合物粒子を得る工程、
を含む。
【0017】
本発明のプロセスのある実施の形態(以後、「粉末の実施の形態」と称する)によれば、
工程(II)において、複数のA群の粒子の少なくとも一部が、収着剤粉末の形態でA群の粒子の導入位置で流体流中に導入され、
収着剤粉末のA群の粒子が、流体流と共に、下流のA群の粒子の収集位置まで移動でき、
前記プロセスが、
(III) A群の粒子の収集位置で収着剤粉末のA群の粒子の少なくとも一部を収集する工程、
をさらに含む。
【0018】
先の工程(III)を含む本発明の粉末の実施の形態のある特別な実施の形態によれば、収着剤粉末の複数のA群の粒子は実質的に同じ組成を有する。
【0019】
先の工程(III)を含む本発明のプロセスの実施の形態のある実施の形態によれば、工程(III)は、繊維性フィルタ粉末収集機、静電集塵機、およびそれらの組合せを使用することにより、収着剤粉末のA群の粒子の大半を収集する工程を含む。
【0020】
先の工程(III)を含む本発明のプロセスの実施の形態によれば、収着剤粉末のA群の粒子は、1から200μmに及ぶ、ある実施の形態において5から100μmに及ぶ、ある他の実施の形態において5から30μmに及ぶ平均粒径を有する。
【0021】
本発明のプロセスのある実施の形態(以後、「収着剤床の実施の形態」と称する)によれば、工程(II)において、複数のA群の粒子の少なくとも一部が収着剤床を形成する。ある特別な実施の形態において、収着剤床は収着剤充填床である。ある他の特別な実施の形態において、収着剤床は収着剤流動床である。ある他の特別な実施の形態において、収着剤床は、収着剤充填床と収着剤流動床の組合せである。
【0022】
本発明のプロセスの収着剤床の実施の形態のある特別な実施の形態によれば、収着剤床中に含まれる複数のA群の粒子は、実質的に同じ組成を有する。
【0023】
工程(II)において、複数のA群の粒子の少なくとも一部が収着剤充填床中に含まれている、本発明のプロセスのある実施の形態によれば、収着剤充填床中に含まれる複数のA群の粒子は、5から1000μmに及ぶ、ある実施の形態において10から200μmに及ぶ、ある他の実施の形態において10から100μmに及ぶ平均粒径を有する。
【0024】
工程(II)において、複数のA群の粒子の少なくとも一部が収着剤流動床中に含まれている、本発明のプロセスのある実施の形態によれば、収着剤流動床中に含まれる複数のA群の粒子は、1から200μmに及ぶ、ある実施の形態において1から100μmに及ぶ、ある他の実施の形態において1から50μmに及ぶ、ある他の実施の形態において1から20μmに及ぶ平均粒径を有する。
【0025】
本発明のプロセスのある実施の形態(以後、「収着剤床と粉末の組合せの実施の形態」と称する)によれば、
工程(II)において、複数のA群の粒子の一部が収着剤床中に含まれ、
工程(II)において、複数のA群の粒子の一部が、収着剤粉末の形態でA群の粒子の導入位置で流体流中に導入され、
収着剤粉末のA群の粒子が、流体流と共に、下流のA群の粒子の収集位置まで移動することができ、
前記プロセスが、
(III) A群の粒子の収集位置で収着剤粉末のA群の粒子の少なくとも一部を収集する工程、
を含む。
【0026】
本発明のプロセスの収着剤と粉末の組合せの実施の形態のある特別な実施の形態によれば、収着剤床は収着剤流動床である。他の特別な実施の形態において、収着剤床は収着剤充填床である。
【0027】
本発明のプロセスの収着剤と粉末の組合せの実施の形態のある特別な実施の形態によれば、収着剤粉末のA群の粒子の収集位置は、収着剤床に対して上流であり、ある他の実施の形態によれば、収着剤粉末のA群の粒子の収集位置は、収着剤床に対して下流である。
【0028】
本発明のプロセスの収着剤と粉末の組合せの実施の形態のある特別な実施の形態によれば、収着剤粉末のA群の粒子は実質的に同じ組成を有し、収着剤床中に含まれるA群の粒子は実質的に同じ組成を有する。
【0029】
本発明のプロセスの収着剤と粉末の組合せの実施の形態のある特別な実施の形態によれば、収着剤粉末のA群の粒子および収着剤床中に含まれるA群の粒子は、実質的に同じ組成を有する。
【0030】
本発明のプロセスの収着剤と粉末の組合せの実施の形態のある特別な実施の形態によれば、収着剤粉末のA群の粒子および収着剤床中に含まれるA群の粒子は、実質的に異なる組成を有する。
【0031】
本発明のプロセスのある実施の形態(以後、「複合の実施の形態」と称する)によれば、このプロセスは、
(I’) A群の収着材料の組成とは異なる組成を有するB群の収着材料の複数のB群の粒子を提供する工程、および
(II’) 流体流をB群の収着材料の複数のB群の粒子に接触させる工程、
を含む。
【0032】
本発明のプロセスの複合の実施の形態のある特別な実施の形態によれば、B群の収着材料は、複数の細孔を画成する活性炭基質を含み、硫黄を実質的に含まない。
【0033】
本発明のプロセスの複合の実施の形態のある特別な実施の形態によれば、B群の収着材料は、複数の細孔を画成する活性炭基質を含み、A群の収着材料中に含まれる添加剤を実質的に含まない。
【0034】
本発明のプロセスの複合の実施の形態のある特別な実施の形態によれば、B群の収着材料は、活性炭から実質的になる。
【0035】
本発明のプロセスの複合の実施の形態のある特別な実施の形態によれば、
工程(II)において、複数のA群の粒子の少なくとも一部は収着剤床中に含まれ、
工程(II’)において、複数のB群の粒子の少なくとも一部は、収着剤粉末の形態でB群の粒子の導入位置で流体流中に導入され、
収着剤粉末のB群の粒子は、流体流と共に、下流のB群の粒子の収集位置まで移動することができ、
前記プロセスは、
(III’) 収着剤粉末のB群の粒子の少なくとも一部をB群の粒子の収集位置で収集する工程、
をさらに含む。
【0036】
本発明のプロセスの複合の実施の形態のある特別な実施の形態によれば、
工程(II’)において、複数のB群の粒子の少なくとも一部は収着剤床中に含まれ、
工程(II)において、複数のA群の粒子の少なくとも一部は、収着剤粉末の形態でA群の粒子の導入位置で流体流中に導入され、
収着剤粉末のA群の粒子は、流体流と共に、下流のA群の粒子の収集位置まで移動することができ、
前記プロセスは、
(III) 収着剤粉末のA群の粒子の少なくとも一部をB群の粒子の収集位置で収集する工程、
をさらに含む。
【0037】
本発明のプロセスの複合の実施の形態のある特別な実施の形態によれば、工程(II)および(II’)は、少なくとも部分的に同時に行われる。
【0038】
本発明のプロセスの複合の実施の形態のある実施の形態によれば、工程(III)および(III’)は、少なくとも部分的に同じ位置で、少なくとも部分的に同時に行われる。
【0039】
本発明のプロセスのある実施の形態によれば、硫黄は、A群の収着材料の活性炭基質の全体に渡り分布している。
【0040】
本発明のプロセスのある実施の形態によれば、添加剤は、A群の収着材料の活性炭基質中に実質的に均一に分布している。
【0041】
本発明のプロセスのある実施の形態によれば、硫黄は、A群の収着材料の活性炭基質中に実質的に均一に分布している。
【0042】
本発明のプロセスのある実施の形態によれば、A群の収着材料において、硫黄の少なくとも一部が、Hgと化学結合できる状態で存在している。ある特別な実施の形態では、A群の収着材料において、細孔の壁の表面上にある硫黄の少なくとも10%が、XPSにより測定した場合、実質的にゼロ価である。
【0043】
本発明のプロセスのある実施の形態によれば、A群の収着材料において、添加剤は:(i)アルカリ金属およびアルカリ土類金属のハロゲン化物、酸化物および水酸化物;(ii)貴金属およびその化合物;(iii)バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ニオブ、モリブデン、銀、タングステンおよびランタノイド元素の酸化物、硫化物および塩;および(iv)(i)、(ii)および(iii)の内の2つ以上の組合せおよび混合物:から選択される。
【0044】
本発明のプロセスのある実施の形態によれば、A群の収着材料において、添加剤は:(i)マンガンの酸化物、硫化物および塩;(ii)鉄の酸化物、硫化物および塩;(iii)(i)とKIの組合せ;(iv)(ii)とKIの組合せ;および(v)(i)、(ii)、(iii)および(iv)の内の任意の2つ以上の組合せおよび混合物:から選択される。
【0045】
本発明のプロセスのある実施の形態によれば、A群の収着材料はアルカリ土類水酸化物を含む。
【0046】
本発明のプロセスのある実施の形態によれば、A群の収着材料は、少なくとも91質量%の活性炭、硫黄および添加剤を含む。
【0047】
本発明のプロセスのある実施の形態によれば、A群の収着材料は、50質量%から97質量%の炭素を含む。
【0048】
本発明のプロセスのある実施の形態によれば、A群の収着材料は、1質量%から20質量%の硫黄を含む。
【0049】
本発明のプロセスのある実施の形態によれば、A群の収着材料は、1質量%から25質量%の添加剤を含む。
【0050】
本発明のプロセスのある実施の形態によれば、A群の収着材料は、RFG1に関して少なくとも91%の初期Hg除去効率を有する。
【0051】
本発明のプロセスのある実施の形態によれば、A群の収着材料は、RFG2に関して少なくとも91%の初期Hg除去効率を有する。
【0052】
本発明のプロセスのある実施の形態によれば、A群の収着材料は、RFG3に関して少なくとも91%の初期Hg除去効率を有する。
【0053】
本発明のプロセスのある実施の形態によれば、A群の収着材料は、RFG1に関して少なくとも0.10mg/gのHg除去容量(removal capacity)を有する。
【0054】
本発明のプロセスのある実施の形態によれば、A群の収着材料は、RFG2に関して少なくとも0.10mg/gのHg除去容量を有する。
【0055】
本発明のプロセスのある実施の形態によれば、A群の収着材料は、RFG3に関して少なくとも0.10mg/gのHg除去容量を有する。
【0056】
本発明のプロセスのある実施の形態によれば、流体流は、水銀を含むガス流であり、流体流中の水銀の少なくとも10モル%が元素状態にある。
【0057】
本発明のプロセスのある実施の形態によれば、流体流は、水銀を含むガス流であり、流体流中の水銀の少なくとも50モル%が元素状態にある。
【0058】
本発明のプロセスのある実施の形態によれば、流体流は、水銀および50体積ppm未満のHClを含むガス流である。
【0059】
本発明のプロセスのある実施の形態によれば、流体流は、水銀および少なくとも3体積ppmのSO3を含むガス流である。
【0060】
本発明のプロセスのある実施の形態によれば、流体流は、水銀および少なくとも3体積ppmのSO3を含むガス流である。
【0061】
本発明の第2の態様によれば、複数の細孔を画成する活性炭基質;硫黄;および流体流からのAs,Cd,HgおよびSeの内の少なくとも1種類の除去を促進するように適合された添加剤を含む収着材料であって、この添加剤が活性炭基質の全体に渡り分布するものである収着材料の粒子を製造するプロセスであって、
(a) 炭素源材料、硫黄源材料、添加剤源材料および随意的な充填材料を含む複数のバッチ混合物粒子を提供する工程であって、添加剤源材料がこの粒子中に実質的に均一に分布している工程、
(b) このバッチ混合物粒子をO2欠乏雰囲気内で高温炭化温度に曝露することによって、バッチ混合物粒子を炭化して、炭化したバッチ混合物粒子を得る工程、および
(c) この炭化したバッチ混合物粒子をCO2および/またはH2O含有雰囲気内で高温活性化温度で活性化させる工程、
を含むプロセスが提供される。
【0062】
本発明の第2の態様のプロセスのある実施の形態によれば、工程(a)は、
(a1) 炭素源材料、硫黄源材料、添加剤源材料および随意的な充填材料を混合して、実質的に均一な混合物を得る工程、
(a2) この混合物から湿った粒子を形成する工程、および
(a3) 湿った粒子を乾燥させて、乾燥したバッチ混合物粒子を得る工程、
を含む。
【0063】
本発明のある実施の形態は、以下の利点の内の1つ以上を有する。第1に、このプロセスのある実施の形態は、非常に高い初期Hg除去効率および非常に高いHg除去容量を有し得る。第2に、本発明のプロセスのある実施の形態は、酸化した水銀だけでなく、水銀元素の収着にも効果的であり得る。さらに、本発明のある実施の形態によるプロセスは、高濃度および低濃度のHClを含む燃焼排ガスから水銀を同様に除去するのに効果的であり得る。第4に、本発明のある実施の形態によるプロセスは、高濃度のSO3を含む燃焼排ガスから水銀を除去するのに効果的であり得る。最後だからと言って重要ではないということでなく、本発明のプロセスのある実施の形態によるプロセスは、既存のACI設備を有する石炭燃焼火力発電所により従来のように利用できる。
【0064】
本発明の追加の特徴と利点は、以下の詳細な説明に述べられており、一部は、その説明から当業者には容易に明らかであるか、またはその記載の説明と特許請求の範囲、並びに添付の図面に記載されたように本発明を実施することによって認識されるであろう。
【0065】
先の一般的な説明および以下の詳細な説明は、本発明の単なる例示であり、特許請求の範囲に記載された本発明の性質および特徴を理解する上での概要または構成を提供することが意図されているのが理解されよう。
【0066】
添付の図面は、本発明をさらに理解するために含まれており、本明細書に包含され、その一部を構成する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明によるその場で押し出された添加剤を含む収着剤のテストサンプルおよび含浸添加剤を含むがその場で押し出された添加剤は含まない収着剤の水銀除去容量を、長期間に亘り比較したグラフ
【図2】様々な入口水銀濃度での、本発明のある実施の形態による収着体の入口水銀濃度(CHg0)および出口水銀濃度(CHg1)を示すグラフ
【図3】その場で押し出された添加剤を含む本発明による前駆収着体の断面の一部のSEM画像
【図4】後で活性化した含浸添加剤を含む比較の収着体の断面の一部のSEM画像
【図5】本発明のプロセスのある実施の形態を実施する装置の構成を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0068】
別記しない限り、成分の質量パーセント、寸法、および明細書と特許請求の範囲に用いられるある物理的性質の値を表すものなどの全ての数は、全ての例において「約」という用語により修飾されていると理解すべきである。明細書および特許請求の範囲に用いられる正確な数値は、本発明の別の実施の形態を形成することも理解すべきである。実施例において開示された数値の精度を確実にするために努力してきた。しかしながら、どの測定した数値も、それぞれの測定技法に見られる標準誤差から生じるある程度の誤差を本質的に含み得る。
【0069】
ここに用いたように、本発明を記載し、請求する上で、単数形の使用は「少なくとも1つ」を意味し、そうではないと明白に示されていない限り、「たった1つ」に制限されるべきではない。それゆえ、例えば、「水銀含有化合物」の参照は、文脈が明らかにそうではないと示していない限り、そのような水銀含有化合物を2種類以上有する実施の形態を含む。
【0070】
ここに用いたように、成分の「質量%」または「質量パーセント」は、具体的にそうではないと述べられていない限り、その成分が含まれる組成物または物品の総質量に基づく。ここに用いたように、全てのパーセントは、別記しない限り、質量によるものである。ガスに関する全てのppmは、別記しない限り、体積によるものである。
【0071】
本出願において、収着体および/または収着材料中に存在する各元素は、別記しない限り、任意の酸化状態での任意のそのような元素を含む集合体で称される。それゆえ、ここに用いたように「硫黄」は、特に、元素の硫黄(0)、硫酸塩(+6)、亜硫酸塩(+4)、および硫化物(−2)を含む全ての酸化状態での硫黄元素を含む。それゆえ、硫黄のパーセントは、材料中の硫黄の総量を計算する目的のために、他の酸化状態にある任意の硫黄が元素状態に転化された、元素の硫黄に基づいて計算される。添加剤のパーセントは、材料中の添加剤の総量を計算する目的のために、他の酸化状態にある任意の金属が元素状態に転化された、元素の金属に基づいて計算される。
【0072】
「その場で押し出された」とは、硫黄および/または添加剤などの関連材料が、その源材料の少なくとも一部をバッチ混合材料中に含ませることによって押出体中に導入され、よって、その押出体がその中に源材料を含むことを意味する。
【0073】
本発明のプロセスに使用すべき収着体のA群の粒子は、様々なその場の製造プロセスを使用することにより、またはペレット、ハニカムおよび他のモノリスなどのより大きな前駆収着体を粉砕することにより、所望の粒径と粒径分布を有するA群の粒子として直接製造されるであろう。前駆収着体は、本発明のプロセスの様々な実施の形態に使用すべきA群の粒子として、実質的に同じ化学組成および全体の気孔率などの重要な物理的性質を有することが望ましい。それゆえ、A群の粒子の組成および物理的性質の特徴付けは、粒子自体に対して、または前駆収着体に対して行ってもよい。
【0074】
本発明の収着体、A群の収着材料の粒子、または押出バッチ混合体、もしくはバッチ混合材料の断面に渡る硫黄、添加剤または他の材料の分布は、以下に限られないが、マイクロプローブ、XPS(X線光電子分光法)、および質量分析と組み合わされたレーザアブレーションを含む、様々な技法により測定することができる。
【0075】
前駆収着体、粒子、または他の物体のある平断面におけるある材料(例えば、硫黄、添加剤など)の分布を特徴付けるための方法論を以下に説明する。この方法論は、本出願において「分布特徴付け法」と称される。
【0076】
総断面が500μm×500μmより大きい場合、少なくとも500μm×500μmの断面の複数の標的テスト面積が選択される。全断面が、500μm×500μm以下である場合、1つの標的テスト面積となる。標的テスト面積の総数はp(正の整数)である。
【0077】
各標的テスト面積は、マス目によって多数の別個の20μm×20μmの区域に分割される。40μm2以上の有効面積(以下に定義される)を有する区域のみが検討され、40μm2未満の有効面積を有する区画は、以下のデータ処理において切り捨てられる。それゆえ、標的テスト面積の全ての正方形のサンプル区域の総有効面積(ATE)は:
【数1】

【0078】
であり、ここで、ae(i)は、区域iの有効面積であり、nは、ae(i)≧40μm2である場合、標的テスト面積における正方形のサンプル区域の総数である。平方マイクロメートルで表される個々の正方形区域の面積ae(i)は、以下のように計算される:
【数2】

【0079】
ここで、av(i)は、正方形区域i内の10μm2より大きい任意の空隙、細孔または自由空間の平方マイクロメートルで表された総面積である。
【0080】
各正方形区域iは、硫黄に関する単位有効面積当たりの硫黄原子のモル数、または添加剤の場合には、他の関連材料のモル数で換算された平均濃度C(i)を有するものと測定される。次いで、全てのC(i)(i=1からn)を降順で列記して、CON(1)がn個の区域全ての中で最高のC(i)であり、CON(n)がn個の区域全ての中で最低のC(i)である、順序CON(1)、CON(2)、CON(3)、・・・CON(n)を形成する。最高濃度を有する標的テスト面積におけるn個の区域全ての5%の算術平均がCON(max)である。それゆえ:
【数3】

【0081】
ここで、INT(0.05xn)が、0.05xn以上の最小の整数である。ここに用いたように、演算子「INT(X)」が、X以上の最小の整数を与える。
【0082】
最低濃度を有する標的テスト面積におけるn個の区域全ての5%の算術平均がCON(min)である。それゆえ:
【数4】

【0083】
標的テスト面積の算術平均濃度はCON(av)である。それゆえ:
【数5】

【0084】
次いで、p個の標的テスト面積の全てに関して、全てのCON(av)(k)(k=1からp)を降順で列記して、CONAV(1)がp個の標的テスト面積全ての中で最高のCON(av)(k)であり、CONAV(p)がp個の標的テスト面積全ての中で最低のCON(av)(k)である、順序CONAV(1)、CONAV(2)、CONAV(3)、・・・CONAV(p)を形成する。p個の標的テスト面積の全ての算術平均濃度はCONAV(av)である。それゆえ:
【数6】

【0085】
関連材料が、収着体、または活性炭基質、もしくは収着材料の全体に渡り分布している、本発明のプロセスのある実施の形態において、粒子、前駆収着体、またはその両方として使用できるあるA群の収着材料において、各標的テスト面積において、その分布は以下の特徴:CON(av)/CON(min)≦30、およびCON(max)/CON(av)≦30を有することが望ましい。ある他の実施の形態において、CON(av)/CON(min)≦20、およびCON(max)/CON(av)≦20が望ましい。ある他の実施の形態において、CON(av)/CON(min)≦15、およびCON(max)/CON(av)≦15が望ましい。ある他の実施の形態において、CON(av)/CON(min)≦10、およびCON(max)/CON(av)≦10が望ましい。ある他の実施の形態において、CON(av)/CON(min)≦5、およびCON(max)/CON(av)≦5が望ましい。ある他の実施の形態において、CON(av)/CON(min)≦3、およびCON(max)/CON(av)≦3が望ましい。ある他の実施の形態において、CON(av)/CON(min)≦2、およびCON(max)/CON(av)≦2が望ましい。
【0086】
本出願による物体または材料において「均一な分布」を有するように「均一に分布」すべきある材料または成分について、分布特徴付け法によるその分布は、以下を満たす:各標的テスト面積において、全てのCON(m)について、0.1n≦m≦0.9n;0.5≦CON(m)/CON(av)≦2。ある実施の形態において、0.6≦CON(m)/CON(av)≦1.7が望ましい。ある他の実施の形態において、0.7≦CON(m)/CON(av)≦1.4が望ましい。ある他の実施の形態において、0.8≦CON(m)/CON(av)≦1.2が望ましい。ある他の実施の形態において、0.9≦CON(m)/CON(av)≦1.1が望ましい。ある実施の形態において、全てのCON(m)について、0.05n≦m≦0.95n;0.5≦CON(m)/CON(av)≦2、ある実施の形態において、0.6≦CON(m)/CON(av)≦1.7。ある他の実施の形態において、0.7≦CON(m)/CON(av)≦1.4が望ましい。ある他の実施の形態において、0.8≦CON(m)/CON(av)≦1.2が望ましい。ある他の実施の形態において、0.9≦CON(m)/CON(av)≦1.1が望ましい。各個々の標的テスト面積に関してこの段落において先に挙げた特徴の内の任意の1つに加え、本発明のプロセスのある実施の形態にとって有用な物体(前駆収着体、押出混合体、粒子など)および材料のある実施の形態において、p個の標的テスト面積の全てに関する関連材料(例えば、硫黄、添加剤など)の分布は以下の特徴を有する:全てのCONAV(k)について、0.1p≦k≦0.9p;0.5≦CONAV(k)/CONAV(av)≦2、ある実施の形態において、0.6≦CONAV(k)/CONAV(av)≦1.7。ある他の実施の形態において、0.7≦CONAV(k)/CONAV(av)≦1.4が望ましい。ある他の実施の形態において、0.8≦CONAV(k)/CONAV(av)≦1.2が望ましい。ある他の実施の形態において、0.9≦CONAV(k)/CONAV(av)≦1.1が望ましい。ある他の実施の形態において、0.95≦CONAV(k)/CONAV(av)≦1.05が望ましい。ある実施の形態において、全てのCONAV(k)について、0.05p≦k≦0.95p;0.5≦CONAV(k)/CONAV(av)≦2、ある実施の形態において、0.6≦CONAV(k)/CONAV(av)≦1.7。ある他の実施の形態において、0.7≦CONAV(k)/CONAV(av)≦1.4が望ましい。ある他の実施の形態において、0.8≦CONAV(k)/CONAV(av)≦1.2が望ましい。ある他の実施の形態において、0.9≦CONAV(k)/CONAV(av)≦1.1が望ましい。ある他の実施の形態において、0.95≦CONAV(k)/CONAV(av)≦1.05が望ましい。
【0087】
ある実施の形態において、A群の収着材料の粒子は、燃焼排ガス流の経路のある位置(A群の粒子の導入位置)で石炭燃焼火力発電所の蒸気発生器の燃焼排ガス流などの、流体流中に注入され、パイプライン内で燃焼排ガスと共に移動し、次いで、下流の位置(A群の粒子の収集位置)で収集することができる。この実施の形態は、A群の収着材料の粒子が、従来の活性炭粉末よりも高い初期Hg除去効率および高いHg除去容量を有することが違うだけで、プロセスの実施に関して従来のACI技術に似ている。A群の収着材料の粒子は、搬送ガスと共に燃焼排ガス流中に注入しても差し支えない。パイプライン内の移動中、粒子は、燃焼排ガスと混ざり合い、Hg,As,CdおよびSeなどの毒性金属を収着する。この粉末の実施の形態に関する粒径は、典型的に、1から200μm、ある実施の形態において、5から100μm、ある他の実施の形態において、5から30μmに及ぶ。しかしながら、粒子が微細すぎる場合には、それらの粒子は、静電集塵機などの従来の粉塵収集装置を使用することによって、収集位置で収集することが難しいかもしれない。
【0088】
ある実施の形態(「収着剤床の実施の形態」)において、A群の収着材料の粒子は、処理すべき流体流の経路の中程に取り付けられている収着剤床内に収容される。前述したように、粒子は、流体処理プロセス中に実質的に静止したままであり、それゆえ、この床は実質的に充填床である。他の実施の形態において、粒子は流動床中に収容される。流動床において、燃焼排ガス流などの流体流は、中に閉じ込められた粒子が床内で動き、流体流中で実質的に懸濁されたままでいるように、十分な速度で床に進入する。収着剤充填床に使用するためのA群の粒子は、典型的に、5から1000μmに及ぶ、ある実施の形態において、10から200μmに及ぶ、ある他の実施の形態において、10から100μmに及ぶ平均粒径を有する。流動床に使用するためのA群の粒子は、典型的に、1から200μmに及ぶ、ある実施の形態において、1から100μmに及ぶ、ある他の実施の形態において、1から50μmに及ぶ、ある他の実施の形態において、1から20μmに及ぶ平均粒径を有する。
【0089】
ある他の実施の形態(粉末と収着剤床の組合せの実施の形態)において、A群の粒子の一部が、粉末の実施の形態におけるように、処理すべき流体流中に注入され、A群の粒子の一部が、収着剤床の実施の形態におけるように、流動床または充填床などの収着剤床中に収容される。ある粉末と収着剤床の組合せの実施の形態において、A群の粒子を収容し閉じ込めた収着剤床は収着剤流動床であることが好ましい。これらの組合せの実施の形態のいくつかにおいて、収着剤床に閉じ込められずに、パイプライン内を移動するA群の粒子は、収着剤床内に閉じ込められて収容された粒子よりも小さいサイズを有する傾向にある。そのような小さな「飛行(flying)」粒子は、ある実施の形態において、都合よく、収着剤床を通って移動することができる。飛行粒子が収着剤床を通って移動する場合、粒子間での衝突が生じ得ると考えられる。また、衝突によって、飛行粒子のいくつかが凝集し、収着剤床から出る飛行粒子の平均サイズが大きくなると考えられる。このことは、大きくなった粒子は、静電集塵機などの従来の粉塵収集装置によって、捕捉し、収集し易くなる傾向にあるという点で都合よいであろう。
【0090】
図5は、本発明の粉末と収着剤床の組合せの実施の形態を実施する装置501を図示している。この図面において、A群の粒子505の流れが、燃焼排ガス流503中に注入される。次いで、この混合物が収着剤の流動床または充填床507に進入する。粒子はその後、静電集塵機509によって、下流の収集位置で収集される。清浄になった燃焼排ガス511が静電集塵機509から排出される。
【0091】
この粉末と収着剤床の組合せの実施の形態において、収着剤床内に収容された粒子と、収着剤床内に収容されていない粒子は、同じ平均組成を有していても、異なる平均組成を有していても差し支えない。
【0092】
また、A群の粒子を、異なる組成を有するあるB群の粒子と共に使用してもよいと考えられる。例えば、B群の粒子は、ある実施の形態において、活性炭から実質的になっていてもよい。B群の粒子は、A群の収着材料中に含まれる硫黄または添加剤を実質的に含まなくてもよい。A群の粒子とB群の粒子の両方を使用することにより、潜在的に、プロセスの全体のコストが減少し得る。
【0093】
A群の粒子およびB群の粒子を、緊密な混合物として使用しても、または流体流の経路の異なる位置で別々に注入してもよいと推測できる。あるいは、A群の粒子およびB群の粒子を、A群の収着材料のみを用いたプロセスの実施の形態について上述した粉末と収着剤床の組合せの実施の形態と類似の実施の形態において、飛行粒子(収着剤床内に閉じ込められたり収容されたりしていない粒子)および固定粒子(収着剤床内に閉じ込められて収容された粒子)として、またその様々な組合せとして用いても差し支えない。
【0094】
本発明のプロセスに有用なA群の収着材料は、石炭の燃焼または廃棄物焼却から生じる燃焼排ガス流もしくは石炭ガス化プロセス中に生成される合成ガスなどの流体流から、水銀および他の毒性元素を除去するために適合される。上述したように、そのようなガス流は、どのような除去手法も開始される前に、様々な量の水銀および/またはAs,CdおよびSeなどの他の毒性原子を含有することが一般に知られている。それらのガス流からの水銀の除去は、環境上の重大な懸念の内の1つである。水銀は、供給材料(例えば、歴青炭、亜歴青炭、都市ゴミ、および医療廃棄物)およびプロセス条件に応じて、そのようなガス流中に様々な比率で元素状態または酸化状態で存在し得る。
【0095】
本発明に有用なA群の収着材料は、活性炭基質、硫黄および処理すべき流体流からのヒ素、カドミウム、水銀および/またはセレンの除去を促進するように適合された添加剤を含む。この添加剤は金属元素を含む。物理的収着および化学的収着の組合せによって、A群の収着材料は、元素状態と酸化状態両方の水銀と結合し、捕捉することができると考えられる。本発明のある実施の形態に有用な収着体および材料は、燃焼排ガス流中の元素状態の水銀を除去するのに特に効果的である。このことは、水銀元素を除去するのに通常はそれほど効果的ではないある従来技術(従来のACI技術などの)と比べて特に有利である。
【0096】
本発明に有用な前駆収着体は様々な形状をとってもよい。例えば、前駆収着体は、粉末、ペレット、注型体、および/または押出モノリスであってよい。本発明に有用な前駆収着体および粒子は、処理すべき流体流がその中を流動する収着剤固定床内に組み込んでもよい。ある用途において、特に、発電所における石炭燃焼排ガスまたは石炭ガス化プロセスにおいて生成される合成ガスの処理において、ガス流がそこを通過するどの固定床も圧力降下が低いことが非常に望ましい。この目的のために、固定床内に充填された収着剤粒子により十分なガスの通路が得られることが望ましい。ある実施の形態において、本発明のプロセスに有用な前駆収着材料は、多数の通路を有する押出モノリスハニカムの形態にあることが特に有利である。ハニカムのセル密度は、使用する際に様々な程度の圧力降下を達成するために、押出プロセス中に調節することができる。ハニカムのセル密度は、ある実施の形態において、25から500セル/平方インチ(3.88から77.5セル/cm2)、ある他の実施の形態において、50から200セル/平方インチ(7.75から31.0セル/cm2)、およびある他の実施の形態において、50から100セル/平方インチ(7.75から15.5セル/cm2)に及んで差し支えない。ガス流と収着材料との間のより緊密な接触を可能にするために、ある実施の形態において、通路の一部を収着体の一端で施栓し、通路の一部を収着体の他端で施栓することが望ましい。ある実施の形態において、収着体の各端で、施栓された通路および/または未施栓の通路が市松模様を形成することが望ましい。ある実施の形態において、ある通路が、収着体の一端(「基準端」と称する)で施栓されるが、反対の端で施栓されない場合、それに最も近い通路(関連する通路と少なくとも1つの壁を共有する通路)の少なくとも大半(ある他の実施の形態において、好ましくは全て)が、収着体の基準端ではない他端で施栓されることが望ましい。様々な使用条件の必要性を満たすために、多数のハニカムを様々な様式で積み重ねて、様々なサイズ、使用期間などを有する実際の収着剤床を形成しても差し支えない。
【0097】
活性炭は、典型的に高い比表面積のために、石炭燃焼火力発電所の燃焼排ガス流から水銀を除去するために使用されてきた。しかしながら、上述したように、活性炭のみでは、十分な除去容量を有していない。水銀除去のために硫黄と活性炭の組合せを使用することが知られている。そのような組合せにより、水銀の除去容量は、活性炭のみの場合よりも穏やかに改善されるが、特に固定床内に使用する場合、さらに高い水銀除去効率と容量を有する収着材料が非常に望ましい。
【0098】
ここに用いたように、「活性炭基質」は、本発明にとって有用な収着体、収着材料または粉末中の相互接続した炭素原子および/または粒子により形成される網状構造を意味する。この基質は、活性炭材料に典型的なように、複数の相互に接続した細孔を画成する壁構造を備えている。活性炭基質は、硫黄および添加剤と共に、収着体および/または収着材料の主構造を提供する。その上、活性炭基質中の細孔の大きな累積面積により、水銀収着が直接行われ得る、またはさらに水銀の収着を促進させる硫黄および添加剤が分布できる、複数の部位が提供される。活性炭基質により画成される細孔は、本発明に有用な収着体または収着材料中に実際に存在する細孔と異なり得ることに留意されたい。活性炭基質により画成される細孔の一部は、添加剤、硫黄、無機充填剤、およびそれらの組合せと混合物により充填されてもよい。
【0099】
本発明のプロセスのある実施の形態に有用なA群の収着材料は、50質量%から97質量%、ある実施の形態において、60質量%から97質量%、ある他の実施の形態において、85質量%から97質量%の炭素を含む。通常、炭素の濃度が高くなるほど、以下に詳述するそのような物体を製造するプロセスにより、同じレベルの炭化と活性化で、より大きい気孔率がもたらされる。
【0100】
本発明のプロセスに有用な収着材料において活性炭基質により画成される細孔は、10nm以下の直径を有するナノスケールの細孔、および10nmより大きい直径を有するマイクロスケールの細孔の2つの範疇に分類される。本発明のプロセスに有用な収着材料における細孔径とその分布は、例えば、窒素吸着などの従来技術において利用できる技法を使用することによって測定できる。ナノスケールの細孔およびマイクロスケールの細孔の表面の両方が一緒になって、本発明のプロセスに有用な収着材料の全体の高い比表面積を提供する。本発明のプロセスに有用な収着材料のある実施の形態において、ナノスケールの細孔の壁面は、収着体および/または収着材料の比表面積の少なくとも50%を構成する。ある他の実施の形態において、ナノスケールの細孔の壁面は、収着体および/または収着材料の比表面積の少なくとも60%を構成する。。ある他の実施の形態において、ナノスケールの細孔の壁面は、収着体および/または収着材料の比表面積の少なくとも70%を構成する。ある他の実施の形態において、ナノスケールの細孔の壁面は、収着体および/または収着材料の比表面積の少なくとも80%を構成する。ある他の実施の形態において、ナノスケールの細孔の壁面は、収着体および/または収着材料の比表面積の少なくとも90%を構成する。
【0101】
本発明に有用な収着体および/または収着材料は、大きな比表面積により特徴付けられる。本発明のある実施の形態において、収着体および/または収着材料は、50から2000m2/gに及ぶ比表面積を有する。ある他の実施の形態において、本発明に有用な収着体および/または収着材料は、100から1800m2/gに及ぶ比表面積を有する。ある他の実施の形態において、本発明に有用な収着体および/または収着材料は、200から1500m2/gに及ぶ比表面積を有する。ある他の実施の形態において、本発明に有用な収着体および/または収着材料は、300から1200m2/gに及ぶ比表面積を有する。収着体および/または収着材料のより大きい比表面積により、毒性元素の収着のためのより大きく活性部位を材料に提供できる。しかしながら、収着体および/または収着材料の比表面積が極めて大きい、例えば、2000m2/gより大きい場合、その収着体および/または収着材料は極めて多孔質となり、収着体の機械的健全性が損なわれてしまう。このことは、収着体の強度がある閾値の要件を満たす必要がある用途にとっては望ましくないかもしれない。
【0102】
先と以下に示すように、本発明のプロセスに有用な収着体および/または収着材料は、ある量の無機充填材料を含んでもよい。収着体および/または収着材料の高い比表面積を得るために、無機充填剤が含まれる場合、そのような無機充填剤それ自体が、多孔質であり、収着体および/または収着材料の高い比表面積に部分的に寄与することがさらに望ましい。それにもかかわらず、前述したように、本発明のプロセスに有用な収着材料の高い比表面積のほとんどは、活性炭基質の細孔、特にナノスケールの細孔により与えられる。活性炭の比表面積に匹敵する比表面積を有する無機充填剤は、通常、本発明のプロセスに有用な収着材料中に含まれるのが難しいかまたは高くつく。したがって、そのような無機充填剤は、最終的な収着体および/または収着材料にもたらす典型的な機械的補強と共に、収着体および/または収着材料の全体の比表面積を損なう傾向にある。このことは、ある実施の形態においては非常に望ましくないかもしれない。前述したように、収着体および/または収着材料の高い表面積は、通常、毒性元素の収着のためのより多い活性部位(毒性元素を収着できる炭素部位、毒性元素の収着を促進するか直接収着できる硫黄部位、および毒性元素を促進できる添加剤部位を含む)を意味する。収着体および/または収着材料における3つの範疇の活性収着部位が密接に近接していることは、全体の収着容量に寄与する。多量の無機充填剤を含ませることにより、活性炭基質中の添加剤と硫黄が希釈され、これら3つの範疇の活性部位の間の全体の平均距離が増す。それゆえ、本発明のプロセスに有用なA群の収着材料が、炭素、硫黄含有無機材料および添加剤以外の無機材料を比較的低いパーセントしか有さないことが望ましい。本発明のプロセスに有用なA群の収着材料のある実施の形態において、材料は、炭素、硫黄含有無機材料および添加剤以外に、10質量%未満(ある実施の形態において、8質量%未満、ある他の実施の形態において、5質量%未満、ある他の実施の形態において、ある他の実施の形態において、3質量%未満、ある他の実施の形態において、2質量%未満)の無機材料を含むことが望ましい。
【0103】
A群の収着材料中に含まれる添加剤は、典型的に、金属元素を含む。接触した際の、処理すべき流体流からの、毒性元素または化合物、特に、水銀、ヒ素、カドミウムまたはセレンの除去を促進できる任意の添加剤が、本発明のプロセスに有用な収着材料中に含まれて差し支えない。その添加剤は、特に、そのような毒性元素の除去を促進するために、以下の様式の内の1つ以上で機能できる:(i)毒性元素の一時的または永久的化学収着(例えば、共有結合および/またはイオン結合により);(ii)毒性元素の一時的または永久的物理収着;(iii)収着材料の他の成分による毒性元素の反応/収着を触発する;(iv)毒性元素の周囲雰囲気との反応を触発して、ある形態から別の形態に転化させる;(v)収着体および/または収着材料の他の成分により既に収着された毒性元素の捕捉;および(vi)毒性元素の活性収着部位への移送の促進。貴金属(Ru,Th,Pd,Ag,Re,Os,Ir,PtおよびAu)および遷移金属とその化合物が、そのようなプロセスを触発するのに効果的であることが知られている。本発明のプロセスに有用な収着材料中に含ませることのできる添加剤の非限定的例としては、先に挙げた貴金属とその化合物;アルカリおよびアルカリ土類ハロゲン化物、水酸化物または酸化物;並びにバナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ニオブ、モリブデン、銀、タングステン、およびランタノイド元素の酸化物、硫化物、および塩が挙げられる。添加剤中の金属原子は、様々な価数であって差し支えない。例えば、添加剤中に鉄が含まれる場合、鉄は、+3、+2または0の価数で、もしくは異なる価数の混合物として存在してもよく、金属の鉄(0)、FeO、Fe23、Fe38、FeS、FeCl2、FeCl3、FeSO4などとして存在し得る。別の例として、添加剤中にマンガンが存在する場合、マンガンは、+4、+2または0の価数で、もしくは異なる価数の混合物として存在してもよく、金属のマンガン(0)、MnO、MnO2、MnS、MnCl2、MnCl4、MnSO4などとして存在し得る。
【0104】
本発明のプロセスに有用なA群の収着材料のある実施の形態において、有利に含まれる添加剤は、アルカリハロゲン化物;並びにマンガンおよび鉄の酸化物、硫化物および塩である。本発明に有用な収着体および/または収着材料のある実施の形態において、有利に含まれる添加剤は、KIと、マンガンの酸化物、硫化物および塩との組合せ;KIと、鉄の酸化物、硫化物および塩との組合せ;KIと、マンガンおよび鉄の酸化物、硫化物および塩との組合せである。これらの組合せは、水銀、特に、ガス流からの水銀元素を除去する上で特に効果的であることが分かった。
【0105】
本発明のある実施の形態によれば、A群の収着材料および/またはその前駆収着体は、毒性元素の除去を促進するための添加剤として、Ca(OH)2などのアルカリ土類金属水酸化物を含む。Ca(OH)2は、ガス流からのヒ素、カドミウムおよびセレンの除去を促進するのに特に効果的であり得ることが実験により示されている。
【0106】
本発明に有用なA群の収着材料および/またはその前駆収着体中に存在する添加剤の量は、使用される特定の添加剤、収着体を使用する用途、並びに収着材料の所望の毒性元素の除去容量および効率に応じて、選択することができる。本発明に有用なA群の収着材料のある実施の形態において、添加剤の量は、材料の総質量の1質量%から20質量%、ある他の実施の形態において、2質量%から18質量%、ある他の実施の形態において、5質量%から15質量%、ある他の実施の形態において、5質量%から10質量%に及ぶ。
【0107】
本発明のプロセスに有用なA群の収着材料中に1種類しか添加剤が存在しない場合、その添加剤は、活性炭基質の全体に渡り分布する。多数の添加剤が存在する場合、それらの内の少なくとも1種類が、活性炭基質の全体に渡り分布する。「活性炭基質の全体に渡り分布する」とは、関連する特定の材料(添加剤、硫黄など)が、収着体および/または収着材料の外面すなわちセル壁上だけではなく、収着体および/または収着材料の奥深くにも存在することを意味する。それゆえ、特定の添加剤の存在は、例えば、(i)活性炭基質により画成されるナノスケールの細孔の壁面上にある;(ii)活性炭基質により画成されるマイクロスケールの細孔の壁面上にある;(iii)活性炭基質の壁構造内に隠れている;(iv)活性炭基質の壁構造内に部分的に埋め込まれる;(v)活性炭基質により画成されるある細孔を部分的に充填および/または封鎖する;および(vi)活性炭基質により画成されるある細孔を完全に充填および/または封鎖することがあり得る。状況(iii)、(iv)、(v)および(vi)において、添加剤は、実際に、収着体および/または収着材料の細孔の壁構造の一部を形成する。本発明のプロセスに有用な収着材料のある実施の形態において、多数の添加剤が存在し、その全てが活性炭基質の全体に渡り分布する。しかしながら、本発明のプロセスに有用な収着材料の全ての実施の形態において、全ての添加剤が活性炭基質の全体に渡り分布することは必要ではない。それゆえ、本発明のプロセスに有用な収着材料のある実施の形態において、多数の添加剤が存在し、それらの内の少なくとも1種類が活性炭基質の全体に渡り分布し、それらの内の少なくとも1種類が、収着体および/または収着材料の外面および/またはセルの壁面に、および/または外面および/またはセルの壁面の下の薄層内に主に実質的に分布している。したがって、ある実施の形態において、添加剤の一部は、炭素または硫黄などの、収着体および/または収着材料の他の成分と化学結合していてもよい。ある他の実施の形態において、添加剤の一部は、活性炭基質または他の成分と物理的に結合してもよい。さらに他の実施の形態において、添加剤の一部は、ナノスケールまたはマイクロスケールのサイズを有する粒子の形態で収着体および/または収着材料中に存在する。
【0108】
本発明に有用な収着体および/または収着材料または他の物体または材料中の添加剤の分布は、先に記載した分布特徴付け法によって測定し、特徴付けることができる。本発明のプロセスに有用なA群の収着材料または収着体のある実施の形態において、添加剤の分布は以下の特徴を有する:各標的テスト面積において、CON(av)/CON(min)≦30、およびCON(max)/CON(av)≦30。ある他の実施の形態において、CON(av)/CON(min)≦20、およびCON(max)/CON(av)≦20が望ましい。ある他の実施の形態において、CON(av)/CON(min)≦15、およびCON(max)/CON(av)≦15が望ましい。ある他の実施の形態において、CON(av)/CON(min)≦10、およびCON(max)/CON(av)≦10が望ましい。ある他の実施の形態において、CON(av)/CON(min)≦5、およびCON(max)/CON(av)≦5が望ましい。ある他の実施の形態において、CON(av)/CON(min)≦3、およびCON(max)/CON(av)≦3が望ましい。ある他の実施の形態において、CON(av)/CON(min)≦2、およびCON(max)/CON(av)≦2が望ましい。
【0109】
本発明のプロセスに有用なA群の収着材料または収着体のある実施の形態において、少なくとも1種類の添加剤が、先に記載した分布特徴付け法にしたがって、活性炭基質の全体に渡って均一に分布している。それゆえ、各標的テスト面積において、全てのCON(m)について、0.1n≦m≦0.9n;0.5≦CON(m)/CON(av)≦2。ある実施の形態において、0.6≦CON(m)/CON(av)≦1.7が望ましい。ある他の実施の形態において、0.7≦CON(m)/CON(av)≦1.4が望ましい。ある他の実施の形態において、0.8≦CON(m)/CON(av)≦1.2が望ましい。ある他の実施の形態において、0.9≦CON(m)/CON(av)≦1.1が望ましい。ある実施の形態において、全てのCON(m)について、0.05n≦m≦0.95n;0.5≦CON(m)/CON(av)≦2、ある実施の形態において、0.6≦CON(m)/CON(av)≦1.7。ある他の実施の形態において、0.7≦CON(m)/CON(av)≦1.4が望ましい。ある他の実施の形態において、0.8≦CON(m)/CON(av)≦1.2が望ましい。ある他の実施の形態において、0.9≦CON(m)/CON(av)≦1.1が望ましい。A群の収着材料および/またはその収着体のある実施の形態において、各個々の標的テスト面積に関してこの段落において先に記載した特徴の内の任意の1つに加えて、p個の標的テスト面積全てに関する関連材料(例えば、硫黄、添加剤など)の分布は、以下の特徴を有する:全てのCONAV(k)について、0.1p≦k≦0.9p;0.5≦CONAV(k)/CONAV(av)≦2、ある実施の形態において、0.6≦CONAV(k)/CONAV(av)≦1.7。ある他の実施の形態において、0.7≦CONAV(k)/CONAV(av)≦1.4が望ましい。ある他の実施の形態において、0.8≦CONAV(k)/CONAV(av)≦1.2が望ましい。ある他の実施の形態において、0.9≦CONAV(k)/CONAV(av)≦1.1が望ましい。ある他の実施の形態において、0.95≦CONAV(k)/CONAV(av)≦1.05が望ましい。ある実施の形態において、全てのCONAV(k)について、0.05p≦k≦0.95p;0.5≦CONAV(k)/CONAV(av)≦2、ある実施の形態において、0.6≦CONAV(k)/CONAV(av)≦1.7。ある他の実施の形態において、0.7≦CONAV(k)/CONAV(av)≦1.4が望ましい。ある他の実施の形態において、0.8≦CONAV(k)/CONAV(av)≦1.2が望ましい。ある他の実施の形態において、0.9≦CONAV(k)/CONAV(av)≦1.1が望ましい。ある他の実施の形態において、0.95≦CONAV(k)/CONAV(av)≦1.05が望ましい。
【0110】
本発明のある実施の形態において、添加剤は、本発明に有用なA群の収着材料および/またはその前駆収着体のマイクロスケールの細孔の壁面の大部分に存在する。本発明のある他の実施の形態において、添加剤は、マイクロスケールの細孔の壁面の少なくとも75%に存在する。本発明のある他の実施の形態において、添加剤は、マイクロスケールの細孔の壁面の少なくとも90%に存在する。本発明のある他の実施の形態において、添加剤は、マイクロスケールの細孔の壁面の少なくとも95%に存在する。
【0111】
本発明のある実施の形態において、添加剤は、本発明に有用なA群の収着材料および/またはその前駆収着体のナノスケールの細孔の壁面の少なくとも20%に存在する。本発明のある他の実施の形態において、添加剤は、ナノスケールの細孔の壁面の少なくとも30%に存在する。本発明のある他の実施の形態において、添加剤は、ナノスケールの細孔の壁面の少なくとも40%に存在する。本発明のある他の実施の形態において、添加剤は、ナノスケールの細孔の壁面の少なくとも50%に存在する。本発明のある他の実施の形態において、添加剤は、ナノスケールの細孔の壁面の少なくとも75%に存在する。本発明のある他の実施の形態において、添加剤は、ナノスケールの細孔の壁面の少なくとも85%に存在する。本発明のある実施の形態において、収着体および/または収着材料の比表面積の大半は、ナノスケールの細孔の壁面により提供される。これらの実施の形態において、ナノスケールの細孔の壁面上に高い比率で添加剤が分布していることが望ましい。
【0112】
本発明のプロセスに有用なA群の収着材料は硫黄を含む。硫黄は、元素の硫黄(0価)、硫化物(例えば、−2価)、亜硫酸塩(例えば、+4価)、硫酸塩(例えば、+6価)の形態で存在してよい。硫黄の少なくとも一部は、流体流から除去すべき毒性元素と化学結合できる価数で存在することが望ましい。この目的のために、硫黄の少なくとも一部が−2価および/またはゼロ価で存在することが望ましい。硫黄の一部は、活性炭基質の壁面に化学的または物理的に結合してもよい。硫黄の一部は、硫化物(FeS、MnS、Mo23など)の形態で、先に示したような結合剤に化学的または物理的に結合してもよい。ある実施の形態において、収着体および/または収着材料中の硫黄の少なくとも40モル%がゼロ価であることが望ましい。ある他の実施の形態において、収着体および/または収着材料中の硫黄の少なくとも50モル%がゼロ価であることが望ましい。ある他の実施の形態において、収着体および/または収着材料中の硫黄の少なくとも60モル%がゼロ価であることが望ましい。ある他の実施の形態において、収着体および/または収着材料中の硫黄の少なくとも70モル%がゼロ価であることが望ましい。
【0113】
硫黄が導入された活性炭は、ガス流から、水銀に加え、ヒ素、カドミウム並びにセレンを除去するのに効果的であり得ることが実験により示された。元素の硫黄を含む収着体が、元素の硫黄を含まないが、実質的に同じ総硫黄濃度を有するものよりも高い水銀除去容量を有する傾向にあることが実験により示された。
【0114】
本発明に有用な収着体および/または収着材料中に存在する硫黄の量は、使用する特定の添加剤、収着体の使用法(例えば、充填床内、流動床内、または飛行粒子として)、並びに収着体および/または収着材料の所望の毒性元素除去容量および効率に応じて、選択することができる。本発明に有用な収着体および/または収着材料のある実施の形態において、硫黄の量は、収着体/材料の総質量の1質量%から20質量%、ある実施の形態において、1質量%から15質量%、ある他の実施の形態において、2質量%から10質量%、ある他の実施の形態において、3質量%から8質量%に及ぶ。
【0115】
本発明のある実施の形態において、硫黄は、活性炭基質の全体に渡り分布している。「活性炭基質の全体に渡り分布している」とは、硫黄が、収着体および/または収着材料またはセル壁の外面上だけでなく、収着体および/または収着材料および/またはそのセル壁骨格内の奥深くにも存在することを意味する。それゆえ、硫黄の存在は、例えば、(i)ナノスケールの細孔の壁面上にある;(ii)マイクロスケールの細孔の壁面上にある;(iii)活性炭基質の壁構造内に隠れている;および(iv)活性炭基質の壁構造内に部分的に埋め込まれている:ものであって差し支えない。状況(iii)および(iv)において、硫黄は、収着体および/または収着材料の細孔の壁構造の一部を実際に形成する。したがって、ある実施の形態において、硫黄のあるものは、炭素または添加剤などの、収着体および/または収着材料の他の成分と化学結合してもよい。ある他の実施の形態において、硫黄のあるものは、活性炭基質または他の成分と物理的に結合してもよい。さらにある他の実施の形態において、硫黄のあるものは、ナノスケールまたはマイクロスケールのサイズを有する粒子の形態で収着体および/または収着材料中に存在する。
【0116】
本発明による収着体または他の物体または材料中に硫黄の分布は、先に記載した分布特徴付け法により、測定し、特徴付けることができる。
【0117】
ある実施の形態において、任意の標的テスト面積内の硫黄の分布は、以下の特徴を有する:CON(max)/CON(min)≧100。ある他の実施の形態において、CON(max)/CON(min)≧200。ある他の実施の形態において、CON(max)/CON(min)≧300。ある他の実施の形態において、CON(max)/CON(min)≧400。ある他の実施の形態において、CON(max)/CON(min)≧500。ある他の実施の形態において、CON(max)/CON(min)≧1000。ある他の実施の形態において、CON(max)/CON(av)≧50。ある他の実施の形態において、CON(max)/CON(av)≧100。ある他の実施の形態において、CON(max)/CON(av)≧200。ある他の実施の形態において、CON(max)/CON(av)≧300。ある他の実施の形態において、CON(max)/CON(av)≧400。ある他の実施の形態において、CON(max)/CON(av)≧500。ある他の実施の形態において、CON(max)/CON(av)≧1000。
【0118】
本発明のプロセスに有用なA群の収着材料および/またはその前駆体のある実施の形態において、収着体および/または収着材料中に分布した硫黄に関して、p個の標的テスト面積の全てにおけるその分布は、以下の特徴を有する:CONAV(1)/CONAV(n)≧2。ある他の実施の形態において、CONAV(1)/CONAV(n)≧5。ある他の実施の形態において、CONAV(1)/CONAV(n)≧8。ある他の実施の形態において、CONAV(1)/CONAV(av)≧1.5。ある他の実施の形態において、CONAV(1)/CONAV(av)≧2。ある他の実施の形態において、CONAV(1)/CONAV(av)≧3。ある他の実施の形態において、CONAV(1)/CONAV(av)≧4。ある他の実施の形態において、CONAV(1)/CONAV(av)≧5。ある他の実施の形態において、CONAV(1)/CONAV(av)≧8。ある他の実施の形態において、CONAV(1)/CONAV(av)≧10。
【0119】
本発明のプロセスに有用なA群の収着材料および/またはその前駆体のある他の実施の形態において、収着体および/または収着材料中に分布した硫黄に関して、各標的テスト面積において、その分布は以下の特徴を有する:CON(av)/CON(min)≦30。ある他の実施の形態において、CON(av)/CON(min)≦20。ある他の実施の形態において、CON(av)/CON(min)≦15。ある他の実施の形態において、CON(av)/CON(min)≦10。ある他の実施の形態において、CON(av)/CON(min)≦5。ある他の実施の形態において、CON(av)/CON(min)≦3。ある他の実施の形態において、CON(av)/CON(min)≦2。ある他の実施の形態において、CON(max)/CON(av)≦30。ある他の実施の形態において、CON(max)/CON(av)≦20。ある他の実施の形態において、CON(max)/CON(av)≦15。ある他の実施の形態において、CON(max)/CON(av)≦10。ある他の実施の形態において、CON(max)/CON(av)≦5。ある他の実施の形態において、CON(max)/CON(av)≦3。ある他の実施の形態において、CON(max)/CON(av)≦2。
【0120】
本発明のプロセスに有用なA群の収着材料および/またはその前駆体のある実施の形態において、硫黄の分布は以下の特徴を有する:各標的テスト面積において、CON(av)/CON(min)≦30、およびCON(max)/CON(av)≦30。ある他の実施の形態において、CON(av)/CON(min)≦20、およびCON(max)/CON(av)≦20が望ましい。ある他の実施の形態において、CON(av)/CON(min)≦15、およびCON(max)/CON(av)≦15が望ましい。ある他の実施の形態において、CON(av)/CON(min)≦10、およびCON(max)/CON(av)≦10が望ましい。ある他の実施の形態において、CON(av)/CON(min)≦5、およびCON(max)/CON(av)≦5が望ましい。ある他の実施の形態において、CON(av)/CON(min)≦3、およびCON(max)/CON(av)≦3が望ましい。ある他の実施の形態において、CON(av)/CON(min)≦2、およびCON(max)/CON(av)≦2が望ましい。
【0121】
本発明のプロセスに有用なA群の収着材料および/またはその前駆体のある実施の形態において、硫黄は、先に記載した分布特徴付け法により、活性炭基質の全体に渡って均一に分布している。それゆえ、各標的テスト面積において、全てのCON(m)について、0.1n≦m≦0.9n;0.5≦CON(m)/CON(av)≦2。ある実施の形態において、0.6≦CON(m)/CON(av)≦1.7が望ましい。ある他の実施の形態において、0.7≦CON(m)/CON(av)≦1.4が望ましい。ある他の実施の形態において、0.8≦CON(m)/CON(av)≦1.2が望ましい。ある他の実施の形態において、0.9≦CON(m)/CON(av)≦1.1が望ましい。ある実施の形態において、全てのCON(m)について、0.05n≦m≦0.95n;0.5≦CON(m)/CON(av)≦2、ある実施の形態において、0.6≦CON(m)/CON(av)≦1.7。ある他の実施の形態において、0.7≦CON(m)/CON(av)≦1.4が望ましい。ある他の実施の形態において、0.8≦CON(m)/CON(av)≦1.2が望ましい。ある他の実施の形態において、0.9≦CON(m)/CON(av)≦1.1が望ましい。各個々の標的テスト面積に関してこの段落において先に挙げた特徴の内の任意の1つに加え、本発明に有用なA群の材料および/または前駆体のある実施の形態において、p個の標的テスト面積の全てに関する関連材料(例えば、硫黄、添加剤など)の分布は以下の特徴を有する:全てのCONAV(k)について、0.1p≦k≦0.9p;0.5≦CONAV(k)/CONAV(av)≦2、ある実施の形態において、0.6≦CONAV(k)/CONAV(av)≦1.7。ある他の実施の形態において、0.7≦CONAV(k)/CONAV(av)≦1.4が望ましい。ある他の実施の形態において、0.8≦CONAV(k)/CONAV(av)≦1.2が望ましい。ある他の実施の形態において、0.9≦CONAV(k)/CONAV(av)≦1.1が望ましい。ある他の実施の形態において、0.95≦CONAV(k)/CONAV(av)≦1.05が望ましい。ある実施の形態において、全てのCONAV(k)について、0.05p≦k≦0.95p;0.5≦CONAV(k)/CONAV(av)≦2、ある実施の形態において、0.6≦CONAV(k)/CONAV(av)≦1.7。ある他の実施の形態において、0.7≦CONAV(k)/CONAV(av)≦1.4が望ましい。ある他の実施の形態において、0.8≦CONAV(k)/CONAV(av)≦1.2が望ましい。ある他の実施の形態において、0.9≦CONAV(k)/CONAV(av)≦1.1が望ましい。ある他の実施の形態において、0.95≦CONAV(k)/CONAV(av)≦1.05が望ましい。
【0122】
本発明のある実施の形態において、硫黄は、本発明のプロセスに有用なA群の収着材料および/またはその前駆収着体のマイクロスケールの細孔の壁面の大半に存在する。本発明のある他の実施の形態において、硫黄はマイクロスケールの細孔の壁面の少なくとも75%に存在する。本発明のある他の実施の形態において、硫黄はマイクロスケールの細孔の壁面の少なくとも90%に存在する。本発明のある他の実施の形態において、硫黄はマイクロスケールの細孔の壁面の少なくとも95%に存在する。
【0123】
本発明のある実施の形態において、硫黄は、本発明のプロセスに有用なA群の収着材料および/またはその前駆収着体のナノスケールの細孔の壁面の少なくとも20%に存在する。本発明のある他の実施の形態において、硫黄は、ナノスケールの細孔の壁面の少なくとも30%に存在する。本発明のある他の実施の形態において、硫黄は、ナノスケールの細孔の壁面の少なくとも40%に存在する。本発明のある実施の形態において、硫黄は、ナノスケールの細孔の壁面の少なくとも50%に存在する。本発明のある実施の形態において、硫黄は、ナノスケールの細孔の壁面の少なくとも75%に存在する。本発明のある実施の形態において、硫黄は、ナノスケールの細孔の壁面の少なくとも85%に存在する。本発明のある実施の形態において、収着体および/または収着材料の比表面積の大半は、ナノスケールの細孔の壁面により提供される。これらの実施の形態において、ナノスケールの細孔の壁面上に高い比率(少なくとも40%、ある実施の形態において、少なくとも50%、ある他の実施の形態において、少なくとも60%などの)で硫黄が分布していることが望ましい。
【0124】
本発明のある他の実施の形態において、活性炭、硫黄および添加剤に加え、収着材料および/またはその収着体は、無機充填剤をさらに含んでもよい。そのような無機充填剤は、特に、コストの減少、および収着体および/または収着材料の物理的性質(例えば、熱膨張係数;破壊係数)または化学的性質(例えば、耐水性;高温耐性;耐食性)の改善の目的のために含んでよい。そのような無機充填剤は、酸化物ガラス、酸化物セラミック、または他の耐火性材料であって差し支えない。本発明のプロセスに有用な収着材料中に含んでもよい無機充填剤の非限定的例としては、シリカ;アルミナ;ジルコン;ジルコニア;ムライト;コージエライト;耐火金属などが挙げられる。本発明のプロセスに有用な収着材料のある実施の形態において、無機充填剤は本質的に多孔質である。無機充填剤の高い気孔率により、比表面積を過度に犠牲にせずに、収着体および/または収着材料の機械的強度を改善することができる。無機充填剤は、収着体および/または収着材料の全体に渡り分布してもよい。無機充填剤は、収着体および/または収着材料中に分布した極小粒子の形態で存在してもよい。収着体および/または収着材料の用途および他の要因に応じて、ある実施の形態において、収着体および/または収着材料は、例えば、収着体および/または材料の総質量に基づいて、50質量%まで、ある他の実施の形態において、40質量%まで、ある他の実施の形態において、30質量%まで、ある他の実施の形態において、20質量%まで、ある他の実施の形態において、10質量%までの無機充填剤を含んでよい。
【0125】
ある実施の形態において、本発明のプロセスに有用なA群の収着材料および/またはその前駆収着体は、収着体または材料の総質量に基づいて、少なくとも90質量%(ある実施の形態において、少なくとも95質量%、ある他の実施の形態において、少なくとも98質量%)の活性炭、硫黄および添加剤を含む。
【0126】
本発明のA群の収着材料は、石炭ガス化プロセス中に生成される典型的な合成ガス流からヒ素、カドミウム、水銀およびセレンを除去できると考えられる。本発明のプロセスに有用なA群の収着材料は、燃焼排ガス流から水銀を除去するのに特に効果的であることが分かった。ある毒性元素、例えば、水銀に関するA群の収着材料の除去容量は、典型的に、2つのパラメータ、初期除去効率および長期除去容量により特徴付けられる。水銀に関して、初期水銀除去効率および長期水銀除去容量を特徴付けるために、以下の手法を使用する:
【0127】
テストすべき収着体および/または収着材料を、160℃にある特定の組成を有する基準燃焼排ガスを7500h-1の空間速度でその中を通過させる固定床中に装填する。この排ガス流中の水銀濃度を、収着剤床の前後で測定する。任意の所定の時点で、瞬間水銀除去効率(Eff(Hg))は、以下のように計算される:
【数7】

【0128】
ここで、C0は、収着剤床の直前の燃焼排ガス流中のμg・m-3で表された総水銀濃度であり、C1は、収着剤床の直後の燃焼排ガス流中のμg・m-3で表された総水銀濃度である。初期水銀除去効率は、新たなテスト収着材料が装填された後の最初の1時間のテスト中の平均水銀除去効率と定義される。典型的に、収着剤固定床の水銀除去効率は、収着剤床にますます水銀が付着するにつれて、時間の経過と共に減少する。水銀除去容量は、蒸気のテスト条件下で瞬間水銀除去効率が90%に減少するまでの、収着材料の単位質量当たりの収着剤床により捕捉された水銀の総量と定義される。水銀除去容量は、典型的に、収着材料1g当たりの捕捉された水銀のmgで表される(mg・g-1)。
【0129】
例示のテスト基準燃焼排ガス(ここではRFG1と称する)は、以下の体積組成を有する:5%のO2;14%のCO2;1500ppmのSO2;300ppmのNOx;100ppmのHCl;20〜25μg・m-3のHg;残りの量のN2;ここで、NOxは、NO2、N2OおよびNOの組合せであり;Hgは、元素の水銀(Hg(0)、50〜60モル%)および酸化水銀(40〜50モル%)の組合せである。
【0130】
本発明のある実施の形態において、本発明のプロセスに有用なA群の収着材料は、少なくとも91%、ある実施の形態において、少なくとも92%、ある他の実施の形態において、少なくとも95%、ある他の実施の形態において、少なくとも97%、ある他の実施の形態において、少なくとも98%、ある他の実施の形態において、少なくとも99%、ある他の実施の形態において、少なくとも99.5%のRFG1に関する初期水銀除去効率を有する。
【0131】
本発明のある実施の形態において、A群の収着材料は、5%のO2;14%のCO2;1500ppmのSO2;300ppmのNOx;20〜25μg・m-3のHgを含み、高濃度のHClと低濃度のHClを同様に有する燃焼排ガスについて、少なくとも91%の高い初期水銀除去効率を有することが都合よい。「高濃度のHCl」は、処理すべきガス中のHCl濃度が少なくとも20ppmであることを意味する。「低濃度のHCl」は、処理すべきガス中のHCl濃度が多くとも10ppmであることを意味する。本発明のある実施の形態の収着体および/または収着材料は、以下の組成:5%のO2;14%のCO2;1500ppmのSO2;300ppmのNOx;5ppmのHCl;20〜25μg・m-3のHg;残りの量のN2;を有する燃焼排ガス(RFG2と称する)について、少なくとも91%(ある実施の形態において、少なくとも95%、ある他の実施の形態において、少なくとも98%、ある他の実施の形態において、少なくとも99.0%、ある他の実施の形態において、少なくとも99.5%)の高い初期水銀除去効率を有することが都合よい。低HCl燃焼排ガスに関する本発明のA群の収着材料のこれらの実施の形態の高い水銀除去効率は、従来技術と比較して特に都合よい。従来の活性炭粉末の注入を含む従来技術のプロセスにおいて、典型的に、そこそこの初期水銀除去効率を得るために、燃焼排ガスにHClを加える必要がある。低HCl濃度で高い水銀除去効率を示す本発明の実施の形態により、HClを燃焼排ガス流中に注入する必要なく、このガス流から水銀を効率的かつ効果的に除去することができる。
【0132】
本発明のある実施の形態において、A群の収着材料は、5%のO2;14%のCO2;1500ppmのSO2;300ppmのNOx;20〜25μg・m-3のHgを含み、高濃度のSO3(5ppm、8ppm、10ppm、15ppm、20ppm、30ppmなどの)と低濃度のSO3(0.01ppm、0.1ppm、0.5ppm、1ppm、2ppmなどの)を同様に有する燃焼排ガスについて、少なくとも91%の高い初期水銀除去効率を有することが都合よい。「高濃度のSO3」は、処理すべきガス中のSO3濃度が少なくとも3体積ppmであることを意味する。「低濃度のSO3」は、処理すべきガス中のSO3濃度が3体積ppm未満であることを意味する。本発明のある実施の形態の収着体および/または収着材料は、以下の組成:5%のO2;14%のCO2;1500ppmのSO2;300ppmのNOx;5ppmのSO3;20〜25μg・m-3のHg;残りの量のN2;を有する燃焼排ガス(RFG3と称する)について、少なくとも91%(ある実施の形態において、少なくとも93%、ある実施の形態において、少なくとも95%、ある実施の形態において、少なくとも98%、ある実施の形態、少なくとも99%、ある他の実施の形態において、少なくとも99.5%)の高い初期水銀除去効率を有することが都合よい。高SO3燃焼排ガスについて、本発明のプロセスに有用なA群の収着材料および/またはその前駆体のある実施の形態の高い水銀除去効率は、従来技術と比べて特に都合よい。従来の活性炭粉末の注入を含む従来技術のプロセスにおいて、典型的に、そこそこの初期水銀除去効率を得るために、燃焼排ガスからSO3を除去する必要がある。高SO3濃度で高いの水銀除去効率を示す本発明の実施の形態により、燃焼排ガス流からSO3を先に除去する必要なく、このガス流から水銀を効率的かつ効果的に除去することができる。
【0133】
さらに、本発明のある実施の形態において、A群の収着材料は、少なくとも0.10mg・g-1、ある実施の形態において、少なくとも0.20mg・g-1、ある実施の形態において、少なくとも0.25mg・g-1、ある実施の形態において、少なくとも0.30mg・g-1の、RFG1に関する高い水銀除去効率を有することが都合よい。
【0134】
さらに、本発明のある実施の形態において、A群の収着材料は、少なくとも0.10mg・g-1、ある他の実施の形態において、少なくとも0.20mg・g-1、ある他の実施の形態において、少なくとも0.25mg・g-1、ある他の実施の形態において、少なくとも0.30mg・g-1の、RFG2に関する高い水銀除去効率を有することが都合よい。それゆえ、これらの実施の形態による収着体は、低HCl燃焼排ガス流に関して高い水銀除去効率を有する。このことは、従来技術の水銀除去プロセスと比べて特に都合よい。
【0135】
さらに、本発明のある実施の形態において、A群の収着材料は、RFG3に関して、少なくとも0.20mg・g-1、ある実施の形態において、少なくとも0.25mg・g-1、ある実施の形態において、少なくとも0.30mg・g-1の高い水銀除去効率を有することが都合よい。それゆえ、これらの実施の形態による収着体は、高SO3燃焼排ガス流に関して高い水銀除去効率を有する。このことは、従来技術の水銀除去プロセスと比べて特に都合よい。
【0136】
収着体および/または収着材料の流体流からの元素の水銀の除去能力のために、このプロセスの特に都合よい実施の形態は、水銀原子の少なくとも10モル%が元素の状態にある、水銀を含むガス流内に収着体および/または収着材料を配置する工程を含む。ある実施の形態において、ガス流中に含まれる水銀原子の少なくとも20%、ある他の実施の形態において、少なくとも30%、ある他の実施の形態において、少なくとも40%、ある他の実施の形態において、少なくとも50%、ある他の実施の形態において、少なくとも60%、ある他の実施の形態において、少なくとも70%が、元素の状態にある。
【0137】
本発明のある実施の形態の収着体および/または収着材料の流体流からの水銀の除去能力のために、このガス流がHClを非常に低いレベルで含む場合でさえも、そのプロセスの特に都合よい実施の形態は、水銀と、HClを、50体積ppm未満、ある実施の形態において、40ppm未満、ある他の実施の形態において、30ppm未満、ある他の実施の形態において、20ppm未満、ある他の実施の形態において、10ppm未満のHCl濃度で含むガス流内に収着体および/または収着材料を配置する工程を含む。
【0138】
収着体および/または収着材料の流体流からの水銀の除去能力のために、このガス流がSO3を高いレベルで含む場合でさえも、そのプロセスの特に都合よい実施の形態は、水銀と、SO3を、3体積ppmより高い、ある実施の形態において、5ppmより高い、ある他の実施の形態において、8ppmより高い、ある他の実施の形態において、10ppmより高い、ある他の実施の形態において、20ppmより高いSO3濃度で含むガス流内に収着体および/または収着材料を配置する工程を含む。
【0139】
本発明に有用なA群の収着材料の前駆体は、以下の工程:
(A) 炭素源材料、硫黄源材料、添加剤源材料および随意的な充填材料を含むバッチ混合材料から形成されたバッチ混合体を提供する工程であって、添加剤源材料がこのバッチ混合材料中に実質的に均一に分布している工程、
(B) このバッチ混合体をO2欠乏雰囲気内で高温炭化温度に曝露することによって、バッチ混合体を炭化して、炭化したバッチ混合体を得る工程、および
(C) 炭化したバッチ混合体をCO2および/またはH2O含有雰囲気内で高温活性化温度で活性化させる工程、
を含むプロセスにより製造することができる。
【0140】
ある実施の形態において、この炭素源材料としては、合成炭素含有高分子材料;活性炭粉末;チャコール粉末;コールタールピッチ;石油ピッチ;木粉;セルロースおよびその誘導体;小麦粉;木の実の殻の粉末;デンプン;コークス;またはこれらの任意の2種類以上の混合物または組合せが挙げられる。これらの材料の全ては、本発明のプロセスに有用な収着材料の最終的な活性炭基質中に少なくともある程度保持できる、分子レベルの構造単位で炭素原子を含むある成分を含有する。
【0141】
ある実施の形態において、合成高分子材料は、周囲温度で溶液または低粘度液体の形態にある合成樹脂であって差し支えない。あるいは、合成高分子材料は、周囲温度で固体であり、加熱または他の手段によって液化できる。有用な高分子炭素源材料の例としては、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂(例えば、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコールなど)が挙げられる。さらにまた、ある実施の形態において、約50から100センチポアズの例示の粘度範囲を有する、比較的低粘度の炭素前駆体(例えば、熱硬化性樹脂)が好ましいことがある。別の実施の形態において、任意の高炭素収率樹脂を使用して差し支えない。この目的のために、高い炭素収率は、樹脂の出発質量の約10%より多くが、炭化の際に炭素に転化されることを意味する。別の実施の形態において、合成高分子材料は、フェノール樹脂またはフラン樹脂などのフルフリルアルコール系樹脂を含んで差し支えない。フェノール樹脂は、低粘度、高い炭素収率、他の前駆体と比べて硬化の際の高度の架橋、および低コストのために、再度、好ましいことがある。例示の適したフェノール樹脂は、プリオフェン樹脂などのレゾール樹脂である。例示の適切なフラン液体樹脂は、米国、インディアナ州所在のQOケミカルス社からのFurcab−LPである。本発明において合成炭素前駆体として使用するのによく適している例示の固形樹脂は固形フェノール樹脂またはノボラックである。さらにまた、ノボラックおよび1種類以上のレゾール樹脂の混合物を、適切な高分子炭素源材料として使用しても差し支えないと理解すべきである。フェノール樹脂は、バッチ混合材料を形成するために他の材料と混合したときに、予備硬化しても未硬化であってもよい。フェノール樹脂を予備硬化する場合、予備硬化材料は、予め添加された、硫黄、添加剤または随意的な無機充填剤を含んでいるであろう。先に示したように、ある実施の形態において、硬化性の未硬化樹脂が、バッチ混合材料中に炭素源材料の一部として含まれることが望ましい。硬化性材料は、熱可塑性でも熱硬化性でも、連鎖成長、架橋などのある反応を経て、穏やかな熱処理、照射、化学的活性化などの、硬化条件に曝露されたときに、高度に重合した硬化材料を形成する。
【0142】
ある実施の形態において、押出プロセスに典型的に用いられる有機結合剤が、同様に、炭素源材料の一部であって差し支えない。使用できる例示の結合剤は、セルロースエーテルなどの可塑化有機結合剤である。典型的なセルロースエーテルとしては、メチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシブチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、およびそれらの混合物が挙げられる。さらに、本発明の実施において、メチルセルロースおよび/またはメチルセルロース誘導体が、有機結合剤として特に適しており、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはそれらの組合せが好ましい。
【0143】
本発明のプロセスのある実施の形態において、炭化可能な有機充填剤を炭素源材料の一部として用いてもよい。例示の炭化可能な充填剤は、天然と合成、疎水性と親水性、繊維性と非繊維性両方の充填剤を含む。例えば、ある天然の充填剤は、針葉樹、例えば、松、トウヒ、アメリカスギなど;広葉樹、例えば、セイヨウトネリコ、ブナ、樺の木、カエデ、ナラなど;おが屑、殻の繊維、例えば、粉砕されたアーモンドの殻、ココナツの殻、アンズの種の殻、落花生の殻、ペカンの殻、ウォールナッツの殻など;綿繊維、例えば、コットンフロック、綿織物、セルロース繊維、綿実繊維、裁断食物繊維、例えば、麻、ココナツ繊維、ジュート、サイザル、およびトウモロコシの穂軸、柑橘類パルプ(乾燥)、大豆ミール、ミズゴケ、小麦粉、綿繊維、トウモロコシ、ジャガイモ、米、タピオカ、などの他の材料である。ある合成材料は、再生セルロース、レーヨン織物、セロファン等である。ある特にに適した炭化可能な繊維充填剤は、ニューヨーク州、ノース・トナウォンダ所在のインターナショナル・フィラー社(International Filler Corporation)により供給されるセルロース繊維である。この材料は、以下の篩分析を有する:1〜2%が40メッシュ(420マイクロメートル)に引っかかり、90〜95%が100メッシュ(149マイクロメートル)を通り、55〜60%が200メッシュ(74マイクロメートル)を通る。ある疎水性有機合成充填剤は、ポリアクリロニトリル繊維、ポリエステル繊維(フロック)、ナイロン繊維、ポリプロピレン繊維(フロック)または粉末、アクリル繊維または粉末、アラミド繊維、ポリビニルアルコールなどである。そのような有機繊維質充填剤は、一部は、炭素源材料として、一部は、バッチ混合体への機械的性質の向上剤として、また一部は、炭化の際にほとんどが気化する一時的細孔形成剤として可能するであろう。
【0144】
添加剤源材料の非限定的例としては、アルカリおよびアルカリ土類のハロゲン化物、酸化物および水酸化物;バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ニオブ、モリブデン、銀、タングステン、およびランタノイド元素の酸化物、硫化物および塩が挙げられる。添加剤源材料中に金属元素は、様々な価数であって差し支えない。例えば、添加剤源材料中に鉄が含まれる場合、鉄は、+3、+2または0価で、または異なる価数の混合物として存在してよく、金属の鉄(0)、FeO、Fe23、Fe38、FeS、FeCl2、FeCl3、FeSO4などとして存在し得る。別の例として、添加剤源原料中にマンガンが存在する場合、マンガンは、+4、+2または0価で、または異なる価数の混合物として存在してよく、金属のマンガン(0)、MnO、MnO2、MnS、MnCl2、MnCl4、MnSO4などとして存在し得る。
【0145】
硫黄源材料の非限定的例としては、硫黄粉末;硫黄含有粉末樹脂;硫化物;硫酸塩;および他の硫黄含有化合物;またはこれらの任意の2種類以上の混合物または組合せが挙げられる。例示の硫黄含有化合物としては、硫化水素および/またはその塩、二硫化炭素、二酸化硫黄、チオフェン、硫黄無水物、硫黄ハロゲン化物、硫酸エステル、亜硫酸、スルファシド(sulfacid)、スルファトール(sulfatol)、スルファミン酸、スルファン(sulfan)、スルファン(sulfane)、硫酸およびその塩、亜硫酸、スルホン酸、スルホベンジド、およびそれらの混合物が挙げられる。元素の硫黄粉末を使用する場合、ある実施の形態において、約100マイクロメートル以下の平均粒径を有することが好ましい。さらにまた、ある実施の形態において、元素の硫黄粉末が約10マイクロメートル以下の平均粒径を有することが好ましい。
【0146】
無機充填剤は、バッチ混合材料中に存在する必要はない。しかしながら、その充填材料は、存在する場合、例えば、酸化物ガラス;酸化物セラミック;または他の耐火性材料であって差し支えない。使用できる例示の無機充填剤としては、粘土、ゼオライト、タルクなどの酸素含有鉱物またはその塩、炭酸カルシウムなどの炭酸塩、カオリン(アルミノケイ酸塩粘土)、飛散灰(火力発電所における石炭燃焼後に得られるアルミノケイ酸塩灰)などのアルミノケイ酸塩、ケイ酸塩、例えば、ウォラストナイト(メタケイ酸カルシウム)、チタン酸塩、ジルコン酸塩、ジルコニア、ジルコニアスピネル、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、ムライト、アルミナ、アルミナ三水和物、ベーマイト、スピネル、長石、アタパルジャイト、およびアルミノケイ酸塩繊維、コージエライト粉末などが挙げられる。特に適した無機充填剤のいくつかの例は、コージエライト粉末、タルク、粘土、およびFiberfaxの名称で、ニューヨーク州、ナイアガラフォール所在のカーボランダム社(Carborundum Co.)により提供されているようなアルミノケイ酸塩繊維、およびこれらの組合せである。Fiberfaxアルミノケイ酸塩繊維は、直径が約2〜6マイクロメートルであり、長さが約20〜50マイクロメートルである。無機充填剤の追加の例は、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化アルミニウム、炭化ジルコニウム、炭化ホウ素、および炭化アルミニウムチタンなどの様々な炭化物;重曹、ナーコ石、方解石、ハンクス石およびリオットタイトなどの炭酸塩または炭酸塩含有鉱物;窒化ケイ素などの窒化物である。
【0147】
バッチ混合材料は、成形助剤、一時的充填剤(典型的に、その後の炭化工程および/または活性化工程中になくなって、成形体中に空隙を残す充填材料)などの他の成分をさらに含んでもよい。この目的のために、例示の成形助剤としては、石鹸、オレイン酸、リノール酸などの脂肪酸、ポリオキシエチレンステアレートなど、またはそれらの組合せが挙げられる。ある実施の形態において、ステアリン酸ナトリウムが好ましい成形助剤である。随意的な押出助剤の最適化量は、組成と結合剤による。バッチの押出および硬化特徴を改善するのに有用な他の添加剤は、リン酸および油である。リン酸は、硬化速度を改善し、吸着容量を増加させる。リン酸は、含まれる場合、典型的に、バッチ混合材料中に約0.1質量%から5質量%の量で含まれる。さらにまた、油添加剤は、押出しを支援し、表面積および気孔率の増加をもたらすことができる。この目的のために、随意的な油を、バッチ混合材料の約0.1から5質量%の範囲の量で加えることができる。使用できる例示の油は、パラフィン系および/または芳香族および/または脂環式化合物を含有する、約250から1000の分子量を有する石油が挙げられる。主にパラフィン構造および脂環式構造からなるいわゆるパラフィン油が好ましい。これらは、市販の油中に通常存在する防錆剤や酸化防止剤などの添加剤を含有してもよい。ある有用な油は、ニュージャージー州、ウェーン所在のレキット・インド・コールマン社(Reckitt and Coleman Inc.)からの3・in・1家庭用油、または3M社からの3・in・1油である。他の有用な油としては、合成油系のポリ(アルファオレフィン)、エステル、ポリアルキレングリコール、ポリブテン、シリコーン、ポリフェニルエーテル、CTFE油、および他の市販の油が挙げられる。ヒマワリ油、ゴマ油、ピーナッツ油などの植物油も有用である。特に適しているのは、約10から300センチポアズ、好ましくは約10から150センチポアズの粘度を有する油である。
【0148】
最終的な収着材料において所望の細孔構造を得るために、バッチ混合材料中に随意的な細孔形成剤を含ませても差し支えない。ある実施の形態において、例示の細孔形成剤としては、高温(>400℃)で不活性雰囲気中において分解して、ほとんどまたはまったく残留物を残さない、ポリプロピレン、ポリエステルもしくはアクリル粉末または繊維が挙げられる。追加の細孔形成剤としては、天然と合成のデンプンが挙げられる。例えば、細孔形成剤としてデンプンが用いられるときなどの、ある場合において、炭化プロセスの前に、水分解により、ハニカムを硬化した後に水溶性細孔形成剤を除去してもよい。あるいは、別の実施の形態において、適切な細孔形成剤は、粒子の膨張により、マクロ細孔を形成することができる。例えば、塩化水素酸、硫酸または硝酸などの酸を含有する、挿入(intercalated)グラファイトは、加熱された結果、酸の膨張によりマクロ細孔を形成する。さらにまた、マクロ細孔は、ある一時的材料を溶解させることによって形成しても差し支えない。例えば、所望の細孔径に対応する粒径を有する重曹、炭酸カルシウムまたは石灰石を炭質材料と共に押し出して、モノリス収着剤を形成しても差し支えない。重曹、炭酸カルシウムまたは石灰石は、炭化および活性化プロセス中に水溶性酸化物を形成し、これは、その後、モノリス収着剤を水中に浸漬することによって、浸出せしめられて、マクロ細孔を形成することができる。
【0149】
最終的な収着体および/または収着材料の全体に渡る添加剤の分布を得るために、炭素源材料および添加剤源材料が緊密に混合されて、バッチ混合材料を形成することが非常に望ましい。この目的のために、ある実施の形態において、様々な供給源材料を、微粉、またはできれば溶液の形態で提供し、次いで、効果的な混合装置を使用して緊密に混合することが望ましい。粉末を使用する場合、粉末は、ある実施の形態において、100μm以下、ある他の実施の形態において、10μm以下、ある他の実施の形態において、1μm以下の平均サイズで提供される。
【0150】
様々な装置およびプロセスを用いて、バッチ混合材料を所望の形状のバッチ混合体に形成してもよい。バッチ混合体の造形に、例えば、押出し、注型、プレス成形などを用いてよい。これらの内で、ある実施の形態において、押出しが特に好ましい。ハニカム、ペレット、ロッド、スパゲッティ状などの様々な形状と構造を持つ収着体を製造するために、標準的な押出機(一軸、二軸など)および特注の押出ダイを使用することによって、押出しを行うことができる。押出しは、流体通路として機能できる複数の空の通路を有するモノリスハニカム体を製造するのに特に効果的である。押出しは、押出プロセス中に全ての供給源材料を同様に極めて緊密に混合できるという点で都合よい。
【0151】
ある実施の形態において、バッチ混合材料は未硬化の硬化性材料を含むことが望ましい。それらの実施の形態において、バッチ混合体の形成の際に、収着体および/または収着材料は、典型的に、硬化性成分が硬化するような硬化条件、例えば、熱処理に施され、その結果、硬化したバッチ混合体が形成される。硬化したバッチ混合体は、その硬化する前のものよりも良好な機械的性質を有する傾向にあり、それゆえ、下流での加工処理工程においてより取扱いし易い。さらに、どのような特定の理論により拘束する意図も必要性もないが、その硬化工程により、炭素主鎖を有する高分子網目構造が形成され、結果として、この主鎖は、その後の炭化および活性化工程中に炭素網目構造の形成に寄与し得ると考えられる。ある実施の形態において、硬化は、一般に、空気中において大気圧で、典型的に、形成されたバッチ混合体を約100℃から約200℃の温度で約0.5から約5.0時間に亘り加熱することよって行われる。あるいは、ある硬化剤(例えば、フルフリルアルコール)を使用する場合、硬化は、室温で、酸添加剤などの硬化添加剤を添加することによって行っても差し支えない。硬化は、ある実施の形態において、炭素中の毒性金属を吸着する添加剤の分布の均一性を維持するように働くことができる。
【0152】
バッチ混合体の形成、その乾燥、または随意的なその硬化の後、成形体に炭化工程が施され、ここで、バッチ混合体(硬化済みまたは未硬化の)は、O2欠乏雰囲気中で高温炭化温度に加熱される。炭化温度は、600から1200℃、ある実施の形態において、700から1000℃に及び得る。炭化雰囲気は、主に、N2、Ne、Ar、それらの混合物などの非反応性ガスを含み、不活性であり得る。O2欠乏雰囲気中の炭化温度で、バッチ混合体中に含まれる有機物質が分解して、炭質残留物が残る。予測されるように、この高温工程において、複雑な化学反応が生じる。そのような反応としては、特に:
(i) 炭質体を残す、炭素源材料の分解、
(ii) 添加剤源材料の分解、
(iii) 硫黄源材料の分解、
(iv) 硫黄源材料と炭素源材料との間の反応、
(v) 硫黄源材料と炭素との間の反応、
(vi) 硫黄源材料と添加剤源材料との間の反応、
(vii) 添加剤源材料と炭素源材料との間の反応、および
(viii) 添加剤源材料と炭素との間の反応、
が挙げられる。
【0153】
最終的な効果としては、特に、(1)添加剤源材料および/または添加剤の再分布、(2)硫黄の再分布、(3)硫黄源材料(硫酸塩、亜硫酸塩などの)からの元素の硫黄の形成、(4)硫黄源材料(元素の硫黄などの)からの硫黄含有化合物の形成、(5)酸化物形態にある添加剤の形成、(6)硫化物形態にある添加剤の形成、(7)添加剤源材料の一部の減少:が挙げられる。硫黄の一部(特に、元素状態にあるもの)および添加剤源材料の一部(KIなどの)は、炭化中の炭化雰囲気により一掃されるであろう。
【0154】
炭化工程の結果、硫黄と添加剤がその中に分布した炭質体が得られる。しかしながら、この炭化したバッチ混合体は、典型的に、毒性元素の効果的な収着にとって望ましい比表面積を有していない。高い比表面積を有する最終的な収着体および/または収着材料を得るために、さらに、炭化したバッチ混合体を、CO2および/またはH2O含有雰囲気内において高温活性化温度で活性化させる。活性化温度は、600℃から1000℃、ある実施の形態において、600℃から900℃に及び得る。この工程中、炭化したバッチ混合体の炭質構造は穏やかに酸化され:
【化1】

【0155】
その結果、炭質体の構造がエッチングされ、ナノスケールとマイクロスケールの複数の細孔を画成する活性炭基質が形成される。活性化条件(時間、温度および雰囲気)は、所望の比表面積および組成を有する最終生成物を生成するように調節することができる。炭化工程と同様に、この活性化工程の高温のために、複雑な化学反応と物理的変化が生じる。活性化工程の終わりに、添加剤が活性炭基質の全体に渡り分布していることが非常に望ましい。活性化工程の終わりに、添加剤が活性炭基質の全体に渡って実質的に均一に分布していることが非常に望ましい。活性化工程の終わりに、添加剤が細孔の壁表面積の少なくとも30%、ある実施の形態において、少なくとも40%、ある他の実施の形態において、少なくとも50%、ある他の実施の形態において、少なくとも60%、ある他の実施の形態において、少なくとも80%に存在することが非常に望ましい。活性化工程の終わりに、硫黄が活性炭基質の全体に渡り分布していることが非常に望ましい。活性化工程の終わりに、硫黄が活性炭基質の全体に渡って実質的に均一に分布していることが非常に望ましい。活性化工程の終わりに、硫黄が細孔の壁表面積の少なくとも30%、ある実施の形態において、少なくとも40%、ある他の実施の形態において、少なくとも50%、ある他の実施の形態において、少なくとも60%、ある他の実施の形態において、少なくとも80%に存在することが非常に望ましい。
【0156】
ある実施の形態において、全ての添加剤源材料および全ての硫黄源材料が、現場での押出し、注型などの現場成形によって、バッチ混合体中に含まれる。このプロセスには、特に、(a)活性炭体上への添加剤および/または硫黄の装填のその後の工程(含浸などの)を避け、それゆえ、プロセスの工程を潜在的に減少させ、全体のプロセス収率を増加させ、プロセスコストを減少させる、(b)含浸により典型的に得られるものよりも、収着体および/または収着材料中の活性収着部位(添加剤および硫黄)がより均一に分布する、および(c)長い使用期間に亘り処理すべき流体流の流れに耐えることのできる、収着体および/または収着材料中の添加剤および硫黄の耐久性のある堅固な固定が得られる:の利点がある。含浸は、外部のセル壁、大きな細孔(マイクロメートル規模の細孔)の壁面上の被含浸種(添加剤および硫黄など)の好ましい分布をもたらし得る。ナノスケールの細孔の壁面の高い比率に被含浸種を装填することは、時間がかかり、難しいことがある。400から2000m2・g-1の高い比表面積を有する活性炭の表面積のほとんどは、ナノスケールの細孔によるものである。それゆえ、典型的な含浸工程により、そのような活性炭材料の比表面積の大半に被含浸種を装填することは難しいと考えられる。さらに、典型的な含浸工程により、大きな細孔の外部のセル壁および/または壁面に被含浸種の厚く比較的緻密な層が形成される可能性があり、この層によって、より小さいな細孔に出入りする流体通路が遮断され、活性炭の収着機能が効果的減少してしまうと考えられる。さらにまた、収着体および/または収着材料内の典型的な含浸工程中の被含浸種の固定は、主に比較的弱い物理的力によるものであると考えられ、この力は、流体流中に長期に亘り使用するのに不十分であろう。
【0157】
それでもなお、前述したように、ある実施の形態において、実質的に均一はともかく、全ての添加剤および/または硫黄が、活性炭基質の全体に渡り分布する必要はない。これらの実施の形態において、添加剤源材料および硫黄源材料の全てが、バッチ混合体中に現場で形成されるわけではない。活性化工程後、ある添加剤および/または硫黄の含浸の工程を行ってもよいと考えられる。あるいは、活性化工程後、硫黄含有および/または添加剤含有雰囲気による活性炭の処理工程を行ってもよい。そのような添加剤の活性化後の装填は、有機金属化合物、例えば、アセチルアセトン鉄に基づくものなどの、炭化および/または活性化工程に耐えられない添加剤にとっては特に有用である。
【0158】
本発明のプロセスに有用な活性化済み収着材料が一旦形成されたら、この材料に、ペレット化、研削、積層による集成などの後仕上げ工程を行ってもよい。次いで、本発明の様々な形状と組成の収着体を処理すべき流体流内に位置される固定床中に装填してもよい。
【0159】
先に述べたように、A群の粒子は、先に記載した方法などの任意の方法により形成されたA群の前駆体を粉砕することによって形成することができる。
【0160】
あるいは、A群の粒子は、以下の工程:
(a) 前述のような炭素源材料、前述のような硫黄源材料、前述のような添加剤源材料および前述のような随意的な充填材料を含む複数のバッチ混合物粒子を提供する工程であって、添加剤源材料が粒子中に実質的に均一に分布している工程、
(b) バッチ混合物粒子をO2欠乏雰囲気内において高温炭化温度に曝露することによって、バッチ混合物粒子を炭化して、炭化したバッチ混合物粒子を得る工程、および
(c) 炭化したバッチ混合物粒子をCO2および/またはH2O含有雰囲気内において高温炭化温度で活性化させる工程、
を含むプロセスによって形成しても差し支えない。
【0161】
炭化されたバッチ混合物粒子をそのまま使用しても、A群の粒子として使用する前に、さらに粉砕してもよい。
【0162】
ある実施の形態において、工程(a)で、バッチ混合物粒子は、炭素含有樹脂、硫黄源材料および添加剤源材料を含む混合物を流動乾燥させることによって、形成する。次いで、このように流動乾燥された粒子をその後の工程において炭化し、活性化して、A群の粒子またはその前駆体を得る。
【0163】
本発明を、収着材料および収着体並びにその製造プロセスの以下の非限定実施例によってさらに説明する。
【実施例】
【0164】
実施例1:
押出組成物を、46%の液体フェノールレゾール樹脂、1%の潤滑油、13%のコージエライト粉末、9%の硫黄粉末、7%のアセチルアセトン鉄、18%のセルロース繊維、5%のMethocel結合剤および1%のステアリン酸ナトリウムにより配合した。この混合物を混ぜ合わせ、次いで、押し出した。次いで、押出ハニカムを乾燥させ、空気中において150℃で硬化させ、その後、窒素中での炭化および二酸化炭素中での活性化を行った。次いで、この活性炭ハニカムサンプルを水銀除去容量についてテストした。テストは、22μg・m-3の元素の水銀の入口濃度で160℃で行った。水銀の搬送ガスは、N2、SO2、O2およびCO2を含んでいた。ガスの流量は750ml/分であった。全水銀除去効率は86%であり、一方で、元素の水銀の除去効率は100%であった。
【0165】
実施例2:
別の押出組成物を実施例1と同様に押し出したが、13%の代わりに12%のコージエライト粉末を、7%のアセチルアセトン鉄の代わりに4%のアセチルアセトン鉄と4%のヨウ化カリウムを用いた。活性化後、これらのサンプルは、90%の全水銀除去効率および100%の元素の水銀の除去効率を示した。それゆえ、組成物中にKIが存在したことにより、効率が増加した。
【0166】
実施例3:
この実験において、押出組成物は、59%のフェノール、1%のリン酸、1%の油、9%の硫黄粉末、3%の酸化鉄、19%のセルロース繊維、7%のMethocel結合剤および1%のステアリン酸ナトリウムであった。これらのサンプルを押し出し、硬化させ、炭化し、活性化し、水銀除去性能について実施例1におけるようにテストした。水銀除去効率は、全水銀と元素の水銀、それぞれについて、87%と97%であった。
【0167】
実施例4:
この実験において、6%のMnO2、13%のコージエライト、7%の硫黄、19%のセルロース繊維、5%のMethocel結合剤、1%のステアリン酸ナトリウム、47%のフェノールレゾール、1%のリン酸および1%の油からなる組成物について、酸化マンガンを添加剤として用いた。この組成物に基づくサンプルの水銀除去効率は、全水銀と元素の水銀、それぞれについて、92%および98%であった。
【0168】
実施例5:
この実施例において、元素の硫黄の代わりに、MnSとして、マンガンと組み合わせた硫黄を加えた。その組成は、15%のコージエライト、10%のMnS、20%のセルロース繊維、5%のMethocel結合剤、1%のステアリン酸ナトリウム、47%のフェノールレゾール、および1%の油であった。
【0169】
硬化、炭化および活性化を行い、これらのハニカムの水銀除去効率は、全水銀と元素の水銀について、84%および93%であった。
【0170】
実施例6:
実施例5の実験を繰り返したが、添加剤として二硫化モリブデン(MoS2)を用いた。これらのサンプルにより、全水銀と元素の水銀について、90%および96%の水銀除去効率が得られた。
【0171】
これらの実験は、押し出し組成物中に現場での触媒として含まれたときの添加剤の様々な組合せにより、高い水銀除去効率の活性炭ハニカムが得られることを示している。
【0172】
これらのハニカムは、燃焼排ガスからの、並びに石炭ガス化における、セレン、カドミウムおよび他の毒性金属などの他の汚染物質の除去にも有用であると予測される。
【0173】
実施例7:
この実験において、押出組成物は、14%の木炭、47%のフェノール樹脂、7%の硫黄、7%の酸化マンガン、18%のセルロース繊維、5%のミシカル(mythical)結合剤および1%のステアリン酸ナトリウムであった。これらのサンプルを、実施例1におけるように、押し出し、硬化させ、炭化し、活性化させた。
【0174】
次いで、これらのサンプルを水銀除去容量についてテストした。このテストは、24μg/m3の元素の水銀の入口濃度で140℃で行った。水銀の搬送ガスは、N2、HCl、SO2、NOx、O2およびCO2を含んでいた。ガスの流量は650ml/分であった。水銀除去効率は、全水銀と元素の水銀、それぞれについて、100%および99%であった。以下の表IIを参照のこと。
【0175】
実施例8:
この実施例において、押出組成物は、16%の硬化した硫黄含有フェノール樹脂、45%のフェノール樹脂、8%の硫黄、7%の酸化マンガン、18%のセルロース繊維、4%のミシカル結合剤および1%のステアリン酸ナトリウムであった。これらのサンプルを、実施例1におけるように、押し出し、硬化させ、炭化し、活性化させた。この活性炭サンプルを実施例7におけるようにテストした。水銀除去効率は、全水銀と元素の水銀、それぞれについて、100%および99%であった。以下の表IIを参照のこと。それゆえ、実施例7および8の両方は、優れた水銀除去結果を達成した。
【0176】
異なる添加剤を含む様々な収着体を、水銀除去効率についてテストした。テスト結果が以下の表Iに列記されている。本出願における全ての表と図面において、Hg0またはHg(0)は元素の水銀を意味し、HgTまたはHg(T)は、元素の水銀と酸化した水銀を含む全水銀を意味する。Eff(Hg0)またはEff(Hg(0))は、元素の水銀に関する瞬間の水銀除去効率を意味し、Eff(HgT)またはEff(Hg(T))は、全ての酸化状態での水銀に関する瞬間の水銀除去効率を意味する。先に丁度記載したように、Eff(Hg(x))は、以下のように計算され:
【数8】

【0177】
ここで、C0およびC1は、所定のテスト時間での、それぞれ、Hg(x)の入口濃度および出口濃度である。
【0178】
表Iにおけるサンプル記号CおよびDの比較により、添加剤としてMnSを含むA群の収着材料は、バッチ混合材料中に元素の硫黄を含まない場合よりも、含む場合のほうが、高い性能を有する傾向にあることが明らかに示される。
【0179】
図1は、時間の経過による、本発明による収着剤と比較の収着剤のテストしたサンプルの水銀除去容量を比較したグラフである。左側の縦軸は、テストした収着剤のテストサンプルによって捕捉された単位質量当たりの水銀の総量(MSS、mg・g-1)である。右側の縦軸は、テストした収着剤の瞬間水銀除去効率(Eff(Hg))であり、これは、測定され、先の式にしたがって計算された瞬間の全水銀除去効率である。横軸は、サンプルがテストガスに曝露される時間である。この図におけるEff(Hg)データの一部が、以下の表IIIにも示されている。本発明による収着剤は、添加剤として、硫黄と、現場で押し出されたMnO2、および無機充填剤として約45質量%のコージエライトを含む。サンプル2.2は、現場で押し出された添加剤を含まず、匹敵する量の硫黄とコージエライト、および添加剤としての含浸FeSO4とKIを含む比較収着剤である。曲線101および103は、それぞれ、本発明による収着剤のEff(Hg)およびMSSを示している。曲線201および203は、それぞれ、比較収着剤のEff(Hg)およびMSSを示している。この図および表IIIのデータから分かるように、この収着剤は、約20のμg・m-3で全水銀を含む擬似燃焼排ガスへの250時間の曝露後でさえも、水銀除去効率の急激な低下を示さず、飽和状態(または水銀の破過点)に到達する前に、A群の収着材料によってかなり多量の水銀を捕捉できることを表している。曲線201および表IIIのデータは、比較収着剤が、テストを終わらせた約70時間後まで、50時間以内で瞬間水銀除去効率が急激に連続的に低下し、収着剤の早い飽和を表すことを示している。曲線101および203は、テスト期間の初期段階ではある程度まで重複するが、203は約69時間で終わる。
【0180】
図1は、現場で押し出された添加剤を含むこの実施の形態の収着剤が、含浸された添加剤を有する収着剤よりも、特に長期間で、ずっと高い水銀除去容量を有し得ることを示している。特定の理論により拘束する意図も必要性もなく、本発明の収着体のすぐれた性能は、添加剤のより均一な分布、および添加剤により活性炭基質内の細孔がそれほど閉塞されないことによると考えられる。
【0181】
図2は、様々な入口水銀濃度での、本発明のある実施の形態による収着体の入口水銀濃度(CHg0)および出口水銀濃度(CHg1)を示すグラフである。この図は、本発明のある実施の形態の収着体を用いて、様々な水銀濃度(70超から約25μg・m-3までに及ぶ)で水銀を効果的に除去できることを明らかに示している。
【0182】
図3は、現場で押し出した添加剤を含む本発明による収着体の断面の一部のSEM画像である。この画像から、添加剤または硫黄の優先的な蓄積は観察されない。図4は、活性化後に含浸された添加剤を含む比較の収着体の断面の一部のSEM画像である。セル壁上の明らかに見える材料の白い層は含浸された添加剤である。添加剤のこの比較的緻密な含浸層が、セル壁内の多くのマクロスケールとナノスケールの細孔中への入口を閉塞し、比較収着体の全体の性能を減少させ得ると考えられる。
【0183】
本発明の範囲および精神から逸脱せずに、本発明に様々な改変と変更を行えることが当業者には明らかであろう。それゆえ、本発明は、本発明の改変と変更を、それらが添付の特許請求の範囲およびその同等物に入るという条件で、包含することが意図されている。
【表1】

【表2】

【表3】

【符号の説明】
【0184】
501 装置
503 燃焼排ガス流
505 A群の粒子
507 収着剤の流動床または充填床
509 静電集塵機
511 清浄になった燃焼排ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体流からAs,Cd,HgおよびSeの内の少なくとも1種類を除去するプロセスであって、
(I) 複数の細孔を画成する活性炭基質、
硫黄、および
流体流からのAs,Cd,HgおよびSeの内の少なくとも1種類の除去を促進するために適合された添加剤、
を含むA群の収着材料の複数のA群の粒子を提供する工程であって、前記添加剤が、前記活性炭基質の全体に渡り分布している工程、および
(II) 前記流体流を前記A群の収着材料の複数のA群の粒子に接触させる工程、
を有してなるプロセス。
【請求項2】
前記硫黄が、前記活性炭基質の全体に渡り分布していることを特徴とする請求項1記載のプロセス。
【請求項3】
工程(II)において、前記複数のA群の粒子の少なくとも一部が、収着剤粉末の形態でA群の粒子の導入位置で前記流体流中に導入され、
前記収着剤粉末のA群の粒子が、前記流体流と共に、下流のA群の粒子の収集位置まで移動することができ、
前記プロセスが、
(III) 前記A群の粒子の収集位置で前記収着剤粉末のA群の粒子の少なくとも一部を収集する工程、
を含むことを特徴とする請求項1記載のプロセス。
【請求項4】
工程(III)が、
繊維性粉末収集機、静電集塵機、またはそれらの組合せを使用することによって、前記収着剤粉末のA群の粒子の大半を収集する工程を含むことを特徴とする請求項3記載のプロセス。
【請求項5】
工程(II)において、前記複数のA群の粒子の少なくとも一部が収着剤床内に含まれることを特徴とする請求項1記載のプロセス。
【請求項6】
(I’) 前記A群の収着材料の組成とは異なる組成を有するB群の収着材料の複数のB群の粒子を提供する工程、および
(II’) 前記流体流を前記B群の収着材料の複数のB群の粒子に接触させる工程、
をさらに含むことを特徴とする請求項1記載のプロセス。
【請求項7】
前記A群の収着材料において、前記添加剤が、(i)アルカリ金属およびアルカリ土類金属のハロゲン化物、酸化物および水酸化物;(ii)貴金属およびその化合物;(iii)バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ニオブ、モリブデン、銀、タングステンおよびランタノイド元素の酸化物、硫化物および塩;および(iv)(i)、(ii)および(iii)の内の2つ以上の組合せおよび混合物:から選択されることを特徴とする請求項1記載のプロセス。
【請求項8】
前記A群の収着材料において、前記添加剤が、(i)マンガンの酸化物、硫化物および塩;(ii)鉄の酸化物、硫化物および塩;(iii)(i)とKIの組合せ;(iv)(ii)とKIの組合せ;および(v)(i)、(ii)、(iii)および(iv)の内の任意の2つ以上の組合せおよび混合物:から選択されることを特徴とする請求項1記載のプロセス。
【請求項9】
複数の細孔を画成する活性炭基質;硫黄;および流体流からのAs,Cd,HgおよびSeの内の少なくとも1種類の除去を促進するように適合された添加剤を含む収着材料であって、前記添加剤が前記活性炭基質の全体に渡り分布している収着材料の粒子を製造するプロセスであって、
(a) 炭素源材料、硫黄源材料、添加剤源材料および随意的な充填材料を含む複数のバッチ混合物粒子を提供する工程であって、前記添加剤源材料が前記粒子中に実質的に均一に分布している工程、
(b) 前記バッチ混合物粒子をO2欠乏雰囲気内で高温炭化温度に曝露することによって、該バッチ混合物粒子を炭化して、炭化したバッチ混合体を得る工程、および
(c) 前記炭化したバッチ混合物粒子をCO2および/またはH2O含有雰囲気内で高温活性化温度で活性化させる工程、
を含むプロセス。
【請求項10】
工程(a)が、
(a1) 炭素源材料、硫黄源材料、添加剤源材料および随意的な充填材料を混合して、実質的に均一な混合物を得る工程、
(a2) 前記混合物から湿った粒子を形成する工程、および
(a3) 前記湿った粒子を乾燥させて、乾燥したバッチ混合物粒子を得る工程、
を含むことを特徴とする請求項9記載のプロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−537805(P2010−537805A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522940(P2010−522940)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【国際出願番号】PCT/US2008/010155
【国際公開番号】WO2009/032129
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】