説明

流路分岐構造

【課題】流路を分岐する構造に関し、分岐部分の応力集中を低減する。
【解決手段】流路分岐構造10は、内部流体からの内圧が作用する主孔12aが形成された主部品12と、主部品12に接続される分岐部品14とからなる。主部品12の主孔12aは主部品12の端壁面12cに開口しており、分岐部品14は、主孔12aの開口に対面する端壁面14dを有し、さらに分岐部品14には、分岐部品14の端壁面14dに開口して主孔12aに連通し、主孔12aよりも小径で互いに分離された複数の分岐孔14a、14bが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路を分岐する構造に関し、特に、分岐部分の応力集中を低減することができる流路分岐構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような流路分岐構造を持つものとして、コモンレールのような圧力容器において、その主管孔からポートへの分岐孔が設けられる構造を例にとることができる。
【0003】
一般的なコモンレールは、その中心部にレール長手方向に延びる円柱状の主管孔が画成されており、この主管孔の内側壁面の複数個所に交差開口してレール長手方向に直交する分岐孔が形成されている。この分岐孔の主管孔に対する交差開口部分は、応力集中が発生し、疲労破壊の起点となるという問題がある。主管孔の周囲に発生する引張応力と、分岐孔の周囲に発生する引張応力とが合成されて、他の部分よりも大きい引張応力が発生するからである。
【0004】
このような問題を解決するために、従来、疲労強度を高めた特殊な材質を使用する他に、以下のような様々な提案がなされている。
(1) 主管孔において、分岐孔の部分の孔径を小さくして、分岐孔付近の肉厚を厚くして応力集中を低減する(例えば、特許文献1、2)。
(2) 主管孔に対して分岐孔の中心をオフセットすることにより応力集中を低減する(例えば、特許文献1)。
(3) 分岐孔の交差開口近傍を凹面にすることにより応力集中を低減する(例えば、特許文献3、4)。
(4) 主管孔及び/又は分岐孔の断面を楕円形にすることにより応力集中を低減する(例えば、特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3778385号公報
【特許文献2】特開2010−77846号公報
【特許文献3】特開平8−232802号公報
【特許文献4】特開2004−44448号公報
【特許文献5】特開平10−169527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の従来提案される構造では、加工が困難であったり、又は実用上有意差のある応力集中の低減は得られず、その応力集中の低減に限度があるという問題がある。
【0007】
本発明はかかる課題に鑑みなされたもので、応力集中を確実に低減することができ、その加工も容易にすることができる、流路分岐構造を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、流路を分岐する流路分岐構造であって、内部流体からの内圧が作用する主孔が形成された主部品と、該主部品に接続される分岐部品とからなり、前記主部品の主孔は主部品の端壁面に開口しており、前記分岐部品は、前記端壁面及び前記主孔の開口に対面する第1端壁面を有し、さらに分岐部品には、第1端壁面に開口して主孔に連通し、主孔よりも小径で互いに分離された複数の分岐孔が形成されることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の流路分岐構造において、前記分岐部品の前記第1端壁面は、前記主孔の開口に対面する部分が平坦面又は凹曲面となっていることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の流路分岐構造において、前記分岐部品には第1端壁面とは異なる少なくとも第2端壁面及び第3端壁面が形成されており、前記複数の分岐孔の1つは分岐部品の第1端壁面と第2端壁面との間を貫通している一方で、前記複数の分岐孔の別の分岐孔は、分岐部品の第1端壁面と第3端壁面との間を貫通していることを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の流路分岐構造において、前記分岐部品の第2端壁面は、別の主部品の主孔の開口に対面することを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項3又は4記載の流路分岐構造において、前記分岐部品には、さらに第2端壁面と第3端壁面との間を貫通する分岐孔が形成されることを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項3又は4記載の流路分岐構造において、前記分岐部品にはさらに第4端壁面が形成されており、分岐部品には、さらに第2端壁面と第4端壁面との間を貫通する分岐孔が形成されることを特徴とする。
【0014】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の流路分岐構造において、分岐部品には、さらに第1端壁面と第4端壁面との間を貫通する分岐孔と、第2端壁面と第3端壁面との間を貫通する分岐孔とが形成されることを特徴とする。
【0015】
請求項8記載の発明は、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の流路分岐構造において、主部品と分岐部品のいずれか一方に凸部が形成され、該凸部の突出端が前記端壁面又は前記第1端壁面となり、主部品と分岐部品のいずれか他方に凹部が形成され、該凹部の底部が前記端壁面又は前記第1端壁面となっており、前記凸部が前記凹部に挿入されて、前記主孔の周囲で主部品の端壁面と分岐部品の第1端壁面とが当接されることを特徴とする。
【0016】
請求項9記載の発明は、請求項8に記載の流路分岐構造において、前記主部品の端壁面と分岐部品の第1端壁面とは突き当てられてそれらの間にシールが確保され、突き当てられた部分以外に、主部品と分岐部品の境界には隙間が存在することを特徴とする。
【0017】
請求項10記載の発明は、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の流路分岐構造を備え、前記主部品と前記分岐部品とが交互に接続されたコモンレールを特徴とする。
【0018】
請求項11記載の発明は、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の流路分岐構造を備え、前記複数の主部品の間に前記分岐部品が接続された継手構造を特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、分岐部品の第1端壁面が主部品の主孔の開口に対面するために、第1端壁面が主孔の内部流体からの圧縮応力を受ける。よって、従来のように分岐部分付近において引張応力の合成が起こらないので、従来に比較して応力集中を十分に低減させることができる。
【0020】
こうして合成応力の増大を避けることができるので、各部品を小型化及び軽量化することができる。また、部品の材質として、特別に疲労強度を高めた材質を使用する必要はなく、廉価な材質を用いることができるので、材料費の低減を図ることができる。
【0021】
また、主部品と分岐部品のそれぞれの加工を簡単に行うことができる。
【0022】
分岐部品の第1端壁面の主部品の主孔の開口に対面する部分を平坦面又は凹曲面とすることで、主孔の内部流体からの圧縮応力を確実に受けるようにすることができ、引張応力の合成を防ぐことができる。
【0023】
また、必要に応じて、主部品と分岐部品との接続によりコモンレール等の圧力容器、T字継手、十字継手等の継手構造を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態による流路分岐構造をコモンレールに適用した場合の断面図である。
【図2】主部品の縦断面図である。
【図3】分岐部品の縦断面図である。
【図4】エンドキャップの縦断面図である。
【図5】主部品と分岐部品及びエンドキャップとの接続構造を表す部分断面図である。
【図6】図5の6−6線に沿って見た断面図である。
【図7】本発明の第1実施形態による流路分岐構造に作用する応力の説明断面図である。
【図8】(a)は有限要素解析を行った際の本発明のモデルを表し、(b)は従来の構成のモデルを表す。
【図9】本発明の第2実施形態による流路分岐構造を表す主要部断面図である。
【図10】本発明の第3実施形態による流路分岐構造を表す断面図である。
【図11】本発明の第4実施形態による流路分岐構造をT字継手構造に適用した場合の断面図である。
【図12】本発明の第5実施形態による流路分岐構造をT字継手構造に適用した場合の断面図であり、(a)は分解図、(b)は組立図を示す。
【図13】本発明の第6実施形態による流路分岐構造を十字継手構造に適用した場合の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
図1は、本発明の第1実施形態による流路分岐構造をコモンレールといった圧力容器に適用した場合の断面図である。
【0027】
図において、流路分岐構造10は、内部流体からの内圧が作用する主孔12aが形成された金属製の主部品12と、主部品12に接続されて複数の分岐孔14a、14bが形成される金属製の分岐部品14とから構成される。そして、複数の主部品12と複数の分岐部品14とが交互に接続され、さらに端部に位置する主部品12がエンドキャップ16によって閉塞されることでコモンレールを構成しており、各主部品12の主孔12aと各分岐部品14の一方の分岐孔14aとが連通することでコモンレールの主管孔が構成されている。図1では、3つの主部品12と2つの分岐部品14とが示されているが、これは一例であり、必要なポートの数等に応じて任意の数の主部品12と分岐部品14を使用することができる。
【0028】
図2に示したように、主部品12は略円柱形状をなしており、円柱形状の両端部にはさらに小径の円柱状の凹部12bが形成される。各凹部12bの底部となる端壁面12c同士の間を貫通するようにして中心軸上に主孔12aが形成される。各凹部12bの底部となる端壁面12cは平坦面となっており、主孔12aは、平坦面となった端壁面12cに開口している。
【0029】
コモンレールの端部を構成する主部品12に関しては、その凹部12bの内周面にエンドキャップ16と螺合するための雌ネジ12dが形成される。
【0030】
図3に示したように、分岐部品14も略円柱形状をなしており、円柱形状の両端部にはさらに小径の円柱状の凸部14cが形成される。凸部14cは、前記主部品12の凹部12b内に挿入可能となっており、凸部14cの突出端となる端壁面14d(第1端壁面、第2端壁面)は平坦面となって、前記主部品12の凹部12bの端壁面12cに対面して当接されると共に、その一部が主部品12の主孔12aに対面するようになっている。
【0031】
さらに、分岐部品14の側周面の任意の位置には、円柱形状の第2凸部14eが形成されており、第2凸部14eには、同心上に円柱形状の凹部14fが形成される。凹部14fの底部となる端壁面14g(第3端壁面)は平坦面となっており、端壁面14gは端壁面14dに対して直交する方向を向いている。
【0032】
分岐部品14の一方の分岐孔14aは、一対の凸部14cの端壁面14d同士を貫通するようにして、中心軸と平行に形成される。他方の分岐孔14bは、一方の凸部14cの端壁面14dと第2凸部14eの端壁面14g同士を貫通するようにして、中心軸に対して傾斜して形成される。分岐孔14aは各端壁面14dに開口しており、分岐孔14bは、端壁面14dと端壁面14gに開口しており、これら開口が適宜分岐ポートとなることができる。分岐孔14a、14bは、それぞれ主孔12aよりも小径となっており、互いに分離されている。
【0033】
図4に示したように、エンドキャップ16も略円柱形状をなしており、主部品12側には円柱状の凸部16aが形成されている。凸部16aの突出端となる端壁面16bは平坦面となっており、凸部16aの外周面には雄ネジ16cが形成されている。
【0034】
図5及び図6に詳細に示したように、主部品12と分岐部品14との接続付近においては、2つの部品を接続する第1接続部品18と第2接続部品20とが設けられる。
【0035】
第1接続部品18は、主部品12及び分岐部品14の両端部に跨がり外側に配設される。また、主部品12の端部の外周面には雄ネジ12eが形成されており、雄ネジ12eには、第2接続部品20が螺着される。第1接続部品18は、第2接続部品20によって分岐部品14の方への移動が制限されており、その先端の内周面には雌ネジ18aが形成されている。分岐部品14の端部の外周面には雄ネジ14hが形成されており、雄ネジ14hは、第1接続部品18の雌ネジ18aにねじ込まれる。このねじ込みを行うことで、主部品12の凹部12b内に分岐部品14の凸部14cが挿入されて、凹部12bの底部となる端壁面12cと凸部14cの突出端となる端壁面14dとが当接して突き当てられてシールが確立される。第1接続部品18を回転させてねじ込みを行うことで、分岐部品14又は主部品12を回転させずに両者を接続することができる。
【0036】
凸部14cが凹部12b内に挿入されて端壁面12cと端壁面14dとが確実に当接されるために、凹部12bの内径が凸部14cの外径よりも僅かに大きくなっており、且つ、凹部12bの軸方向長さは凸部14cの軸方向長さよりも短くなっている。従って、主部品12の凹部12bの外側と分岐部品14の凸部14cの外側との間には、僅かな隙間が形成されている。
【0037】
エンドキャップ16と主部品12の端部との間においては、主部品12の雌ネジ12dにエンドキャップ16の凸部16aがねじ込まれる。このねじ込みを行うことで、主部品12の凹部12bの底部となる端壁面12cとエンドキャップ16の凸部16aの突出端となる端壁面16bとが当接して突き当てられてシールが確立される。
【0038】
また、図示は省略するものの、分岐管14の第2凸部14eにおいても、端壁面14gと、別途の管路が形成された部材との端壁面が互いに当接して突き当てられてシールが確立されるものとする。
【0039】
以上のように構成される流路分岐構造10が適用されたコモンレールにおいては、主孔12aに各分岐部品14の分岐孔14a、14bがそれぞれ連通され、且つ分岐孔14aと分岐孔14bとが互いに分離されるために、流路が分岐される。主部品12の主孔12a及び分岐部品14の一方の分岐孔14aが主管路を構成し、他方の分岐孔14bの端壁面14gにおける開口がポートとなる。ポートが閉じた状態において、主管路に内部流体が貯留されて非常に高い内圧が生じる。
【0040】
図7に示すように、分岐部品14の分岐部分付近には、端壁面14dの一部が主孔12aに対面しているために、主孔12aの内部流体から圧縮応力σzが作用する。よって、分岐部品14の分岐部分付近は、分岐孔14a、14bのそれぞれのフープ張力によって引張応力σtを受けるものの、従来の主孔のフープ張力の引張応力との合成ではなく、圧縮応力との合成となる。従って、従来に比較して応力集中を十分に低減させることができ、疲労破壊の発生を防ぐことができる。
【0041】
さらに、主部品12と分岐部品14とは、主として端壁面12cと端壁面14dとの間で直接当接し、それ以外では直接に接合又は当接していないので、主部品12から分岐部品14への引張応力の伝達を防ぐという観点でも有利な構造となっている。
【0042】
こうして、応力集中を避けることができるので、各部品を小型化及び軽量化することができる。従って、作業性が向上し、部品製造時の熱処理の際、特に冷却時における温度勾配の均一化を図ることができるので、部品の材料組織の不均一を防ぎ、品質向上を図ることができる。また、部品の材質として、特別に強度の高い材料を使用する必要はなく、廉価な材料を用いることができるので、材料費の低減を図ることができる。
【0043】
また、主部品12と分岐部品14とに部品が分離されているために、それぞれの加工が簡単になっている。
【0044】
図8は、有限要素解析を行った際のモデルを表している。図8(a)は、主部品12の軸方向長さをL1=150mm、外径をD1=70mm、主孔12aの内径をD2=19.9mm、分岐部品14の軸方向の長さをL2=80mm、分岐孔14a、14bの内径をD3=3mm、凸部14cの外径をD4=36mmとした本発明に対応するモデルである。図8(b)は、従来の主管孔と分岐孔とが直交する構成を表しており、部品の全長をL3=396mm、外径をD1=70mm、主孔の内径をD2=19.9mm、分岐孔の内径をD3=3mmとしたモデルである。
【0045】
それぞれのモデルに用いられる部品は、密度7850kg/m3、ヤング率200000MPa、せん断弾性係数76920MPa、ポアソン比0.3として、それぞれに140MPaの内圧が作用するものとして解析を行った結果、図8(a)に示すモデルでは、最大応力が、分岐孔14bのポート(即ち端壁面14g側)付近A1において約202MPaであり、分岐孔14bの分岐(即ち、端壁面14d側)付近A2においては約185MPaが最大であった。分岐孔14aは分岐孔14bよりも低い応力を示した。
【0046】
これに対して、図8(b)に示す従来形態のモデルでは、分岐孔14bの主孔12aとの交差地点A4において約551MPaと非常に高い応力集中がみられた。
【0047】
従って、主部品12に関して同じ外径(D1=70mm)と主孔の内径(D2=19.9mm)の寸法とした場合には、応力集中を半分以下に低減できることがわかった。
【0048】
さらに、図8(a)のモデルにおいて、主部品12の外径をD1=50mmとし、他の条件を同じとして解析を行った結果、最も高い応力は、主孔12aの中央部分付近A3での約227Maであり、分岐孔14bにおいては、ポート(即ち端壁面14g側)付近A1で最大約205MPa、分岐(即ち、端壁面14d側)付近A2においても約200MPaであった。
【0049】
従って、本発明の構成によれば、主部品の外径をある程度従来の構成よりも小さく(70mm→50mm)しても応力集中の低減効果は有効である。よって、各部品を小型化及び軽量化することができることが分かった。
【0050】
図9は、第2実施形態の主要部を表しており、前実施形態と同一・同様な部材は同一の符号を付し、同様な構成の詳細説明を省略する。この実施形態では、分岐部品14の主部品12の主孔12aに対向する端壁面14dの部分が平坦面ではなく凹曲面となっている。凹曲面とすることで、加工性は第1実施形態に比較して複雑化するものの、分岐部品14の分岐部分付近における圧縮応力が確実に作用するために、第1実施形態と同様に応力集中を効果的に低減させることができる。
【0051】
図10は、第3実施形態を表しており、前実施形態と同一・同様な部材は同一の符号を付し、同様な構成の詳細説明を省略する。この実施形態では、各分岐部品14がさらに多くの分岐ポートを備えるようにしたものである。このため、分岐部品14には、分岐ポートを構成するための第2凸部14eが複数設けられている。そして、一つの分岐孔14bが一方の凸部14cの端壁面14d(第1端壁面)と一方の第2凸部14eの端壁面14g(第3端壁面)同士を貫通するのに対して、別の分岐孔14bが他方の凸部14cの端壁面14d(第2端壁面)と他方の第2凸部14eの端壁面14g(第4端壁面)同士を貫通している。尚、分岐孔14aは、中心軸に対して傾斜させることも可能である。
【0052】
さらには、各端壁面14dに2つ以上の分岐孔14bを開口させることで、各分岐部品14にさらに多くの分岐ポートを設けることも可能である。
【0053】
尚、以上の各実施形態では、主部品12に凹部12bを設け、分岐部品14に該凹部12bに挿入される凸部14cを設けており、これによって、主部品12の大径の主孔12aの周囲の肉厚を確保することができるようになっているが、これに限るものではなく、主部品12に凸部を設け、分岐部品14に該凸部に挿入される凹部を設けても適用可能であり、応力集中低減効果は同様に得られる。
【0054】
図11は、本発明の第4実施形態による流路分岐構造を継手構造に適用した場合の断面図である。
【0055】
この実施形態では、3つの主部品22とその間に接続された分岐部品24とによってT字継手構造が構成されている。本実施形態における主部品22は配管、流体機器又は継手用接続部品であり、分岐部品24が継手部品となっている。
【0056】
主部品22には、主孔22aが形成されており、その端部の凹部22bの底部となる端壁面22cに主孔22aが開口しており、この開口が接続ポートに相当する。また、凹部22bの内周面には雌ネジ22dが形成される。尚、3つの主部品22は完全に同一の構成をなしている必要はなく、また、主部品22の分岐部品24と接続される側とは反対側の部分は任意の構造とすることができるので、図示を省略している。
【0057】
分岐部品24は3つの凸部24bを有しており、各凸部24bの突出端は端壁面、即ち、第1端壁面24c、第2端壁面24d、第3端壁面24eとなっており、凸部24bの外周面には雄ネジ24gが形成される。
【0058】
分岐部品24内には、複数の分岐孔24aが形成され、1つの分岐孔24aが第1端壁面24cと第2端壁面24dとの間を貫通しており、他の分岐孔24aが第1端壁面24cと第3端壁面24eとの間を貫通しており、さらに他の分岐孔24aが第2端壁面24dと第3端壁面24eとの間を貫通している。分岐孔24aは互いに交わらないように分岐部品24内で立体的に設けられる。
【0059】
主部品22の凹部22bの内周面に形成された雌ネジ22dに分岐部品24の凸部24cの外周面に形成された雄ネジ24gをねじ込んで、端壁面22cと端壁面24c〜eとを当接させて突き当ててシールを確立する。
【0060】
従来の継手構造では、分岐孔の交差部分は応力集中が発生するおそれがあったが、本実施形態では、前実施形態と同じ作用によって分岐付近における応力集中が低減されるために、耐久性の向上を図ることができ、各部品を小型化及び軽量化することができる。
【0061】
図12は、本発明の第5実施形態による流路分岐構造を継手構造に適用した場合の断面図であり、前実施形態と同一・同様な部材は同一の符号を付し、同様な構成の詳細説明を省略する。
【0062】
本実施形態では、主部品22に凹部22bの代わりに凸部22b’が形成されており、凸部22b’の突出端が端壁面22cとなっており、凸部22b’の外周面に雄ネジ22d’が形成される。
【0063】
分岐部品24には、凸部24bの代わりに凹部24b’が形成されており、凹部24b’の底部は端壁面、即ち、第1端壁面24c、第2端壁面24d、第3端壁面24eとなっており、凹部24b’の内周面には雌ネジ24g’が形成される。
【0064】
以上のように凸部と凹部との関係が逆になっても、主部品22と分岐部品24とが別部品となっており、分岐部品24は主部品22の主孔22aの内部流体から圧縮応力を受けるだけであり、主部品22からの引張応力が分岐部品24に伝達することを防ぐことができるので、第4実施形態と同様に作用させることができる。
【0065】
図13は、本発明の第6実施形態による流路分岐構造を継手構造に適用した場合の断面図であり、前実施形態と同一・同様な部材は同一の符号を付し、同様な構成の詳細説明を省略する。
【0066】
本実施形態では、4つの主部品22とその間に接続された分岐部品24とによって十字継手構造が構成されている。本実施形態における主部品22は配管、流体機器又は継手用接続部品であり、分岐部品24が継手部品となっている。
【0067】
本実施形態では、分岐部品24は4つの凹部24b’を有しており、各凹部24b’の底部は端壁面、即ち、第1端壁面24c、第2端壁面24d、第3端壁面24e、第4端壁面24fとなっている。
【0068】
そして、図12の分岐孔24aに加えて、第4端壁面24fと、第1〜第3端壁面24c〜eとをそれぞれ貫通する分岐孔24aが形成されている。これらの分岐孔24aは互いに交わらないように分岐部品24内で立体的に設けられる。
【0069】
これによって、各主部品22の主孔22aからそれぞれ3つの分岐孔24aに分岐させることができるようになり、十字継手構造を構成することができる。
【0070】
尚、以上に説明した各実施形態において、各端壁面は平坦面または一部凹曲面となっていたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、端壁面の少なくとも一部を段面、凹面、凸面、テーパ面、球面とすることも可能であり、主部品と分岐部品との間のシールは、平坦面同士の突き当てに限らず、テーパ面または球面による突き当てによるシール、または銅合金等のシールを介在してもよい。また、以上に説明した各実施形態において、主部品と分岐部品のいずれか一方に凸部、他方に凸部が挿入される凹部を設けて、これらの凹部の底部及び凸部の突出端に端壁面を形成していたが、これに限るものではなく、凹部及び凸部を省略し、凹部及び凸部を設けることなく端壁面を形成してもよい。
【符号の説明】
【0071】
10 流路分岐構造
12、22 主部品
12a、22a 主孔
12b、22b 凹部
22b’ 凸部
12c、22c 端壁面
14、24 分岐部品
14a、14b、24a 分岐孔
14c 凸部
14d 端壁面(第1端壁面、第2端壁面)
14g 端壁面(第3端壁面、第4端壁面)
24b 凸部
24b’ 凹部
24c 端壁面(第1端壁面)
24d 端壁面(第2端壁面)
24e 端壁面(第3端壁面)
24f 端壁面(第4端壁面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を分岐する流路分岐構造であって、内部流体からの内圧が作用する主孔が形成された主部品と、該主部品に接続される分岐部品とからなり、前記主部品の主孔は主部品の端壁面に開口しており、前記分岐部品は、前記端壁面及び前記主孔の開口に対面する第1端壁面を有し、さらに分岐部品には、第1端壁面に開口して主孔に連通し、主孔よりも小径で互いに分離された複数の分岐孔が形成されることを特徴とする流路分岐構造。
【請求項2】
前記分岐部品の前記第1端壁面は、前記主孔の開口に対面する部分が平坦面又は凹曲面となっていることを特徴とする請求項1記載の流路分岐構造。
【請求項3】
前記分岐部品には第1端壁面とは異なる少なくとも第2端壁面及び第3端壁面が形成されており、前記複数の分岐孔の1つは分岐部品の第1端壁面と第2端壁面との間を貫通している一方で、前記複数の分岐孔の別の分岐孔は、分岐部品の第1端壁面と第3端壁面との間を貫通していることを特徴とする請求項1又は2記載の流路分岐構造。
【請求項4】
前記分岐部品の第2端壁面は、別の主部品の主孔の開口に対面することを特徴とする請求項3記載の流路分岐構造。
【請求項5】
前記分岐部品には、さらに第2端壁面と第3端壁面との間を貫通する分岐孔が形成されることを特徴とする請求項3又は4記載の流路分岐構造。
【請求項6】
前記分岐部品にはさらに第4端壁面が形成されており、分岐部品には、さらに第2端壁面と第4端壁面との間を貫通する分岐孔が形成されることを特徴とする請求項3又は4記載の流路分岐構造。
【請求項7】
分岐部品には、さらに第1端壁面と第4端壁面と間を貫通する分岐孔と、第2端壁面と第3端壁面との間を貫通する分岐孔とが形成されることを特徴とする請求項6記載の流路分岐構造。
【請求項8】
主部品と分岐部品のいずれか一方に凸部が形成され、該凸部の突出端が前記端壁面又は前記第1端壁面となり、主部品と分岐部品のいずれか他方に凹部が形成され、該凹部の底部が前記端壁面又は前記第1端壁面となっており、前記凸部が前記凹部に挿入されて、前記主孔の周囲で主部品の端壁面と分岐部品の第1端壁面とが当接されることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の流路分岐構造。
【請求項9】
前記主部品の端壁面と分岐部品の第1端壁面とは突き当てられてそれらの間にシールが確保され、突き当てられた以外に、主部品と分岐部品の境界には隙間が存在することを特徴とする請求項8記載の流路分岐構造。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の流路分岐構造を備え、前記主部品と前記分岐部品とが交互に接続されたコモンレール。
【請求項11】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の流路分岐構造を備え、前記複数の主部品の間に前記分岐部品が接続された継手構造。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−112353(P2012−112353A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263898(P2010−263898)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000003388)東京計器株式会社 (103)
【Fターム(参考)】