説明

流量計

【課題】低流量の計測から高い流量の計測まで正確に行い得る流量計を提供する。
【解決手段】
流体内に配置される熱式流量計およびカルマン渦流量計と、これら熱式流量計とカルマン渦流量計からの出力が入力されて測定値が演算される演算回路とを備え、
前記演算回路は、該流体の流量域を低、中、高に区分けされたうちの低流量域にあっては前記熱式流量計からの出力がそのまま測定値として出力させ、
該流体の流量域を低、中、高に区分けされたうちの高流量域にあっては前記カルマン渦流量計からの出力を質量流量に換算したものを測定値として出力させ、
該流体の流量域を低、中、高に区分けされたうちの中流量域にあっては前記低流量域の測定値と前記高流量域の測定値を連続させる質量流量の演算値を測定値として出力させるように、構成されていることを特徴とする流量計。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
流量計のうち、比較的構成が簡易なものとして、たとえば熱式流量計とカルマン渦流量計とが知られている。
【0003】
熱式流量計は、低流量の計測は容易であるが、高い流量の計測は困難であるという特性を有する。また、カルマン渦流量計は、高い流量の計測は容易であるが、低流量の計測は不可能であるという特性を有する。
【0004】
したがって、これら熱式流量計とカルマン渦流量計は、上記目的に応じて使い分けられているのが実情である。
【0005】
なお、熱式流量計に関する詳細はたとえば下記特許文献1に、カルマン渦流量計に関する詳細はたとえば下記文献2に開示されている。
【特許文献1】特開2005−37409号公報
【特許文献2】特開2001−82987号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、本願出願人によって、このような熱式流量計とカルマン渦流量計とを併用することにより、低流量の計測から高い流量の計測まで行わしめる試みがなされている。いずれの流量計も比較的構成が簡易なものとして把握でき、これらの併用によって計測可能な流量域を拡大させることは多大なる効果を奏するものとなるからである。
【0007】
しかし、熱式流量計は質量流量を測定するものであるのに対し、カルマン渦流量計は容積流量を測定するというように、それらの測定流量の種類が異なっているため、それらを単に併用しても正確な流量を計測することができないという不都合を有していた。
【0008】
本発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、低流量の計測から高い流量の計測まで正確に行い得る流量計を提供することにある。
【0009】
また、本発明の他の目的は、拡大された流量域において、質量流量および容積流量を選択して計測できる流量計を提供することにある。
【0010】
さらに、本発明の他の目的は、一対からなる流量計を用いることを好機とし、流体の種類による流量値の変動を補正できる流量計を提供することにある。
【0011】
さらに、本発明の他の目的は、一対からなる流量計を用いることを好機とし、一方の流量計の異常を検知できる流量計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0013】
(1)本発明による流量計は、たとえば、流体内に配置される熱式流量計およびカルマン渦流量計と、これら熱式流量計とカルマン渦流量計からの出力が入力されて測定値が演算される演算回路とを備え、
前記演算回路は、該流体の流量域を低、中、高に区分けされたうちの低流量域にあっては前記熱式流量計からの出力がそのまま測定値として出力させ、
該流体の流量域を低、中、高に区分けされたうちの高流量域にあっては前記カルマン渦流量計からの出力を質量流量に換算したものを測定値として出力させ、
該流体の流量域を低、中、高に区分けされたうちの中流量域にあっては前記低流量域の測定値と前記高流量域の測定値を連続させる質量流量の演算値を測定値として出力させるように、構成されていることを特徴とする。
【0014】
(2)本発明による流量計は、たとえば、流体内に配置される熱式流量計およびカルマン渦流量計と、これら熱式流量計とカルマン渦流量計からの出力が入力されて測定値が演算される演算回路とを備え、
前記演算回路は、該流体の流量域を低、中、高に区分けされたうちの高流量域にあっては前記カルマン渦流量計からの出力がそのまま測定値として出力させ、
該流体の流量域を低、中、高に区分けされたうちの低流量域にあっては前記熱式流量計からの出力を容積流量に換算したものを測定値として出力させ、
該流体の流量域を低、中、高に区分けされたうちの中流量域にあっては前記高流量域の測定値と前記低流量域の測定値を連続させる容積流量の演算値を測定値として出力させるように、構成されていることを特徴とする。
【0015】
(3)本発明による流量計は、たとえば、流体内に配置される熱式流量計およびカルマン渦流量計と、これら熱式流量計とカルマン渦流量計からの出力が入力されて測定値が演算される第1演算回路および第2演算回路とを備え、
第1演算回路と第2演算回路とは切り替えて用いられ、
前記第1演算回路は、該流体の流量域を低、中、高に区分けされたうちの低流量域にあっては前記熱式流量計からの出力がそのまま測定値として出力させ、
該流体の流量域を低、中、高に区分けされたうちの高流量域にあっては前記カルマン渦流量計からの出力を質量流量に換算したものを測定値として出力させ、
該流体の流量域を低、中、高に区分けされたうちの中流量域にあっては前記低流量域の測定値と前記高流量域の測定値を連続させる質量流量の演算値を測定値として出力させるように構成され、
前記第2演算回路は、該流体の流量域を低、中、高に区分けされたうちの高流量域にあっては前記カルマン渦流量計からの出力がそのまま測定値として出力させ、
該流体の流量域を低、中、高に区分けされたうちの低流量域にあっては前記熱式流量計からの出力を容積流量に換算したものを測定値として出力させ、
該流体の流量域を低、中、高に区分けされたうちの中流量域にあっては前記高流量域の測定値と前記低流量域の測定値を連続させる容積流量の演算値を測定値として出力させるように構成されていることを特徴とする。
【0016】
(4)本発明による流量計は、たとえば、(1)、(2)、(3)のうちいずれかの構成を前提とし、前記熱式流量計の出力値および前記カルマン渦流量計の出力値からコンバージョンファクタを算出し、前記熱式流量計の出力値に前記コンバージョンファクタを乗算した補正値を前記演算回路に入力させる手段が備えられていることを特徴とする。
【0017】
(5)本発明による流量計は、たとえば、(1)、(2)、(3)のうちいずれかの構成を前提とし、前記熱式流量計とカルマン渦流量計にあって、一方の流量計の出力値に対する他方の流量計の出力値から該他方の流量計が異常であることを判定する判定手段を備えることを特徴とする。
【0018】
(6)本発明による流量計は、たとえば、(1)、(2)、(3)、(4)、(5)のうちいずれかの構成を前提とし、前記熱式流量計とカルマン渦流量計は計測流体が流れる管体内に配置され、該熱式流量計はカルマン渦流量計に対して計測流体の上流側に配置されていることを特徴とする。
【0019】
なお、本発明は以上の構成に限定されず、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明による流量計の実施例を図面を用いて説明をする。
【0021】
図1は、本発明による流量計の一実施例を示す概略構成図である。
【0022】
管体1内に流れる流体2があり、その流れの中に、熱式流量計3およびカルマン渦流量計4が配置されている。これにより該流体2は被計測流体となる。
【0023】
上述したように、熱式流量計3は質量流量を測定する計器として知られ、カルマン渦流量計4は容量流量を測定する計器として知られている。また、熱式流量計3は低流量の計測は容易である一方において高い流量の計測は困難がともなうことが知られ、カルマン渦流量計4は高い流量の計測は容易である一方において低流量の計測は不可能であることが知られている。
【0024】
図7(a)は、熱式流量計3の計測原理を示すための概略説明図である。図7(a)の上部の図面において、流体2が流れる管体1があり、この管体1の外周には、その上流側から、温度センサTS1、ヒータHT、温度センサTS2が順次近接して配置されている。これに対し、図7(a)の下部の図面において、前記管体1の流体2の流れ方向の前記温度センサTS1、ヒータHT、温度センサTS2の配置個所に対応させて温度分布を示すグラフを描いている。グラフAは、流体2が流れていない場合のヒータHTによる熱を温度センサTS1、TS2が検知し、その温度はいずれもT0となっていることを示している。一方、グラフBは、流体2が流れている場合のヒータHTによる熱を温度センサTS1はT1(<T0)として検知し、温度センサTS2はT2(>T0)として検知するようになる。そして、この場合の(T2−T1=ΔT)は流体の質量流量に対応することが確認されていることから、このΔTの検出により流体2の質量流量を求めることができる。
【0025】
また、図7(b)は、カルマン渦流量計4の計測原理を示すための概略説明図である。流体2が流れる管体1があり、この管体1の内部には該管体1の軸方向に対して直交するように配置されたたとえば三角柱からなる渦発生体VGが、その頂部を下流側に指向させて配置されている。ちなみに、この渦発生体VGが上述のような三角柱からなっていることからデルタ流量計と称される場合がある。管体1内に流体2が流れている場合、前記渦発生体VGによって層流が剥がれ、その下流にてカルマン渦が発生する。このカルマン渦の発生する周波数は、流体2の流れる速さに比例していることが知られ、このカルマン渦の発生する周波数を前記渦発生体VGの下流に配置させたたとえば圧電素子により圧力変化として検知するようにすることにより、流体2の容積流量を求めることができる。
【0026】
上述のように、熱式流量計3は管体1の外部に構成でき、カルマン渦流量計4は管体1の内部に構成できることから、これら各流量計3、4 は、図1に示したように流体2の流れ方向において、同一の個所に形成することができる。しかし、この構成に限定されることはなく、それらの形成個所においてずれがあってもよいことはいうまでもない。流量計測において、条件が同じであれば(たとえば管体1の径が同一である場合)、必ずしも同一の個所に設ける必要はないからである。
【0027】
図8は、前記熱式流量計3の温度センサTS1およびヒータHTとして棒状のものを用い、かつ管体1内の流体2中に突出させるようにして構成した場合において、該熱式流量計3およびその近傍を示した構成の一実施例を示す断面図である。この場合、カルマン渦流量計4は熱式流量計3の下流側に近接させて配置させている。熱式流量計3の温度センサTS1、ヒータHTにおいてその応答性を良好に構成したいと要望する場合、必然的にその径を小さくし、その機械的強度が不十分になるため、前記カルマン渦流量計4を熱式流量計3の上流側に配置させることを回避させた構成としている。仮に、カルマン渦流量計4を熱式流量計3の上流側に配置させた場合、カルマン渦流量計4によって発生したカルマン渦によって熱式流量計3の温度センサTS1、ヒータHTが破損され易くなるからである。なお、図8に示すカルマン渦流量計4において、渦発生体VGの下流側には、たとえば、管体1の中心軸にまで突出した突起体10を備え、この突起体10の先端部の側面には、管体1の外側に配置させたたとえば圧電素子13にまで圧力が導かれる圧力導入孔12が設けられている。該圧電素子13はカルマン渦を検知する検知器として機能するようになっている。なお、このような検知器としては必ずしも圧電素子13に限定されることはなく、流体を間にして管体1の内壁面に対向させて配置させた超音波送信器およびこの超音波送信器からの超音波を受信する超音波受信器によって構成してもよいことはもちろんである。
【0028】
このように構成される熱式流量計3およびカルマン渦流量計4の計測可能範囲をそれぞれ図2(a)、図2(b)に示している。
【0029】
図2(a)は熱式流量計3の計測可能範囲を示すグラフで、その横軸には流量Qmを示し、その流量QmがB以上の場合には計測に困難性が伴うことを示し、図2(b)はカルマン渦流量計4の測定可能範囲を示すグラフで、その横軸には流量Qvを示し、その流量QvがA’以下の場合には計測に困難性が伴うことを示している。
【0030】
なお、図2(a)に示すグラフの縦軸は熱式流量計3の出力を示し、流量に対応する電圧値(V)として取り出せるようになっており、図2(b)に示すグラフの縦軸はカルマン渦流量計4の出力を示し、流量に対応する周波数(He)として取り出せるようになっている。それぞれの流量計の特性に基づくものである。
【0031】
したがって、図1に示すように、熱式流量計3からの出力は検出器5によって流量Qmが計測され、カルマン渦流量計4からの出力は該検出器5によって流量Qvが計測されるようになる。この場合、熱式流量計3からの流量Qmはその計測限界により0から図2(a)のB点に相当する流量までの範囲内で計測がなされるとともに、カルマン渦流量計4からの流量Qvはその計測限界により図2(b)のA’点に相当する流量からそれ以上の流量までの範囲内で計測がなされるようになっている。この結果、流量が質量流量であるか容積流量であるかは別とし、一部重複して流量が計測されるとともに、0からかなりの範囲にわたる大流量域に及んで計測できることになる。
【0032】
そして、前記検出器5による検出出力は、切り替えスイッチ6の図中A側の切り替えによって演算回路(A)7に入力され、図中B側の切り替えによって演算回路(B)8に入力されるようになっている。ここで、切り替えスイッチ6の図中A側の切り替えは質量流量(NL/min)を算出する場合になされ、図中B側の切り替えは容積流量(L/min)を算出する場合になされるようになつている。
【0033】
このため、演算回路(A)7によって質量流量(NL/min)を算出する演算方法と、演算回路(B)8によって容積流量(L/min)を算出する演算方法とを場合を分けて以下説明をする。
【0034】
なお、図1に示す構成において、熱式流量計3およびカルマン渦流量計4を除く他の部分をコンピュータで構成することができ、以下、このコンピュータで構成したことを前提として説明する。
【0035】
(A)質量流量(NL/min)を計測する場合、
図2(a)のグラフの横軸における0からA点までの間の流量(NL/min)にあっては、熱式流量計3における該熱式流量計3の検出出力によって流量Qm(=Q)を求め、この流量Qmを測定値として扱うように構成されている。
【0036】
図中横軸におけるA点からB点までの間の流量(NL/min)にあっては、熱式流量計3によって流量Qmを求めるとともに、カルマン渦流量計4によって流量Qvを求め、これら流量Qmおよび流量Qvを用いた次式(1)の演算によって流量Qを算出し、この流量Qを測定値として扱うように構成されている。
【0037】
Q=K×Qm+(1−K)×Qv×{(P+101.3)/101.3}×{273.15/(T+273.15)}……(1)
ここで、K=(Q−A)/(B−A)である。また、Pは図示しない圧力センサからの出力値、あるいは熱式流量計3とカルマン渦流量計4の双方測定可能なポイントでの質量流量、容積流量、温度から算出した値である。さらに、Tは温度(°C)である。
【0038】
図(2)のグラフの横軸におけるB点からの流量(NL/min)にあっては、カルマン渦流量計4における該カルマン渦流量計4の検出出力である流量Qvを求めた後に次式(2)の演算によって流量Qを求めるように構成されている。
【0039】
Q=Qv×{(P+101.3)/101.3}×{273.15/(T+273.15)}……(2)
この(2)式は、カルマン渦流量計4によって得られる容積流量を質量流量に換算させるための式であり、このことから前記(1)式は、図2(a)のグラフにおける0からAまでの質量流量と、B以降における質量流量とを線形的に連続につなげるための演算として把握することができる。
【0040】
前記演算回路(A)7にあっては、たとえば図3に示す手順で動作がなれるようになつている。すなわち、図3において、まず、入力される情報である検出値QmがAより小さいか否かが判定される(ステップST1)。検出値QmがAより小さい場合には該検出値Qmがそのまま出力されて測定値として用いられる。検出値QmがAより小さくない場合において、該検出値QmがBより小さいか否かが判定される(ステップST2)。検出値QmがBより小さい場合には前記数式(1)による演算がなされ、その演算によって求められた演算値Qがそのまま出力されて測定値として用いられる(ステップST3)。該検出値QmがBより小さくない場合には前記数式(2)による演算がなされ、その演算によって求められた演算値Qがそのまま出力されて測定値としてもちいられる(ステップST4)。
【0041】
(B)容積流量(L/min)を計測する場合、
図2(b)のグラフの横軸における0からA’点までの間の流量(L/min)にあっては、熱式流量計3における該熱式流量計3の検出出力を次式(3)を用いて換算することにより、流量Qを求め、この流量Qを測定値として扱うように構成されている。
【0042】
Q=Qm×{101.3/(P+101.3)}×{(T+273.15)/273.15}……(3)
図2(b)のグラフの横軸におけるA’点からB’点までの間の流量(L/min)にあっては、熱式流量計3によって流量Qmを求めるとともに、カルマン渦流量計4によって流量Qvを求め、これら流量Qmおよび流量Qvを用いた次式(4)の演算によって流量Qを算出し、この流量Qを測定値として扱うように構成されている。
【0043】
Q=K×Qm+(1−K)×Qv×{(P+101.3)/101.3}×{273.15/(T+273.15)}……(4)
ここで、K=(Q−A)/(B−A)である。また、Pは、図示しない圧力センサからの出力値、あるいは熱式流量計3とカルマン渦流量計4の双方測定可能なポイントでの質量流量、容積流量、温度から算出した値である。さらに、Tは温度(°C)である。
【0044】
そして、図2(b)のグラフの横軸におけるB’点以降の流量(L/min)にあっては、カルマン渦流量計4からの検出出力によって流量Qv(=Q)を求め、この流量Qvを測定値として扱うように構成されている。
【0045】
前記(3)式は、熱式流量計3によって得られる質量流量を容積流量に換算させるための式であり、このことから前記(4)式は、図2(a)のグラフにおける0からA’までの容積流量と、B’以降における容積流量とを線形的に連続につなげるための演算として把握することができる。
【0046】
前記演算回路(B)8にあっては、たとえば図4に示す手順で動作がなされるようになっている。すなわち、図4において、まず、入力される情報である検出値QmがA’より小さいか否かが判定される(ステップST1)。検出値QmがAより小さい場合には前記数式(3)による演算がなされ、その演算値Qがそのまま出力されて測定値として用いられる(ステップST2)。検出値QmがA’より小さくない場合において、該検出値QmがB’より小さいか否かが判定される(ステップST3)。検出値QmがBより小さい場合には前記数式(4)による演算がなされ、その演算によって求められた演算値Qがそのまま出力されて測定値として用いられる(ステップST4)。該検出値QmがB’より小さくない場合には該検出値Qmがそのまま出力されて測定値として用いられる。
【0047】
図5は、本発明による流量計の他の実施例を示す構成図で、図1と対応した図となっている。 図1の場合と比較して異なる部分は検出器5’にあり、図1に示した検出器5に替えて用いた構成となっている。流量計測の対象となる流体2は、その種類によって比熱が変動してしまい、その結果として熱式流量計3の計測する流量値が変化してしまう不都合を、前記検出器5’によって、コンバージョンファクタKcを設定し、このコンバージョンファクタKcを用いた補正を行うことにより、解消した構成となっている。
【0048】
すなわち、図2(a)に示す流量域においてAとBとの間における熱式流量計3からの流量値Qmと、カルマン渦流量計4からの流量値Qvを検出し、次式(5)の演算を行うことによって、コンバージョンファクタKcを算出する。
【0049】
Kc=Qv×{(P+101.3)/(101.3)}
×{(273.15)/(T+273.15)}/Qm ……(5)
そして、これにより算出したコンバージョンファクタKcを前記流量値Qmに乗算し、これにより得られた流量値Qm’を補正された流量値とし、前記演算回路(A)7、あるいは演算回路(B)8における演算で用いるようにしている。
【0050】
また、図6は、本発明による流量計の他の実施例を示す構成図である。本発明では、流量計として熱式流量計3とカルマン渦流量計4を備えたものとなっている。それ故、一方の流量計の値と他方の流量計の値にあって特性上一定の関係を有しており、これに基づいて、いずれか一方の流量計に異常をきたした場合には、他方の流量計との関係で、それを即検知できるようになる。
【0051】
流量計の異常計測としては、たとえば、該流量計への異物の付着等が考えられ、このことから、常時正確な計測値を算出せんとする上記実施例と併せて適用させる場合において多大なる効果を奏する。
【0052】
図6(a)は、たとえば演算回路(A)7の前段に設ける手段として把握できる。しかし、これに限定されることはないことはいうまでもない。流量計の異常検出のための構成は上記実施例と独立に行えるものであるからである。
【0053】
以下、ステップごとに説明する。まず、図2(a)のグラフにおける流量域であって、A、Bの間の流量のうち所定の流量Qm1を熱式流量計3によって計測する(ステップST1)。この際同時にカルマン渦流量計によって流量Qv1を計測する。同時に計測するのは条件を揃えるためである(ステップST2)。流量Qv1を質量流量に換算し流量Qm1’を得る。換算するのは単位を同一にして比較を行い易くするためである(ステップST3)。流量Qm1と流量Qm1’との差の絶対値を算出する(ステップST4)。該絶対値が所定値を超えるか否かを判定する。ここで、所定値はいわゆる経験則で定まる値であり、異常検出を敏感にするならば小さい値として設定され、比較的鈍くするならば大きい値として設定される(ステップST5)。超えていない場合はそのままとし(ステップST6)、超えている場合は異常と判断して警報を発する(ステップST7)。
【0054】
警報を発生させる態様とは別な態様として、たとえば、後段に設けられる前記演算回路(A)7において演算不可能とする指令を送出させるようにしてもよいことはいうまでもない。計量観測者は、この演算不可能の指令によって、一方の流量計の異常を判断できるからである。
【0055】
図6(b)も、たとえば演算回路(B)8の前段に設ける手段として把握できる。 以下、ステップごとに説明する。まず、図2(b)のグラフにおける流量域であって、A’、B’の間の流量のうち所定の流量Qv1をカルマン渦流量計4によって計測する(ステップST1)。この際同時に熱式流量計3によって流量Qm1を計測する。同時に計測するのは条件を揃えるためである(ステップST2)。流量Qm1を容積流量に換算し流量Qv1’を得る。換算するのは単位を同一にして比較を行い易くするためである(ステップST3)。流量Qv1と流量Qv1’との差の絶対値を算出する(ステップST4)。該絶対値が所定値を超えるか否かを判定する。ここで、所定値はいわゆる経験則で定まる値であり、異常検出を敏感にするならば小さい値として設定され、比較的鈍くするならば大きい値として設定される(ステップST5)。超えていない場合はそのままとし(ステップST6)、超えている場合は異常と判断して警報を発する(ステップST7)。
【0056】
警報を発生させる態様とは別な態様として、たとえば、後段に設けられる前記演算回路(B)8において演算不可能とする指令を送出させるようにしてもよいことはいうまでもない。計量観測者は、この演算不可能の指令によって、一方の流量計の異常を判断できるからである。
【0057】
上述した実施例では、演算等の処理はコンピュータによって行ったものである。しかし、専用のデジタル回路を構成し、このデジタル回路によって処理するようにしてもよいことはもちろんである。
【0058】
上述した各実施例はそれぞれ単独に、あるいは組み合わせて用いても良い。それぞれの実施例での効果を単独であるいは相乗して奏することができるからである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明による流量計の一実施例を示す概略構成図である。
【図2】本発明に用いられる熱式流量計の特性を示したグラフ、カルマン渦流量計の特性を示したグラフである。
【図3】本発明に用いられる演算回路(A)における動作の一実施例を示したフロー図である。
【図4】本発明に用いられる演算回路(B)における動作の一実施例を示したフロー図である。
【図5】本発明による流量計の他の実施例を示す構成図で、図1に対応する図である。
【図6】本発明による流量計の他の実施例を示す構成図で、流量計の異常を発する動作フローを示した図である。
【図7】本発明による流量計に用いられる熱式流量計およびカルマン渦流量計の計測原理を示す説明図である。
【図8】本発明による流量計であって、管体に備えられる熱式流量計およびカルマン渦流量計の一実施例を示す構成図である。
【符号の説明】
【0060】
1……管体、2……流体、3……熱式流量計、4……カルマン渦流量計、5、5’……検出器、6……スイッチング素子、7……演算回路(A)、8……演算回路(B)。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体内に配置される熱式流量計およびカルマン渦流量計と、これら熱式流量計とカルマン渦流量計からの出力が入力されて測定値が演算される演算回路とを備え、
前記演算回路は、該流体の流量域を低、中、高に区分けされたうちの低流量域にあっては前記熱式流量計からの出力がそのまま測定値として出力させ、
該流体の流量域を低、中、高に区分けされたうちの高流量域にあっては前記カルマン渦流量計からの出力を質量流量に換算したものを測定値として出力させ、
該流体の流量域を低、中、高に区分けされたうちの中流量域にあっては前記低流量域の測定値と前記高流量域の測定値を連続させる質量流量の演算値を測定値として出力させるように、構成されていることを特徴とする流量計。
【請求項2】
流体内に配置される熱式流量計およびカルマン渦流量計と、これら熱式流量計とカルマン渦流量計からの出力が入力されて測定値が演算される演算回路とを備え、
前記演算回路は、該流体の流量域を低、中、高に区分けされたうちの高流量域にあっては前記カルマン渦流量計からの出力がそのまま測定値として出力させ、
該流体の流量域を低、中、高に区分けされたうちの低流量域にあっては前記熱式流量計からの出力を容積流量に換算したものを測定値として出力させ、
該流体の流量域を低、中、高に区分けされたうちの中流量域にあっては前記高流量域の測定値と前記低流量域の測定値を連続させる容積流量の演算値を測定値として出力させるように、構成されていることを特徴とする流量計。
【請求項3】
流体内に配置される熱式流量計およびカルマン渦流量計と、これら熱式流量計とカルマン渦流量計からの出力が入力されて測定値が演算される第1演算回路および第2演算回路とを備え、
第1演算回路と第2演算回路とは切り替えて用いられ、
前記第1演算回路は、該流体の流量域を低、中、高に区分けされたうちの低流量域にあっては前記熱式流量計からの出力がそのまま測定値として出力させ、
該流体の流量域を低、中、高に区分けされたうちの高流量域にあっては前記カルマン渦流量計からの出力を質量流量に換算したものを測定値として出力させ、
該流体の流量域を低、中、高に区分けされたうちの中流量域にあっては前記低流量域の測定値と前記高流量域の測定値を連続させる質量流量の演算値を測定値として出力させるように構成され、
前記第2演算回路は、該流体の流量域を低、中、高に区分けされたうちの高流量域にあっては前記カルマン渦流量計からの出力がそのまま測定値として出力させ、
該流体の流量域を低、中、高に区分けされたうちの低流量域にあっては前記熱式流量計からの出力を容積流量に換算したものを測定値として出力させ、
該流体の流量域を低、中、高に区分けされたうちの中流量域にあっては前記高流量域の測定値と前記低流量域の測定値を連続させる容積流量の演算値を測定値として出力させるように構成されていることを特徴とする流量計。
【請求項4】
前記熱式流量計の出力値および前記カルマン渦流量計の出力値からコンバージョンファクタを算出し、前記熱式流量計の出力値に前記コンバージョンファクタを乗算した補正値を前記演算回路に入力させる手段が備えられていることを特徴とする請求項1、2、3のうちいずれかに記載の流量計。
【請求項5】
前記熱式流量計とカルマン渦流量計にあって、一方の流量計の出力値に対する他方の流量計の出力値から該他方の流量計が異常であることを判定する判定手段を備えることを特徴とする請求項1、2、3のうちいずれかに記載の流量計。
【請求項6】
前記熱式流量計とカルマン渦流量計は計測流体が流れる管体内に配置され、該熱式流量計はカルマン渦流量計に対して計測流体の上流側に配置されていることを特徴とする請求項1、2、3、4、5のうちいずれかに記載の流量計。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−57452(P2007−57452A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−245327(P2005−245327)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(000103574)株式会社オーバル (82)
【Fターム(参考)】