説明

浮上油除去装置

【課題】駆動源として小型なモータを採用することが可能な浮上油除去装置の提供。
【解決手段】浮上油除去装置1は、タンク16内の切削液17中に下端を没入させた無端紐12を駆動モータにより回転させ、無端紐12に付着した浮上油を除去する。無端紐12に遊貫され下端には傾斜面19aが形成された管部材19と、管部材19を保持する管部材保持部18とを備えている。管部材保持部18は、駆動モータを収容するモータ収容部6側からタンク16側に向かって水平方向に延出する延出部4に設けられている。延出部4は傾斜面19aと連なって傾斜する傾斜案内面4bを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンク内の切削液の表面に存在する浮上油を除去する為の浮上油除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マシニングセンタ等の工作機械による機械加工では、工具によるワークの切削部位に対して切削液が供給される。この切削液はタンクに集められて繰り返して使用されるものであるが、工作機械の作動部分を潤滑する為に用いられる潤滑油もこのタンク内に流入し、切削液の表面に浮上油として浮上するようになる。浮上油によって切削液が劣化すると工具の破損等が生じ、ワークの品質にも影響することになるので、下記特許文献1に所載されるような浮上油除去装置を用いて浮上油をタンク内から除去してやることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−107112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の浮上油除去装置は無端ベルトに付着した浮上油をスクレーパにより削り取るものであり、無端ベルトとスクレーパとの間には摩擦抵抗が生じることになる。従って、無端ベルトを回転駆動させる駆動モータとして小型なものを採用するとことができず、浮上油除去装置がコンパクトなものにならないという問題を有していた。
【0005】
従って、本発明は上記の問題点に鑑みてなされ、駆動モータとして従来よりも小型なものを採用することが可能な浮上油除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、タンク16内の切削液17中に下端を没入させた無端紐12を駆動モータにより回転させ、該無端紐12に付着した浮上油を除去する浮上油除去装置1であって、該無端紐12に遊貫され下端には傾斜面19aが形成された管部材19と、該管部材19を保持する管部材保持部18とを備えた浮上油除去装置1を提供する。
【0007】
ここで、該管部材保持部18は、該駆動モータを収容するモータ収容部6側から該タンク16側に向かって水平方向に延出する延出部4に設けられており、該延出部4は該傾斜面19aと連なって傾斜する傾斜案内面4bを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の浮上油除去装置によれば、駆動モータとして小型なものを採用可能であるので、浮上油除去装置をコンパクトなものにすることができる等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態に係る浮上油除去装置を示す概略正面図である。
【図2】図1の概略左側面図である。
【図3】本実施形態に係る浮上油除去装置の延出部の先端を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態にかかる浮上油除去装置について図1乃至図3を参酌しつつ説明する。浮上油除去装置1は、基台部2と、該基台部2上に立設された支柱部3と、該支柱部3の上部に基端が固定されて水平方向に延出する延出部4と、該延出部4の基端に連結板5を介して連結されたモータ収容部6を備えている。モータ収容部6内には図示せぬ駆動モータとギヤボックスが収容されており、駆動モータの出力はギヤボックスにより適宜の回転数に減速され、出力軸7を回転させる。出力軸7は連結部材8によって回転軸9の一端と連結されており、回転軸9は水平方向に延出する延出部4上に間隔を空けて立設された2つの支持部4aによって回転可能に支持されている。そして、回転軸9の他端にはネジ10によって上側ホイール11が固定されている。
【0011】
上側ホイール11にはゴム製の無端紐12の上端が掛け回されている。無端紐12の下端は、ネジ13を用いて錘14に対して回転可能に取り付けられた下側ホイール15に掛け回され、切削液用タンク16内に貯留された切削液17中に没入されている。そして、回転軸9が駆動モータにより回転されると上側ホイール10が回転し、無端紐12は矢印Rの方向に回転駆動されるよう構成されている。
【0012】
切削液17の上方に配置されることになる延出部4の先端には傾斜案内面4bが形成されている。図2及び図3に示すように、傾斜案内面4bには貫通孔18が形成されており、延出部4の先端を上下方向に貫通している。図3に示すように、貫通孔18は、傾斜案内面4b側に形成された大径部18aと、該大径部18aよりも上方に位置し、大径部18aよりも一段径が小さくなっている小径部18bとからなっている。大径部18a内にはゴム製の管部材19が収容・保持されており、上述した無端紐12は大径部18a内に収容された管部材19と小径部18bとの間に僅かな隙間Sを有して遊貫している。詳細には、無端紐12の外径2.3mmに対して管部材19の内径は2.5mmであり、無端紐12と管部材19との間に0.1mmの隙間Sが設けられている。又、小径部18bの径も2.5mmであり、無端紐12と小径部18bとの間にも0.1mmの隙間Sが設けられている。管部材19はその下端に、延出部4の傾斜案内面4bと連なって傾斜する傾斜面19aを有している。延出部4に形成された貫通孔18は、本発明の管部材保持部に相当する。
【0013】
傾斜案内面4bの下縁4cの下方には、連結板20を介して延出部4に固定された案内板21が位置しており、傾斜案内面4cの下縁4cから下方に滴下した浮上油を基台部2上に設置された浮上油用タンク22内に案内するようになっている。
【0014】
以上のように構成された浮上油除去装置1の作用について説明する。駆動モータにより上側ホイール11を回転駆動すると、上側ホイール11に巻き回された無端紐12は矢印R方向への回転を開始する。無端紐12には切削液17の表面に浮上している浮上油が付着し、無端紐12に付着した浮上油は延出部4の先端まで運ばれる。管部材19と無端紐12との間の隙間Sに侵入できずにオーバーフローした浮上油は管部材1の傾斜面19aに沿って移動し、傾斜面19aと連なる傾斜案内面4bにより下縁4cに導かれて下方に滴下する。そして、浮上油は案内板21により浮上油用タンク22内に導かれる。
【0015】
管部材19と無端紐12との間の隙間Sに侵入して上方へと流れる微量の浮上油は、隙間Sを満たすことにより油膜潤滑の効果を発揮すると共に、隙間S内に微細ゴミが堆積することを防止する。
【0016】
本実施形態の浮上油除去装置1によれば、無端紐12に遊貫され下端には傾斜面19aが形成された管部材19によって無端紐12に付着した浮上油が除去され、管部材19と無端紐12との間の隙間S内に進入した微量の浮上油によって油膜潤滑がなされるので、管材19と無端紐12との間に摩擦抵抗が殆ど生じることがない。従って、無端紐12を回転駆動する為の駆動モータには、浮上油をスクレーパで擦り取る従来の浮上油除去装置に用いられていた駆動モータよりも小型なものを採用することが可能となる。又、管部材19を保持する貫通孔18は、駆動モータを収容するモータ収容部6側から該タンク16側に向かって水平方向に延出する延出部4に設けられており、該延出部4には傾斜面19aと連なる傾斜案内面4bが形成されているので、管部材19により除去された浮上油を滴下位置である下縁4cまでスムーズに導いて除去することが可能である。
【0017】
本発明による浮上油除去装置は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変形や改良が可能である。例えば、上述した実施形態においては傾斜面19aと傾斜案内面4bは同一角度で傾斜して連なっていたが、傾斜角度を相違させてもよい。
【符号の説明】
【0018】
1 浮上油除去装置
2 基台部
3 支柱部
4 延出部
4b 傾斜案内面
4c 下縁
6 モータ収容部
7 出力軸
9 回転軸
11 上側ホイール
12 無端紐
15 下側ホイール
16 切削油用タンク(タンク)
17 切削油
18 貫通孔(管部材保持部)
18a 大径部
18b 小径部
19 管部材
19a 傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク内の切削液中に下端を没入させた無端紐を駆動モータにより回転させ、該無端紐に付着した浮上油を除去する浮上油除去装置であって、該無端紐に遊貫され下端には傾斜面が形成された管部材と、該管部材を保持する管部材保持部とを備えることを特徴とする浮上油除去装置。
【請求項2】
該管部材保持部は、該駆動モータを収容するモータ収容部側から該タンク側に向かって水平方向に延出する延出部に設けられており、該延出部は該傾斜面と連なって傾斜する傾斜案内面を有することを特徴とする請求項1に記載の浮上油除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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