説明

消火装置

【課題】消火効率を向上できる消火装置を提供すること。
【解決手段】監視対象物の火災が検出された事実を報知するための報知情報が火災感知器50から送信された場合に、当該監視対象物の火災を消火する消火装置10であって、監視対象物の消火方法を特定するための消火方法情報を報知情報と対応付けて格納する消火方法情報格納手段と、監視対象物に消火液を放出する放出手段と、火災感知器50から送信された報知情報に基づいて消火方法情報格納手段から消火方法情報を取得し、当該取得した消火方法情報に基づいて特定される消火方法にて消火を行うように放出手段を制御する制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視対象物の火災を消火する消火装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の住宅用火災感知器の設置義務の法令化に伴い、一般住宅用の火災感知器が一層普及することが予測されている。このような一般住宅用の火災感知器は、筐体の内部に感知部や警報出力部を収容して構成されており、例えば応接間の天井或いは天井近くの壁面に配置され、感知部にて火災が検知されると、警報出力部を介してブザー音や警報音声を出力していた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−124769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の火災感知器は、天井或いは天井近くの壁面に配置されるため、当該火災感知器と火源位置との距離が離れることにより、ある程度の煙発生量等がなければ感知することが困難であった。一方で、感知部の感度が高く設定された火災感知器は、少量の煙等であっても過敏に反応するため警報音の鳴る頻度が増え、住居者の日常生活が妨げられるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、消火効率を向上できる消火装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の消火装置は、監視対象物の火災が検出された事実を報知するための報知情報が火災感知器から送信された場合に、当該監視対象物の火災を消火する消火装置であって、前記監視対象物の消火方法を特定するための消火方法情報を前記報知情報と対応付けて格納する消火方法情報格納手段と、前記監視対象物に消火液を放出する放出手段と、前記火災感知器から送信された前記報知情報に基づいて前記消火方法情報格納手段から前記消火方法情報を取得し、当該取得した消火方法情報に基づいて特定される消火方法にて消火を行うように前記放出手段を制御する制御手段とを備える。
【0007】
また、請求項2に記載の消火装置は、請求項1に記載の消火装置において、前記消火方法情報格納手段は、前記監視対象物の物品名及び材質と、前記監視対象物の火災を消火するために前記放出手段から放出する消火液の放出回数とを、対応付けて前記消火方法情報として記録する放出回数テーブルを格納し、前記制御手段は、前記火災感知器から送信された前記報知情報に含まれる前記監視対象物の物品名及び材質に基づいて前記放出回数テーブルを参照することにより、前記放出手段から放出する消火液の放出回数を特定する。
【0008】
また、請求項3に記載の消火装置は、請求項1又は2に記載の消火装置において、前記消火方法情報格納手段は、前記監視対象物の体積と、前記監視対象物の火災を消火するために前記放出手段から放出する消火液の放出範囲とを、対応付けて前記消火方法情報として記録する放出範囲テーブルを格納し、前記制御手段は、前記火災感知器から送信された前記報知情報に含まれる前記監視対象物の体積に基づいて前記放出範囲テーブルを参照することにより、前記放出手段から放出する消火液の放出範囲を特定する。
【0009】
また、請求項4に記載の消火装置は、請求項1から3のいずれか一項に記載の消火装置において、前記消火方法情報格納手段は、前記監視対象物の重さと、前記監視対象物の火災を消火するために前記放出手段から放出する消火液の放出量とを、対応付けて前記消火方法情報として記録する放出量テーブルを格納し、前記制御手段は、前記火災感知器から送信された前記報知情報に含まれる前記監視対象物の重さに基づいて前記放出量テーブルを参照することにより、前記放出手段から放出する消火液の放出量を特定する。
【0010】
また、請求項5に記載の消火装置は、請求項1から4のいずれか一項に記載の消火装置において、前記消火方法情報格納手段は、前記報知情報に含まれる識別情報であって当該報知情報を送信した前記火災感知器を一意に識別するための識別情報と、前記監視対象物に設置されている前記火災感知器の位置であって当該消火装置を基準とした前記火災感知器の位置とを、対応付けて記録するロケーションテーブルを格納し、前記制御手段は、前記火災感知器から送信された前記報知情報に含まれる前記識別情報に基づいて前記ロケーションテーブルを参照することにより、前記報知情報を送信した前記火災感知器の位置を特定する。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の消火装置によれば、報知情報と消火方法情報とを照合することで、監視対象物に適した消火方法を特定することができると共に、特定された消火方法に基づき当該消火装置の消火液の放出を制御でき、当該消火装置の消火効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施の形態に係る消火システムの構成を示すシステム構成図である。
【図2】消火システムの電気的構成を機能概念的に示すブロック図である。
【図3】消火装置の外観を示す斜視図である。
【図4】消火方法情報DBが記録しているロケーションテーブルの構成例を示す図である。
【図5】消火方法情報DBが記録している放出回数テーブルの構成例を示す図である。
【図6】消火方法情報DBが記録している放出範囲テーブルの構成例を示す図である。
【図7】消火方法情報DBが記録している放出量テーブルの構成例を示す図である。
【図8】識別テーブルの構成例を示す図である。
【図9】属性テーブルの構成例を示す図である。
【図10】火災検出処理のフローチャートである。
【図11】消火処理のフローチャートである。
【図12】カメラから制御部に入力された画像データの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る消火装置の本実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕本実施の形態に共通の基本的概念を説明した後、〔II〕本実施の形態の具体的内容について説明し、〔III〕最後に、本実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0014】
〔I〕本実施の形態に共通の基本的概念
まず、本実施の形態の基本的概念について説明する。本実施の形態に係る火災感知器は、監視対象物の火災を監視することを目的とするものである。また、本実施の形態に係る消火装置は、監視対象物の火災を消火することを目的とするものである。
【0015】
本実施の形態に係る火災感知器の具体的な監視対象物や監視目的、あるいは本実施の形態に係る消火装置の具体的な消火対象は任意であり、例えば、一般住宅又はオフィスの天井や壁等だけでなく、室内に置かれたストーブ、灰皿、ごみ箱、ソファー、机、椅子、及び本等を個別に監視することができる。以下の本実施の形態においては、火災感知器が一般住宅に設置されている場合を例に挙げて説明する。また、火災検出対象は任意であり、例えば煙、熱、一酸化炭素(CO)、及び、ガス等を検出することができる。
【0016】
この火災感知器の特徴の一つは、概略的に、前記監視対象物の火災を検出する火災検出手段を備えた火災感知器が、当該監視対象物に設置されていることにある。従って、この監視対象物に密着して監視することで、極初期火災或いは火災の兆候を検出することができる。また、火災感知器を前記監視対象物に設置したことで、当該監視対象物の特性に応じて当該火災感知器の感度を設定することができ、火災の検出精度を向上できると共に、誤報の頻度を低減することができる。
【0017】
〔II〕本実施の形態の具体的内容
(構成)
次に、本発明に係る本実施の形態の具体的内容について説明する。図1は、本実施の形態に係る消火システムの構成を示すシステム構成図であり、図2は消火システムの電気的構成を機能概念的に示したブロック図である。図1に示すように、本実施の形態に係る消火システム1は、一般住宅の居間、寝室、又は台所等において火災の監視を行うシステムであり、同一空間内に消火装置10、警報装置40、及び火災感知器50を配置して構成されている。
【0018】
(構成―消火装置)
図3は消火装置10の外観を示す斜視図である。図3に示すように、消火装置10は、監視領域における火源位置に消火液を到達させることにより消火を行う消火手段であり、本体20、及び、回動ヘッド30を備えている。
【0019】
図3に示すように、回動ヘッド30は、カメラ31、及びノズル32を備えている。具体的には、カメラ31、及び、ノズル32は、カメラ31の撮影方向(図3における方向A)、及びノズル32による消火液の放出方向(図3における方向B)が相互に略一致した方向となるように、回動ヘッド30上に配置されている。
【0020】
カメラ31は、監視領域を撮影するための撮影手段である。ノズル32は、消火液を監視領域内に放出するための放出手段である。このノズル32は、消火液の放出範囲を調整可能にするために、当該ノズル32の穴径を調整する図示しない調整部を備えている。
【0021】
本体20は、消火装置10の各構成要素を保持する基本的な構造となる部分であり、図2に示すように、ヘッド駆動部21、消火液供給部22、通信部23、記録部24、及び、制御部25を備えている。
【0022】
ヘッド駆動部21は、制御部25からの制御入力に基づき、回動ヘッド30を駆動するための駆動手段である。ヘッド駆動部21の具体的な構成は任意であり、例えば図3に示したように、回動ヘッド30を回転自由度で本体20に対して保持させることができる。この場合、当該ヘッド駆動部21による回動ヘッド30の回動軸を、ノズル32による消火液の放出方向(図3における方向B)と略直交する二つの軸であるY軸、及びZ軸とし(X軸はY軸、及びZ軸と略直交する軸とする)、Y軸周りの駆動のための仰角モータ21aと、Z軸周りの駆動のための旋回モータ21bとを、当該ヘッド駆動部21に設けることができる。
【0023】
消火液供給部22は、消火液をノズル32に供給し当該ノズル32から放出させるためのものであり、タンク22a、ポンプ22b、及び、電磁弁22cを備えている。タンク22aは消火液を収容するためのものである。ポンプ22bは、タンク22aに収容されている消火液を吸引し、図示しない配管を介してノズル32へと送出する。電磁弁22cは、制御部25からの制御信号に基づき、タンク22aからノズル32に至る配管の開閉を行う。
【0024】
通信部23は、火災感知器50から送信された信号を受信し、又は当該火災感知器50から送信された信号を警報装置40、若しくは管理センターへ送信するための通信手段である。
【0025】
記録部24は、消火装置10によって実行される各種処理に必要なデータ、例えば、監視対象物の消火方法を特定する際に参照する制御テーブル等を記録する記録手段であり、消火方法情報データベース(以下「DB」)24aを備えている。消火方法情報DB24aは、監視対象物の物品名、材質、体積、及び重さに応じた消火方法情報を記録する記録手段である。図4〜7は、消火方法情報DB24aが記録しているロケーションテーブル、放出回数テーブル、放出範囲テーブル、又は放出量テーブルを例示した表であり、図4は火災感知器50を一意に識別するための識別情報(以下「ID番号」)と消火装置10から火災感知器50までの位置を対応付けて記録されたロケーションテーブルの構成例を示す図、図5は監視対象物の物品名及び材質と消火液の放出回数を対応付けて記録された放出回数テーブルの構成例を示す図、図6は監視対象物の体積と消火液の放出範囲(ノズル32から放出された消火液が監視対象物に到達した際の照射範囲)を対応付けて記録された放出範囲テーブルの構成例を示す図、図7は監視対象物の重さと消火液の放出量とを対応付けて記録された放出量テーブルの構成例を示す図である。なお、これらの具体的内容については、制御部25によって実行される処理の説明と併せて後述する。
【0026】
制御部25は、消火装置10の動作を制御するための制御手段であり、位置特定部25a、及び、放出制御部25bを備えている。位置特定部25aは、カメラ31によって撮影された画像に基づき、監視領域内における火源位置、及び消火液の到達位置を特定する位置特定手段である。放出制御部25bは、消火液供給部22、及びヘッド駆動部21を制御し、ノズル32からの消火液放出の開始または停止の制御や、消火液の放出方向の制御を行う。制御部25によって実行される処理の具体的な内容については後述する。
【0027】
(構成―警報装置)
警報装置40は、消火装置10から有線又は無線にて受信した信号に基づき警報情報を出力する手段である。この警報装置40の種類は任意であるが、例えばパソコンやTVの如き視覚的に警報情報を出力する装置や、電話の如き聴覚的に警報情報を出力する装置が該当する。警報装置40が出力する警報情報の内容は任意であるが、例えば、極初期火災や初期火災等の火災警報、火災を感知した火災感知器50の位置情報、監視対象物の属性情報、又は消火方法情報等が該当する。
【0028】
(構成―火災感知器)
火災感知器50は、監視対象物の火災を監視するものであり、一般住宅の室内に配置された監視対象物に設置されている。火災感知器50の種類は任意であり、監視対象物に簡易に設置でき、且つ小型であることが好ましく、例えばRFID(Radio Frequency Identification)タグに火災感知機能を備えた火災感知器50が該当する。この火災感知器50は、概略的に、筐体51、起電力部52、感知部53、制御部54、記録部55、及び、通信部56を備えて構成されている。
【0029】
筐体51は、火災感知器50の各構成要素を収容する収容部である。筐体51には、火災感知器50内部に熱等を流入させるための図示しない開口部と、監視対象物に取り付けるための図示しない取付部が設けられている。この取付部の具体的構成は任意であるが、監視対象物の態様に合わせることが好ましく、例えば火災感知器50がカーテンに取り付けられる場合、当該取り付け部は再剥離型の接着剤が塗布された粘着シートで形成される。なお、筐体51の材質は任意であり、例えば樹脂から形成される。
【0030】
(火災感知器の構成―起電力部)
起電力部52は、化学反応や光・熱・電磁誘導によって電力を生み出すための手段であり、特に監視対象物の熱を電力に変換するための熱電変換手段である。この起電力部52は、異種金属を接合した場合に生じるゼーベック効果を用いて発電を行う図示しない熱電変換素子を備えている。熱電変換素子の種類は任意であり、例えばセラミック素子などが用いられる。このゼーベック効果の発電原理は、2種類の金属を接合し、2個所の接合部のうち一方の接合部を高温とし、他方の接合部を低音として温度差を与えると、温度の高い方から低い方へ電子が移動し、熱起電力が発生するという原理である。これにより、高温側を+、低温側を−とする電池が構成される。したがって、例えば熱電変換素子を用いた発電は、熱電変換素子がπ型のような形にP型素子とN型素子とが接合されて形成され、接合されている2種の金属間の温度差に応じて電位差を発生し、熱起電力が発生する。この熱電変換素子に用いられる2種の金属としては、例えばコンスタンタンと銅が該当する。なお、この起電力部52で発生した電力は、感知部53、制御部54、記録部55、及び、通信部56に供給される。
【0031】
(火災感知器の構成―感知部)
感知部53は、監視対象物の火災の有無を検出するための火災検出手段である。感知部53による火災の検出原理は任意であり、例えば赤外線センサ、紫外線センサ、あるいは煙感知器等を用いることができる。以下の本実施の形態においては、感知部53が熱を感知することを例に挙げて説明する。
【0032】
(火災感知器の構成―制御部)
制御部54は、火災感知器50の動作の制御を行うため制御手段であり、具体的には、感知部53によって検出された温度等から、火災の有無を判断してその判断結果に応じた所定制御を行う。
【0033】
なお、制御部54の具体的な構成は任意であり、例えば、OS(Operating System)などの制御プログラム、各種の処理手順などを規定した組み込みプログラム、所要データを格納するための内部メモリ、及び、これらのプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)を備えて構成される。
【0034】
(火災感知器の構成―記録部)
記録部55は、火災感知器50、及び監視対象物に関するデータを記録する記録手段であり、識別テーブル55aと属性テーブル55bとを備えている。識別テーブル55aは、火災感知器50を一意に識別するためのID番号を格納するための識別情報格納手段である。図8は、識別テーブル55aの構成例を示す図である。識別テーブル55aには監視対象物に設置された火災感知器50に割り振られた火災感知器番号が当該火災感知器50のID番号と対応付けて記録されている。また、属性テーブル55bは、監視対象物を特定するための属性情報を格納するための属性情報格納手段である。図9は、属性テーブル55bの構成例を示す図である。属性テーブル55bには監視対象物の属性情報(例えば監視対象物の物品名、材質、大きさ、重さ等)が火災感知器50のID番号と対応付けて記録されている。さらに、記録部55は上述したデータ以外にも、制御部54の火災の有無の判断に用いる所定の閾値(熱に関する閾値)を記録する。なお、これらの具体的内容については、制御部54によって実行される処理の説明と併せて後述する。
【0035】
なお、記録部55の具体的な構成は任意であり、例えば、HD(Hard Disk)の如き書き換え可能な記録手段を用いて構成することができる。
【0036】
(火災感知器の構成−通信部)
通信部56は、識別テーブル55aに記録されたID番号、及び属性テーブル55bに記録された属性情報を報知情報として消火装置10へ送信するための通信手段である。通信部56の通信方法は任意であり、例えば無線又は有線にて通信する。なお、無線通信の伝送方式は、起電力部52で発生する電力量が少ないため通信に使用する消費電力が少ないものが好ましく、例えばSmart Dust Moteの一種であるZigBeeを用いてもよい。
【0037】
(処理−火災検出処理)
次に、火災感知器50の火災検出処理の内容について説明する。図10は火災検出処理のフローチャートである。なお、特記しない制御に関しては、火災感知器50の制御部54が行うこととする。
【0038】
まず、煙草等の火により監視対象物の熱が上昇すると、起電力部52は監視対象物の熱を電力に変換する。この起電力部52によって発生した電力が当該起電力部52から供給されることで、火災感知器50の各構成要素は起動する。次に、制御部54は感知部53に監視対象物の熱を測定させ(ステップSA−1)、感知部53によって測定された測定値が記録部55に記録された閾値以上に達するまで待機する(ステップSA−2)。そして、測定値が記録部55に記録された閾値以上に達すると(ステップSA−2、Yes)、制御部54は報知情報として、識別テーブル55aのデータ、及び属性テーブル55bのデータを含める信号を、通信部56を介して消火装置10へ送信させる(ステップSA−3)。なお、制御部54は通信部56を介して送信される信号を、監視対象物の測定値が閾値を下回るまで送信させ続ける。
【0039】
(処理−消火処理)
次に、消火装置10の消火処理の内容について説明する。図11は消火処理のフローチャートである。なお、特記しない制御に関しては、消火装置10の制御部25が行うこととする。
【0040】
所定の操作手段(図示せず)によって消火装置10が起動されると、制御部25は火災感知器50から送信された信号を受信するまで待機する(ステップSB−1、No)。火災感知器50から信号が送信された後、通信部23が信号を受信すると(ステップSB−1、Yes)、制御部25はヘッド駆動部21を介して回動ヘッド30を回動させ、カメラ31によって監視領域を撮影させる(ステップSB−2)。このとき、制御部25は火災感知器50から受信した報知情報とロケーションテーブルのデータ(消火装置10から火災感知器50までの座標データ)を照合し、照合したデータに基づきヘッド駆動部21を介して回動ヘッド30を回動させる。ただし、ロケーションテーブルにデータが記録されていない場合、回動ヘッド30を現在の位置を中心とする所定範囲で回動させる。
【0041】
続いて、位置特定部25aは、カメラ31によって撮影され制御部25に入力された画像の解析を行い、火源位置の特定を行う(ステップSB−3)。ここで、火源位置が特定されない場合(ステップSB−3、No)、制御部25は極初期火災或いは火災の兆候が生じているものとして、消火方法情報DB24aに記録された消火方法情報(放出回数テーブルのデータ、放出範囲テーブルのデータ、及び放出量テーブルのデータ)、及び火災感知器50から送信された報知情報を含める信号を、通信部23を介して警報装置40へ送信させる(ステップSB−4)。消火装置10からの信号を受信した警報装置40は、表示画面や音声により極初期火災或いは火災の兆候の発生を知らせる警報情報を出力する。これにより、住居者は極初期火災或いは火災の兆候の発生を認識でき、警報装置40に出力された警報情報を参照しながら消火措置を講ずることができる。そして、ステップSB−4から所定時間経過後、制御部25は通信部23を介して火災感知器50から信号を受信するか否か判定する(ステップSB−5)。ここで、通信部23が火災感知器50から信号を受信しない場合(ステップSB−5、No)、制御部25は住居者によって消火措置が講じられたものとして、消火装置10の消火処理を終了する。一方、通信部23が火災感知器50から信号を受信する場合(ステップSB−5、Yes)、制御部25はステップSB−3の直前に戻り、火源位置が特定できるまでステップSB−3からステップSB−5の処理を繰り返す。
【0042】
一方で、火源位置が特定された場合(ステップSB−3、Yes)、制御部25は初期火災が発生したものとして、消火方法情報DB24aに記録された消火方法情報、及び火災感知器50から送信された報知情報を含む信号を、通信部23を介して警報装置40へ送信させる(ステップSB−6)。ステップSB−4と同様に、警報装置40は表示画面や音声により初期火災の発生を知らせる警報情報を出力する。これにより、住居者は初期火災の発生を認識でき、警報装置40に出力された警報情報を参照しながら消火措置を講ずることができる。ただし、ステップSB−4で既にこれら警報情報を送信している場合には、このステップSB−6を省略することもできる。また、制御部25は特定された火源位置を含む所定の大きさの領域を火源範囲として、画像データ中においてマーキングを行う(ステップSB−7)。図12はカメラ31から制御部25に入力された画像データの例を示した図である。この図12においては、画像の左下部において火源位置が特定され、当該火源位置を含む矩形の領域(点線で囲われた領域)が火源範囲として設定されている。
【0043】
その後、制御部25は操作手段(図示せず)や通信部23を介して消火開始指示が入力されるまで待機する(ステップSB−8)。消火開始指示が入力された場合(ステップSB−8、Yes)、放出制御部25bはポンプ22bを動作させると共に電磁弁22cを開放し、ノズル32から消火液を放出させる(ステップSB−9)。ここで、消火方法に関して、放出制御部25bは消火方法情報DB24aに記録された消火方法情報と、火災感知器50から送信された報知情報を照合して監視対象物の消火方法を特定する。例えば、放出制御部25bは監視対象物の物品名及び材質から消火液の放出回数、監視対象物の体積から消火液の放出範囲、そして監視対象物の重さから消火液の放出量を特定する。具体的には、監視対象物がカーテン(材質:ポリエステル、体積:7200cm(縦80cm×横1cm×高さ90cmから制御部25が自動で算出)、重さ:1.5kg)に該当する場合、放出制御部25bは消火液の放出範囲30cm、放出量0.5L/sec、及び20回/分の断続放出を特定する。そして、放出制御部25bは特定された放出回数に合致するように電磁弁22cの開閉回数を設定し、特定された放出範囲に合致するようにノズル32の穴径を図示しない調整部で調整し、又は特定された放出量に合致するようにポンプ22bの圧力を調整した後に、ノズル32から消火液を放出させる。
【0044】
そして、画像解析を行っても火源位置が特定できないことに基づき消火が完了したものと制御部25が判定するまで、あるいは、所定の操作手段や通信部23を介して消火停止指示が制御部25に入力されるまで、放出制御部25bはヘッド駆動部21の制御を継続する(ステップSB−10)。
【0045】
消火が完了したものと判定された場合、あるいは、消火停止指示が制御部25に入力された場合(ステップSB−10、Yes)、放出制御部25bはポンプ22bを停止することで消火液の放出を停止させる(ステップSB−11)。
【0046】
(本実施の形態の効果)
このように本実施の形態によれば、火災感知器50を監視対象物に設置することで、当該監視対象物に密着して火災を監視することができ、極初期火災或いは火災の兆候を検出することができる。例えば、凹面鏡状の反射物等により太陽光が集中することで発生する収斂火災の場合、火災感知器50は監視対象物の熱の上昇を早期に検出することで、当該監視対象物が着火する前段階で回避措置を講じることができる。また、火災感知器50を監視対象物に設置したことで、当該監視対象物の特性に応じて当該火災感知器50の感度を設定することができ、火災の検出精度を向上できると共に、誤報の頻度を低減することができる。なお、この火災感知器50は小型のRFIDタグで構成されているため、監視対象物への設置が容易で、人にとって視覚的に邪魔にならず、監視対象物が移動しても当該監視対象物が停止している場合と同じ状態で監視できる。
【0047】
また、火災感知器50の起電力部52を備えることで、電池を利用しなくても火災感知器50の機能を維持することができ、監視対象物に密着して設置することが容易となり、火災感知器50の電池交換が不要であると共に、維持管理コストを低減することができる。
【0048】
また、火災感知器50を一意に識別するID番号を報知情報とすることで、ID番号と対応付けた情報管理を行うことができる。
【0049】
さらに、監視対象物の属性情報を報知情報に加えることで、ID番号及び属性情報と対応付けた情報管理を行うことができる。
【0050】
また、火災感知器50から送信された報知情報と消火装置10の消火方法情報DB24aに記録された消火方法情報とを照合することで、放出制御部25bが監視対象物に適した消火方法を特定することができると共に、特定された消火方法に基づき当該消火装置10の消火液の放出を制御でき、当該消火装置10の消火効率を向上することができる。
【0051】
〔III〕本実施の形態に対する変形例
以上、本発明に係る本実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0052】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0053】
(消火装置について)
本実施の形態では、報知情報としてID番号及び属性情報を火災感知器50の記録部55(識別テーブル55a及び属性テーブル55b)に記録するものと説明したが、火災感知器50の記録部55にはID番号のみを記録し、属性情報を消火装置10の記録部24に記録してもよい。また、ロケーション情報の設定は、カメラ31で監視対象物を撮像して、そのときの消火装置の向きで自動的に設定してもよい。ID番号とロケーション情報との対応関係の登録を容易とするために、火災感知器50から強制的に火災信号を送出する試験スイッチを設けても良い。または任意のID番号を選択設定して送出できる試験機を用意し、ID番号と位置情報を容易に登録できるようにしても良い。
【0054】
(火災感知器について)
本実施の形態では、火災感知器50を監査対象物の火災を監視するものと説明したが、RFIDタグで構成された火災感知器50の利便性を活用して、属性情報に基づき監査対象物の所在場所を確認することに利用してもよい。また、火災感知器50の識別テーブル55aに記録されたID番号、及び属性テーブル55bに記録された属性情報を更新することができるように、外部からの通信を受信する機能を備えてもよい。この場合には、監視対象物が追加や削除された場合には通信により、記録の追加や抹消を容易に行うことができる。
【0055】
また、消火装置10の消火処理において、ステップSB−5で通信部23が火災感知器50からの信号を受信した場合、制御部25はステップSB−3の直前に戻り、火源位置が特定できるまでステップSB−3からステップSB−5の処理を繰り返すと説明したが、極初期火災又は火災の兆候が生じた場合でも消火するために、火災感知器50の設置位置を火源位置と特定して、ステップSB−7の処理に進めてもよい。
【0056】
(警報装置について)
本実施の形態では、警報装置40を消火装置10から受信した信号に基づき所定のデータを出力するものと説明したが、警報装置40から消火装置10又は火災感知器50へ送信するための所定のデータを入力できてもよく、例えば火災感知器50の識別テーブル55aに記録されたID番号、及び属性テーブル55bに記録された属性情報を更新できるようにしてもよい。
【0057】
(付記)
付記1に記載の火災感知器は、監視対象物に設置され、当該監視対象物の火災を監視する火災感知器であって、前記監視対象物の火災を検出する火災検出手段と、前記火災検出手段が前記監視対象物の火災を検出した場合に、当該火災が検出された事実を報知するための報知情報を送信する通信手段と、を備えることを特徴とする。
【0058】
また、付記2に記載の火災感知器は、付記1に記載の火災感知器において、前記監視対象物の熱を電力に変換する熱電変換手段を備え、前記通信手段は、前記熱電変換手段によって発生した電力を利用して前記情報を送信することを特徴とする。
【0059】
また、付記3に記載の火災感知器は、付記1又は2に記載の火災感知器において、当該火災感知器を一意に識別する識別情報を格納する識別情報格納手段を備え、前記通信手段は、前記報知情報として、前記識別情報格納手段に格納された前記識別情報を送信することを特徴とする。
【0060】
また、付記4に記載の火災感知器は、付記1から3のいずれか一項に記載の火災感知器において、前記監視対象物の属性情報を格納する属性情報格納手段を備え、前記通信手段は、前記報知情報として、前記属性情報格納手段に格納された前記属性情報を送信することを特徴とする。
【0061】
また、付記5に記載の消火装置は、監視対象物の火災が検出された事実を報知するための報知情報が火災感知器から送信された場合に、当該監視対象物の火災を消火する消火装置であって、前記監視対象物の消火方法を特定するための消火方法情報を前記報知情報と対応付けて格納する消火方法情報格納手段と、前記監視対象物に消火液を放出する放出手段と、前記火災感知器から送信された前記報知情報に基づいて前記消火方法情報格納手段から前記消火方法情報を取得し、当該取得した消火方法情報に基づいて特定される消火方法にて消火を行うように前記放出手段を制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0062】
付記1に係る火災感知器によれば、火災感知器を監視対象物に設置したことで、当該監視対象物に密着して監視することができ、極初期火災或いは火災の兆候を検出することができる。また、火災感知器を監視対象物に設置したことで、当該監視対象物の特性に応じて当該火災感知器の感度を設定することができ、火災の検出精度を向上できると共に、誤報の頻度を低減することができる。
【0063】
また、付記2に記載の火災感知器によれば、熱電変換手段を備えることで、電池を利用しなくても火災感知器の機能を維持することができ、監視対象物に密着して設置することが容易となり、電池交換が不要であると共に、維持管理コストを低減することができる。
【0064】
また、付記3に記載の火災感知器によれば、火災感知器を一意に識別する識別情報を報知情報とすることで、識別情報と対応付けた情報管理を行うことができる。
【0065】
また、付記4に記載の火災感知器によれば、さらに監視対象物の属性情報を報知情報に加えることで、識別情報及び属性情報と対応付けた情報管理を行うことができる。
【0066】
また、付記5に記載の消火装置によれば、報知情報と消火方法情報とを照合することで、監視対象物に適した消火方法を特定することができると共に、特定された消火方法に基づき当該消火装置の消火液の放出を制御でき、当該消火装置の消火効率を向上することができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
この発明に係る火災感知器、及び消火装置は、監視対象物の火災を監視する火災感知器、及び当該監視対象物の火災を消火する消火装置に適用でき、火災の検出精度を向上させる火災感知器、及び消火効率を向上させる消火装置に有用である。
【符号の説明】
【0068】
1 消火システム
10 消火装置
20 本体
21 ヘッド駆動部
21a 仰角モータ
21b 旋回モータ
22 消火液供給部
22a タンク
22b ポンプ
22c 電磁弁
23、56 通信部
24、55 記録部
24a 消火方法情報DB
25、54 制御部
25a 位置特定部
25b 放出制御部
30 回動ヘッド
31 カメラ
32 ノズル
40 警報装置
50 火災感知器
51 筐体
52 起電力部
53 感知部
55a 識別テーブル
55b 属性テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象物の火災が検出された事実を報知するための報知情報が火災感知器から送信された場合に、当該監視対象物の火災を消火する消火装置であって、
前記監視対象物の消火方法を特定するための消火方法情報を前記報知情報と対応付けて格納する消火方法情報格納手段と、
前記監視対象物に消火液を放出する放出手段と、
前記火災感知器から送信された前記報知情報に基づいて前記消火方法情報格納手段から前記消火方法情報を取得し、当該取得した消火方法情報に基づいて特定される消火方法にて消火を行うように前記放出手段を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする消火装置。
【請求項2】
前記消火方法情報格納手段は、前記監視対象物の物品名及び材質と、前記監視対象物の火災を消火するために前記放出手段から放出する消火液の放出回数とを、対応付けて前記消火方法情報として記録する放出回数テーブルを格納し、
前記制御手段は、前記火災感知器から送信された前記報知情報に含まれる前記監視対象物の物品名及び材質に基づいて前記放出回数テーブルを参照することにより、前記放出手段から放出する消火液の放出回数を特定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の消火装置。
【請求項3】
前記消火方法情報格納手段は、前記監視対象物の体積と、前記監視対象物の火災を消火するために前記放出手段から放出する消火液の放出範囲とを、対応付けて前記消火方法情報として記録する放出範囲テーブルを格納し、
前記制御手段は、前記火災感知器から送信された前記報知情報に含まれる前記監視対象物の体積に基づいて前記放出範囲テーブルを参照することにより、前記放出手段から放出する消火液の放出範囲を特定する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の消火装置。
【請求項4】
前記消火方法情報格納手段は、前記監視対象物の重さと、前記監視対象物の火災を消火するために前記放出手段から放出する消火液の放出量とを、対応付けて前記消火方法情報として記録する放出量テーブルを格納し、
前記制御手段は、前記火災感知器から送信された前記報知情報に含まれる前記監視対象物の重さに基づいて前記放出量テーブルを参照することにより、前記放出手段から放出する消火液の放出量を特定する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の消火装置。
【請求項5】
前記消火方法情報格納手段は、前記報知情報に含まれる識別情報であって当該報知情報を送信した前記火災感知器を一意に識別するための識別情報と、前記監視対象物に設置されている前記火災感知器の位置であって当該消火装置を基準とした前記火災感知器の位置とを、対応付けて記録するロケーションテーブルを格納し、
前記制御手段は、前記火災感知器から送信された前記報知情報に含まれる前記識別情報に基づいて前記ロケーションテーブルを参照することにより、前記報知情報を送信した前記火災感知器の位置を特定する、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の消火装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−41604(P2013−41604A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−225620(P2012−225620)
【出願日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【分割の表示】特願2008−226014(P2008−226014)の分割
【原出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】