説明

消耗品消費量調整装置、消耗品消費量調整装置の制御方法及び制御プログラム

【課題】熟練を要することなく記録時のインク等の消耗品の消費量を容易に調整可能とする。
【解決手段】画像を構成する要素の順位と消耗品消費補正量との関係を記憶するテーブル記憶部36と、記録対象の画像を構成する複数の要素のそれぞれに設定された前記順位に基づいてテーブル記憶部36を参照し、要素毎に消耗品消費量を調整するインク消費量調整部33と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消耗品消費量調整装置、消耗品消費量調整装置の制御方法及び制御プログラムに係り、特にそれぞれ独立して編集可能な複数の要素で構成された印刷対象の画像の編集時に、印刷に要する消耗品消費量を調整するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット方式等のプリンター等を出力対象として、レシートに印刷するロゴマークのデザインや、オンデマンドで印刷して発券するクーポン券のデザインを行う場合には、レシートやクーポン券の発行コストを考慮するためにインク等の消耗品の消費量を把握したいという要望があった。
この場合において、デザイン途中でロゴマークやクーポン券等を印刷した場合のインク消費量を把握するためには、一旦デザイン内容を確定するため、デザイン作業を中断し、その時におけるデザインに基づきロゴマークやクーポン券を印刷した場合のインク消費量を算出していた(例えば、特許文献1参照)。この算出結果より、目標とするインク消費量に近づけるため、当該デザイン作業中断時のロゴマークやクーポン券を構成する要素(背景、画像、テキストなど)のうち、インク消費量を調整するための要素を選択し、選択した要素を編集するためにデザイン作業を再開し、再びインク消費量を算出する、という一連の作業を何度も繰り返すこととなっていた。
この場合において、インク消費量を目的のインク消費量とするために編集対象とする要素を的確に選択しデザインを修正するのは難しく、熟練を要するものがあり、上述の一連の作業を何度も繰り返さなければならくなる要因となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−212270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の構成において、デザイン性を損なわずにインク消費量を所望の値に低減するために調整を行うのは、慣れない作業者にとっては、困難であるという問題点があった。
そこで、本発明の目的は、熟練を要することなく印刷時のインク等の消耗品の消費量を容易に調整可能な消耗品消費量調整装置、消耗品消費量調整装置の制御方法及び制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明の消耗品消費量調整装置は、画像を構成する要素の順位と、記録対象の前記画像を構成する要素の消耗品消費量に対する消耗品消費補正量との関係を記憶する補正量記憶部と、記録対象の画像を構成する複数の要素のそれぞれに設定された前記順位に基づいて前記補正量記憶部を参照し、前記要素毎に前記消耗品消費量を調整する消耗品消費量調整部と、を備えたことを特徴としている。
【0006】
上記構成によれば、補正量記憶部は、画像を構成する要素の順位と消耗品消費補正量との関係を記憶する。
これにより、消耗品消費量調整部は、印刷などの記録対象の画像を構成する複数の要素のそれぞれに設定された順位に基づいて補正量記憶部を参照し、要素毎に消耗品消費量を調整する。
したがって、記録対象の画像を構成する要素の順位を考慮して消耗品消費量が調整されるため、熟練を要することなく、デザイン性を損なうこともなく、所望の消耗品消費量に容易に調整することができる。
【0007】
この場合において、前記消耗品消費量調整部は、前記画像全体の消耗品消費量が、あらかじめ設定された基準消耗品消費量以下となるように前記要素毎の前記消耗品消費量を調整するようにしてもよい。
上記構成によれば、熟練を要せずに、画像全体の消耗品消費量を、あらかじめ設定された基準消耗品消費量以下に容易に調整することができる。
【0008】
また、前記消耗品消費補正量は、各要素間の消耗品消費量の比率を保ちつつ、前記記録対象の画像の消耗品消費量を低減するように設定されているようにしてもよい。
上記構成によれば、画像を構成する各要素毎の消耗品消費量の比率が保たれるので、元の画像の雰囲気を容易に保ちつつ、消耗品消費量を調整することが可能となる。
【0009】
また、前記消耗品消費補正量は、前記順位の低い要素ほど調整前の消耗品消費量に対する調整後の消耗品消費量の低減率が高く設定されているようにしてもよい。
上記構成によれば、画像を構成する要素のうち、重要な要素ほど、消耗品消費量が維持されるため、明確に重要な情報を伝えつつ、消耗品消費量を調整することができる。
また、前記消耗品消費補正量は、前記要素毎の単位面積当たりの消耗品消費量を低減するように設定されているようにしてもよい。単位面積毎に容易に消耗品消費量を調整することができる。
【0010】
また、本発明の消耗品消費量調整装置の制御方法は、画像を構成する要素の順位と、記録対象の前記画像を構成する要素の消耗品消費量に対する消耗品消費補正量との関係を記憶する補正量記憶過程と、記録対象の画像を構成する複数の要素のそれぞれに設定された前記順位に基づいて前記補正量記憶部を参照する参照過程と、前記要素毎に前記消耗品消費量を調整する消耗品消費量調整過程と、を備えたことを特徴としている。
上記構成によれば、記録対象の画像を構成する要素の順位を考慮して消耗品消費量が調整されるため、熟練を要することなく、デザイン性を損なうこともなく、所望の消耗品消費量に容易に調整することができる。
【0011】
また、本発明の制御プログラムは、画像を構成する要素の順位と、記録対象の前記画像を構成する要素の消耗品消費量に対する消耗品消費補正量との関係を記憶する補正量記憶装置を備えた消耗品消費量調整装置をコンピューターにより制御するための制御プログラムにおいて、前記コンピューターを、記録対象の画像を構成する複数の要素のそれぞれに設定された前記順位に基づいて前記補正量記憶装置を参照させる参照手段、前記要素毎に前記消耗品消費量を調整させる消耗品消費量調整手段、
として機能させることを特徴としている。
上記構成によれば、記録対象の画像を構成する要素の順位を考慮して消耗品消費量が調整されるため、熟練を要することなく、デザイン性を損なうこともなく、所望の消耗品消費量に容易に調整することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、熟練を要することなく、印刷などの記録対象の画像のデザイン性を損なうこともなく、記録対象の画像の消耗品消費量を所望の消耗品消費量に容易に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態の画像処理システムの概要構成ブロック図である。
【図2】画像処理システムの概要機能ブロック図である。
【図3】印刷対象の画像を説明する図である。
【図4】画像処理システムの概要処理フローチャートである。
【図5】重要度重視モード時のインク消費補正量の説明図である。
【図6】バランス重視モード時のインク消費補正量の説明図である。
【図7】ディスプレイの表示画面の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態について説明する。
図1は、実施形態の画像処理システムの概要構成ブロック図である。
画像処理システム10は、各種処理を行うコンピューター本体11と、各種情報を表示するディスプレイ12と、各種データを入力するキーボード13と、タッチペン14を利用して画像などを描画するためのペンタブレット15と、マウス16と、インクジェット方式のプリンター17と、を備えている。
【0015】
図2は、画像処理システムの概要機能ブロック図である。
以下の説明においては、デザインを行う印刷対象の画像を含むファイルをドキュメントと表現するものとする。
ドキュメント21には、画像データ22、テキストデータ23、テキスト背景データ24、背景データ25が含まれている。ここで、画像データ22は、複数の要素から構成されている。
画像データ22を構成する要素としては、レイヤー、オブジェクトなどが挙げられ、要素毎に独立して編集が可能となっている。すなわち、要素の編集は、レイヤー単位あるいはオブジェクト単位で行え、各要素の編集結果は、他の要素に影響を与えないようになっている。
また、画像データ22、テキストデータ23、テキスト背景データ24および背景データ25は、それぞれ要素としても機能し、要素毎に独立して編集が可能となっている。
【0016】
画像処理システム10は、大別すると、ドキュメント21を対象として、画像編集機能を実現するアプリケーション26と、編集されたドキュメント21のプリンター17における印刷時のインク(消耗品)の消費量の算出およびインク消費量の調整を行い、オペレーターに提示するインク消費量管理部27と、を備えている。
インク消費量管理部27は、ドキュメント21のデータを取得し、取得したデータのデータ容量が所定の基準データ容量を超えている場合に演算に用いる画像の画像サイズを縮小するデータ縮小部31と、プリンター17に対して設定されているプリンター設定情報およびドキュメント21のデータ(元データあるいは縮小データ)に基づいて、ドキュメントを印刷した場合のインク消費量をドキュメント21全体およびドキュメント21を構成する要素毎に算出するインク消費量算出部32と、インク消費量算出部32の算出したインク消費量に基づいて、主としてインク量の低減を図るためにインク消費量を調整するインク消費量調整部33と、後述する重要度重視モードテーブル34及びバランス重視モードテーブル35を予め記憶したテーブル記憶部36と、インク消費量算出部32が算出し、あるいは、インク消費量調整部が調整したインク消費量を、ドキュメント21全体およびドキュメント21を構成する要素のうちオペレーターにより選択されている要素(選択要素)について表示するインク消費量表示部37と、を備えている。
【0017】
図3は、記録など印刷対象の画像を説明する図である。
図3(a)は、印刷対象の画像の印字状態の一例を示した図である。
以下の説明においては、印刷対象のドキュメント21に対応する画像が、図3(a)に示すように、画像データ22に対応する画像領域A1、テキストデータ23に対応するテキスト領域A2、テキスト背景データ24に対応するテキスト背景領域A3および背景データ25に対応する背景領域A4の4種類の領域(要素)から構成されている場合について説明する。
【0018】
図4は、画像処理システムの概要処理フローチャートである。
まず、各ドキュメント21における印刷対象画像全体の最大許容インク消費量である基準インク消費量(基準消耗品消費量)がオペレーターにより設定される(ステップS11)。これにより、画像処理システムにおいては、この最大許容インク消費量を超えない範囲内で、インク消費量を調整することとなる。この場合において、設定されるインク消費量は、あらかじめドキュメントの種類(例えば、レシート、クーポンなど)により規定値が定まっていても良いし、その都度オペレーターが設定するようにしていてもよい。
【0019】
次に、オペレーターは、要素毎に重要度(順位)を設定する(ステップS12)。以下の説明においては、重要度が高いほど大きい値を有し、その範囲は、0(重要度低)〜100(重要度高)であるものとする。
具体的には、本実施形態では、画像領域の重要度=80、テキスト領域の重要度=100、テキスト背景領域の重要度=50、背景領域の重要度=30に設定されたものとする。
図3(b)は、各領域の重要度を視覚化した図である。
図3(b)に示すように重要度の高い領域は、色が濃く表現され、重要度の低い領域は、色が薄く表現されている。すなわち、テキスト領域A2が最も重要度が高く、画像領域A1→テキスト背景領域A3→背景領域A4の順番で重要度が低くなっているものとする。
【0020】
各要素の重要度を表すデータについては、各ドキュメント21とは、別個のファイルとして構成しても良いし、あるいは、各ドキュメント21内に任意の方法で格納するようにしても良い。各ドキュメント21内に格納する方法としては、例えば、αチャンネルを利用可能な場合には、αチャンネル内に重要度を表すデータを格納するようにしてもよい。
これにより、コンピューター本体11は、オペレーターにより指定された印刷対象画像全体のインク消費量および重要度データに基づいて、テーブルを参照してインク消費量を調整し、ドキュメント21をプリンター17により印刷することとなる。
このとき、コンピューター本体11は、まず、ドキュメント21をそのまま印刷した場合のインク消費量を算出するが、このインク消費量の算出に先立って、インク消費量管理部27は、アプリケーション26を介してドキュメント21にデータ要求を行い、ドキュメント21からドキュメント全体及び構成要素毎のデータを取得する。
【0021】
これらの結果、インク消費量管理部27を構成するデータ縮小部31は、取得したデータのデータ容量が所定の基準データ容量を超えているか否かに基づいて取得したデータに対応する画像の縮小が必要か否かを判別する(ステップS13)。
ステップS13の判別において、画像の縮小が必要な場合には(ステップS13;Yes)、演算に用いる画像の画像サイズを縮小して、その縮小率とともに縮小後のドキュメント21のデータをインク消費量算出部32に出力する(ステップS14)。
また、データ縮小部31は、取得したデータのデータ容量が所定の基準データ容量を超えていない場合には(ステップS13;No)、画像の縮小が必要ではないと判別し、取得したドキュメント21のデータをそのままインク消費量算出部32に出力することとなる。
これらの場合において、基準データ容量としては、データ容量が大きく処理に時間がかかると想定され、所定の処理時間内に処理が完了しないと想定される容量が設定されている。
【0022】
なお、データ縮小部31は、ドキュメント21のデータが基準データ容量を超えている場合でも、オペレーターにより正確なインク消費量を算出することが指示された場合には、画像データを縮小することなく、そのままインク消費量算出部32にドキュメント21のデータを出力することとなる。同様に取得したデータのデータ容量が所定の基準データ容量を超えていない場合であっても、オペレーターにより、処理速度優先等のために、画像データ縮小の指示がなされている場合には、演算に用いる画像の画像サイズを縮小して、その縮小率とともに縮小後のドキュメント21のデータをインク消費量算出部32に出力することとなる。
【0023】
これらの結果、インク消費量算出部32は、取得したドキュメント21のデータおよび印刷モードや用紙設定などのインク消費量に影響を与えるプリンター設定情報に基づいて画素毎にインクショット数(ヘッドの各ノズルにおけるインク吐出回数)に換算し、当該ドキュメント21のデータを印刷した場合のインク消費量(あるいは、インク消費概算量)を算出する(ステップS15)。インクが、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック等がある場合、それぞれのインクのショット数と、合計のショット数を算出する。
【0024】
ここで、インク消費量の算出についてより具体的に説明する。
まず、インク消費量算出部32は、ショット数データと印刷結果予測画像の生成を行う。そして、インク消費量算出部は、取得したプリント設定情報に含まれるプリンター名をもとに、当該プリンター17用の解析モジュールを用いて、吐出データの制御データを解析し、プリンター17のインクジェットヘッドにおけるヘッドショット数(ヘッドにおけるインク吐出回数)と、インクジェットヘッドがキャリッジに搭載されるもので、往復しながらインクを吐出する場合の往復回数とをカウントする。このヘッドショット数としては、インクジェットヘッドの有する全ノズルのショット数を全てカウントする。
【0025】
この場合に、インク消費量算出部32は、ドキュメント21を構成する要素(レイヤーあるいはオブジェクトなど)毎にヘッドショット数をカウントし、その後、これらを合計してドキュメント21のヘッドショット数を算出することとなる。
インク消費量算出部32は、こうして得られた要素毎及びドキュメント21全体の、ヘッドショット数と、インクジェットヘッドの往復回数とを、要素毎及びドキュメント21全体のショット数データとして図示しないメモリーへ格納する。インク消費量算出部32は、印刷するための吐出データが生成される際に使用されるプリンタードライバーに含まれる解析モジュールを用いて、吐出データを解析するものでもよい。
【0026】
続いて、インク消費量調整部33は、オペレーターにより指定された基準インク消費量に対して、当該ドキュメント21のインク消費量が多いか否かを判別する(ステップS16)。
ステップS16の判別において、オペレーターにより指定された消費インク量に対して、当該ドキュメント21のインク消費量が多い場合には(ステップS16;Yes)、現在のインク消費量調整モードが重要度重視モード、あるいは、バランス重視モードのいずれに設定されているかを判別する(ステップS17)。
【0027】
ここで、インク消費量調整モードについて説明する。
重要度に応じてインク消費量の調整を行う方法は様々考えられるが、本実施形態では、重要度の高い要素はなるべくオリジナルと同じ色で印刷するようにした重要度重視モードと、色合いのバランスをオリジナルと同様となるようにしたバランス重視モードと、を採用している。この場合において、重要度重視モードは、オペレーターが重要であると考えている情報が含まれる要素を高品質で印刷できるが、全体の色合いバランスが崩れやすいという特徴を持っている。逆にバランス重視モードは、全体の色合いバランスは保たれた状態で印刷できるが、全体的な印刷品質が低下しやすいという特徴を持っている。
ステップS18の判別において、現在のインク消費量調整モードが重要度重視モードである場合には(ステップS18;重要度重視)、インク消費量調整部33は、重要度重視モードテーブル34を参照して、インク消費補正量を読み出し(ステップS18)、インク消費量調整処理を行う(ステップS20)。
【0028】
図5は、重要度重視モード時のインク消費補正量の説明図である。
重要度重視モードは、重要度の低い要素ほど調整前の消耗品消費量に対する調整後の消耗品消費量の低減率が高く設定されている消耗品消費量調整モードである。
具体的には、重要度重視モードおけるインク消費量の調整処理においては、画像領域については重要度=80であるので、インク消費補正量は、1.0(補正なし)となっており、テキスト領域についても重要度=100であるので、インク消費補正量は、1.0(補正なし)となっている。これらに対しテキスト背景領域については重要度=50であるので、インク消費補正量は、0.5となっており、元のインク消費量の50[%]の消費量に設定される。同様に、背景領域については重要度=30であるので、インク消費補正量は、0.3となっており、元のインク消費量の30[%]の消費量に設定される。
【0029】
したがって、例えば、補正前のオリジナルのドキュメント21の画像領域のインク消費量がショット数にして250,000ショット、テキスト領域のインク消費量がショット数にして100,000ショット、テキスト背景領域のインク消費量がショット数にして200,000ショット、背景領域のインク消費量がショット数にして500,000ショットであり、合計ショット数が1,050,000ショットであった場合には、補正後のドキュメント21の画像領域のインク消費量がショット数にして250,000ショット(変化なし)、テキスト領域のインク消費量がショット数にして100,000ショット(変化なし)、テキスト背景領域のインク消費量がショット数にして100,000ショット、背景領域のインク消費量がショット数にして150,000ショットであり、合計ショット数が600,000ショットとされ、トータルで40%程度のインク消費量の低減が図れることとなる。
【0030】
一方、ステップS17の判別において、現在のインク消費量調整モードがバランス重視モードである場合には(ステップS17;バランス重視)、インク消費量調整部は、バランス重視モードテーブル35を参照して、インク消費補正量を読み出し(ステップS19)、インク消費量の調整処理を行う(ステップS20)。
図6は、バランス重視モード時のインク消費補正量の説明図である。
バランス重視モードは、各要素間の消耗品消費量の比率をできるだけ保ちつつ、印刷対象の画像の単位面積当たりの消耗品消費量(インクの場合、単位面積当たりのインク濃度)を低減するように設定されている消耗品消費量調整モードである。
【0031】
具体的には、重要度重視モードにおけるインク消費量の調整処理においては、画像領域については重要度=80であるので、インク消費補正量は、0.8となっており、テキスト領域についても重要度=100であるので、インク消費補正量は、1.0(補正なし)となっており、テキスト背景領域については重要度=50であり、インク消費補正量は、0.5となっており、背景領域については重要度=30であり、インク消費補正量は、0.4となっている。
したがって、補正前のオリジナルのドキュメント21の画像領域のインク消費量が上述の例の場合には、補正後のドキュメント21の画像領域のインク消費量がショット数にして200,000ショット、テキスト領域のインク消費量がショット数にして100,000ショット(変化なし)、テキスト背景領域のインク消費量がショット数にして100,000ショット、背景領域のインク消費量がショット数にして200,000ショットであり、合計ショット数が600,000ショットとされ、重要度重視モードと同じく、トータルで40%程度のインク消費量の低減が図れることとなる。
【0032】
そして、ドキュメント21全体およびドキュメント21を構成するとともにオペレーターにより現在選択されている要素のそれぞれに対応するインク消費量について、インク消費量表示部として機能するディスプレイ12の表示を同時に更新して、オペレーターに通知することとなる(ステップS21)。
【0033】
図7は、ディスプレイの表示画面の説明図である。
ディスプレイ12の表示画面12A上には、画像編集を行うアプリケーション26に対応するアプリケーションウィンドウ41が表示されている。
アプリケーションウィンドウ41内には、ファイル操作などを行う標準ツールバー表示領域42、画面遷移を行わせる画面遷移ツールバー表示領域43、処理対象のドキュメント21の格納アドレスを示すアドレス表示領域44、処理対象のドキュメント21の印刷イメージIMGを表示するとともに、ドキュメント21の編集を行う編集領域45,編集ツールのアイコンが複数表示されたツール表示領域46および編集対象あるいは編集条件などの各種情報を表示する編集情報表示領域47を備えている。
【0034】
ここで、編集情報表示領域47は、インク消費量表示部37としても機能するインク消費量調整サブウインドウ50を備えている。
インク消費量調整サブウインドウ50は、プリンター名、印刷解像度、印刷用紙種類などのプリンター設定情報を表示するプリンター設定情報表示領域51と、ドキュメント21全体、すなわち、印刷イメージIMGに対応する画像全体のインク消費量をインクショット数等で表示する全インク消費量表示領域52と、印刷イメージIMGのうち、オペレーターが選択した編集対象の要素が印刷イメージIMGを構成する画像IMGSに対応する画像のインク消費量をインクショット数等で表示する編集対象インク消費量表示領域53と、を備えている。
【0035】
さらにインク消費量調整サブウインドウ50は、印刷イメージIMGに対応する印刷結果におけるインク(図7においては、イエロー、マゼンタ、シアン、黒ブラックの4種)のインクの使用比率を表示する使用インク比率表示部54と、オペレーターがインク消費量の算出を手動で指示するための更新ボタンを表示する更新ボタン表示領域55と、オペレーターがインク消費量の調整を手動で指示するための調整ボタンを表示する調整ボタン表示領域56と、オペレーターが設定した印刷対象画像全体のインク消費量(消耗品消費量)の上限値を表示するインク消費量設定値をインクショット数等で表示する設定インク消費量表示領域57と、を備えている。
【0036】
ここで、更新ボタンについては、これをクリックするなどの操作を行わなくても、所定のタイミング(編集確定あるいは所定時間毎)において自動的に更新するように構成することも可能となっている。
また、調整ボタン表示領域56は、上述した重要度重視モードでインク消費量の調整を指示するための重要度重視モード指示ボタン56Aと、上述したバランス重視モードでインク消費量の調整を指示するためのバランス重視モード指示ボタン56Bと、が配置されている。
そして、オペレーターが編集領域45において、ツール表示領域に47に表示されている編集ツールなどを用いて印刷イメージIMGを編集し、若しくは、重要度重視モード指示ボタン56Aあるいはバランス重視モード指示ボタン56Bのいずれかのボタンをクリックした場合には、編集内容あるいはボタン操作に応じて、全インク消費量表示領域52および編集対象インク消費量表示領域53の内容が更新される。
【0037】
このようにドキュメント21の編集、重要度重視モード指示ボタン56Aあるいはバランス重視モード指示ボタン56Bのボタン操作をトリガーとしてインク消費量を調整し、自動的にディスプレイ12上で再表示するため、熟練していないオペレーターがインク消費量調整しようとした場合でも、オペレーターの指示したインク消費量に容易に調整が可能となり、作業性が向上することとなる。
【0038】
以上の説明は、要素毎にインク消費量を調整するものであったが、レイヤーを要素として、インク消費量を調整することも可能である。
この場合に、実際の印刷状態では、下位レイヤー(要素)に属するオブジェクトが、より上位のレイヤー(要素)に属するオブジェクトが不透明である場合、下位レイヤーのオブジェクトの領域の内、上位レイヤーに属するオブジェクトが重なった部分については印刷されないこととなる。
したがって、下位レイヤーのオブジェクトの領域の内、この重なった領域は、インク消費量に影響を与えないこととなるので、このような場合には、その分をあらかじめカウントしないようにするかあるいは、後から差し引くように構成する必要がある。
【0039】
以上の説明は、アプリケーションの編集により各レイヤー内において各オブジェクトの配置位置が変化しない場合のものであるが、編集によりいずれかの要素の配置、サイズ、形状など、重なり部分の領域が変更されるような変更を行った場合には、重なり部分の領域の面積も考慮して、インク消費調整を再度行う必要がある。また、編集によりレイヤーの上下関係を変更した場合には、再度重なり領域を算出してインク消費量をその都度、再算出する必要がある。
また、以上の説明は、要素がレイヤーである場合について述べたが、同一のレイヤーに、上述したようなオブジェクトが複数属している場合に、各オブジェクトを要素として取り扱い、同様の処理を適用することも可能である。図2の画像データ22、テキストデータ23、テキスト背景データ24、背景データ25を、各オブジェクトとしてもよい。この場合、画像データ22、テキストデータ23、テキスト背景データ24、背景データ25が要素として取り扱われる。
【0040】
以上の説明のように、本実施形態によれば、オペレーターによりインク消費量の調整が指示された場合には(所定のタイミングで自動的に指示される場合も含む)、編集結果を反映して、インク消費量の調整が自動的になされるので、オペレーターの熟練を要せずに目的とするインク消費量に容易かつ確実に到達させることが可能となる。
【0041】
以上の説明においては、印刷対象の画像を構成する要素として、オブジェクト(画像領域など)あるいはレイヤーについて説明したが、印刷対象の画像を単純に複数の領域(エリア)に分割し、領域毎に重要度を変更するように構成することも可能である。例えば、画像の中心領域は、重要度を高くし、画像の周辺領域は、重要度を低くするように構成することも可能である。
【0042】
以上の説明においては、重要度については、オペレーターが個々に設定するものとして説明したが、あらかじめ要素の種類と重要度を対応付けておき、デフォルト値として要素の種類に応じて重要度を割り当て、必要に応じてオペレーターが設定を変更するように構成することも可能である。
【0043】
以上の説明においては、インクジェット方式のプリンターの実施例で説明したが、レーザー方式のプリンターにおける各色のトナーや、昇華型や転写型などの熱転写方式のプリンターにおける各色のインクリボンや、インパクト方式における各色のインクリボンなど、消耗品を用いて多色で記録できる装置でも適応が可能である。また、被記録媒体も紙の他、布、樹脂、ガラスなどでも適応が可能である。
【符号の説明】
【0044】
10…画像処理システム、11…コンピューター本体、12…ディスプレイ、17…プリンター、21…ドキュメント、22…画像データ、23…テキストデータ、24…テキスト背景データ、25…背景データ、27…インク消費量管理部(消耗品消費量調整部)、32…インク消費量算出部、33…インク消費量調整部(消耗品消費量調整部)、34…重要度重視モードテーブル(補正量記憶部)、35…バランス重視モードテーブル(補正量記憶部)、36…テーブル記憶部(補正量記憶部)、37…インク消費量表示部、50…インク消費量調整サブウインドウ、52…全インク消費量表示領域、53…編集対象インク消費量表示領域、56…調整ボタン表示領域、56A…重要度重視モード指示ボタン、56B…バランス重視モード指示ボタン、57…設定インク消費量表示領域、A1…画像領域、A2…テキスト領域、A3…テキスト背景領域、A4…背景領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を構成する要素の順位と、記録対象の前記画像を構成する要素の消耗品消費量に対する消耗品消費補正量との関係を記憶する補正量記憶部と、
前記記録対象の画像を構成する複数の要素のそれぞれに設定された前記順位に基づいて前記補正量記憶部を参照し、前記要素毎に前記消耗品消費量を調整する消耗品消費量調整部と、
を備えたことを特徴とする消耗品消費量調整装置。
【請求項2】
請求項1記載の消耗品消費量調整装置において、
前記消耗品消費量調整部は、前記画像全体の消耗品消費量が、あらかじめ設定された基準消耗品消費量以下となるように前記要素毎の前記消耗品消費量を調整することを特徴とする消耗品消費量調整装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の消耗品消費量調整装置において、
前記消耗品消費補正量は、各要素間の消耗品消費量の比率を保ちつつ、前記記録対象の画像の消耗品消費量を低減するように設定されていることを特徴とする消耗品消費量調整装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の消耗品消費量調整装置において、
前記消耗品消費補正量は、前記順位の低い要素ほど調整前の消耗品消費量に対する調整後の消耗品消費量の低減率が高く設定されていることを特徴とする消耗品消費量調整装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の消耗品消費量調整装置において、
前記消耗品消費補正量は、前記要素毎の単位面積当たりの消耗品消費量を低減するように設定されていることを特徴とする消耗品消費量調整装置。
【請求項6】
画像を構成する要素の順位と、記録対象の前記画像を構成する要素の消耗品消費量に対する消耗品消費補正量との関係を記憶する補正量記憶過程と、
記録対象の画像を構成する複数の要素のそれぞれに設定された前記順位に基づいて前記補正量記憶部を参照する参照過程と、
前記要素毎に前記消耗品消費量を調整する消耗品消費量調整過程と、
を備えたことを特徴とする消耗品消費量調整装置の制御方法。
【請求項7】
画像を構成する要素の順位と、記録対象の前記画像を構成する要素の消耗品消費量に対する消耗品消費補正量との関係を記憶する補正量記憶装置を備えた消耗品消費量調整装置をコンピューターにより制御するための制御プログラムにおいて、
前記コンピューターを、
記録対象の画像を構成する複数の要素のそれぞれに設定された前記順位に基づいて前記補正量記憶装置を参照させる参照手段、
前記要素毎に前記消耗品消費量を調整させる消耗品消費量調整手段、
として機能させることを特徴とする制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−95953(P2011−95953A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248545(P2009−248545)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】