説明

液体循環式暖房システム

【課題】タンク内の加熱液体の量に拘わらずに直ちに暖房を行うことのできる液体循環式暖房システムを提供する。
【解決手段】液体循環式暖房システム1は、加熱液体を生成する冷媒放熱器22を有するヒートポンプ回路20と、加熱液体を貯めるタンク8と、加熱液体を放熱させる暖房用放熱器3とを備える。タンク8と冷媒放熱器22は、供給管31および回収管32により接続されており、タンク8と暖房用放熱器3は、送り管81および戻し管82により接続されている。さらに、液体循環式暖房システム1は、回収管32から分岐して送り管81につながるバイパス管35と、冷媒放熱器22で生成された加熱流体についての、回収管32のバイパス管35が分岐する位置よりも下流側へ流すべき量とバイパス管35へ流すべき量の比である分配比を変更する分配比変更手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を利用して暖房を行う液体循環式暖房システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ボイラーあるいは電気ヒータによって温水を生成し、この温水を使って暖房を行う液体循環式暖房システムが知られている。近年では、ボイラーおよび電気ヒータに代わる熱源として、高効率で温水を生成できるヒートポンプを採用することが検討されている。例えば特許文献1では、ヒートポンプによって温水を生成し、この温水を貯湯タンクに貯める液体循環式暖房システムが提案されている。この液体循環式暖房システムでは、貯湯タンクに貯められた温水が例えば居室内に配置された暖房用放熱器に送られ、ここで放熱した後に貯湯タンクに戻されるようになっている。
【特許文献1】特開2008−39306号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の液体循環式暖房システムでは、貯湯タンクに所定温度以上の温水が十分に貯まっていなければ暖房を行うことができない。それ故に、貯湯タンク内の温水の温度が低下する等して貯湯タンク内の温水の量が少なくなった場合には、再度温水を生成しこれを貯湯タンクに貯める必要があり、暖房開始までに時間がかかることになる。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑み、タンク内の加熱液体の量に拘わらずに暖房を行うことのできる液体循環式暖房システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は、循環する冷媒を放熱させて液体を加熱し、加熱液体を生成する冷媒放熱器を有するヒートポンプ回路と、生成された前記加熱液体を貯めるタンクと、前記タンクの下部から前記冷媒放熱器へ前記液体を導く供給管と、前記冷媒放熱器から前記タンクの上部へ前記加熱液体を導く回収管と、生成された前記加熱液体を放熱させる暖房用放熱器と、前記タンクに貯められた前記加熱液体を前記暖房用放熱器に送る送り管と、前記暖房用放熱器で放熱した前記加熱液体を前記タンクに戻す戻し管と、前記回収管から分岐して前記送り管につながるバイパス管と、前記冷媒放熱器で生成された加熱流体についての、前記回収管の前記バイパス管が分岐する位置よりも下流側へ流すべき量と前記バイパス管へ流すべき量の比である分配比を変更する分配比変更手段と、を備える、液体循環式暖房システムを提供する。
【発明の効果】
【0006】
上記の構成によれば、冷媒放熱器から暖房用放熱器に直接的に加熱液体を送ることが可能となっている。従って、本発明によれば、タンク内の加熱液体の量に拘わらずに暖房を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明は本発明の一例に関するものであり、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0008】
図1に、本発明の一実施形態に係る液体循環式暖房システム1を示す。この液体循環式暖房システム1は、液体を加熱して加熱液体を生成し、この加熱液体の熱を暖房用放熱器3から放出させることにより、例えば居室内の暖房を行うものである。液体としては、例えば、水にプロピレングリコール等を混入した不凍液を用いることも可能であるが、安価で大量入手可能な水を用いることが好ましい。以下では、液体が水であり、加熱液体が温水であるとして説明する。
【0009】
具体的に、液体循環式暖房システム1は、温水を生成するためのヒートポンプ2と、生成された温水を貯める貯湯タンク8と、生成された温水を放熱させる暖房用放熱器3と、機器の全体的な制御を行う統括制御装置5とを備えている。
【0010】
ヒートポンプ2は、冷媒を循環させるヒートポンプ回路20を有している。このヒートポンプ回路20は、冷媒を圧縮する圧縮機21と、圧縮された冷媒を放熱させる放熱器(冷媒放熱器)22と、放熱した冷媒を膨張させる膨張弁23と、膨張した冷媒を蒸発させる蒸発器24とを有し、これらの機器21〜24が配管によって順に接続されて構成されている。また、ヒートポンプ2は、統括制御装置5からの指令に基づいて、圧縮機21および膨張弁23を制御するヒートポンプ制御装置26を有している。なお、膨張弁23に代えて、膨張する冷媒から動力を回収するための膨張機を採用することも可能である。
【0011】
放熱器22では、放熱器22を通過する水と冷媒との間で熱交換が行われて水が加熱され、これにより温水が生成される。蒸発器24では、ファン25によって送風される空気と冷媒との間で熱交換が行われて冷媒が吸熱する。冷媒としては、代替フロンまたはアンモニアなどを用いることも可能であるが、圧縮されたときに超臨界状態となる二酸化炭素、または地球温暖化係数の低いHFO1234単体もしくはその混合冷媒を用いることが好ましい。
【0012】
貯湯タンク8は、鉛直方向に延びる円筒状の密閉容器であり、内部は水で満たされている。貯湯タンク8の下部は、放熱器22に水を供給する供給管31によって放熱器22と接続され、貯湯タンク8の上部は、放熱器22で生成された温水を回収する回収管32によって放熱器22と接続されている。供給管31には加熱用ポンプ61が設けられており、回収管32には放熱器22で生成された温水の温度を検出する第1温度センサ71が設けられている。
【0013】
そして、加熱用ポンプ61が回転させられると、供給管31によって貯湯タンク8の下部から放熱器22へ水が導かれるとともに、放熱器22で生成された温水が回収管32によって放熱器22から貯湯タンク8の上部へ導かれる。これにより、貯湯タンク8内には生成された温水が上側から貯められる。さらに、貯湯タンク8の側面には、貯湯タンク8内にどれだけの温水が残っているかを判定するための複数の第2温度センサ72が上下に離間する位置に設けられている。
【0014】
なお、本実施形態では、貯湯タンク8内の上側位置に給湯用の熱交換器92が配設されており、この熱交換器92に給水管91および出湯管93が接続されている。すなわち、本実施形態では、生成した温水を、給湯用の熱源として利用できるようになっている。また、貯湯タンク8内の上側位置には、温水を再加熱するためのヒータ85も配設されている。
【0015】
暖房用放熱器3は、温水を流しながら放熱させるものであり、内部に温水を流入させる流入口と、放熱した温水を内部から流出させる流出口を有している。例えば、暖房放熱器3としては、建物の居室内に設置されるラジエータを採用してもよいし、床に敷設される温水パネルを採用してもよい。
【0016】
暖房用放熱器3の流入口は、送り管81によって貯湯タンク8の上部と接続されており、暖房用放熱器3の流出口は、戻し管82によって貯湯タンク8の下部と接続されている。本実施形態では、戻し管82に循環用ポンプ62が設けられているが、循環用ポンプ62は送り管81に設けられていてもよい。そして、循環用ポンプ62が回転させられると、貯湯タンク8に貯められた温水が送り管81を通じて暖房用放熱器3に送られるとともに、暖房用放熱器3で放熱した温水が戻し管82を通じて貯湯タンク8に戻される。
【0017】
さらに、本実施形態の液体循環式暖房システム1には、回収管32から分岐して送り管81につながるバイパス管35が設けられている。具体的には、回収管32の途中(第1温度センサ71よりも下流側)には分配弁63が設けられているとともに、送り管81の途中には三方弁64が設けられている。そして、バイパス管35の上流端が分配弁63に接続され、バイパス管35の下流端が三方弁64に接続されている。
【0018】
分配弁63は、放熱器22で生成された温水についての、回収管32のバイパス管35が分岐する位置よりも下流側へ流すべき量とバイパス管35へ流すべき量の比である分配比を変更するものであり、本発明の分配比変更手段を構成する。すなわち、分配弁63は、回収管32の分配弁63よりも上流側部分32aを回収管32の分配弁63よりも下流側部分32bとバイパス管35のどちらにどれだけの割合で連通させるかを任意に(0〜100%で)決定可能なものである。例えば、分配弁63が回収管32の上流側部分32aを下流側部分32bと100%連通させる場合には、放熱器22からの温水が回収管32の下流側部分32bを通じて貯湯タンク8だけに送られ、分配弁63が回収管32の上流側部分32aをバイパス管35と100%連通させる場合には、放熱器22からの温水がバイパス管35を通じて送り管81だけに送られ、分配弁63が回収管32の上流側部分32aを下流側部分32bとバイパス管35の双方に連通させる場合には、放熱器22からの温水が分配弁63で所定の比で分配され、回収管32の下流側部分32bおよびバイパス管35を通じて貯湯タンク8と送り管81の双方に送られる。
【0019】
三方弁64は、暖房用放熱器3への温水の供給を貯湯タンク8から行うか放熱器22から行うかを切り替えるためのものである。すなわち、三方弁64は、送り管81の三方弁64よりも下流側部分81bを送り管81の三方弁64よりも上流側部分81aとバイパス管35のどちらかに連通させる。なお、三方弁64を設ける代わりに、バイパス管35と送り管81の上流側部分81aとにそれぞれ開閉弁を設けてもよい。
【0020】
上述したヒートポンプ制御装置26、第1および第2温度センサ71,72、加熱用ポンプ61、循環用ポンプ62、分配弁63および三方弁64は、統括制御装置5と接続されている(図2参照)。統括制御装置5は、マイクロコンピュータまたはDSP(digital signal processor)などで構成されている。そして、統括制御装置5は、予め記憶されたプログラムに従って、第1および第2温度センサ71,72で検出された温度などに基づいて、ヒートポンプ制御装置26に指令を出すとともに、ポンプ61,62および弁63,64の制御を行う。
【0021】
次に、統括制御装置5が行う制御について具体的に説明する。
【0022】
<貯湯運転>
統括制御装置5は、例えば、夜間時間帯(例えば、23時〜7時)に、第2温度センサ72で検出される温度から残湯量が少ないと判定すると、貯湯運転を行う。具体的に、統括制御装置5は、分配弁63を回収管32の上流側部分32aが下流側部分32bと100%連通する状態に制御する。さらに、統括制御装置5は、加熱用ポンプ61を回転させるとともに、ヒートポンプ制御装置26に運転開始の信号を送る。これにより、放熱器22で水が加熱されて温水が生成され、生成された温水が貯湯タンク8に貯められる。また、統括制御装置5は、第1温度センサ71で検出される水の温度が所定温度(例えば、65℃)となるように、加熱用ポンプ61の回転数を制御して供給管31を流れる水の流量を調整する。
【0023】
<暖房運転>
統括制御装置5は、ユーザーによって図略の暖房スイッチがONにされると、まず第2温度センサ72で検出される温度から残湯量が十分であるか少ないかを判定する。残湯量が十分であると判定した場合には、統括制御装置5は、三方弁64を送り管81の下流側部分81bが上流側部分81aと連通する状態に切り替え、循環用ポンプ62を回転させる。これにより、貯湯タンク8内に貯められた温水が暖房用放熱器3に送られて暖房が行われる。
【0024】
一方、残湯量が少ないと判定した場合には、統括制御装置5は、三方弁64を送り管81の下流側部分81bがバイパス管35と連通する状態に切り替えるとともに、分配弁63を回収管32の上流側部分32aが下流側部分32bとバイパス管35の双方に連通する状態に制御する。このとき、分配弁63によって回収管32の上流側部分32aが下流側部分32bとバイパス管35のどちらにどれだけの割合で連通させられるかは、例えば第2温度センサ72のうちの中央に位置する第2温度センサ(以下「中央第2温度センサ」という。)72で検出された温度に基づいて決定される。
【0025】
例えば、中央第2温度センサ72で検出された温度が相対的に高い場合は、回収管32の上流側部分32aがバイパス管35と連通する割合が大きくされる。これにより、放熱器22からの温水が、分配弁63によって回収管32の下流側部分32bとバイパス管35とに例えば30:70の分配比で分配される。逆に、中央第2温度センサ72で検出された温度が相対的に低い場合は、回収管32の上流側部分32aが下流側部分32bと連通する割合が大きくされる。これにより、放熱器22からの温水が、分配弁63によって回収管32の下流側部分32bとバイパス管35とに例えば70:30の分配比で分配される。
【0026】
その後、統括制御装置5は、加熱用ポンプ5および循環用ポンプ62を回転させる。これにより、放熱器22で生成された温水が暖房用放熱器3に送られて暖房が行われるとともに、貯湯タンク8にも送られて貯湯が行われる。なお、統括制御装置5は、分配弁63が回収管32の上流側部分32aを下流側部分32bに連通する割合を増すにつれて、加熱用ポンプ61および循環用ポンプ62の回転数を増加させることにより、暖房用放熱器3からの放熱量を調整する。
【0027】
あるいは、残湯量が少ないと判定した場合には、統括制御装置5は、三方弁64を送り管81の下流側部分81bがバイパス管35と連通する状態に切り替えるとともに、分配弁63を回収管32の上流側部分32aがバイパス管35と100%連通する状態に制御してもよい。これにより、放熱器22で生成された温水が暖房用放熱器3のみに送られて、暖房が行われる。
【0028】
以上説明したように、本実施形態の液体循環式暖房システム1では、放熱器22から暖房用放熱器3に直接的に温水を送ることが可能となっている。従って、本実施形態によれば、貯湯タンク8内の温水の量に拘わらずに暖房を行うことができる。
【0029】
しかも、本実施形態では、分配弁63により貯湯タンク8と放熱器22とに同時に温水を供給できるようになっているので、温水を放熱器22から暖房用放熱器3に直接送る場合でも貯湯タンク8内に貯湯することができる。すなわち、貯湯タンク8の残湯量が少ない場合には、貯湯しながら暖房を行うことができる。さらに、貯湯タンク8の残湯量が少ないときほど回収管32の下流側部分32bを流れる温水の量が増やされるために、短い時間で貯湯タンク8へ必要量の温水を貯めることができる。
【0030】
また、温水を貯湯タンク8を介して暖房用放熱器3に送った場合には、貯湯タンク8内に貯められている間に温水の温度が低下して放熱ロスが生じることもあるが、本実施形態のように温水を貯湯タンク8を介さずに暖房用放熱器3に送れば、そのような放熱ロスを少なくすることができ、暖房効率を向上させることができる。
【0031】
ところで、暖房用放熱器3で放熱した温水を貯湯タンク8にいったん戻さずに放熱器22に直接戻すことも考えられる。しかしながら、このようにした場合には、暖房用放熱器3で放熱した温水は比較的高い温度に保たれていることが多いため、ヒートポンプ2の効率が低下する。これに対し、本実施形態では、放熱後の温水をいったん貯湯タンク8に戻すことにより、その熱を合理的に利用して貯湯タンク8内の水を加熱できるとともに、放熱器22に送る水の温度も低下させてヒートポンプ2の効率も向上させることができる。
【0032】
なお、前記実施形態では、回収管32に設けられた分配弁63によって本発明の分配比変更手段が構成された形態を示したが、回収管32の下流側部分32bとバイパス管35のそれぞれに開度調整可能な開閉弁を設ければ、これらの開閉弁によって本発明の分配比変更手段を構成することも可能である。
【0033】
また、分配弁63に代えて、三方弁を設けることも可能である。すなわち、本発明の分配比変更手段は、回収管32の下流側部分32bへ流すべき量とバイパス管35へ流すべき量を0:100と100:0のどちらかに変更するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態に係る液体循環式暖房システムの概略構成図である。
【図2】図1に示す液体循環式暖房システムのブロック図である。
【符号の説明】
【0035】
1 液体循環式暖房システム
2 ヒートポンプ
20 ヒートポンプ回路
22 放熱器(冷媒放熱器)
3 暖房用放熱器
31 供給管
32 回収管
35 バイパス管
61 加熱用ポンプ
62 循環用ポンプ
63 分配弁(分配比変更手段)
64 三方弁
8 貯湯タンク
81 送り管
82 戻し管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環する冷媒を放熱させて液体を加熱し、加熱液体を生成する冷媒放熱器を有するヒートポンプ回路と、
生成された前記加熱液体を貯めるタンクと、
前記タンクの下部から前記冷媒放熱器へ前記液体を導く供給管と、
前記冷媒放熱器から前記タンクの上部へ前記加熱液体を導く回収管と、
生成された前記加熱液体を放熱させる暖房用放熱器と、
前記タンクに貯められた前記加熱液体を前記暖房用放熱器に送る送り管と、
前記暖房用放熱器で放熱した前記加熱液体を前記タンクに戻す戻し管と、
前記回収管から分岐して前記送り管につながるバイパス管と、
前記冷媒放熱器で生成された加熱流体についての、前記回収管の前記バイパス管が分岐する位置よりも下流側へ流すべき量と前記バイパス管へ流すべき量の比である分配比を変更する分配比変更手段と、を備える、
液体循環式暖房システム。
【請求項2】
前記分配比変更手段は、前記回収管に設けられ、前記バイパス管の上流端が接続された分配弁である、請求項1に記載の液体循環式暖房システム。
【請求項3】
前記送り管には三方弁が設けられており、この三方弁に前記バイパス管の下流端が接続されている、請求項2に記載の液体循環式暖房システム。
【請求項4】
前記液体は水であり、前記加熱液体は温水である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の液体循環式暖房システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−175164(P2010−175164A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−19235(P2009−19235)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】