説明

液体現像剤、液体現像装置及び湿式画像形成装置

【課題】高い定着性を有する液体現像剤を提供し、湿式現像法における消費エネルギーの削減を実現させる。
【解決手段】電気絶縁性のキャリア液とキャリア液中に分散されたトナー粒子とを有する液体現像剤であって、前記キャリア液に相溶しない不揮発性水溶性溶剤を含有する液体現像剤である。前記不揮発性水溶性溶剤が、常温で液状の多価アルコールから選ばれる1種または2種以上の化合物であることが好適である。前記トナー粒子が、結着樹脂と着色剤とを含むことが好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体現像剤、液体現像装置及び湿式画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、帯電した着色粒子で静電潜像を顕像化する電子写真方式に用いる現像方式は、現像剤の形態により、乾式現像法と湿式現像法とに大別される。そのうち、湿式現像法では、電気絶縁性のキャリア液中に着色粒子を分散させた液体現像剤が用いられる。液体現像剤中で帯電した着色粒子は、電気泳動の原理により現像ローラ表面から感光体ドラム表面に移動し、感光体ドラム表面の静電潜像を顕像化する。得られた画像は感光体ドラムから記録媒体に転写される。液体現像剤は、着色粒子が大気中に飛散する可能性がほとんどないため、例えば平均粒子径がサブミクロンサイズの微細な着色粒子が使用でき、高解像度で階調性に優れた高画質な画像が得られる。
【0003】
湿式現像法では、画像すなわち着色粒子を記録媒体に定着させる方式として、乾式現像法の場合と同様の熱定着方式と光定着方式とが知られている。熱定着方式は、例えば特許文献1に記載されるように、着色粒子が顔料を結着樹脂に分散させたトナーである場合に、結着樹脂を熱で溶融させることによりトナーを記録媒体に定着させる方式である。光定着方式は、例えば特許文献2に記載されるように、着色粒子が顔料を結着樹脂に分散させたトナーである場合に、結着樹脂として光反応性官能基を有する結着樹脂を用い、結着樹脂を光で重合させることによりトナーを記録媒体に定着させる方式である。しかしながら、これらの湿式現像法を採用した電子写真方式における熱定着方式や光定着方式では、着色粒子を記録媒体に定着させることに多量の熱エネルギーや光エネルギーが消費される。
【0004】
なお、従来の液体現像剤は、定着の際トナー粒子の表面に絶縁性キャリア液が付着してしまい、このキャリア液の存在により記録媒体に対しての密着性が低下することから、液体現像剤に対して十分に満足できる定着特性を付与することは困難であった。
【0005】
上記の問題に対して、例えば特許文献3に記載されるように、定着性を向上させる現像剤として、大豆油脂肪酸メチル又は大豆油脂肪酸ブチルをトナー粒子表面に吸着させ、さらにそのトナー粒子を菜種油中に分散させたものが開示されている。また、例えば特許文献4,5に記載されるように、不飽和脂肪酸を含む脂肪酸トリグリセリド及び脂肪酸モノエステルを含む絶縁性液体に含有させた液体現像剤についても定着性が向上するものとして開示されている。しかしながら、上述の現像剤でもある程度の定着性を有するが、一方で絶縁性液体がトナー粒子と記録媒体のセルロース繊維との間に存在することから、これらの密着性が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−242039号公報
【特許文献2】特開2003−241440号公報
【特許文献3】特開2008−46596号公報
【特許文献4】特開2008−158484号公報
【特許文献5】特開2008−170556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、高い定着性を有する液体現像剤を提供し、湿式現像法における消費エネルギーの削減を実現することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために本発明者らが鋭意検討を行った結果、キャリア液に相溶しない不揮発性水溶性溶剤を液体現像剤に含有させることにより、高い定着性を実現し、その結果、湿式現像法における消費エネルギーを削減させることができる液体現像剤を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の第一の主題は、電気絶縁性のキャリア液とキャリア液中に分散されたトナー粒子とを有する液体現像剤であって、前記キャリア液に相溶しない不揮発性水溶性溶剤を含有する液体現像剤である。
【0010】
また、前記不揮発性水溶性溶剤が、多価アルコール、すなわち、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン及び常温で液状のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール(PVA)の群から選ばれる1種または2種以上の化合物であることが好適である。
【0011】
また、前記トナー粒子が、結着樹脂と着色剤とを含むことが好適である。
【0012】
また、前記結着樹脂及び前記着色剤の合計量に対する、前記不揮発性水溶性溶剤の配合比が、0.1〜1.0であることが好適である。
【0013】
また、前記不揮発性水溶性溶剤の配合量が、前記結着樹脂及び前記着色剤の合計量に対して0.1〜1質量%であることが好適である。
【0014】
また、本発明の第二の主題は、液体現像剤を用いて感光体ドラムの表面に形成された静電潜像をトナー像として現像する液体現像装置であって、前記液体現像剤として、電気絶縁性のキャリア液とキャリア液中に分散されたトナー粒子とを有し、前記キャリア液に相溶しない不揮発性水溶性溶剤を含有する液体現像剤を用いる液体現像装置である。
【0015】
また、本発明の第三の主題は、感光体ドラムの表面を帯電させる帯電装置と、帯電された感光体ドラムの表面に静電潜像を形成させる露光装置と、液体現像剤を用いて感光体ドラムの表面に形成された静電潜像をトナー像として現像する液体現像装置と、現像されたトナー像を記録媒体に転写する転写装置とを備える湿式画像形成装置であって、前記液体現像剤として、電気絶縁性のキャリア液とキャリア液中に分散されたトナー粒子とを有し、前記キャリア液に相溶しない不揮発性水溶性溶剤を含有する液体現像剤を用いる湿式画像形成装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る液体現像剤、液体現像装置及び湿式画像形成装置によれば、キャリア液に相溶しない不揮発性水溶性溶剤を液体現像剤に含有させることにより、定着性を向上させることができ、その結果、トナー像を記録媒体上に定着させる定着行程での消費エネルギー量を削減することができる。また、従来から用いられてきた熱や光のエネルギーを用いた定着装置自体も削減することができ、湿式画像形成装置の簡素化やコストダウンを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る湿式画像形成装置の概略構成図である。
【図2】図1に示される湿式画像形成装置が備える液体現像装置の周辺の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明にかかる実施形態について説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0019】
本発明者等は、従来の湿式現像法を採用した画像形成方法における定着工程において、トナー粒子と記録媒体との密着性の低さから、そのトナー像を記録媒体上に十分に定着させるために多大のエネルギーを消費している現状に鑑み、好ましい液体現像剤の開発に鋭意検討を重ねた結果、液体現像剤に絶縁性液体に対して相溶しない不揮発性水溶性溶剤を用いることで、トナー粒子と記録媒体に極めて高い密着性を付与し得ることに着目して本発明を完成したものである。
【0020】
すなわち、本実施形態に係る液体現像剤は、電気絶縁性のキャリア液とキャリア液中に分散されたトナー粒子とを有する液体現像剤であって、前記キャリア液に相溶しない不揮発性水溶性溶剤を含有する液体現像剤である。トナー像が記録媒体に転写された後、キャリア液が記録媒体の内部に吸収される際に、前記不揮発性水溶性溶剤が記録媒体上とトナー粒子との間に存在するキャリア液を排除するので、トナー粒子が記録媒体上に強く定着されることとなる。これにより、多大の熱エネルギーや光エネルギーをかけなくても、トナー像を記録媒体上に十分に定着させることができ、定着工程におけるトナー像定着のための必要エネルギー量の削減が図られる。
【0021】
<液体現像剤>
本実施形態に係る液体現像剤は、電気絶縁性のキャリア液中にトナー粒子が分散され、さらにキャリア液に相溶しない不揮発性水溶性溶剤を含有することを特徴とする。
【0022】
[キャリア液]
電気絶縁性のキャリア液は液体キャリアの役割を果たし、得られる液体現像剤の電気絶縁性を高めることを目的として用いられる。電気絶縁性のキャリア液としては、電気絶縁性を有するものであって、例えば、25℃における体積抵抗が1010Ω・cm以上(換言すれば電気伝導度が100pS/cm以下)の有機溶媒が好ましい。このような電気絶縁性の有機溶媒としては常温で液体の脂肪族炭化水素が挙げられ、例えば液状のn−パラフィン系炭化水素、iso−パラフィン系炭化水素、またはその混合物、ハロゲン化脂肪族炭化水素等が好ましい。具体的には、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、シクロヘキサン、パークロロエチレン、トリクロロエタン等が挙げられる。また、分岐鎖を有する脂肪族炭化水素が特に好ましい。分岐鎖を有する脂肪族炭化水素としては市販のものを用いてもよく、例えばエクソンモービル社製のアイソパーG、アイソパーH、アイソパーK、アイソパーL、アイソパーM、アイソパーV等が好適である。また、松村石油研究所社製の流動パラフィン「モレスコホワイトP−40」、「モレスコホワイトP−70」、「モレスコホワイトP−200」等も好ましく用いられ得る。また、コスモ石油社製の流動パラフィン「コスモホワイトP−60」、「コスモホワイトP−70」、「コスモホワイトP−120」等も好ましく用いられ得る。
【0023】
[トナー]
トナーは、結着樹脂と着色剤とを主要成分(トナー原料)とする。
【0024】
(結着樹脂)
結着樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系共重合樹脂、オレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等。)、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、N−ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂等の熱可塑性樹脂;エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリアルキレンエーテル型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂等。)、シアネート樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0025】
(着色剤)
着色剤としては、公知の顔料や染料を用いることができる。例えば、黒色顔料としては、カーボンブラック、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、アニリンブラック等のアジン系色素、金属塩アゾ色素、金属酸化物、複合金属酸化物などが挙げられる。黄色顔料としては、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキなどが挙げられる。橙色顔料としては、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダンスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダンスレンブリリアントオレンジGKなどが挙げられる。赤色顔料としては、ベンガラ、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3Bなどが挙げられる。紫色顔料としては、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキなどが挙げられる。青色顔料としては、C.I.Pigment Blue 15:3、コバルトブルー、アルカリブルー、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBCなどが挙げられる。緑色顔料としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキなどが挙げられる。着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1〜100質量部が好ましく、3〜50質量部がより好ましい。
【0026】
[その他の添加剤]
本実施形態に係る液体現像剤は、その他の添加剤を含有してもよい。その他の添加剤としては、分散安定剤が挙げられる。
【0027】
分散安定剤は、トナーを絶縁性有機溶媒中に分散しやすくするものである。分散安定剤としては、市販のものを用いることができる。例えば、ビックケミー社製のBYK−116等が好適である。ルーブリゾール社製のソルスパース9000、11200、13940、16000、17000、18000や、ISP社製のAntaron(登録商標)V−216、V−220等も好ましく用いられ得る。
【0028】
[不揮発性水溶性溶剤]
不揮発性水溶性溶剤は、記録媒体の繊維、例えば紙のセルロース繊維と水素結合する特徴を有する。また、前記不揮発性水溶性溶剤は、キャリア液と相溶しないことから、トナー粒子とセルロース繊維との間に存在するキャリア液を排除する。その結果、トナー粒子と紙との密着性が高くなり、定着性が向上することになる。
【0029】
不揮発性水溶性溶剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及び常温で液状のポリエチレングリコールの群から選ばれる1または2以上の化合物等である。
【0030】
本発明の不揮発性水溶性溶剤は、パラフィンオイル等のキャリア液に相溶しない性質を有する。従って、あらかじめトナー粒子に被覆させるように、不揮発性水溶性溶剤とトナー粒子とを混合させておくことが好ましい。
【0031】
本実施形態に係る液体現像剤では、不揮発性水溶性溶剤は、トナー粒子に吸着しているような状態で存在する。その結果、トナー像の記録媒体上への定着のメカニズムはおよそ次のようなものである。以下、図1及び図2を用いて説明する。
【0032】
液体現像装置14の現像容器140内に貯留されている液体現像剤中の不揮発性水溶性溶剤は、キャリア液に相溶せずにトナー粒子に吸着た状態で存在している。この状態は、現像ローラ141上、感光体ドラム10上、中間転写ベルト21上においても同様である。もっとも、液体現像剤中に占めるキャリア液の比率は次第に低減していくが、液体現像剤中の不揮発性水溶性溶剤はキャリア液に相溶しない状態のままである。そして、二次転写部4により、トナー像が中間転写ベルト21から記録媒体に転写されると、キャリア液は記録媒体の内部に吸収されるが、キャリア液中のトナー粒子に吸着した不揮発性水溶性溶剤が、記録媒体表面の繊維と水素結合し、相溶しないキャリア液を押しのけるように排除する。
【0033】
この不揮発性水溶性溶剤と記録媒体表面の繊維との結合によってトナー粒子が記録媒体上に強く定着されることとなり、多大の熱エネルギーや光エネルギーを付与しなくても、トナー像を記録媒体上に十分に定着させることができ、定着工程においてトナー像を定着させるために必要なエネルギー量の削減が図られる。これは、環境保護の面で極めて有利な作用である。
【0034】
前記不揮発性水溶性溶剤の配合比は、前記結着樹脂及び前記着色剤の合計量に対して0.1〜1.0であることが好ましく、0.2〜0.7であることがより好ましい。不揮発性水溶性溶剤の配合比が0.1未満であると、記録媒体とトナー粒子の間に存在するキャリア液を排除できず、定着性が過度に不足する可能性がなる。一方、不揮発性水溶性溶剤の配合比が1.0を超えると、キャリア液排除能以上の不揮発性水溶性溶剤が記録媒体に定着し、その余剰の不揮発性水溶性溶剤が透明なトナー粒子となり、現像性が低下する可能性がある。
【0035】
[製造方法]
本実施形態に係る液体現像剤の製造方法は、トナー原料を混練してトナー粒子を作製する工程(混練工程)と、得られたトナー粒子に不揮発性水溶性溶剤を吸着させる行程(吸着行程)と、不揮発性水溶性溶剤を吸着させたトナー粒子を、電気絶縁性のキャリア液中に分散させる工程(分散工程)とを有する。
【0036】
混練工程では、結着樹脂や着色剤等のトナー原料(主要成分)と、必要に応じて含有されるこれら以外の添加剤を混練してトナーを作製する。混練する際は、例えば60〜100℃の温度にて加温混練するのが好ましい。また、混練工程で得られるトナー(トナー混練物)は、冷却した後、カッターミルなどを用いて粗粉砕し、さらにジェットミルなどを用いて微粉砕するのが好ましい(混練粉砕法)。
【0037】
吸着工程では、得られたトナー粒子と不揮発性水溶性溶剤とを混合し、攪拌することにより、トナーを得る。
【0038】
こうして得られたトナーを用いて、現像剤液を調製する。すなわち、分散工程では、トナー粒子と電気絶縁性のキャリア液とを例えばボールミルやサンドグラインダーあるいはダイノーミル(シンマルエンタープライズ社製)等の分散機で混合して、トナー粒子が電気絶縁性のキャリア液に分散した現像剤液を得る。配合割合は、トナー100質量部に対してキャリア液の配合量は150〜1000質量部が好ましく、400〜900質量部がより好ましい。なお、トナー粒子とキャリア液とを混合する際に、分散安定剤を添加してもよい。この場合、トナー100質量部に対して分散安定剤の配合量は0.01〜90質量部が好ましく、1〜40質量部がより好ましい。
【0039】
この分散工程における湿式分散・湿式粉砕により、トナー粒子が微細に粉砕される。トナー粒子の平均粒子径、すなわち、体積基準の中位径(D50)が好ましくは0.2〜3.0μmとなるように、より好ましくは0.2〜2.0μmとなるように、さらに好ましくは0.2〜1.0μmとなるように、さらに好ましくは0.2〜0.8μmとなるように、湿式分散・湿式粉砕の時間や回転数等の分散条件・粉砕条件を調製する。湿式分散・湿式粉砕の時間が過度に短いと、あるいは回転数が過度に少ないと、トナー粒子の体積基準の中位径(D50)が3.0μmを超え、画像の耐摩擦性が過度に低下する可能性がある。また、解像度も劣る可能性がある。一方、湿式分散・湿式粉砕の時間が過度に長いと、あるいは回転数が過度に多いと、トナー粒子の体積基準の中位径(D50)が0.2μm未満となり、トナーの泳動時間が長くなり過ぎて、カブリが発生し易くなる可能性がある。
【0040】
<液体現像装置及び湿式画像形成装置>
まず、図面を参照して、本実施形態に係る液体現像装置及び湿式画像形成装置を説明する。なお、以下の説明で用いられる「上」、「下」、「左」、「右」等の方向を表す用語は、単に説明の明瞭化を目的とするものであり、何ら本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いられる「シート」との用語は、例えば、コピー用紙、トレーシングペーパ、厚紙、OHPシート、画像を形成することが可能なその他の記録媒体を意味する。
【0041】
図1は、本実施形態に係る湿式画像形成装置の概略構成図であり、図2は、図1に示される湿式画像形成装置が備える液体現像装置の周辺の概略構成図である。なお、本実施形態に係る湿式画像形成装置はカラープリンタであるが、例えば、モノクロプリンタ、複写機、ファクシミリ装置、これらの機能を併せ持つ複合機、シート上に画像を形成することができるその他の装置とすることもできる。
【0042】
図1に示されるように、本実施形態に係る湿式画像形成装置1Aは、画像形成のための様々なユニットや部品を収納している。画像形成装置1Aは、図1に示された部分の下部に、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の各色用の液体現像剤循環装置をさらに収納しているが、ここではその図示を省略している。
【0043】
湿式画像形成装置1Aは、画像データに基づいてトナー像を形成するタンデム式の画像形成部2と、シートを収容するシート収容部3と、画像形成部2で形成されたトナー像をシート上に転写する二次転写部4と、トナー像が転写されたシートを機外に排出する排出部6と、シート収容部3から排出部6までシートを搬送するシート搬送部7とを備えている。
【0044】
一般に、湿式画像形成装置は、通常は、二次転写部4と排出部6との間に、転写されたトナー像をシートに定着させるための定着部5(シートを挟んで対向配置された加熱ローラ51及び加圧ローラ52を備える)が配置される。しかし、本実施形態に係る湿式画像形成装置1Aでは、そのような定着部5がなく、代わりに、単なるシート搬送用のローラ8,8が備えられているだけである。つまり、本実施形態に係る湿式画像形成装置1Aでは、定着部5を必要とすることなく、シートに転写されたトナー像をシートに定着させることができる。すなわち、本実施形態においては、従来から用いられてきた熱や光のエネルギーを用いた定着部5を削減することができ、湿式画像形成装置1Aの簡素化やコストダウンを行うことができる。
【0045】
画像形成部2は、中間転写ベルト21と、中間転写ベルト21のクリーニング部22と、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の各色にそれぞれ対応した画像形成ユニットFY、FM、FC、FBとを備える。
【0046】
中間転写ベルト21は、導電性を有する、幅広の、無端状のベルト部材であり、図1において時計回りに循環駆動される。中間転写ベルト21の循環駆動において外側を向く面を「表面」と記し、内側を向く面を「裏面」と記す。
【0047】
画像形成ユニットFY、FM、FC、FBは、中間転写ベルト21の下側走行面に沿って並べて配置されている。なお、画像形成ユニットFY、FM、FC、FBの配置の順番は図示された限りではないが、図1に示された配置は、各色の混色による完成画像への影響を少なくする観点から好ましい配置の1つである。
【0048】
画像形成ユニットFY、FM、FC、FBは、感光体ドラム10と、帯電装置11と、LED露光装置12と、液体現像装置14と、一次転写ローラ20と、クリーニング装置26と、除電装置13と、キャリア液除去ローラ30とを備える。なお、画像形成ユニットのうち、最も二次転写部4に近接して位置するブラックの画像形成ユニットFBには、キャリア液除去ローラ30が設けられていないが、その他の構成は同じである。
【0049】
円柱状の感光体ドラム10の表面(周面)は、帯電(本実施形態ではプラス極性に帯電)されたトナーを含むトナー像を担持可能である。図示される感光体ドラム10は、反時計回りに回転可能である。
【0050】
帯電装置11は、感光体ドラム10の表面を一様に帯電させる。
【0051】
LED露光装置12は、LEDを光源として有し、外部の機器から入力された画像データに基いて、一様に帯電された感光体ドラム10の表面に光を照射する。これにより、感光体ドラム10の表面に、画像データに基いた静電潜像を形成する。
【0052】
液体現像装置14は、電気絶縁性のキャリア液とキャリア液中に分散されたトナー粒子とを有する液体現像剤を、感光体ドラム10の表面に形成された静電潜像に対向するように保持する。これにより、静電潜像にトナーを付着させ、静電潜像をトナー像として現像する。
【0053】
図2に示されるように、液体現像装置14は、現像容器140、現像ローラ141、供給ローラ(アニロックスローラ)142、支持ローラ143、供給ローラブレード144、現像クリーニングブレード145、現像剤回収装置146及び現像ローラ帯電装置147等を有する。
【0054】
現像容器140は、その内部に、液体現像剤が供給され、液体現像剤を貯留する。液体現像剤は、トナーとキャリア液との濃度調整が予め行われた後、供給ノズル278から現像容器140の内部へ供給される。その場合、液体現像剤は、供給ローラ142と支持ローラ143とのニップ部へ向けて供給され、余剰分は支持ローラ143の下方へ落下し、現像容器140の底部に貯留される。貯留された液体現像剤は、パイプ82を通して回収された後、再生・再利用される。
【0055】
支持ローラ143は現像容器140の略中央に配置され、供給ローラ142に下方から当接されてニップ部を形成する。供給ローラ142は、支持ローラ143の直上ではなく、供給ノズル278から離れる方向にずれて配置される。供給ローラ142の周面には液体現像剤を保持するための溝が設けられる。図中に点線矢印で示すように、支持ローラ143は反時計方向に、供給ローラ142は時計方向に回転する。
【0056】
供給ノズル278から供給される液体現像剤は、供給ローラ142と支持ローラ143とのニップ部の支持ローラ143の回転方向上流側で一時的に滞留され、両ローラ142,143の回転に伴って、供給ローラ142の溝に保持された状態で上方へ運ばれる。供給ローラブレード144は、供給ローラ142の周面に圧接され、供給ローラ142の溝に保持される液体現像剤の量が所定量になるように規制する。供給ローラブレード144により掻き落とされた余剰の液体現像剤は、現像容器140の底部に貯留される。
【0057】
現像ローラ141は、現像容器140の上部開口部に、供給ローラ142と接するように配置される。現像ローラ141は供給ローラ142と同方向に回転される。この結果、現像ローラ141と供給ローラ142とが当接するニップ部では、現像ローラ141の表面は供給ローラ142の表面と逆方向に移動する。これにより、現像ローラ141の周面には、供給ローラ142の周面に保持された液体現像剤が受け渡される。供給ローラ142の溝に保持される液体現像剤の量(液体現像剤の薄層の厚み)が所定値に規制されているので、現像ローラ141の表面に担持される液体現像剤の量(液体現像剤の薄層の厚み)もまた所定値に保たれる。
【0058】
現像ローラ帯電装置147は、トナーの帯電極性と同極性のバイアス電位(本実施形態ではプラス極性のバイアス電位)を現像ローラ141に外表面側から与えること(現像コロナチャージ)により、現像ローラ141の表面に担持された液体現像剤の薄層中のトナー粒子を現像ローラ141の表面側に移動させる。この結果、液体現像剤の薄層中のトナー成分が電界的作用により現像ローラ141側に集合・圧縮され(トナーコンパクション処理)、現像ローラ141側に高濃度のトナー成分の層が形成される。この後、液体現像剤の薄層は、感光体ドラム10に供給されて、感光体ドラム10上の静電潜像が現像される。これにより、現像効率が向上された、精細なトナー像が形成される。現像ローラ帯電装置147は、現像ローラ141と供給ローラ142との間の接触部よりも現像ローラ141の回転方向下流側であって、現像ローラ141と感光体ドラム10との間の接触部よりも現像ローラ141の回転方向上流側において、現像ローラ141の周面に対向するように設けられる。つまり、現像ローラ帯電装置147は、現像コロナチャージによって電界を発生させる。これにより、現像ローラ141上の液体現像剤の薄層が、現像ローラ141表面上のトナー粒子層と、トナー粒子層上のキャリア液層とに2層化する。現像領域(現像ローラ141と感光体ドラム10との対接領域及びその周辺領域)においては、現像ローラ141上の液体現像剤の薄層がこのように2層化した状態で感光体ドラム10表面に接触する。このとき、現像ローラ141側に集合・圧縮されたトナーが電気泳動の原理により現像ローラ141表面から感光体ドラム10表面に移動し、感光体ドラム10表面の静電潜像をトナー像として顕像化する。現像ローラ帯電装置147による現像コロナチャージによって、現像前に、現像ローラ141上の液体現像剤の薄層内のトナー粒子が現像ローラ141の表面上に圧縮されているので、感光体ドラム10上の非画像域においては、トナーが接触しないため、カブリを抑制することができる。また、現像コロナチャージによる電界形成によって、現像ローラ141上の液体現像剤の薄層内のトナー粒子に電荷が注入されるので、現像電界によってトナーが感光体ドラム10上の静電潜像上に反応よく現像されるとともに、感光体ドラム10の表面上にトナーが静電気的に強固に付着する。
【0059】
現像ローラ141は感光体ドラム10と接し、感光体ドラム10の表面の静電潜像の電位と現像ローラ141に印加される現像電界との電位差によって、画像データに基づいたトナー像が感光体ドラム10の表面に形成される。
【0060】
現像クリーニングブレード145は、現像ローラ141の感光体ドラム10との接触部の回転方向下流側に接触するように配置され、感光体ドラム10への現像動作を終えた現像ローラ141の表面の液体現像剤を除去する。
【0061】
現像剤回収装置146は、現像クリーニングブレード145で除去された液体現像剤を回収して、液体現像剤循環装置のパイプ81へ液体現像剤を送り出す。液体現像剤は現像クリーニングブレード145の表面に沿って流下するが、液体現像剤の粘度が高いことから、現像剤回収装置146には液体現像剤の送り出しを補助する送り出しローラが備えられている。
【0062】
一次転写ローラ20は、中間転写ベルト21の裏面に、感光体ドラム10と対向して配置される。一次転写ローラ20には、電源(図示せず)からトナー像中のトナーとは逆極性(本実施形態ではマイナス)の電圧を印加される。一次転写ローラ20は、中間転写ベルト21と接触している位置で、中間転写ベルト21にトナーと逆極性の電圧を印加する。中間転写ベルト21は導電性を有するので、この印加電圧によって、中間転写ベルト21の表面側及びその周辺にトナーが引き付けられる。中間転写ベルト21は、トナー像を担持して、シートまで搬送する像担持体として機能する。
【0063】
クリーニング装置26は、感光体ドラム10から中間転写ベルト21に転写されずに残留した液体現像剤をクリーニングするための装置である。クリーニング装置26は、残留現像剤搬送スクリュー261と、クリーニングブレード262とを備える。クリーニング装置26内に配置される残留現像剤搬送スクリュー261は、クリーニングブレード262によって掻き取られ、クリーニング装置26内に収納された残留現像剤をクリーニング装置26の外部に搬送する。
【0064】
板状のクリーニングブレード262は、感光体ドラム10の表面に残留した液体現像剤を掻き取るように、感光体ドラム10の回転軸方向に延びる。クリーニングブレード262の一端部は、感光体ドラム10の表面に摺接し、感光体ドラム10の回転に伴って感光体ドラム10上に残留した液体現像剤を掻き取る。
【0065】
除電装置13は、除電用の光源を有し、次の周回による画像形成に備えて、クリーニングブレード262による液体現像剤の除去後、感光体ドラム10の表面を光源からの光によって除電する。
【0066】
略円柱状のキャリア液除去ローラ30は、感光体ドラム10の回転軸と平行な回転軸を中心として感光体ドラム10と同方向に回転可能である。キャリア液除去ローラ30は、感光体ドラム10と中間転写ベルト21とが接触する位置よりも二次転写部4が配置されている側に配置されており、中間転写ベルト21の表面からキャリア液を除去する。
【0067】
図1に示されるシート収容部3は、トナー像を定着させるシートを収容する。シート収容部3は、湿式画像形成装置1Aの下部に配置される。また、シート収容部3は、シートを収容可能に形成された給紙カセット(図示せず)を含む。
【0068】
二次転写部4は、中間転写ベルト21上に形成されたトナー像をシートに転写する。二次転写部4は、中間転写ベルト21を支持する支持ローラ41と、支持ローラ41に対向して配置された二次転写ローラ42とを有する。
【0069】
二次転写部4の上側には、前述したように、定着部5に代えて、搬送ローラ8,8が備えられている。
【0070】
湿式画像形成装置1Aの上面に設けられた排出部6には、定着部5でトナー像が転写・定着されたシートが排出される。シート搬送部7は、複数の搬送ローラ対を備え、シート収容部3から、二次転写部4を経て、排出部6までシートを搬送する。
【実施例】
【0071】
以下、実施例を通して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。なお、配合量については特に断りのない限り、質量%で示す。
【0072】
<液体現像剤の製造>
[実施例1]
通常の混練粉砕法により、70質量部の結着樹脂(DIC社製のポリエステル樹脂「ACT1101」)に対して、30質量部の青色顔料(C.I.Pigment Blue 15:3)を含有する正帯電性のトナー粒子を作製した(混練工程)。作製したトナー粒子の体積基準の中位径(D50)は7μmであった。このトナー粒子10質量部にエチレングリコール1.25質量%を混合攪拌し、ペースト状のトナーを得た(吸着行程)。得られたトナー10質量%をキャリア液としての流動パラフィン(松村石油研究所社製の「モレスコホワイトP−200」)88質量%に加え、さらに、0.75質量%の分散安定剤(ルーブリゾール社製の「ソルスパース13940」)を加えて、ボールミル(ヤマト科学社製)を用い、24時間、湿式分散・湿式粉砕することにより、シアン液体現像剤液を調製した(分散工程)。得られた現像剤液のトナー粒子について、粒度分布を測定し、体積基準の中位径(D50)を算出したところ、1.1μmであった。
【0073】
[実施例2]
エチレングリコールの添加量を10質量%、流動パラフィンを79.25質量%添加すること以外は、前記実施例1と同様に液体現像剤液を調整した。
【0074】
[実施例3]
吸着行程において用いられる不揮発性水溶性溶剤を、エチレングリコールではなくプロピレングリコール1.25質量%添加すること以外は、前記実施例1と同様に液体現像剤液を調整した。
【0075】
[実施例4]
吸着行程において用いられる不揮発性水溶性溶剤を、エチレングリコールではなくジエチレングリコール1.25質量%添加すること以外は、前記実施例1と同様に液体現像剤液を調整した。
【0076】
[実施例5]
吸着行程において用いられる不揮発性水溶性溶剤を、エチレングリコールではなくトリエチレングリコール1.25質量%添加すること以外は、前記実施例1と同様に液体現像剤液を調整した。
【0077】
[比較例1]
エチレングリコールの添加量を0.75質量%、流動パラフィンを88.5質量%添加すること以外は、前記実施例1と同様に液体現像剤液を調整した。
【0078】
[比較例2]
エチレングリコールの添加量を11.25質量%、流動パラフィンを78.0質量%添加すること以外は、前記実施例1と同様に液体現像剤液を調整した。
【0079】
[比較例3]
吸着行程において用いられる不揮発性水溶性溶剤を、エチレングリコールではなく1−メチル−2−ピロリドン1.25質量%添加すること以外は、前記実施例1と同様に液体現像剤液を調整した。
【0080】
[比較例4]
吸着行程において用いられる不揮発性水溶性溶剤を、エチレングリコールではなく大豆油脂肪酸メチル1.25質量%添加すること以外は、前記実施例1と同様に液体現像剤液を調整した。
【0081】
[比較例5]
吸着行程において用いられる不揮発性水溶性溶剤を添加しないこと以外は、前記実施例1と同様に液体現像剤液を調整した。
【0082】
<画像形成>
図1に示された、定着部を備えていない湿式画像形成装置(カラープリンタ)1A(京セラミタ社製の湿式画像形成装置の実験機)を用い、シアン(C)の画像形成ユニットFCにシアン(C)の液体現像剤(実施例1〜5、及び比較例1〜5)を仕込んで、上質普通紙(王子製紙社製のC2紙:90g/m)上に、顔料載り量で0.026mg/cm相当の均一塗つぶしのトナー像(ソリッド画像:5cm×5cm)を形成した。その場合に、現像ローラ141の周面上における液体現像剤層の厚みを5μmに設定した。また、画像データに基いたトナー像を感光体ドラム10の表面に形成するときに現像ローラ141に印加する現像電界を400Vとした。そして、二次転写部4によりトナー像(ソリッド画像)が転写され、排出部6に排出された記録媒体を、後述する定着性評価に供した。
【0083】
<現像性評価>
二次転写部4によりトナー像(ソリッド画像)が転写され、排出部6に排出された記録媒体の画像部分についてベタ濃度を測定し、その現像性を評価した。ベタ濃度の評価基準は、画像濃度が1.30以上のものを「◎」、1.20以上1.30未満のものを「○」、1.20未満のものを「×」とした。画像濃度の測定には反射濃度計(Gretag Macbeth社製のRD−19A:SpectroEyeLT)を用いた。
【0084】
<定着性評価>
上記現像性評価と同様に、二次転写部4によりトナー像(ソリッド画像)が転写され、排出部6に排出された記録媒体の画像部分について定着性を評価した。すなわち、二次転写部4により画像が形成されてから5秒後に、その画像部分の上に、質量が500gの分銅にサラシを付け、画像を左右に横切って画像の外まで移動するようにその分銅を5往復移動させた。その分銅移動の前後における濃度残存率が95%以上のものを「◎」、90%以上95%未満のものを「○」、80%以上90%未満のものを「△」、80%未満のものを「×」とした。なお、画像濃度の測定には反射濃度計(Gretag Macbeth社製のRD−19A:SpectroEyeLT)を用いた。
【0085】
結果を表1に示す。
【0086】
【表1】

【0087】
表1の結果から明らかなように、キャリア液とトナー粒子とを有する液体現像剤において、本発明に用いられる不揮発性溶剤であるエチレングリコールをトナー粒子に対して0.1〜1.0の割合で含有する実施例1,2は、ベタ濃度及び定着性ともに優れていることが分かった。同様に、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールを含有する実施例3〜5についても、ベタ濃度及び定着性ともに優れていることが分かった。これは、従来なら紙に吸収されるキャリア液をエチレングリコールが排除し、エチレングリコールが紙と強く密着したためであると考えられる。
【0088】
一方で、エチレングリコールをトナー粒子に対して0.75の割合で含有する比較例1はベタ濃度に優れるが、定着性に劣る結果となった。これは、エチレングリコールがキャリア液を排除する量に至らなかったと考えられる。
【0089】
また、エチレングリコールをトナー粒子に対して11.25の割合で含有する比較例2は、比較例1の場合とは逆に、ベタ濃度に劣り定着性に優れる結果となった。これは、余剰のエチレングリコールが記録媒体に吸収されてしまった結果、透明なトナー粒子として振る舞い、見かけ上現像性を低下させてしまったことによると考えられる。
【0090】
また、本発明の不揮発性水溶性溶剤以外の溶剤である1−メチル−2−ピロリドンや、大豆油脂肪酸メチルを含有する比較例3,4の液体現像剤は、ベタ濃度又は定着性に劣る結果となった。
【0091】
さらに、比較例5については、絶縁性液体を排除しトナー粒子と紙との密着作用を高めることのできる不揮発性水溶性溶剤を含有しないため、定着性に劣る結果となった。
【0092】
以上の結果から、本発明の不揮発性水溶性溶剤を含有する液体現像剤は、高い現像性及び定着性の両立を図ることができた。この結果、記録媒体上へのトナー像定着時での消費エネルギー量を削減することができた。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、カラープリンタ、プリンタ、複写機、ファクシミリ装置、これらの機能を併せ持つ複合機等に採用され得る電子写真方式の1つである湿式現像法の技術分野において、広範な産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0094】
1A 湿式画像形成装置(カラープリンタ)
2 画像形成部
4 二次転写部(転写装置)
10 感光体ドラム
11 帯電装置
12 露光装置
14 液体現像装置
20 一次転写ローラ(転写装置)
21 中間転写ベルト
141 現像ローラ
142 供給ローラ(アニロックスローラ)
147 現像ローラ帯電装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気絶縁性のキャリア液とキャリア液中に分散されたトナー粒子とを有する液体現像剤であって、
前記キャリア液に相溶しない不揮発性水溶性溶剤を含有することを特徴とする液体現像剤。
【請求項2】
前記不揮発性水溶性溶剤が、常温で液状の多価アルコールから選ばれる1種または2種以上の化合物であることを特徴とする請求項1に記載の液体現像剤。
【請求項3】
前記トナー粒子が、結着樹脂と着色剤とを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の液体現像剤。
【請求項4】
前記結着樹脂及び前記着色剤の合計量に対する、前記不揮発性水溶性溶剤の配合比が、0.1〜1.0であることを特徴とする請求項3に記載の液体現像剤。
【請求項5】
液体現像剤を用いて感光体ドラムの表面に形成された静電潜像をトナー像として現像する液体現像装置であって、
前記液体現像剤として、電気絶縁性のキャリア液とキャリア液中に分散されたトナー粒子とを有し、前記キャリア液に相溶しない不揮発性水溶性溶剤を含有する液体現像剤を用いる液体現像装置。
【請求項6】
感光体ドラムの表面を帯電させる帯電装置と、帯電された感光体ドラムの表面に静電潜像を形成させる露光装置と、液体現像剤を用いて感光体ドラムの表面に形成された静電潜像をトナー像として現像する液体現像装置と、現像されたトナー像を記録媒体に転写する転写装置とを備える湿式画像形成装置であって、
前記液体現像剤として、電気絶縁性のキャリア液とキャリア液中に分散されたトナー粒子とを有し、前記キャリア液に相溶しない不揮発性水溶性溶剤を含有する液体現像剤を用いる湿式画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−42727(P2012−42727A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183991(P2010−183991)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】