説明

液体現像剤の製造方法及び液体現像剤

【課題】電子写真あるいは静電記録用の液体現像剤において、着色樹脂粒子分散物の製造方法を問わず、顔料や着色樹脂粒子の分散性を維持しつつ、系中の絶縁性や着色樹脂粒子の泳動性を向上させた液体現像剤の製造方法を提供すること。
【解決手段】少なくとも、顔料、顔料分散剤、バインダー樹脂からなる着色樹脂粒子を絶縁性炭化水素有機溶媒中に分散させて着色樹脂粒子分散物を製造する第一の工程、及び、第一の工程で得られた着色樹脂粒子分散物100質量部と、ケイ酸アルミニウム及び/又は酸化マグネシウム・酸化アルミニウム固溶体1質量部以上とを接触させる第二の工程を有することを特徴とする液体現像剤の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷機、複写機、プリンター、ファクシミリなどに用いられる電子写真あるいは静電記録用の液体現像剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体現像剤では、一般的に、顔料などの着色剤を含有する着色樹脂粒子(以下、トナー粒子ともいう)を電気絶縁性分散媒体中に分散させた形態のものが使用されている。そして、このような液体現像剤を製造する方法として湿式粉砕法とコアセルベーション法がある。
【0003】
湿式粉砕法とは、予め、溶融させた樹脂で着色剤を混練して得られる着色樹脂を、乾式の粉砕機を用いて粗粉砕した後、さらに電気絶縁性分散媒体や溶媒等を加え、湿式の粉砕機で微粉砕して電気絶縁性分散媒体中に着色樹脂粒子を分散させる方法である。この方法では、比較的簡単に液体現像剤が得られるという利点がある。
また、コアセルベーション法とは、着色剤と、樹脂を溶解する溶剤と、樹脂を溶解しない電気絶縁性分散媒体との混合液から、溶剤を除去することにより、混合液中に溶解状態で含まれていた樹脂を着色剤を内包する様に析出させてなる着色樹脂粒子を、電気絶縁性分散媒体中に分散させる方法である。この様な方法から得られる液体現像剤は、湿式粉砕法により得られるものより着色樹脂粒子の形状が球形に近く、粒子径も均一となるため、電気泳動性も良好になると考えられている。
【0004】
そして今日の課題としては、現像速度がより早く、得られる画像がより高精細である事となっている。そこで、そのような課題の解決を図るべく、着色力の向上、現像剤の低粘度化、トナー粒子の泳動性向上などにより、現像の高速度化と画像品質の向上への取り組みが行われている。
その中で、トナー粒子の泳動性向上のために以下の方法が知られている。
【0005】
一般的に液体現像剤の着色剤としてほとんど顔料が利用される。例えば、湿式粉砕法でトナー粒子を微粒子化すると、顔料−樹脂界面で破砕されることが多く、得られるトナー粒子の表面には顔料が露出した状態となる。そして、顔料は各色によって帯電特性が異なるため、各色ごとに電気的な制御が必要となり、この製造方法で得られる液体現像剤では、良好な画像品質を得るのが困難であった。また、コアセルベーション法でも、顔料が着色樹脂粒子中に完全に内包されれば良いが、着色樹脂粒子の表面に露出した状態では、同様の問題は起こり得る。
【0006】
そこで、前記の顔料の帯電特性の影響を極力排除し、さらに液体現像剤中の顔料やトナー粒子の分散性の改善のために、例えば、末端に極性基をもつ分散剤を用いる方法(例えば、特許文献1参照)が開示されている。この方法では、顔料表面に分散剤が吸着して擬似的な同一の層が形成されるため、各色顔料が持つ固有の帯電特性の影響を軽減することができる。
しかしながら、末端に極性基を有する分散剤を用いた場合は、極性基成分に由来する分散媒体の絶縁性の低下やトナー粒子の帯電特性の悪化をまねき、良好な画像品質が得られないという新たな問題を生じさせる。
【0007】
また、現在液体現像剤の中に含まれている、各種原材料の不純物や樹脂合成時の未反応物も分散媒体の絶縁性の低下やトナー粒子の泳動性の悪化を引き起こす原因となり、同じく良好な画像品質が得られないという問題が生じている。
このように、従来の製造方法により得られる液体現像剤においては、液体現像剤の絶縁性や泳動性の維持と顔料やトナー粒子の分散性を両立する方法は未だ見出されていないというのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平05−273792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、電子写真あるいは静電記録用の液体現像剤において、着色樹脂粒子分散物の製造方法を問わず、顔料や着色樹脂粒子の分散性を維持しつつ、系中の絶縁性や着色樹脂粒子の泳動性を向上させた液体現像剤の製造方法を提供する事を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、着色樹脂粒子分散物と、ある特定のアルミニウム含有化合物とを接触させる事により、特に顔料の種類や着色樹脂粒子分散物の製造方法に左右されずに、いずれの液体現像剤にも適用でき、顔料や着色樹脂粒子の分散性を維持しつつ、かつ絶縁性や着色樹脂粒子の泳動性が向上した液体現像剤を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、
(1)少なくとも、顔料、顔料分散剤、バインダー樹脂からなる着色樹脂粒子を絶縁性炭化水素有機溶媒中に分散させて着色樹脂粒子分散物を製造する第一の工程、及び、第一の工程で得られた着色樹脂粒子分散物100質量部と、ケイ酸アルミニウム及び/又は酸化マグネシウム・酸化アルミニウム固溶体1質量部以上とを接触させる第二の工程を有することを特徴とする液体現像剤の製造方法に関する。
さらに、(2)上記第二の工程の後、さらに着色樹脂粒子分散物と、ケイ酸アルミニウム及び/又は酸化マグネシウム・酸化アルミニウム固溶体とを分離する第三の工程を有する(1)に記載の液体現像剤の製造方法に関する。
さらに、(3)第二の工程において、着色樹脂粒子分散物100質量部中に、粒子状のケイ酸アルミニウム及び/又は酸化マグネシウム・酸化アルミニウム固溶体1質量部以上を添加撹拌して接触させ、第三の工程において、濾過により着色樹脂粒子分散物とケイ酸アルミニウム及び/又は酸化マグネシウム・酸化アルミニウム固溶体とを分離する(2)に記載の液体現像剤の製造方法に関する。
さらに、(4)(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法によって得られることを特徴とする液体現像剤に関する。
【0012】
以下に、本発明の液体現像剤の製造方法について詳細に説明する。
本発明の液体現像剤の製造方法は、少なくとも顔料、顔料分散剤、バインダー樹脂からなる着色樹脂粒子を絶縁性炭化水素有機溶媒(電気絶縁性分散媒体)中に分散させて着色樹脂粒子分散物を製造する第一の工程を有する。
【0013】
(着色樹脂粒子分散物の構成材料)
上記顔料としては、無機顔料、有機顔料が使用できる。
上記無機顔料としては、例えば、アセチレンブラック、黒鉛、ベンガラ、黄鉛、群青、カーボンブラックなどが好適である。
また、上記有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、レーキ顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料などが好適である。
本発明において、これら顔料の含有量は特に限定されるものではないが、画像濃度の点から、最終的な液体現像剤中に2〜20質量%となることが好ましい。
【0014】
上記顔料分散剤は、上記顔料を分散させるものであり、公知の顔料分散剤が使用できる。
上記顔料分散剤の具体例としては、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、シリコン系界面活性剤、フッソ系界面活性剤などの界面活性剤およびその誘導体、ポリウレタン系樹脂、(ポリ)アミン化合物のアミノ基及び/又はイミノ基にポリエステルが導入された(ポリ)アミン誘導体、ポリエステル側鎖、ポリエーテル側鎖、またはポリアクリル側鎖を有するカルボジイミド化合物(国際公開WO03/07652号)、塩基性窒素含有基を有し、かつ側鎖にポリエステル側鎖、ポリエーテル側鎖、またはポリアクリル側鎖を有するカルボジイミド化合物(国際公開WO04/000950号)、顔料吸着部を有する側鎖を有するカルボジイミド化合物(国際公開WO04/003085号)等の高分子型の顔料分散樹脂等を挙げることができる。
また、上記顔料分散剤として市販されているものとしては、例えば、BYK−160、162、164、182(ビックケミー社製)、EFKA−47(EFKA社製)、アジスパーPB−821、817(味の素社製)、ソルスパーズ24000(ゼネカ社製)などが挙げられる。
本発明では、必要に応じてこれら顔料分散剤を単独又は2種以上を併用することができる。
【0015】
上記顔料分散剤の含有量としては特に限定されないが、上記顔料100質量部に対して、10〜100質量部であることが好ましい。10質量部未満であると、製造する着色樹脂粒子分散物における着色樹脂粒子の分散性が不充分となることがあり、100質量部を超えると、印刷適性に支障をきたすことがある。上記顔料分散剤の含有量のより好ましい下限は20質量部、より好ましい上限は60質量部である。
【0016】
上記バインダー樹脂としては、紙、プラスチックフィルム等の被着体に対して定着性を有する公知のバインダー樹脂が使用でき、例えば、エポキシ樹脂、エステル樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ロジン変性樹脂等の樹脂が使用でき、必要に応じ、これら樹脂を単独又は2種以上を併用することができる。
【0017】
上記バインダー樹脂の含有量としては特に限定されないが、上記顔料100質量部に対して、100〜1000質量部であることが好ましい。
【0018】
上記絶縁性炭化水素有機溶媒としては、上記バインダー樹脂を溶解せず、電気絶縁性を有するものが好ましい。このような条件を満たす絶縁性炭化水素有機溶媒としては不揮発性ないし低揮発性の絶縁性炭化水素系化合物類が挙げられ、より好ましくは脂肪族炭化水素類、脂環式炭化水素類である。
その中でも特に、上記絶縁性炭化水素有機溶媒としては、臭気、無害性、コストの点から、ノルマルパラフィン系化合物、イソパラフィン系化合物、シクロパラフィン系化合物、および、これらの2種またはそれ以上の混合物等の高沸点(沸点が150℃以上)パラフィン系溶剤が好ましい。
具体的に、これらの市販品としては、例えば、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーM、エクソールD130、エクソールD140(以上いずれもエクソン化学(株)製)、シェルゾール71(シェル石油化学(株)製)、IPソルベント1620、IPソルベント2028、IPソルベント2835(以上いずれも出光石油化学(株)製)、モレスコホワイトP−40、モレスコホワイトP−55、モレスコホワイトP−80(以上いずれも(株)松村石油研究所製の流動パラフィン)、流動パラフィンNo.40−S、流動パラフィンNo.55−S(以上いずれも中央化成(株)製の流動パラフィン)などが挙げられる。
【0019】
また、上記着色樹脂粒子分散物を後述するコアセルベーション法で製造する場合、上記バインダー樹脂を溶解させる有機溶媒(以下、バインダー樹脂可溶化有機溶媒ともいう)を含有することが好ましい。
上記バインダー樹脂可溶化有機溶媒としては、使用するバインダー樹脂に合わせて適宜選択されるが、例えば、テトラヒドロフラン等のエーテル類、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類を挙げることができ、更に、樹脂の溶解能力がある場合には、トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類であっても良い。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
さらに、上記着色樹脂粒子分散物は、これらの材料の他に、必要に応じて更に荷電制御剤を含んでもよい。上記荷電制御剤としては、大別して以下に説明する(1)及び(2)の2つのタイプがある。
【0021】
(1)着色樹脂粒子の表面をイオン化あるいはイオンの吸着を行い得る物質で被覆するタイプ。
このタイプの荷電制御剤としては、例えば、アマニ油、大豆油などの油脂;アルキッド樹脂、ハロゲン化重合体、芳香族ポリカルボン酸、酸性基含有水溶性染料、芳香族ポリアミンの酸化縮合物などが好適である。
【0022】
(2)絶縁性炭化水素有機溶媒に溶解し、着色樹脂粒子とイオンの授受を行い得るような物質を共存させるタイプ。
このタイプの荷電制御剤としては、例えば、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸鉄、ナフテン酸亜鉛、オクチル酸コバルト、オクチル酸ニッケル、オクチル酸亜鉛、ドデシル酸コバルト、ドデシル酸ニッケル、ドデシル酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸コバルトなどの金属石鹸類;石油系スルホン酸金属塩、スルホコハク酸エステルの金属塩などのスルホン酸金属塩類;レシチンなどの燐脂質;t−ブチルサリチル酸金属錯体などのサリチル酸金属塩類;ポリビニルピロリドン樹脂、ポリアミド樹脂、スルホン酸含有樹脂、ヒドロキシ安息香酸誘導体などが好適である。
また、その他にも、上記着色樹脂分散物は、必要に応じて他の添加剤を配合することができる。
【0023】
また、上記着色樹脂粒子分散物は、上記材料以外に必要に応じて更に粒子分散剤を使用してもよい。
上記粒子分散剤は、絶縁性炭化水素有機溶媒中に着色樹脂粒子を分散させるものであり、例えば、ポリアミン化合物とヒドロキシカルボン酸自己縮合物との反応物が挙げられる。
コアセルベーション法を用いて液体現像剤を製造する際に、この特定の粒子分散剤と後述する酸基含有樹脂とを併用した存在下で着色樹脂粒子を絶縁性炭化水素有機溶媒中に分散させることにより、媒体中での着色樹脂粒子の分散安定性を高めることが可能となる。また、着色樹脂粒子の帯電特性や泳動性を向上させることもできる。
【0024】
上記ポリアミン化合物としては特に限定されず、例えば、ポリビニルアミン系重合物、ポリアリルアミン系重合物、ポリジアリルアミン系重合物、ジアリルアミン−マレイン酸共重合物等が挙げられ、更にこれらの重合物にポリアニリン単位、ポリピロール単位等を含む重合物も挙げられる。
また、上記ポリアミン化合物としては、エチレンジアミン等の脂肪族ポリアミン、シクロペンタンジアミン等の脂環式ポリアミン、フェニレンジアミン等の芳香族ポリアミン、キシリレンジアミン等の芳香脂肪族ポリアミン、ヒドラジン及びその誘導体等も挙げられる。なかでも、ポリアリルアミン等のポリアリルアミン系重合物が好ましい。
【0025】
上記ヒドロキシカルボン酸自己縮合物を構成するヒドロキシカルボン酸としては特に限定されず、例えば、グリコール酸、乳酸、オキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドキシカプロン酸、ヒドロキシカプリル酸、ヒドロキシカプリン酸、ヒドロキシラウリン酸、ヒドロキシミリスチン酸、ヒドロキシパルミチン酸、ヒドロキシステアリン酸、リシノール酸やひまし油脂肪酸、それらの水添物等が挙げられる。好ましくは炭素数12〜20のヒドロキシカルボン酸、より好ましくは炭素数12〜20の12−ヒドロキシカルボン酸、特に好ましくは12−ヒドロキシステアリン酸である。
【0026】
好適な粒子分散剤としては、ポリアミン化合物とヒドロキシステアリン酸自己縮合物との反応物等を挙げることができ、具体的には、ポリアリルアミンと12−ヒドロキシステアリン酸自己縮合物との反応物、ポリエチレンポリアミンと12−ヒドロキシステアリン酸自己縮合物との反応物、ジアルキルアミノアルキルアミンと12−ヒドロキシステアリン酸自己縮合物との反応物、ポリビニルアミンと12−ヒドロキシステアリン酸自己縮合物との反応物等のポリアミン化合物と12−ヒドロキシステアリン酸自己縮合物が挙げられる。上記粒子分散剤の市販品としては、例えば、アジスパーPB817(味の素社製)、ソルスパーズ11200、13940、17000、18000(日本ルブリゾ−ル社製)等を挙げることができる。その中でも好ましいのは、ポリアリルアミンと12−ヒドロキシステアリン酸自己縮合物との反応物であり、初期及び長期保存の間での粒子分散性が良好であり、更に帯電特性にも優れるという点から好適である。
本発明において、これら粒子分散剤は1種又は2種以上使用することができ、その含有量は液体現像剤中に0.5〜3.0質量%であることが好ましい。
【0027】
上記粒子分散剤は、アミン価が5〜300mgKOH/gであることが好ましい。上記範囲内である場合、着色樹脂粒子の分散安定性が良好で、優れた帯電特性を得ることもできる。なお、本願明細書において、「アミン価」は固形分1gあたりのアミン価を意味し、0.1Nの塩酸水溶液を用い、電位差滴定法(例えば、COMTITE(AUTO TITRATOR COM−900、BURET B−900、TITSTATIONK−900)、平沼産業社製)によって測定した後、水酸化カリウムの当量に換算した値をいう。
【0028】
本発明の液体現像剤の製造方法において、上記着色樹脂粒子分散物を製造する方法としては、例えば、コアセルベーション法や湿式粉砕法等の公知の方法が挙げられる。
上記コアセルベーション法については、例えば、特開2003−241439号公報、再公表公報(WO2007/000974号、WO2007/000975号)に詳細が記載されている。また、上記湿式粉砕法については、例えば、再公表公報(WO2006/126566号、WO2007/108485号)に詳細が記載されている。本発明においては、この様な公知の方法が利用可能である。
【0029】
上記第一の工程において製造する着色樹脂粒子分散物は、上記着色樹脂粒子の含有量が5〜65質量%であることが好ましい。5質量%未満であると、低固形分であるため、顔料や樹脂分の不足による印刷物の性能低下が避けられない。65質量%を超えると、着色樹脂粒子分散物の流動性が不充分となることがある。上記着色樹脂粒子の含有量のより好ましい下限は20質量%、より好ましい上限は45質量%である。
【0030】
本発明の液体現像剤の製造方法は、上記第一の工程で得られた着色樹脂粒子分散物と、ケイ酸アルミニウム及び/又は酸化マグネシウム・酸化アルミニウム固容体とを接触させる第二の工程を有する。
【0031】
(ケイ酸アルミニウム)
上記着色樹脂粒子分散物と接触させるために利用するケイ酸アルミニウムは、一般的な構造式としてAl(SiO、Al・nSiO・mHOで表わされるような化合物である。
このようなケイ酸アルミニウムは、天然物でも合成物でも使用することができる。上記ケイ酸アルミニウムの市販品としては、例えば、キョーワード700シリーズ(協和化学工業(株)製)等を使用することができる。
【0032】
(酸化マグネシウム・酸化アルミニウム固溶体)
上記着色樹脂粒子分散物と接触させるために利用する酸化マグネシウム・酸化アルミニウム固溶体は、MgAlで表わされるような化合物である。上記酸化マグネシウム・酸化アルミニウム固容体の市販品としては、例えば、キョーワード2000シリーズ(協和化学工業(株)製)等を使用することができる。
【0033】
上記ケイ酸アルミニウム及び/又は酸化マグネシウム・酸化アルミニウム固溶体(以下、当該アルミニウム含有化合物ともいう)を、上記着色樹脂粒子分散物と接触させることで、当該アルミニウム含有化合物の表面に上記着色樹脂粒子分散物中の着色樹脂粒子の帯電特性などに悪影響を及ぼす成分を吸着させることができる。
当該アルミニウム含有化合物は、上記の成分を吸着する能力が極めて高いことを特徴とするもので、着色樹脂粒子分散物と接触することで十分な機能が果たされる。したがって、着色樹脂粒子分散物と当該アルミニウム含有化合物とを接触させる方法としては、上記着色樹脂粒子分散物の全体がアルミニウム含有化合物と接触できる方法であればいずれの方法でもよい。
【0034】
上記着色樹脂粒子分散物とアルミニウム化合物とを接触させる具体的な方法としては、例えば、粒子状のアルミニウム含有化合物を使用する場合、着色樹脂粒子分散物中に当該粒子状のアルミニウム含有化合物を添加撹拌する方法、堆積させた当該粒子状のアルミニウム含有化合物の中に着色樹脂粒子分散物を通過させる方法を挙げることができる。
また、板状や網状の二次元的な形状で特に比表面積の大きなアルミニウム含有化合物、あるいは、壁面や底面の少なくとも表面が当該アルミニウム含有化合物からなる容器を使用して、着色樹脂粒子分散物と接触させる方法でもよい。
【0035】
ここで、着色樹脂粒子分散物中に当該アルミニウム含有化合物を添加する方法では、着色樹脂粒子分散物中に均一に存在していた、着色樹脂粒子の帯電特性などに悪影響を及ぼす成分が、当該アルミニウム含有化合物表面に吸着されて偏在化することになる。その結果として、最終的に得られる液体現像剤の印刷適性等が向上すれば、当該アルミニウム含有化合物がそのまま系中に残留しても良い。
このような場合、本発明の液体現像剤の製造方法は、上記第二の工程の後、さらに着色樹脂粒子分散物と、アルミニウム含有化合物とを分離する第三の工程を必ずしも設けなくてよいが、より完全に影響を排除するためには、第三の工程を設けた方が好ましい。
上記第三の工程を設けた場合、着色樹脂粒子分散物と、アルミニウム含有化合物との分離方法としては、例えば、メッシュタイプ、メンブランタイプ、ファイバータイプ等の各種フィルターによる濾過が簡単で好ましい。
【0036】
上記第二の工程において、アルミニウム含有化合物の添加量は、着色樹脂粒子分散物100質量部に対して、該アルミニウム含有化合物が1質量部以上である。1質量部未満であると、帯電特性などに悪影響を及ぼす成分を充分に吸着することができなくなる。
なお、帯電特性などに悪影響を及ぼす成分をすべて吸着するには、その分の当該アルミニウム含有化合物の接触面積が必要である。そして、当該アルミニウム含有化合物粒子の接触面積は、粒子の表面積とトータル質量(厳密にいえば個数)に依存する。
そこで、着色樹脂粒子分散物と当該アルミニウム含有化合物とを分離する手段として、簡単な濾過が可能となるような当該アルミニウム含有化合物の粒子径としたとき、その添加量が上記範囲となることが特に好適となる。ちなみに、「当該アルミニウム含有化合物が1質量部以上となる量」とは、ケイ酸アルミニウムと酸化マグネシウム・酸化アルミニウム固溶体の、どちらか一方を単独で使用する場合は単独で1質量部以上となる量、両方を併用する場合は両方の合計で1質量部以上となる量を言う。
【0037】
さらに当該アルミニウム含有化合物が大粒径になると、濾過等の手段をとらなくても分離が可能となることもある。例えば、微細粒子を堆積させた中に、着色樹脂粒子分散物を通過させることは困難であるが、比較的粗い粒子であると、通過させることは容易であり、この方法では特別な手段を講じなくても分離できる。しかし、粗い粒子は、濾過を要する粒子と比較して、比表面積はずっと小さくなるため、その分、同一の接触面積とするにはより多くの質量が必要となる。例えば、比表面積199m/g(カタログ値)であるケイ酸アルミニウム(キョーワード700SN)は、着色樹脂粒子分散物100質量部に対して、1質量部で本発明の効果が得られることが確認されている。すなわち、着色樹脂粒子分散物100gに対して、ケイ酸アルミニウム1g、計算上の接触面積は199mである。そこで、表面の凹凸形状が同じと仮定した場合、平均粒子径が100倍のものの表面積は、理論上、1/100の1.99m/gであり、その粒子を100g堆積させた中に着色樹脂粒子分散物100gを通過させる方法と、着色樹脂粒子分散物100g中にキョーワード700SNの1gを添加するのとは、基本的に同一の接触面積になる。
【0038】
また、接触面積による吸着の効率を考慮すると、例えば、堆積させたケイ酸アルミニウムの中に着色樹脂粒子分散物を通過させる方法で、何度も通過させることが必要な場合には、より多くの粒子を堆積させて接触面積を大きくすることにより、通過させる回数を減らすことができる。
【0039】
この様な観点から、着色樹脂粒子分散物100質量部に対して、接触させる当該アルミニウム含有化合物の質量部の上限は、基本的には存在しないと言える。しかしながら、当該アルミニウム含有化合物の吸着可能な表面に吸着成分が吸着すると失効し、再び、効果を持たせることは極めて困難となる。そこで、当該アルミニウム含有化合物を濾過可能な範囲で微粒子とすることで極力使用量を少なくして、濾過後、当該アルミニウム含有化合物を廃棄する方法が経済的には好ましい。いずれにしても、接触させる工程の効率や経済的な効果を考慮して、適宜、当該アルミニウム含有化合物の形状や使用量を設定することが好ましい。
【0040】
以上、詳述した通り、少なくとも、顔料、顔料分散剤、バインダー樹脂からなる着色樹脂粒子を絶縁性炭化水素有機溶媒中に分散させて着色樹脂粒子分散物を製造する第一の工程、第一の工程で得られた着色樹脂粒子分散物100質量部と、当該アルミニウム含有化合物1質量部以上とを接触させる第二の工程、さらに必要に応じて、着色樹脂粒子分散物と当該アルミニウム含有化合物とを分離する第三の工程を経て、本発明で目的とする液体現像剤を製造することができる。
このような本発明の液体現像剤の製造方法によって得られた液体現像剤もまた、本発明の一つである。
【発明の効果】
【0041】
本発明の添加剤を使用する事により、着色樹脂粒子分散物の製造方法を問わず、あらゆる顔料を使用した液体現像剤に適用でき、かつ顔料やトナー粒子の分散性を維持しつつ、液体現像剤の絶縁性やトナー粒子の泳動性を向上させた液体現像剤が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、実施例によって、本発明の液体現像剤の製造方法をさらに具体的に説明するが、本発明はその趣旨と適用範囲を逸脱しない限りこれらに限定されるものではない。とりわけ、実施例で使用するケイ酸アルミニウム及び酸化マグネシウム・酸化アルミニウム固溶体の形状は粒子状であるが、本発明の主旨からして、他の形状でも(特に接触面積を同じとしたときに)同様の効果が得られることは明らかである。なお、以下の記述中において、特に断りのない限り、「部」および「%」は、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0043】
<顔料>
ピグメントレッド57−1
<顔料分散剤>
アジスパーPB817(ポリアリルアミンと12−ヒドロキシステアリン酸自己縮合物との反応物、味の素社製)
<バインダー樹脂>
FC―1565(ポリエステル樹脂/三菱レーヨン社製)
<バインダー樹脂可溶性有機溶媒(溶媒A)>
テトラヒドロフラン(THF)
<絶縁性炭化水素有機溶媒>
モレスコホワイトP−40(松村石油化学研究所製)
<ケイ酸アルミニウム>
キョーワード700SN(協和化学工業社製)
<酸化マグネシウム・酸化アルミニウム固溶体>
キョーワード2000(協和化学工業社製)
<ハイドロタルサイト>
キョーワード500SN(協和化学工業社製)
<ケイ酸マグネシウム>
キョーワード600SN(協和化学工業社製)
<モンモリロナイト>
クニピアF(クニミネ工業社製)
【0044】
(実施例1〜6及び比較例1〜7)
上記顔料、顔料分散剤、バインダー樹脂、溶媒Aおよび絶縁性炭化水素有機溶媒を使用しコアセルベーション法にて着色樹脂粒子分散物を製造した。
【0045】
さらに着色樹脂粒子分散物100質量部に対して、表1の配合に従ってケイ酸アルミニウム、酸化マグネシウム・酸化アルミニウム固溶体、ハイドロタルサイト、ケイ酸マグネシウム、モンモリロナイト及び硫酸マグネシウムを外添剤として各量添加し、攪拌装置を用いて30分間攪拌後、400メッシュのフィルターにて濾過して実施例1〜6及び比較例1〜7の液体現像剤を得た。
【0046】
<評価方法>
以下のような評価方法により実施例1〜6及び比較例1〜7の各液体現像剤を評価し、その結果を表1に示す。
【0047】
(体積抵抗率)
各液体現像剤の体積抵抗率をアドバンス社製R834により測定し、その実測値を示した。
【0048】
(帯電性及び泳動性)
泳動セルを用いて粒子の帯電性及び泳動性を目視にて観察した。
(条件:電極間距離:80μm、印加電圧:300V)
(1)帯電性
泳動セルに電圧をかけた時に、
+:−電極側に90%以上のトナー粒子が泳動する
−:+電極側に90%以上のトナー粒子が泳動する
±:上記以外の現象が起こり、+か−かの帯電が一定しない。
(2)泳動性
○:粒子がスムーズに泳動する
△:粒子の泳動速度がやや遅い
×:粒子の泳動速度が遅い
【0049】
【表1】

【0050】
表1に示した通り、ケイ酸アルミニウム及び酸化マグネシウム・酸化アルミニウム固溶体は、吸着材として知られている他の類似する材料と比較しても、極めて良好な効果を有することは明白である。例えば、ケイ酸アルミニウム(キョーワード700SN)を使用した場合、着色樹脂粒子分散物100質量部に対して、1質量部を接触させただけで本発明の目的とする効果をすべて具備する結果となった(実施例1)。それに対して、類似するケイ酸マグネシウム(キョーワード600SN)では、着色樹脂粒子分散物100質量部に対して、3質量部を接触させても、本発明の目的とする効果が全く認められない(比較例5)。この結果から、質量に基づけば、ケイ酸アルミニウムは、ケイ酸マグネシウムより少なくとも1/3の使用量で高い効果を発揮すると言える。
【0051】
なお、吸着材としての能力は、一般的に吸着面積に依存することが知られている。そこで、面積の観点から両者を比較すると、キョーワード700SNの比表面積は199m/g、キョーワード600SNの比表面積は156m/g(いずれもカタログ値)である。したがって、面積に基づけば、ケイ酸アルミニウムは、ケイ酸マグネシウムより、少なくとも、199/(156×3)≒3/7の使用量で高い効果を発揮するとも言える。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の添加剤を使用する事により、着色樹脂粒子分散物の製造方法を問わず、あらゆる顔料を使用した液体現像剤に適用でき、かつ顔料やトナー粒子の分散性を維持しつつ、液体現像剤の絶縁性やトナー粒子の泳動性を向上させた液体現像剤が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、顔料、顔料分散剤、バインダー樹脂からなる着色樹脂粒子を絶縁性炭化水素有機溶媒中に分散させて着色樹脂粒子分散物を製造する第一の工程、及び、
前記第一の工程で得られた着色樹脂粒子分散物100質量部と、ケイ酸アルミニウム及び/又は酸化マグネシウム・酸化アルミニウム固溶体1質量部以上とを接触させる第二の工程を有する
ことを特徴とする液体現像剤の製造方法。
【請求項2】
第二の工程の後、さらに着色樹脂粒子分散物と、ケイ酸アルミニウム及び/又は酸化マグネシウム・酸化アルミニウム固溶体とを分離する第三の工程を有する請求項1に記載の液体現像剤の製造方法。
【請求項3】
第二の工程において、着色樹脂粒子分散物100質量部中に、粒子状のケイ酸アルミニウム及び/又は酸化マグネシウム・酸化アルミニウム固溶体1質量部以上を添加撹拌して接触させ、
第三の工程において、濾過により着色樹脂粒子分散物と、ケイ酸アルミニウム及び/又は酸化マグネシウム・酸化アルミニウム固溶体とを分離する請求項2に記載の液体現像剤の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法によって得られることを特徴とする液体現像剤。

【公開番号】特開2011−123375(P2011−123375A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282137(P2009−282137)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(000105947)サカタインクス株式会社 (123)
【Fターム(参考)】