説明

液体現像剤の製造方法

【課題】小粒径であり、かつ、粘度が低い液体現像剤及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】工程1:水系分散媒に樹脂を分散させた樹脂分散液と顔料を混合し、顔料と樹脂の混合物を得る工程、工程2:工程1で得られた顔料と樹脂の混合物を高圧湿式微粒化機により50〜300MPaで分散し、水系トナー粒子分散液を得る工程、及び工程3:工程2で得られた水系トナー粒子分散液と絶縁性液体を混合し、水系分散媒を除去する工程を含む、トナー粒子が絶縁性液体中に分散してなる液体現像剤の製造方法、並びに該製造方法により得られる液体現像剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の複写機、プリンター等の画像形成装置に用いられる液体現像剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真用現像剤には、着色剤及び結着樹脂を含む材料からなるトナーを乾式状態で用いる乾式現像剤と、トナーが絶縁性の担体液中に分散した液体現像剤がある。
【0003】
液体現像剤は、トナーの小粒径化が可能であることから画質の面で優れている。近年、高画質化への要求が高まっていることから、液体現像剤においても、さらにトナーの小粒径化が求められている。
【0004】
液体現像剤の製造方法としては、顔料と樹脂と酢酸エチルをサンドミル分散機に投入して着色樹脂溶液を調製し、予め準備した分散剤の水溶液にホモミキサーで撹拌しながら着色樹脂溶液を滴下して水系乳化液を作製し、次に高絶縁性液体に超音波ホモジナイザーを照射しながら、この水系乳化液を滴下して混合液を得、水と酢酸エチルを除去して、トナー粒子径1.8〜4.2μmの液体現像剤を製造する方法が開示されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、顔料とアニオン系面活性剤とイオン交換水を混合し高圧衝撃式分散機アルティマイザーを用いて得られた顔料分散水溶液と、予め作製した水系樹脂微粒子分散液と、凝集剤を混合して顔料粒子と樹脂微粒子を凝集させ、得られた微粒子結合体(トナー粒子)を水洗、凍結乾燥し、絶縁性液体中に乾燥させた微粒子結合体を加え解砕を行い、トナー粒子径1.68μmの液体現像剤を製造する方法が開示されている(特許文献2参照)。
【0006】
顔料と樹脂を溶融混練し粉砕した粉砕物と分散用樹脂とシリコーンオイルをディスパーで予備混合し、貫通型ノズル分散機にいれて分散し、トナー粒子径1.9〜4.7μmの液体現像剤を製造する方法が開示されている(特許文献3参照)。
【0007】
また、樹脂と顔料と絶縁性液体をショットミル磨砕機で分散し、さらにピストンホモジナイザーで分散し、トナー粒子径4.6μmの液体現像剤を製造する方法が開示されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−195010号公報
【特許文献2】特開2008−40352号公報
【特許文献3】特開2003−207951号公報
【特許文献4】特開平7−64348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、これまでの技術ではトナー粒径を小さくするにつれて現像剤の粘度が上昇し、現像性が悪化してしまうという問題がある。
【0010】
本発明の課題は、小粒径であり、かつ、粘度が低い液体現像剤及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、
〔1〕 工程1:水系分散媒に樹脂を分散させた樹脂分散液と顔料を混合し、顔料と樹脂の混合物を得る工程、
工程2:工程1で得られた顔料と樹脂の混合物を高圧湿式微粒化機により50〜300MPaで分散し、水系トナー粒子分散液を得る工程、及び
工程3:工程2で得られた水系トナー粒子分散液と絶縁性液体を混合し、水系分散媒を除去する工程
を含む、トナー粒子が絶縁性液体中に分散してなる液体現像剤の製造方法、並びに
〔2〕 前記〔1〕記載の製造方法により得られる液体現像剤
に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の方法により得られた液体現像剤は、小粒径であり、かつ、粘度が低いという優れた効果を有するものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、
工程1:水系分散媒に樹脂を分散させた樹脂分散液と顔料を混合し、顔料と樹脂の混合物を得る工程、
工程2:工程1で得られた顔料と樹脂の混合物を高圧湿式微粒化機により50〜300MPaで分散し、水系トナー粒子分散液を得る工程、及び
工程3:工程2で得られた水系トナー粒子分散液と絶縁性液体を混合し、水系分散媒を除去する工程
を含む方法により、トナー粒子が絶縁性液体中に分散した液体現像剤を製造する方法であり、本発明の方法により得られる液体現像剤は、小粒径であり、かつ、粘度が低いという優れた効果を奏するものである。
【0014】
このような効果を奏する理由はさだかではないが、本発明の方法により得られる液体現像剤は、水系媒体中にて顔料と樹脂粒子から高圧湿式微粒化機を用いて水系トナー粒子分散液を作製する工程を経て得られるために、水系媒体中でトナー原料溶融混練物を分散する場合や、他の分散機を用いた場合よりも、直接顔料が効率的に解砕され、小粒径のトナー粒子となる。
【0015】
また、非水系分散媒中で顔料と樹脂から高圧湿式微粒化機を用いてトナー粒子を作製する場合や、非水系分散媒中でトナー原料溶融混練物を高圧湿式微粒化機を用いて粉砕分散させてトナー粒子を作製する場合に比べて、水系系分散媒中で顔料と樹脂粒子の混合物を分散させことにより、樹脂の膨潤が抑制され、解砕された顔料表面に樹脂が効率的に吸着し、水系系分散媒中で小粒径のトナーが安定に得られる。従って、このトナー粒子を含有する液体現像剤は、小粒径であっても、安定に分散し、粘度が低いものと考えられる。
【0016】
さらに、工程3の前に、工程2で得られた水系トナー粒子分散液に水系分散剤を添加することにより、工程3において、水系トナー粒子分散液と絶縁性液体を混合する工程、及び水系分散媒を除去する工程において、トナー粒子の凝集を抑制し、トナー粒子をより安定に分散させることができる。また、工程3において、油中分散剤を用いることにより、トナー粒子が液体現像剤中にて過度に凝集することなくより安定に分散し、粘度が低くなるものと考えられる。
【0017】
工程1は、水系分散媒に樹脂を分散させた樹脂分散液と顔料を混合し、顔料と樹脂の混合物を得る工程である。
【0018】
水系分散媒に樹脂を分散させた樹脂分散液(以下、水系樹脂分散液という)は、水系分散媒中に、樹脂が分散したものである。
【0019】
水系分散媒とは、水を主成分とするもの、すなわち、水の含有量が50重量%以上のものである。環境にやさしいという観点から、水性分散媒中の水の含有量は80重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましく、100重量%がさらに好ましい。水以外の成分としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等の水に溶解する有機溶媒が挙げられる。
【0020】
本発明において用いられる樹脂はトナー粒子の結着樹脂となる樹脂であり、特に限定されず、例えば、ポリスチレン、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体等のスチレン又はスチレン置換体を含む単重合体又は共重合体であるスチレン系樹脂、ポリエステル、エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェニール樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
上記樹脂の中では、液体現像剤の定着性を向上させる観点から、ポリエステルが好ましい。ポリエステルは、実質的にポリエステルの特性を損なわない程度に変性されたポリエステルであってもよい。変性されたポリエステルとしては、例えば、特開平11−133668号公報、特開平10−239903号公報、特開平8−20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステルをいう。
【0022】
水系樹脂分散液を得る方法としては、水系分散媒中で重合性単量体を重合させる方法、有機溶媒中に溶解させた樹脂を水系分散媒中に転相乳化させる方法等が挙げられるが、水系樹脂分散液中の樹脂を小粒径化させる観点及び粒度分布を狭くする観点から、有機溶媒中に溶解させた樹脂を水系分散媒中に転相乳化させる方法が好ましい。また、ポリエステルの場合は、水系媒体中で縮重合することが容易ではない観点から、有機溶媒中に溶解させた樹脂を水系分散媒中に転相乳化させる方法が好ましい。
【0023】
本発明において、ポリエステルは、2価以上のアルコールからなるアルコール成分と2価以上のカルボン酸化合物からなるカルボン酸成分とを縮重合することにより得られるものである。
【0024】
2価のアルコールとしては、炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜15のジオールや、式(I):
【0025】
【化1】

【0026】
(式中、RO及びORはオキシアルキレン基であり、Rはエチレン及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の平均値は1〜16が好ましく、1〜8がより好ましく、1.5〜4がさらに好ましい)
で表されるビスフェノールのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。炭素数2〜20の2価のアルコールとして、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
【0027】
3価以上のアルコールとしては、例えば、炭素数3〜20、好ましくは炭素数3〜10の3価以上の多価アルコールが挙げられる。具体的には、ソルビトール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、グリセロール、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0028】
2価のカルボン酸化合物としては、炭素数3〜30、好ましくは炭素数3〜20、さらに好ましくは炭素数3〜10のジカルボン酸、及びそれらの酸無水物、アルキル(炭素数1〜8)エステル等の誘導体等が挙げられる。具体的には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸や、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、炭素数1〜20のアルキル基又はアルケニル基で置換されたコハク酸等の脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。
【0029】
3価以上のカルボン酸化合物としては、炭素数4〜30、好ましくは炭素数4〜20、さらに好ましくは炭素数4〜10の3価以上の多価カルボン酸、及びそれらの酸無水物、アルキル(炭素数1〜8)エステル等の誘導体等が挙げられる。具体的には、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸(ピロメリット酸)等が挙げられる。
【0030】
なお、アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸化合物が、ポリエステルの軟化点を調整する観点から、適宜含有されていてもよい。
【0031】
ポリエステルは、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分とを不活性ガス雰囲気中、必要に応じてエステル化触媒、重合禁止剤等の存在下、180〜250℃程度の温度で縮重合させて製造することができる。
【0032】
エステル化触媒としては、酸化ジブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫(II)等の錫化合物、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等が挙げられる。エステル化触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100重量部に対して、0.01〜1重量部が好ましく、0.1〜0.7重量部がより好ましい。
【0033】
また、反応時間短縮のために、助触媒を使用してもよい。助触媒としては、没食子酸等が挙げられる。助触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100重量部に対して、0.001〜0.5重量部が好ましく、0.01〜0.3重量部がより好ましい。助触媒と触媒の重量比(助触媒/触媒)は、0.01〜0.5が好ましい。
【0034】
ポリエステルの軟化点は、液体現像剤の低温定着性を向上させる観点から、160℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましい。また、工程3において水系媒体を除去する際にトナー粒子が凝集するのを防止する観点から、70℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましい。これらの観点を総合すると、70〜160℃が好ましく、80〜150℃がより好ましい。
【0035】
ポリエステルのガラス転移点は、液体現像剤の低温定着性を向上させる観点から80℃以下が好ましく、75℃以下がより好ましい。また、工程3において水系媒体を除去する際にトナー粒子が凝集するのを防止する観点から、45℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましい。これらの観点を総合すると、45〜80℃が好ましく、50〜75℃がより好ましい。
【0036】
ポリエステルの酸価は、ポリエステルの水系分散媒への分散性を向上させる観点から、80mgKOH/g以下が好ましく、60mgKOH/g以下がより好ましい。また、液体現像剤の定着性を向上させる観点、及びポリエステルの水系分散媒への分散性を向上させる観点から、1mgKOH/g以上が好ましく、10mgKOH/g以上がより好ましい。これらの観点を総合すると、ポリエステルの酸価は、1〜80mgKOH/gが好ましく、10〜60mgKOH/gがより好ましい。
【0037】
有機溶媒中に溶解させた樹脂を水系分散媒中に転相乳化させる方法は、樹脂、例えば、ポリエステルを有機溶媒に溶解させ、中和剤を加えて該ポリエステル樹脂のカルボキシル基をイオン化し、次いで水系分散媒を加えた後、有機溶媒を留去して水系に転相する方法が好ましい。
【0038】
なお、顔料以外のトナー原料、例えば、離型剤、荷電制御剤等を予め樹脂に混合してもよい。混合する方法は、樹脂と顔料以外のトナー原料を溶融混練する方法、有機溶剤に樹脂と顔料以外のトナー原料を溶解させて混合する方法等が挙げられる。
【0039】
樹脂を溶解させる有機溶媒としては、水系分散媒中に樹脂を分散させる観点から、沸点が水よりも低いものが好ましい。また、ポリエステル樹脂の溶解性の観点からケトン系溶媒が好ましい。用いられるケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソプロピルケトン等が挙げられ、ポリエステル樹脂の溶解性及び溶媒の留去の容易性の観点から、メチルエチルケトンが好ましい。
【0040】
また、中和剤としては、例えばアンモニア水、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液、アリルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、トリ-n-オクチルアミン、t-ブチルアミン、sec-ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、n-プロパノールアミン、ブタノールアミン、5-アミノ-4-オクタノール、モノエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ネオペンタノールアミン、ジグリコールアミン、エチレンジアミン、ピペラジン等のアミン類等が挙げられる。
【0041】
水系分散媒としては、水系樹脂分散液の分散性を向上させる観点から脱イオン水が好ましい。
【0042】
樹脂の有機溶媒への溶解、中和剤の添加は、有機溶媒の沸点以下の温度で行うことが好ましい。
【0043】
有機溶媒の除去は、例えば、水系樹脂分散液を加熱する方法や、減圧雰囲気下に置く方法により行うことができるが、樹脂粒子の凝集を抑制する観点から、水系樹脂分散液を減圧下で加熱する方法が好ましい。
【0044】
有機溶媒を除去するために水系樹脂分散液を加熱する場合、加熱温度は、有機溶媒の除去の容易性の観点から、30℃以上が好ましく、40℃以上がより好ましい。また、樹脂粒子の凝集を抑制する観点から、70℃以下が好ましく、60℃以下がより好ましい。これらの観点を総合すると、30〜70℃が好ましく、40〜60℃がより好ましい。
【0045】
また、水系樹脂分散液を減圧雰囲気下に置く場合、その圧力は、有機溶媒の除去の容易性の観点から、70kPa以下が好ましく、60kPa以下がより好ましい。また、樹脂粒子の凝集を抑制する観点から、1kPa以上が好ましく、2kPa以上がより好ましい。これらの観点を総合すると、1〜70kPaが好ましく、2〜60kPaがより好ましい。
【0046】
有機溶媒は、樹脂を水系分散媒中に転相乳化後、除去してもよいが、工程2において、トナー粒子中の顔料の粒径を小さくする観点から、工程2における分散処理後、除去するのが好ましい。
【0047】
水系樹脂分散液中の樹脂の体積中位粒径(D50)は、液体現像剤中のトナー粒子の粒子径を小さくする観点から、1μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましく、0.2μm以下がさらに好ましい。なお、樹脂の体積中位粒径は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0048】
水系樹脂分散液中の固形分濃度は、得られる液体現像剤の生産性を向上させる観点から、10重量%以上が好ましく、15重量%以上がより好ましい。また、水系分散媒中への樹脂の分散性を向上させる観点から、45重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましい。これらの観点を総合すると、10〜45重量%が好ましく、15〜40重量%以下がより好ましい。
【0049】
また、有機溶媒中に溶解させた樹脂を水系分散媒中に転相乳化させて得られた水系樹脂分散液であって、有機溶媒を除去しない場合であっても、水系樹脂分散液中の固形分濃度は上記の範囲が好ましい。
【0050】
顔料としては、トナー用着色剤として用いられている顔料のすべてを使用することができ、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、イソインドリン、ジスアゾエロー等が用いることができる。本発明のトナーは、黒トナー、カラートナーのいずれであってもよい。
【0051】
顔料の混合量は、液体現像剤の定着性を向上させる観点から、樹脂100重量部に対して、100重量部以下が好ましく、70重量部以下がより好ましい。また、液体現像剤の画像濃度を向上させる観点から、5重量部以上が好ましく、15重量部以上がより好ましい。これらの観点を総合すると、5〜100重量部が好ましく、15〜70重量部がより好ましい。
【0052】
混合に供する顔料の平均一次粒子径は、液体現像剤の粘度を下げる観点及び顔料粒子の凝集を抑制する観点から、0.01μm以上が好ましく、0.02μm以上がより好ましく、0.03μm以上がさらに好ましい。また、液体現像剤中のトナー粒子の粒子径を小さくする観点から、0.2μm以下が好ましく、0.15μm以下がより好ましく、0.1μm以下がさらに好ましい。これらの観点を総合すると、0.01〜0.2μmが好ましく、0.02〜0.15μmがより好ましく、0.03〜0.1μmがさらに好ましい。なお、顔料の平均一次粒子径は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0053】
また、混合に供する顔料の平均二次粒子径は、工程1で得られる混合物の顔料と樹脂からなる粒子の粒子径を小さくする観点から、30μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましい。なお、顔料の平均二次粒子径は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0054】
混合に供する顔料は、粉体の状態であっても、水系分散液の状態であってもよい。工程1の生産性を向上させる観点から、粉体の顔料を混合に供することが好ましい。
【0055】
水系樹脂分散液と顔料とは、攪拌混合装置により高速で攪拌を行いながら混合することが好ましい。この時、離型剤等の他のトナー原料の水系分散液を一緒に混合してもよい。
【0056】
撹拌混合装置は、特に限定はされないが、工程2の生産性を向上させる観点から、ウルトラディスパー(浅田鉄工社製)、エバラマイルダー(荏原製作所社製)、T.K.ホモミクサー、T.K.ホモディスパー、T.K.ロボミックス(以上、プライミックス社製)、クリアミックス(エム・テクニック社製)、ケイディーミル(キネティック・ディスパージョン社製)等の高速攪拌混合装置が好ましい。
【0057】
水系樹脂分散液と顔料を高速攪拌混合装置により混合することによって、顔料が予備分散され、工程2の生産性が向上する。凝集している顔料は一部解砕される。また、顔料に一部の樹脂が付着すると考えられる。
【0058】
工程1により得られる顔料と樹脂の混合物の混合終了後5時間以内の粘度は、液体現像剤の粘度を低減する観点から、500mPa・s以下が好ましく、300mPa・s以下がより好ましい。なお、工程1で得られる顔料と樹脂の混合物の粘度は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0059】
工程2は、工程1で得られた顔料と樹脂の混合物を高圧湿式微粒化機により、分散する工程であり、水系トナー粒子分散液を得る工程である。この工程において、凝集した顔料は解砕され、樹脂が付着し、トナー粒子となり、水系媒体中に分散する。
【0060】
高圧湿式微粒化機としては、処理液の流路が固定されたチャンバーを有するもの、処理液の流路の幅を調整しうる均質バルブを有するもの等が挙げられる。処理液の流路が固定されたチャンバーを有する高圧湿式微粒化機としては、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイディクス社製)、ナノマイザー(ナノマイザー社製)、アルティマイザー(スギノマシン社製)等が挙げられる。均質バルブを有する高圧湿式微粒化機としては、高圧ホモジナイザー(ラニー社製)、高圧ホモジナイザー(三丸機械工業社製)、高圧ホモゲナイザー(イズミフードマシナリ社製)等が挙げられる。高圧で処理することにより、樹脂の顔料に対する吸着状態が変化し、安定にトナー粒子が分散し、結果として液体現像剤の粘度が低下すると考えられる。液体現像剤中のトナー粒子の粒子径を小さくし、液体現像剤の粘度を下げる観点から、処理液の流路が固定されたチャンバーを有する高圧湿式微粒化機が好ましい。
【0061】
高圧湿式微粒化機で分散する際の圧力は、せん断力、壁面への衝突力及び急激な圧力降下を高めて、工程2の生産性を向上させる観点から、50MPa以上であり、80MPa以上が好ましく、100MPaが好ましい。また、高圧湿式微粒化機の耐久性の観点から、300MPa以下であり、250MPa以下が好ましく、200MPaが好ましい。これらの観点を総合すると、高圧湿式微粒化機で分散する際の圧力は、50〜300MPaであり、80〜250MPaが好ましく、100〜200MPaがより好ましい。
【0062】
また、顔料やトナー粒子の再凝集を抑制し分散安定化を図る観点から、処理パス数は3パス以上が好ましく、5パス以上がより好ましい。また、工程2の生産性を向上させる観点から、30パス以下が好ましく、20パス以下がより好ましい。これらの観点を総合すると、処理パス数は3〜30パスが好ましく、5〜20パスがより好ましい。
【0063】
工程2で得られる水系トナー粒子分散液中のトナー粒子の体積中位粒径(D50)は、液体現像剤中のトナー粒子の粒子径を小さくする観点から、1μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましい。なお、水系トナー粒子分散液中のトナー粒子の平均粒子径は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0064】
工程2で得られる水系トナー粒子分散液の粘度は、液体現像剤の粘度を小さくする観点から、300mPa・s以下が好ましく、150mPa・s以下がより好ましい。なお、工程2で得られる水系トナー粒子分散液の粘度は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0065】
また、工程2の段階で、水系樹脂分散液を得るのに用いた有機溶媒が工程1で除去されずに残っている場合は、顔料粒子の分散安定性を向上させる観点から、工程3の前に水系トナー粒子分散液中の有機溶媒は除去しておくことが好ましい。
【0066】
有機溶媒の除去は、例えば、水系トナー粒子分散液を加熱する方法や、減圧雰囲気下に置く方法により行うことができるが、トナー粒子の凝集を抑制する観点から、水系トナー粒子分散液を減圧下で加熱する方法が好ましい。
【0067】
水系トナー粒子分散液を加熱する場合、加熱温度は、有機溶媒の除去の容易性の観点から、30℃以上が好ましく、40℃以上がより好ましい。また、トナー粒子の凝集を抑制する観点から、70℃以下が好ましく、60℃以下がより好ましい。これらの観点を総合すると、30〜70℃が好ましく、40〜60℃がより好ましい。
【0068】
また、水系トナー粒子分散液を減圧雰囲気下に置く場合、その圧力は、有機溶媒の除去の容易性の観点から、70kPa以下が好ましく、60kPa以下がより好ましい。また、トナー粒子の凝集を抑制する観点から、1kPa以上が好ましく、2kPa以上がより好ましい。これらの観点を総合すると、1〜70kPaが好ましく、2〜60kPaがより好ましい。
【0069】
工程2で得られる水系トナー粒子分散液中のトナー粒子の固形分濃度は、得られる液体現像剤の生産性を向上させる観点から、15重量%以上が好ましく、20重量%以上がより好ましい。また、水系トナー粒子分散液中のトナー粒子の分散性を向上させる観点から、50重量%以下が好ましく、45重量%以下がより好ましい。これらの観点を総合すると、水系トナー粒子分散液中のトナー粒子の固形分濃度は、15〜50重量%が好ましく、20〜45重量%以下がより好ましい。
【0070】
工程3は、工程2で得られた水系トナー粒子分散液と絶縁性液体を混合し、水系分散媒を除去する工程であり、液体現像剤を得る工程である。
【0071】
この工程において、顔料以外のトナー原料、例えば、荷電制御剤等の絶縁性液体への分散液を一緒に添加しても良い。
【0072】
工程2で得られた水系トナー粒子分散液中のトナー粒子は、そのまま、又は、顔料以外のトナー原料が添加されて、液体現像剤中でトナー粒子を形成する。
【0073】
工程2で得られた水系トナー粒子分散液と絶縁性液体を混合する方法は、トナー粒子の凝集を抑制する観点から、水系トナー粒子分散液を攪拌混合装置により攪拌しながら、絶縁性液体を徐々に滴下する方法が好ましい。
【0074】
また、トナー粒子の凝集を抑制する観点から、工程3の前に、水系トナー粒子分散液に水系分散剤を添加する工程を含むことが好ましい。
【0075】
水系分散剤としては、アニオン性分散剤、カチオン性分散剤、非イオン性分散剤が挙げられる。
【0076】
アニオン性分散剤としては、ラウリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム等のカルボン酸塩型、ラウリル硫酸エステルナトリウム塩、ラウリルエーテル硫酸エステルナトリウム塩等の硫酸エステル型、α-オレフィンスルフォン酸塩等のスルフォン酸型、リン酸モノラウリルエステルジナトリウム塩等のリン酸型等が挙げられる。また、ポリマー型のアニオン性分散剤としては、ポリアクリル酸ナトリウム塩、アクリル酸−マレイン酸共重合体ナトリウム塩等のカルボン酸塩型、ポリスチレンスルフォン酸金属塩のスルフォン酸型、ポリリン酸金属塩等のリン酸型等が挙げられる。
【0077】
カチオン性分散剤としては、脂肪族アミン、ジヒドロキシエチルステアリルアミン等のアミン塩型、アルキルトリメチルアンモニウム塩等の4級アンモニウム塩型等が挙げられる。
【0078】
非イオン性分散剤としては、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル等のポリエチレングリコール型や、脂肪酸モノグリセライド、ポリビニルアルコール等の多価アルコール型が挙げられる。
【0079】
上記水系分散媒のなかでは、液体現像剤の粘度を下げる観点、液体現像剤中のトナー粒子の分散性を向上させる観点から、アニオン性のポリマー型分散剤が好ましい。アニオン性のポリマー型分散剤の具体的な例としては、DISPERBYK-190、DISPERBYK-191、DISPERBYK-194(以上、いずれもビックケミー社製)、JONCRYL PDX-6102B、JONCRYL 57J、JONCRYL 6610(以上、いずれもBASF社製)、ポイズ520、ポイズ532A(以上、いずれも花王社製)等が挙げられる。
【0080】
水系分散剤の添加量は、トナー粒子の凝集を抑制する観点から、トナー粒子100重量部に対して、有効分換算で4重量部以上が好ましく、6重量部以上がより好ましい。また、液体現像剤の現像性を向上させる観点から、16重量部以下が好ましく、14重量部以下がより好ましい。これらの観点を総合すると、4〜16重量部が好ましく、6〜14重量部がより好ましい。
【0081】
水系分散剤の添加方法は、絶縁性液体を添加する前に水系トナー粒子分散液中に添加し、攪拌混合装置により攪拌する方法が好ましい。
【0082】
絶縁性液体としては、誘電率3.5以下、体積抵抗107Ωcm以上の液体であればよい。
【0083】
絶縁性液体の具体例としては、例えば、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、ポリシロキサン等が挙げられる。特に、臭気、無害性及びコストの点から、ノルマルパラフィン系溶媒、イソパラフィン系溶媒等の脂肪族炭化水素が好ましい。具体的には、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーK(以上、いずれもエクソン化学社製)、シェルゾール71(シェル石油化学社製)、IPソルベント1620、IPソルベント2080(以上、いずれも出光石油化学社製)、モレスコホワイトP-55、モレスコホワイトP-70(以上、いずれも松村石油社製)、コスモホワイトP-60、コスモホワイトP-70(以上、いずれもコスモ石油ルブリカンツ社製)等が挙げられる。
【0084】
絶縁性液体の25℃における粘度は、液体現像剤の現像性を向上させる観点から、100mPa・s以下が好ましく、50mPa・s以下がより好まし、20mPa・s以下がさらに好ましい。また、液体現像剤中でのトナー粒子の分散安定性を向上させる観点から、1mPa・s以上が好ましく、3mPa・s以上がより好ましく、5mPa・s以上がさらに好ましい。これらの観点を総合すると、液体現像剤の25℃における粘度は、1〜100mPa・sが好ましく、3〜50mPa・sがより好ましく、5〜20mPa・sがさらに好ましい。なお、絶縁性液体の粘度は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0085】
また、工程3は、トナー粒子の凝集を抑制する観点及び液体現像剤の粘度を下げる観点から、さらに油中分散剤を添加する工程を含むことが好ましい。
【0086】
油中分散剤としては、分散基及び吸着基を有する高分子分散剤が好ましい。分散基としては、主に炭化水素鎖、ヒドロキシ炭化水素鎖等を有するものが好ましい。吸着基としては、酸性吸着基、中性吸着基、塩基性吸着基が挙げられ、樹脂、特にポリエステルへの吸着性を向上させる観点から、塩基性吸着基が好ましい。塩基性吸着基としては、アミノ基、イミノ基、ピロリドン基、ピリジン基等が挙げられ、液体現像剤中のトナー粒子の分散性を向上させる観点から、アミノ基及びイミノ基が好ましい。
【0087】
また、油中分散剤は、吸着基を主鎖、分散基を側鎖にもつ構造が好ましく、吸着基にアミノ基又はイミノ基を持ち、分散基に炭化水素鎖又はヒドロキシ炭化水素鎖を持つものが好ましい。このような油中分散剤の具体例としては、ソルスパース11200、ソルスパース13940、ソルスパース28000(以上、いずれも日本ルーブリゾール社製)、アジスパーPB-821、アジスパーPB-822(以上、いずれも味の素ファインテクノ社製)等が挙げられる。
【0088】
油中分散剤の添加量は、液体現像剤の粘度を下げる観点から、トナー粒子100重量部に対して、有効分換算で4重量部以上が好ましく、7重量部以上がより好ましい。また、液体現像剤の現像性を向上させる観点から、23重量部以下が好ましく、20重量部以下がより好ましい。これらの観点を総合すると、4〜23重量部が好ましく、7〜20重量部がより好ましい。
【0089】
油中分散剤の添加方法としては、油中分散剤をあらかじめ絶縁性液体中に溶解させて工程2で得られた水系トナー粒子分散液に添加する方法、絶縁性液体と油中分散剤を同時に工程2で得られた水系トナー粒子分散液に添加する方法等が挙げられ、トナー粒子の凝集を抑制する観点から、油中分散剤をあらかじめ絶縁性液体中に溶解させて工程2で得られた水系トナー粒子分散液に添加する方法が好ましい。
【0090】
次に、工程2で得られた水系トナー粒子分散液と絶縁性液体の混合液から、水系分散媒を除去する。これにより、トナー粒子が、絶縁性液体中に分散した液体現像剤が得られる。
【0091】
水系分散媒の除去は、例えば、水系トナー粒子分散液と絶縁性液体の混合液を加熱する方法や、減圧雰囲気下に置く方法により行うことができるが、トナー粒子の凝集を抑制する観点から、混合液を減圧下で加熱する方法が好ましい。
【0092】
混合液を加熱する場合、加熱温度は、溶媒の除去の容易性の観点から、40℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましい。また、トナー粒子の凝集を抑制する観点から、80℃以下が好ましく、65℃以下がより好ましい。これらの観点を総合すると、40〜80℃が好ましく、50〜65℃以下がより好ましい。
【0093】
また、混合液を減圧雰囲気下に置く場合、その圧力は、溶媒の除去の容易性の観点から、45kPa以下が好ましく、35kPa以下がより好ましい。また、トナー粒子の凝集を抑制する観点から、0.5kPa以上が好ましく、1kPa以上がより好ましい。これらの観点を総合すると、0.5〜45kPaが好ましく、1〜35kPaがより好ましい。
【0094】
以上の工程を経て得られる液体現像剤中のトナー粒子の体積中位粒径(D50)は、液体現像剤の画質を向上させる観点から、1.5μm以下が好ましく、1.0μm以下がより好ましい。また、液体現像剤の生産性を向上させる観点、液体現像剤中でのトナー粒子の分散安定性を向上させる観点から、0.05μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましい。これらの観点を総合すると、液体現像剤中のトナー粒子の体積中位粒径(D50)は、0.05〜1.5μmが好ましく、0.1〜1.0μmがより好ましい。なお、トナー粒子の体積中位粒径は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0095】
液体現像剤の25℃における粘度は、液体現像剤の現像性を向上させる観点から、200mPa・s以下が好ましく、100mPa・s以下がより好ましく、70mPa・s以下がさらに好ましい。また、液体現像剤中でのトナー粒子の分散安定性を向上させる観点から、5mPa・s以上が好ましく、10mPa・s以上がより好ましく、20mPa・s以上がさらに好ましい。これらの観点を総合すると、液体現像剤の25℃における粘度は、5〜200mPa・sが好ましく、10〜100mPa・sがより好ましく、20〜70mPa・sがさらに好ましい。なお、液体現像剤の粘度は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0096】
液体現像剤中のトナー粒子の濃度は、液体現像剤の消費量を低減する観点から、5重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましい。また、液体現像剤の粘度を低減する観点から、40重量%以下が好ましく、35重量%以下がより好ましい。これらの観点を総合すると、液体現像剤中のトナー粒子の濃度は、5〜40重量%が好ましく、10〜35重量%がより好ましい。なお、液体現像剤のトナー粒子の濃度は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【実施例】
【0097】
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター(島津製作所製、CFT-500D)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
【0098】
〔樹脂のガラス転移点〕
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製、DSC210)を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/分で昇温し、吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度とする。
【0099】
〔樹脂の酸価〕
JIS K0070の方法により測定する。但し、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更した。
【0100】
〔水系樹脂分散液中の樹脂及び水系トナー粒子分散液中のトナー粒子の体積中位粒径(D50)〕
レーザー回折/散乱式粒径測定装置(堀場製作所製、LA-920)を用いて、測定用セルに蒸留水を加え、透過率が50〜95%になる濃度で、体積中位粒径(D50)を測定した。
【0101】
〔顔料の平均一次粒子径〕
走査型電子顕微鏡(日立社製、S-4000)を用い、加速電圧10kV、倍率30000倍で観察を行い、顔料粒子100個の長径を測定し、それらの平均値を顔料の平均一次粒子径とした。
【0102】
〔顔料の平均二次粒子径〕
顔料を蒸留水で希釈し、超音波洗浄装置(共和医理科社製、KS-140)にて1分間分散させた。分散液をレーザー回折/散乱式粒径測定装置(堀場製作所製、LA-920)を用いて、測定用セルに蒸留水を加え、透過率が50〜95%になる濃度で、体積中位粒径(D50)を測定し、顔料の平均二次粒子径とした。
【0103】
〔工程1により得られる顔料と樹脂の混合物、工程2により得られる水系トナー粒子分散液、絶縁性液体及び液体現像剤の粘度〕
回転振動式粘度計(CBC社製、ビスコメイトVM-10A-L)を用いて、25℃にて粘度を測定した。
【0104】
〔液体現像剤中のトナー粒子の濃度〕
液体現像剤10重量部をヘキサン90重量部で希釈し、遠心分離装置(コクサン社製、H-201F)を用いて、回転数3000r/minにて、20分間回転させた。上澄み液をデカンテーションにて除去した後、90重量部のヘキサンで希釈し、同様の条件で再び遠心分離を行った。上澄み液をデカンテーションにて除去した後、真空乾燥機にて0.5kPa、40℃にて3時間乾燥させ、乾燥後の重量÷液体現像剤の重量をトナー粒子の濃度とした。
【0105】
〔液体現像剤中のトナー粒子の体積中位粒径(D50)〕
レーザー回折/散乱式粒径測定装置(マルバーン社製、マスターサイザー2000)を用いて、測定用セルにコスモホワイトP70(コスモ石油ルブリカンツ社製)を加え、散乱強度が5〜20%になる濃度で、粒子屈折率1.58(虚数部0.1)、分散媒屈折率1.46の条件にて、体積中位粒径(D50)を測定する。
【0106】
樹脂製造例1
表1に示す、無水トリメリット酸以外の原料モノマーと、エステル化触媒(酸化ジブチル錫)50.0g、助触媒(没食子酸)3.0gを、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、230℃に昇温して反応率が90%に達するまで反応させ、さらに8.3kPaにて1時間反応を行った。その後、無水トリメリット酸を投入し、1時間常圧で反応させた後、8.3kPaにて反応を行い、軟化点が144℃に達した時点で反応を終了し、表1に示す物性を有するポリエステル1を得た。
【0107】
樹脂製造例2
表1に示す原料モノマーと、エステル化触媒(酸化ジブチル錫)50.0g及び助触媒(没食子酸)3.0gを、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、230℃に昇温して反応を行い、軟化点が100℃に達した時点で反応を終了し、表1に示す物性を有するポリエステル2を得た。
【0108】
樹脂製造例3
表1に示す、フマル酸以外の原料モノマーと、エステル化触媒(酸化ジブチル錫)50.0g及び助触媒(没食子酸)3.0gを、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、230℃に昇温して反応率が90%に達するまで反応させ、さらに8.3kPaにて1時間反応を行った。180℃まで冷却した後、フマル酸を投入し、180℃にて反応させ、軟化点が85℃に達した時点で反応を終了し、表1に示す物性を有するポリエステル3を得た。
【0109】
【表1】

【0110】
実施例1〜3
[工程1]
攪拌器を装備した三つ口フラスコに、表2に示す所定量のポリエステルとメチルエチルケトンを入れ、25℃でメチルエチルケトンにポリエステルを溶解させた。次いで、所定量の25重量%アンモニア水を添加して撹拌した後、攪拌下で所定量の脱イオン水を滴下し、表2に示す物性を有する水系樹脂分散液1〜3をそれぞれ得た。
【0111】
【表2】

【0112】
次に、表3に示す所定量の水系樹脂分散液と顔料「クロモファインブルー6337JC」(フタロシアニンブルー15:3、大日精化社製)(平均一次粒子径:0.04μm、平均二次粒子径:9.6μm)を3リットル容のポリエチレン製容器に入れ、「T.K.ロボミックス」(プライミックス社製)を用いて、氷冷下、回転数8000r/minにて2時間攪拌を行い、表3に示す物性を有する顔料と樹脂の混合物を得た。
【0113】
【表3】

【0114】
[工程2]
工程1で得られた混合物を高圧湿式微粒化機「マイクロフルイダイザーM-140K」(マイクロフルイディックス社製)により、150MPaにて15パス処理を行った。次に、処理物を2リットル容のナスフラスコに入れ、「ロータリーエバポレーターN-1000」(東京理化器械社製)を用いて、40℃、40kPaで減圧蒸留を行い、メチルエチルケトンを除去し、水系トナー粒子分散液を得た。得られた水系トナー粒子分散液の粘度及びトナー粒子の体積中位粒径(D50)を表4に示す。
【0115】
【表4】

【0116】
[工程3]
次に、表5に示す所定量の水系トナー粒子分散液と水系分散剤「DISPERBYK-191」(ビックケミー社製、有効分98%)を500ミリリットル容のポリエチレン製容器に入れ、「T.K.ロボミックス」(プライミックス社製)を用いて、20℃、回転数1400r/minにて、10分間攪拌を行った。さらに20℃、回転数5000r/minにて攪拌下で、予め表5に示す所定量の油中分散剤「ソルスパース13940」(日本ルーブリゾール社製、有効分40%)と絶縁性液体「コスモホワイトP-70」(コスモ石油ルブリカンツ社製、25℃における粘度:15mPa・s)を混合した混合液を滴下後、氷冷下、回転数8000r/minにて、6時間攪拌を行い、混合液を得た。
【0117】
【表5】

【0118】
次に、得られた混合液を1リットル容のナスフラスコに入れ、「ロータリーエバポレーターN-1000」(東京理化器械社製)を用いて、55℃、10kPaで減圧蒸留を行い、水を除去し、表6に示す物性を有する液体現像剤を得た。
【0119】
比較例1
実施例1で調製した樹脂分散液1100重量部と顔料「クロモファインブルー6337JC」(フタロシアニンブルー15:3、大日精化社製)12重量部を3リットル容のポリエチレン製容器に入れ、「T.K.ロボミックス」(プライミックス社製)で氷冷下、回転数8000r/minで2時間攪拌を行い、顔料と樹脂の混合物を得た。
【0120】
次に、得られた顔料と樹脂の混合物を1リットル容のポリエチレン製容器に入れ、直径1mmのジルコニアビーズを用いて、体積充填率30%でペイントシェーカー(浅田鉄工社製)にて5時間分散した。ビーズをろ過により除去した後、ろ液を1リットル容のナスフラスコに入れ、「ロータリーエバポレーターN-1000」(東京理化器械社製)を用いて、40℃、40kPaで減圧蒸留を行い、メチルエチルケトンを除去し、水系トナー粒子分散液を得た。
【0121】
次に、実施例1と同様の工程3をおこなったが、油中分散剤と絶縁性液体の混合液を滴下したところ、水系トナー粒子分散液との混合液が固化してしまい、液体現像剤は得られなかった。
【0122】
比較例2
前記樹脂分散液2を100重量部に「クロモファインブルー6337JC」(フタロシアニンブルー15:3、大日精化社製)12重量部を1リットル容のポリエチレン製容器に入れ、「T.K.ロボミックス」(プライミックス社製)で氷冷下、回転数8000r/minで5時間攪拌を行い、顔料と樹脂の混合物を得た。
【0123】
次に、得られた混合物を1リットル容のナスフラスコに入れ、「ロータリーエバポレーターN-1000」(東京理化器械社製)を用いて、40℃、40kPaで減圧蒸留を行い、メチルエチルケトンを除去し、水系懸濁液を得た。
【0124】
次に、この水系懸濁液を用いて、実施例1と同様の工程3を行い、表6に示す物性を有する液体現像剤を得た。
【0125】
比較例3
前記ポリエステル1を100重量部に、「クロモファインブルー6337JC」(フタロシアニンブルー15:3、大日精化社製)15重量部加え、予めヘンシェルミキサーを用いて混合後、以下に示す条件で溶融混練した。
【0126】
〔溶融混練条件〕
オープンロール型混練機「ニーデックス」(三井鉱山社製、ロール外径:14cm、有効ロール長:80cm)を使用した。連続式二本ロール型混練機の運転条件は、高回転側ロール(フロントロール)周速度75r/min(周速度:32.97m/min)、低回転側ロール(バックロール)周速度50r/min(周速度:21.98m/min)、混練物供給口側端部のロール間隙0.1mmであった。ロール内の加熱媒体温度及び冷却媒体温度は、高回転側ロールの原料投入側が120℃及び混練物排出側が120℃であり、低回転側ロールの原料投入側が35℃及び混練物排出側が35℃であった。また、原料混合物の上記混練機への供給速度は10kg/時間、上記混練機中の平均滞留時間は約10分間であった。
【0127】
上記で得られた混練物を冷却ロールで圧延し、冷却した後、ハンマーミルを用いて1mm程度に粗粉砕した。得られた粗粉砕物をエアージェット方式の粉砕機により微粉砕後、分級し、体積中位粒径(D50)が10μmのトナー粒子を得た。
【0128】
得られたトナー粒子100重量部にコスモホワイトP-70(コスモ石油ルブリカンツ社製、25℃における粘度:15mPa・s)365重量部、及び「ソルスパース13940」(日本ルーブリゾール社製、有効分40%)38重量部を添加し、「T.K.ロボミックス」(プライミックス社製)で20℃、回転数8000r/minで1時間攪拌を行い、トナー分散液を得た。
【0129】
得られたトナー分散液を高圧湿式微粒化機「マイクロフルイダイザーM-140K」(マイクロフルイディックス社製)により、75MPaにて15パス処理を行い、表6に示す物性を有する液体現像剤を得た。
【0130】
比較例4
高圧湿式微粒化機「マイクロフルイダイザーM-140K」(マイクロフルイディックス社製)により、150MPaにて15パス処理を行った以外は、比較例3と同様に行い、表6に示す物性を有する液体現像剤を得た。
【0131】
【表6】

【0132】
表6から明らかなように、実施例1〜3の液体現像剤は、比較例1〜4と対比して、トナー粒子の粒子径が小さく、かつ、液体現像剤の粘度が低いことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明の方法により得られる液体現像剤は、電子写真方式の複写機、プリンター等の画像形成装置に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工程1:水系分散媒に樹脂を分散させた樹脂分散液と顔料を混合し、顔料と樹脂の混合物を得る工程、
工程2:工程1で得られた顔料と樹脂の混合物を高圧湿式微粒化機により50〜300MPaで分散し、水系トナー粒子分散液を得る工程、及び
工程3:工程2で得られた水系トナー粒子分散液と絶縁性液体を混合し、水系分散媒を除去する工程
を含む、トナー粒子が絶縁性液体中に分散してなる液体現像剤の製造方法。
【請求項2】
工程3の前に、工程2で得られた水系トナー粒子分散液に水系分散剤を添加する工程を含む、請求項1記載の液体現像剤の製造方法。
【請求項3】
工程3において、さらに油中分散剤を添加する工程を含む、請求項1又は2記載の液体現像剤の製造方法。
【請求項4】
液体現像剤中のトナー粒子の平均粒子径が0.05〜1.5μmである請求項1〜3いずれか記載の液体現像剤の製造方法。
【請求項5】
液体現像剤の25℃における粘度が5〜200mPa・sである請求項1〜4いずれか記載の液体現像剤の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか記載の製造方法により得られる液体現像剤。

【公開番号】特開2012−2930(P2012−2930A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136234(P2010−136234)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】