説明

液体現像剤処理液、液体現像用の材料、画像形成装置及び処理液カートリッジ

【課題】記録媒体上に画像を形成した際の画像の裏抜けを抑制する。
【解決手段】溶媒中に、置換基を有していてもよい炭素数12以上18以下の脂肪族炭化水素基を有する脂肪酸、置換基を有していてもよい炭素数12以上18以下の脂肪族炭化水素基を有するアルキルアルコール、金属石鹸およびこれらの誘導体から選択される少なくとも1種であり、且つ融点が60℃以上120℃以下であるゲル化剤を含有する液体現像剤処理液、並びに、液体現像剤と前記液体現像剤処理液とを用いて画像を形成する画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体現像剤処理液、液体現像用の材料、画像形成装置及び処理液カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
液体現像剤はオイル等のキャリア溶媒中にトナー粒子が分散している現像剤であって、キャリア溶媒として高絶縁性のオイル、例えばパラフィンオイル等が用いられている。オイルはトナー粒子と共に記録媒体上に移動し、加熱定着された後もその記録媒体上に残留する。
【0003】
液体現像剤の余剰キャリア溶媒の処理方法として、吸油性ポリマーを転写像に接触させキャリア溶媒を除去する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、液体現像剤の余剰キャリア溶媒をゲル化剤によって処理し、且つそのゲル化剤を用いる場所がキャリアタンク中である方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
更に、液体現像剤のキャリア溶媒の固化のため、液体現像剤のキャリア溶媒が紫外線硬化物質の添加型であって、紫外線を付与して硬化する方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
また、液体現像剤のキャリア溶媒の固化のため、液体現像剤のキャリア溶媒が不飽和グリセリドであって、酸化防止剤を定着の際に破壊して酸化重合で硬化する方法が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
また、液体現像剤のキャリア溶媒の固化のため、液体現像剤のキャリア溶媒が不飽和グリセリドであって、酸化防止剤を定着の際に付与して酸化重合で硬化する方法が開示されている(例えば、特許文献5参照)。
また、可視像を形成した記録媒体を、表面が吸油性を有する薄膜を介して加熱体に接触させ定着する方法が開示されている(例えば、特許文献6参照)。
【0005】
また、画像が形成された被印刷面に水性オーバーコートワニスからなる光透過性の保護剤を塗布する方法が開示されている(例えば、特許文献7参照)。
更に、出力した画像面に、ビニル系化合物をグラフトまたはブロックしたオルガノポリシロキサン共重合体を主成分とする溶液を塗布、乾燥して画像面上を被覆する方法が開示されている(例えば、特許文献8参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平06−214432号公報
【特許文献2】特開平10−293472号公報
【特許文献3】特開2005−352363号公報
【特許文献4】特開2006−276504号公報
【特許文献5】特開2006−276787号公報
【特許文献6】特開平06−317999号公報
【特許文献7】特開平08−020171号公報
【特許文献8】特開平10−207130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、融点が60℃以上120以下である特定のゲル化剤を含有しない場合に比べ、記録媒体上に画像を形成した際の画像の裏抜けを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
溶媒中に、置換基を有していてもよい炭素数12以上18以下の脂肪族炭化水素基を有する脂肪酸、置換基を有していてもよい炭素数12以上18以下の脂肪族炭化水素基を有するアルキルアルコール、金属石鹸およびこれらの誘導体から選択される少なくとも1種であり、且つ融点が60℃以上120℃以下であるゲル化剤を含有する液体現像剤処理液である。
【0009】
請求項2に係る発明は、
前記ゲル化剤が12−ヒドロキシステアリン酸である請求項1に記載の液体現像剤処理液である。
【0010】
請求項3に係る発明は、
前記溶媒中に、更に硬化性樹脂を含有する請求項1または請求項2に記載の液体現像剤処理液である。
【0011】
請求項4に係る発明は、
着色剤を含有するトナーおよびキャリア溶媒を含む液体現像剤と、
該液体現像剤に付与された際に前記キャリア溶媒を含んでゲル化するゲル化剤を含有した前記請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の液体現像剤処理液と、
を有する液体現像用の材料である。
【0012】
請求項5に係る発明は、
前記ゲル化剤は、前記キャリア溶媒と接触した後、加熱され更に冷却されることによって前記キャリア溶媒を含んだゲルとなるゲル化剤である請求項4に記載の液体現像用の材料である。
【0013】
請求項6に係る発明は、
前記ゲル化剤は、前記キャリア溶媒を含んだゲルとなった際に白色である請求項4または請求項5に記載の液体現像用の材料である。
【0014】
請求項7に係る発明は、
前記液体現像剤が、更に硬化し得る成分を含有する請求項4乃至請求項6のいずれか1項に記載の液体現像用の材料である。
【0015】
請求項8に係る発明は、
前記硬化し得る成分が、不飽和脂肪酸エステルである請求項7に記載の液体現像用の材料である。
【0016】
請求項9に係る発明は、
潜像保持体と、
前記潜像保持体を帯電させる帯電装置と、
帯電した前記潜像保持体に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、
前記潜像保持体に形成された静電潜像を前記請求項4乃至請求項8の何れか1項に記載の液体現像用の材料における前記液体現像剤中のトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、
記録媒体上に前記請求項4乃至請求項8の何れか1項に記載の液体現像用の材料における前記液体現像剤処理液を付与する処理液付与装置と、
前記トナー像を前記記録媒体の前記液体現像剤処理液が付与された面に転写する転写装置と、
記録媒体上に転写された前記トナー像を加熱して定着する定着装置と、
を備える画像形成装置である。
【0017】
請求項10に係る発明は、
潜像保持体と、
前記潜像保持体を帯電させる帯電装置と、
帯電した前記潜像保持体に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、
前記潜像保持体に形成された静電潜像を前記請求項4乃至請求項8の何れか1項に記載の液体現像用の材料における前記液体現像剤中のトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記トナー像を前記記録媒体に転写する転写装置と、
前記記録媒体の前記トナー像が転写された面上に前記請求項4乃至請求項8の何れか1項に記載の液体現像用の材料における前記液体現像剤処理液を付与する処理液付与装置と、
記録媒体上に転写された前記トナー像を加熱して定着する定着装置と、
を備える画像形成装置である。
【0018】
請求項11に係る発明は、
画像形成装置に対して着脱自在であり、且つ請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の液体現像剤処理液を収容する処理液カートリッジである。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る発明によれば、融点が60℃以上120以下である特定のゲル化剤を含有しない場合に比べ、記録媒体上に画像を形成した際の画像の裏抜けが抑制される。
【0020】
請求項2に係る発明によれば、ゲル化剤が12−ヒドロキシステアリン酸でない場合に比べ、記録媒体上に画像を形成した際の画像の裏抜けが抑制される。
【0021】
請求項3に係る発明によれば、溶媒中に硬化性樹脂を含有しない場合に比べ、強度に優れた画像が形成される。
【0022】
請求項4に係る発明によれば、融点が60℃以上120以下である特定のゲル化剤を含有しない場合に比べ、記録媒体上に画像を形成した際の画像の裏抜けが抑制される。
【0023】
請求項5に係る発明によれば、ゲル化剤がキャリア溶媒と接触した後加熱され更に冷却されることによってキャリア溶媒を含んだゲルとなるものでない場合に比べ、記録媒体上に画像を形成した際の画像の裏抜けが抑制される。
【0024】
請求項6に係る発明によれば、ゲル化剤がキャリア溶媒を含んだゲルとなった際に白色でない場合に比べ、記録媒体上に画像を形成した際の該画像における光の透過が抑制される。
【0025】
請求項7に係る発明によれば、液体現像剤に硬化し得る成分を含有しない場合に比べ、強度に優れた画像が形成される。
【0026】
請求項8に係る発明によれば、硬化し得る成分が不飽和脂肪酸エステルでない場合に比べ、強度に優れた画像が形成される。
【0027】
請求項9に係る発明によれば、融点が60℃以上120以下である特定のゲル化剤を含有しない場合に比べ、記録媒体上に形成した画像の裏抜けが抑制される。
【0028】
請求項10に係る発明によれば、融点が60℃以上120以下である特定のゲル化剤を含有しない場合に比べ、記録媒体上に形成した画像の裏抜けが抑制される。
【0029】
請求項11に係る発明によれば、融点が60℃以上120以下である特定のゲル化剤を含有しない場合に比べ、記録媒体上に画像を形成した際の画像の裏抜けが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本実施形態に係る画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
【0032】
<液体現像剤処理液および液体現像用の材料>
本実施形態に係る液体現像剤処理液(以下単に「処理液」とも称す)は、溶媒中に、置換基を有していてもよい炭素数12以上18以下の脂肪族炭化水素基を有する脂肪酸、置換基を有していてもよい炭素数12以上18以下の脂肪族炭化水素基を有するアルキルアルコール、金属石鹸およびこれらの誘導体から選択される少なくとも1種であり、且つ融点が60℃以上120℃以下であるゲル化剤を含有する。
また、本実施形態に係る液体現像用の材料は、着色剤を含有するトナーおよびキャリア溶媒を含む液体現像剤と、該液体現像剤に付与された際に前記キャリア溶媒を含んでゲル化するゲル化剤を含有した前記本実施形態に係る液体現像剤処理液と、を有する。
【0033】
液体現像剤を用いた電子写真方式の画像形成においては、液体現像剤中のキャリア溶媒は記録媒体(用紙)内に染み込むことから、記録媒体内の空隙率を減少させたり、屈折率を低下させ、印刷物において裏抜けが生じることがあった。
これに対し、本実施形態に係る液体現像剤処理液を用いることにより、記録媒体上に画像を形成した際の画像の裏抜けが抑制される。このメカニズムは必ずしも明確ではないが、処理液中のゲル化剤により液体現像剤中のキャリア溶媒がゲル化され、記録媒体内への該キャリア溶媒のしみ込みが抑制され、その結果、記録媒体内の空隙率の減少、屈折率の低下が抑制されて、画像の裏抜けが抑制されるものと推察される。
【0034】
なお本実施形態に係る処理液は、液体現像剤を用いた電子写真方式の画像形成において、記録媒体上における余剰のキャリア溶媒を処理するものであり、含有されるゲル化剤によって前記余剰のキャリア溶媒をゲル化させるものである。
上記処理液は、液体現像剤とは別に、該液体現像剤に対して供給されるものである。液体現像剤に対する処理液の付与は、記録媒体に液体現像剤中の余剰のキャリア溶媒が浸透する前に、該キャリア溶媒に前記ゲル化剤を作用させられる方法であれば特に限定されず、例えば、記録媒体上に転写されたトナー像に前記処理液を付与する方法や、あらかじめ記録媒体に前記処理液を付与した後トナー像を転写する方法等が挙げられる。
【0035】
・融点
本実施形態に係る処理液における前記ゲル化剤は、融点が60℃以上120℃以下であり、前記液体現像剤に付与された際に加熱されて溶解し、更に冷却されて前記キャリア溶媒を含んだゲルとなる。融点が60℃未満であると作成された画像の維持性が悪化する。一方、融点が120℃を超えると加熱エネルギーが大きくなり過ぎ、溶融させることが難しくなってゲルの形成が難しくなる。
【0036】
前記ゲル化剤の融点は、測定装置として示差走査熱量分析装置DSC−60(島津製作所社製)を用い、吸熱ピークから測定される。
尚、測定条件としては、試料2mgをクリンプセルにクリンプし、窒素雰囲気で10℃から200℃までの温度範囲を昇温度速度10℃/分で昇温した。
【0037】
・白色化
また本実施形態に係る処理液における前記ゲル化剤は、前記キャリア溶媒を含んだゲルとなった際に白色であることが望ましい。
キャリア溶媒が含まれる液体現像剤を用いた電子写真方式の画像形成においては、該キャリア溶媒が記録媒体内へ浸透することによって、該記録媒体の反射率が低下することがあった。これに対し、前記キャリア溶媒を含んでゲル化した前記ゲル化剤が白色であることにより、反射率が向上され、透明化や画像の裏抜けが抑制される。
尚、ゲル化した後のゲル化剤が白色となるメカニズムは定かではないが、ゲル内でゲル化剤が結晶化し界面が生成されたり、または可視光を反射する大きなゲル化構造によって界面が生成され、白色化されるものと推察される。
【0038】
ついで、本実施形態に係る液体現像剤処理液、および液体現像用の材料における液体現像剤の構成について説明する。
【0039】
(液体現像剤処理液)
・ゲル化剤
本実施形態においてゲル化剤としては、前述の通り置換基を有していてもよい炭素数12以上18以下の脂肪族炭化水素基を有する脂肪酸(下記一般式(1)に示される脂肪酸)、置換基を有していてもよい炭素数12以上18以下の脂肪族炭化水素基を有するアルキルアルコール(下記一般式(2)に示されるアルキルアルコール)、金属石鹸およびこれらの誘導体から選択される少なくとも1種が用いられる。
一般式(1) R−COOH
一般式(2) R−OH
〔上記一般式(1)および(2)において、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数12以上18以下の脂肪族炭化水素基を表す。該脂肪族炭化水素基は直鎖上、分枝鎖状、環状の何れであってもよく、また置換気を有していてもよい。〕
【0040】
尚、上記金属石鹸としては、例えば上記一般式(1)で示される脂肪酸の金属塩が挙げられる。
【0041】
上記に列挙したゲル化剤は、加熱によってキャリア溶媒を含んで溶解した後、冷却されてキャリア溶媒を含んだ状態でゲル化剤同士がネットワークを形成し、キャリア溶媒を非流動化させるものである。
さらに、これらのゲル化剤は、その構造中に炭化水素部を有することから、その化合物単体の結晶性が高く、さらに凝集力も高いため、ゲル化する際に凝集にムラがあり、その結果空隙が生じた構造になるため、界面が生じて白色化するものと推察される。
【0042】
炭化水素部(即ち一般式(1)におけるR、一般式(2)におけるR)の構造としては直鎖飽和炭化水素の構造が、結晶性がより高くなるため望ましい。
尚、上記脂肪族炭化水素基に置換する置換基としては、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基、スルホン基、アルキルエステル基、アルキルエーテル基等が挙げられる。
【0043】
上記ゲル化剤の中でも、12−ヒドロキシステアリン酸を用いることが特に望ましい。12−ヒドロキシステアリン酸はその構造中に長い炭化水素鎖と、ネットワークを形成しやすい水酸基とカルボキシル基の両方を有することから望ましい。
【0044】
・溶媒
本実施形態に係る現像剤処理液における溶媒は、ゲル化剤の処理を容易に行うために用いられる。処理液における溶媒は何れの溶媒でもかまわないが、後述の液体現像剤におけるキャリア溶媒と混合相溶し得る溶媒であることがより望ましい。
上記溶媒としては、例えば、炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、アルコール系溶媒、アミン系溶媒等が挙げられる。
【0045】
尚、キャリア溶媒と混合相溶しない溶媒を用いてもよく、その場合には液体現像剤と接する前に該溶媒を蒸発等で除去することが望ましい。
【0046】
また、上記溶媒の粘度としては25℃で0.5mPas以上100mPas以下が望ましい。
尚、上記溶媒の粘度は、以下の装置を用い且つ以下の測定条件により測定される。
測定装置:E型粘度計TVE−33LT(東機産業社製)
測定条件:恒温相で温度を25℃として、コーンプレートを用い回転速度100rpmで測定を行った。
【0047】
本実施形態に係る処理液中における前記ゲル化剤の濃度は、0.1質量%以上20質量%以下の範囲が望ましい。
尚、ゲル化剤は溶媒中に分散される。ゲル化剤が粒子として分散されている態様であっても、また半溶解状態のエマルジョンとして分散されている態様であってもよい。粒子として分散されている場合、粒子径は0.01μm以上100μm以下であることが望ましい。
【0048】
・硬化性樹脂
本実施形態に係る処理液には、更に硬化性樹脂を含有してもよい。硬化性樹脂を含有することにより、画像を定着する際または画像を定着した後に該硬化性樹脂を硬化させることによって画像がより強固に定着される。
該硬化性樹脂としては、例えば、熱硬化性の反応性モノマー、光硬化性の反応性モノマー等が挙げられる。
【0049】
より具体的に上記硬化性樹脂の例としては、ウレタンアクリレート(光硬化性)、エポキシアクリレート(光硬化性)、ポリエステルアクリレート(光硬化性)、またはポリオールアクリレート(光硬化性)等が挙げられる。中でも、ウレタンアクリレート、またはポリオールアクリレートが望ましい。
【0050】
尚、熱硬化性の反応性モノマーを含有する場合には、加熱定着の際の加熱によって該反応性モノマーを硬化することが望ましい。また、光硬化性の反応性モノマーを含有する場合には、加熱によって画像を定着した後に更に光を照射することで該反応性モノマーを硬化することが望ましい。
【0051】
(液体現像剤処理液の処理方法)
前述の通り、上記処理液は液体現像剤とは別に、該液体現像剤に対して供給されるものである。液体現像剤に対する処理液の付与は、記録媒体に液体現像剤中の余剰のキャリア溶媒が浸透する前に、該キャリア溶媒に前記ゲル化剤を作用させられる方法であれば特に限定されず、例えば、(1)記録媒体上に転写されたトナー像に前記処理液を付与する方法、(2)あらかじめ記録媒体に前記処理液を付与した後トナー像を転写する方法等が挙げられる。
【0052】
尚、本実施形態の処理液は加熱によってゲル化剤を溶融させ、その後冷却してキャリア溶媒を含んだゲルとするものである。したがって、処理液を付与する態様としては、上記(2)の態様か、または上記(1)であって加熱定着装置によってトナー像を加熱する前に該トナー像に処理液を付与する態様が望ましい。上記態様により、トナー像を定着する際の加熱によってゲル化剤も溶融され、上記の通りゲル化する。
【0053】
処理液を液体現像剤に付与する際には、付与されるゲル化剤の量を制御することが望ましく、処理液自体の付与量や処理液におけるゲル化剤の濃度によって調整される。液体現像剤に付与されるゲル化剤の量としては、記録媒体に対して1μg/m以上1g/m以下の範囲である。
【0054】
また、処理液を液体現像剤に付与する方法としては、処理液をローラー等で塗布する方法や、液体現像剤を像保持体に付与する方法に適用される方法等が挙げられる。
【0055】
尚、処理液を液体現像剤に付与した後の加熱は、より望ましくは前述の通り、加熱定着装置による加熱にて行うことが望ましい。但し、該加熱定着装置以外に、処理液中のゲル化剤を加熱するための加熱装置を別途設けても構わない。
【0056】
(液体現像剤)
ついで、本実施形態に係る液体現像用の材料に含まれる液体現像剤について説明する。
本実施形態における液体現像剤は、例えば着色剤および結着樹脂等を含有するトナー粒子と、前記トナー粒子を分散させるためのキャリア溶媒とを含む。
【0057】
・トナー粒子
トナー粒子は、例えば着色剤や結着樹脂等を含有し、更に離型剤や帯電制御剤等を含有してもよい。
【0058】
トナー粒子に含まれる結着樹脂としては、公知の結着樹脂が挙げられる。
例えば、ポリエステル、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレンーメタクリル酸アルキル共重合体、スチレンーアクリロニトリル共重合体、スチレンーブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。さらに、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、パラフィンワックス等が挙げられる。
中でもポリエステルが望ましい。
【0059】
また、トナー粒子に含まれる着色剤としては、公知の着色剤が挙げられる。
例えば、着色剤としてマグネタイト、フェライト等の磁性粉、カーボンブラック、アニリンブルー、カルイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等が挙げられる
【0060】
トナー粒子は離型剤を含有してもよい。
ただし、本実施形態における液体現像剤に含有し得る離型剤は、動物、植物、鉱物、または合成原料、及びそれらの混合物であり、70℃で固体状のものである。
【0061】
例えば、蜜ろう、ラノリンワックス、白ろう、米ワックス(rice wax)、カルナウバ(carnauba)ろう、カンデリラ(candelilla)ワックス、アワリカレー(ouricurry)ワックス、アルファアルファワックス、コルク繊維ワックス、さとうきびワックス、木ろう、スマック(sumac)ワックス、モンタン(montan)ワックス、ミクロ結晶状(microcrystalline)ワックス、パラフィン、臭ろう(ozokerite)、ポリエチレンワックス、フィッシャー・トロプッシュ(Fisher−Tropsch)合成で得られるワックス、ワックス状共重合体とそれらのエステル類などの炭化水素化されたワックス等が挙げられる。
【0062】
さらに、トナー粒子には、アゾ系金属錯化合物、サリチル酸の金属錯化合物、極性基を含有するレジンタイプの帯電制御剤等の公知の帯電制御剤を添加してもよい。
【0063】
トナー粒子の体積平均粒径D50vは、0.5μm以上3.0μm以下であることが望ましく、0.6μm以上2.5μm以下であることがより望ましく、0.8μm以上2.0μm以下であることが更に望ましい。
尚、トナー粒子の体積平均粒径D50v、数平均粒度分布指標(GSDp)、体積平均粒度分布指標(GSDv)等は、動的光散乱方式粒度分布測定機LB−500(堀場製作所社製)で測定される。粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャネル)に対して体積、数をそれぞれ小径側から累積分布を描き、累積16%となる粒子径を体積D16v、数D16p、累積50%となる粒子径を体積D50v、数D50p、累積84%となる粒子径を体積D84v、数D84pと定義する。これらを用いて、体積平均粒度分布指標(GSDv)は(D84v/D16v)1/2、数平均粒度分布指標(GSDp)は(D84p/D16p)1/2として算出される。
【0064】
トナー粒子の製造方法としては、例えば、結着樹脂、着色剤、離型剤、帯電制御剤等の組成物を混練、粉砕、分級する混練粉砕法、混練粉砕法にて得られた粒子を機械的衝撃力または熱エネルギーにて形状を変化させる方法がある。粉砕方法は湿式および乾式のいずれでもかまわない。また、結着樹脂、着色剤を水系分散媒中に分散する分散工程、分散した結着樹脂の粒子および着色剤の粒子を金属イオンによって凝集させる凝集工程、次いで結着樹脂の粒子のみを追加して凝集させる追加凝集工程、および凝集粒子を熱融着する熱融着工程を経て製造する方法であってもよい。
【0065】
・キャリア溶媒
キャリア溶媒は、トナー粒子を分散させるための絶縁性の液体であり、例えば、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロテトラシロキサン等のシリコーン系溶媒、エクソン社製アイソパーH、アイソパーM、アイソパーL(商品名)、モレスコ社製モレスコホワイトP−40、P−55、P−70、P−80(商品名)等のパラフィン系溶媒、亜麻仁油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、パーム油、オリーブ油、ホホバ油等の植物油、ガソリン等の鉱物油等が用いられる。
キャリア溶媒は、上記成分のうち、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。キャリア溶媒を2種以上の混合系として用いる場合、例えば、パラフィン系溶媒と植物油との混合系や、シリコーン系溶媒と植物油との混合系が例示される。
【0066】
キャリア溶媒を1種単独で用いる場合は、パラフィン系溶媒を用いることが望ましい。
キャリア溶媒を2種以上の混合で用いる場合は、パラフィン系溶媒と、植物油との混合系であることが望ましい。
【0067】
キャリア溶媒は、各種副資材、例えば、分散剤、乳化剤、界面活性剤、安定化剤、湿潤剤、増粘剤、起泡剤、消泡剤、凝固剤、沈降防止剤、帯電制御剤、帯電防止剤、老化防止剤、軟化剤、可塑剤、充填剤、付香剤、粘着防止剤、離型剤等を含んでいてもよい。
【0068】
液体現像剤は、既述のトナー粒子とキャリア溶媒とを、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル等の分散機を用いて混合し、トナー粒子をキャリア溶媒中に分散することにより得られる。
なお、トナー粒子のキャリア溶媒中への分散は分散機に限られず、ミキサーのごとく、特殊な攪拌羽根を高速で回転させ分散してもよいし、ホモジナイザーとして知られるローター・ステーターの剪断力で分散してもよいし、超音波によって分散してもよい。
このとき、キャリア溶媒中のトナー粒子の濃度は、0.5質量%以上50質量%以下の範囲とすることが望ましく、1質量%以上35質量%以下の範囲とすることがより好適である。
【0069】
その後、得られた分散液を、例えば孔径100μmの膜フィルターを用いて濾過し、ゴミおよび粗大粒子を除去してもよい。
【0070】
・硬化し得る成分
また、本実施形態における液体現像剤には、更に硬化し得る成分を含有してもよい。硬化し得る成分を含有することにより、画像を定着する際または画像を定着した後に該硬化し得る成分を硬化させることによって画像がより強固に定着される。
該硬化し得る成分としては、熱硬化性の成分や光硬化性の成分が挙げられ、例えば、不飽和脂肪酸エステル(熱硬化性)アルキド樹脂(熱硬化性)、不飽和ポリエステル(熱硬化性)、ウレタンアクリレート(光硬化性)、エポキシアクリレート(光硬化性)、ポリエステルアクリレート(光硬化性)、ポリオールアクリレート(光硬化性)等が挙げられ、中でも不飽和脂肪酸エステルが望ましい。
【0071】
尚、熱硬化性の硬化し得る成分を含有する場合には、加熱定着の際の加熱によって該硬化し得る成分を硬化することが望ましい。また、光硬化性の硬化し得る成分を含有する場合には、加熱によって画像を定着した後に更に光を照射することで該硬化し得る成分を硬化することが望ましい。
【0072】
<画像形成装置>
本実施形態における第1の態様に係る画像形成装置は、潜像保持体と、前記潜像保持体を帯電させる帯電装置と、帯電した前記潜像保持体に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、前記潜像保持体に形成された静電潜像を前記本実施形態に係る液体現像用の材料における前記液体現像剤中のトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、記録媒体上に前記本実施形態に係る液体現像用の材料における前記処理液を付与する処理液付与装置と、前記トナー像を前記記録媒体の前記処理液が付与された面に転写する転写装置と、記録媒体上に転写された前記トナー像を加熱して定着する定着装置と、を備える。
【0073】
本実施形態における第2の態様に係る画像形成装置は、潜像保持体と、前記潜像保持体を帯電させる帯電装置と、帯電した前記潜像保持体に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、前記潜像保持体に形成された静電潜像を前記本実施形態に係る液体現像用の材料における前記液体現像剤中のトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、前記トナー像を前記記録媒体に転写する転写装置と、前記記録媒体の前記トナー像が転写された面上に前記本実施形態に係る液体現像用の材料における前記処理液を付与する処理液付与装置と、記録媒体上に転写された前記トナー像を加熱して定着する定着装置と、を備える。
以下、本実施形態における第1の態様および第2の態様に係る画像形成装置を、図面を参照しつつ説明する。
【0074】
・第1の態様
図1は、本実施形態の第1の態様にかかる画像形成装置の一例を示す概略構成図である。画像形成装置100は、感光体(潜像保持体)10、帯電装置20、静電潜像形成装置12、現像装置14、中間転写体16、クリーナ18、転写ローラ(転写装置)28、処理液付与装置(液体現像剤処理液付与装置)40、および定着装置44を含んで構成される。感光体10は円柱形状を有し、該感光体10の外周に、帯電装置20、露光装置12、現像装置14、中間転写体16、および、クリーナ18が順次に設けられている。
以下、この画像形成装置100の動作について簡単に説明する。
【0075】
帯電装置20が感光体10の表面を予め定められた電位に帯電させ、帯電された表面を画像信号に基づき、露光装置12が、例えばレーザ光線によって露光して静電潜像を形成する。
現像装置14は、現像ローラ14aと現像剤貯蔵容器14bとを含んで構成される。現像ローラ14aは、現像剤貯蔵容器14bに貯蔵される液体現像剤24に一部が浸るようにして設けられる。
【0076】
液体現像剤24中では、トナー粒子は分散されているが、例えば液体現像剤24を、さらに現像剤貯蔵容器14b内に設けられる攪拌部材によって攪拌してもよい。
【0077】
現像ローラ14aに供給された液体現像剤24は、規制部材によって一定の供給量に制限された状態で感光体10に搬送され、現像ローラ14aと感光体10とが近接(あるいは接触)する位置で静電潜像に供給される。これによって静電潜像は顕像化されてトナー像26となる。
【0078】
現像されたトナー像26は、図の矢印B方向に回転する感光体10に搬送され用紙(記録媒体)30に転写されるが、本実施形態では、用紙30に転写する前に、一旦中間転写体16にトナー像を転写する。このとき、感光体10および中間転写体16間に周速差を設けてもよい。
【0079】
ここで、用紙30にトナー像26が転写される前に、処理液付与装置40によって用紙30の表面に処理液42が付与される。処理液付与装置40は、処理液付与ローラ40aと処理液保持ローラ40bと処理液貯蔵容器40cとを含んで構成される。処理液保持ローラ40bは、処理液貯蔵容器40cに貯蔵される処理液42に一部が浸るようにして設けられ、該処理液保持ローラ40bによって保持された処理液42が処理液付与ローラ40aに付与され、更に処理液付与ローラ40a上の処理液42が用紙30に付与される。
尚、処理液42中ではゲル化剤が分散されているが、例えば処理液42を、さらに処理液貯蔵容器40c内に設けられる攪拌部材によって攪拌してもよい。
【0080】
次いで、中間転写体16により矢印C方向に搬送されたトナー像26は、転写ローラ28との接触位置において、あらかじめ処理液42が付与された用紙30に転写される。転写ローラ28は、中間転写体16とによって用紙30を挟み、中間転写体16上のトナー像を用紙30に密着させる。これによって用紙30にトナー像が転写される。
【0081】
その後、処理液42が付与され且つトナー像26が転写された用紙30は定着装置44に搬送され、転写装置44中の定着ローラに挟み込まれて加圧されると共に加熱され、用紙30上にトナー像が定着され定着画像となる。尚、定着装置44におけるトナー像の定着は、トナー粒子を溶解させると共に処理液42中のゲル化剤を溶融させる温度で加熱が行われる。そのため、定着装置44中の定着ローラには発熱体を設けて加熱することが望ましい。定着の際の温度は、通常70℃以上200℃以下であるが、ゲル化剤をより効率的に溶融させる観点から、90℃以上180℃以下であることが望ましい。
【0082】
用紙30に形成された定着画像が空冷され、ゲル化剤の融点よりも低い温度に冷却されることによって、該ゲル化剤は液体現像剤中に含有されていたキャリア溶媒を含んだ状態でゲル化する。
【0083】
一方、中間転写体16にトナー像26を転写した後の感光体10では、転写残トナー粒子がクリーナ18との接触位置まで運ばれ、クリーナ18によって回収される。なお、転写効率が100%に近く、残留トナーが問題とならない場合は、クリーナ18は設けなくともよい。
画像形成装置は、さらに、転写後かつ次の帯電までに感光体10の表面を除電する除電装置(図示せず)を備えていてもよい。
画像形成装置100に備えられる帯電装置20、露光装置12、現像装置14、中間転写体16、転写ローラ28、および、クリーナ18は、すべて感光体10の回転速度と同期をとって動作されている。
【0084】
・第2の態様
図2は、本実施形態の第2の態様に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。画像形成装置200において、感光体(潜像保持体)10、帯電装置20、静電潜像形成装置12、現像装置14、中間転写体16、クリーナ18、転写ローラ(転写装置)28、および定着装置44は、前記図1に示す第1の態様にかかる画像形成装置100に適用された構成がそのまま用いられる。即ち、第2の態様に係る画像形成装置200は、第1の態様に係る画像形成装置100から処理液付与装置(液体現像剤処理液付与装置)46を配置する位置を変更した態様である。
以下においては上記変更点についてのみ説明し、その他の説明は省略する。
【0085】
前述の第1の態様に係る画像形成装置100において説明した通り、中間転写体16上に転写されたトナー像26は、該中間転写体16により矢印C方向に搬送され、転写ローラ28との接触位置において用紙30に転写される。転写ローラ28は、中間転写体16とによって用紙30を挟み、中間転写体16上のトナー像を用紙30に密着させる。これによって用紙30にトナー像が転写される。
【0086】
その後、用紙30に転写されたトナー像26は、処理液付与装置46における処理液付与ローラ46aと対向する位置に搬送され、処理液付与装置46によって用紙30上のトナー像26に処理液42が付与される。処理液付与装置46は、処理液付与ローラ46aと処理液保持ローラ46bと処理液貯蔵容器46cとを含んで構成される。処理液保持ローラ46bは、処理液貯蔵容器46cに貯蔵される処理液42に一部が浸るようにして設けられ、該処理液保持ローラ46bによって保持された処理液42が処理液付与ローラ46aに付与され、更に処理液付与ローラ46a上の処理液42が用紙30上のトナー像26に付与される。
尚、処理液42中ではゲル化剤が分散されているが、例えば処理液42を、さらに処理液貯蔵容器46c内に設けられる攪拌部材によって攪拌してもよい。
【0087】
その後、トナー像26が転写され且つ処理液42が付与された用紙30は定着装置44に搬送され、転写装置44中の定着ローラに挟み込まれて加圧されると共に加熱され、用紙30上にトナー像が定着され定着画像となる。定着装置44の態様は、前述の第1の態様に係る画像形成装置100において説明した通りである。
【0088】
用紙30に形成された定着画像が空冷され、ゲル化剤の融点よりも低い温度に冷却されることによって、該ゲル化剤は液体現像剤中に含有されていたキャリア溶媒を含んだ状態でゲル化する。
【0089】
尚、第1の態様における処理液貯蔵容器40cおよび第2の態様における処理液貯蔵容器46cに供給される処理液42を補給するため、処理液42を収容する処理液カートリッジが上記画像形成装置100および200に対して着脱自在な構成であってもよい。
【実施例】
【0090】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。なお、文中、「部」および「%」は、特に断りのない限りそれぞれ「質量部」および「質量%」を表す。
【0091】
〔実施例1〕
(液体現像剤処理液1の作製)
ゲル化剤として12−ヒドロキシステアリン酸(和光純薬社製)10部と、溶媒としてアイソパーH(エクソンケミカル社製)90部と、をボールミルを用いて24時間分散混合し、液体現像剤処理液1を作製した。
【0092】
(液体現像剤処理液1の物性)
上記液体現像剤処理液1中におけるゲル化剤粒子の粒度分布を、動的光散乱粒度分布測定器LB−500(堀場製作所製)を用いて測定したところ、中心粒子径は1.2μmであった。
また、液体現像剤処理液1を100℃ホットプレート上で加熱し、その後常温(25℃)に放置して冷却したところ生成したゲルは白濁していた。
更に、示差走査熱量分析装置DSC−60(島津製作所社製)を用いて、吸熱ピークから融点を測定したところ、12−ヒドロキシステアリン酸の融点は72℃であった。
【0093】
〔比較例1〕
(液体現像剤処理液2の作製)
ゲル化剤として低架橋アクリル重合体オレオソーブSL−200(日本触媒社製)10部と、溶媒としてアイソパーH(エクソンケミカル社製)90部と、をボールミルを用いて48時間分散混合し、液体現像剤処理液2を作製した。
【0094】
(液体現像剤処理液2の物性)
上記液体現像剤処理液2中におけるゲル化剤粒子の中心粒子径を実施例1に記載の方法により測定したところ2μmであった。
また、液体現像剤処理液2を100℃ホットプレート上で加熱し、その後常温(25℃)に放置して冷却したところ生成したゲルは淡黄色透明であった。
更に、オレオソーブSL−200の融点は、実施例1に記載の方法により測定したところ135℃であった。
【0095】
=評価試験=
(液体現像剤の作製)
ポリエステル樹脂(花王社製)に銅フタロシアニン顔料を10%、加圧ニーダーで混練してマスターバッチを作製した後サンプルミルで粉砕し、顔料分散樹脂を得た。この顔料分散樹脂25部、およびキャリア溶媒(モレスコホワイトP−70、松村油脂研究所社製)75部をボールミルで5日間湿式粉砕を行ない分散液を作製した。該分散液99部に分散剤としてソルスパース13940(ルーブリゾール社製)を1部加え、シアントナーが分散した液体現像剤を作製した
【0096】
(用紙の透明化評価)
実施例および比較例の液体現像剤処理液を、アプリケーターを用いて液膜厚15μm(10g/m)になるように普通紙(C2紙、70gms、富士ゼロックス社製)に塗布し、処理液の溶媒を乾燥させた。尚、用紙上にゲル化剤は1mg/m塗布された。
液体現像剤処理液で処理した用紙に対して、アプリケーターを用い液膜厚5μmになるように前記液体現像剤に用いたキャリア溶媒(キャリアオイルモレスコホワイトP−70、松村油脂研究所社製)を塗布してサンプルを作製した。
尚、液体現像剤処理液で処理しない用紙についても以下の評価を行った(比較例2)。
画像濃度1.8(visual)の黒色板の上で、画像濃度をエックスライト939(エックスライト社製)にて測定し、下式に従って着色比を計算し透過性変化として評価した。
式:透明化による着色比=サンプルのvisual濃度/C2紙のvisual濃度
【0097】
上記透明化評価の結果を下記表1に示す。
【0098】
(裏抜け評価)
まず、作製した液体現像剤を用いて、PTFEフィルター上にトナー密度4g/mになるよう吸引ろ過法によってトナー像を作製した。PTFEフィルターおよびトナー像中のキャリア溶媒の量はあわせて2g/mであった。
さらに、実施例および比較例の液体現像剤処理液を、アプリケーターを用いて液膜厚15μm(10g/m)になるようにコート紙(OKトップコート、127gms、王子製紙社製)に塗布し、処理液の溶媒を乾燥させた。尚、用紙上にゲル化剤は1mg/m塗布された。
ついで、PTFEフィルター上に作製されたトナー像を、処理液を塗布し乾燥させた上記コート紙に転写し、120℃のオーブン中で1分間加熱定着した。
尚、液体現像剤処理液で処理しない用紙についても以下の評価を行った(比較例2)。
白色板の上で、作製した画像の裏面から画像濃度(cyan)をエックスライト939(エックスライト社製)にて測定し、下式に従って着色比を計算し裏抜け性として評価した。
式:裏抜けによる着色比=サンプル裏面のcyan濃度/コート紙のみのcyan濃度
【0099】
裏抜け評価の結果を下記表1に示す。
【0100】
【表1】



【0101】
上記のごとく、実施例1の処理液を用いることにより、比較例2より透過性が減少された。さらに、比較例1よりも透過性が減少させる効果があった。
また、実施例1の処理液を用いることにより、比較例2より裏抜けが減少された。尚、比較例1は裏抜けに対してほとんど効果がなかった。
【符号の説明】
【0102】
10 感光体(潜像保持体)
12 露光装置(静電潜像形成装置)
14 現像装置
16 中間転写体
18 クリーナ
20 帯電装置
24 液体現像剤
26 トナー像
28 転写ローラ(転写装置)
30 記録媒体
40、46 処理液付与装置
42 液体現像剤処理液
44 定着装置
100、200 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒中に、置換基を有していてもよい炭素数12以上18以下の脂肪族炭化水素基を有する脂肪酸、置換基を有していてもよい炭素数12以上18以下の脂肪族炭化水素基を有するアルキルアルコール、金属石鹸およびこれらの誘導体から選択される少なくとも1種であり、且つ融点が60℃以上120℃以下であるゲル化剤を含有する液体現像剤処理液。
【請求項2】
前記ゲル化剤が12−ヒドロキシステアリン酸である請求項1に記載の液体現像剤処理液。
【請求項3】
前記溶媒中に、更に硬化性樹脂を含有する請求項1または請求項2に記載の液体現像剤処理液。
【請求項4】
着色剤を含有するトナーおよびキャリア溶媒を含む液体現像剤と、
該液体現像剤に付与された際に前記キャリア溶媒を含んでゲル化するゲル化剤を含有した前記請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の液体現像剤処理液と、
を有する液体現像用の材料。
【請求項5】
前記ゲル化剤は、前記キャリア溶媒と接触した後、加熱され更に冷却されることによって前記キャリア溶媒を含んだゲルとなるゲル化剤である請求項4に記載の液体現像用の材料。
【請求項6】
前記ゲル化剤は、前記キャリア溶媒を含んだゲルとなった際に白色である請求項4または請求項5に記載の液体現像用の材料。
【請求項7】
前記液体現像剤が、更に硬化し得る成分を含有する請求項4乃至請求項6のいずれか1項に記載の液体現像用の材料。
【請求項8】
前記硬化し得る成分が、不飽和脂肪酸エステルである請求項7に記載の液体現像用の材料。
【請求項9】
潜像保持体と、
前記潜像保持体を帯電させる帯電装置と、
帯電した前記潜像保持体に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、
前記潜像保持体に形成された静電潜像を前記請求項4乃至請求項8の何れか1項に記載の液体現像用の材料における前記液体現像剤中のトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、
記録媒体上に前記請求項4乃至請求項8の何れか1項に記載の液体現像用の材料における前記液体現像剤処理液を付与する処理液付与装置と、
前記トナー像を前記記録媒体の前記液体現像剤処理液が付与された面に転写する転写装置と、
記録媒体上に転写された前記トナー像を加熱して定着する定着装置と、
を備える画像形成装置。
【請求項10】
潜像保持体と、
前記潜像保持体を帯電させる帯電装置と、
帯電した前記潜像保持体に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、
前記潜像保持体に形成された静電潜像を前記請求項4乃至請求項8の何れか1項に記載の液体現像用の材料における前記液体現像剤中のトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記トナー像を前記記録媒体に転写する転写装置と、
前記記録媒体の前記トナー像が転写された面上に前記請求項4乃至請求項8の何れか1項に記載の液体現像用の材料における前記液体現像剤処理液を付与する処理液付与装置と、
記録媒体上に転写された前記トナー像を加熱して定着する定着装置と、
を備える画像形成装置。
【請求項11】
画像形成装置に対して着脱自在であり、且つ請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の液体現像剤処理液を収容する処理液カートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−209315(P2011−209315A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73723(P2010−73723)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】