説明

液体現像剤及びその製造方法

【課題】解像度に優れる液体現像剤を提供すること。
【解決手段】結着樹脂及び着色剤を含む着色樹脂粒子を含み、前記着色樹脂粒子の体積平均粒径が2μm以下であり、前記着色樹脂粒子の球形度が0.60〜0.95であり、透過型電子顕微鏡像により観察される前記着色樹脂粒子の粒子断面の輪郭における凸部のうち、隣接する2つの凸部の間に形成された凹部のへこみ率の最大値が5%を越える粒子が、全着色樹脂粒子の90個数%以上であることを特徴とする液体現像剤、及び、その製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体現像剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスにおいて、静電潜像を現像する方式としては、大別して乾式現像法と湿式現像法とがある。
乾式現像法は粉末トナーを散布し付着させるものであり、取扱性及びトナーの保存性に優れるという長所を有している。
近年、オンデマンド、個別対応の印刷のニーズが高まってきており、版を必要としない電子写真プロセスの適用が検討されてきている。そして、本用途には解像度の高い高品位画像が要望されるため、解像度を高められる小粒子径化が検討されている。
しかしながら、乾式現像法では、小粒径化により、トナー間凝集、帯電量分布の広がり、クリーニング不良などの問題が発生し、解像度への対応に限界があった。
一方、湿式現像法は、着色剤を分散させた液体現像剤を使用しているため、小粒径化してもかかる課題の発生がなく、高い解像度と諧調性を得ることが可能である。
【0003】
また、従来の液体現像剤に使用するトナー粒子としては、特許文献1に記載されているものが知られている。
特許文献1には、複数のファイバーを形成した熱可塑性重合体と、粒子に所定の極性を持つように電荷を付与する電荷付与剤とを包含し、無極性液体を経て電気泳動するようにしたトナー粒子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−180248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、解像度に優れる液体現像剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下に示す<1>及び<2>の手段により解決された。好ましい実施態様である<3>及び<4>と共に以下に示す。
<1>結着樹脂及び着色剤を含む着色樹脂粒子を含み、前記着色樹脂粒子の体積平均粒径が2μm以下であり、前記着色樹脂粒子の球形度が0.6〜0.95であり、透過型電子顕微鏡像により観察される前記着色樹脂粒子の粒子断面の輪郭における凸部のうち、隣接する2つの凸部の間に形成された凹部のへこみ率の最大値が5%を越える粒子が、全着色樹脂粒子の90個数%以上であることを特徴とする液体現像剤、
<2>結着樹脂、着色剤及び揮発性溶媒を含む油層液をキャリア中に分散した分散液を作製する工程、並びに、マイクロリアクター中において前記分散液と気体とを接触させ前記揮発性溶媒を除去する工程を含む、上記<1>に記載の液体現像剤の製造方法、
<3>前記油層液の固形分濃度が30質量%以下である、上記<2>に記載の液体現像剤の製造方法、
<4>前記マイクロリアクター中の前記分散液と気体とを接触させる流路の断面において、前記分散液が気体と接触する界面の幅よりも前記分散液が流れる流路の最大幅が大きい、上記<2>又は<3>に記載の液体現像剤の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
前記<1>に記載の発明によれば、着色樹脂粒子が本構成を有さない場合に比べて、解像度に優れる液体現像剤を提供することができる。
また、前記<2>に記載の発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、解像度に優れる液体現像剤を簡便に作製することができる液体現像剤の製造方法を提供することができる。
また、前記<3>に記載の発明によれば、油層液の固形分濃度が30質量%を超える場合に比べて、体積平均粒径が小さな着色樹脂粒子を容易に作製することができる液体現像剤の製造方法を提供することができる。
また、前記<4>に記載の発明によれば、分散液が気体と接触する界面の幅よりも分散液が流れる流路の最大幅が大きくない場合に比べて、揮発性溶媒の除去を容易に行うことができる液体現像剤の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】着色樹脂粒子のへこみ率を説明するための概略図である。
【図2】本実施形態に好適に用いられるマイクロリアクターの分散液と気体とを接触させる流路の断面の一例を示す概略図である。
【図3】本実施形態に好適に用いられるマイクロリアクターの分散液と気体とを接触させる流路の断面の他の一例を示す概略図である。
【図4】本実施形態に好適に用いられるマイクロリアクターの分散液と気体とを接触させる流路の断面のさらに他の一例を示す概略図である。
【図5】本実施形態に好適に用いられるマイクロリアクターの流路部分の一例を示す概略図である。
【図6】本実施形態の凝集樹脂粒子の製造方法に使用するマイクロリアクターのさらに他の一例を表す模式図である。
【図7】図6に示すマイクロリアクターのさらに他の一例を分解した状態を示す図であり、図中マイクロリアクター上部64は、底部から見た状態を示し、混合エレメント62及びマイクロリアクター下部66は、上部から見た状態を示す。
【図8】図7に示す混合エレメント62の一例を示す図である。
【図9】本実施形態の液体現像剤を用いた画像形成方法を示す概略図であり、帯電工程から現像工程を経て、現像されたトナー画像が定着されるまでの工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態について詳細に説明する。
なお、本実施形態において、「A〜B」との記載は、AからBの間の範囲だけでなく、その両端であるA及びBも含む範囲を表す。例えば、「A〜B」が数値範囲であれば、「A以上B以下」又は「B以上A以下」を表す。
【0010】
(液体現像剤)
本実施形態の液体現像剤は、結着樹脂及び着色剤を含む着色樹脂粒子を含み、前記着色樹脂粒子の体積平均粒径が2μm以下であり、前記着色樹脂粒子の球形度が0.6〜0.95であり、透過型電子顕微鏡像により観察される前記着色樹脂粒子の粒子断面の輪郭における凸部のうち、隣接する2つの凸部の間に形成された凹部のへこみ率の最大値が5%を越える粒子が、全着色樹脂粒子の90個数%以上であることを特徴とする。
また、本実施形態の液体現像剤は、静電荷像現像用液体現像剤として好適である。
【0011】
<着色樹脂粒子(トナー)>
本実施形態の液体現像剤は、結着樹脂及び着色剤を含み、体積平均粒径が2μm以下であり、球形度が0.6〜0.95であり、透過型電子顕微鏡像により観察される粒子断面の輪郭における凸部のうち、隣接する2つの凸部の間に形成された凹部のへこみ率の最大値が5%を越える粒子が、全粒子の90個数%以上である着色樹脂粒子を含む。
【0012】
前記着色樹脂粒子の体積平均粒径は、2μm以下であり、0.1〜2μmであることが好ましく、0.5〜2μmであることがより好ましい。
着色樹脂粒子等の粒子の平均粒径の測定方法は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(LA−700、(株)堀場製作所製)を用いて測定する。
【0013】
前記着色樹脂粒子の球形度は、0.6〜0.95であり、0.65〜0.9であることが好ましく、0.65〜0.85であることがより好ましい。
なお、本実施形態における「球形度」とは、一定数の粒子についての画像解析を行い、撮影された各々の粒子に対して以下の式により球形度を求め、それらを平均した値である。
球形度=円相当径周囲長/周囲長=[2×(Aπ)1/2]/PM
ここで、Aは粒子の投影面積、PMは粒子の周囲長を表す。後述する例では、Sysmex社製のFPIA−2100を用いて、球形度を求めた。
球形度は、1.0の場合が真球であることを表し、数値が低いほど外周に凹凸のある異型度が大きい粒子であることを表す。
【0014】
前記着色樹脂粒子は、透過型電子顕微鏡像により観察される前記着色樹脂粒子の粒子断面の輪郭における凸部のうち、隣接する2つの凸部の間に形成された凹部のへこみ率の最大値が5%を越える粒子が、全着色樹脂粒子の90個数%以上である。
前記へこみ率は、透過型電子顕微鏡(TEM)により観察される着色樹脂粒子の断面像を用い、図1に示すように着色樹脂粒子1の円周上の隣接する2つの凸部の頂点を通る直線を引き、前記直線からの凹部の最大深さ2を測り、また、前記で測定した着色樹脂粒子の体積平均粒径(直径)の値を使用し、へこみ率=凹部の最大深さ/着色樹脂粒子の体積平均粒径(直径)×100(%)として算出する。
なお、「全着色樹脂粒子の90個数%以上である」ことは、着色樹脂粒子50個以上について、へこみ率を算出することにより示すものとする。
【0015】
前記着色樹脂粒子は、球形度が0.6〜0.95であり、透過型電子顕微鏡像により観察される粒子断面の輪郭における凸部のうち、隣接する2つの凸部の間に形成された凹部のへこみ率の最大値が5%を越える粒子が、全着色樹脂粒子の90個数%以上であることにより、ある程度の球形を有する粒子であり、かつ適度な大きさの凹凸を粒子表面に有する粒子であることにより、解像度、階調性及び保管性に優れる液体現像剤を得られる。
【0016】
前記着色樹脂粒子は、結着樹脂を含む。
結着樹脂としては、液体現像剤の着色樹脂粒子(トナー)に使用されるものであれば、特に制限はなく、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、及び、これらの共重合体などの付加重合型樹脂、ポリエステル樹脂、及び、ポリアミド樹脂などの重縮合樹脂等が例示できる。
これらの中でも、ポリエステル樹脂を用いることが好ましい。
【0017】
本実施形態に用いられるポリエステル樹脂(以下、単に「ポリエステル」ともいう。)は、重縮合性単量体、及び/又は、そのオリゴマー若しくはプレポリマーを重縮合することにより得られるが、多価カルボン酸とポリオールとを重縮合したポリエステル樹脂であることが好ましい。
重縮合性単量体としては、例えば、多価カルボン酸、ポリオール、ヒドロキシカルボン酸、又は、それらの混合物が挙げられ、少なくとも多価カルボン酸とポリオールとを用いることが好ましい。特に、重縮合性単量体としては、多価カルボン酸とポリオールとさらにはこれらのエステル化合物(オリゴマー及び/又はプレポリマー)であることが好ましく、直接エステル反応、又は、エステル交換反応を経て、ポリエステルを得るものがよい。この場合、重合されるポリエステル樹脂としてはアモルファス(無定形)ポリエステル樹脂(非結晶性ポリエステル樹脂)、結晶性ポリエステル樹脂などのいずれかの形態、又は、それらの混合形態をとることができる。
【0018】
多価カルボン酸は、1分子中にカルボキシル基を2個以上含有する化合物である。このうち、ジカルボン酸は1分子中にカルボキシル基を2個含有する化合物であり、シュウ酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸、β−メチルアジピン酸、マロン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、ピメリン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、シトラコン酸、シクロヘキサン−3,5−ジエン−1,2−カルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p−カルボキシフェニル酢酸、p−フェニレンジプロピオニック酸、m−フェニレンジプロピオニック酸、m−フェニレン二酢酸、p−フェニレン二酢酸、o−フェニレン二酢酸、ジフェニル二酢酸、ジフェニル−p,p’−ジカルボン酸、1,1−シクロペンテンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキセンジカルボン酸、ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、1,3−アダマンタンジカルボン酸、1,3−アダマンタンジ酢酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−1,5−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸等を挙げられる。
また、ジカルボン酸以外の多価カルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、ピレンテトラカルボン酸等を挙げることができる。
上記のカルボン酸は、カルボキシル基以外の官能基を有していてもよく、酸無水物、酸エステル等のカルボン酸誘導体を用いることもできる。
【0019】
これら多価カルボン酸のうち好ましく用いられる単量体は、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、p−フェニレン二酢酸、m−フェニレン二酢酸、p−フェニレンジプロピオニック酸、m−フェニレンジプロピオニック酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−1,5−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸である。
また、ジカルボン酸以外の多価カルボン酸としては、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、ピレンテトラカルボン酸等が挙げられ、さらにまた、これら多価カルボン酸の低級エステルなどが挙げられる。また、これらの酸塩化物も挙げられる。
これらは1種単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
なお、低級エステルとは、エステルのアルコキシ部分の炭素数が1以上8以下であることを示す。具体的には、メチルエステル、エチルエステル、n−プロピルエステル、イソプロピルエステル、n−ブチルエステル及びイソブチルエステル等が挙げられる。
【0020】
ポリオールとは、1分子中に水酸基を2個以上含有する化合物である。ポリオールとしては、特に限定はされないが、次の単量体を挙げることができる。
ジオールは1分子中に水酸基を2個含有する化合物であり、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、テトラデカンジオール、オクタデカンジオール等を挙げられる。
また、ジオール以外のポリオールとしては、グリコール、ペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラエチロールベンゾグアナミン等を挙げられる。
また、環状構造を有するポリオールとしては次の単量体を挙げることができる。例えば、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールP、ビスフェノールS、ビスフェノールZ、水素添加ビスフェノール、ビフェノール、ナフタレンジオール、1,3−アダマンタンジオール、1,3−アダマンタンジメタノール、1,3−アダマンタンジエタノール等を挙げることができる。
本実施形態では、上記ビスフェノール類が少なくとも一つのアルキレンオキサイド基を有することが好ましい。アルキレンオキサイド基としては、エチレンオキサイド基、プロピレンオキサイド基、ブチレンオキサイド等を挙げることができる。好適には、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドが挙げられ、その付加モル数は1以上3以下であることが好ましい。この範囲である場合、作製するポリエステルの粘弾性やガラス転移温度が液体現像剤として使用するために適切に制御される。
上述の単量体のうち、好適に使用される単量体としては、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、及び、ビスフェノールA、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールS、ビスフェノールZの各アルキレンオキサイド付加物が挙げられる。
【0021】
重縮合性単量体は、任意の割合で2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの重縮合性単量体の組み合わせにより非結晶性樹脂や結晶性樹脂を容易に得ることができる。
【0022】
例えば、結晶性ポリエステルを得るために使用される多価カルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコ酸、イタコン酸、グルタコ酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、これらの酸無水物あるいはこれらの低級エステルなどが挙げられる。さらにまた酸塩化物も挙げられる。
【0023】
さらにまた、結晶性ポリエステルを得るために用いることができるポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−ブテンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールZ、水素添加ビスフェノールA等も例示できる。
【0024】
さらにまた、非結晶性のポリエステルを得るために用いることができる多価カルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、マロン酸、メサコニン酸等の二塩基酸等の芳香族ジカルボン酸などや、これらの低級エステルもが例示できる。また三価以上のカルボン酸としては例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、及びこれらの無水物、2−スルホテレフタル酸ナトリウム、5−スルホイソフタル酸ナトリウム、スルホコハク酸ナトリウム塩やこれらの低級エステルなどが例示できる。
【0025】
このような結晶性のポリエステルとしては、1,9−ノナンジオールと1,10−デカンジカルボン酸、又はシクロヘキサンジオールとアジピン酸とを反応して得られるポリエステル、1,6−ヘキサンジオールとセバシン酸とを反応して得られるポリエステル、エチレングリコールとコハク酸とを反応して得られるポリエステル、エチレングリコールとセバシン酸とを反応して得られるポリエステル、1,4−ブタンジオールとコハク酸とを反応して得られるポリエステルを挙げることができる。これらの中でも特に1,9−ノナンジオールと1,10−デカンジカルボン酸及び1,6−ヘキサンジオールとセバシン酸とを反応させて得られるポリエステルなどがさらに好ましい。
【0026】
ここで、重縮合樹脂が結晶性樹脂の場合の結晶融点Tmは、50℃以上120℃以下であることが好ましく、55℃以上110℃以下の範囲であることがより好ましい。Tmが50℃以上であると、高温度域での結着樹脂自体の凝集力が良好であるため、定着の際に剥離性やホットオフセット性に優れる。Tmが120℃以下であると、十分な溶融が得られず、最低定着温度が上昇しにくい。
【0027】
一方、重縮合樹脂が非結晶性の場合、ガラス転移点Tgは50℃以上80℃以下であることが好ましく、50℃以上70℃以下の範囲であることがより好ましい。Tgが50℃以上であると、高温度域での結着樹脂自体の凝集力が良好であるため、定着の際にホットオフセット性に優れる。Tgが80℃以下であると、十分な溶融が得られ、最低定着温度が上昇しにくい。
【0028】
ここで、結晶性樹脂の融点の測定には、示差走査熱量計(DSC)を用い、室温から150℃まで毎分10℃の昇温速度で測定を行った時のJIS K−7121:87に示す入力補償示差走査熱量測定の融解ピーク温度として求めることができる。なお、結晶性の樹脂には、複数の融解ピークを示す場合があるが、本実施形態においては、最大のピークをもって融点とみなす。
ここで、非結晶性樹脂のガラス転移点は、ASTM D3418−82に規定された方法(DSC法)で測定した値をいう。
なお、前記の「結晶性ポリエステル樹脂」に示すような「結晶性」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有することを示し、具体的には、昇温速度10℃/minで測定した際の吸熱ピークの半値幅が6℃以内であることを意味する。
一方、吸熱ピークの半値幅が6℃を越える樹脂や、明確な吸熱ピークが認められない樹脂は、非結晶性(非晶質)であることを意味する。
【0029】
非結晶性のポリエステルを得るために用いることができる多価アルコールとしては、脂肪族、脂環式、芳香環式の多価アルコールが例示でき、具体的には、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールZ、水素添加ビスフェノールA等を好ましく例示できる。
【0030】
また、一分子中にカルボン酸と水酸基を含有するヒドロキシカルボン酸化合物を用い、重縮合を実施することもできる。例えば、ヒドロキシオクタン酸、ヒドロキシノナン酸、ヒドロキシデカン酸、ヒドロキシウンデカン酸、ヒドロキシドデカン酸、ヒドロキシテトラデカン酸、ヒドロキシトリデカン酸、ヒドロキシヘキサデカン酸、ヒドロキシペンタデカン酸、ヒドロキシステアリン酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、粘液酸等を挙げることができる。
【0031】
また、ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、1,500以上55,000以下であることが好ましく、3,000以上45,000以下であることがより好ましい。重量平均分子量が1,500以上であると、バインダー樹脂の凝集力が良好であり、ホットオフセット性に優れ、55,000以下であると、ホットオフセット性に優れ、かつ、最低定着温度が優れた値を示す。また、単量体のカルボン酸価数、アルコール価数の選択などによって一部枝分かれや架橋などを有していてもよい。
【0032】
重縮合樹脂の製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法により作製すればよい。例えば、重縮合触媒存在下重縮合性単量体を重縮合することが好ましい。
重縮合触媒としては、公知のものを用いることができ、ブレンステッド酸やルイス酸等の酸系触媒や、スズ化合物等の金属触媒などが挙げられる。
【0033】
付加重合型樹脂の作製に使用する付加重合性単量体としては、公知の単量体を用いることができる。また、重縮合性単量体と付加重合性単量体との両方を使用し、重縮合と付加重合とを同時あるいは別々に行い複合化してもよい。
付加重合性単量体としては、例えば、カチオン重合性単量体及びラジカル重合性単量体が挙げられるが、ラジカル重合性単量体であることが好ましい。
この場合に用いられるラジカル重合性単量体としては、具体的には、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン等のα−置換スチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン等の核置換スチレン、p−クロロスチレン、p−ブロモスチレン、ジブロモスチレン等の核置換ハロゲン化スチレン等のビニル芳香族類、(メタ)アクリル酸(なお、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを意味するものとし、以下も同様とする。)、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸類、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の不飽和カルボン酸エステル類、(メタ)アクリルアルデヒド、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド等の不飽和カルボン酸誘導体類、N−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物類、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル化合物類、N−メチロールアクリルアミド、N−エチロールアクリルアミド、N−プロパノールアクリルアミド、N−メチロールマレインアミド酸、N−メチロールマレインアミド酸エステル、N−メチロールマレイミド、N−エチロールマレイミド等のN−置換不飽和アミド類、ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルシクロヘキサン等の多官能ビニル化合物類、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能アクリレート類等が挙げられる。なお、これらの中で、N−置換不飽和アミド類、共役ジエン類、多官能ビニル化合物類、及び、多官能アクリレート類等は、生成された重合体に架橋反応を生起させることもできる。これらを、単独で、あるいは組み合わせて使用できる。
【0034】
前記付加重合性単量体、特にラジカル重合性単量体は、その重合法としてラジカル重合開始剤を用いる方法、熱による自己重合、紫外線照射を用いる方法、既知の重合方法を用いることができる。この場合、ラジカル開始剤を用いる方法としてラジカル開始剤は、油溶性、水溶性のものがあるがどちらの開始剤を使用しても構わない。
具体的には、例えば、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ヒドロクロリド等のアゾビスニトリル類、アセチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチル−α−クミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、α−クミルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート等のパーオキシエステル、t−ブチルヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、ジ−イソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド等のヒドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等のパーオキシカーボネート等の有機過酸化物類、過酸化水素等の無機過酸化物類、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類等のラジカル重合開始剤が挙げられる。なお、レドックス重合開始剤を併用することもできる。
また、付加重合時に連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤としては、特に制限はなく、具体的には炭素原子と硫黄原子との共有結合を持つものが好ましく、例えば、チオール類が好ましく挙げられる。
【0035】
付加重合型樹脂の重量平均分子量は、5,000〜50,000であることが好ましく、7,000〜35,000であることがより好ましい。重量平均分子量が5,000以上であると、常温での粉体流動性が良好であり、ブロッキングが生じないので好ましい。さらに、結着樹脂としての凝集力が良好であり、ホットオフセット性の低下が生じない。また、重量平均分子量が50,000以下であると、良好なホットオフセット性と、良好な最低定着温度が得られ。また、重縮合に要する時間や温度が適切であり、製造効率が良好である。
なお、結着樹脂の重量平均分子量は、例えばゲル・パーミュエーション・クロマトグラフィ(GPC)等により測定することができる。
【0036】
前記着色樹脂粒子中の結着樹脂の含有量は、特に制限はないが、着色樹脂粒子の全質量に対して、20〜99質量%であることが好ましく、30〜90質量%であることがより好ましい。
【0037】
前記着色樹脂粒子は、着色剤を含有する。
着色剤としては、特に制限はなく、公知の着色剤が用いられる。
具体的には例えば、カーボンブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアンカーミン3B、ブリリアンカーミン6B、デイポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドCローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオクサレレート、チタンブラックなどの種々の顔料や、アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、チオインジコ系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、チオインジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアジン系、チアゾール系、キサンテン系などの各種染料などが挙げられる。前記着色剤として、具体的には、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料(C.I.No.50415B)、アニリンブルー(C.I.No.50405)、カルコオイルブルー(C.I.No.azoic Blue3)、クロムイエロー(C.I.No.14090)、ウルトラマリンブルー(C.I.No.77103)、デュポンオイルレッド(C.I.No.26105)、キノリンイエロー(C.I.No.47005)、メチレンブルークロライド(C.I.No.52015)、フタロシアニンブルー(C.I.No.74160)、マラカイトグリーンオクサレート(C.I.No.42000)、ランプブラック(C.I.No.77266)、ローズベンガル(C.I.No.45435)、これらの混合物などを好ましく用いることができる。
着色剤の使用量は、着色樹脂粒子の全質量に対して、0.1〜20質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%であることが特に好ましい。また、着色剤として、これらの顔料や染料等を1種単独で使用する、又は、2種以上を併せて使用することができる。
これらの分散方法としては、任意の方法、例えば回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミルなどの一般的な分散方法を使用することができ、なんら制限されるものではない。また、これらの着色剤粒子は、その他の粒子成分と共に混合溶媒中に一度に添加してもよいし、分割して多段階で添加してもよい。
【0038】
また、前記着色樹脂粒子、及び/又は、本実施形態の液体現像剤は、分散剤や顔料誘導体を含有していてもよい。
分散剤としては、特に制限はなく、低分子量の分散剤であっても、高分子量の分散剤であってもよいが、高分子分散剤であることが好ましい。
【0039】
高分子分散剤としては、例えば、ポリエステル酸アミドアミン塩(市販品として、ディスパロンDA−725(楠本化成(株)製))、ポリアミン化合物とヒドロキシ脂肪族自己縮合物との反応物(市販品として、ソルスパース11200、ソルスパース13940、ソルスパース17000、ソルスパース18000(以上、日本ルーブリゾール社製))、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリカルボン酸及びその塩、ポリアクリル酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、ポリメタクリル酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、ポリマレイン酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、アクリル酸−マレイン酸共重合体金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、ポリスチレンスルホン酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0040】
顔料誘導体としては、公知の顔料を誘導した誘導体であればよく、前記着色剤と構造が異なる顔料誘導体であってもよい。
また、顔料誘導体としては、顔料等と高分子材料とが結合した顔料誘導体であってもよい。
顔料誘導体として具体的には、ソルスパース5000、ソルスパース22000(以上、日本ルーブリゾール社製)等が挙げられる。
【0041】
また、前記着色樹脂粒子は、必要に応じて、帯電制御剤を含有することができ、液体現像剤に通常用いられているものをいずれも使用することができる。
電荷制御剤としては、安息香酸の金属塩、サリチル酸の金属塩、アルキルサリチル酸の金属塩、カテコールの金属塩、含金属ビスアゾ染料、テトラフェニルボレート誘導体、第四級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩よりなる群から選ばれる化合物、及び、これらを二種以上組合せたものが好ましく使用できる。
前記着色樹脂粒子に対するこれら帯電制御剤の添加量は、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜8質量%であることがより好ましい。0.1質量%以下であると、帯電制御効果が十分得られ、また、10質量%以下であると、液体現像剤の電導度の過度の上昇を抑制できる。
さらに、前記帯電制御剤と共に、金属石鹸、無機金属塩、又は、有機金属塩を併用することができる。そのような金属石鹸としては、トリステアリン酸アルミニウム、ジステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸鉛、ステアリン酸亜鉛、リノレン酸コバルト、リノレン酸マンガン、リノレン酸鉛、リノレン酸亜鉛、オクタン酸アルミニウム、オクタン酸カルシウム、オクタン酸コバルト、オレイン酸カルシウム、オレイン酸コバルト、パルミチン酸亜鉛、ナフテン酸カルシウム、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸鉛、ナフテン酸亜鉛、レジン酸カルシウム、レジン酸コバルト、レジン酸マンガン鉛、レジン酸亜鉛等を用いることができる。金属石鹸は帯電制御性も有するが、着色樹脂粒子の分散性の観点から有用である。また、無機及び有機金属塩としては、例えば金属塩中のカチオン性成分は、周期律表(IUPAC無機化学命名法改訂版 1989年)の第1族、第2族、及び、第13族の金属よりなる群から選ばれ、それらのハロゲン化物、炭酸塩、酢酸塩、硫酸塩、ホウ酸塩、硝酸塩、及び、リン酸塩よりなる群から選ばれる塩である。
【0042】
また、前記着色樹脂粒子は、ワックス等の助剤を配合してもよく、液体現像剤に通常用いられるものをいずれも使用することができる。
ワックスとしては、例えば、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスポリプロピレンワックス、エチレン共重合体、プロピレン共重合体等が挙げられる。
上述の電荷制御剤やワックス等のような助剤は、着色剤を含有する前の結着樹脂中に配合して用いることもできる。
【0043】
<キャリア>
本実施形態の液体現像剤は、キャリアを含有することが好ましい。
前記キャリアとしては、一般に液体現像剤の分散媒として用いられるものであれば特に限定されるものではないが、体積固有抵抗値が1010Ω・cm以上のものが好ましく用いられる。また、誘電率は3.5以上のものが好ましく用いられる。
このようなキャリアとしては、例えば、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、ポリシロキサン類等が挙げられ、揮発性や安全性、毒性、臭気等の点からは、イソパラフィン系石油溶剤が適している。
このようなイソパラフィン系石油溶剤としては、アイソパーM、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーK(いずれもエクソンモービル社製)、シェルゾール71(シェル石油社製)等を挙げることができる。
【0044】
本実施形態の液体現像剤は、キャリア中に含有される帯電制御剤を含有していてもよい。
キャリア中に含有される帯電制御剤としては、キャリア液中に存在し、ミセル形成能を有するイオン性、又は、非イオン性の帯電制御剤としては、リン脂質、油溶性石油スルフォネート、イオン性、非イオン性の界面活性剤、親油性部と親水性部からなるブロック若しくはグラフト共重合体類、さらにまた環状、星状、樹状高分子(デンドリマー)等の高分子鎖骨格をもつ化合物を用いることができるが、中でも特に好ましいものは、液体現像剤の加熱条件や各種の熱履歴に対して化合物自体が熱的に安定であり、塩構造の帯電制御剤を用いた場合には、カチオンの安定化機能を有し、安定した分散性が得られるリン脂質、及び、油溶性石油スルフォネートや、不純物の排除が比較的容易な合成高分子化合物、例えば親油性部と親水性部からなるブロック又はグラフト共重合体類が好都合に用いられる。
【0045】
より具体的には、レシチン、セハリン等のリン脂質、ウイトコケミカル社(Witoco Chemical Corp.)製のベーシックバリウムペトロネート、ベーシックナトリウムペトロネート、ベーシックカルシウムペトロネート等の油溶性石油スルフォネート、シェブロン社より販売されているOLOA−1200等のポリブチレン/サクイシンイミド等が好ましく用いられる。
親油性部と親水性部からなるブロック又はグラフト共重合体類としては、親油性部として、ブタジエン、イソプレン、及び、アクリル酸、メタクリル酸を代表例とするα,β−エチレン不飽和酸のアルキルエステル等を単量体とするポリマーが好ましく用いられる。親水性部としては、四級化されたトリアルキルアミノポリマー、四級化されたピリジニウムポリマー等が好都合に用いられる。さらにまたポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロック共重合体も好ましく使用できる。これら親油性部と親水性部からなるブロック又はグラフト共重合体は、全体で1,000以上50,000以下の数平均分子量を持ち、ブロック共重合体の場合は、その構造がAB型、ABA型、BAB型のいずれでもよく、また、グラフト共重合体の場合は、櫛形のグラフト構造であってもよい。さらにまた、クラウンエーテル、大環状アミン、ポリノルボルネン等の環状高分子、スチレン星状高分子、ポリアルキルアミド−アルポロール等の樹状高分子(デンドリマー)等の高分子鎖骨格をもった化合物であってもよい。
【0046】
イオン性及び非イオン性の界面活性剤類としては、より具体的には以下が挙げられる。
ノニオン活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド等が挙げられる。
アニオン界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタリンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸等がある。
カチオン界面活性剤としては、第一級ないし第三級のアミン塩、第四級アンモニウム塩等が挙げられる。
これら帯電制御剤の使用量は、前記着色樹脂粒子に対して、0.01質量%以上20質量%以下が好ましく、0.05質量%以上10質量%以下が特に好ましい。上記範囲であると、帯電制御効果が充分得られ、また、液体現像剤の電導度が適度である。また、帯電制御剤のキャリアに対する含有量としては、キャリアの質量あたり、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上1質量%以下であることがより好ましい。上記範囲であると、帯電制御効果が充分得られ、また、液体現像剤の電導度が適度である。
また、少量の添加で十分な帯電制御効果を発揮するため、これら帯電制御剤が前述したトナー粒子中の帯電制御剤と組み合わせて用いることも好ましい。
【0047】
また、本実施形態の液体現像剤には、液体現像剤の物性制御のために、ポリマー粒子、無機粒子等をさらに分散させたり、さらにまた、キャリアや帯電制御剤の熱劣化や光、湿度等による酸化あるいはラジカル連鎖による増粘防止の目的で、各種添加剤を液体現像液中に分散あるいは溶解させてもよい。
酸化防止剤としてはより具体的に、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、ジラウリルチオジプロピオネート、トリフェニルフォスファイト等を挙げられる。
ラジカル重合禁止剤としてはより具体的に、1,4−ジヒドロキシベンゼン、1,4−ナフトキノン、ジフェニルピクリルヒドラジル、N−(3−N−オキシアニリノ−1,3−ジメチルブチリデン)アニリンオキシド等を挙げられる。
【0048】
(液体現像剤の製造方法)
本実施形態の液体現像剤の製造方法としては、以下に示す2つの方法が好ましく挙げられる。
一つは、結着樹脂、着色剤及び揮発性溶媒を含む油層液をキャリア中に分散した分散液を作製する工程、並びに、前記分散液を撹拌しながら前記揮発性溶媒を除去する工程を含む製造方法(「バッチ式製造方法」ともいう。)が挙げられる。
もう一つは、結着樹脂、着色剤及び揮発性溶媒を含む油層液をキャリア中に分散した分散液を作製する工程、並びに、マイクロリアクター中において前記分散液と気体とを接触させ前記揮発性溶媒を除去する工程を含む製造方法(「マイクロリアクター使用製造方法」ともいう。)が挙げられる。
これらの中でも、本実施形態の液体現像剤の製造方法としては、マイクロリアクター使用製造方法が好ましい。
以下、これらについて詳細に説明する。
【0049】
本実施形態の液体現像剤の製造方法に使用する結着樹脂、着色剤等の液体現像剤に含有される成分は、前述の本実施形態の液体現像剤において記載したものと同義であり、好ましい範囲も同様である。
本実施形態の液体現像剤の製造方法に使用する揮発性溶媒としては、使用するキャリアより沸点が低い溶媒であれば、特に制限はないが、具体的には例えば、具体的には、メチルエチルケトン、3−ヘキサノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、酢酸セロソルブ等のエステル系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒等が例示できる。
揮発性溶媒は、1種単独で用いても、2種以上を併用して用いてもよい。
前記揮発性溶媒としては、エステル系溶媒が好ましく、酢酸エチルが特に好ましい。
また、揮発性溶媒は、取り扱いや除去の容易性から、常圧における沸点が20℃以上150℃以下である溶媒が好ましく、30℃以上100℃以下である溶媒がより好ましい。
【0050】
前記バッチ式製造方法、及び、前記マイクロリアクター使用製造方法において、結着樹脂、着色剤及び揮発性溶媒を含む油層液をキャリア中に分散した分散液の揮発性溶媒の含有量は、着色樹脂粒子を形成する結着樹脂や着色剤などの固形分の総質量100質量部に対し、200〜350質量部であることが好ましく、230〜320質量部であることがより好ましい。上記範囲であると、へこみ率が5%以上の粒子を粒子全体の90%以上の割合で、容易に作製することができる。
【0051】
前記バッチ式製造方法において、前記揮発性溶媒を除去するために前記分散液を拡散する手段としては、特に制限はなく、公知の撹拌手段を用いることができるが、プロペラ型撹拌機が好適に用いられる。
また、前記揮発性溶媒を除去するための撹拌時の圧力としては、常圧で行うことが好ましく、また、温度としては、常温(10〜30℃)で行うことが好ましい。また、撹拌時間としては、揮発性溶媒の除去が完了する時間であればよいが、揮発性溶媒の除去は時間をかけて行うほうが好ましく、具体的には、24〜72時間撹拌を行い、揮発性溶媒を除去することが好ましい。
【0052】
前記マイクロリアクター使用製造方法に使用するマイクロリアクターとしては、その内部において、前記分散液と気体とを接触させることができるものであれば、特に制限はなないが、前記分散液と気体とが層流を形成しながら接触させることができるものであることが好ましい。
【0053】
マイクロリアクターは、マイクロスケールの複数の流路(チャンネル)、例えば、数μm以上数千μm以下の幅の流路を有する装置である。
マイクロリアクターの流路は、マイクロスケールであるので、寸法及び流速がいずれも小さく、レイノルズ数は2,300以下である。したがって、マイクロスケールの流路を有する反応装置は、通常の反応装置のような乱流支配ではなく層流支配の装置である。
ここで、レイノルズ数(Re)は、以下の式にて定義される。
Re=uL/ν
(u:流速、L:代表長さ、ν:動粘性係数)
レイノルズ数(Re)がおおよそ2,300以下である時、層流支配となる。
また、マイクロチャネルとは、マイクロスケールの流路のことを示すが、それらを含む装置のことを示す場合もある。また、総称としてマイクロリアクターという場合もある。
【0054】
マイクロリアクターは、従来の装置のように乱流を反応などの場とするのではなく、層流を反応などの場とすることを可能とするものである。
層流支配のもとにおいて、2種類以上の異なる液体を層流とした場合には、2種類以上の異なる液体よりなる層流の界面領域において、液体中の物質の濃度差による拡散が生じ、その結果、濃度差に基づく物質の移動が生じる。また、拡散速度は分子量の大きい分子ほど遅い。
層流を反応の場とすると、例えば、2液を混合する場合には、2液の界面領域の相互拡散により混合することができ、また、液体と気体との層流を形成する場合には、液体と気体との界面を通して気相及び/又は液相への拡散を行うことができる。また、マイクロスケールの空間では比界面積が大きいため、このような界面での拡散混合を行う場合に有利である。
マイクロリアクター中における前記分散液と気体との接触は、層流状態で前記分散液と気体と界面を形成することが好ましく、前記分散液と気体との流れの方向が逆方向であることがより好ましい。
【0055】
また、前記マイクロリアクターとしては、前記マイクロリアクター中の前記分散液と気体とを接触させる流路の断面において、前記分散液が気体と接触する界面の幅よりも前記分散液が流れる流路の最大幅が大きいものであることが好ましい。
前記分散液が気体と接触する界面の幅よりも前記分散液が流れる流路の最大幅が大きい流路の断面としては、例えば、図2〜図4に示す流路の断面形状が好ましく例示できる。
図2に示す流路の断面では、前記分散液が流れる流路102の断面が幅500μm高さ300μmの長方形で形成されており、気体が流れる流路104の断面が幅400μm高さ300μmの長方形で形成されており、前記分散液が気体と接触する界面106の幅が400μmとなっている。
図3に示す流路の断面は、大小2つの円が結合した形状であり、大きな円が前記分散液が流れる流路102、小さな円が気体が流れる流路104であり、その間に前記分散液が気体と接触する界面106が形成される。
図4に示す流路の断面は、前記分散液が流れる流路の断面102と気体が流れる流路104の断面とは長方形の1つの辺が円弧となっている形状、かつ同一形状で形成されており、各流路断面の最大幅よりも前記分散液が気体と接触する界面106の幅が狭くなっている。
なお、図2〜図4に示す流路の周囲等は、基材108により形成されている。
【0056】
前記マイクロリアクター使用製造方法に使用するマイクロリアクターとして具体的には、例えば、図5に示すような流路を有するマイクロリアクター(YYマイクロリアクター)や特開2006−212570号公報に記載のマイクロリアクター等が好ましく挙げられる。
図5は、へこみ率が5%以上である着色樹脂粒子の作製に好適に使用されるマイクロリアクターの一例における流路部分の概略図である。
図5に示すマイクロリアクターの流路部分は、合流流路202、分散液導入流路204a、気体導入流路204b、分散液排出流路206a、及び、気体排出流路206bより形成されており、これら流路の周囲等は、基材208により形成されている。
油層液滴210が分散した分散液が分散液導入流路204aから合流流路202に送流される。合流流路202に送流された分散液は、気体導入流路204bから送流される気体と接触して層流を形成し、分散液と気体との界面202cを形成する。合流流路中の分散液202aからは、合流流路中の気体202bへ揮発性溶媒が界面202cを通して揮発していき、油層液滴210に対し急激な液中乾燥が行われることにより、表面に凹凸が形成され、凹凸を有する着色樹脂粒子212が形成される。凹凸を有する着色樹脂粒子212を含む分散液は、合流流路202から分散液排出流路206aへと送流され、その後マイクロリアクター外へと排出される。また、揮発性溶媒を含む気体は、合流流路202から気体排出流路206bへと送流され、その後マイクロリアクター外へと排出される。
また、図5に示すマイクロリアクターの流路部分における合流流路202のA−A断面は、種々の断面形状を取り得るが、前記図2に示す流路の断面であることが好ましい。
【0057】
また、結着樹脂、着色剤及び揮発性溶媒を含む油層液をキャリア中に分散した分散液の作製方法としては、特に制限はなく、公知の混合方法、分散方法により作製すればよいが、マイクロリアクターを用いてもよい。
前記分散液の作製に用いられるマイクロリアクターとしては、混合や分散が可能であれば特に制限は内が、具体的には例えば、インスティテュート・フュール・マイクロテクニック・マインツ社(Institut fur Mikrotechnik Mainz GmbH, Germany)の刊行物に記載されたマイクロリアクターや、特開2005−288254号公報記載の衝突型マイクロリアクター、特開2005−37780号公報に記載されたマイクロリアクターなどが挙げられる。
【0058】
図6は、インスティテュート・フュール・マイクロテクニック・マインツ社(Institut fur Mikrotechnik Mainz GmbH,Germany,IMM社)製のマイクロリアクター(以下、「IMMミキサー」ともいう。)を記載したものであり、本実施形態に好適に用いることができる。
図7は、図6に示すマイクロリアクターのさらに他の一例を分解した状態を示す図であり、図7中マイクロリアクター上部64は、底部から見た状態を示し、混合エレメント62及びマイクロリアクター下部66は、上部から見た状態を示す。
図8は、図7に示す混合エレメント62の一例を示す図である。
【0059】
図6に示すマイクロリアクター60は、図7に示すように、混合エレメント62、マイクロリアクター上部64及びマイクロリアクター下部66からなる。図7においては、これらの部品を分解した状態で記載しているが、実際の使用においては、図6に示すように、これらを組み立てて一体化して使用する。
図8に示す混合エレメント62は、表面に微細加工によって分割された流路、すなわち、図8中に記載したような形状の溝によって混合エレメントの両側から分割された流路が形成されている。ここに使用する前記油層液及びキャリアを導入することによって、多数の副流が得られる。
上記分割された流路の1つ当たりの幅は、混合の観点から100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがさらに好ましい。下限値は特に限定されるものではないが、製造上、数μmのオーダーである。また、流路の深さは特に限定されるものではないが、例えば、10〜500μmとすることができる。
【0060】
図7中のマイクロリアクター上部64には、2つの注入口68及び1つの排出口70が設けられている。注入口68は、注入流路74に続いており、注入流路74の終端部は、混合エレメント流路端部78につながっている。また、上記排出口70は、排出流路76に続いており、排出流路76の終端部は、上記マイクロリアクター上部64の底面の略中央部に設けられたスリット72を形成している。上記マイクロリアクターが組み立てられた場合、スリット72は、混合エレメント62の略中央に接する。これによって、混合エレメント62上の流路とスリット72とが連結された流路を形成する。
マイロリアクター下部66は、混合エレメント62を固定するための凹部を有する。上記凹部に混合エレメント62が固定されることによって、隙間なく分割された流路が形成され、良好に反応を行うことができる。
混合エレメント62、マイクロリアクター上部64及びマイクロリアクター下部66を組み立てると、順に、注入口68、注入流路74、混合エレメント流路端部78、混合エレメント62上の分割された流路、スリット72、排出流路76、排出口70という経路で連結された流路が形成されるものである。
なお、混合エレメント62とスリット72との間には、混合の場となる微小空間が存在する。
【0061】
注入口68から送り込まれた液体は、上記注入流路74を通じて、上記混合エレメント流路端部78へと送られる。混合エレメント流路端部78へと送り込まれた液体は、注入圧力によって、それぞれ混合エレメント62上の分割された流路中を混合エレメントの両端から中央方向へと流れ、この結果、多数の副流が得られる。上記多数の副流は、混合エレメント62とスリット72との間に存在する微小空間で接触することにより、混合及び分散が進行する。
【0062】
上記微小空間で接触した2つの液体はスリット72へと流入する。このスリット72へ流入する際に混合がさらに行われる。上記スリット72の幅は、混合の効率を考慮すると500μm以下であることが好ましい。
上記液体を注入する速度は、上記スリット内部の体積にもよるが、10mL/時間以上1.5L/時間以下の流量にすることが好ましい。流量が10mL/時間以上であると、流速が速くなるため、効率的な凝集を行うことができる。また、流量が1.5L/時間以下であると、流量を一定に制御することが容易であり、マイクロリアクターに対して高い圧力がかからない。
スリット72を通過した反応溶液は、排出経路76を経て排出口70から、マイクロリアクター60外に排出され、適切な容器に補集される。
【0063】
(画像形成方法)
本実施形態の画像形成方法は、本実施形態の液体現像剤を使用した画像形成方法であればよいが、潜像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成工程と、前記潜像保持体表面に形成された静電潜像を液体現像剤により現像して現像像(トナー像、着色樹脂粒子像)を形成する現像工程と、前記潜像保持体表面に形成された現像像を被転写体表面に転写する転写工程と、前記被転写体表面に転写された現像像を定着する定着工程とを含み、前記液体現像剤として本実施形態の液体現像剤を用いることを特徴とすることが好ましい。
本実施形態の画像形成方法としては、上記のような特定のトナーを用いて現像剤を調製し、それを用いて常用の電子写真複写機により静電荷像の形成及び現像を行い、得られた現像像を転写紙上に静電転写した上加熱ローラの温度を一定温度に設定した加熱ローラ定着器により定着して複写画像を形成することが好ましい。
また、本実施形態の画像形成方法は、前記現像工程と前記転写工程との間に、現像像中のキャリアの少なくとも一部を除去する除去工程を含むことが好ましい。
現像像中のキャリアの除去手段としては、特に制限はなく、公知の手段を使用でき、具体的には、例えば、加熱してキャリアを蒸発させる手段、潜像保持体の移動方向と逆向きに回転するリバースローラを用いて現像像を圧縮する手段、エアナイフを現像像に当ててキャリアを絞る手段、コロナ放電によりキャリアを絞る手段などが挙げられる。
【0064】
また、本実施形態の静電荷像現像剤(静電荷像現像トナー)は、通常の静電荷像現像方式(電子写真方式)の画像形成方法に使用することができる。本実施形態の画像形成方法は、具体的には、例えば、静電潜像形成工程、画像形成工程、転写工程、及び、クリーニング工程を含む。前記各工程は、それ自体一般的な工程であり、例えば、特開昭56−40868号公報、特開昭49−91231号公報等に記載されている。なお、本実施形態の画像形成方法は、それ自体公知のコピー機、ファクシミリ機等の画像形成装置を用いて実施することができる。
前記静電潜像形成工程は、静電潜像担体上に静電潜像を形成する工程である。前記画像形成工程は、現像剤担体上の現像剤層により前記静電潜像を現像して現像像を形成する工程である。前記現像剤層としては、前記本実施形態の液体現像剤を含んでいれば特に制限はない。前記転写工程は、前記現像像を転写体上に転写する工程である。前記クリーニング工程は、静電潜像担持体上に残留する液体現像剤を除去する工程である。
本実施形態の画像形成方法においては、さらにリサイクル工程をも含む態様が好ましい。前記リサイクル工程は、前記クリーニング工程において、回収した液体現像剤を現像剤層に移す工程、又は、回収した液体現像剤を再調整した後、現像剤層に移す工程である。また、クリーニング工程を省略し、現像と同時に液体現像剤を回収する態様のリサイクルシステムにも適用することができる。
【0065】
また、本実施形態の画像形成方法における潜像保持体上に潜像を形成する工程は、電子写真あるいは静電記録方法において採用される周知の方法が採用できる。
潜像保持体は、電子写真感光体のみならず、誘電体であってもよい。
上記工程で形成された潜像を現像する工程についても、液体現像剤を使用する周知の方法が採用されるが、液体現像剤として、常温で固体のキャリア媒体を用いるため、液体現像剤を加熱しながら現像する必要がある。
【0066】
本実施形態の画像形成方法について、以下に一例を挙げて説明する。
図9は、本実施形態の液体現像剤を用いた画像形成方法を示す概略図であり、帯電工程から現像工程を経て、現像されたトナー画像が定着されるまでの工程を示す。
図9に示される感光体10は、便宜上、一枚の長い感光体として表され、これに対して各工程が順じ適用されてゆくものとして示してあるが、実際のシステムでは、環状の感光体として用いてもよい。
図9の帯電工程では、感光体10がコロナ放電器12等の適当な帯電手段を用いて、例えばプラスに一様に帯電される。次の露光工程では、半導体赤外レーザー照射装置14からのレーザー光線等の適当な露光手段を用い、画像情報部分のプラス電荷を消失させる。
【0067】
次の現像工程では、前記のように作成した静電潜像16が現像剤タンク18の上を通過する。
現像剤タンク18の中には、キャリア20中にマイナスに帯電した着色樹脂粒子22が分散された液体現像剤が入っており、該液体現像剤はヒータ等の加熱手段24によって加熱溶融され液状を呈している。
液体現像剤は、現像電極26と感光体10との間に生じた電位差で、電気泳動することで現像が行なわれる。余剰のキャリア20は、メタリングロール28で搾り取られる。
【0068】
さらに、現像像30は、イメージスタビライゼーションロール32でさらにキャリア媒体20を搾り取られる。
イメージスタビライゼーションロール32は、例えば、金属やセラミックス等の剛直なロール表面に、ポリウレタンやシリコン等のミクロな穴を有する発泡スキン層からなる構造を有するもので、現像像30に直接圧接し、毛管吸引力あるいはロール内部の空隙から減圧吸引を行うことでキャリア20を搾り取る。
この転写前画像34は、バックアップロール36を経て転写紙38に転写され、転写画像40は、定着ロール42と押圧ロール44との間で、定着ロール42によって転写画像40を加熱し記録紙38に定着する。
【0069】
(画像形成装置)
本実施形態の画像形成装置は、潜像保持体と、前記潜像保持体の表面を帯電させる帯電手段と、該帯電手段により帯電させられた前記潜像保持体の表面に、画像情報に応じて露光することにより静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像を液体現像剤により現像して現像像(トナー像、着色樹脂粒子像)を形成させる現像手段と、前記現像像を前記潜像保持体から被転写体表面に転写する転写手段とを有し、必要に応じて、定着基材上のトナー像を定着する定着手段とを有する。上記転写手段では、中間転写体を用いて2回以上の転写を行ってもよい。
【0070】
前記潜像保持体、及び、前記の各手段は、前記の画像形成方法の各工程で述べた構成を好ましく用いることができる。
前記の各手段は、いずれも画像形成装置において公知の手段が利用できる。また、本実施形態で用いる画像形成装置は、上記した構成以外の手段や装置等を含むものであってもよい。また、本実施形態で用いる画像形成装置は上記した手段のうちの複数を同時に行ってもよい。
また、本実施形態の画像形成装置は、現像像中のキャリアの少なくとも一部を除去する除去手段をさらに有することが好ましい。
現像像中のキャリアの除去手段としては、前述した手段が挙げられる。
【実施例】
【0071】
以下、本実施形態の実施例について詳細に説明するがこれらの実施例に本実施形態が限定されるものではない。実施例中「部」とあるのは、特に断りがない限り質量部を表す。
【0072】
(実施例1)
<着色剤分散液の調製>
着色剤C.I.ピグメントブルーB15:3(大日精化工業(株)製)60質量部、ポリマー分散剤である「ディスパロンDA−725」(ポリエステル酸アミドアミン塩、酸価:20mgKOH/g、アミン価:48mgKOH/g、楠本化成(株)製)4質量部、及び、顔料誘導体「ソルスパース5000」(ゼネカ(株)製)3質量部を、酢酸エチル100質量部に加え、サンドミルで溶解/分散して、着色剤分散液を調製した。なお、「ディスパロンDA−725」は溶媒除去したものを使用している。
【0073】
<油層成分の調製>
結着樹脂としてビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、テレフタル酸誘導体からなるポリエステル樹脂(Mw:20,000、Tg:66℃、Tm:106℃)を用い、この結着樹脂136質量部と上記の着色剤分散液34質量部とを、酢酸エチル385質量部に入れて均一になるまでよく撹拌した。この液を油相成分とした。
【0074】
<現像液の調製>
界面活性剤を含有したアイソパーG媒体を作製した。
このアイソパーG媒体(エクソン化学(株)製、ASTM D86 IBP 160℃、比重0.75。界面活性剤として、ドデシルベンゼンスルホン酸1質量%含有する。)345質量部に、上記油相成分250質量部を加えて、ホモジナイザーで攪拌し、混合懸濁液を得た。室温(25℃)、常圧(1気圧)で48時間プロペラ型撹拌機により撹拌し、溶媒を除去し、液体現像剤を得た。
着色樹脂粒子の平均粒子径は約2μm、球形度は約0.85であった。このとき、着色樹脂粒子中の隣接する凸部間のへこみ率5%以上の粒子は、全体の95個数%であった。なお、着色樹脂粒子中の着色剤濃度は13質量%であった。
【0075】
<液体現像剤の評価>
〔画像品質評価(解像度、及び、階調性評価)〕
前記本実施形態の画像形成方法において説明した図9の概略図に示す手順で、画像形成を行い、得られた液体現像剤を評価した。詳細を以下に示す。
試料である液体現像剤は現像剤タンク18内で、加熱手段であるヒータ24により60℃に加熱され、液化したキャリア媒体20中に着色樹脂粒子22が分散した状態となっている。感光体10上に帯電装置であるコロナ放電器12によって形成された静電潜像に液化した現像剤が接触すると、着色樹脂粒子22が感光体10の電荷部分に引かれて現像され、現像像30を形成した。
現像像30は、イメージスタビライゼーションロール32を経て、余分なキャリア媒体20を除去されて転写前画像34とされ、その後、ロール紙(転写紙)38上に転写され、定着ロール42を経て定着され、画像を形成した。なお、現像に際しては、感光体10と現像剤とが接触後直ちに固化すると画像品位を低下する恐れがあるため、感光体10自体或いは固定するステージにも加熱手段を設けてもよい。
液体現像液の温度(T)を60℃に設定し、上記の方法で画像を形成し、得られた画像を評価した。
【0076】
実施例1で作製した液体現像剤により形成された画像は、転写時の潰れがなく、淡い画像でも均一で解像度、諧調性が優れていた。
【0077】
〔保管性評価〕
液体現像材を室温(25℃)で1.5ヶ月保管し、凝集性を目視評価した。容器を軽く振り、再分散が容易である場合を○とし、やや再分散する場合を△、再分散が困難な場合を×とした。
【0078】
実施例1で作製した液体現像剤は、1.5か月の保管テストにおいても再分散が容易であり、また、上記画像品質評価と同様な方法で画像を形成し、1.5か月保管したものと、保管前のものとを比較したところ、画質に変化がなかった。再分散性も○であった。
【0079】
(実施例2)
<マイクロリアクターによる作製>
実施例1において油層成分を流速15ml/hで、また、アイソパーG媒体を流速800ml/hで、図6〜8に示すIMMミキサー(流路幅25μm)にそれぞれ導入し、分散した。これにより、均一な約3μmの油層液滴を含む分散液を作製した。
これをさらに、図5に示すマイクロリアクターを通すことにより、急速液中乾燥し、トナー粒子表面に所定の凹凸のある体積平均径約2μm、球形度0.75のトナーを有する液体現像剤を得た。
また、着色樹脂粒子中の隣接する凸部間のへこみ率5%以上の粒子は、全体の97個数%であった。なお、着色樹脂粒子中の着色剤濃度は13質量%であった。
【0080】
実施例2で作製した液体現像剤は、1.5か月の保管テストにおいても再分散が容易であり、また、上記画像品質評価と同様な方法で画像を形成し、1.5か月保管したものと、保管前のものとを比較したところ、画質に変化がなかった。再分散性も○であった。
【0081】
(比較例1)
実施例1において、酢酸エチル添加量385質量部を120質量部とした以外は、同様な方法により、液体現像剤を得た。着色樹脂粒子の粒径は約2μm、球形度は0.98であった。得られた液体現像剤を実施例1と同様に評価したところ、解像度が劣り、保管後の再分散性が×となった。
【0082】
(比較例2)
実施例1において、酢酸エチル添加量385質量部を600質量部とした以外は、同様な方法により、液体現像剤を得た。着色樹脂粒子の粒径は約1.8μm、球形度は0.55であった。得られた液体現像剤を実施例1と同様に評価したところ、粒子の形状が薄片状のものが混在し、細線によごれ状の画質欠陥が発生し、解像度が劣った。保管後の再分散性は○であった。
【0083】
(比較例3)
実施例1において、室温(25℃)、常圧(1気圧)で48時間を、50℃、常圧(1気圧)で24時間とした以外は、同様な方法により、液体現像剤を得た。結果、着色樹脂粒子の粒径は約2μmと同様だが、凹凸を有する粒子が着色樹脂粒子は、約85個数%であった。得られた液体現像剤を実施例1と同様に評価したところ、解像度が劣り、保管後の再分散性がやや低下し、△となった。
【符号の説明】
【0084】
1:着色樹脂粒子、2:凹部の最大深さ、
10:感光体、12:コロナ放電器、14:半導体赤外レーザー照射装置、16:静電潜像、18:現像剤タンク、20:キャリア(媒体)、22:着色樹脂粒子、24:加熱手段、26:現像電極、28:メタリングロール、30:現像像、32:イメージスタビライゼーションロール、34:転写前画像、36:バックアップロール、38:転写紙、40:転写画像、42:定着ロール、44:押圧ロール、
60:マイクロリアクター、62:混合エレメント、64:マイクロリアクター上部、66:マイクロリアクター下部、68:注入口、70:排出口、72:スリット、74:注入流路、76:排出流路、78:混合エレメント流路端部、A:油層液、B:キャリア、
102:分散液が流れる流路、104:気体が流れる流路、106:分散液が気体と接触する界面、108:基材、
202:合流流路、202a:合流流路中の分散液、202b:合流流路中の気体、202c:分散液と気体との界面、204a:分散液導入流路、204b:気体導入流路、206a:分散液排出流路、206b:気体排出流路、208:基材、210:油層液滴、212:凹凸を有する着色樹脂粒子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂及び着色剤を含む着色樹脂粒子を含み、
前記着色樹脂粒子の体積平均粒径が2μm以下であり、
前記着色樹脂粒子の球形度が0.6〜0.95であり、
透過型電子顕微鏡像により観察される前記着色樹脂粒子の粒子断面の輪郭における凸部のうち、隣接する2つの凸部の間に形成された凹部のへこみ率の最大値が5%を越える粒子が、全着色樹脂粒子の90個数%以上であることを特徴とする
液体現像剤。
【請求項2】
結着樹脂、着色剤及び揮発性溶媒を含む油層液をキャリア中に分散した分散液を作製する工程、並びに、
マイクロリアクター中において前記分散液と気体とを接触させ前記揮発性溶媒を除去する工程を含む、請求項1に記載の液体現像剤の製造方法。
【請求項3】
前記油層液の固形分濃度が30質量%以下である、請求項2に記載の液体現像剤の製造方法。
【請求項4】
前記マイクロリアクター中の前記分散液と気体とを接触させる流路の断面において、前記分散液が気体と接触する界面の幅よりも前記分散液が流れる流路の最大幅が大きい、請求項2又は3に記載の液体現像剤の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−8069(P2011−8069A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−152114(P2009−152114)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】