説明

液体現像剤

【課題】本発明の目的は、定着性、発色性に優れると共に、耐オフセット性も兼ね備えたることで、出力画像の良好な色再現性を有する液体現像剤を提供することである。
【解決手段】少なくとも、結着樹脂(A)、着色剤(B)、高分子分散剤(C)、キャリア液(D)とからなる液体現像剤であって、結着樹脂(A)が少なくとも、ポリエステル樹脂(a−1)とスチレン−アクリル共重合樹脂(a−2)とを含み、結着樹脂(A)の軟化温度が80〜140℃で、高分子分散剤(C)がピロリドン環を有する塩基性高分子分散剤を含む液体現像剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法等を利用して画像の形成がなされる電子複写機、プリンター、オンデマンド印刷機等における静電潜像を現像するために用いられる液体現像剤に関する。さらに好ましくは定着性・発色性、特にフルカラー画像作製時の重ね合わせの定着性・発色性に優れる液体現像剤に関する。
【背景技術】
【0002】
液体現像剤を用いた画像形成装置は、乾式の粉体トナーと比べて、湿式下で微粉砕、分散を行うことから微細化が可能であり、キャリアとして絶縁性液体のキャリア液を用いることからトナー粒子の機内の飛散による問題等が生じることなく高精細な画像の形成が可能であるという特徴を有している。
【0003】
液体現像剤を用いた電子写真方式の画像形成装置では、キャリア液中に微細化されたトナー粒子を分散した現像剤が用いられており、感光体上に露光によって形成された静電潜像をキャリア液中のトナー粒子を用いて現像している。現像後には、得られた像を紙などの記録媒体上に転写、乾燥、定着して画像形成がなされる。
【0004】
液体現像剤は、電気絶縁性のキャリア液中にトナー粒子を分散させたものであり、そのトナー粒子には着色性、定着性、帯電性、分散安定性が必要とされる。そのために、トナー粒子は着色剤、結着樹脂、分散剤などの添加剤で構成されており、優れた画像を得るためにはトナー粒子が安定して分散していること、安定して帯電していることが重要である。(例えば特許文献1、2等参照)
液体現像剤に用いるトナー粒子中に、結着樹脂成分としてポリエステル樹脂を用いることは従来から知られている。ポリエステル樹脂は透光性が高い為、得られる画像の発色性が良く、適正な色彩を得やすいという特徴がある。また、ポリエステル樹脂はガラス転移点や軟化点の制御が比較的容易であることから、液体現像剤の定着性向上を図る上で、その組成や物性についても検討が行われてきた。(例えば特許文献3参照)
しかしながら、少ない熱量で定着が可能な結着樹脂を用いる場合、トナー粒子が溶融状態で熱圧着ローラーの表面とトナー像とが接触するため、一部が紙に完全に固着せず、熱圧着ローラー表面に付着し、次の紙に再転移するというオフセット現象が発生しやすくなる問題を有している。
【0005】
また、液体現像剤の定着性向上には、トナー粒子の接触・合一を進行させるため、液体現像剤としての分散性を低下させることが効果的であるが、分散性の低下によって画像濃度の低下や、画像の長期安定性、現像剤の分散安定性が損なわれるという問題があることから、定着性を阻害しにくい高分子分散剤の検討も行われてきた。(例えば特許文献4参照)
さらに低温での定着性向上を図るために、トナー粒子を構成する結着樹脂に対して可塑化効果のある脂肪酸モノエステルなどをキャリア液中に含ませる検討も行われてきた。(例えば特許文献5参照)
しかしながら、脂肪酸モノエステルを用いると可塑化効果が顕著にはたらき、耐オフセット性が悪くなる等の問題が発生しやすくなる。
【0006】
このように、液体現像剤の定着性と耐オフセット性・画像特性・分散安定性はトレードオフの関係にあり、全てを満たすためには改善の余地があるのが現状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭55−153946号公報
【特許文献2】特開平5−333607号公報
【特許文献3】特開2004−205843号公報
【特許文献4】特開2009−145535号公報
【特許文献5】特開2008−225442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、液体現像剤は画像の高画質化に優れたもの、トナー粒子の定着性、特に重ね合わせの定着性と耐オフセット性、画像濃度・画像特性の長期安定性、現像剤の分散安定性を両立させることにおいて改善の余地があった。この問題点を解決し、トナー粒子の良好な定着性、出力画像の良好な発色性、色再現性、長期安定性を有する液体現像剤が求められている。
【0009】
本発明の目的は、発色性、定着性に優れ、印刷枚数や印刷面積が増加しても液体現像剤中のトナー粒子の分散状態や画像濃度が安定し、特に重ね合わせの定着性に優れ、耐オフセット現象や白地部のカブリの発生が生じることがなく、長期に渡って現像剤組成の変化のない画像濃度が安定した液体現像剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は鋭意検討した結果、トナー粒子中の結着樹脂が、少なくともポリエステル樹脂とスチレン−アクリル共重合樹脂からなる特定の軟化温度、好ましくは、特定の重量平均分子量を有する結着樹脂を含み、高分子分散剤としてピロリドン環を有する塩基性高分子分散剤を用いることで、上記目的が達成できることを見出して、本発明に至ったものである。
【0011】
本発明は、少なくとも、結着樹脂(A)、着色剤(B)、高分子分散剤(C)、及びキャリア液(D)からなる液体現像剤であって、
結着樹脂(A)が、ポリエステル樹脂(a−1)とスチレン−アクリル共重合樹脂(a−2)とを含み、結着樹脂(A)の軟化温度が、80〜140℃であり、
高分子分散剤(C)が、ピロリドン環を有する塩基性高分子分散剤を含むことを特徴とする液体現像剤に関する。
【0012】
また、本発明は、結着樹脂(A)の重量平均分子量Mwが、2000≦Mw≦10万であることを特徴とする上記液体現像剤に関する。
【0013】
また、本発明は、結着樹脂(A)の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの質量比率(Mw/Mn)が、2≦Mw/Mn≦15であることを特徴とする上記液体現像剤に関する。
【0014】
また、本発明は、結着樹脂(A)に含まれるポリエステル樹脂(a−1)とスチレン−アクリル共重合樹脂(a−2)の比率[(a−1)/(a−2)]が、1〜19であることを特徴とする上記液体現像剤に関する。
【0015】
また、本発明は、キャリア液(D)が、脂肪族系炭化水素であることを特徴とする上記液体現像剤に関する。
【0016】
また、本発明は、キャリア液(D)の蒸留範囲における乾点が、190〜350℃であることを特徴とする上記液体現像剤に関する。
【0017】
また、本発明は、液体現像剤が、結着樹脂(A)と着色剤(B)とからなるトナー粒子を含み、前記トナー粒子の平均粒径が、0.5〜4μmであることを特徴とする上記液体現像剤に関する。
【0018】
また、本発明は、トナー粒子の比表面積が、2.0〜6.0m2/cm3であることを特徴とする上記液体現像剤に関する。
【発明の効果】
【0019】
以上述べたように、液体現像剤に用いる結着樹脂として、少なくともポリエステル樹脂(a−1)とスチレン−アクリル共重合樹脂(a−2)とからなる特定の軟化温度を有する結着樹脂(A)を、高分子分散剤としてピロリドン環を有する塩基性高分子分散剤(C)を用いることで、定着性、耐オフセット性、発色性、色再現性に優れ、長期にわたって、良好な画像と安定な分散性を有する液体現像剤を得ることができる。
【0020】
この液体現像剤は、この結着樹脂(A)と高分子分散剤(C)の存在により、液体現像剤中のトナー粒子の現像特性が良好になり、初期から良好な画像濃度、色再現を有し、高速印刷時の低温定着性に優れ、定着性と耐オフセット性を両立した複写画像を得ることができる。さらに現像剤のバランスが安定し、長期にわたってキャリア液の汚染が起こらない好ましい液体現像剤を提供できた。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
【0022】
本発明の液体現像剤は、結着樹脂(A)として、軟化温度が80〜140℃であり、少なくともポリエステル樹脂(a−1)とスチレン−アクリル共重合樹脂(a−2)とを含み、高分子分散剤として、ピロリドン環を有する塩基性高分子分散剤(C)を含むことが大きな特徴である。
【0023】
結着樹脂(A)としてポリエステル樹脂(a−1)とスチレン−アクリル共重合樹脂(a−2)とを併用することにより、ポリエステル樹脂の優れた発色性・耐オフセット性、スチレン−アクリル共重合樹脂の優れた定着性・粉砕性が得られる。さらに、結着樹脂(A)の軟化点を80〜140℃にすること、ピロリドン環を有する塩基性高分子分散剤を用いることにより、ポリエステル樹脂とスチレン−アクリル共重合樹脂の極性の違いが緩和され、相溶性・均一性が得られ、液体現像剤として優れた定着性と非オフセット領域が広い耐オフセット性が得られる。さらには、結着樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)を2000≦Mw≦10万とすることで、優れた低温定着性と共に十分な画像濃度、優れた発色性を得ることができるものである。
【0024】
以下本発明の液体現像剤を構成する結着樹脂(A)と着色剤(B)とからなるトナー粒子、高分子分散剤(C)、キャリア液(D)などについて詳細に説明する。
【0025】
(トナー粒子)
本発明の液体現像剤に用いるトナー粒子は、少なくとも結着樹脂(A)と着色剤(B)とからなるものであり、加えて顔料分散剤、荷電制御剤などの添加剤を用いることも好ましい。また、高分子分散剤(C)については、キャリア液中にトナー粒子を湿式分散させる際に添加することが好ましいが、トナー粒子製造時にトナー粒子中に添加して用いることもできる。
【0026】
(結着樹脂(A))
一般的に、結着樹脂には顔料や染料などの着色剤をその樹脂中に均一分散させる機能と、紙などの基材へ定着する際のバインダーとしての機能がある。本発明の液体現像剤に用いる結着樹脂(A)は少なくとも、ポリエステル樹脂(a−1)とスチレン−アクリル共重合樹脂(a−2)を含み、結着樹脂(A)の軟化温度が80〜140℃であるものである。なお、本発明の液体現像剤に用いられる結着樹脂(A)としては、各色の色材の色相を阻害しないために無色、透明あるいは白色、淡色を呈するものが好ましい。

(ポリエステル樹脂(a−1))
ポリエステル樹脂(a−1)は熱可塑性ポリエステルであることが好ましく、2価あるいは3価以上のアルコール成分とカルボン酸などの酸成分との重縮合により得られるものである。
【0027】
アルコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブテンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、下記一般式(1)で示されるビスフェノール誘導体等の2価のアルコール類、
グリセロール、ジグリセロール、ソルビット、ソルビタン、ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、等の3価以上のアルコール類が挙げられ、これらは単独で或いは2種以上の組み合わせで使用される。
【0028】
【化1】





(式中Rはエチレンまたはプロピレン基であり、x、yはそれぞれ1以上の整数であり、かつx+yの平均値は2〜10である。)
酸成分としては、二価のカルボン酸として、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸などのベンゼンジカルボン酸類またはその無水物;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸などのアルキルジカルボン酸類またはその無水物;
またさらに炭素数16〜18のアルキル基で置換されたコハク酸もしくはその無水物;
フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸などの不飽和ジカルボン酸またはその無水物;
シクロヘキサンジカルボン酸;ナフタレンジカルボン酸;ジフェノキシエタン−2,6−ジカルボン酸等が挙げられ、
架橋成分としてはたらく三価以上のカルボン酸としてはトリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ブタントリカルボン酸、ヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、オクタンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸やその無水物等が挙げられ、これらは単独で或いは2種以上の組み合わせで使用される。
【0029】
好ましいアルコール成分は、ビスフェノールAにアルキレンオキサイドを2〜3モル付加させたもの、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール等であり、好ましい酸成分はフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸またはその無水物、コハク酸、n−ドデセニルコハク酸またはその無水物、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等のジカルボン酸類、トリメリット酸またはその無水物等のトリカルボン酸類である。
【0030】
またポリエステル樹脂(a−1)の重縮合に用いる触媒としては、アンチモン、チタン、スズ、亜鉛およびマンガンより選ばれる少なくとも一種の金属化合物など公知慣用の反応触媒が用いられ、反応が促進されてもよい。反応触媒としては、具体的には、酸化ジ−n−ブチル錫、シュウ酸第一錫、三酸化アンチモン、チタンテトラブトキシド、酢酸マンガン、酢酸亜鉛等が挙げられる。これら反応触媒の添加量は得られるポリエステル樹脂(a−1)中の酸成分に対し、通常0.001〜0.5モル%程度の量が好ましい。
【0031】
重縮合の方法としては、公知の塊状重合法を用いることができ、ポリエステル樹脂の分子量、軟化温度を制御するには反応させるアルコール成分とカルボン酸の種類、モル比、さらには反応温度、反応時間、反応圧力、触媒等を調整すればよい。さらに、ポリエステル樹脂(a−1)として市販品を用いることも可能である。例えば、ダイヤクロンER−502、ダイヤクロンER−508(いずれも三菱レイヨン社製)などがある。
【0032】
(スチレン−アクリル共重合樹脂(a−2))
スチレン−アクリル共重合樹脂(a−2)は、スチレン系モノマーと、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステル類のうちの少なくとも1種類を重合させて得られる。
【0033】
スチレン系モノマーとしては、スチレン,o−メチルスチレン,m−メチルスチレン,p−メチルスチレン,α−メチルスチレン,p−エチルスチレン,2・4−ジメチルスチレン,p−n−ブチルスチレン,p−tert−ブチルスチレン,p−n−ヘキシルスチレン,p−n−オクチクスチレン,p−n−ノニルスチレン,p−n−デシルスチレン,p−n−ドデシルスチレン,p−メトキシスチレン,p−フェニルスチレン,p−クロルスチレン,3.4−ジクロルスチレンなどがある。
【0034】
(メタ)アクリル酸エステル類としては、(メタ)アクリル酸メチル,(メタ)アクリル酸エチル,(メタ)アクリル酸プロピル,(メタ)アクリル酸ブチル,(メタ)アクリル酸イソブチル,(メタ)アクリル酸オクチル,(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル,(メタ)アクリル酸ラウリル,(メタ)アクリル酸ドデシル,(メタ)アクリル酸ステアリル,(メタ)アクリル酸2−クロルエチル,(メタ)アクリル酸フェニル,アクリル酸ジメチルアミノエチル,(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルなどがある。
【0035】
好ましいスチレン系モノマーはスチレンであり、好ましい(メタ)アクリル酸エステル類は(メタ)アクリル酸ブチル,(メタ)アクリル酸オクチル,(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルである。
【0036】
またスチレン−アクリル共重合樹脂(a−2)の分子量をより大きくする為に多官能性単量体を架橋剤として使用することができる。具体的には、ジビニルベンゼン、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1.6ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどがある。
【0037】
上記スチレン系モノマーと、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステル類からなるスチレン−アクリル共重合樹脂は、懸濁重合法、溶液重合法、乳化重合法など公知の重合方法により得られる。スチレン−アクリル共重合樹脂の分子量、軟化温度を制御するには上記スチレン系モノマーと、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステル類の種類、モル比、さらには反応温度、反応時間、反応圧力、重合開始剤、架橋剤等を調整すればよい。さらにスチレン−アクリル共重合樹脂(a−2)として市販品を用いることも可能である。例えば、アルマテックスCPR100、CPR200、CPR300、CPR600B(三井化学社製)などがある。
【0038】
(結着樹脂特性)
本発明に用いる結着樹脂(A)は少なくとも、ポリエステル樹脂(a−1)とスチレン−アクリル共重合樹脂(a−2)とを含んでいる。ポリエステル樹脂(a−1)とスチレン−アクリル共重合樹脂(a−2)を混合して、結着樹脂(A)を得るには、
ポリエステル樹脂(a−1)とスチレン−アクリル共重合樹脂(a−2)を溶融混練する、重合したポリエステル樹脂(a−1)とスチレン−アクリル共重合樹脂(a−2)のどちらか一方の存在下において、もう一方のモノマーを加えて重合する方法がある。より均一に分散された結着樹脂を得るには後者が望ましく、通常は塊状重合でポリエステル樹脂(a−1)を重縮合した後、得られたポリエステル樹脂(a−1)を溶剤に溶解させた系において、必要に応じて加熱しながらスチレン−アクリル共重合樹脂(a−2)を溶液重合にて合成し、脱溶媒する方法が好ましい。
【0039】
さらに結着樹脂(A)に含まれるポリエステル樹脂(a−1)とスチレン−アクリル共重合樹脂(a−2)の質量比率[(a−1)/(a−2)]が1〜19であることが好ましい。質量比率が19を超えると、トナー粒子の粉砕性が悪くなり、液体現像剤としての発色性・定着性が劣化する傾向にある。1を下回ると耐オフセット性が悪くなると共に、非オフセット領域が狭くなり低温定着性が劣化する傾向にある。より好ましくは、3〜19であり、さらに好ましくは5〜19である。
【0040】
(軟化温度(T4))
本発明に用いる結着樹脂(A)の軟化温度は80〜140℃の範囲である。より好ましくは90℃〜130℃の範囲である。本発明での軟化温度は、島津製作所製フローテスターCFT−500Dを用いて、開始温度40℃、昇温速度6.0℃/min、試験荷重20kg、予熱時間300秒、ダイ穴径0.5mm、ダイ長さ1.0mmの条件にて、試料1.0gの4mmが流出したときの温度を軟化温度(T4)として測定したものである。
【0041】
結着樹脂(A)の軟化温度が80℃よりも低いと混練時に軟化し過ぎてしまい、着色剤(B)の分散が悪化し、液体現像剤としての必要な画像濃度が得られなくなる。さらには耐オフセット性が劣化し、分散安定性も悪くなる。対して、軟化温度が140℃より高いと良好な定着性が得られない。
【0042】
(平均分子量)
結着樹脂(A)は、耐オフセット性および定着性、画質特性の点から、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)で測定される分子量において、ポリエステル樹脂(a−1)とスチレン−アクリル共重合樹脂(a−2)の混合物として、重量平均分子量(Mw)が2,000〜100,000のものが好ましく、5,000〜50,000のものがより好ましい。結着樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)が2,000より小さくなると、耐オフセット性、色再現性および分散安定性が低下する傾向にあり、100,000より大きくなると定着性が劣化する傾向にある。
【0043】
また、本発明に用いる結着樹脂(A)は、特定の低分子量の縮重合体成分と特定の高分子量の縮重合体成分とからなる2山の分子量分布曲線を有するタイプ、或いは1山の単分子量分布曲線を有するタイプのいずれのものであってもよい。
【0044】
さらに、結着樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比率、Mw/Mnが2〜15の範囲であることが好ましい。Mw/Mnが2を下回ると耐オフセット性が悪くなると共に、非オフセット領域が狭くなり低温定着性が劣化する傾向にある。Mw/Mnが15を超えると、トナー粒子の粉砕性が悪くなり、液体現像剤としての画像特性が劣化する傾向にある。
【0045】
なお、上記GPCによる分子量分布は、東ソー社製ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(HLC−8220)を用い、次の条件で測定した。
【0046】
40℃のヒートチャンバ中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を毎分0.6mlの流速で流し、THFに溶解した試料溶液を10μl注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。
【0047】
検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、東ソー社製の分子量が102〜107程度のものを10点用いた。検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。なお、カラムにはTSKgel SuperHM−M(東ソー社製)3本を用いた。
【0048】
また測定用サンプルは以下のようにして作成した。試料をTHF中に入れ、数時間放置した後、充分に振とうし、試料の合一体がなくなるまでTHFと良く混合し、さらに12時間以上静置する。この時、THF中への放置時間が24時間以上となるようにする。その後、サンプル処理フィルタを通過させたものをGPC測定用サンプルとする。また、サンプル濃度は、樹脂成分が0.5〜5mg/mlとなるように調整した。
【0049】
(着色剤(B))
本発明の液体現像剤に用いる着色剤(B)としては、以下に示すイエロー、マゼンタ、シアン、黒の各有機顔料、有機染料、特にその造塩化合物、カーボンブラック、磁性体が好適に用いられる。これらは単独で或いは2種以上を混合して使用することができる。またキャリア液に対して不溶であることが好ましい。
【0050】
イエローの着色剤としては、イエローの有機顔料、イエローの染料の造塩化合物を用いることが好ましい。
【0051】
イエローの有機顔料としては、ベンズイミダゾロン化合物、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、キノフタロン化合物、アゾ金属錯化合物、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、138、139、147、150、168、174、176、180、181、191等が好適に用いられる。中でもキノフタロン化合物、縮合アゾ化合物、ベンズイミダゾロン化合物を用いることが好ましい。
【0052】
またイエローの染料の造塩化合物としては、酸性染料の造塩化合物、塩基性染料の造塩化合物が用いられる。酸性染料の造塩化合物としては、C.I.アシッドイエロー11、23(タートラジン)と四級アンモニウム塩化合物とからなる造塩化合物を用いることが好ましい。四級アンモニウム塩を構成することでトナー粒子が安定した正帯電を保持することができる。
【0053】
マゼンタの着色剤としては、マゼンタの有機顔料、マゼンタの染料の造塩化合物を用いることが好ましい。
【0054】
マゼンタの有機顔料としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、ローダミンレーキ等の塩基性染料のレーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81、81:1、81:2、81:3、81:4、122、144、146、166、169、177、184、185、202、206、209、220、221、254、255、268、269等、C.I.ピグメントバイオレット1、19等が好適に用いられる。中でもキナクリドン化合物、ローダミンレーキ顔料、ナフトール系顔料等を用いることが好ましい。具体的には、ナフトールAS(C.I.ピグメントレッド269等)、ローダミンレーキ(C.I.ピグメントレッド81、81:1、81:2、81:3、81:4、169等)、キナクリドン(C.I.ピグメントレッド122等)カーミン6B(C.I.ピグメントレッド57:1)が好ましい材料である。
【0055】
またキナクリドン顔料とモノアゾ顔料であるカーミン6B(C.I.ピグメントレッド57:1)とを併用したものは良好なマゼンタ色、赤色を呈し好ましいものである。
【0056】
またマゼンタの染料の造塩化合物としては、ローダミン系酸性染料の造塩化合物、ローダミン系塩基性染料の造塩化合物が好ましく用いられる。塩基性染料の造塩化合物としては、C.I.ベーシックレッド1、同ベーシックバイオレット10と無色(色素の発色を阻害しない)の有機スルホン酸、有機カルボン酸とからなる造塩化合物を用いることが好ましい。塩基性染料は良好な正帯電を呈することからトナー粒子が安定した正帯電を保持することができる。有機スルホン酸としては、ナフタレンスルホン酸、ナフトールスルホン酸、ナフチルアミンスルホン酸等が好ましく用いられる。有機カルボン酸としては、サリチル酸誘導体や高級脂肪酸が用いられる。
【0057】
シアンの着色剤としては、シアン、青色の有機顔料、シアン、青色染料の造塩化合物、シアン、青色染料の油溶性染料を用いることが好ましい。
【0058】
シアンの有機顔料としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が利用できる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、60、62、66等が好適に用いられる。中でもC.I.ピグメントブルー15:3等の銅フタロシアニン化合物を用いることが好ましい。
【0059】
また前記有機顔料と併用する形態で、トリアリールメタン系の染料由来の化合物を用いることも好ましい。トリアリールメタン系色素は、良好な正帯電性を有することから帯電性のコントロール、着色性の両方の観点から有効な材料である。特にC.I.ソルベントブルー124等のトリアリールメタン系油溶性染料やトリアリールメタン系塩基性染料の造塩化合物は良好なものである。C.I.ソルベントブルー124としては、具体的にはクラリアント社製のCOPY BLUE PRは好ましい材料である。これはC.I.ベーシックレッド9(パラマゼンタ)とアニリンとを縮合せしめ得られたものである。
【0060】
さらに色相調整の目的で前記シアン、青色の有機顔料、シアン、青色染料の造塩化合物、シアン、青色染料の油溶性染料に加えて、緑色顔料を補色として使用することができる。緑色顔料としては、具体的にはC.I.ピグメントグリーン7、36等のハロゲン化フタロシアニン化合物が好ましい。
【0061】
黒の着色剤としては、コスト、取り扱いの点からもカーボンブラック、ペリレンブラック等の有機黒色顔料やニグロシン染料、アゾ金属錯体染料等の有機黒色染料を用いることが好ましい。
【0062】
カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、バイオマス由来のカーボンブラックなどの各種いずれも使用できるが、ファーネスブラックカーボン、バイオマスカーボンが、画像特性においてかぶり(白地部の地汚れ)が低減される効果があり好ましいものである。
【0063】
ニグロシン染料としては、ニグロシンベースを湿式粉砕等により微細化し、体積平均粒径を0.5〜2μmとしたものを用いることが好ましい。この微細化されたニグロシン染料はグロスを有し、光沢のある黒色を得ることができる。またニグロシンの微細化は特開2006−171501等に記載の方法により得られるものである。
【0064】
また黒色着色剤としては、上記イエロー、マゼンタ、シアンの3色の着色剤を用いて黒色を得ることもできる。
【0065】
さらに画像濃度が良好で、コントラストのある黒色を得るためには、黒の着色剤として黒色色素100質量部に対して、青色色素を1〜10質量部添加することが好ましい。青色色素としては、ハロゲンを含まない金属フタロシアニンブルー化合物、トリアリールメタン化合物、ジオキサジンバイオレット顔料等を用いることが好ましい。またフタロシアニンブルー化合物、トリアリールメタン化合物は安定した正帯電性を有していることも良好な黒トナー粒子を得る上で有効である。具体的には、C.I.ピグメントブルー15:3、ビクトリアピュアブルーレーキ顔料(C.I.ピグメントブルー1)、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット19、トリアリールメタン系塩基性染料と実質的に無色の有機酸とからなる造塩化合物(C.I.ベーシックブルー7と有機酸との造塩化合物)、トリアリールメタン系油溶性染料を用いることが好ましい。
【0066】
トリアリールメタン系色素は良好な正帯電を呈することでトナー粒子の帯電性制御に有効であり、中でも分散性に優れたトリアリールメタン系油溶性染料が好ましい。
【0067】
本発明に用いるトナー粒子中に含まれる着色剤(B)の含有量は、使用する結着樹脂(A)の種類により異なるが、通常、トナー粒子100質量部に対して5〜40質量部、好ましくは10〜30質量部、より好ましくは15〜25質量部である。
【0068】
本発明の液体現像剤を用いて4色を重ね合わせたフルカラー画像を得る場合はY,M,C,Bkとすることで、重ね合わせでの定着性・発色性を活かした好ましい画像が得られる。
【0069】
(高分子分散剤(C))
分散剤はトナー粒子が存在するキャリア液中に添加して、トナー粒子を均一に分散させ、現像特性を向上させる効果を有するものであるが、本発明に用いるピロリドン環を有する塩基性高分子分散剤(C)はキャリア液中に添加しても、トナー製造の混練の際にトナー粒子中に添加して用いることもできる。キャリア液中に添加して、トナー粒子を分散させた場合、ピロリドン環を有する塩基性高分子分散剤(C)は、トナー粒子表面の結着樹脂部、特に優れた分散安定性の効果を発揮するポリエステル樹脂部に吸着していると推察される。
このように、ピロリドン環を有する塩基性高分子分散剤(C)は、トナー粒子表面に吸着、あるいはトナー粒子内部に分散している状態で存在していることが好ましい。
【0070】
ピロリドン環を有する塩基性高分子分散剤(C)は、N−ビニル−2−ピロリドンと共重合可能もしくはグラフト重合可能な重合単量体より得られる。N−ビニル−2−ピロリドンと重合可能な単量体としては、特に限定されることはないが、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどの(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド誘導体、塩基性不飽和単量体およびその塩または第4級化物、ビニルアミド類、カルボキシル基含有不飽和単量体およびその塩、ビニルエステル類、ビニルエチレンカーボネートおよびその誘導体が好ましい。また、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数は10から30程度が特に好ましい。
【0071】
さらに、ピロリドン環を有する塩基性高分子分散剤(C)として、市販品を用いることも可能である。例えば、Antaron V−216、Antaron V−220(ISP社製)等がある。
【0072】
ピロリドン環を有する塩基性高分子分散剤(C)は、液体現像剤100質量部に対して、0.1〜10質量部程度添加することができる。より好ましくは、0.1〜5質量部の範囲である。0.1質量部より少ないとトナー粒子の分散性が悪く、トナー粒子の平均粒径が大きくなる傾向にあり、優れた発色性・定着性が得られない傾向にある。分散方法の変更や分散時間を長くすることで、平均粒径を小さくすることも可能であるが、これは液体現像剤の粘度上昇を引き起こし、転写性や分散安定性を劣化させる原因となる。添加量が10質量部より多い場合、トナー粒子の分散性も良く、十分な発色性が得られるが、平均粒径が小さくなり過ぎ、トナー粒子の比表面積が大きくなる傾向にある。これにより、トナー粒子が基材へ定着する際に、トナー粒子間の接触面積が大きくなり、定着性が劣化するなどの問題を発生させる傾向にある。特に、重ね合わせ画像での定着性や耐オフセット性が大きく劣化する傾向にある。
【0073】
(その他の分散剤)
分散剤には、ピロリドン環を有する塩基性高分子分散剤(C)の他に、従来から液体現像剤に使用されている分散剤を用いてもよい。具体的には、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸銅、ナフテン酸マンガン、オクチル酸コバルト、オクチル酸ジルコニウム等の脂肪酸金属塩、レシチン、チタンキレート等の有機チタネート類のチタネートカップリング剤、アルコキシチタンポリマー、ポリヒドロキシチタンカルボキシレート化合物、チタンアルコキシド、コハク酸イミド化合物、ポリイミン化合物、フッ素含有シラン化合物などである。中でもチタンアルコキシド、コハク酸イミド化合物、フッ素含有シラン化合物を液体現像剤全質量部に対して、5質量部以下の範囲において適量混合して用いてもかまわない。
【0074】
この場合、分散剤を使用する形態としては、トナー粒子と同極性になる分散剤はトナー粒子に吸着させ、トナー粒子と逆極性になる分散剤はトナー粒子に吸着させず、キャリア液中に分散させるものである。またこのときに極性を議論する基準はキャリア液に対する極性となる。また、この挙動は実際に画像試験を行った上で見極めるものであり経験的に得られるものとなる。
【0075】
(キャリア液(D))
本発明の液体現像剤に用いるキャリア液(D)としては、脂肪族系炭化水素であることが好ましい。脂肪族系炭化水素としては、直鎖状パラフィン系炭化水素、イソパラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素があげられる。これらの中でも、残留する芳香族系炭化水素が極めて少ないパラフィン系炭化水素が好ましい。また親油性を有し、化学的に安定して絶縁性を有するものが好ましい。また,キャリア液は、画像形成装置中で使用される物質または装置、特に感光体等の現像プロセス周辺部の部材に対して化学的に不活性である必要がある。
【0076】
キャリア液(D)の蒸留範囲における乾点は、190〜350℃の範囲であることが好ましい。特に好ましくは、210℃〜320℃の範囲である。190℃よりも低いと、液体現像剤が常温で乾燥し、固形物が析出してしまい、さらに現像周りの規制ブレードに固着が生じ、画像汚染を引き起こしてしまう。また350℃よりも高いと、キャリア液の除去が困難になり定着性が悪くなってしまう。
【0077】
ここで蒸留範囲における乾点は、ASTM D 86、ASTM D 1078、JIS K2254によって規定される方法によるものである。
【0078】
またキャリア液(D)は、カウリブタノール数値(KB値:ASTM D 1133)が30以下であるものを使用することが好ましい。より好ましくは20〜30の範囲である。またアニリン点(JIS K 2256)は60〜105℃の範囲であることが安定したキャリア液を得る上で好ましい。
【0079】
カウリブタノール数値が30を超える、あるいはアニリン点が60℃より低いと、溶媒としての溶解能力が高く、キャリア液がトナー粒子を溶解してしまう為、トナー粒子の安定性が悪くなる、色再現性が悪くなる、キャリア液が着色して紙などの基材を汚してしまうなどの問題が発生する。アニリン点が105℃を超えると、トナー粒子をキャリア液に分散させる際に添加する分散剤・添加剤などとの相溶性が悪く、分散不良や十分な画像濃度が得られないなどの問題が発生する。
【0080】
キャリア液(D)の絶縁性を具体的に記すと、誘電定数が5以下,好ましくは1〜5であり、より好ましくは1〜3である。
【0081】
また同時にキャリア液体(D)の電気抵抗率が109Ω・cm以上で,好ましくは1010Ω・cm以上,特に好ましくは、1010〜1016Ω・cmの範囲である。ここで電気抵抗率は、川口電機製作所社製ユニバーサルエレクトロメーターMMA−II−17Dと液体用電極LP−05とを組み合わせて行った。電気抵抗率が109Ω・cm以下の場合、トナー粒子の帯電性が悪くなり、十分な画像濃度が得られず、色再現性・発色性が悪くなる。
【0082】
さらにキャリア液(D)の15℃における密度(JIS K 2249)は、0.67〜0.9g/cm3の範囲であることが好ましい。より好ましくは、0.70〜0.85g/cm3の範囲である。この範囲において、トナー粒子と分散剤が安定して存在できる為、優れた定着性と画像濃度が得られる。
【0083】
またキャリア液(D)は、動粘度(ASTM D445)1〜20mm2/sの範囲であることが好ましい。特に好ましくは1〜10の範囲である。この範囲においては、現象時に帯電粒子を移動させることができ、また揮発性を十分有し、最終的な画像が形成された媒体から定着工程で容易にキャリア液を除去させることができる。
【0084】
動粘度が1よりも小さいと、液体現像剤の粘度が低くなるために現像ローラーへの転移性が悪く、十分な画像濃度が得られない。さらに現像後のトナー粒子が移動しやすくなるために画像の精細性が崩れやすくなり好ましくない。また動粘度が20よりも大きいと、トナー粒子の流動性が得られずに電気泳動が生じにくく、十分な画像濃度が得られない。さらに紙などの基材への浸透性が悪く、トナー粒子が定着する際のキャリア液除去が困難になり十分な定着性が得られない。特に、重ね合わせ画像での定着性は大きく劣化する。
【0085】
具体的に好ましいキャリア液体(D)は、特に商品名“アイソパーM”(Isopar TM M)(エクソン コーポレーション:Exxon Corporation)のような分枝状パラフィン溶媒混合物、特にイソパラフィン系炭化水素や、“エクソールD80”、“エクソールD110”、“エクソールD130” (Exxsol TM)のようなナフテン系炭化水素であることが好ましい。
【0086】
(その他の添加剤)
(顔料分散剤)
トナー粒子に内添する顔料分散剤の形態としては、ポリアミン系の樹脂型分散剤ソルスパース24000SC、ソルスパーズ32000(アビシア社製)、アジスパーPB821(味の素ファインテクノ社製)、アクリル共重合物の樹脂型分散剤BYK−116(ビックケミー社製)などを用いることができる。特に着色マスターバッチであるコンクを経て製造する場合は、マスターバッチ製造時に添加することが好ましい材料である。
【0087】
顔料分散剤の添加量は、トナー粒子の分散性向上の点から、着色剤(B)100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上が良い。また、トナー粒子の粉砕性・生産性向上の点から、着色剤(B)100質量部に対して、好ましくは40質量部以下、更に好ましくは30質量部以下が良い。
【0088】
(色素誘導体)
本発明に用いるトナー粒子においては、着色剤(B)の発色性を損なわない範囲で色素誘導体を用いることも可能ではある。
【0089】
色素誘導体としては、有機色素(有機顔料、有機染料)、アントラキノン、アクリドンまたはトリアジンに、塩基性置換基、酸性置換基、または置換基を有していても良いフタルイミドメチル基を導入した化合物があげられる。
【0090】
本発明においては、中でも顔料誘導体が好ましく、その構造は、下記一般式(2)で示される化合物である。
【0091】
P−Ln 式(2)
(ただし、
P:有機顔料残基、アントラキノン残基、アクリドン残基またはトリアジン残基
L:塩基性置換基、酸性置換基、または置換基を有していても良いフタルイミドメチル基
n:1〜4の整数である)
Pの有機顔料残基を構成する有機顔料としては、例えば、ジケトピロロピロール系顔料;アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料;銅フタロシアニン、ハロゲン化銅フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料;アミノアントラキノン、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、ビオラントロン等のアントラキノン系顔料;キナクリドン系顔料;ジオキサジン系顔料;ペリノン系顔料;ペリレン系顔料;チオインジゴ系顔料;イソインドリン系顔料;イソインドリノン系顔料;キノフタロン系顔料;スレン系顔料;金属錯体系顔料等が挙げられる。
【0092】
色素誘導体としては、例えば、特開昭63−305173号公報、特公昭57−15620号公報、特公昭59−40172号公報、特公昭63−17102号公報、特公平5−9469号公報等に記載されているものを使用でき、これらは単独で又は2種類以上を混合して用いることができる。
【0093】
色素誘導体の添加量は、分散性向上の点から、着色剤100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上である。また、耐熱性、耐光性の点から、着色剤100質量部に対して、好ましくは4質量部以下、更に好ましくは1.5質量部以下である。
【0094】
本発明の液体現像剤において色素誘導体は使用する着色剤(B)の種類によって適性添加量が異なるが、一般的には着色剤(B)100質量部に対して0.1質量部から30質量部の範囲で用いることが好ましい。これにより、トナー粒子の分散安定性が保たれ、トナー粒子の帯電極性の安定性が維持できる。
【0095】
本発明の液体現像剤においては、トナー粒子が正帯電性を有することから、塩基性の色素誘導体を用いることが好ましい。
【0096】
(荷電制御剤)
本発明の液体現像剤中のトナー粒子には、必要に応じて色相に支障を来たさない範囲で無色あるいは淡色の荷電制御剤が含有されてもよい。荷電制御剤は、現像されるべき静電潜像担持体上の静電荷像の極性に応じて、正荷電制御剤または負荷電制御剤が用いられる。
【0097】
本発明においては、トナー粒子は正帯電を呈することが好ましく、正荷電制御剤を通常用いるものである。
【0098】
正荷電制御剤としては、四級アンモニウム塩化合物(例えば、トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルホン酸塩、テトラブチルベンジルアンモニウムテトラフルオロボレート)、4級アンモニウム塩有機錫オキサイド(例えば、ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイド)、ジオルガノスズボレート(ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレート)、アミノ基を有するポリマー等の電子供与性物質等を単独であるいは2種以上組み合わせて用いることができる。また前記述べたトリアリールメタン系色素が好ましいことは言うまでもない。
【0099】
また上記荷電制御剤を用いる代わりに、樹脂系荷電制御剤を用いることもできる。
正帯電用としては、
一般式 −{CH2−CH(C65)a}−{CH2−CH(COOC49)}b−{CH2−C(CH3)COOC24N+CH3(C252}cCH3(C64)SO3
(このうち四級アンモニウム塩部が3〜35質量部、スチレン・アクリル部が97〜65質量部であり、それによりa,b,cの値が決まる)で表される、四級アンモニウム塩を官能基としてスチレン・アクリル樹脂に共重合したスチレン・アクリル系ポリマーが挙げられる。
【0100】
具体的には、アクリル酸2−エチルヘキシル・アクリロイルアミノ−2−メチル−1−プロパンスルホン酸・スチレン共重合物、アクリル酸ブチル・N,N−ジエチル−N−メチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウム=p−トルエンスルホナート・スチレン共重合物等である。これらは無色透明であることからカラートナーに用いるのに好適である。また樹脂系荷電制御剤は、通常、結着樹脂(A)100質量部に対して1.0〜20質量部、好ましくは2.0〜8質量部添加することが好ましい。
【0101】
(製造方法)
本発明の液体現像剤の製造方法について説明する。
本発明の液体現像剤は、以下の6つのプロセスを経て得られることが好ましい。
【0102】
(1)結着樹脂(A)の作製
本発明においてトナー粒子中の結着樹脂(A)は少なくとも、ポリエステル樹脂(a−1)とスチレン−アクリル共重合樹脂(a−2)を含んでいる。結着樹脂(A)の作製において、より均一に分散された結着樹脂を得るには、ポリエステル樹脂(a−1)とスチレン−アクリル共重合樹脂(a−2)のどちらか一方の存在下において、もう一方のモノマーを加えて重合する方法が好ましい。
【0103】
ポリエステル樹脂(a−1)とスチレン−アクリル共重合樹脂(a−2)を個別に作製する場合や、市販のポリエステル樹脂、スチレン−アクリル共重合樹脂を用いる場合は、ポリエステル樹脂(a−1)とスチレン−アクリル共重合樹脂(a−2)を混合することにより結着樹脂(A)を得ることができる。このとき両者を溶剤中に溶解させて混合、脱溶剤を行うか、溶融混練を行うかいずれの方法であってもよい。
【0104】
(2)トナー粒子用の着色マスターバッチの作製
結着樹脂(A)と着色剤(B)とをマスターバッチ中の着色剤濃度10〜60質量部の濃度で、熱ロール等を用いて混練を行い、冷却後粗砕を行い、着色マスターバッチを得る。また結着樹脂(A)、着色剤(B)に加えて、顔料分散剤、色素誘導体を添加することもできる。
【0105】
(3)トナー粒子用チップの作製(着色マスターバッチの希釈)
(2)で得た着色マスターバッチと結着樹脂(A)とを、スーパーミキサー等のミキサーで混合を行い、予備分散し、次いで溶融混練を行うことで、着色マスターバッチを結着樹脂中に希釈、展開し、トナー粒子用のチップを得る。ここでの予備分散、溶融混練を行う時点で、分散剤、塩基性高分子分散剤(C)、荷電制御剤などを添加してもよい。さらにトナー粒子用のチップはハンマーミル、サンプルミル等の粗砕により10mm以下としておくことが好ましい。
【0106】
また(2)、(3)の工程は、一本化することも可能であり、その場合は(2)の着色マスターバッチのプロセスを経ることなく、予備分散時に全ての材料を仕込み、トナー粒子用チップを作製すればよい。溶融混練としては、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、1軸、2軸のエクストルーダー等の公知の混練機を用いることができる。
【0107】
(4)トナー粒子の乾式粉砕
(3)で得られたトナー粒子用チップを微粉砕し、平均粒径で7μm以下とする。微粉砕は通常、ジェットミル等のジェット気流式粉砕機、ターボミル、クリプトロン等の機械式粉砕機を用いることが好ましい。
【0108】
(5)トナー粒子の湿式粉砕
(4)で得た乾式粉砕されたトナー粒子を、キャリア液と同一組成の溶媒に展開し、湿式粉砕機(分散機)を用いて、平均粒径で0.5〜4μm、好ましくは1〜3μmの範囲になるように粉砕を行う。またこの時にトナー粒子に吸着させる機能を有する分散剤、塩基性高分子分散剤(C)を添加することも有効である。湿式粉砕、分散工程を経て、分散剤はトナー粒子中に吸着し、帯電的にも安定化する。
【0109】
湿式粉砕(分散)を行う際は、品温が50℃を超えないように冷却することが必要である。品温が50℃を超えてしまうと、トナー粒子が融着を起こしてしまい、粒度分布の制御ができなくなる。
【0110】
トナー粒子の湿式粉砕を行うために使用することのできる湿式粉砕機としては、粉砕媒体を使用するものであり、容器駆動媒体ミル、媒体攪拌式ミルがあげられる。容器駆動媒体ミルとしては、転動ボールミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、遠心流動化ミル等があり、また媒体攪拌式ミルとしては、塔式粉砕機、攪拌槽式ミル、流通槽式ミル(横型、縦型)、アニューラーミル等があげられる。
【0111】
上記いずれの装置においても、湿式粉砕による微細化は可能であるが、中でも、媒体攪拌式ミルを用いることが生産性、粉砕能力、粒度分布の制御等の点から好ましく、更にはその中でも、密閉型、水平型のマイクロビーズを充填しメディア(媒体)として用いる、横型の流通槽式ミルに分類される湿式粉砕機を用いることが、精密な湿式粉砕、分散を行う上で好ましい。
【0112】
具体的には、WAB社(シンマルエンタープライゼス社)製、ダイノーミル(DYNO−MILL)、サンドミル等があげられる。これは、水平型の湿式粉砕機は分散メディアが重力の影響をほとんど受けないため、粉砕機内で理想に近い均一な分布を得ることができる。また完全密閉型の構造を有することから泡立ちや溶剤の蒸発による収支の欠損がなく安定した粉砕処理が可能である。
【0113】
本発明に用いる湿式粉砕機においては、粉砕性を決定づける大きな要因としては、粉砕メディアの種類、粉砕メディアの粒径、粉砕機内の分散メディアの充填率、アジテーターディスクの種類、粉砕される試料の溶液濃度、溶媒の種類等があげられる。中でも粉砕メディアの種類、メディアの粒径が粉砕性に大きく寄与するものである。
【0114】
粉砕メディアの種類としては、トナー粒子の粘度、比重及び粉砕、分散の要求粒度に応じて、ガラスビーズ(SiO2 70〜80%、NaO 12〜16%等)、ジルコンビーズ(ZrO2 69%、SiO2 31%)、ジルコニアビーズ(ZrO2 95%以上)、アルミナ(Al23 90%以上)、チタニア(TiO2 77.7%、Al23 17.4%)、スチールボール等が使用可能であるが、中でも良好な粉砕性を得るためには、ジルコニアビーズ、ジルコンビーズを用いることが好ましい。
【0115】
また粉砕メディアの粒子径(直径)は0.1mm〜3.0mmの範囲において使用可能であるが、中でも0.3〜1.4mmの範囲であることが好ましい。0.1mmよりも小さいと、粉砕機内の負荷が大きくなり、発熱によりトナー粒子が溶融してしまい粉砕が困難になってしまい、また3.0mmよりも大きいと、十分な粉砕を行うことができない。分散メディアの充填率は、40〜85%であることが好ましい。85%を超えてしまうと、粉砕機内の負荷が大きくなり、発熱によりトナー粒子が溶融してしまい粉砕が困難になってしまい、また40%以下になってしまうと、粉砕効率が低下してしまい微細化が困難になってしまう。またスラリー中のトナー粒子の濃度が高い場合(40〜50%の濃度)は充填率を40〜70質量%とするとよい。
【0116】
また、本発明に好ましく使用される湿式粉砕機内部のアジテーターディスクも粉砕性を制御する上で重要なものである。ディスクの周速は、4〜16m/sであることが好ましく、4m/sよりも小さいと粉砕に時間がかかってしまい、16m/sよりも大きいと粉砕メディア(媒体)の接触により発熱してしまい、トナー粒子が融着してしまい好ましくない。アジテーターディスクの材質としては、焼入鋼、ステンレススチール、アルミナ、ジルコニア、ポリウレタン、ポリエチレン、エンジニアリングプラスティックなどを用いることが可能であるが、中でも、ジルコニアを用いることが好ましい。
【0117】
また湿式粉砕機内壁のグライディングシリンダーの材質としては、特殊焼入鋼、ステンレススチール、アルミナ、ジルコニア、ZTA、ガラス、ポリエチレン等があげられる。中でもZTAと称されるジルコニア強化アルミナセラミックスを用いることが好ましい。
(6)液体現像剤の精製
(5)で得られた湿式粉砕を経たトナー粒子、キャリア液、分散剤を含んだ材料に、キャリア液、必要に応じてさらに分散剤を加え、混合して、トナー粒子の濃度をコントロールした上で液体現像剤を精製する。
【0118】
分散剤は、(5)工程で得られた材料に、調整用のキャリア液と共に添加することでトナー粒子が安定した状態で分散している液体現像剤を得ることができる。
(トナー物性)
本発明に用いられるトナー粒子としては、平均粒径(D50)が0.5〜4μmであることが好ましく、1〜3μmがより好ましい。また、トナー粒子の比表面積(CS)が2.0〜6.0m2/cm3であることが好ましく、3.0〜4.5m2/cm3がより好ましい。本発明での粒径と比表面積は、日機装社製レーザー回折・散乱式粒度分析計マイクロトラックHRAを用いて測定したものであり、平均粒径(D50)は累積50パーセント径の値である。
【0119】
平均粒径(D50)が0.5μmよりも小さいと十分な画像濃度は得られるが、トナー粒子の比表面積(CS)が大きくなり、トナー粒子が基材へ定着する際に、トナー粒子間の接触面積が大きくなり定着性が劣化する。特に、塩基性高分子分散剤(C)を液体現像剤全質量部に対して10質量部以上添加した場合、平均粒径(D50)が0.5μmより小さい、あるいは比表面積(CS)が6.0m2/cm3より大きくなり定着性が劣化する。さらに重ね合わせ画像を出力する際には、大きく定着性が劣化し、1色目は定着するが後刷りの2色目以降が定着しないなどの問題が生じてしまう。
【0120】
平均粒径(D50)が4μmよりも大きい、あるいは比表面積(CS)が2.0m2/cm3よりも小さいと十分な画像濃度が得られず、発色性が低下する。特に、塩基性高分子分散剤(C)が液体現像剤全質量部に対して0.1質量部以下である場合、平均粒径(D50)が4μmより大きくなりやすく、重ね合わせでの発色性・色再現性が大きく低下する。さらにはトナー粒子の湿式粉砕において粉砕性が悪くなり、液体現像剤の粘度制御が困難になる。このように塩基性高分子分散剤(C)の添加量とトナー粒子の粒径・比表面積は、トナー物性を制御する上で重要である。
【0121】
また全トナー粒子に対して2μm以下の粒径を有するトナー粒子が50体積%以下含有され、1〜3μmの粒径を有するトナー粒子が5〜60体積%含有され、5μm以上の粒径を有するトナー粒子が35体積%以下であることが、重ね合わせでの定着性・発色性を得る為の現像特性の点からより好ましい。2μm以下の粒径を有するトナー粒子が50体積%よりも多くなると定着性が劣化してしまう場合があり、5μm以上の粒径を有するトナー粒子が35体積%よりも多くなると、発色性が低下してしまう場合がある。また1〜3μmの粒径を有するトナー粒子が5〜60体積%含有されることが、トナー粒子の分散安定性、長期に渡って安定した画像濃度を得るのに好ましい。
【0122】
本発明における液体現像剤中のトナー粒子の濃度は液体現像剤100質量%に対して、10〜30質量%であることが好ましい。より好ましくは12〜25質量%である。10質量%より少ないとキャリア液の除去が難しく、トナー粒子の定着性が悪くなる。30質量%より多いとトナー粒子の移動性が悪くなり、十分な画像濃度が得られない。液体現像剤中のトナー粒子の濃度をこの範囲にすることで、重ね合わせでの定着性・発色性を発現する為に必要な現像性に優れた液体現像剤を得ることができる。
【0123】
また本発明の液体現像剤の粘度は5〜180mPa・s、液体現像剤の体積固有抵抗は1010〜1015Ω・cmであることが好ましい。
【0124】
液体現像剤の粘度は、例えば東機産業製のE型粘度計TV−22などを用いて測定することができる。液体現像剤中の固形分を25%に調整し、25℃に十分馴染ませた後、TV−22形粘度形に1°34′コーンをセットし、20rpmで1分経過後の粘度を測定した。粘度が5mPa・sより小さくなると現像後の画像の精細性に欠け、180mPa・sを超えると現像時のトナー粒子の移動性が劣り高速現像が出来ない、重ね合わせでの画像濃度が得られないなどの問題が発生する。
【0125】
体積固有抵抗は前記述べたキャリア液の測定法と同様に測定できる。1010Ω・cm以下だと感光体上の静電潜像が保持できなくなり好ましくない。
【0126】
本発明の液体現像剤の使用に際し、好ましく用いることのできる現像プロセスは、導電ゴムからなる現像ローラーに液体現像剤を供給し、LED露光されたアモルファスシリコン感光体を用いて、転写前除電、中間転写体を介して現像を行うことが好ましい。また感光体は表面電位+450〜550V、残留電位+50V以下、現像ローラーにかかるバイアスは+250〜450Vの範囲であることが好ましい。
【実施例】
【0127】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の態様はこれらの実施例に限定されるものではない。なお以下については、部数は全て質量部を表す。
【0128】
また実施例においては以下に記載する材料を用いて行った。
【0129】
(結着樹脂の合成)
(ポリエステル樹脂)
還流冷却器、蒸留等、窒素ガス導入管、温度計、攪拌機を備え付けたフラスコに表1に示す多価アルコールと多塩基酸、触媒として、ジブチル錫オキサイド2部を投入し、撹拌しながら窒素ガスを導入し、それぞれ180℃〜220℃まで加温し、反応系の温度を維持しながら2〜10時間反応させた。さらに、減圧下で1時間反応させた。常圧に戻し、反応系の温度を100℃以下に下げ、重縮合を停止させた。

【0130】
【表1】

【0131】
(スチレン−アクリル共重合樹脂)
得られたポリエステル樹脂を等量のトルエンに入れて、加熱し溶解させた。撹拌しながら窒素ガスを導入し、トルエンの沸点までさらに加温し、表2に示すスチレン系モノマー、アクリル酸エステル類、更には重合開始剤としてジ-t-ブチルパーオキサイドの混合溶液を3時間かけて滴下しながら溶液重合を行った。滴下終了後、さらにトルエンの沸点温度で所定の軟化温度になるまで反応させ、ジ-t-ブチルパーオキサイドを1部添加して重合を停止させた。次に180℃まで加温しトルエンを除去し、ポリエステル樹脂とスチレン−アクリル共重合樹脂を含む結着樹脂を得た。

【0132】
【表2】

【0133】
ポリエステル樹脂とスチレン−アクリル共重合樹脂の、どちらか一方しか含まない結着樹脂として、ポリエステル樹脂3を結着樹脂Iとした。さらに、スチレン−アクリル共重合樹脂のみの結着樹脂として、結着樹脂Jを作製した。
また、作製したポリエステル樹脂のみの結着樹脂Iとスチレン−アクリル共重合樹脂のみの結着樹脂Jをそれぞれ85質量%と15質量%混合したものを、二軸混練押出機(PCM30)で145℃にて溶融混練して得られた結着樹脂を結着樹脂Kとした。
【0134】
得られた結着樹脂A〜Kの物性値を表3に示す。
【0135】
【表3】

【0136】

(着色剤)
シアン着色剤
C.I.ピグメントブルー15:3(銅フタロシアニンブルー)
Lionol Blue FG7919(東洋インキ製造製)
マゼンタ着色剤
C.I.ピグメントレッド122(キナクリドンマゼンタ)
Hostaperm Pink E(クラリアント社製)
C.I.ピグメントレッド57:1(カーミン6B)
Permanent Rubine L6B(クラリアント社製)
イエロー着色剤
C.I.ピグメントイエロー180(ベンズイミダゾロンイエロー)
Novoperm Yellow P−HG(クラリアント社製)
ブラック着色剤
カーボンブラック NIPEX150(デグサ社製)
青色成分として上記C.I.ピグメントブルー15:3を添加
【0137】
(分散剤)
分散剤1 ピロリドン環を有する塩基性高分子化合物
Antaron V216(αオレフィン/ビニルピロリドン共重合体)
平均分子量:7300 融点:約10℃
分散剤2 ピロリドン環を有する塩基性高分子化合物
Antaron V220(αオレフィン/ビニルピロリドン共重合体)
平均分子量:8600 融点:約80℃
分散剤3 コハク酸イミド化合物
Lubrizol 2153
平均分子量:3000以下 酸価:70mgKOH/g
分散剤4 ポリイミン化合物
ソルスパーズ13940 酸化:40mgKOH/g
【0138】
(顔料分散剤)
顔料分散剤1 塩基性樹脂型分散剤(ポリアミン系樹脂)
ソルスパーズ24000SC 酸価:25mgKOH/g
【0139】
(キャリア液)
アイソパーM イソパラフィン系炭化水素
乾点:254℃ アニリン点:89℃ 動粘度:3.57mm2/s
密度:0.790g/cm3
エクソールD110 ナフテン系炭化水素
乾点:267℃ アニリン点:83℃ 動粘度:3.50mm2/s
密度:0.810g/cm3
【0140】
[実施例1]
C.I.ピグメントブルー15:3
(Lionol Blue FG7919) 20質量部
結着樹脂A 78質量部
顔料分散剤1(ソルスパーズ24000SC) 2質量部
上記材料(合計5kg)を20Lの容積を有するヘンシェルミキサーで混合(3000rpm,3分)した後、二軸混練押出機(PCM30)で供給量6kg/hr,吐出温度145℃にて溶融混練を行い、更にロール温度140℃の3本ロールにて混練を行った。冷却固化した後ハンマーミルで粗粉砕し、次いでI式ジェットミル(IDS−2型)で微粉砕し平均粒径約5.0μmのシアントナー粉砕品1を得た。
【0141】
さらに、
シアントナー粉砕品1 25質量部
アイソパーM 73質量部
分散剤1 2質量部
を秤量し、十分に攪拌、混合し、アイソパーM溶液中にシアントナー粉砕品1を分散させた。(スラリー濃度は25質量%)
このシアントナー粉砕品1を分散させたスラリーを、媒体攪拌式ミルである湿式粉砕機、ダイノーミル マルチラボ(シンマルエンタープライゼス社製、容量1.4L)を用いて循環運転を60分行い、湿式粉砕を行った。
【0142】
このときの湿式粉砕の条件は以下の通りであった。
アジテーターディスク(材質:ジルコニア)周速 10m/s,シリンダー ZTA,
メディア(材質:ジルコニア)直径 1.25mm,充填率 70%
溶液流量 45kg/h, 冷却水 5l/min. ,圧力 0.1Kg/cm2
60分間湿式粉砕を行った後、スラリーを取り出し、目開き33μm(SUS304製)のメッシュを通過させ、液体現像剤1(シアントナー粒子1を含む)を得た。シアントナー粒子1の粒度分布の確認を行ったところ、平均粒径(D50)が2.8μmであった。
【0143】
[実施例2]
C.I.ピグメントブルー15:3
(Lionol Blue FG7919) 20質量部
結着樹脂A 70質量部
顔料分散剤1(ソルスパーズ24000SC) 2質量部
分散剤2 8質量部
上記材料を実施例1と同様の条件にて混合、溶融混練、粉砕し平均粒径約5.0μmのシアントナー粉砕品2を得た。
【0144】
さらに、
シアントナー粉砕品2 25質量部
アイソパーM 75質量部
を秤量し、実施例1と同様の条件にて、混合、湿式粉砕を行い、シアントナー粒子2の平均粒径(D50)が3.1μmの液体現像剤2を得た。
【0145】
実写試験は、市販の液体現像複写機(Savin870:セイビン社製)を改造したものを用いて、23℃/50%RHの環境条件下で、アモルファスシリコン感光体を用い、感光体表面電位を+450〜500V、残留電位+50V以下、現像ローラーのバイアスを+250〜450Vに設定し、初期から1000枚の画像試験を行った。このとき画像作製は各色単色で出力を行い、紙は王子製紙製OKトップコート、熱圧着は速度30m/min、160℃の条件にて行った。
【0146】
なお、画像濃度はグレタグマクベス濃度計(D−196)にて測定した。ここで、各色の濃度値は、イエローが1.2以上、マゼンタ・シアンが1.4以上、ブラックが1.6以上の濃度値であれば、実用上好ましい。より好ましくは、イエローが1.3以上、マゼンタ・シアンが1.5以上、ブラックが1.7以上である。
【0147】
次に定着率は、1000枚後の、OD=1.1の1センチx1センチのベタ部分を出力した印字画像を用いて、まず出力時の画像濃度ID(ID1)を測定した。その後印字物にメンディングテープ(3M社製スコッチ810)を貼り、1kgの円柱状の真鍮錘を転がし1往復させた。その後メンディングテープを取り除き、再度画像濃度ID(ID2)を測定し、(ID2)/(ID1)x100を計算し定着率(%)を求めた。ここでは定着率が80%以上であれば、実用上好ましく、90%以上であればより好ましいものである。
【0148】
また、耐オフセット性については、上記液体現像複写機で出力した後、外部定着機にて速度15m/min、ニップ厚6mmで熱圧着させ、この熱圧着させるロール表面に対してトナー粒子が付着し始める温度を、以下の4段階のランク評価を行った。ここでは熱圧着ロール温度が140℃以上であれば、実用上好ましく、160℃以上であればより好ましいものである。
【0149】
◎:熱圧着ロール温度が160℃以上
○:熱圧着ロール温度が140℃以上、160℃未満
△:熱圧着ロール温度が120℃以上、140℃未満
×:熱圧着ロール温度が120℃未満
また[実施例3〜12]、[比較例1〜7]についても同様に実験条件、組成、物性結果を表4〜6に示す。また表4〜6に記載される以外の条件については、実施例1と同様に行った。
【0150】
[実施例13]
C.I.ピグメントレッド122
(Hostaperm Pink E) 10質量部
C.I.ピグメントレッド57:1
(Permanent Rubine L6B) 10質量部
結着樹脂A 78質量部
顔料分散剤1(ソルスパーズ24000SC) 2質量部
上記材料を実施例1と同様の条件にて混合、溶融混練、粉砕し平均粒径約5.0μmのマゼンタトナー粉砕品1を得た。
【0151】
さらに、
マゼンタトナー粉砕品1 25質量部
アイソパーM 73質量部
分散剤1 2質量部
を秤量し、実施例1と同様の条件にて、混合、湿式粉砕を行い、マゼンタトナー粒子1の平均粒径(D50)が3.0μmの液体現像剤20を得た。
【0152】
また[実施例14〜22]、[比較例8〜16]についても同様に実験条件、組成、物性結果を表4〜6に示す。また表4〜6に記載される以外の条件については、実施例1と同様に行った。
【0153】
詳細の実験条件、組成、物性結果を表4〜表6に示す。表4はトナー粉砕品組成、表5は液体現像剤組成及び物性、表6は画像試験結果を表す。

なお、表中、結着樹脂に関して範囲外のものを含む液体現像剤には、「液体現像剤−a」と表し、分散剤に関して範囲外のものを含む液体現像剤には、「液体現像剤−b」と表記した。
【0154】
【表4】

【0155】
【表5】

【0156】

【0157】
【表6】

【0158】
[実施例23〜34][比較例17〜23]
更に、定着率と耐オフセット性については、マゼンタ/シアンの重ね合わせ画像を作製し、ブルー色相としての評価を行った。
【0159】
まず、RDS社製バーコーター#5にて、実施例13に示した液体現像剤20を用いてマゼンタトナーを塗布した。その後、シアントナーとして、液体現像剤1〜19をそれぞれ同様に塗布して、重ね合わせ画像を作製した。作製した画像を、80℃オーブン中に30秒間静置した後、熱圧着させ画像サンプルを得た。
【0160】
定着性と耐オフセット性について、単色出力サンプルと同様の方法にて評価を行った。表7に、実施例23〜34、比較例17〜23についてのマゼンタ/シアンの組み合わせ及び試験結果を示す。
【0161】
【表7】

【0162】
実施例1〜22については、定着率、画像濃度、耐オフセット性の全てが良好である。表6からわかるように、ポリエステル樹脂(a−1)とスチレン−アクリル共重合樹脂(a−2)とを含む軟化点が80〜140℃である結着樹脂(A)と、ピロリドン環を有する塩基性高分子分散剤(C)のどちらかを含まない場合は、定着率、画像濃度、耐オフセット性の何れかが劣ってしまうことがわかる。さらに、シアン/マゼンタの重ね合わせ画像の評価においては、表7からわかるように、実施例23〜34は、定着率、耐オフセット性が良好であるのに対し、比較例17〜23は、定着率、耐オフセット性共に劣ってしまうことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0163】
本発明の液体現像剤は、定着性、色再現性、オフセット性に優れ、電子写真法、静電記録法等を利用して画像の形成がなされる電子複写機、プリンター、オンデマンド印刷機等における静電潜像を現像するために用いられる液体現像剤として好ましく用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、結着樹脂(A)、着色剤(B)、高分子分散剤(C)、及びキャリア液(D)からなる液体現像剤であって、
結着樹脂(A)が、ポリエステル樹脂(a−1)とスチレン−アクリル共重合樹脂(a−2)とを含み、結着樹脂(A)の軟化温度が、80〜140℃であり、
高分子分散剤(C)が、ピロリドン環を有する塩基性高分子分散剤を含むことを特徴とする液体現像剤。
【請求項2】
結着樹脂(A)の重量平均分子量Mwが、2000≦Mw≦10万であることを特徴とする請求項1に記載の液体現像剤。
【請求項3】
結着樹脂(A)の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比率(Mw/Mn)が、2≦Mw/Mn≦15であることを特徴とする請求項1または2に記載の液体現像剤。
【請求項4】
結着樹脂(A)に含まれるポリエステル樹脂(a−1)とスチレン−アクリル共重合樹脂(a−2)の質量比率[(a−1)/(a−2)]が、1〜19であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の液体現像剤。
【請求項5】
キャリア液(D)が、脂肪族系炭化水素であることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の液体現像剤。
【請求項6】
キャリア液(D)の蒸留範囲における乾点が、190〜350℃であることを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の液体現像剤。
【請求項7】
液体現像剤が、結着樹脂(A)と着色剤(B)とからなるトナー粒子を含み、前記トナー粒子の平均粒径が、0.5〜4μmであることを特徴とする請求項1〜6いずれかに記載の液体現像剤。
【請求項8】
トナー粒子の比表面積が、2.0〜6.0m2/cm3であることを特徴とする請求項7に記載の液体現像剤。