説明

液封入式防振装置

【課題】通常使用領域での減衰性能を確保するとともに、大振幅入力時の急激な圧力変動に起因するキャビテーションを緩和する。
【解決手段】防振基体16とダイヤフラム20との間に形成された液体封入室18に仕切り部28を設け、この仕切り部28に、主液室18Aと副液室18Bを区画する弾性膜34を設ける。弾性膜34の主液室側膜面34Mと副液室側膜面34Nのうち主液室側膜面34Mから主液室18A内に突出する突起38を設け、該突起が設けられた弾性膜部分34Bに、突起38を含めて弾性膜34を膜厚方向Tに貫通する切込み40を設けることにより、主液室18Aの急激な圧力変動による切込み40の開きに方向性を持たせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液封入式防振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車エンジン等の振動源の振動を車体側に伝達しないように支承するエンジンマウント等の防振装置として、車体側に取り付けられる第1取付具と、振動源側に取り付けられる第2取付具と、これら取付具の間に介設されたゴム状弾性体からなる防振基体と、可撓性ゴム膜からなるダイヤフラムと、防振基体が室壁の一部をなす主液室と、ダイヤフラムが室壁の一部をなす副液室と、これら液室間を連通させるオリフィス通路とを備えた液封入式防振装置が知られている。
【0003】
かかる液封入式防振装置においては、通常の振動入力時には、オリフィス通路での液流動による液柱共振作用や防振基体の制振効果により、振動減衰機能と振動絶縁機能が果たされるが、大きな振動が入力したときに、防振装置自体が異音発生源となってこれが車室内に伝達されてしまうことがある。
【0004】
この異音は、液室内でのキャビテーションにより発生するものである。キャビテーションは、防振装置に大きな振動が入力したときに、オリフィス通路が目詰まりし、これにより主液室内が過度な負圧状態となって、封入された液体の飽和蒸気圧を下回ることで、多数の気泡が発生することにより生じる現象である。そして、このようにして発生した気泡が消滅するときの衝撃音が異音となって外部に伝達されるのである。
【0005】
そこで、このキャビテーションによる異音の発生を防止するために、例えば、下記特許文献1には、主液室と副液室を仕切る仕切り部に弾性膜を設けるとともに、該弾性膜に切込みを設け、更にこの弾性膜を上下で違う孔を持つ拘束板で挟み込むことにより、大振幅入力時の主液室の液圧変動による切込みの開きに方向性を持たせ、主液室が過大な負圧状態になるのを防止することが開示されている。
【0006】
また、下記特許文献2には、主液室と副液室を仕切る仕切り部に弾性膜を設けるとともに、該弾性膜に自身を貫通する切込みを設けて、引っ張り及び圧縮段階に関する共通の弁を構成し、この弁の開閉により極度の正圧状態及び極度の負圧状態を回避して、不愉快な騒音やキャビテーションによる異音を抑制することが開示されている。
【特許文献1】特開2006−112607号公報
【特許文献2】特公平7−107416号公報
【特許文献3】特開2005−61482号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に開示の構造では、弾性膜を挟み込む上下の拘束板が必要であり、防振装置への大振幅入力時に弾性膜がこれら拘束板と接触することによる打音が発生するという問題がある。
【0008】
また、上記特許文献2の構造では、キャビテーションが問題となる引張側だけでなく、圧縮側においても弁からの液体流動が発生し、通常使用領域において本来期待されるオリフィス通路での液体流動が減少し、結果として減衰性能が低下してしまう。
【0009】
なお、上記特許文献3には、仕切り部に設けられた弾性膜の中央部に主液室へ向かって突出する主液室側調節突部を設け、この突部を中央の調節間隙を挟んで一対の先端を対向させることが構成する点が開示されている。しかしながら、同文献において、上記突部は動バネ曲線の非線形特性を改善するために、弾性膜全体の副液室側への過度な変形を規制するために設けられたものであり、キャビテーション対策になるものではなく、また、該突部に重なるように弾性膜を貫通する切込みを設ける点も開示されていない。
【0010】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、通常使用領域での減衰性能を確保するとともに、大振幅入力時の急激な圧力変動に起因するキャビテーションを緩和することができる液封入式防振装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る液封入式防振装置は、振動源側と支持側の一方に取り付けられる第1取付具と、振動源側と支持側の他方に取り付けられる第2取付具と、前記第1取付具と第2取付具との間に介設されたゴム状弾性体からなる防振基体と、前記第1取付具に取付けられて前記防振基体との間に液体封入室を形成する可撓性のダイヤフラムと、前記液体封入室を前記防振基体側の主液室と前記ダイヤフラム側の副液室に仕切る仕切り部と、前記主液室と副液室を連通させるオリフィス通路と、を備えてなる液封入式防振装置において、前記仕切り部が前記主液室と副液室を区画する弾性膜を有し、該弾性膜の主液室側膜面と副液室側膜面のうち主液室側膜面から前記主液室内に突出する突起が設けられ、該突起が設けられた弾性膜部分に前記突起を含めて前記弾性膜を膜厚方向に貫通する切込みが設けられたものである。
【0012】
このように弾性膜の主液室側膜面に突起を設けた上で、突起とともに弾性膜を貫通する切込みを設けたことにより、主液室の急激な圧力変動による切込みの開きに方向性を持たせることができる。すなわち、主液室内の液圧が低下し負圧状態にあるときには、主液室側への弾性変形により切込みが開口することで、副液室から主液室への液体の流動が許容されるが、主液室内の液圧が上昇し正圧状態にあるときには、上記突起が設けられたことで切込みが開口しにくく、主液室から副液室への液体の流動が阻止ないし制限される。そのため、例えば、防振装置への大振幅入力時、主液室内が過度の負圧状態になったときには、切込みの開口による副液室から主液室への液体の流動により主液室内の負圧状態が速やかに解消され、キャビテーションの発生が抑制される。一方、該切込みを介した主液室から副液室への液体の流動は阻止ないし制限されるので、通常使用領域において、オリフィス通路を流動する液体の量が減少せず、高減衰性能を確保することができる。しかも、このような切込みの開きの方向性が拘束板を用いることなく実現されるので、打音の問題も解消することができる。
【0013】
上記液封入式防振装置においては、前記第1取付具が筒状をなし、前記仕切り部が、前記第1取付具の周壁部の内側に設けられて前記オリフィス通路を形成する環状のオリフィス形成部材と、前記オリフィス形成部材の内周部に外周部が保持されて前記オリフィス形成部材の内周部の間を塞ぐ前記弾性膜とを備えてなり、前記弾性膜が前記オリフィス形成部材の内周部に対して軸直角方向内方に圧縮した状態に嵌合されてもよい。このように弾性膜を軸直角方向内方に圧縮した状態に保持することにより、切込みが開口するために要する圧力差を大きくすることができ、通常使用領域で切込みを開口しにくくできる。
【0014】
この場合、前記弾性膜の外周部に前記主液室側に向かって軸直角方向内方に傾斜した第1傾斜面部が設けられるとともに、前記第1傾斜面部が嵌合する前記オリフィス形成部材の内周部に前記主液室側に向かって軸直角方向内方に傾斜した第2傾斜面部が設けられ、前記弾性膜が前記オリフィス形成部材に対して前記副液室側から軸方向に圧入して組み付けられてもよい。このような傾斜面部を設けることで、弾性膜を上記圧縮状態に簡単に嵌合させることができる。また、傾斜面部の角度を変更することで、弾性膜の圧縮状態を任意にコントロールすることができ、従って、切込みが開口するために要する圧力差を容易に調整することができる。
【0015】
上記液封入式防振装置においては、オリフィス形成部材が、前記第2傾斜面部から軸直角方向内方に延設されて前記弾性膜の主液室側膜面の外周部を押圧保持する内周フランジ部を有し、該内周フランジ部の内周縁部が湾曲部を介して防振基体側に立ち上げられた形状をなしてもよい。このような形状の内周フランジ部を設けることにより、弾性膜が主液室側に弾性変形したときのオリフィス形成部材との打音を防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、主液室の急激な圧力変動による切込みの開きに方向性を持たせることができ、大振幅入力時における主液室の圧力低下に起因するキャビテーション発生の緩和と、通常使用領域での高減衰性能の確保と、を両立することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は、一実施形態に係る液封入式防振装置10の縦断面図である。この防振装置10は、自動車のエンジンを支承するエンジンマウントであり、支持側の車体に取り付けられる筒状をなす下側の第1取付具12と、振動源であるエンジン側に取り付けられる上側の第2取付具14と、これら両取付具12,14の間に介設されて両者を連結するゴム弾性体からなる防振基体16と、この防振基体16に対向して第1取付具12に取り付けられて防振基体16との間に液体封入室18を形成する可撓性ゴム膜からなるダイヤフラム20とを備えてなる。
【0019】
第1取付具12は、内側に上記液体封入室18を形成する筒状胴部22と、その下端部22Aにかしめ締結された有底筒状部24とからなる本体金具である。第2取付具14は、第1取付具12の軸芯部上方に配されたボス金具である。防振基体16は、略傘状に形成され、その上部に第2取付具14が埋設された状態に加硫接着され、下端外周部が筒状胴部22の上端開口部22Bに加硫接着されている。防振基体16の下端部には、筒状胴部22の内周面を覆うゴム層26が連なっている。ダイヤフラム20は、その外周部に環状の補強金具20Aが埋設一体化され、この補強金具20Aが筒状胴部22と有底筒状部24とのかしめ締結部に固定されている。
【0020】
液体封入室18は、筒状胴部22の内側において、防振基体16の下面とダイヤフラム20との間に形成されており、仕切り部28によって、防振基体16側、即ち防振基体16が室壁の一部をなす上側の主液室18Aと、ダイヤフラム20側、即ちダイヤフラム20が室壁の一部をなす下側の副液室18Bとに仕切られている。主液室18Aと副液室18Bは、単一のオリフィス通路30により互いに連通されている。
【0021】
仕切り部28は、筒状胴部22の周壁部22Cの内側にゴム層26を介して嵌着された環状のオリフィス形成部材32と、その内側で主液室18Aと副液室18Bを軸方向Xに区画するゴム状弾性体からなる弾性膜34と、オリフィス形成部材32の下端を受けるリング板状の仕切り受板36とから構成されている。
【0022】
オリフィス形成部材32は、外向きに開かれた断面コの字状をなし、ゴム層26を介して筒状胴部22の内周面に嵌合されることで、当該内周面との間に、周方向に沿って延びる上記オリフィス通路30を形成する。オリフィス形成部材32は、仕切り受板36を、補強金具20Aとともに、筒状胴部22と有底筒状部24とのかしめ締結部に固定することにより、防振基体16の下端部と仕切り受板36との間で軸方向Xに挟まれた状態に保持されている。オリフィス形成部材32は、軸直角方向内方Y1に突出するフランジ状の内周部32Aを備える。
【0023】
弾性膜34は、その外周部34Aがオリフィス形成部材32の内周部32Aに加硫接着により保持されて、該内周部32Aの間を塞ぐゴム部材であり、円板状をなしている。弾性膜34には、略一定の肉厚をなす弾性膜本体から主液室18A側に向けて突起38が突設されている。すなわち、突起38は、弾性膜34の主液室側膜面34Mと副液室側膜面34Nのうち主液室側膜面34Mから主液室18A内に突出して設けられており、副液室側膜面34Nには設けられていない。この例では、突起38は、図2,3に示すように、円錐台状をなし、弾性膜34の中央部に設けられている。
【0024】
図1〜3に示すように、弾性膜34には、上記突起38が設けられた弾性膜部分34Bに、該突起38を含めて弾性膜34を膜厚方向T(軸方向Xと同じ方向)に貫通する切込み40が設けられている。切込み40は、弾性膜34を膜厚方向Tに貫通して主液室18Aと副液室18Bを連通可能とするスリット、即ち切断線であり、図1に示す中立位置では閉塞され、軸方向Xに弾性変形することで開口する。
【0025】
詳細には、切込み40が設けられた部分において主液室18A側のみに上記突起38が設けられていることで、切込み40の開口に方向性が付与されている。すなわち、主液室18Aが副液室18Bに対して圧力が低く負圧状態にあるときには、切込み40近傍の弾性膜部分が主液室18A側に引っ張られるように弾性変形することで開口可能であり、副液室18Bから主液室18Aへの液体の流動が許容される。一方、主液室18Aが副液室18Bに対して圧力が高く正圧状態にあるときには、突起38によって切込み40の開口が妨げられ、主液室18Aから副液室18Bへの液体の流動は阻止ないし制限される。
【0026】
切込み40は、図3に示すように平面視で、突起38の中心Oから放射状に設けられており、複数の切込み40が該中心Oから外側に向けて均等な角度で形成されている。ここでは、6本の切込み40が60°の角度をなして設けられているが、4本の切込みを十字状に設けても、あるいはまた3本の切込みをY字状に設けてもよく、特に限定されない。
【0027】
また、切込み40は、その外端40Aが、突起38が設けられた弾性膜部分34Bよりも外側の弾性膜部分34Cまで延在している。すなわち、突起38は、切込み40が設けられた範囲よりも小さく形成されており、これにより、突起38のボリュームを小さくして、切込み40が主液室18A側に開くときの抵抗を小さくしている。切込み40は、弾性膜34をその径方向の全体で切断するものではなく、切込み40の外側には切断されていない弾性膜部分が確保されている。なお、切込み40は、突起38が設けられた弾性膜部分34B内に収まるように設けることもできる。
【0028】
以上よりなる本実施形態の液封入式防振装置10であると、通常使用領域、例えば振幅0.5mm程度のシェイク振動時において、第2取付具14が下方に向かう圧縮側の変位が入力し、主液室18Aが正圧状態となったときには、弾性膜34に上記突起38が設けられたことで切込み40が開口しにくく、主液室18Aから副液室18Bへの液体の流動が阻止される。そのため、オリフィス通路30を流動する液体の量が減少せず、高減衰性能を確保することができる。
【0029】
一方、振幅1mmを超えるような大振幅入力時、例えば振幅2mm程度の振動入力時において、第2取付具14が上方に向かう引張側の変位が入力し、主液室18Aが過度な負圧状態となったときには、弾性膜34、特に切込み40近傍の弾性膜部分が上方に捲れるように弾性変形し、切込み40が開口することで、副液室18Bから主液室18Aに液体が流動する。これにより、主液室18A内の負圧状態が速やかに解消され、キャビテーションの発生が抑制される。
【0030】
また、突起38が弾性膜34の中央部に設けられ、この中央部の弾性膜部分に切込み40を設けたので、切込み40が開口しやすい。また、切込み40が突起38の中心から放射状に設けられていることからも、切込み40を開口しやすくすることができる。
【0031】
図4は他の実施形態に係る液封入式防振装置100を示したものである。この例では、仕切り部28の構成が上記実施形態とは異なる。すなわち、仕切り部28は、オリフィス形成部材132と、弾性膜134と、仕切り受板136とからなり、これら各部材は、基本構成は先の実施形態におけるオリフィス形成部材32、弾性膜34及び仕切り受板36とそれぞれ共通しているが、次の点で先の実施形態のものとは相違する。以下、相違点のみについて説明する。
【0032】
この例では、弾性膜134は、外周部134Aが厚肉状をなし、この外周部134Aがオリフィス形成部材132の内周部132Aに対して、加硫接着ではなく、嵌合状態に保持されている。詳細には、弾性膜134の外周部134Aは、オリフィス形成部材132の内周部132Aと仕切り受板136の内周部136Aとの間で軸方向Xに挟持されている。
【0033】
また、弾性膜134の外径は、これが嵌合するオリフィス形成部材132の内周部132Aの径よりも大きく設定されており、それにより、弾性膜134は、オリフィス形成部材132の内周部132Aに対して、軸直角方向内方Y1に圧縮した状態、即ち縮径状態に嵌合されている。
【0034】
詳細には、図5,6に示すように、弾性膜134の外周部134Aには、上方即ち主液室18A側に向かって軸直角方向内方Y1に傾斜した第1傾斜面部138が設けられている。すなわち、弾性膜134の外周面は主液室18A側ほど漸次小径のテーパー面状をなす第1傾斜面部138を構成している。また、この第1傾斜面部138が嵌合するオリフィス形成部材132の内周部132Aには、第1傾斜面部138と同様に、主液室18A側に向かって軸直角方向内方Y1に傾斜した第2傾斜面部140が設けられている。そして、弾性膜134は、オリフィス形成部材132に対して、下方即ち副液室18B側から軸方向Xに圧入して組み付けられており、これにより、弾性膜134は圧入とともに第2傾斜部140で軸直角方向内方Y1に絞られるので、弾性膜134を縮径状態に簡単に嵌合させることができる。
【0035】
このように弾性膜134を縮径状態に保持すると、切込み40の切断面同士が圧接されるので、切込み40が開口するために要する主液室18Aと副液室18Bとの圧力差が大きくなる。このことにより、本実施形態では、通常使用領域では切込み40がいずれの方向にも開口しないように設定されており、通常使用領域での高減衰性能をより一層確保することができる。また、上記傾斜面部138,140の角度を変更することで、弾性膜134の縮径状態を任意にコントロールすることができるので、切込み40が開口するために要する圧力差を容易に調整することが可能となる。より詳細には、この例では、弾性膜134の第1傾斜面部138の軸方向Xに対する傾斜角度θ1は、オリフィス形成部材132の第2傾斜面部140の軸方向Xに対する傾斜角度θ2よりも小さく設定されており、これにより、より効果的に弾性膜134を縮径することができる。
【0036】
また、この実施形態では、オリフィス形成部材132は、上記第2傾斜面部140を設けたことにより、外向きに開かれた断面横倒V字状をなしている。そして、この第2傾斜面部140の上端から軸直角方向内方Y1に内周フランジ部142が全周にわたって延設されている。内周フランジ部142は、弾性膜134の主液室側膜面134Mの外周部134Aを押圧することにより、仕切り受板136の内周部136Aとの間で弾性膜134を挟圧保持する部分である。この内周フランジ部142の内周縁部142Aは、湾曲部142Bを介して上方即ち防振基体16側に立ち上げられた形状をなしている。このように内周フランジ部142を湾曲状に立ち上げることにより、弾性膜134が主液室18A側に弾性変形したときのオリフィス形成部材132との打音を防止することができる。
【0037】
なお、この実施形態では、弾性膜134の突起38周りの主液室側膜面134Mに環状の凹み144が設けられており、これにより、大振幅入力時、主液室18Aが過度な負圧状態となったときに、弾性膜134の切込み40周りの弾性膜部分が変形しやすくなり、切込み40が迅速に開口できるように構成されている。
【0038】
その他の構成は、突起38及び切込み40の構成を含めて図1の実施形態と同様であり、該実施形態で上述したのと同様の作用効果が奏される。
【0039】
なお、上記実施形態では、単一のオリフィス通路を持つシングルオリフィス構造の防振装置について説明したが、複数の液室間をオリフィス通路にて連通させる液封入式防振装置であれば、ダブルオリフィス構造の防振装置など、種々の液封入式防振装置に適用可能である。
【0040】
また、上記液封入式防振装置10,100は、上下反転させて車両に組み付けられるものであってもよく、更には、エンジンマウント以外にも、ボディマウント、デフマウントなど、種々の防振装置に適用可能である。その他、一々列挙しないが、本発明の趣旨を逸脱しない限り、種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】一実施形態に係る液封入式防振装置の縦断面図
【図2】同防振装置の仕切り部を切断して示す斜視図
【図3】同仕切り部の弾性膜の平面図
【図4】他の実施形態に係る液封入式防振装置の縦断面図
【図5】該他の実施形態に係る仕切り部の断面図
【図6】該他の実施形態に係る仕切り部の分解断面図
【符号の説明】
【0042】
10,100…液封入式防振装置
12…第1取付具
14…第2取付具
16…防振基体
18…液体封入室、18A…主液室、18B…副液室
20…ダイヤフラム
28…仕切り部
30…オリフィス通路
32,132…オリフィス形成部材、32A,132A…内周部
34,134…弾性膜、34A,134A…外周部、34B…突起が設けられた弾性膜部分、34C…突起よりも外側の弾性膜部分、34M,134M…主液室側膜面、34N…副液室側膜面
38…突起
40…切込み、40A…外端
138…第1傾斜面部
140…第2傾斜面部
142…内周フランジ部、142A…内周縁部、142B…湾曲部
O…突起の中心
T…膜厚方向
X…軸方向
Y1…軸直角方向内方
θ1…第1傾斜面部の傾斜角度
θ2…第2傾斜面部の傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動源側と支持側の一方に取り付けられる第1取付具と、
振動源側と支持側の他方に取り付けられる第2取付具と、
前記第1取付具と第2取付具との間に介設されたゴム状弾性体からなる防振基体と、
前記第1取付具に取付けられて前記防振基体との間に液体封入室を形成する可撓性のダイヤフラムと、
前記液体封入室を前記防振基体側の主液室と前記ダイヤフラム側の副液室に仕切る仕切り部と、
前記主液室と副液室を連通させるオリフィス通路と、
を備え、
前記仕切り部が前記主液室と副液室を区画する弾性膜を有し、前記弾性膜の主液室側膜面と副液室側膜面のうち主液室側膜面から前記主液室内に突出する突起が設けられ、前記突起が設けられた弾性膜部分に前記突起を含めて前記弾性膜を膜厚方向に貫通する切込みが設けられた、
液封入式防振装置。
【請求項2】
前記第1取付具が筒状をなし、前記仕切り部が、前記第1取付具の周壁部の内側に設けられて前記オリフィス通路を形成する環状のオリフィス形成部材と、前記オリフィス形成部材の内周部に外周部が保持されて前記オリフィス形成部材の内周部の間を塞ぐ前記弾性膜とを備えてなり、前記弾性膜が前記オリフィス形成部材の内周部に対して軸直角方向内方に圧縮した状態に嵌合された、請求項1記載の液封入式防振装置。
【請求項3】
前記弾性膜の外周部に前記主液室側に向かって軸直角方向内方に傾斜した第1傾斜面部が設けられるとともに、前記第1傾斜面部が嵌合する前記オリフィス形成部材の内周部に前記主液室側に向かって軸直角方向内方に傾斜した第2傾斜面部が設けられ、前記弾性膜が前記オリフィス形成部材に対して前記副液室側から軸方向に圧入して組み付けられた、請求項2記載の液封入式防振装置。
【請求項4】
前記第1傾斜面部の軸方向に対する傾斜角度が、前記第2傾斜面部の軸方向に対する傾斜角度よりも小さく設定された、請求項3記載の液封入式防振装置。
【請求項5】
前記オリフィス形成部材が、前記第2傾斜面部から軸直角方向内方に延設されて前記弾性膜の主液室側膜面の外周部を押圧保持する内周フランジ部を有し、前記内周フランジ部の内周縁部が湾曲部を介して前記防振基体側に立ち上げられた形状をなしている、請求項3記載の液封入式防振装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−133358(P2009−133358A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−308356(P2007−308356)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】