説明

液晶表示用照明装置

【課題】 熱陰極蛍光ランプの寿命への影響を抑え、かつ液晶の動画性能改善を行う、熱陰極蛍光ランプを用いた液晶表示用照明装置を提供する。
【解決手段】 本液晶表示用照明装置は、少なくとも一対のフィラメント6,7を電極に有する複数の熱陰極蛍光ランプ3(31〜35)を光源として用い、複数の熱陰極蛍光ランプの点灯状態を維持し、かつ複数の熱陰極蛍光ランプが順次明暗を繰り返すように各熱陰極蛍光ランプを調光する。ランプ調光時の管電流の実効値は、ランプ通常点灯時の管電流の実効値が20%〜40%の範囲にあることが望ましい。また、調光による各熱陰極蛍光ランプの明暗の繰返し周波数は50Hz以上であることが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示用照明装置に関し、特に熱陰極蛍光ランプを光源として用いた液晶表示用照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置用の代表的なバックライト方式としては従来から、液晶パネルの側面側に蛍光ランプを配置し導光板を通じて液晶パネルに光を照らすエッジライト方式と、液晶パネルの背面に蛍光ランプを配置し、直接液晶パネルを照らす直下式とがある。
【0003】
エッジライト方式はバックライトユニットを薄く出来る反面、構造上使用できるランプ数に限りがあるため、中型もしくは小型液晶パネルへの適用が主流となっている。一方、直下式は液晶パネルの背面にランプを配置するため、厚みは増すがランプを多く配置できかつ高効率であるため、主に大型テレビへの適用が主流となっている。
【0004】
従来からバックライトの光源としては冷陰極蛍光ランプが使用されている。冷陰極蛍光ランプは細径で長寿命であるため、小型・薄型化に適しているが、ランプ一本当たりの出力が小さく効率が低いため、液晶パネルの大型化に伴い使用ランプ数が多くなり消費電力も飛躍的に増加してしまう。
【0005】
冷陰極蛍光ランプの代替としては、高輝度・高発光効率の熱陰極蛍光ランプが挙げられる。熱陰極蛍光ランプはランプ一本当たりの出力を大きくすることができ、従ってバックライトユニット内のランプ本数を低減することができるため、着目されつつある。
【0006】
一方、液晶における画像表示技術については、近年液晶が抱える動画ボケの課題を解決するために、例えば特許文献1のように放電ランプを高速点滅することが提案されている。この種の技術による液晶表示装置の動画表示性能の改善は、今後の主流になるものと予測されている。
【特許文献1】特開平11−202285号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、冷陰極蛍光ランプの代替として注目されている熱陰極蛍光ランプは電極にフィラメントを有しており、フィラメントに予熱電流を流し、フィラメントより熱電子を放出することで、放電開始電圧を降下させ、点灯を開始する。このため、フィラメントに十分な予熱を行うことがランプの点灯開始時に重要な要素となる。予熱が不十分な状態で熱陰極蛍光ランプの点灯を行うと、フィラメントに塗布したオキサイドの消耗量が激しくなるため、ランプの寿命が極端に短くなってしまう。このため、熱陰極蛍光ランプを高速で点滅した場合、オキサイドの消費量が増加し、ランプの寿命が短くなる恐れがある。
【0008】
一方、前述のように液晶における画像表示技術については、動画ボケの課題を解決するために放電ランプを高速点滅することなどが挙げられている。液晶表示装置用の放電ランプとしては一般に冷陰極蛍光ランプが用いられているが、冷陰極蛍光ランプは熱陰極蛍光ランプと点灯方式が異なり、ランプ両端への高電圧印加により放電を開始させる。このため、フィラメントを持たなくても点灯開始せしめることが出来る。したがって高速点滅を行っても、オキサイドなどの消耗を伴わないため、寿命に対する影響がない。しかしながら熱陰極蛍光ランプでは、上述のように高速点滅した場合、フィラメントに塗布したオキサイドの消費量が増加し、ランプの寿命が短くなる恐れがある。このため、熱陰極蛍光ランプの高速点滅で寿命に悪影響を与えることを解消することが、熱陰極蛍光ランプを液晶表示用点灯装置に代替採用する際の重要な課題となる。
【0009】
本発明の目的は、熱陰極蛍光ランプの寿命への影響を抑え、かつ液晶の動画性能改善を行う、熱陰極蛍光ランプを用いた液晶表示用照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、少なくとも一対のフィラメントを電極に有する複数の熱陰極蛍光ランプを光源として用いた液晶表示用照明装置において、前記複数の熱陰極蛍光ランプの点灯状態を維持し、かつ前記複数の熱陰極蛍光ランプが順次明暗を繰り返すように前記各熱陰極蛍光ランプを調光する液晶表示用照明装置により達成される。
ここで前記ランプ調光時の管電流の実効値が、ランプ通常点灯時の管電流の実効値の20%〜40%の範囲にあることが望ましい。また、前記調光による各熱陰極蛍光ランプの明暗の繰返し周波数は50Hz以上であることが望ましい。
さらに、本発明による液晶表示装置は、前記液晶表示用照明装置と、前記液晶表示用照明装置に照明される液晶パネルとを備えて構成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、熱陰極蛍光ランプの寿命への影響を抑え、かつ液晶の動画性能改善を行う、熱陰極蛍光ランプを用いた液晶表示用照明装置を得ることができる。すなわち、本発明では、光源に用いる熱陰極蛍光ランプを高速点滅させる代わりに、同等の周波数にて調光を行い、調光の明暗を用いることで液晶の動画性能改善を達成する。このとき調光の明暗差により、調光を暗く絞ったことを視覚的に擬似的な消灯状態に代替することで、液晶の動画性能改善を確保する。このような調光制御では、熱陰極蛍光ランプは、消灯と点灯開始を繰り返すわけではないので、点灯開始に伴うオキサイド消費がない。このため常時点灯状態とほぼ同等のオキサイド消費量を維持することが可能となり、オキサイド消費量増大による寿命低下を防ぐことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面にそって説明する。
図1は、本発明に係る液晶表示用照明装置に用いる熱陰極蛍光ランプの点灯装置の一例を示す図である。図1において、1は電源、2は点灯回路、3は熱陰極蛍光ランプ、4は調光制御回路、5は発振器、6,7は電極に設けられたフィラメントである。電源1は例えば商用電源の交流を整流して直流で提供される。点灯回路2は、スイッチングトランジスタ11およびインバータ回路12を備える。図示のように、電源1よりスイッチングトランジスタ11を介して電源が供給されたインバータ回路12は、熱陰極蛍光ランプ3が具備するフィラメント6,7を予熱し、熱陰極蛍光ランプ3の両端に電圧を印加することで、熱陰極蛍光ランプ3を点灯せしめる。調光制御回路4は、発振器5によって作られる周波数に従い、調光信号をスイッチングトランジスタ11に送る。スイッチングトランジスタ11はこの調光信号によってデューティ制御され、その結果インバータ回路12の出力が調整され、熱陰極蛍光ランプ3は調光動作を行う構成となっている。ここで、発振器5によって作られる周波数は、調光によるランプの明暗の繰返し周波数であり、例えば50Hz以上の周波数とすることで人間の目には調光によるランプの明暗が認識できず、常時点灯しているものとして捉えることが可能となる。
【0013】
図2A〜Cは、それぞれ熱陰極蛍光ランプを流れる管電流波形の一例を示した波形図である。熱陰極蛍光ランプ3は図1に示す構成により調光動作を行うが、調光が明るいときには管電流も大きく、調光が絞られ暗いときには管電流も小さくなる。図2Aに示す波形のように、波形の振幅が一定のときは流れる管電流も一定であるため、熱陰極蛍光ランプ3の明るさも一定に維持される。一方、図2Bに示す波形のように、波形の振幅が図中aの期間中は振幅がほぼなく、これは管電流が流れていないことを意味し、蛍光ランプは消灯状態を表す。従来の冷陰極蛍光ランプを用いた、バースト調光と呼ばれる高速点滅は、図2Bで示すように図中aで示す消灯期間と図中bで示す通常の点灯期間を繰り返すことにより、点滅を成している。このときの点灯と消灯を繰り返す周波数は、管電流が示すような点灯周波数よりも十分に小さいものとする必要があり、且つ50Hz(または50〜60Hz)以上の周波数とすることで人間の目にはランプの点滅が認識できず、常時点灯しているものとして捉えることが可能となる。
【0014】
本発明では、同様の視角効果を得るために、図2Cで示す波形のような調光制御を行う。すなわち、図中cの期間中に調光を絞った暗い状態に制御し、図中dの期間中に通常の点灯状態の明るい状態にすべく管電流を制御する。c期間とd期間がなす周波数は、図2Bで示す波形と同様に管電流が示すような点灯周波数よりも十分に小さいものとする必要があり、且つ50Hz(または50〜60Hz)以上の周波数とすることで人間の目には調光によるランプの明暗が認識できず、常時点灯しているものとして捉えることが可能となる。図中c期間と図中d期間における管電流の差すなわち明るさの差を付けることにより、点滅と同等の効果を得ることができ、液晶画面表示の動画ボケを軽減することが達成できる。図中c期間の調光時の管電流の実効値は、図中d期間における通常点灯時の管電流の実効値の20%〜40%の範囲、すなわち熱陰極蛍光ランプを20%〜40%調光とすることが望ましい。20%未満の調光では、蛍光ランプが安定放電を維持できないおそれがあるので望ましくなく、40%を越える調光では液晶の動画性能改善を確保するには十分でないので望ましくない。
【0015】
図3は、本発明に係る液晶表示用照明装置を用いた液晶表示装置の一実施例を示す図である。図示のように、液晶表示装置は、液晶表示用照明装置8、光学シート9、および液晶パネル10を備える。この照明装置8に搭載された熱陰極蛍光ランプ31〜35によって発光した光が、光学シート9を通して液晶パネル10を照明する。本実施例では、図示しない点灯回路により各熱陰極蛍光ランプ31〜35の点灯状態を維持し、かつ各熱陰極蛍光ランプ31〜35が順次明暗を繰り返すように前記各熱陰極蛍光ランプを調光する。ランプ調光時の管電流の実効値は、ランプ通常点灯時の管電流の実効値の20%〜40%の範囲とされる。以下、蛍光ランプの調光制御について説明する。
【0016】
図4Aは図3の液晶表示用照明装置に搭載した複数の熱陰極蛍光ランプの点灯装置の一例を示す図、図4Bは点灯装置の調光制御で各熱陰極蛍光ランプに流れる管電流の一例を示す概念図である。図4Aにおいて、点灯回路21〜25は図1に示すようにスイッチングトランジスタおよびインバータ回路を備え、入力側に電源1が接続され、出力側に熱陰極蛍光ランプ31〜35がそれぞれ接続される。調光制御回路4は、発振器5によって作られる周波数に従い、調光信号を各点灯回路21〜25に送る。各点灯回路21〜25はこの調光信号によってデューティ制御され、その結果各点灯回路21〜25の出力が調整され、熱陰極蛍光ランプ31〜35は調光動作を行う。ここで、発振器5によって作られる周波数は、調光によりランプの明暗を繰り返す周波数であり、例えば50Hz以上の周波数とすることで人間の目には調光によるランプの明暗が認識できず、常時点灯しているものとして捉えることが可能となる。
【0017】
この調光制御で各熱陰極蛍光ランプ31〜35に流れる管電流41〜45はそれぞれ図4Bに示すように制御される。本例では、蛍光ランプ31〜35は、調光時の管電流の実効値が通常点灯時の管電流の実効値の30%で、調光によるランプの明暗の周波数が例えば50Hzとされ、順次調光を行うように制御される。すなわち各管電流41〜45は、ランプ通常点灯時の管電流の振幅状態(明状態)とランプ調光によるそれより小さい振幅状態(暗状態)とされ、ランプの明暗の繰返し周波数が50Hzとなるように制御される。調光の周波数はここでは50Hzとしたが、これに限定されることなく、50Hz以上であれば人間の目には調光によるランプの明暗が認識できず、常時点灯しているものとして捉えられる。
【0018】
このような調光制御によれば、熱陰極蛍光ランプは、ランプが消灯と点灯開始を繰り返すわけではないので、点灯開始に伴うオキサイド消費がない。このため常時点灯状態とほぼ同等のオキサイド消費量を維持することが可能となり、オキサイド消費量増大によるランプの寿命低下を防ぐことができる。また、光源に用いる熱陰極蛍光ランプを高速点滅させる代わりに、同等の周波数にて調光を行い、調光によるランプの明暗を用いることで液晶表示装置の動画性能改善を達成することができる。すなわち調光の明暗差により、調光を暗く絞ったことを視覚的に擬似的な消灯状態に代替することで、液晶表示装置の動画性能改善を確保することができる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、液晶表示用照明装置に関し、特に熱陰極蛍光ランプを光源として用いた液晶表示用照明装置に関するものであり、産業上の利用可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る液晶表示用照明装置に用いる熱陰極蛍光ランプの点灯装置の一例を示す図である。
【図2】A〜Cは、それぞれ熱陰極蛍光ランプを流れる管電流波形の一例を示した波形図である。
【図3】本発明に係る液晶表示用照明装置を用いた液晶表示装置の一実施例を示す図である。
【図4】Aは図3の液晶表示用照明装置に搭載した複数の熱陰極蛍光ランプの点灯装置の一例を示す図、Bは点灯装置の調光制御で各熱陰極蛍光ランプに流れる管電流の一例を示す概念図である。
【符号の説明】
【0021】
1…電源、2…点灯回路、3…熱陰極蛍光ランプ、4…調光制御回路、5…発振器、6,7…フィラメント、8…液晶表示装置、9…光学シート、10…液晶パネル、11…スイッチングトランジスタ、12…インバータ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一対のフィラメントを電極に有する複数の熱陰極蛍光ランプを光源として用いた液晶表示用照明装置において、前記複数の熱陰極蛍光ランプの点灯状態を維持し、かつ前記複数の熱陰極蛍光ランプが順次明暗を繰り返すように前記各熱陰極蛍光ランプを調光すること特徴とする液晶表示用照明装置。
【請求項2】
前記ランプ調光時の管電流の実効値が、ランプ通常点灯時の管電流の実効値の20%〜40%の範囲にあること特徴とする請求項1記載の液晶表示用照明装置。
【請求項3】
前記調光による各熱陰極蛍光ランプの明暗の繰返し周波数が50Hz以上であること特徴とする請求項1または2記載の液晶表示用照明装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の液晶表示用照明装置と、前記液晶表示用照明装置に照明される液晶パネルとを備えた特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−292600(P2008−292600A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−135973(P2007−135973)
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【出願人】(000005474)日立ライティング株式会社 (130)
【Fターム(参考)】