説明

液晶表示素子の連続製造システムおよび液晶表示素子の連続製造方法

【課題】剛性が低く薄い光学フィルム積層体を、安定的かつ高品位にハーフカットすることができる液晶表示素子の連続製造システム、液晶表示素子の連続製造方法およびハーフカット装置を提供する。
【解決手段】光学フィルム積層体の内、キャリアフィルムを残して光学フィルムをその幅方向に切断して光学フィルムのシート片を形成するハーフカット装置と、キャリアフィルムから剥離されたシート片を液晶パネルに貼り合わせる貼合装置とを備える液晶表示素子の連続製造システムであって、前記ハーフカット装置は、刃物と、当該刃物に対向する台座とを有し、前記台座は、前記刃物から近位の第1台座部と、前記刃物から遠位でありかつ当該第1台座部の弾性率より高い弾性率を有する第2台座部とが積層された構造を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルム積層体の内、キャリアフィルムを残して光学フィルムをその幅方向に切断して光学フィルムのシート片を形成し、キャリアフィルムから剥離されたシート片を液晶パネルに貼り合わせる、液晶表示素子の連続製造システムおよび液晶表示素子の連続製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
厚さ10〜50μmのキャリアフィルムと、当該キャリアフィルム上に粘着層を介して形成される当該粘着層を含む光学フィルムとを有する光学フィルム積層体の内、当該キャリアフィルムを残して当該光学フィルムをその幅方向に切断して当該光学フィルムのシート片を形成するハーフカット装置(切断手段)と、前記キャリアフィルムから剥離された前記シート片を液晶パネルに貼り合わせる貼合装置とを備える液晶表示素子の連続製造システムが知られている(特許文献1)。
【0003】
また、安定的なハーフカットが可能となる方法として、台座に剛性の低い柔軟材を用いることで、カッター側の基材シートを切断し、柔軟材側の剥離シートを柔軟材側に逃がして切断しないハーフカット方法が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−37416号公報
【特許文献2】特開平7−292816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1では、光学フィルムのシート片の切断面には、光学的な使用の特徴から高品位の切断面が要求される。例えば、ハーフカット時に、切断面の粘着層が変形すると、液晶パネルに貼り合わせた際に、その変形部位に気泡のかみこみが発生し、液晶表示素子において点欠陥となってしまう。したがって、粘着層を含む光学フィルムの場合は、ハーフカットの安定性だけでなく、ハーフカットの品位(切断面の品質)が重要である。しかしながら、この文献では、切断に用いるカッターの例が記載されているだけであり、安定的かつ高品位にハーフカットを行う方法について具体的に言及されていない。
【0006】
また、特許文献2には、台座の硬度を調整することで、安定的なハーフカットを実現できると記載されている。しかしながら、剛性が低い光学フィルム積層体をハーフカットする場合には、単に台座の硬度調整のみによって安定的かつ高品位にハーフカットを行うことは難しい。ずなわち、台座の硬度が低いと、刃物の押し込みによって、光学フィルム積層体が局所的に変形し、糊欠けや糊の引きずりなどを生じさせてしまう。逆に台座の硬度が高いと、刃物の押し込みが過多のときには、光学フィルム積層体が台座側に逃げられず、キャリアフィルムの破断を招き、刃物の押し込みが足りないときには、光学フィルムの未切断による糊欠けや糊の引きずりを招く。更に、台座の硬度は、その構成材料に依存するため、離散的な値をとることしかできず、その最適化は難しい。
【0007】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであって、光学フィルム積層体を、安定的かつ高品位にハーフカットすることができる液晶表示素子の連続製造システム、液晶表示素子の連続製造方法およびハーフカット装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、以下の本発明を完成するに至ったものである。
【0009】
本発明は、キャリアフィルムと、当該キャリアフィルム上に粘着層を介して形成される当該粘着層を含む光学フィルムとを有する光学フィルム積層体の内、当該キャリアフィルムを残して当該光学フィルムをその幅方向に切断して当該光学フィルムのシート片を形成するハーフカット装置と、前記キャリアフィルムから剥離された前記シート片を液晶パネルに貼り合わせる貼合装置とを備える液晶表示素子の連続製造システムであって、
前記ハーフカット装置は、刃物と、当該刃物に対向する台座とを有し、
前記台座は、前記刃物から近位の第1台座部と、前記刃物から遠位でありかつ当該第1台座部の弾性率より高い弾性率を有する第2台座部とが積層された構造を有する。
【0010】
この構成によれば、弾性率の低い層(第1台座部)を刃物側の最表面にしたことで、カッターの切り込み深さに高精度を要求することなく、安定的にハーフカットできる。また、2層目を弾性率の高い層(第2台座部)にしたことで、糊欠けや糊の引きずり等の不具合を抑制でき、高品位にハーフカットできる。すなわち、弾性率の異なる第1台座部と第2台座部との協働作用によって、切断時の光学フィルム積層体の変形度合いを適切に調整し得る。
【0011】
本発明による効果が発現されるメカニズムについて以下に説明する。図4A,4B、5において、弾性率の異なる台座を使用した場合のハーフカットの概念を示す。図4A、図4Bにおいて、台座212の弾性率が高い(硬度が高い)場合、刃201の設置精度や刃自身の形状精度(例えば丸刃の場合は真円度)が、直ちにフィルムに対する刃201の押し込み量の変化となり、切り込み深さの過多によるキャリアフィルム12の破断(図4A)や、切り込み不足による光学フィルム13の未切断(図4B)などが発生しやすい。また、図5において、台座211の弾性率が低い(硬度が低く柔らかい)場合、刃201の押圧に応じた台座211の変形により、光学フィルム積層体10自体も切断部位にて局所的に過度に変形する。このように、光学フィルム積層体10が局所的に過度に変形した状態で切断すると、粘着剤層131に不必要な応力が掛ったり、切断部の安定性が失われ、糊欠けや糊の引きずりなどの切断面の糊不良が発生してしまう。一方、図1に示すように、台座21が、弾性率の異なる2層構造であって、キャリアフィルムと接する最表面の第1台座部211の弾性率が2層目(下層)の第2台座部212のそれよりも低い場合には、台座21は、弾性率が低い第1台座部211の影響を受け、変形性を有しつつも、弾性率が高い第2台座部212の影響を受け、変形し過ぎることがない。すなわち、台座21は、刃201の押圧に応じて、光学フィルム積層体10(キャリアフィルム12)とともに変形するとともに光学フィルム積層体10の局所的な過度の変形を防ぐために必要な反発力も与えられる。これにより、光学フィルム13を安定的にハーフカットすることが可能となり、かつ、糊欠けや糊の引きずりを生じさせない綺麗な切断面を形成できる。以上に示したように、単層台座の場合、安定的かつ高品位に光学フィルム積層体をハーフカットすることは難しいが、本発明のように積層化の概念を導入することで、比較的容易に可能になる。
【0012】
上記発明の一実施形態として、前記第1台座部の厚みが、0.1mm〜5.0mmである。
【0013】
上記発明の一実施形態として、前記第1台座部の弾性率が、0.2GPa〜60GPaである。前記第2台座部の弾性率が、130GPa以上である。
【0014】
上記発明の一実施形態として、前記第1台座部の弾性率と前記第2台座部の弾性率との差が、100GPa以上であることが好ましい。これによって、上記作用効果をより発揮する。
【0015】
上記発明の一実施形態として、前記刃物が、丸刃である。丸刃は、真円に加工することが難しいため、必然的に切り込み深さにばらつきがある。しかし、本発明によれば、台座を積層構造にしたことで、刃物の切り込み深さに高精度を要求することなく、丸刃であっても安定的かつ高品位のハーフカットが可能である。
【0016】
上記発明の一実施形態として、前記キャリアフィルムの厚みが、20μm〜50μmである。
【0017】
また、他の本発明は、キャリアフィルムと、当該キャリアフィルム上に粘着層を介して形成される当該粘着層を含む光学フィルムとを有する光学フィルム積層体の内、当該キャリアフィルムを残して当該光学フィルムをその幅方向に切断して当該光学フィルムのシート片を形成するハーフカット工程と、前記キャリアフィルムから剥離された前記シート片を液晶パネルに貼り合わせる貼合工程とを含む液晶表示素子の連続製造方法であって、
前記ハーフカット工程は、第1台座部と当該該第1台座部の弾性率より高い弾性率を有する第2台座部とが積層された構造を有する台座の当該第1台座部上に、前記キャリアフィルムを当該第1台座部側にして前記光学フィルム積層体を配置し、当該キャリアフィルムを残して前記光学フィルムをその幅方向に切断する工程である。
【0018】
この構成によれば、弾性率の低い層(第1台座部)を刃物側の最表面にしたことで、カッターの切り込み深さに高精度を要求することなく、安定的にハーフカットできる。また、2層目を弾性率の高い層(第2台座部)にしたことで、糊欠けや糊の引きずり等の不具合を抑制でき、高品位にハーフカットできる。すなわち、弾性率の異なる第1台座部と第2台座部との協働作用によって、切断時の光学フィルム積層体の変形度合いを適切に調整し得る。
【0019】
上記発明の一実施形態として、前記ハーフカット工程において、前記光学フィルムを切断するための刃物が、丸刃である。台座を積層構造にしたことで、刃物の切り込み深さに高精度を要求することなく、丸刃であっても安定的かつ高品位のハーフカットが可能である。
【0020】
また、他の本発明は、刃物と、当該刃物に対向する台座とを有するハーフカット装置であって、
前記台座が、前記刃物から近位の第1台座部と、前記刃物から遠位でありかつ当該第1台座部の弾性率より高い弾性率を有する第2台座部とが積層された構造を有する。
【0021】
この構成によって、キャリアフィルムを残して光学フィルムをその幅方向に切断して光学フィルムのシート片を形成する場合に、弾性率の低い層(第1台座部)を刃物側の最表面にしたことで、カッターの切り込み深さに高精度を要求することなく、安定的にハーフカットできる。また、2層目を弾性率の高い層(第2台座部)にしたことで、糊欠けや糊の引きずり等の不具合を抑制でき、高品位にハーフカットできる。
【0022】
上記発明の一実施形態として、前記刃物が、丸刃である。台座を積層構造にしたことで、刃物の切り込み深さに高精度を要求することなく、丸刃であっても安定かつ高品位のハーフカットが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の台座の一例を示した概略図。
【図2】液晶表示素子の製造システムの一例を示した概略図。
【図3】丸刃による切断の一例を示した概略図。
【図4A】弾性率の高い単層台座の一例を示した概略図。
【図4B】弾性率の高い単層台座の一例を示した概略図。
【図5】弾性率の低い単層台座の一例を示した概略図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図1、2を参照しながら、液晶表示素子の連続製造システムおよび連続製造方法をさらに具体的に説明するが、本発明は本実施形態の態様に限定されるものではない。
【0025】
本実施形態の液晶表示素子の連続製造システムは、キャリアフィルム12と、当該キャリアフィルム12上に粘着層132を介して当該粘着層132を含む偏光フィルム(光学フィルム)13とを有する光学フィルム積層体10の内、当該キャリアフィルム12を残して当該偏光フィルム13をその幅方向に切断して当該偏光フィルム13のシート片135を形成するハーフカット装置20と、前記キャリアフィルム12から剥離された前記シート片135を液晶パネル4に貼り合わせる貼合装置103とを備える液晶表示素子の連続製造システムであって、前記ハーフカット装置20は、刃物201と、当該刃物201に対向する台座21とを有し、前記台座21は、前記刃物201から近位の第1台座部211と、前記刃物201から遠位でありかつ当該第1台座部の弾性率より高い弾性率を有する第2台座部212とが積層された構造を有する。
【0026】
偏光フィルム13は、例えば、一般的には、偏光子フィルム(厚さは10〜30μm程度)と、偏光子フィルムの片面または両面に偏光子保護フィルム(厚さは20〜80μm程度)が接着剤または粘着剤で形成される。なお、光学フィルムは、偏光子フィルムを必須とする偏光フィルムに限定されず、他の光学特性を有するフィルム(例えば、位相差フィルム、視角補償フィルム、輝度向上フィルム等)でもよく、複数種類が積層された積層構造でもよい。本実施形態において、偏光フィルム13は表面保護フィルム、位相差フィルム、輝度向上フィルムなどを含んでいてもよい。
【0027】
粘着層132を構成する粘着剤は、特に制限されず、例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤等が挙げられる。粘着層132の厚みは、例えば、10〜40μmである。
【0028】
キャリアフィルムは、例えばプラスチックフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレート系フィルム、ポリオレフィン系フィルム等)等の従来公知のフィルムを用いることができる。また、必要に応じシリコーン系や長鎖アルキル系、フッ素系や硫化モリブデン等の適宜な剥離剤でコート処理したものなどの、従来に準じた適宜なものを用いうる。キャリアフィルム12は、その厚みが20μm〜50μmであることが好ましい。
【0029】
光学フィルム積層体の厚みは、例えば、50μm〜400μmの範囲が挙げられる。光学フィルム積層体の1mm幅あたりの剛性は、例えば、0.1〜50N・mmである。なお、光学フィルム積層体の剛性(N・mm)は、弾性率E(MPa)、幅をb(mm)、厚みをh(mm)としたときに、E×b×h/12で算出される。
【0030】
(連続ロール)
連続ロール1は、キャリアフィルム12と、キャリアフィルム12に粘着層132を介して形成された送り方向(長手方向)に平行な吸収軸を有する偏光フィルム13(粘着層132を含む)とを含む光学フィルム積層体10をロール状に巻いたものである。図2(b)に、光学フィルム積層体10の積層構造の断面の一例を示す。
【0031】
(液晶表示素子)
液晶表示素子は、液晶パネルの片面または両面に少なくとも偏光フィルムのシート片が形成されたものであり、必要に応じて駆動回路が組込まれる。液晶パネルは、例えば、垂直配向(VA)型、面内スイッチング(IPS)型などの任意なタイプのものを用いることができる。図2に示す液晶パネル4は、対向配置される一対の基板間に液晶層が封止された構成である。
【0032】
液晶表示素子の連続製造システムは、フィルム搬送部101と、液晶パネル搬送部102と、貼合装置103(貼付ロール50a、駆動ロール50b)と、液晶パネル搬送部104とを有するシート片積層装置100を備える。シート片積層装置100は、液晶パネル4の一方面に偏光フィルムのシート片135を貼り付けて積層する。液晶表示素子の連続製造システムは、さらに、別のシート片積層装置(不図示)を備え、これによって液晶パネルの他方面に偏光フィルムのシート片を貼り付けて積層してもよい。別のシート片積層装置は、シート片積層装置100と同様の構成を有してもよい。
【0033】
フィルム搬送部101は、連続ロール1から光学フィルム積層体10を繰り出しながら、粘着剤132を含む長尺の偏光フィルム13を切断加工して偏光フィルムのシート片135を形成し、キャリアフィルム12からシート片135を剥離し、貼合装置103に供給する。そのために、フィルム搬送装置101は、繰出部101a、複数の搬送部101b、ハーフカット装置20、ダンサーロール30、剥離部40、巻取部60を有する。
【0034】
繰出部101aには、連続ロール1が設置されており、連続ロール1から光学フィルム積層体10を繰り出すようになっている。
【0035】
複数の搬送部101bは、光学フィルム積層体10に張力を掛けて当該光学フィルム積層体10を搬送するように設置されている。
【0036】
ハーフカット装置20は、刃物201と、刃物201に対向する台座21を有する。台座21でキャリアフィルム12側から光学フィルム積層体10を固定しておいて、偏光フィルム13をその幅方向に切断し、キャリアフィルム12上に偏光フィルムのシート片135(粘着層含む)を形成する。
【0037】
刃物20としては、例えば、トムソン刃、カッター刃、丸刃(固定式、自転式を含む)などが挙げられるが、丸刃が好ましい。丸刃は、切断面が移動していくため一定位置で切断するカッター刃よりも刃の寿命が長く、交換頻度が少なくて済む。また、低弾性層表面(台座最表面)の押跡を回避するためには、カッター刃よりも丸刃を用いることが好ましい。跡が残りにくくなり、切断の高速連続処理(ひいては液晶表示素子の高速連続生産)に適する。
【0038】
丸刃の刃径および真円度は、光学フィルム積層体の厚みなどによって適宜調整されるが、通常、刃径が30mm〜120mm、真円度が50μm以下である。なお、刃物がカッター刃や丸刃である場合、ハーフカット装置20は、通常、刃物を光学フィルム積層体10の幅方向にスライドさせるスライド機構をさらに備える。
【0039】
(台座)
台座21は、低弾性の第1台座部211と、第1台座部211より高弾性の第2台座部212の2層構造である。なお、第1台座部211および第2台座部212は、それぞれ単層構造でもよく、積層構造であってもよい。第1台座部211の厚みは、例えば、0.1mm〜5.0mmであり、好ましくは0.2mm〜3.0mmであり、より好ましくは0.3mm〜1.0mmである。厚みが0.1mm未満であると、第1台座部211が寄与しなくなり、キャリアフィルム12の破断や偏光フィルム13の未切断を生じるおそれがある。厚みが5.0mmを超えると、第2台座部212が寄与しなくなり(適度な反発力が得られなくなり)、切断時の光学フィルム積層体10の局所的かつ過度な変形によって、糊欠け、糊引きずりを生じるおそれがある。また、第1台座部211(積層構造の場合は、それを構成するすべての層)の弾性率は、好ましくは0.2GPa〜60GPaであり、より好ましくは1.0GPa〜50GPaである。弾性率が0.2GPa未満だと、柔らかすぎて糊欠けや糊残りが発生するおそれがある。弾性率が60GPaを超えると、硬過ぎて偏光フィルム13の未切断またはキャリアフィルム12の破断が生じるおそれがある。低弾性の第1台座部211の材料としては、例えば、アルミニウム、ニトリルゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、テフロン(登録商標)、ABS樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられる。
【0040】
第1台座部211より高弾性の第2台座部212(積層構造の場合は、それを構成するすべての層)の弾性率は、好ましくは130GPa以上であり、より好ましくは150GPa以上である。弾性率が130GPa未満だと、糊欠けや糊残りが発生するおそれがある。高弾性の第2台座部212の材料としては、例えば、ステンレス鋼等の鋼鉄などが挙げられる。
【0041】
第1台座部211の弾性率と第2台座部212の弾性率との差が、100GPa以上であることが好ましく、150GPa以上であることがより好ましい。
【0042】
第1台座部211と第2台座部212の積層方法は、特に制限されず、例えば、融着、接着材、粘着剤、粘着テープ止めなどが挙げられる。
【0043】
図3に、ハーフカット装置20の一例を示す。ハーフカット装置20は、台座21と刃物202を有する。台座21は、その両端部を側面支持部214で支持され、装置架台215から離れて設置されている。台座21は、第1台座部211および第2台座部212を有する。第1台座部211は、第2台座部212に対しテープ213で貼り付けられている。そして、クランプ23、24が原位置(不図示)に待機している。切断時において、図3に示すように、クランプ23、24が原位置から図3において左に移動し、第1台座部211の面211aに対し光学フィルム積層体10を押し付ける。この状態で、原位置(不図示)に待機していた丸刃202が矢印Aの方向に移動しながら光学フィルム積層体10をハーフカットする(キャリアフィルム12を切断せずに残して、偏光フィルム13を切断する)。次いで、クランプ23、24が図3において右側に移動し(原位置に復帰し)、第1台座部211の面211aに光学フィルム積層体10を押さえつけることをやめる。丸刃202も原位置に復帰して次のハーフカット処理のために待機する。そして、光学フィルム積層体10を所定距離移動させて、次のハーフカット処理を実行する。
【0044】
ダンサーロール30は、キャリアフィルム12の張力を保持する機能を持つ。
【0045】
剥離部40は、その先端部でキャリアフィルム12を内側にして折り返して、キャリアフィルム12から偏光フィルムのシート片135を剥離する。本実施形態では、剥離部40としては、先端部に先鋭ナイフエッジ部を用いているが、これに限定されるものではない。
【0046】
巻取部60は、偏光フィルムのシート片135が剥離されたキャリアフィルム12を巻き取る。
【0047】
貼合装置102は、搬送装置80により搬送された液晶パネル4の上側から、剥離部40によりキャリアフィルム12が剥離されたシート片135を粘着層132を介して貼り付ける。本実施形態では、貼合装置102は、貼付ローラ50a、駆動ローラ50bで構成される。
【0048】
搬送装置80は、液晶パネル4、液晶パネル4の片面または両面に偏光フィルムのシート片を貼り付けた液晶表示素子Yを搬送する一連の搬送装置である。この搬送装置80は、例えば、搬送ローラ81、吸着プレート等を有して構成される。
【0049】
液晶パネル4の他方面に他の偏光フィルムのシート片を貼り付けるために、上記で説明したシート片積層装置100を用いることができる。
【0050】
(液晶表示素子の連続製造方法)
液晶表示素子の連続製造方法は、キャリアフィルム12と、当該キャリアフィルム12上に粘着層132を介して形成される当該粘着層132を含む偏光フィルム13とを有する光学フィルム積層体10の内、当該キャリアフィルム12を残して当該偏光フィルム13をその幅方向に切断して当該偏光フィルム13のシート片135を形成するハーフカット工程と、前記キャリアフィルム12から剥離された前記シート片135を液晶パネル4に貼り合わせる貼合工程とを含む。前記ハーフカット工程は、第1台座部211と当該該第1台座部211の弾性率より高い弾性率を有する第2台座部212とが積層された構造を有する台座21の当該第1台座部211上に、前記キャリアフィルム12を当該第1台座部211側にして前記光学フィルム積層体10を配置し、当該キャリアフィルム12を残して前記光学フィルム13をその幅方向に切断する工程であるである。
【0051】
(別実施形態)
本実施形態では、液晶パネルの上側から偏光フィルムのシート片135を貼り付けているが、これに制限されず、液晶パネルの下側からシート片135を貼り付けてもよい。
【0052】
また、本実施形態では、連続ロールから繰り出された長尺の偏光フィルムを所定間隔で切断するものであったが、本発明はとくにこの構成に制限されない。例えば、連続ロールから繰り出された長尺の光学フィルム積層体を欠点検査し、当該検査結果に基づいて欠点を避けるように切断(いわゆるスキップカット)してもよい。また、長尺の偏光フィルムに欠点位置を示すマークを予め付されている場合には、このマークを読み取り、当該マークに基づいて欠点を避けるように切断してもよい。
【0053】
また、本実施形態では、長尺の偏光フィルムが長手方向に平行な吸収軸を有するが、長尺の偏光フィルムの吸収軸方向はこれに限定されない。例えば、長尺の偏光フィルム13がその短手方向(幅方向)に平行な吸収軸を有し、別の長尺の偏光フィルムがその長手方向に平行な吸収軸を有していてもよい。
【実施例】
【0054】
実施例は、図2および図3の装置構成を用いている。長尺の偏光フィルム13、キャリアフィルム12を有する光学フィルム積層体10をハーフカット装置20でハーフカットした際の破断発生の有無と、ハーフカットの品位(糊欠け、糊引きずり)を評価した。長尺の光学フィルム積層体10として、VEGQ 1784CUAG150(幅400mm、1mm幅あたりの剛性8.5N・mm、厚み273μm)を用いた。この長尺の光学フィルム積層体10は、粘着剤(厚み23μm)を含む長尺の偏光フィルム(厚み235μm)と、キャリアフィルムとしてPETフィルム(厚み38μm)を有する。
【0055】
刃物に丸刃(真円度30μm、刃径100mm)を用いた。台座(低弾性の第1台座部とそれよりも高弾性の第2台座部)の材料と、第1台座部の厚みを変えた各種条件で評価した。弾性率は、ダイプラ・ウィンテス株式会社製 SAICASを用いて測定した。測定条件は、押し込み速度0.05μm/secで、垂直に2μm押し込みとした。圧子として、曲率半径0.04mmの曲面のものを用いた。
【0056】
実施例1の台座は、第1台座部に厚み0.5mmのポリエチレン(PE)、第2台座部に厚み30mmのステンレス鋼(SUS)を用いた。
【0057】
実施例2の台座は、第1台座部に厚み3mmのポリエチレン(PE)を用いたこと以外は、実施例1と同じである。
【0058】
実施例3の台座は、第2台座部にアルミニウム(AL)を用いたこと以外は、実施例1と同じである。
【0059】
実施例4の台座は、第1台座部に厚み1.0mmのアルミニウム(AL)を用いたこと以外は、実施例1と同じである。
【0060】
実施例5の台座は、第1台座部に厚み0.5mmのポリスチレン(PS)を用いたこと以外は、実施例1と同じである。
【0061】
比較例1の台座は、単層の厚み30mmのステンレス鋼(SUS)とした。
【0062】
比較例2の台座は、単層の厚み30mmのポリエチレン(PE)とした。
【0063】
実施例1〜4、比較例1〜2のそれぞれにおいて、長尺の偏光フィルムをハーフカットし300枚のシート片をキャリアフィルム上に形成した。キャリアフィルムの破断、ハーフカットの品位(糊欠け、糊引きずり)について目視で確認した。その結果を表1に示す。カット品位の評価では、不良と判断された枚数が0であれば「○」とし、1〜5であれば「△」とし、6以上であれば「×」とした。
【0064】
【表1】

【0065】
表1の結果から、比較例1、2のような単層の台座では、カット品位が共に悪く、比較例1のステンレス鋼の単層台座では、キャリアフィルムの破断が生じる場合があった。一方、実施例1、2および5は、いずれもキャリアフィルムの破断がなく、ハーフカットの品位も良好であった。実施例3,4は、キャリアフィルムの破断はなかったが、実施例1,2および5と比較してハーフカットの品位が若干低下した。
【符号の説明】
【0066】
4 液晶パネル
10 光学フィルム積層体
12 キャリアフィルム
13 偏光フィルム
132 粘着層
135 偏光フィルムのシート片
20 ハーフカット装置
201 刃物
202 丸刃
203 カッター刃
21 台座
211 第1台座部
212 第2台座部
103 貼合装置
Y 液晶表示素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアフィルムと、当該キャリアフィルム上に粘着層を介して形成される当該粘着層を含む光学フィルムとを有する光学フィルム積層体の内、当該キャリアフィルムを残して当該光学フィルムをその幅方向に切断して当該光学フィルムのシート片を形成するハーフカット装置と、前記キャリアフィルムから剥離された前記シート片を液晶パネルに貼り合わせる貼合装置とを備える液晶表示素子の連続製造システムであって、
前記ハーフカット装置は、刃物と、当該刃物に対向する台座とを有し、
前記台座は、前記刃物から近位の第1台座部と、前記刃物から遠位でありかつ当該第1台座部の弾性率より高い弾性率を有する第2台座部とが積層された構造を有する、液晶表示素子の連続製造システム。
【請求項2】
前記第1台座部の厚みが、0.1mm〜5.0mmである、請求項1に記載の液晶表示素子の連続製造システム。
【請求項3】
前記第1台座部の弾性率が、0.2GPa〜60GPaである、請求項1または2に記載の液晶表示素子の連続製造システム。
【請求項4】
前記第2台座部の弾性率が、130GPa以上である、請求項1から3のいずれか1項に記載の液晶表示素子の連続製造システム。
【請求項5】
前記第1台座部の弾性率と前記第2台座部の弾性率との差が、100GPa以上である、請求項1から4のいずれか1項に記載の液晶表示素子の連続製造システム。
【請求項6】
前記刃物が、丸刃である、請求項1から5のいずれか1項に記載の液晶表示素子の連続製造システム。
【請求項7】
前記キャリアフィルムの厚みが、20μm〜50μmである、請求項1から6のいずれか1項に記載の液晶表示素子の連続製造システム。
【請求項8】
キャリアフィルムと、当該キャリアフィルム上に粘着層を介して形成される当該粘着層を含む光学フィルムとを有する光学フィルム積層体の内、当該キャリアフィルムを残して当該光学フィルムをその幅方向に切断して当該光学フィルムのシート片を形成するハーフカット工程と、前記キャリアフィルムから剥離された前記シート片を液晶パネルに貼り合わせる貼合工程とを含む液晶表示素子の連続製造方法であって、
前記ハーフカット工程は、第1台座部と当該該第1台座部の弾性率より高い弾性率を有する第2台座部とが積層された構造を有する台座の当該第1台座部上に、前記キャリアフィルムを当該第1台座部側にして前記光学フィルム積層体を配置し、当該キャリアフィルムを残して前記光学フィルムをその幅方向に切断する工程である、液晶表示素子の連続製造方法。
【請求項9】
刃物と、当該刃物に対向する台座とを有するハーフカット装置であって、
前記台座が、前記刃物から近位の第1台座部と、前記刃物から遠位でありかつ当該第1台座部の弾性率より高い弾性率を有する第2台座部とが積層された構造を有する、ハーフカット装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−103322(P2013−103322A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250871(P2011−250871)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】