説明

液滴塗布装置及び液滴塗布方法

【課題】塗布対象物に所望の塗布量で液滴を塗布し、塗布製品の品質を向上させる。
【解決手段】液滴塗布装置1は、塗布対象物Wを支持するステージ2と、複数のノズルが並ぶノズル列を有するインクジェット式の塗布ヘッド4と、その塗布ヘッド4とステージ2とを塗布対象物Wの塗布面Waに沿ってノズル列に交差する第1の方向に相対移動させる移動装置3と、塗布面Wa上における液滴の塗布位置を示す情報を含む塗布パターンを設定するパターン設定部8bと、その塗布パターンに基づいて移動装置3及び塗布ヘッド4を制御し、ステージ2上の塗布対象物Wの塗布面Waに液滴を塗布する制御部8aとを備える。制御部8aは、前述の塗布パターンが複数のノズルの中で近接して位置するノズルから液滴を同時に吐出させる塗布パターンであったとき、当該近接して位置するノズル同士において液滴の吐出タイミングをずらすようにノズルからの液滴の吐出を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、塗布対象物に液滴を塗布する液滴塗布装置及び液滴塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液滴塗布装置は、表示装置や半導体装置などを製造する際に用いられている。例えば、表示装置の製造では、ガラス基板上に配向膜などの機能性薄膜を形成する場合に、また、半導体装置の製造では、半導体ウェハ上にレジストなどの機能性薄膜を形成する場合に液滴塗布装置が用いられている。
【0003】
前述の液滴塗布装置は、基板などの塗布対象物に向けて複数のノズル(吐出口)からそれぞれ液滴を吐出するインクジェット方式の塗布ヘッドを備えており、その塗布ヘッドと塗布対象物とを相対移動させながら、塗布液を各ノズルから液滴として吐出させ、塗布対象物上の塗布面(被塗布面)に配向膜などの所定の塗布膜を形成する(例えば、特許文献1参照)。なお、塗布ヘッドの各ノズルは一列に並んでおり、それらのノズルは塗布液が流れる一本の主管路に枝管路を介して個別に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−105938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述のような構造の塗布ヘッドでは、隣接する複数個のノズルから同時に液滴を吐出させた場合、主管路から枝管路を介してそれぞれのノズル側へ塗布液が同時に引き込まれるため、このとき隣接するノズル同士で塗布液の引き合い(干渉)が生じ、必要な分だけの塗布液を引き込むことができず、吐出される液滴の量が吐出されるべき量よりも少なくなる現象が生じることがある。このような場合、液滴が所定の吐出量(設定値)で吐出されないことから、液滴は塗布対象物の塗布面に所望の塗布量で塗布されず、塗布製品の品質が低下してしまう。
【0006】
なお、前述の引き合いは隣り合うノズル間のみで生じたり、あるいは、二つ以上離れたノズル同士の間でも生じたりする。どのくらい離れたノズルまで影響が及ぶかは、ノズル間の間隔やノズルから吐出される液滴の量、主管路の断面積、さらにそれらの関係によって変わる。また、全てのノズルが一本の主管路に接続されていない場合、例えば、主管路が中央で2つに分離されている場合などでも、同じ主管路に接続された近接するノズル間では前述と同じような現象が生じる。
【0007】
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、その目的は、塗布対象物に所望の塗布量で液滴を塗布し、塗布製品の品質を向上させることができる液滴塗布装置及び液滴塗布方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態に係る液滴塗布装置は、塗布面を有する塗布対象物を支持するステージと、塗布液の液滴を吐出する複数のノズルが並ぶノズル列を有するインクジェット式の塗布ヘッドと、ステージと塗布ヘッドとをステージ上の塗布対象物の塗布面に沿ってノズル列に交差する第1の方向に相対移動させる移動装置と、塗布面上における液滴の塗布位置を示す情報を含む塗布パターンを設定するパターン設定部と、パターン設定部により設定された塗布パターンに基づいて塗布ヘッド及び移動装置を制御し、ステージ上の塗布対象物の塗布面に液滴を塗布する制御部とを備え、制御部は、パターン設定部により設定された塗布パターンが複数のノズルの中で近接して位置するノズルから液滴を同時に吐出させる塗布パターンであったとき、当該近接して位置するノズル同士において液滴の吐出タイミングをずらすようにノズルからの液滴の吐出を制御する。
【0009】
本実施形態に係る液滴塗布方法は、複数のノズルが並ぶノズル列を有するインクジェット式の塗布ヘッドと塗布対象物とを塗布対象物の塗布面に沿ってノズル列に交差する第1の方向に相対移動させ、塗布面上における液滴の塗布位置を示す情報を含む塗布パターンに基づいてノズルから塗布面に向けて塗布液の液滴を吐出させ、塗布面に塗布液の液滴を塗布する液滴塗布方法であって、塗布パターンが複数のノズルの中で近接して位置するノズルから液滴を同時に吐出させる塗布パターンであったとき、当該近接して位置するノズル同士において液滴の吐出タイミングをずらすようにノズルからの液滴の吐出を制御する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、塗布対象物に所望の塗布量で液滴を塗布し、塗布製品の品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態に係る液滴塗布装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1に示す液滴塗布装置が備える塗布ヘッドの概略構成を示す断面図である。
【図3】図2に示す塗布ヘッドを示す平面図である。
【図4】図2及び図3に示す塗布ヘッドによる液滴塗布を説明するための第1の説明図である。
【図5】図2及び図3に示す塗布ヘッドによる液滴塗布を説明するための第2の説明図である。
【図6】第2の実施形態に係る液滴塗布装置が備える塗布ヘッドの概略構成を示す平面図である。
【図7】図6に示す塗布ヘッドによる液滴塗布を説明するための第1の説明図である。
【図8】図6に示す塗布ヘッドによる液滴塗布を説明するための第2の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
第1の実施形態について図1ないし図5を参照して説明する。
【0013】
図1に示すように、第1の実施形態に係る液滴塗布装置1は、液晶表示パネルの製造に用いられるガラス基板などの塗布対象物Wを支持するステージ2と、そのステージ2を、ステージ2上に支持された塗布対象物Wの塗布面Waに沿う第1の方向(主走査方向)であるY軸方向に移動させるステージ移動装置3と、移動するステージ2上の塗布対象物Wに向けて液滴を吐出する塗布ヘッド4と、その塗布ヘッド4をX軸方向(Y軸方向に直交する方向)に移動させるヘッド移動装置5と、そのヘッド移動装置5と共に塗布ヘッド4を支持するヘッド支持部6と、ステージ移動装置3やヘッド支持部6などを支持する架台7と、各部を制御する制御装置8とを備えている。
【0014】
ステージ2は、塗布対象物Wが載置される載置面を有しており、ステージ移動装置3上に設けられている。このステージ2には、塗布対象物Wが自重により載置されるが、これに限られるものではなく、例えば、その塗布対象物Wを保持するため、静電チャックや吸着チャックなどの機構が設けられても良い。
【0015】
ステージ移動装置3は、ステージ2をY軸方向に案内して移動させる移動装置であり、架台7の上面に固定されて設けられている。このステージ移動装置3は制御装置8に電気的に接続されており、その駆動が制御装置8により制御される。ステージ移動装置3としては、例えば、サーボモータを駆動源とする送りねじ式の移動装置やリニアモータを駆動源とするリニアモータ式の移動装置などが用いられる。
【0016】
塗布ヘッド4は、ヘッド移動装置5にX軸方向に移動可能に設けられており、ステージ2上の塗布対象物Wに対して塗布液を液滴として吐出(噴射)する吐出ヘッドである。塗布ヘッド4は、ステージ2のX軸方向における長さ(幅)全域をカバーするようにX軸方向に複数個並べて配置される。この塗布ヘッド4は制御装置8に電気的に接続されており、その駆動が制御装置8により制御される。塗布液は、その塗布液を貯留する塗布液タンクからチューブなどの配管を介して塗布ヘッド4に供給される。この塗布液としては、例えば、配向膜材料や接着剤、顔料など、塗布対象物W上に残留物として残留する溶質及びその溶質を溶解(分散)させる溶媒を含む溶液が用いられる。なお、液晶表示パネル製造用のガラス基板に配向膜を形成する場合には、塗布液として配向膜材料が用いられる。
【0017】
ここで、前述の塗布ヘッド4について詳述すると、図2及び図3に示すように、塗布ヘッド4は、インクジェット方式の塗布ヘッドであり、液滴を吐出する複数のノズル(吐出口)11aを有するノズルプレート11と、各ノズル11aにそれぞれつながる複数の液室12aを有するヘッド本体12と、各液室12aの容積を変化させる可撓板13と、可撓板13を変形させる複数の圧電素子14と、それらの圧電素子14を駆動させる駆動制御部15とを備えている。
【0018】
ノズルプレート11には、複数個のノズル11aが長手方向に所定ピッチ(所定間隔)で直線状に並ぶノズル列が形成されている。このノズル列を有する塗布ヘッド4は、各ノズル11aの並び方向(第2の方向)がX軸方向に対して平行になるように配置されている。
【0019】
ヘッド本体12には、塗布液を収容する各液室12aに加え、それらの液室12aに枝管路12b1(図3参照)を介してつながる主管路12bと、その主管路12bの一端につながる給液管路12cと、主管路12bの他端につながる排液管路12dとが形成されている。なお、給液管路12cは塗布液タンクから主管路12bに塗布液を供給するための流路であり、チューブやパイプなどの供給管を介して塗布液タンクに接続されている。また、排液管路12dは主管路12bを通過した塗布液を塗布液タンクに戻すための流路であり、チューブやパイプなどの排出管を介して前述の塗布液タンクに接続されている。
【0020】
可撓板13は、その変形により各液室12aの容積を増減させるための板部材である。この可撓板13は撓み変形可能にヘッド本体12に取付けられており、各液室12aの壁部として機能する。なお、ヘッド本体12は矩形枠状に形成されており、その下面側開口部分が可撓板13によって閉塞されている。この可撓板13がノズルプレート11により覆われ、ノズルプレート11と可撓板13との間に各液室12aが形成されている。
【0021】
各圧電素子14は、各液室12aにそれぞれ対向させて可撓板13に固着されている。これらの圧電素子14は駆動制御部15に電気的に接続されており、その駆動制御部15からの電力供給により駆動する。圧電素子14が駆動して伸縮すると、その駆動した圧電素子14に対応する可撓板13の一部が変形するため、その変形に応じて液室12aの容積が増減し、その液室12aにつながるノズル11aから液滴が吐出される。この圧電素子14が駆動素子として機能する。
【0022】
駆動制御部15は、制御装置8に電気的に接続されており、その制御装置8からの制御信号を受けて各圧電素子14に個別に駆動信号を送る駆動回路部(コントロール基板)である。この駆動制御部15は、制御装置8からの制御信号(例えば、駆動電圧や吐出間隔(周波数)などの塗布条件の情報や塗布パターンの情報)に基づいて各圧電素子14を個別に駆動させる。
【0023】
このような構成の塗布ヘッド4は、駆動制御部15による各圧電素子14に対する駆動信号(駆動電圧)の印加に応じて、可撓板13の変形により各液室12a内の塗布液を対応するノズル11aから押し出して液滴として吐出する。このとき、各液室12aは塗布液により満たされている状態である。
【0024】
図1に戻り、ヘッド移動装置5は、コラムなどのヘッド支持部6に固定されて設けられており、塗布ヘッド4をステージ2上の塗布対象物Wの塗布面Waに沿うX軸方向に移動させる移動装置である。このヘッド移動装置5は制御装置8に電気的に接続されており、その駆動が制御装置8により制御される。ヘッド移動装置5としては、例えば、サーボモータを駆動源とする送りねじ式の移動装置やリニアモータを駆動源とするリニアモータ式の移動装置などが用いられる。
【0025】
ヘッド支持部6は、X軸方向に長尺な門型の形状に形成されており、架台7上のステージ移動装置3を跨ぐように架台7の上面に設けられている。このヘッド支持部6の梁部はX軸方向に平行にステージ2の載置面に対して水平にされ、ヘッド支持部6の脚部は架台7の上面に固定されている。
【0026】
架台7は、床面上に設置され、ステージ移動装置3やヘッド支持部6などを床面から所定の高さ位置に支持する支持台である。架台7の上面は平面に形成されており、この架台7の上面にステージ移動装置3やヘッド支持部6などが載置されている。また、架台7の内部には、制御装置8が設けられている。
【0027】
制御装置8は、各部を集中的に制御するマイクロコンピュータなどの制御部8aと、塗布パターンを設定するパターン設定部8bと、設定した塗布パターンを変換するパターン変換部8cと、各種情報や各種プログラムなどを記憶する記憶部(図示せず)とを備えている。記憶部としては、メモリやハードディスクドライブ(HDD)などが用いられる。この制御装置8には、塗布ヘッド4とステージ2との主走査方向(Y軸方向)の相対位置を検出する位置検出器8dが電気的に接続されている。
【0028】
ここで、各種情報としては、液滴塗布に関する塗布情報が挙げられる。この塗布情報は、塗布速度(塗布ヘッド4とステージ2との相対移動速度)や吐出量(駆動電圧)、吐出間隔(周波数)などの塗布条件、さらに所定の塗布パターンなどに関する情報を含んでいる。
【0029】
制御部8aは各種情報や各種プログラムに基づいて各部を制御する。例えば、塗布を行う場合、制御部8aは、塗布情報に基づいて、ステージ移動装置3及び塗布ヘッド4を制御し、塗布ヘッド4とステージ2上の塗布対象物Wとを主走査方向(Y軸方向)に相対移動させながら、塗布ヘッド4の各ノズル11aから液滴を吐出させて、ステージ2上の塗布対象物Wの塗布面Waに塗布液を塗布する。なお、このような塗布対象物Wに対する塗布液の塗布は通常1回の走査塗布によって行われるが、ステージ2をY軸方向に往復移動させることによる複数回の走査塗布によって行うようにしても良い。また、塗布液は塗布面Wa全域に塗布するものであっても、塗布面Wa上に設定された単一又は複数の領域内に塗布するものであっても良い。
【0030】
パターン設定部8bは、前述のような塗布に用いる各種の塗布パターンを製品の設計に基づいて設定する。塗布パターンは、塗布対象物Wの塗布面Wa上における液滴の塗布位置を示す情報を含んでおり、例えば、パターン設定部8bは、塗布ヘッド4に各ノズル11aから液滴を同時に吐出させる塗布パターンを設定することが可能である。また、パターン変換部8cは、パターン設定部8bにより設定された塗布パターンを所定の法則に基づいて他の塗布パターンに変換する。位置検出器8dは、パルス信号などの位置検出信号を制御部8aに入力する。これに応じて、制御部8aは、塗布ヘッド4と塗布対象物Wとの相対位置関係(主走査方向における相対位置)を把握することが可能となる。位置検出器8dとしては、例えば、リニアエンコーダなどが用いられる。
【0031】
ここで、前述のパターン設定部8bによって各ノズル11aから液滴を同時に吐出させる塗布パターンが設定された場合には、その塗布パターンで塗布を実行すると、隣接する複数個のノズル11aから同時に液滴が吐出されることになる。なお、各ノズル11aから液滴を同時に吐出させる塗布パターンとは、ノズル11aの配列方向に沿って各ノズル11aから吐出される液滴の塗布位置が設定された塗布パターン、この例では、各ノズル11aから吐出される液滴の塗布位置がX軸方向に沿って設定された塗布パターンである。
【0032】
この場合には、主管路12bから枝管路12b1を介してそれぞれのノズル11a側へ塗布液が同時に引き込まれるため、このとき隣接するノズル11a同士で塗布液の引き合い(干渉)が生じ、必要な分だけの塗布液を液室12a内へ引き込むことができずに、ノズル11aから吐出される液滴の量が吐出されるべき量よりも少なくなる現象が生じる。この引き合いは隣り合うノズル11a間のみで生じたり、あるいは、二つ以上離れたノズル11a同士の間でも生じたりする。どのくらい離れたノズル11aまで影響が及ぶかは、ノズル11a間の間隔やノズル11aから吐出される液滴の量、主管路12bの断面積、さらにそれらの関係によって変わる。このような現象により液滴が所望の吐出量で吐出されないため、液滴は塗布対象物Wの塗布面Waに所望の塗布量で塗布されず、その結果、例えば、塗布された塗布液によって塗布面Waに塗布膜を形成する場合には形成される塗布膜の膜厚を所望の膜厚で均一に形成することができずに、塗布製品の品質が低下してしまう。
【0033】
そこで、本実施形態においては、前述の現象を防止するために、塗布ヘッド4に各ノズル11aから液滴を同時に吐出させる塗布パターンが設定された場合には、近接して位置するノズル11aからの液滴の吐出を異なるタイミングで行うように、パターン変換部8cがパターン設定部8bによって設定された塗布パターンを変換する。なお、この実施形態の塗布ヘッド4においては、隣接する三つのノズル11aの間では塗布液の引き合いが生じる、つまり、液滴を同時に吐出したときに互いの吐出に影響を及ぼすが、四つ以上離れたノズル11a同士では同時に液滴を吐出させても塗布液の引き合いが生じないものとして説明する。
【0034】
パターン変換部8cによる塗布パターンの変換について説明する。
【0035】
まず、図4中の黒丸(●)印は、パターン設定部8bによって設定された塗布パターンを示す。図4に示すように、塗布パターンの一例としては、塗布パターン(黒丸(●)印のパターン)における各塗布位置が主走査方向F1(Y軸方向)に塗布ピッチPで設定されており、さらに、主走査方向に直交する方向(X軸方向)にノズル11aの配置間隔で設定されている。すなわち、主走査方向F1(Y軸方向)にピッチPでX軸方向にノズルピッチで行列状(10行×8列)に塗布位置が配置された塗布パターンが設定されている。なお、図4では、説明の簡略化のため、1つの塗布ヘッド分の塗布パターンを示し、塗布ヘッド4のノズル11aの個数を仮に八個としており、各ノズル11aの下側に示した数字はノズル番号である。
【0036】
前述の黒丸印の塗布パターンを用いると、塗布ピッチPおきに八つのノズル11a全てから同時に液滴が吐出されることになる。そこで、各ノズル11aの吐出タイミングをずらすため、黒丸印の塗布パターンをパターン変換部8cによって三角(△)印の塗布パターンに変換する。図4に示す例では、連続して並んだ四つのノズル11aからの液滴の吐出タイミングが塗布ピッチPの範囲内で異なるように塗布パターンを変換したものを示している。
【0037】
ここで、主走査方向F1における一行目に対応する座標(塗布位置)を抜き出して説明する(図4中の右端)。連続して並んだ四つのノズル11aからの液滴の吐出タイミングを異ならせるために、まず、主走査方向F1の塗布ピッチPを四分割する。そして、四分割した間隔(P/4=p)の中央に各ノズル11aから吐出する液滴の塗布位置を順にずらして配置していく。四分割した間隔を塗布ヘッド4が示された側(主走査方向上流側)から順番にp1、p2、p3、p4とし、ノズル番号を右端から順に1〜8とした場合、1番ノズルの塗布位置はp1の中央、2番ノズルの塗布位置はp2の中央、3番ノズルの塗布位置はp3の中央、4番ノズルの塗布位置はp4の中央・・・という具合になる。二行目以降の塗布位置については、一行目の塗布位置に対して主走査方向F1に塗布ピッチPずつずらして設定すれば良いことになる。
【0038】
なお、塗布位置を右端のノズル11aからp1、p2、p3、p4の順で繰返して配置しているが、近接する四つのノズル11a間で吐出タイミングが同じにならなければ良いので、p1、p3、p2、p4の順やp4、p2、p1、p3の順などでも構わない。
【0039】
図5には、変換した塗布パターン(図4中の三角印の塗布パターン)のみを黒丸(●)で示す。この図5中の二点鎖線の四角枠Aは、塗布動作中におけるあるタイミングでのノズル列の位置を示したものである。この四角枠A内には、4番ノズルと8番ノズルの塗布位置が入っているので、このタイミングで液滴が吐出されるノズル11aは4番ノズルと8番ノズルだけになる。4番ノズルと8番ノズルはノズル四つ分離れているため、この二つのノズル11a間で塗布液の引き合いが生じることが防止され、設定量の液滴が各ノズル11aから吐出されることになる。また、8つのノズル11aのうち同じタイミングで液滴を吐出させているノズル11aが2つだけであることからしても、二つのノズル11a間(4番ノズルと8番ノズルとの間)で塗布液の引き合いが生じることが格段に低減される。よって、このことによっても、各ノズル11aからの液滴の吐出精度を向上させることができる。
【0040】
このように、パターン変換部8cは、複数のノズル11aの中で液滴を同時に吐出したときに吐出に影響を及ぼす範囲内で近接するノズル11a同士において吐出のタイミングをずらすように塗布パターンを変換する。これにより、前述の近接するノズル11a間での塗布液の引き合い発生が防止され、所定の吐出量(設定値)で液滴を吐出することが可能になるので、塗布対象物Wの塗布面Waに所望の塗布量で液滴を塗布することができる。この結果として、例えば、塗布面Waに塗布膜を形成する場合には塗布された塗布液によって形成される塗布膜の膜厚を均一に形成することができ、塗布製品の品質を向上させることができる。
【0041】
このようなパターン変換部8cは、パターン設定部8bによって設定された塗布パターン中に、予め設定された近接範囲内において走査方向(Y軸方向)における同一座標上に設定された塗布位置が存在するか否かを判別する機能を備えている。なお、近接範囲とは、液滴を同時に吐出させたときに塗布液の引き合いによって吐出に影響を及ぼす範囲であり、ノズル数で表すこともできる。このノズル数は、パターン変換部8c或いは制御部8の記憶部(不図示)に予め記憶させておくものとする。
【0042】
以上説明したように、第1の実施形態によれば、パターン設定部8bにより設定された塗布パターンに基づいて塗布ヘッド4とステージ2とを主走査方向(Y軸方向)に相対移動させてステージ2上の塗布対象物Wに液滴を塗布する場合、設定された塗布パターンが複数のノズル11aから液滴を同時に吐出させる塗布パターンであるときには、複数のノズル11aの中で液滴を同時に吐出したときに吐出に影響を及ぼす範囲(近接範囲)内で近接するノズル11a同士において液滴の吐出タイミングをずらすように塗布ヘッド4の各ノズル11aからの液滴吐出が制御される。これにより、前述の近接するノズル11a間での塗布液の引き合い発生が防止され、所定の吐出量(設定値)で液滴を吐出することが可能になるので、塗布対象物Wの塗布面Waに所望の塗布量で液滴を塗布することができる。その結果として、塗布製品の品質を向上させることができる。
【0043】
特に、近接するノズル11a同士において、パターン設定部8bにより設定された塗布パターンにおける主走査方向の塗布ピッチPの範囲内のずれ量で、当該塗布パターンにより定められた各塗布位置を主走査方向(Y軸方向)にずらすようにパターン変換部8cによって塗布パターン(個々の塗布位置)が変換される。そして、位置検出器8dによる検出値と変換された個々の塗布位置に基づいて塗布ヘッド4の各ノズル11aからの液滴吐出が制御される。これにより、吐出タイミングを精度良く管理することが可能となり、その結果、近接するノズル11a間での塗布液の引き合い発生を確実に防止し、所定の吐出量(設定値)で液滴を吐出することができる。その結果、塗布対象物Wの塗布面Waに所望の塗布量で液滴を塗布することができる。
【0044】
また、塗布ピッチPの範囲内のずれ量で、パターン設定部8bにより設定された塗布パターンによって定められた各塗布位置を主走査方向(Y軸方向)にずらすようにパターン変換部8cによって塗布パターン(個々の塗布位置)が変換される。そのため、変換後の塗布パターンにおける塗布位置同士の相対距離は、変換前の塗布パターンにおける塗布位置同士の相対距離とほぼ同等である。これにより、変換後の塗布パターンにおいても、各塗布位置に塗布された液滴が濡れ広がって隣接する液滴同士と付着し合うに必要な濡れ広がり量(範囲)を変換前の塗布パターンと同等に維持することができる。よって、塗布された液滴によって形成される塗布膜の品質(膜厚の均一性)を良好に得ることができる。
【0045】
また、近接するノズル11a同士において、パターン設定部8bにより設定された塗布パターンにおける主走査方向(Y軸方向)の塗布ピッチPの範囲内のずれ量で、当該塗布パターンにより定められた主走査方向における同一の各塗布位置が主走査方向にずらされ、当該塗布パターンがパターン変換部8cにより変換される。そして、位置検出器8dによる検出値と変換された塗布パターンの個々の塗布位置に基づいて塗布ヘッド4の各ノズル11aからの液滴吐出が制御される。これにより、吐出タイミングを容易に管理することが可能となり、その結果、近接するノズル11a間での塗布液の引き合い発生を確実に防止し、所定の吐出量(設定値)で液滴を吐出することができる。その結果、塗布対象物Wの塗布面Waに所望の塗布量で液滴を塗布することができる。
【0046】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態について図6ないし図8を参照して説明する。
【0047】
第2の実施形態は基本的に第1の実施形態と同様である。第2の実施形態では、第1の実施形態との相違点について説明し、第1の実施形態で説明した部分と同一部分は同一符号で示し、その説明も省略する。
【0048】
図6に示すように、第2の実施形態では、ノズルプレート11には、ノズル列が平行に二列設けられている。なお、ノズル11aが液室12aにつながっており、液室12aが枝管路12b1を介して主管路12bにつながっている構造や液室12a毎に圧電素子14が設けられている構造は第1の実施形態と同様である。また、主管路12bは各ノズル列に共通であり、第1の実施形態と同様に一本である。
【0049】
ただし、第2の実施形態では、二つの駆動制御部15a及び15bが設けられ、駆動制御部がノズル列毎に設けられている。これらの駆動制御部15a及び15bは、制御装置8から送られる制御信号(例えば、駆動電圧や吐出間隔(周波数)などの塗布条件の情報や塗布パターンの情報)と位置検出器8dから送られるステージ2の位置情報に基づいて、分担するノズル列の圧電素子14に駆動信号を送る機能を備えている。
【0050】
このような構成の塗布ヘッド4にノズル列毎に液滴を同時に吐出させる塗布パターンを用いた場合、すなわち塗布パターンが主走査方向において同一座標に塗布位置が設定されている場合でも、近接して位置するノズル11aからの液滴の吐出を異なるタイミングで行うようにする。
【0051】
まず、図7に示すように、塗布パターンの一例としては、ノズル列毎に、塗布パターン(黒丸(●)印のパターン)における塗布位置が主走査方向F1(Y軸方向)に塗布ピッチPで設定されており、さらに、主走査方向に直交する方向(X軸方向)にノズル11aの配置間隔で設定されている。すなわち、10行×16列の行列状のパターンで塗布パターンが設定されている。なお、図7では、説明の簡略化のため、塗布ヘッド4のノズル列毎のノズル11aの個数を仮に八個としており、各ノズル11aの上側方又は下側に示した数字はノズル番号であり、上のノズル列が奇数番のノズル列であり、下のノズル列が偶数番のノズル列である。
【0052】
前述の黒丸印の塗布パターンを用いると、ノズル列毎に、塗布ピッチPおきに八つのノズル11a全てから同時に液滴が吐出されることになる。そこで、各ノズル11aの吐出タイミングをずらすため、黒丸印の塗布パターンをパターン変換部8cによって三角(△)印の塗布パターンに変換する。この変換は、第1の実施形態と同様に、塗布ピッチを4分割して行う。図7に示す例では、奇数番ノズルが近接するノズル11a同士、偶数番ノズルが近接するノズル11a同士、さらには、奇数番ノズルと偶数番ノズルにおいて主管路12bに対する枝管路12b1の接続位置が近接するノズル11a同士が同時に液滴を吐出しないように変換したものを示している。この変換の要領は、第1の実施形態と同様である。なおこの例においては、近接範囲のノズル数は、奇数番ノズルと偶数番ノズルを合わせて「3」とする。つまり、1番ノズルと3番ノズル、2番ノズルと4番ノズル等、間に一つのノズルを挟んで位置するノズル11a間の範囲内で液滴を同時に吐出させた場合、塗布液の引き合いが生じることとなる。
【0053】
図8には、変換した塗布パターン(図7中の三角印の塗布パターン)のみを黒丸(●)と白丸(○)で示す。この図8中の白丸印は奇数番ノズルの塗布位置を示し、黒丸印は偶数番ノズルのパターン(塗布位置)を示している。また、二点鎖線の四角枠A1及びA2は、塗布動作中におけるあるタイミングでのノズル列の位置を示したものであり、上側の四角枠A1が奇数番ノズルの位置を示し、下側の四角枠A2が偶数番ノズルの位置を示している。また、四角枠A1内の塗布位置と四角枠A2内の塗布位置との主走査方向F1の離間間隔は各ノズル列の離間間隔(列間隔)Bと同じである。この離間間隔Bは、塗布ピッチPの1.5倍であり、塗布ピッチPを四分割した間隔pの6倍である。つまり、偶数番ノズルのノズル列と奇数番ノズルのノズル列とは、6p分離間している。このため、偶数番ノズルは奇数番ノズルに対して6p分だけ主走査方向F1に先行する塗布位置に対して液滴の吐出を行う。
【0054】
図8において、下側の四角枠A2内には、2番ノズルと10番ノズルの塗布位置が入っているので、このタイミングで液滴が吐出される偶数番のノズル11aは2番ノズルと10番ノズルだけになる。下側の四角枠A2内には、5番ノズルと13番ノズルの塗布位置も入っているが、このとき、それらの奇数番のノズル11aは上側の四角枠A1の位置にあるため、5番ノズルと13番ノズルから液滴が吐出されることはない。また、2番ノズルと10番ノズルは、ノズル四つ分(奇数番ノズルを含めると八つ分)離れているため、この二つのノズル11a間で塗布液の引き合いが生じることが防止され、設定量の液滴が各ノズル11aから吐出されることになる。
【0055】
一方、上側の四角枠A1には、7番ノズルと15番ノズルの塗布位置が入っているので、このタイミングで液滴が吐出される奇数番のノズル11aは7番ノズルと15番ノズルだけになる。上側の四角枠A1内には、4番ノズルと12番ノズルの塗布位置も入っているが、このとき、それらの偶数番のノズル11aは下側の四角枠A2の位置にあるため、4番ノズルと12番ノズルから液滴が吐出されることはない。また、7番ノズルと15番ノズルは、ノズル四つ分(偶数番ノズルを含めると八つ分)離れているため、この二つのノズル11a間で塗布液の引き合いが生じることが防止され、設定量の液滴が各ノズル11aから吐出されることになる。
【0056】
また、2番ノズル、10番ノズル、7番ノズル及び15番ノズルの四つのノズル11aの位置関係を見た場合、一番近い7番ノズルと10番ノズルとの間でも奇数番及び偶数番のノズル11aを含めて三つ分離れているため、7番ノズルと10番ノズルが同時に液滴を吐出するとき、この二つのノズル11a間で塗布液の引き合いが生じることが防止され、設定量の液滴が各ノズル11aから吐出されることになる。
【0057】
ここで、図8に示すような塗布パターンを用いる場合には、奇数番ノズル用の駆動制御部15aは、白丸印の塗布パターンに合せて液滴を吐出させるように圧電素子14に駆動信号を送り、偶数番ノズル用の駆動制御部15bは、黒丸印の塗布のパターンに合せて液滴を吐出させるように圧電素子14に駆動信号を送る。
【0058】
なお、それぞれの塗布パターンで設定された塗布位置に合せて液滴を吐出させるためには、塗布ヘッド4のノズル11aと塗布対象物Wとの相対位置関係(主走査方向における相対位置)を知る必要がある。このため、奇数番ノズル用の駆動制御部15aと偶数番ノズル用の駆動制御部15bのどちらか一方は、ステージ2に付随して設けられた位置検出器8dからステージ2の位置信号を取得し、取得した位置信号から吐出タイミング信号を算出して他方に出力する。つまり、奇数番ノズル用の駆動制御部15aと偶数番ノズル用の駆動制御部15bとはいずれも位置検出器8dからの位置信号を受け取る機能を備えてはいるものの、位置検出器8dの位置信号は、奇数番ノズル用の駆動制御部15a及び偶数数番ノズル用の駆動制御部15bのどちらか一方だけに入力される。奇数番ノズル用の駆動制御部15a及び偶数数番ノズル用の駆動制御部15bは、得られた位置信号に基づいて吐出が必要なノズル11aに対応する圧電素子14に駆動信号を出力する。
【0059】
ここで、奇数番ノズル用の駆動制御部15aと偶数数番ノズル用の駆動制御部15bとがそれぞれ位置検出器8dからステージ2の位置信号を個別に取得した場合には、塗布位置の精度が充分に得られず、液滴の吐出タイミングのずれが生じることがあり、その結果として、近接するノズル11a同士が同時に液滴を吐出してしまう場合がある。そこで、第2の実施形態では、主走査方向(Y軸方向)に先行する偶数番ノズル用の駆動制御部15bのみが位置検出器8dからの位置信号を得て、奇数番ノズル用の駆動制御部15aは偶数番ノズル用の駆動制御部15bから当該偶数番ノズル用の駆動制御部15bが位置検出器8dの位置信号から生成した吐出タイミング信号を得るようにする。つまり、偶数番ノズル用の駆動制御部15bが主の駆動制御部15b、奇数番ノズル用の駆動制御部15aが従属の駆動制御部15aとして扱われる。主の駆動制御部15bと従属の駆動制御部15aとは、所謂マスター/スレーブの関係と言える。
【0060】
なお、奇数番ノズル用の駆動制御部15aと偶数番ノズル用の駆動制御部15bが個別に位置検出器8dからの位置信号を受け取って吐出タイミングを算出すると、吐出タイミングにずれが生じる原因としては、例えば、次の(1)及び(2)が挙げられる。
【0061】
(1)位置検出器8dから各駆動制御部15a及び15bを接続する信号線の長さの相違
位置検出器8dからの位置信号は、信号線(電線)を通じて各駆動制御部15a及び15bに伝えられる。信号が信号線を伝わる速度は一定であるため、信号線の長さが違えばそれぞれの駆動制御部15a及び15bまで伝わる時間に差が生じる。
【0062】
(2)各駆動制御部15a及び15bの個体差
各駆動制御部15a及び15bは、プリント基板にIC(集積回路)、抵抗器、コンデンサーなどの電子部品を実装して構成されているが、これらの電子部品やプリント基板には個体差があり、同じ計算処理(ステージ2の移動位置の算出処理)を行う場合でも各駆動制御部15a及び15bの間で処理時間に差が生じる。
【0063】
このような時間差は非常に小さなものであるが、インクジェット方式のような精細な塗布を行う塗布ヘッド4を用いる場合には、吐出タイミングに影響が出ることがある。そこで、一方の駆動制御部、例えば、偶数番ノズル用の駆動制御部15bのみで位置検出器8dからの位置信号を受け取り、奇数番ノズル用の駆動制御部15aは偶数番ノズル用の駆動制御部15bから吐出タイミング信号を得るようにする。これにより、(2)の時間差を解消することが可能になるため、吐出タイミングを精度良く管理することができる。その結果、偶数番ノズルと奇数番ノズルとの間で吐出タイミングの同期がずれることが防止されるので、近接するノズル11a同士が同時に液滴を吐出するというトラブルを解消し、精度の良い塗布を行うことができる。ひいては、塗布製品の品質(膜厚精度やムラなど)を向上させることができる。
【0064】
また、偶数番ノズル用の駆動制御部15bからのタイミング信号も奇数番ノズル用の駆動制御部15aへ信号線を通じて伝達されるが、各駆動制御部15a及び15bは隣接しているため、各駆動制御部15a及び15bを接続する信号線は、(1)のように位置検出器8dから延びる信号線に比べ、非常に短くなるため、(1)の時間差を抑止することが可能となる。したがって、前述と同様に、吐出タイミングを精度良く管理することができ、その結果、偶数番ノズルと奇数番ノズルとの間で吐出タイミングの同期がずれることが抑止されるので、近接するノズル11a同士が同時に液滴を吐出するというトラブルを抑え、精度の良い塗布を行うことができる。ひいては、塗布製品の品質(膜厚精度やムラなど)を向上させることができる。
【0065】
なお、主走査方向に直交するX軸方向に沿って複数の塗布ヘッド4を塗布対象物Wである基板の幅方向の全域をカバーするように配列する場合には、配列された一端側の塗布ヘッド4と他端側の塗布ヘッド4とは1m以上離れて配置されることがある。このような場合、信号線の長さの相違に基づく上述(1)の時間差は、顕著に現われるので、このような場合に適用して効果大である。このような場合、例えば、複数の塗布ヘッド4のうち一つの塗布ヘッド4の遇数番ノズル用の駆動制御部15bを主の駆動制御部とし、この塗布ヘッド4の奇数番ノズル用の駆動制御部15aおよび他の塗布ヘッド4の各駆動制御部15a、15bをそれぞれ従属の駆動制御部とする。
【0066】
以上説明したように、第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、ノズル列毎の駆動制御部15a及び15bのうち一つの駆動制御部、例えば、駆動制御部15bは、位置検出器8dにより検出された塗布ヘッド4とステージ2との主走査方向(Y軸方向)の相対位置情報に基づいて液滴の吐出タイミングを算出し、算出した吐出タイミングを他の駆動制御部15aに出力する。これにより、前述の(2)の時間差を解消することが可能になり、さらに、前述の(1)の時間差を抑えることが可能になるため、吐出タイミングを精度良く管理することができる。したがって、偶数番ノズルと奇数番ノズルとの間で吐出タイミングの同期がずれることが防止されるので、同期ずれに起因して近接範囲に位置するノズル同士が液滴を同時に吐出する不具合が発生することが防止される。その結果、近接するノズル11a間での塗布液の引き合い発生が抑止され、所定の吐出量(設定値)で液滴を吐出することが可能になる。このため、塗布対象物Wの塗布面Waに所望の塗布量で液滴を塗布することができ、結果として、塗布製品の品質を向上させることができる。
【0067】
なお、第2の実施形態において、奇数番ノズルのノズル列と偶数番ノズルのノズル列との離間間隔Bが塗布ピッチPを四等分した間隔pの整数倍(6倍)の例で説明した。しかしながら、物理的に固定である離間間隔Bに対して塗布ピッチPは塗布対象物Wの品種や塗布対象物W上に形成する塗布膜の厚さ等に合わせて都度設定される値である。そのため、離間間隔Bは、塗布ピッチPを等分割した間隔pの必ずしも整数倍になるとは限らない。そこで、離間間隔Bが間隔pの倍数ではなかった場合には、離間間隔Bを間隔pで割った商の端数を切捨て、或いは切上げ、離間間隔Bを間隔pの整数倍となるように補正し、離間間隔Bは間隔pの整数倍であると認識して各ノズル11aからの液滴の吐出を制御する。図8を借りて説明すれば、離間間隔Bが間隔pの6.n倍(nは、1〜9の整数)であった場合、離間間隔Bを間隔pの6倍、或いは、7倍となるように補正する。
【0068】
このとき、端数を切捨てる補正を行うか切上げる補正を行うかは、奇数番ノズルと偶数番ノズルとに同時に液滴を吐出させた場合にそれらのノズル11a間で塗布液の引き合いの影響が生じるか否かによって判断する。例えば、図8を借りて説明すれば、次のとおりである。
【0069】
離間間隔Bが間隔pの6.n倍(nは、1〜9の整数)であった場合に、端数を切上げて、離間間隔Bを間隔pの7倍であるものとして補正したとする。この場合、下側の四角枠A2の位置に偶数番ノズルが位置するときに、奇数番ノズルは上側の四角枠A1の位置よりも一行上(間隔pだけ上側)に位置する。この位置で液滴が吐出される奇数番ノズルは、3番ノズルと11番ノズルである。一方、下側の四角枠A2の位置で液滴が吐出される偶数番ノズルは、2番ノズルと10番ノズルである。ここで、液滴が吐出されるそれぞれのノズル11a同士の位置関係を見てみると、2番ノズルと3番ノズル、および10番ノズルと11番ノズルは、それぞれ隣り合って主管路12bに接続されており、近接範囲(ノズル数=3)内にある。そのため、2番ノズルと3番ノズルとの間、および10番ノズルと11番ノズルとの間で液滴を同時に吐出させた場合、これらノズル間で塗布液の引き合いが生じ、その結果、吐出される液滴の量が不足する。そこで、このような場合には、端数を切上げるのではなく切捨て、離間間隔Bを間隔pの6倍であるものと補正する。
【0070】
なお、パターン変換部8cによって変換された塗布パターンの個々の塗布位置の情報や個々の塗布位置に対してどのノズル11aを用いて液滴の塗布を行うのかといった情報は、塗布位置の情報やノズル11aの配置位置(ピッチや列間隔)等に基づいて制御部8aが演算によって求めることが可能である。したがって、離間間隔Bが間隔pの整数倍か否かの判別や、離間間隔Bが間隔pの整数倍ではないときに端数を切捨てるか切上げるかの判定は、制御部8aによって行うことが可能である。
【0071】
(他の実施形態)
本発明に係る前述の実施形態は例示であり、発明の範囲はそれらに限定されない。前述の実施形態は種々変更可能であり、例えば、前述の実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素が削除されても良く、さらに、異なる実施形態に係る構成要素が適宜組み合わされても良い。
【0072】
前述の実施形態においては、一つの塗布ヘッド4を用いているが、これに限るものではなく、例えば、複数の塗布ヘッド4を用いるようにしても良い。この場合には、各塗布ヘッド4をX軸方向に並べて塗布対象物WのX軸方向の長さをカバー可能に設置すれば、ヘッド移動装置5を不要とすることができる。
【0073】
また、前述の実施形態においては、パターン変換部8cを設け、パターン設定部8bにて設定された塗布パターンを変換するものとして説明したが、これに限るものではなく、例えば、塗布パターンを変換するする変わりに、遅延時間設定部を設け、ノズル毎に吐出タイミングの遅延時間を設定するようにしても良い。図4を借りて説明すれば、以下のとおりである。
【0074】
まず、塗布ヘッド4の八個のノズル11aに対して基準とするノズル(以下「基準ノズル」と称す。)を設定する。ここでは、第1の実施形態と同様に、四つ以上離れて位置するノズル11a同士であれば液滴を同時に吐出させたとしても塗布液の引き合いの影響が生じないものとする。そこで、塗布ヘッド4の八つのノズル11aを四つずつのグループ(1番から4番と5番から8番のグループ)に分け、それぞれのグループの一つのノズル11aを基準ノズルとして設定する。例えば、1番ノズルと5番ノズルを基準ノズルとして設定する。
【0075】
次いで、各グループの他の三つのノズルに対して異なる遅延時間を設定する。例えば、遅延時間は、設定された塗布速度によって塗布ピッチP分を移動するに要する時間tをグループを構成するノズル数(この例では、四つ)で割った値(t/4)に基づいて設定する。例えば、2番ノズルには遅延時間としてt/4を設定し、3番ノズルには遅延時間として2×t/4を設定し、4番ノズルには遅延時間として3×t/4を設定する如くである。6番ノズルから8番ノズルに対しても同様の要領にて遅延時間を設定する。
【0076】
塗布対象物Wに対して液滴を塗布するときには、基準ノズル(1番ノズルと5番ノズル)に対してのみパターン設定部8bによって設定された塗布パターンに基づいて液滴を吐出させる。そして、基準ノズル以外の他のノズルについては、基準ノズルからの吐出タイミングに対して設定された遅延時間で液滴を吐出させる。このような制御は、基準ノズルの吐出タイミングに対して基準ノズル以外の他のノズルの吐出タイミングが所定の遅延時間となるように各圧電素子14を駆動させることで駆動制御部15が行うことが可能である。
【0077】
また、塗布ピッチPを四分割して連続して並んだ四つのノズル11aからの液滴の吐出タイミングが異なるように塗布パターンを変換したが、塗布ピッチPの分割数はこれに限られるものではなく、二つや三つ、或いは五つ以上であっても良い。要は、液滴を同時に吐出させたときノズル11a間での塗布液の引き合いによってノズル11aから吐出される液滴の量が少なくなる近接範囲内の複数のノズル11a間で液滴の吐出タイミングを異ならせることが可能な数で塗布ピッチを分割すればよい。
【0078】
また、塗布ヘッド4のノズル列をX軸方向に平行であるものとしたが、これに限るものではなく、X軸方向に対して水平面内で傾斜させて塗布ヘッド4を配置するものであっても良い。
【0079】
また、前述の実施形態においては、液滴塗布を行う際、ステージ2をY軸方向に移動させて、塗布ヘッド4と塗布対象物Wとを相対移動させているが、これに限るものではない。例えば、塗布ヘッド4をY軸方向に移動させて、塗布ヘッド4と塗布対象物Wとを相対移動させるようにしても良く、あるいは、それらを組み合わせて塗布ヘッド4と塗布対象物Wとを相対移動させるようにしても良い。すなわち、塗布ヘッド4と塗布対象物Wとを相対移動させるようにすれば良く、相対移動に関する駆動手段は限定されるものではない。
【符号の説明】
【0080】
1 液滴塗布装置
2 ステージ
3 ステージ移動装置(移動装置)
4 塗布ヘッド
8a 制御部
8b パターン設定部
8c パターン変換部
8d 位置検出器
15 駆動制御部
15a 駆動制御部
15b 駆動制御部
W 塗布対象物
Wa 塗布面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布面を有する塗布対象物を支持するステージと、
塗布液の液滴を吐出する複数のノズルが並ぶノズル列を有するインクジェット式の塗布ヘッドと、
前記ステージと前記塗布ヘッドとを前記ステージ上の前記塗布対象物の前記塗布面に沿って前記ノズル列に交差する第1の方向に相対移動させる移動装置と、
前記塗布面上における前記液滴の塗布位置を示す情報を含む塗布パターンを設定するパターン設定部と、
前記パターン設定部により設定された前記塗布パターンに基づいて前記塗布ヘッド及び前記移動装置を制御し、前記ステージ上の前記塗布対象物の前記塗布面に液滴を塗布する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記パターン設定部により設定された前記塗布パターンが前記複数のノズルの中で近接して位置するノズルから液滴を同時に吐出させる塗布パターンであったとき、当該近接して位置するノズル同士において前記液滴の吐出タイミングをずらすように前記ノズルからの液滴の吐出を制御することを特徴とする液滴塗布装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記近接して位置するノズル同士において、前記パターン設定部により設定された前記塗布パターンでの前記第1の方向における塗布位置のピッチの範囲内のずれ量で、当該塗布パターンにより定められた前記塗布位置に対して前記液滴の実際の塗布位置を前記第1の方向にずらすように前記ノズルからの液滴の吐出を制御することを特徴とする請求項1記載の液滴塗布装置。
【請求項3】
前記近接して位置するノズル同士において、前記パターン設定部により設定された前記塗布パターンでの前記第1の方向における塗布位置のピッチの範囲内のずれ量で、当該塗布パターンにより定められた前記塗布位置を前記第1の方向にずらし、当該塗布パターンを変換するパターン変換部を備え、
前記制御部は、前記パターン変換部により変換された前記塗布パターンに基づいて前記ノズルからの液滴の吐出を制御することを特徴とする請求項2記載の液滴塗布装置。
【請求項4】
前記近接して位置するノズルは、液滴を同時に吐出したときに互いの液滴の吐出に影響を及ぼす範囲内に位置する所定数のノズルであり、
前記制御部は、前記近接して位置するノズル同士において、前記塗布位置のピッチを前記所定数で割った値分だけ、前記液滴の実際の塗布位置を前記第1の方向にずらすように前記ノズルからの液滴の吐出を制御することを特徴とする請求項2記載の液滴塗布装置。
【請求項5】
前記ステージと前記塗布ヘッドとの前記第1の方向の相対位置を検出する位置検出器を備え、
前記塗布ヘッドは、前記ノズル列を複数列有しており、前記ノズル列毎に前記複数のノズルからの前記液滴の吐出を制御する駆動制御部を備えており、
前記ノズル列毎の駆動制御部のうち一つの駆動制御部は主の駆動制御部であり、他の駆動制御部は従属の駆動制御部であり、
前記従属の駆動制御部は、前記主の駆動制御部により前記位置検出器の位置信号に基づいて生成された吐出タイミング信号を取得することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の液滴塗布装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記複数のノズル列の列間隔が、前記パターン設定部により設定された前記塗布パターンでの前記第1の方向における塗布位置のピッチを等分割した間隔の整数倍であるか否かを判別し、前記間隔の整数倍でないと判別した場合、前記列間隔を前記間隔で割った商の端数を切上げ又は切捨て、前記列間隔が前記間隔の整数倍であると認識し、前記ノズルからの液滴の吐出を制御することを特徴とする請求項5記載の液滴塗布装置。
【請求項7】
複数のノズルが並ぶノズル列を有するインクジェット式の塗布ヘッドと塗布対象物とを前記塗布対象物の塗布面に沿って前記ノズル列に交差する第1の方向に相対移動させ、前記塗布面上における前記液滴の塗布位置を示す情報を含む塗布パターンに基づいて前記ノズルから前記塗布面に向けて塗布液の液滴を吐出させ、前記塗布面に前記塗布液の液滴を塗布する液滴塗布方法であって、
前記塗布パターンが前記複数のノズルの中で近接して位置するノズルから液滴を同時に吐出させる塗布パターンであったとき、当該近接して位置するノズル同士において前記液滴の吐出タイミングをずらすように前記ノズルからの液滴の吐出を制御することを特徴とする液滴塗布方法。
【請求項8】
前記近接して位置するノズル同士において、前記塗布パターンでの前記第1の方向における塗布位置のピッチの範囲内のずれ量で、当該塗布パターンにより定められた前記塗布位置に対して前記液滴の実際の塗布位置を前記第1の方向にずらすように前記ノズルからの液滴の吐出を制御することを特徴とする請求項7記載の液滴塗布方法。
【請求項9】
前記近接して位置するノズル同士において、前記塗布パターンでの前記第1の方向における塗布位置のピッチの範囲内のずれ量で、当該塗布パターンにより定められた前記塗布位置を前記第1の方向にずらして当該塗布パターンを変換し、変換した前記塗布パターンに基づいて前記ノズルからの液滴の吐出を制御することを特徴とする請求項8記載の液滴塗布方法。
【請求項10】
前記近接して位置するノズルは、液滴を同時に吐出したときに互いの液滴の吐出に影響を及ぼす範囲内に位置する所定数のノズルであり、
前記近接して位置するノズル同士において、前記塗布位置のピッチを前記所定数で割った値分だけ、前記液滴の実際の塗布位置を前記第1の方向にずらすように前記ノズルからの液滴の吐出を制御することを特徴とする請求項8又は9記載の液滴塗布方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−236152(P2012−236152A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107039(P2011−107039)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】