説明

液面監視装置

【課題】複数の無線タグの配置により、液面監視を可能にした液体収容ケースの監視装置を提供することを目的とする。
【解決手段】複数箇所にそれぞれ取り付けられている無線タグを含む液体収容ケースと、複数の前記無線タグ対して質問電波を与え,それぞれの無線タグからの応答信号に応じて、前記液体収容ケース内の液体状況を管理する管理手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線タグ(RFID;Radio Frequency Information Data tag)を有効に活用した液面監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ICチップとアンテナをペアにした無線タグが開発されている。無線タグは、無線タグと読み取り器(リーダ)との間で、電波を媒体とする無線でデータのやり取りを行うことができ、電子荷札として注目されている。無線タグは、リーダを近づけるとリーダからの電波により無線タグ側に起電力が生じ、この電力により回路が動作する。リーダと無線タグ間では、制御データの交換、データの読み取り、書き込み、消去処理などが可能である。
【特許文献1】特開平2003−116127号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
無線タグは微細(0.4mm程度)なものであり、チップ部面積が1mm以下となる。このために、この無線タグを取り付ける対象物は、種々の対象物が可能であり、十分な活用が望まれている。
【0004】
そこでこの発明は、複数の無線タグの配置により、液体収容ケース内の液面監視を可能とした液面監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、複数箇所にそれぞれ取り付けられている無線タグを含む液体収容ケースと、複数の前記無線タグ対して質問電波を与え、それぞれの無線タグからの応答信号に応じて、前記液体収容ケース内の液体状況を管理する管理手段とを有する。
【発明の効果】
【0006】
上記の手段により、収容ケース内の液体の量などを監視することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1には、本願発明の一実施の形態を示している。100は液体を収容する液体収容ケースを側面から見た図である。液体収容ケース100の側壁の内側には、複数の無線タグ1〜15が取り付けられている。ここで用いられる無線タグは、受信した電波によりエネルギーを得て、その受信電力の全部または一部を電波として発射する場合と、自身に電池を搭載しており通常は待ち受け状態で、受信した電波によって励起される場合のどちらを採用しても良い。
【0008】
200は無線タグ1〜15に質問電波を伝送する無線送受信機で、無線タグ1〜15に対して電波を伝送可能な範囲内にあり、固定型でも携帯型でも良い。無線タグ1〜15のうち応答可能な無線タグは、無線送受信機200から伝送される電波によって励起される。そして、複数回励起した後に、各無線タグの固有データを無線送受信機200に伝送する。ここで、無線タグ1〜15が伝送する固有データは、各無線タグ内のメモリに記憶されており、少なくとも無線タグの固有番号を識別出来るデータが含まれる。さらに、液体収容ケース100への取り付け位置情報と、液体収容ケース100内の液体の種類と、液体収容ケース100の種類とを識別できるデータが含まれてもよい。
【0009】
無線送受信機200は受信した各固有データを最寄りの分散基地局300に伝送する。そして、各固有データを受信した最寄りの分散基地局300は、ネットワークを介して基地局400に伝送する。この時、最寄りの分散基地局300は、必要があれば他の分散基地局、例えば分散基地局310、を介して基地局400に受信した固有データを伝送しても良い。 また、例えば各無線タグ1〜15と無線送受信機200および分散基地局300が、引火性の強いガス蒸気の中に設置される場合には、各無線タグに簡単なモールドを施し、無線送受信機のアンテナ部201および分散基地局300のアンテナ部301を本質安全防爆構造に、無線送受信機200の本体、および分散基地局300の本体を耐圧防爆構造とすることで引火性の高い状況においても対応できる。
【0010】
無線送受信機200、分散基地局300及び310は、それぞれ同様なハードウエア構成であってもよい。例えば、無線送受信機200は、アンテナ201、無線送受信部202、制御部203により構成され、無線送受信機300は、アンテナ301、無線送受信部302、制御部303により構成され、無線送受信機310は、アンテナ311、無線送受信部312、制御部313により構成される。基地局300と310は例えば有線で接続される。
【0011】
上記の例では、液体収容ケース100が1つの例を示しているが、本発明の装置は、図2に示すように、複数の液体収容ケース100、100Bの状況を監視することが可能である。液体収容ケース100Bに対しては、例えば無線タグ1〜15が取り付けられている。液体収容ケース100Bに対しては、無線送受信機320が対応する。そして無線送受信機320の応答電波に対して液体収容ケース100Bに取り付けられている無線タグ1〜15のうち応答可能な無線タグが応答信号を返信してくる。無線送受信機320は、応答信号を受信し、内容を解析し、その結果を例えば分散基地局330に伝送する。ここでは、先の分散基地局310からのデータがこの分散基地局330を介して基地局400に送られている。なお、この発明では、無線送受信機200、320、分散基地局301,310,330、基地局400を総じて管理手段として捕らえている。
【0012】
次に、本発明装置の基本的な動作例を図1を参照して説明する。図1において、今、液体収容ケース100内の液体で満たされている部分をb、そうでない部分をaとする。無線送受信機200から伝送される質問電波には、液体に吸収されやすい周波数のキャリアが選択されており、このキャリアに質問データによる変調をかける。例えば、液体として水を用いた場合には、2.4GHzの周波数のキャリアに変調をかける。ここで、無線タグと管理手段との交信のための電波(2.4GHz)は、液体収容ケース内に収容されている液体に吸収されやすい周波数である。
【0013】
この事により、bの領域にある無線タグについては、無線送受信機200からの質問電波の伝送が成立しない。もしくは、電波が無線タグのエネルギー源になっている場合には、無線送受信機に返送するためのエネルギーが確保できず、通信が成立する確立が低くなる。一方、aの領域にある無線タグについては、無線送受信機200からの質問電波の伝送が成立する確率が高くなる。また、領域aと領域bの境界(液面)にある無線タグについては、通信が不安定(通信が成立したり、成立しなかったりする状態)になる。 無線タグ1〜15の応答についてさらに具体的に説明する。無線タグ1〜5はaの領域にあるので、質問電波に対する応答が成立する確率が高くなる。無線タグ6〜9は領域aと領域bの境界にあるので、質問電波に応答したり、応答しなかったりする。無線タグ10〜15はbの領域にあるので、質問電波に対する応答が成立する確立が低くなる。
【0014】
上記のような無線タグの応答状況から、応答の確率が特定の範囲内の無線タグについてつぎのようなデータを得る。すなわち、各無線タグの固有データに含まれる取り付け位置情報の平均値、または中央値を計算するのである。これにより、液体収容ケース内の液面の高さや内容量を算出することができる。
【0015】
図3(A)、図3(B)では、図1に示す無線タグ1〜15の、10回の質問電波に対する応答結果の一例を示す。“time”は、10回伝送した質問電波のうちで、無線タグから応答があった回数である。“No.”は、応答があった無線タグの数である。
【0016】
質問電波に対する応答があった無線タグについては、各無線タグから伝送された固有データから固有番号を認識することができる。応答がない無線タグについては、あらかじめ液体収容ケース100に取り付けられている無線タグの数と、それらの固有データを把握しておくことで、応答の有無を判断することができる。例えば図3(A)に示す応答結果の場合には、応答が0回、すなわち応答が無かった無線タグは5つあり、その番号は、11、12、13、14、15である。
【0017】
また、本実施形態では、応答の確率が50%近傍の無線タグが液面付近にあると仮定し、応答が4回から6回、すなわち応答の確率が40%から60%であった無線タグが液面付近にあると仮定して、応答の確率がその範囲内である無線タグ5〜9の固有データから液面の位置を算出する。無線タグ5〜9について、それぞれの無線タグが取り付けられている高さ、つまり液体収容ケースの底面から無線タグまでの距離をh5、h6、h7、h8、h9とすると、想定される液面の高さHは次式のように概算することができる。
【0018】
H=(h5+h6+h7+h8+h9)/5
この時、質問電波の伝送回数が多い場合には、対象とする無線タグの高さの中央値を採用しても良い。また、本実施形態では応答の確率が40%から60%の無線タグの固有データを用いているが、液体の種類により電波の吸収率が異なることが予想される。この場合は、精度を向上するためにあらかじめ実験などで対象となる応答の確率の範囲を決めておいても良い。更に、
上記した計算式に基づく演算処理、無線タグの固有データの内容判定は、例えば無線送受信機200の制御部或は分散基地局300、あるいは310の制御部で実行されてもよいし、あるいは、基地局400のメイン制御部において実行されてもよい。
【0019】
更にまた、無線タグの固有データには、無線タグの固有番号のみが含まれていおり、取り付け位置情報などは、無線送受信機200の制御部或は分散基地局300あるいは310の制御部、あるいは、基地局400のメイン制御部のテーブルに固有番号と共に格納されていてもよい。
【0020】
図4は、液体収容ケースが傾斜した場合の、本発明の一実施形態である。図4では、図1と共通の部分は共通の符号を用いて説明する。また、液体収容ケース100が傾斜した時に、液体に満たされる部分をb´、そうでない部分をa´としている。
【0021】
図1に示す液体収容ケース100が水平な場合に境界に位置していた無線タグは無線タグ6〜9である。液体収容ケース100が傾斜すると、無線タグ9の質問電波に応答する確率は高くなるが、無線タグ6は液面付近に位置しているため応答したり、応答しなかったりする。b´領域に位置する無線タグ7は、液面の下部に位置するようになるので応答がある確率が低く、a´領域に位置する無線タグ10は、液面の上部に位置するようになるので、応答する確率が高くなる。
【0022】
よって、無線タグ6〜8よりも下にある、つまり液体収容ケース100の底面からの距離が短い位置に配置されている無線タグ10の、質問電波に応答する確率が無線タグ6〜8の確率よりも高くなるので、液面の位置が変化したことがわかる。この様に、各無線タグが質問電波に応答する確率と各無線タグの個別データから、液体収容ケース100の傾きを検知することができる。
【0023】
図5は、本発明の第二の実施の形態である。ここでは、液面の位置を一定に保つことができる装置の例を示している。液体が収容された液体収容ケース110の側面の内側には、無線タグが少なくとも2個取り付けられる。図5では、無線タグ16は液面の上部に、無線タグ17は液面の下部に取り付けられている。そして、液体収容ケース110に液体を注入する注液口111と、注液口111からの注液量を調節する弁112と、液体収容ケース110から液体を排出する排液口113と排液口113からの排液量を調節する弁114が設けられている。
【0024】
無線送受信機210は無線タグ16と無線タグ17に対して、質問電波を伝送する。また、無線送受信機210は、弁112、弁114を制御することができる。つまり無線送受信機210は、無線タグ16と無線タグ17の応答信号を解析し、例えば無線タグ16が常に液面の上部に位置し、無線タグ17が常に液面の下部に位置するように、弁112、114を制御し、注液量や排液量を調整する。例えば、無線タグ17からの応答の確率が一定値よりも大きくなると弁112を開き、注液口111から注液する。無線タグ16からの応答の確率が一定値よりも低くなると弁501を閉じ、注液口111からの注液をやめるといった方法で制御を行う。この様に弁112を制御することで、液体収容ケース110内の液体の量を一定に保つことができる。
【0025】
また、排液量を調節する場合には、弁114を制御する。更に、本発明によれば液面の位置や内容量を算出することができるので、その算出結果に応じて、弁112や弁114を制御しても良い。
【0026】
図6(A)、図6(B)は、本発明の第三の実施の形態である。ここでは、各無線タグの応答によって気泡の位置の検出する一手法を示している。図6(A)と図6(B)は、液体収容ケース120と、液体収容ケース130の形状が異なるが、それ以外で両者に共通の個所には共通の符合を用いて説明する。
【0027】
図6(A)は、上部の壁の断面が湾曲した形状で、下部の壁(底)が水平な液体収容ケース120を有している。液体収容ケース120の内部には、気泡500が生じるように液体600が収容され、上部の壁の頂点を含む複数の個所に、複数の無線タグ18〜22が取り付けられている。また、無線タグ18〜22には各無線タグの固有データが記憶されている。
【0028】
無線タグ18〜22の中で、気泡500内に含まれている無線タグ20は、質問電波に応答する確率が高くなる。他の無線タグ18、19、21、22は液体600内に含まれているので、質問電波に応答する確率が低くなる。よって、無線タグ20付近に気泡があることが分かる。気泡500の位置は、液体収容ケース120の傾きに依存するので、気泡500の位置によって液体収容ケース120の傾きを検知することができる。
【0029】
また、図6(B)には、液体収容ケース120とは異なる形状を持った液体収容ケース130による一実施の形態を示している。液体収容ケース130は、液体収容ケース120の底の中央部分に、ドーム状の部分を有した形状になっている。気泡500の位置は図6(A)の説明と同様に、無線タグ18〜22の質問電波に対する応答によって検知される。液体収容ケース130を用いることで、液体収容ケース内に収容される液体の量を少なくすることが可能であり、また、気泡500の移動可能な領域を限定することができる。
【0030】
これまでの実施の形態では、無線タグを任意に配置して説明しているが、無線タグは規則的に配置されても良い。また、用途によっては、無線タグを液体収容ケースのある特定の範囲に限定して配置しても良く、液体収容ケースの外側に配置されても良い。
【0031】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施の形態を示す図。
【図2】本発明の他の実施の形態を示す図。
【図3】本発明において、無線タグの質問電波に対する応答結果の一例を示す図。
【図4】本発明における液体収容ケースの傾きの検知を説明する図。
【図5】本発明の更に他の実施の形態を示す図。
【図6】本発明のまた他の実施の形態を示す図。
【符号の説明】
【0033】
1〜22…無線タグ、100,110,120,130…液体収容ケース、111…注水口、113…排水口、112,114…弁、200,210…無線送受信機、300,310…分散基地局、400…基地局、500…気泡、600…液体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数箇所にそれぞれ取り付けられている無線タグを含む液体収容ケースと、
複数の前記無線タグに対して質問電波を与え、それぞれの無線タグからの応答信号に応じて、前記液体収容ケース内の液体状況情報を管理する管理手段とを有することを特徴とする液体収容ケースの監視装置。
【請求項2】
前記無線タグと前記管理手段と交信のための電波は、前記液体収容ケース内に収容されている液体に吸収されやすい周波数を採用している請求項1記載の液体収容ケースの監視装置。
【請求項3】
前記質問電波に対する前記無線タグの応答信号から、液体収容ケースに収容された液体の内容量や液面の位置を算出する手段を有する請求項2記載の液体収容ケースの監視装置。
【請求項4】
前記質問電波に対する前記無線タグの応答信号から、液体収容ケースの傾きを検知する手段を有する請求項2記載の液体収容ケースの監視装置。
【請求項5】
少なくとも2つの前記無線タグを用いて、前記液体収容ケース内の液体の内容量若しくは液面の位置を一定に保つ手段を有する、請求項1記載の液体収容ケースの監視装置。
【請求項6】
前記液体収容ケースが、上部の壁の断面が湾曲し、下部の壁(底)が水平面である形状を有し、前記上部の壁の頂点を含む複数の個所に配置された複数の前記無線タグと、
前記液体収容ケース内に気泡を持つように収容された液体と、
前記気泡内位置する無線タグを検出することで、液体収容ケースの傾きを検出する手段とを有する請求項1記載の液体収容ケースの監視装置。
【請求項7】
前記無線タグとして、前記質問電波によりエネルギーを得て、その受信電力を電波として発射する無線タグを採用している請求項1記載の液体収容ケースの監視装置。
【請求項8】
前記無線タグとして、自身に電池を搭載しており、通常は待ち受け状態で電波によって励起される無線タグを採用している請求項1記載の液体収容ケースの監視装置。
【請求項9】
前記無線タグと、無線送受信機と分散基地局のアンテナが本質安全防爆構造であり、無線送受信機と分散基地局の本体部分が耐圧防爆構造である事を特徴とする請求項1記載の液体収容ケースの監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−17549(P2006−17549A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−194626(P2004−194626)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000220620)東芝テリー株式会社 (116)
【Fターム(参考)】