説明

混合燃料供給システム

【課題】燃料と水とを充分に混合することができ、連続的に均質な混合燃料を供給可能な混合燃料供給システムを提供する。
【解決手段】混合槽1と、第1の混合装置2と、第2の混合装置3と、燃料供給装置4とを備える混合燃料供給システムであって、第1の混合装置2で混合槽1内の液体と燃料とを混合し、第2の混合装置3で混合槽1内の液体と水とを混合する。また、燃料供給装置4では、燃焼装置5の動作開始直後及び動作終了直前は燃料を供給し、それ以外の期間は混合槽1で生成した混合燃料を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は混合燃料供給システムに関する。詳しくは、燃料(油)と水とを混合した混合燃料を供給する混合燃料供給システムに係るものである。
【背景技術】
【0002】
工業用、民生用を問わず多くの機器や装置類の運用のために化石燃料が利用されており、特に、重油や軽油等の石油系燃料が広く利用されている。
【0003】
ところで、近年では地球温暖化の原因とされる二酸化炭素の低減を図るべく、電気を始めとして液化石油ガス(LPG:Liquefied petroleum gas)や液化天然ガス(LNG:Liquefied natural gas)の利用も目を向けられつつある。
【0004】
しかし、石油系燃料は、電気、LPG及びLNGよりも一般に廉価である上に、ディーゼル機関に代表される熱機関の燃料としては重油や軽油の根強い需要が保たれている。
【0005】
そのために、重油や軽油をより効率的に利用するために、所定の重量比で燃料と水とを混合した混合燃料が注目されている。なお、「混合燃料」とは、水を燃料(油)中に分散させて混合させたものである。
【0006】
ここで、混合燃料の原始的な製造手段としては燃料槽内の重油や軽油に対して適宜乳化剤と共に水を添加し、攪拌翼で回転させる方法が採用されていた。
【0007】
しかし、攪拌翼の回転による混合燃料の製造方法の場合には、原則としてバッチ処理に頼らざるを得ないために、製造される混合燃料の成分比等にムラが生じてしまう。更には、混合の度合いが不充分であるために、短時間のうちに燃料と水との2層に分離してしまう。
【0008】
こうした状況に対応すべく、液体燃料に、その液体燃料に対する体積比で5〜50%の量であり、粒径が0.2μm以下の微細な粒子の状態の水を分散させることによって、経時安定性を確保する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0009】
また、油槽の油面上の空間に陽電極を配置すると共に、油槽の油中に陰電極を配置し、陰電極より油中に電子を過度に放出させて陽電極と油面との間でプラズマ放電を生じさせることで、油に水との親和性を付与する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平2−105890号公報
【特許文献2】特開2007−224156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載の技術の様に、水を微細な粒子とするだけでは、未だ燃料と水との混合度合いが充分では無く、短時間のうちに燃料と水とが2層に分離してしまう現象を抑制することは困難であった。
【0012】
また、特許文献2に記載の技術の様に、プラズマ放電により親和性を付与したとしても、こうした処理はバッチ処理での対応となり、大量生産を前提とする混合燃料の実製造には充分に適した技術とは言い難いものであった。
【0013】
本発明は以上の点に鑑みて創案されたものであって、燃料と水とを充分に混合することができ、連続的に均質な混合燃料を供給可能な混合燃料供給システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために、本発明の混合燃料供給システムでは、混合槽と、該混合槽内の流体を導入し、導入した流体と燃料若しくは水のいずれか一方との混合物を前記混合槽に吐出する混合機と、前記混合槽内の流体若しくは燃料のいずれか一方を燃焼装置に供給する燃料供給装置とを備える混合燃料供給システムであって、前記混合機は、略円筒状の中空部を有する容器と、該容器内に渦流を発生させる方向に前記混合槽内の流体を導入する流体導入口と、前記容器内に発生させる渦流の旋回軸上に設けられた吐出口とを有すると共に、前記容器は、前記流体導入口が設けられた第1室と、前記吐出口が設けられた第2室とから構成され、前記第1室と前記第2室とが連通孔により接続され、更に、前記容器の第2室内の前記吐出口の近傍であって前記渦流の旋回軸上に燃料若しくは水のいずれか一方を供給するノズルを有して構成され、前記燃料供給装置は、少なくとも前記燃焼装置の動作終了前の所定期間は燃料を前記燃焼装置に供給すべく構成された。
【0015】
また、本発明の混合燃料供給システムでは、混合槽と、該混合槽内の流体を導入し、導入した流体と燃料若しくは水のいずれか一方との混合物を前記混合槽に吐出する混合機とを備える混合燃料供給システムであって、前記混合機は、略円筒状の中空部を有する容器と、該容器内に渦流を発生させる方向に前記混合槽内の流体を導入する流体導入口と、前記容器内に発生させる渦流の旋回軸上に設けられた吐出口とを有すると共に、前記容器は、前記流体導入口が設けられた第1室と、前記吐出口が設けられた第2室とから構成され、前記第1室と前記第2室とが連通孔により接続され、更に、前記容器の第2室内の前記吐出口の近傍であって前記渦流の旋回軸上に燃料若しくは水のいずれか一方を供給するノズルを有して構成された。
【0016】
ここで、本発明の混合燃料供給システムの混合機によれば、流体導入口から容器内に混合槽内の流体を導入することにより渦流が発生し、吐出口から吐出されることとなる。このとき、吐出口では、吐出される流体の渦流によってその旋回軸(中心軸)に負圧部分が形成され、その旋回軸に吸引力が発生する。そして、吐出口の近傍に燃料若しくは水のいずれか一方を供給するノズルを備えるために、このノズルから供給される燃料若しくは水が渦流の中心軸の負圧によって吸い込まれ、渦流によって攪拌されることによって、混合槽内から導入された流体と混合されることとなる。
【0017】
ところで、ノズルから供給される燃料若しくは水は、容器内の吐出口の近傍に供給され、この吐出口近傍において吐出される混合槽内から導入された流体に混合され、流体と共に放出されるので容器内に滞留することはない。
【0018】
また、ノズルから供給される燃料若しくは水は、容器内で発生させる渦流や負圧部分に影響を与えないので、ノズルの口径は小さくする必要はない。そのため、例えば粘度の高い燃料を供給したとしても、ノズルや容器内が目詰まりすることはない。
【0019】
更に、容器が、流体導入口が設けられた第1室と、吐出口が設けられた第2室とから構成され、第1室と第2室とが連通孔により接続されて構成されているために、第1室内で発生した渦流は第2室に入り、吐出口に向かって真っ直ぐに進行しようとする。このとき、第2室内の吐出口と連通孔とを結ぶ面(以下、「境界面」と称する。)よりも外側の空間内の流体は、境界面の渦流の流れによって第2室内で攪拌されることとなる。また、ノズルから第2室内に供給される燃料若しくは水は、境界面に衝突した際に剪断されると共に、境界面よりも外側の空間内の流体内に浸入し、更に攪拌、混合されることとなる。こうした混合物は、更に境界面によって剪断されながら、吐出口から吐出される。
【0020】
なお、ノズルから供給される燃料若しくは水は、第2室内に供給されるのであって、第1室には直接供給されることがないために、第1室内での渦流形成に影響を及ぼしにくい。
【0021】
また、本発明の混合燃料供給システムの燃料供給装置が、燃焼装置の動作終了前の所定期間は燃料を燃焼装置に供給することによって、燃焼装置の非動作期間における燃焼装置内の混合燃料の残存を低減することができ、水に起因する燃焼装置の劣化を抑制することができる。この点について、以下、詳細に説明を行う。
【0022】
先ず、燃料供給装置から供給された混合燃料や燃料は瞬時に燃焼するわけではないために、燃焼装置の動作終了の直前に燃料供給装置から供給された混合燃料や燃料については、燃焼装置に残存した状態で燃焼装置の動作が終了することも考えられる。そして、燃料と水とを充分に混合した混合燃料であったとしても、長期間の放置によって燃料と水とに分離してしまう。
そのため、燃焼装置の動作終了の直前に燃料供給装置から燃焼装置に混合燃料が供給された場合には、燃焼装置に混合燃料が残存した状態で燃焼装置の動作が終了してしまい、燃焼装置内に残存した混合燃料が燃料と水とに分離し、分離によって生じた水によって燃焼装置が劣化する恐れがある。
従って、上記した様に、燃料装置の動作終了前の所定期間は燃料供給装置から燃料を供給することとし、燃料装置の動作が終了した後に燃料装置内に混合燃料が残存しない様にすることで、水に起因する燃料装置の劣化を抑制することができるのである。
【0023】
また、本発明の混合燃料供給システムでは、混合槽と、該混合槽内の流体を導入し、導入した流体と燃料との混合物を前記混合槽に吐出する第1の混合機と、前記混合槽内の流体を導入し、導入した流体と水との混合物を前記混合槽に吐出する第2の混合機と、前記混合槽内の流体若しくは燃料のいずれか一方を燃焼装置に供給する燃料供給装置とを備える混合燃料供給システムであって、前記第1の混合機は、略円筒状の中空部を有する第1の容器と、該第1の容器内に渦流を発生させる方向に前記混合槽内の流体を導入する第1の流体導入口と、前記第1の容器内に発生させる渦流の旋回軸上に設けられた第1の吐出口とを有すると共に、前記第1の容器は、前記第1の流体導入口が設けられた第1室と、前記第1の吐出口が設けられた第2室とから構成され、前記第1室と前記第2室とが第1の連通孔により接続され、更に、前記第1の容器の第2室内の前記第1の吐出口の近傍であって前記渦流の旋回軸上に燃料を供給する第1のノズルを有して構成され、前記第2の混合機は、略円筒状の中空部を有する第2の容器と、該第2の容器内に渦流を発生させる方向に前記混合槽内の流体を導入する第2の流体導入口と、前記第2の容器内に発生させる渦流の旋回軸上に設けられた第2の吐出口とを有すると共に、前記第2の容器は、前記第2の流体導入口が設けられた第3室と、前記第2の吐出口が設けられた第4室とから構成され、前記第3室と前記第4室とが第2の連通孔により接続され、更に、前記第2の容器の第4室内の前記第2の吐出口の近傍であって前記渦流の旋回軸上に水を供給する第2のノズルを有して構成され、前記燃料供給装置は、少なくとも前記燃焼装置の動作終了前の所定期間は燃料を前記燃焼装置に供給すべく構成された。
【0024】
また、本発明の混合燃料供給システムでは、混合槽と、該混合槽内の流体を導入し、導入した流体と燃料との混合物を前記混合槽に吐出する第1の混合機と、前記混合槽内の流体を導入し、導入した流体と水との混合物を前記混合槽に吐出する第2の混合機とを備える混合燃料供給システムであって、前記第1の混合機は、略円筒状の中空部を有する第1の容器と、該第1の容器内に渦流を発生させる方向に前記混合槽内の流体を導入する第1の流体導入口と、前記第1の容器内に発生させる渦流の旋回軸上に設けられた第1の吐出口とを有すると共に、前記第1の容器は、前記第1の液体導入口が設けられた第1室と、前記第1の吐出口が設けられた第2室とから構成され、前記第1室と前記第2室とが第1の連通孔により接続され、更に、前記第1の容器の第2室内の前記第1の吐出口の近傍であって前記渦流の旋回軸上に燃料を供給する第1のノズルを有して構成され、前記第2の混合機は、略円筒状の中空部を有する第2の容器と、該第2の容器内に渦流を発生させる方向に前記混合槽内の流体を導入する第2の流体導入口と、前記第2の容器内に発生させる渦流の旋回軸上に設けられた第2の吐出口とを有すると共に、前記第2の容器は、前記第2の液体導入口が設けられた第3室と、前記第2の吐出口が設けられた第4室とから構成され、前記第3室と前記第4室とが第2の連通孔により接続され、更に、前記第2の容器の第4室内の前記第2の吐出口の近傍であって前記渦流の旋回軸上に水を供給する第2のノズルを有して構成された。
【0025】
ここで、本発明の混合燃料供給システムの第1の混合機によれば、第1の流体導入口から第1の容器内に混合槽内の流体を導入することにより渦流が発生し、第1の吐出口から吐出されることとなる。このとき、第1の吐出口では、吐出される流体の渦流によってその旋回軸(中心軸)に負圧部分が形成され、その旋回軸に吸引力が発生する。そして、第1の吐出口の近傍に燃料を供給する第1のノズルを備えるために、この第1のノズルから供給される燃料が渦流の中心軸の負圧によって吸い込まれ、渦流によって攪拌されることによって、混合槽内から導入された流体と混合されることとなる。
【0026】
ところで、第1のノズルから供給される燃料は、第1の容器内の第1の吐出口の近傍に供給され、この第1の吐出口近傍において吐出される混合槽内から導入された流体に混合され、流体と共に放出されるので第1の容器内に滞留することはない。
【0027】
また、第1のノズルから供給される燃料は、第1の容器内で発生させる渦流や負圧部分に影響を与えないので、第1のノズルの口径は小さくする必要はない。そのため、例えば粘度の高い燃料を供給したとしても、第1のノズルや第1の容器内が目詰まりすることはない。
【0028】
更に、第1の容器が、第1の流体導入口が設けられた第1室と、第1の吐出口が設けられた第2室とから構成され、第1室と第2室とが第1の連通孔により接続されて構成されているために、第1室内で発生した渦流は第2室に入り、第1の吐出口に向かって真っ直ぐに進行しようとする。このとき、第2室内の第1の吐出口と第1の連通孔とを結ぶ面(以下、「第1の境界面」と称する。)よりも外側の空間内の流体は、第1の境界面の渦流の流れによって第2室内で攪拌されることとなる。また、第1のノズルから第2室内に供給される燃料は、第1の境界面に衝突した際に剪断されると共に、第1の境界面よりも外側の空間内の流体内に浸入し、更に攪拌、混合されることとなる。こうした混合物は、更に第1の境界面によって剪断されながら、第1の吐出口から吐出される。
【0029】
なお、第1のノズルから供給される燃料は、第2室内に供給されるのであって、第1室内には直接供給されることがないために、第1室内での渦流形成に影響を及ぼしにくい。
【0030】
また、本発明の混合燃料供給システムの第2の混合機によれば、第2の流体導入口から第2の容器内に混合槽内の流体を導入することにより渦流が発生し、第2の吐出口から吐出されることとなる。このとき、第2の吐出口では、吐出される流体の渦流によってその旋回軸(中心軸)に負圧部分が形成され、その旋回軸に吸引力が発生する。そして、第2の吐出口の近傍に水を供給する第2のノズルを備えるために、この第2のノズルから供給される水が渦流の中心軸の負圧によって吸い込まれ、渦流によって攪拌されることによって、混合槽内から導入された流体と混合されることとなる。
【0031】
ところで、第2のノズルから供給される水は、第2の容器内の第2の吐出口の近傍に供給され、この第2の吐出口近傍において吐出される混合槽内から導入された流体に混合され、流体と共に放出されるので第2の容器内に滞留することはない。
【0032】
また、第2のノズルから供給される水は、第2の容器内で発生させる渦流や負圧部分に影響を与えないので、第2のノズルの口径は小さくする必要はない。
【0033】
更に、第2の容器が、第2の流体導入口が設けられた第3室と、第2の吐出口が設けられた第4室とから構成され、第3室と第4室とが第2の連通孔により接続されて構成されているために、第3室内で発生した渦流は第4室に入り、第2の吐出口に向かって真っ直ぐに進行しようとする。このとき、第4室内の第2の吐出口と第2の連通孔とを結ぶ面(以下、「第2の境界面」と称する。)よりも外側の空間内の流体は、第2の境界面の渦流の流れによって第4室内で攪拌されることとなる。また、第2のノズルから第4室内に供給される水は、第2の境界面に衝突した際に剪断されると共に、第2の境界面よりも外側の空間内の流体内に浸入し、更に攪拌、混合されることとなる。こうした混合物は、更に第2の境界面によって剪断されながら、第2の吐出口から吐出される。
【0034】
なお、第2のノズルから供給される水は、第4室内に供給されるのであって、第3室内には直接供給されることがないために、第3室内での渦流形成に影響を及ぼしにくい。
【発明の効果】
【0035】
本発明を適用した混合燃料供給システムでは、燃料と水とを充分に混合することができ、連続的に均質な混合燃料を供給することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明を適用した混合燃料供給システムの一例の全体構成を説明するための模式図である。
【図2】混合槽を説明するための模式図である。
【図3】第1の混合装置及び第2の混合装置を説明するための模式図(1)である。
【図4】第1の混合装置及び第2の混合装置を説明するための模式図(2)である。
【図5】第1の混合装置及び第2の混合装置を説明するための模式図(3)である。
【図6】混合機内の状態を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」と称する。)について説明する。
【0038】
[混合燃料供給システムの全体構成]
図1は本発明を適用した混合燃料供給システムの一例の全体構成を説明するための模式図であり、ここで示す混合燃料供給システムは、主として、混合槽1と、第1の混合装置2と、第2の混合装置3と、燃料供給装置4と、燃焼装置(ボイラー)5から構成されている。
【0039】
[混合槽の構成]
混合槽1は、図2で示す様に、略円筒状の中空構造に構成された金属製容器であり、50リットルの有効容積を有している。なお、混合槽1を略円筒形状の中空構造に構成することによって、流体の滞留が生じにくくなる。
【0040】
また、混合槽1の底部を基準として約2/3の高さの位置にステンレス製の第1の金網6が固定されている。なお、第1の金網6が設けられることによって、第1の金網6よりも下方で液体(燃料と水との混合液体)が激しく流動していたとしても、第1の金網6の下方から上方に向けて液体が通過する際に、液体の流動を安定化させることができ、第1の金網6の上方に設けられた混合燃料の取出口74の近傍の液体の動きや圧力の安定化が実現することとなる。
【0041】
また、混合槽1の底部近傍にはドレイン排出部(DR)7が設けられており、ドレイン排出部7のやや上方にステンレス製の第2の金網8が固定されている。なお、第2の金網8が設けられることによって、第2の金網8よりも上方で激しく流動する液体が第2の金網8を通過する際に整流化されることとなる。即ち、第2の金網8の上方では激しく流動していた液体であったとしても、第2の金網8を通過する際にその流速が失われほぼ静止状態となる。そのために、第2の金網8の上方から下方に向けては、液体は、混合槽1内に投入された燃料から発生する不純物や残渣と共に通過するものの、第2の金網8の下方から上方に向けては整流化されているために、不純物や残渣が通過することはない。従って、第2の金網8によって、不純物や残渣を沈殿せしめることが可能となる。
【0042】
更に、混合槽1の底部はドレイン排出部7に向かって下り傾斜となる様に構成されている。これによって、沈殿した不純物や残渣は、ドレイン排出部7に接続されたバルブを開放することによって容易に排出することが可能となる。
【0043】
また、混合槽1には、混合槽1内の液体の温度測定を可能とすべく温度計9が取り付けられている。液体の油成分の粘度は温度によって変化するために、液体の油成分の粘度を把握すべく、温度変化を監視するためである。
【0044】
更に、第1の金網6と混合槽1の上端部との間には、液面計10が配設されており、この液面計10によって、取出口から製品(混合燃料)を取り出し可能な液面が保たれているか否かを確認することができる。
【0045】
また、混合槽1には、上方及び下方に冷却装置30が配設されており、混合槽1内の液体の温度を所定以下に保つことができる様に構成されている。即ち、混合槽1内では、液体が激しく流動すると共に、燃料と水とが激しく衝突するために、液体温度が上昇することとなる。そして、液体温度が過度に上昇した場合には、液体の油成分(燃料)の引火点に近づいてしまうために、危険性を回避すべく冷却装置を配設しているのである。なお、第1の混合装置2及び第2の混合装置3を停止することによって液体温度の上昇を停止させることも考えられるが、第1の混合装置2及び第2の混合装置3を停止させることによる不具合(例えば、燃料と水との分離)を回避すべく、第1の混合装置2及び第2の混合装置3を停止させることなく液体温度の上昇を停止するために、本実施の形態では冷却装置を配設している。また、本実施の形態では、混合槽1の上方及び下方の2カ所に冷却装置30が配設された場合を例に挙げて説明を行っているが、冷却装置30の配設数及び配設位置については特に限定はない。
【0046】
更に、混合槽1には、浮き球スイッチ(フロートスイッチ)31が配設されており、このフロートスイッチ31は、下限フロートスイッチFs4、第1の中間フロートスイッチFs3、第2の中間フロートスイッチFs2及び上限フロートスイッチFs1から構成されている。
【0047】
ここで、下限フロートスイッチFs4は、許容可能な液面の最下限に位置しており、下限フロートスイッチFs4が液面に浮いた状態がスイッチONの状態であり、下限フロートスイッチFs4がONの状態であることを前提として第1の混合装置2及び第2の混合装置3が駆動できることとなる。即ち、液面が下降して下限フロートスイッチFs4がOFFの状態となると、液中ポンプ12,52を緊急停止して第1の混合装置2及び第2の混合装置3を緊急停止させる。
【0048】
また、第1の中間フロートスイッチFs3は、上述した液面計10の下限に位置しており、混合槽1内の液面が液面計10の下限よりも上昇し、第1の中間フロートスイッチFs3が液面に浮いた状態となるとスイッチONの状態となる。
【0049】
更に、第2の中間フロートスイッチFs2は、上述した液面計10の上限に位置しており、混合槽1内の液面が液面計10の上限よりも上昇し、第2の中間フロートスイッチFs2が液面に浮いた状態となるとスイッチONの状態となる。
【0050】
また、上限フロートスイッチFs1は、許容可能な液面の最上限に位置しており、上限フロートスイッチFs1が液面に浮いた状態がスイッチONの状態であり、上限フロートスイッチFs1がOFFの状態であることを前提として第1の混合装置2及び第2の混合装置3が駆動できることとなる。即ち、液面が上昇して上限フロートスイッチFs1がONの状態となると、液中ポンプ12,52を緊急停止して第1の混合装置2及び第2の混合装置3を緊急停止させる。
【0051】
ところで、本実施の形態では、有効容積が50リットルである混合槽1を例に挙げて説明を行っているが、混合槽1の有効容積については用途に応じて適宜変更可能であることは勿論である。
【0052】
また、本実施の形態では、液体の滞留が生じる可能性が少なくなる様に、略円筒状の中空構造に構成された混合槽1を例に挙げて説明を行っているが、必ずしも円筒形状である必要はない。
【0053】
更に、本実施の形態では、混合燃料の取出口74近傍の液体の動きや圧力を安定化させるべく安定化手段の一例として第1の金網6を例に挙げて説明を行っているが、必ずしも第1の金網6である必要はなく、例えば、ステンレス板に対して直径が数mm程度の貫通孔を多数個形成したパンチングメタルであっても構わない。
【0054】
また、本実施の形態では、不純物や残渣を沈殿せしめるための整流化手段の一例として第2の金網8を例に挙げて説明を行っているが、必ずしも第2の金網8である必要はなく、例えば、ステンレス板に対して直径が数mm程度の貫通孔を多数個形成したパンチングメタルであっても構わない。
【0055】
[第1の混合装置の構成]
また、混合槽1には、その底部を基準として約1/2の高さの位置に第1の混合装置2が取り付けられており、第1の混合装置2は、図3〜図5で示す様に、後述する混合機11と、混合機11へ混合槽1内の液体を吸引して送出する液中ポンプ12と、液中ポンプ12より吸引する液体中の固体粒を分離するストレーナ13とを備える。
【0056】
混合機11は、略円筒状の中空部14を有する容器15と、この容器15内に液体を導入する液体導入口16と、容器15内に流体を導入する流体導入口17と、容器15の流体導入口17と対向する位置に設けられた吐出口18と、容器15内の吐出口18の近傍に燃料を供給するノズル19とを有する。なお、液体導入口16は流体導入口の一例である。
【0057】
容器15は、流体導入口17側の第1室20Aと、吐出口18側の第2室20Bとに分かれており、第1室20Aと第2室20Bとは、連通孔21により接続されている。第1室20Aは、半球状部20aと、円筒状部20bと、半球状部20cとから構成されている。第2室20Bは、第1室20Aの半球状部20cの外側の面21aと、半球の天井(頂点)部分を切断して開口した形状の筒状部21bとから構成されている。吐出口18は、この筒状部21bの切断された開口部分である。
【0058】
円筒状部20bと半球状部20cとの間には円盤状の隔壁22が設けられている。半球状部20aには、流体導入口17が形成された配管としての中空のソケット23が設けられている。ソケット23には、流体が供給される配管24が接続されている。また、円筒状部20bには、液体導入口16が形成された配管としての中空の長ニップル25が設けられている。長ニップル25には、液中ポンプ12により送出される液体が供給される配管26が接続されている。長ニップル25は、この配管26から供給される液体が、第1室20A内に液体導入口16から円筒状部20bの壁面に沿って導入される方向、すなわち円筒状部20bの断面円の接線方向に設けられている。なお、液体導入口16は、隔壁22よりも流体導入口17に近い側であって第2室20Bに近い位置に設けられている。また、本実施の形態では、液体導入口16は、隔壁22に隣接して設けられている。
【0059】
また、連通孔21が形成されている第1室20Aの流体導入口17と対向する位置には、隔壁22及び半球状部20cを貫通する連通管としての中空のパイプ27が設けられている。パイプ27は、連通孔21から流体導入口17に向かって液体導入口16よりも流体導入口17に近い位置まで延ばして設けられている。なお、連通孔21とパイプ27の中空部の径は同じである。吐出口18の径は連通孔21よりも大きく、流体導入口17の径は連通孔21よりも小さい。また、パイプ27は、第1室20Aの容積を二分する面よりも連通孔21側の手前の位置までの長さとされている。
【0060】
ノズル19は、容器15の外壁に設けられたノズル受けボス28によって吐出口18近傍に固定されている。ノズル19の先端19aの開口径は連通孔21よりも小さく、流体導入口17とほぼ同じである。このノズル19の先端19aは第2室20B内に突き出した状態に配置されている。ノズル19には、燃料が供給される配管29が接続されている。
【0061】
[第1の混合装置の動作]
上記の様に構成された第1の混合装置2の動作について以下に説明を行う。なお、図6は第1の混合装置2内の流体の状態を示すための模式的な断面図である。
【0062】
本発明の第1の混合装置2では、液体導入口16から導入されるのは混合槽1内の液体(燃料と水との混合液体)であり、ノズル19の配管29には燃料を供給する。具体的には、混合槽1内の液体を第1の液体取り出し口70から取り出し、取り出された液体を液体導入口16に導入可能に構成されると共に、重油や軽油等の燃料が蓄積された燃料タンク71と配管29とが接続されて構成されている。
【0063】
また、流体導入口17は、混合槽1の上方から取り出した混合燃料を燃焼装置(ボイラー)5で利用しない場合に混合燃料を導入する。なお、混合槽1の上方から取り出された混合燃料のうち、燃焼装置(ボイラー)5で利用されないために再び混合槽1に戻す混合燃料を、以下では説明の便宜上、「戻り混合燃料」と称する。
【0064】
さて、第1の混合装置2では、液中ポンプ12を運転すると、混合槽1内の液体(燃料と水との混合液体)はストレーナ13を介して吸引され、配管26及び長ニップル25を経て液体導入口16から容器15の第1室20A内へと導入される。図6で示す様に、第1室20A内へ導入された液体40aは、液体導入口16から円筒状部20bの壁面に沿って導入されることにより、第1室20A内を旋回し、渦流41を発生させる。このとき、吐出口18では、この渦流41によってその旋回軸(中心軸)の負圧部分が形成され、その旋回軸に吸引力が発生する。ここで、第2室20B内へ突き出す様に配置されたノズル19からは、渦流41の中心軸の負圧によって燃料43が吸い込まれ、渦流によって攪拌され、混合されることとなる。
【0065】
また、渦流41の中心軸の負圧によって流体導入口17からは戻り混合燃料42が吸い込まれる。吸い込まれた戻り混合燃料42は、渦流41の液体40aによって攪拌されると共に、第1室20Aからパイプ27内へ流入し、連通孔21から第2室20B、吐出口18へと移動していく。このとき、液体40aと戻り混合燃料42との比重差によって、液体40aには遠心力が働き、戻り混合燃料42には向心力が働くので、渦流41の旋回軸上に更に強い負圧部分が形成される。これにより、渦流41の旋回軸上への吸引力が増すと共に、旋回軸上に集まった戻り混合燃料42が圧縮された状態で旋回軸上を通過し、吐出口18から勢いを増して噴出されることとなる。
【0066】
また、このとき、戻り混合燃料42及び液体40aは、広い第1室20Aから狭いパイプ27内へ旋回しながら流入する際に、旋回速度が速くなると共に圧力が高くなる。一方、第2室20Bでは、渦流41の中心軸の負圧によって周囲の液体40bが吐出口18から第2室20B内に浸入しようとする力が働き、連通孔21から第2室20Bへと流入しようとする戻り混合燃料42及び液体40aと押し合う状態となる。
【0067】
連通孔21から第2室20Bへと流入しようとする戻り混合燃料42及び液体40aは、この負圧によって吸い込まれる液体40bを避ける様にして吐出口18から流出する。また、渦流41の中心軸に集まった戻り混合燃料42は、液体40aと液体40bとの境界部分で剪断されることにより多量の微細気泡となって液体40aと混合され、混合物44となって吐出口18から噴出される。
【0068】
更にこのとき、第2室20B内へ突き出す様に配置されたノズル19からは、渦流41の中心軸の負圧によって燃料43が吸い込まれ、同じく液体40aと液体40bとの境界部分に到達する。これにより、燃料43も剪断され、戻り混合燃料42と共に混合物44に混合されて吐出口18から噴出する。
【0069】
また、容器15が、第1室20Aと第2室20Bとに分けられ、連通孔21により接続されているので、第1室20A内で発生した渦流41は第2室20Bに入った際、吐出口18へ向かって真っ直ぐに進行しようとする。このとき、第2室20B内の吐出口18と連通孔21とを結ぶ境界面よりも外側の空間内の液体40cは、この境界面の渦流の流れによって第2室20B内で攪拌されることとなる。ここで、ノズル19から第2室20B内に供給される燃料43は、境界面に衝突した際に剪断されると共に、境界面よりも外側の空間内の液体40c内に浸入し、更に攪拌、混合される様になる。また、ノズル19から供給される燃料43は、第2室20B内に供給され、第1室20Aには直接供給されなくなっているので、燃料43は、より第1室20A内に浸入し難く、また、第1室20A内での渦流41の形成に影響を及ぼしにくい。
【0070】
また、連通孔21には、流体導入口17に向かって液体導入口16よりも流体導入口17に近い位置まで延ばして設けられたパイプ27が接続されているので、液体導入口16から供給される液体40aが、このパイプ27の周りを回転することで乱れの少ない渦流41が形成され、流体導入口17から導入される戻り混合燃料42はこの乱れの少ない渦流41の中心の負圧部分を通過して液体40aと液体40bとの境界部分に到達する様になる。また、このパイプ27は、第1室20Aの容積を二分する面の手前の位置までの長さとしているので、液体導入口16から供給される液体40aが、形成された渦流41に与える影響を少なくすると共に、形成された渦流41が、流体導入口17から導入された戻り混合燃料42と共に滑らかにパイプ27内へと流入することとなる。
【0071】
また、この第1の混合装置2は、配管24の途中に流体導入口17へ導入される戻り混合燃料42の量を調整するバルブ45を備え、配管29の途中にノズル19から供給される燃料43の量を調整するバルブ46を備える構成とすることができ、こうしたバルブ45,46により、流体導入口17へ導入される戻り混合燃料42の量及びノズル19へ導入される燃料43の量をそれぞれ調整することができる。
【0072】
[第2の混合装置の構成]
また、混合槽1には、その底部を基準として約1/2の高さの位置に第2の混合装置3が、第1の混合装置2と対向して取り付けられており、第2の混合装置3は、図3〜図5で示す様に、後述する混合機51と、混合機51へ混合槽1内の液体を吸引して送出する液中ポンプ52と、液中ポンプ52より吸引する液体中の固体流を分離するストレーナ53とを備える。
【0073】
混合機51は、略円筒状の中空部54を有する容器55と、この容器55内に液体を導入する液体導入口56と、容器55内に流体を導入する流体導入口57と、容器55の流体導入口57と対向する位置に設けられた吐出口58と、容器55内の吐出口58の近傍に水を供給するノズル59とを有する。なお、液体導入口56は流体導入口の一例である。
【0074】
容器55は、流体導入口57側の第3室60Aと、吐出口58側の第4室60Bとに分かれており、第3室60Aと第4室60Bとは、連通孔61により接続されている。第3室60Aは、半球状部60aと、円筒状部60bと、半球状部60cとから構成されている。第4室60Bは、第3室60Aの半球状部60cの外側の面61aと、半球の天井(頂点)部分を切断して開口した形状の筒状部61bとから構成されている。吐出口58は、この筒状部61bの切断された開口部分である。
【0075】
円筒状部60bと半球状部60cとの間には円盤状の隔壁62が設けられている。半球状部60aには、流体導入口57が形成された配管としての中空のソケット63が設けられている。ソケット63には、流体が供給される配管64が接続されている。また、円筒状部60bには、液体導入口56が形成された配管としての中空の長ニップル65が設けられている。長ニップル65には、液中ポンプ52により送出される液体が供給される配管66が接続されている。長ニップル65は、この配管66から供給される液体が、第3室60A内に液体導入口56から円筒状部60bの壁面に沿って導入される方向、すなわち円筒状部60bの断面円の接線方向に設けられている。なお、液体導入口56は、隔壁62よりも流体導入口57に近い側であって第4室60Bに近い位置に設けられている。また、本実施の形態では、液体導入口56は、隔壁62に隣接して設けられている。
【0076】
また、連通孔61が形成されている第3室60Aの流体導入口57と対向する位置には、隔壁62及び半球状部60cを貫通する連通管としての中空のパイプ67が設けられている。パイプ67は、連通孔61から流体導入口57に向かって液体導入口56よりも中退導入口57に近い位置まで延ばして設けられている。なお、連通孔61とパイプ67の中空部の径は同じである。吐出口58の径は連通孔61よりも大きく、流体導入口57の径は連通孔61よりも小さい。また、パイプ67は、第3室60Aの容積を二分する面よりも連通孔61側の手前の位置までの長さとされている。
【0077】
ノズル59は、容器55の外壁に設けられたノズル受けボス68によって吐出口58近傍に固定されている。ノズル59の先端59aの開口径は連通孔61よりも小さく、流体導入口57とほぼ同じである。このノズル59の先端59aは第4室60B内に突き出した状態に配置されている。ノズル59には、水が供給される配管69が接続されている。
【0078】
[第2の混合装置の動作]
上記の様に構成された第2の混合装置3の動作について以下に説明を行う。なお、図6は第2の混合装置3内の流体の状態を示すための模式的な断面図である。
【0079】
本発明の第2の混合装置3では、液体導入口56から導入されるのは混合槽1内の液体(燃料と水との混合液体)であり、ノズル59の配管69には水を供給する。具体的には、混合槽1内の液体を第2の液体取り出し口72から取り出し、取り出した液体を液体導入口56に導入可能に構成されると共に、水が蓄積された水タンク73と配管69とが接続されて構成されている。
【0080】
また、流体導入口57は、必要に応じて例えば乳化剤等を導入する。なお、流体導入口57から流体を導入しない場合には流体導入口57は閉塞する。
【0081】
さて、第2の混合装置3では、液中ポンプ52を運転すると、混合槽1内の液体(燃料と水との混合液体)はストレーナ53を介して吸引され、配管66及び長ニップル65を経て液体導入口56から容器55の第3室60A内へと導入される。図6で示す様に、第3室60A内へ導入された液体80aは、液体導入口56から円筒状部60bの壁面に沿って導入されることにより、第3室60A内を旋回し、渦流81を発生させる。このとき、吐出口58では、この渦流81によってその旋回軸(中心軸)の負圧部分が形成され、その旋回軸に吸引力が発生する。ここで、第4室60B内へ突き出す様に配置されたノズル59からは、渦流81の中心軸の負圧によって水83が吸い込まれ、渦流によって攪拌され、混合されることとなる。
【0082】
また、渦流81の中心軸の負圧によって流体導入口57からは乳化剤82が吸い込まれる。吸い込まれた乳化剤82は、渦流81の液体80aによって攪拌されると共に、第3室60Aからパイプ67内へ流入し、連通孔61から第4室60B、吐出口58へと移動していく。このとき、液体80aと乳化剤82との比重差によって、液体80aには遠心力が働き、乳化剤82には向心力が働くので、渦流81の旋回軸上に更に強い負圧部分が形成される。これにより、渦流81の旋回軸上への吸引力が増すと共に、旋回軸上に集まった乳化剤82が圧縮された状態で旋回軸上を通過し、吐出口58から勢いを増して噴出されることとなる。
【0083】
また、このとき、乳化剤82及び液体80aは、広い第3室60Aから狭いパイプ67内へ旋回しながら流入する際に、旋回速度が速くなると共に圧力が高くなる。一方、第4室60Bでは、渦流81の中心軸の負圧によって周囲の液体80bが吐出口58から第4室60B内に浸入しようとする力が働き、連通孔61から第4室60Bへと流入しようとする乳化剤82及び液体80aと押し合う状態となる。
【0084】
連通孔61から第4室60Bへと流入しようとする乳化剤82及び液体80aは、この負圧によって吸い込まれる液体40bを避ける様にして吐出口58から流出する。また、渦流81の中心軸に集まった乳化剤82は、液体80aと液体80bとの境界部分で剪断されることにより多量の微細気泡となって液体80aと混合され、混合物84となって吐出口58から噴出される。
【0085】
更にこのとき、第4室60B内へ突き出す様に配置されたノズル59からは、渦流81の中心軸の負圧によって水83が吸い込まれ、同じく液体80aと液体80bとの境界部分に到達する。これにより、水83も剪断され、乳化剤82と共に混合物84に混合されて吐出口58から噴出する。
【0086】
また、容器55が、第3室60Aと第4室60Bとに分けられ、連通孔61により接続されているので、第3室60A内で発生した渦流81は第4室60Bに入った際、吐出口58へ向かって真っ直ぐに進行しようとする。このとき、第4室60B内の吐出口58と連通孔61とを結ぶ境界面よりも外側の空間内の液体80cは、この境界面の渦流の流れによって第4室60B内で攪拌されることとなる。ここで、ノズル59から第4室60B内に供給される水83は、境界面に衝突した際に剪断されると共に、境界面よりも外側の空間内の液体80c内に浸入し、更に攪拌、混合される様になる。また、ノズル59から供給される水83は、第4室60B内に供給され、第3室60Aには直接供給されなくなっているので、水83は、より第3室60A内に浸入し難く、また、第3室60A内での渦流81の形成に影響を及ぼしにくい。
【0087】
また、連通孔61には、流体導入口57に向かって液体導入口56よりも流体導入口57に近い位置まで延ばして設けられたパイプ67が接続されているので、液体導入口56から供給される液体80aが、このパイプ67の周りを回転することで乱れの少ない渦流81が形成され、流体導入口57から導入される乳化剤82はこの乱れの少ない渦流81の中心の負圧部分を通過して液体80aと液体80bとの境界部分に到達する様になる。また、このパイプ67は、第3室60Aの容積を二分する面の手前の位置までの長さとしているので、液体導入口56から供給される液体80aが、形成された渦流81に与える影響を少なくすると共に、形成された渦流81が、流体導入口57から導入された乳化剤82と共に滑らかにパイプ67内へと流入することとなる。
【0088】
また、この第2の混合装置3は、配管64の途中に流体導入口57へ導入される乳化剤82の量を調整するバルブ85を備え、配管69の途中にノズル59から供給される水83の量を調整するバルブ86を備える構成とすることができ、こうしたバルブ85,86により、流体導入口57に導入される乳化剤82の量及びノズル59へ導入される水83の量をそれぞれ調整することができる。
【0089】
[燃料供給装置の構成]
燃料供給装置4は、燃料タンク71から燃料が供給される燃料ラインAと、混合槽1の取出口74から混合燃料が供給される混合燃料ラインBとに接続されており、燃焼装置5の運転開始から所定期間(動作開始後の所定期間)と、燃焼装置5の運転停止前の所定期間(動作終了前の所定期間)は燃料ラインAから供給される燃料を燃焼装置5に供給し、それ以外の期間は混合燃料ラインBから供給される混合燃料を燃焼装置5に供給する様に制御されている。
【0090】
なお、燃料供給装置4が燃料ラインAから供給される燃料を燃焼装置5に供給している期間は、燃料供給装置4に混合燃料ラインBから供給された混合燃料はリターンラインCによって混合槽1に戻されることとなる。なお、リターンラインCは配管24と接続されている。
【0091】
ここで、混合燃料は一定以上の温度でなければ着火し難いことが一般に知られている。そのために、燃料供給装置4では、燃焼装置5の運転開始から所定期間は燃料ラインAから供給される燃料を燃焼装置5に供給する様に構成されている。但し、上述の様に、混合槽1内では、液体が激しく流動することに起因して液体温度が上昇するために、第1の混合装置2及び第2の混合装置3を一定期間動作させることによって、燃焼装置5内が一定以上の温度に達していなくても、混合燃料自体が暖められることによって、充分に着火する温度に達することも考えられる。そのため、燃焼装置5の運転開始時に必ずしも混合燃料を利用できないというものではないが、より確実に着火するためには、燃焼装置5の運転開始から所定期間は燃料ラインAから供給される燃料を利用する方が好ましい。
【0092】
また、燃料供給装置4から供給された混合燃料や燃料は燃焼装置5によって瞬時に利用されてしまうわけではないので、燃焼装置5の運転終了後においても、燃焼装置5内に燃料供給装置4から供給された混合燃料や燃料が残存することが充分に考えられる。そして、混合燃料は長期間の放置によって燃料と水とに分離してしまうために、燃焼装置5の運転終了直前に燃料供給装置4から混合燃料が供給された場合には、燃焼装置5内に残存した混合燃料から分離した水によって燃焼装置が劣化する恐れがある。そのため、水に起因する燃焼装置の劣化を抑制するために、燃焼装置5の運転停止前の所定期間は燃料ラインAから供給される燃料を供給する。
【0093】
[混合燃料供給システムの動作]
上記の様に構成された混合燃料供給システムの一連の動作について以下に説明を行う。
ところで、混合槽1内に初めて液体(燃料や水)を供給する場合には、混合槽1内に液体を供給する工程が必要となるために、先ずは、混合槽1内に初めて液体を供給する場合について説明を行う。なお、2度目以降の使用であり、既に混合槽1内に液体が供給されている場合には、後述する[共通工程]以降の工程のみを行えば充分である。
【0094】
(混合槽1内に初めて液体を供給する場合)
先ず、混合槽1の上方に設けられた投入口75から燃料(重油や軽油等の油成分)を注油する。なお、燃料の注油量は下限フロートスイッチFs4がONとなるまで行う。なお、下限フロートスイッチFs4がONとなるまで注油するのは、後述する様に、第2の混合装置3を駆動させることによって、燃料と水とを所定割合に調整しているためである。
【0095】
次に、配管69に設けられた水導入電磁弁77を開放して第2の混合装置3を駆動させる。第2の混合装置3を駆動させることによって、ノズル59から水が供給されるために、混合槽1内に水が供給されることとなる。この様に、第2の混合装置3を駆動させることによって、混合槽1内の燃料と水とが所定割合となる様に調整を行う。なお、混合槽1内の燃料と水とが所定割合となる様に混合槽1内に水を供給することによって、混合槽1内の液面が上昇し、第1の中間フロートスイッチFs3がONの状態となる。
【0096】
以上の調整工程が、混合槽1内に初めて液体を供給する場合にのみ必要となる工程である。従って、既に混合槽1内に液体が存在する場合には、以下に記載する工程のみを行うこととなる。
【0097】
なお、本実施の形態では、第2の混合装置3を駆動することによって、燃料と水とを所定割合に調整する場合を例に挙げて説明を行っているが、燃料と水とが所定割合に調整することができれば、必ずしも第2の混合装置3を駆動することによって調整する必要は無い。例えば、所定割合となる様な分量の燃料と水とを投入口75から供給しても良い。
【0098】
(共通工程)
続いて、混合槽1内の燃料と水とが所定の割合となった後に、配管29に設けられた燃料導入電磁弁76及び第2の混合装置3の流体導入口57に乳化剤を供給する乳化剤導入電磁弁(図示せず)を開放し、第1の混合装置1を駆動させる。即ち、第1の混合装置2及び第2の混合装置3の双方が駆動することとなる。
【0099】
そして、第1の混合装置2及び第2の混合装置3の双方が駆動し、混合槽1内で燃料と水と乳化剤とが充分に攪拌されることによって、混合燃料が生成されることとなる。
【0100】
ところで、第1の混合装置2及び第2の混合装置3が駆動すると、第1の混合装置2にはノズル19から燃料が供給され、第2の混合装置3にはノズル59から水が供給されると共に流体導入口57から乳化剤が供給される。そのために、取出口74からの混合燃料の取り出し量が、第1の混合装置2及び第2の混合装置3を駆動することによって混合槽1内に供給される燃料、水及び乳化剤の供給量よりも少量である場合には、混合槽1内の液面が上昇することになる。そして、第2の中間フロートスイッチFs2がONの状態となると、燃料導入電磁弁76、水導入電磁弁77及び乳化剤導入弁(図示せず)が閉鎖される。但し、第2の中間フロートスイッチFs2がONの状態となったとしても、液中ポンプ12,59は停止させないために、混合槽1内の攪拌は依然として継続されることとなる。
【0101】
なお、第2の中間フロートスイッチFs2がONの状態となることで、混合槽1内への燃料、水及び乳化剤の供給が停止し、液面の上昇が停止するはずである。しかし、何らかの不具合により、更に液面が上昇し、上限フロートスイッチFs1がONの状態となると、第1の混合装置2及び第2の混合装置3を緊急停止させる。
【0102】
こうした過程を経て生成された混合燃料は混合燃料ラインBによって燃料供給装置4に供給され、燃焼装置5に供給されることとなる。
【0103】
なお、燃焼装置5の中には、一定温度に達した場合に一時的に停止状態(燃焼装置5の運転終了ではない)となる装置が存在し、この様な停止状態は混合燃料の利用も停止することとなるために、かかる場合には、混合燃料供給ラインBから供給された混合燃料はリターンラインCによって混合槽1に戻されることとなる。
【0104】
本発明を適用した混合燃料供給システムでは、第1の混合装置2によって液体(燃料と水との混合液体)と燃料とを充分に混合することができ、更に、第2の混合装置3によって液体(燃料と水との混合液体)と水とを充分に混合することができるために、結果として極めて充分に燃料と水とを混合することができ、連続的に均質な混合燃料を供給することが可能である。
【0105】
また、本発明を適用した混合燃料供給システムでは、燃料供給装置4によって燃料ラインAから供給される燃料と、混合燃料ラインBから供給される混合燃料とを適宜使い分けているために、着火不充分な状況を回避することができると共に、水に起因した燃焼装置5の劣化をも低減することができる。
【0106】
[変形例]
上記した実施の形態では、第1の混合装置2及び第2の混合装置3とを備える場合を例に挙げて説明を行っているが、必ずしも複数の混合装置を備える必要はなく、単一の混合装置によって混合燃料を生成しても良い。但し、液体(燃料と水との混合液体)と燃料とを混合する混合装置(本実施の形態の第1の混合装置2に相当)と、液体(燃料と水との混合液体)と水とを混合する混合装置(本実施の形態の第2の混合装置3に相当)の両者を備えた方がより充分に燃料と水とを混合することができると考えられる。
【0107】
また、上記した実施の形態では、燃焼装置5が単一の場合を例に挙げて説明を行っているが、混合槽1から複数の燃焼装置5に混合燃料を供給する構成としても良い。なお、複数の燃焼装置5に混合燃料を供給する場合には、燃焼装置5毎に燃料供給装置4を設けても良いし、単一の燃料供給装置4で複数の燃焼装置5に混合燃料を供給しても良い。
【符号の説明】
【0108】
1 混合槽
2 第1の混合装置
3 第2の混合装置
4 燃料供給装置
5 燃焼装置(ボイラー)
6 第1の金網
7 ドレイン排出部
8 第2の金網
9 温度計
10 液面計
11、51 混合機
12、52 液中ポンプ
13、53 ストレーナ
14、54 中空部
15、55 容器
16、56 液体導入口
17、57 流体導入口
18、58 吐出口
19、59 ノズル
19a、59a 先端
20A 第1室
20B 第2室
20a、60a 半球状部
20b、60b 円筒状部
20c、60c 半球状部
21、61 連通孔
21a、61a 外側の面
21b、61b 筒状部
22、62 隔壁
23、63 ソケット
24、64 配管
25、65 長ニップル
26、66 配管
27、67 パイプ
28、68 ノズル受けボス
29、69 配管
30 冷却装置
31 浮き球スイッチ(フロートスイッチ)
40a、80a 液体
41、81 渦流
42 混合燃料(戻り混合燃料)
43 燃料
44、84 混合物
45、85 バルブ
46、86 バルブ
60A 第3室
60B 第4室
70 第1の液体取り出し口
71 燃料タンク
72 第2の液体取り出し口
73 水タンク
74 取出口
75 投入口
76 燃料導入電磁弁
77 水導入電磁弁
82 乳化剤
83 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合槽と、
該混合槽内の流体を導入し、導入した流体と燃料若しくは水のいずれか一方との混合物を前記混合槽に吐出する混合機と、
前記混合槽内の流体若しくは燃料のいずれか一方を燃焼装置に供給する燃料供給装置とを備える混合燃料供給システムであって、
前記混合機は、
略円筒状の中空部を有する容器と、
該容器内に渦流を発生させる方向に前記混合槽内の流体を導入する流体導入口と、
前記容器内に発生させる渦流の旋回軸上に設けられた吐出口とを有すると共に、
前記容器は、前記流体導入口が設けられた第1室と、前記吐出口が設けられた第2室とから構成され、前記第1室と前記第2室とが連通孔により接続され、更に、前記容器の第2室内の前記吐出口の近傍であって前記渦流の旋回軸上に燃料若しくは水のいずれか一方を供給するノズルを有して構成され、
前記燃料供給装置は、
少なくとも前記燃焼装置の動作終了前の所定期間は燃料を前記燃焼装置に供給すべく構成された
混合燃料供給システム。
【請求項2】
混合槽と、
該混合槽内の流体を導入し、導入した流体と燃料との混合物を前記混合槽に吐出する第1の混合機と、
前記混合槽内の流体を導入し、導入した流体と水との混合物を前記混合槽に吐出する第2の混合機と、
前記混合槽内の流体若しくは燃料のいずれか一方を燃焼装置に供給する燃料供給装置とを備える混合燃料供給システムであって、
前記第1の混合機は、
略円筒状の中空部を有する第1の容器と、
該第1の容器内に渦流を発生させる方向に前記混合槽内の流体を導入する第1の流体導入口と、
前記第1の容器内に発生させる渦流の旋回軸上に設けられた第1の吐出口とを有すると共に、
前記第1の容器は、前記第1の流体導入口が設けられた第1室と、前記第1の吐出口が設けられた第2室とから構成され、前記第1室と前記第2室とが第1の連通孔により接続され、更に、前記第1の容器の第2室内の前記第1の吐出口の近傍であって前記渦流の旋回軸上に燃料を供給する第1のノズルを有して構成され、
前記第2の混合機は、
略円筒状の中空部を有する第2の容器と、
該第2の容器内に渦流を発生させる方向に前記混合槽内の流体を導入する第2の流体導入口と、
前記第2の容器内に発生させる渦流の旋回軸上に設けられた第2の吐出口とを有すると共に、
前記第2の容器は、前記第2の流体導入口が設けられた第3室と、前記第2の吐出口が設けられた第4室とから構成され、前記第3室と前記第4室とが第2の連通孔により接続され、更に、前記第2の容器の第4室内の前記第2の吐出口の近傍であって前記渦流の旋回軸上に水を供給する第2のノズルを有して構成され、
前記燃料供給装置は、
少なくとも前記燃焼装置の動作終了前の所定期間は燃料を前記燃焼装置に供給すべく構成された
混合燃料供給システム。
【請求項3】
前記燃料供給装置は、前記燃焼装置の動作開始後の所定期間は燃料を前記燃焼装置に供給すべく構成された
請求項1または請求項2に記載の混合燃料供給システム。
【請求項4】
前記混合槽内の流体を所定温度以下に冷却する冷却装置を備える
請求項1または請求項2に記載の混合燃料供給システム。
【請求項5】
混合槽と、
該混合槽内の流体を導入し、導入した流体と燃料若しくは水のいずれか一方との混合物を前記混合槽に吐出する混合機とを備える混合燃料供給システムであって、
前記混合機は、
略円筒状の中空部を有する容器と、
該容器内に渦流を発生させる方向に前記混合槽内の流体を導入する流体導入口と、
前記容器内に発生させる渦流の旋回軸上に設けられた吐出口とを有すると共に、
前記容器は、前記流体導入口が設けられた第1室と、前記吐出口が設けられた第2室とから構成され、前記第1室と前記第2室とが連通孔により接続され、更に、前記容器の第2室内の前記吐出口の近傍であって前記渦流の旋回軸上に燃料若しくは水のいずれか一方を供給するノズルを有して構成された
混合燃料供給システム。
【請求項6】
混合槽と、
該混合槽内の流体を導入し、導入した流体と燃料との混合物を前記混合槽に吐出する第1の混合機と、
前記混合槽内の流体を導入し、導入した流体と水との混合物を前記混合槽に吐出する第2の混合機とを備える混合燃料供給システムであって、
前記第1の混合機は、
略円筒状の中空部を有する第1の容器と、
該第1の容器内に渦流を発生させる方向に前記混合槽内の流体を導入する第1の流体導入口と、
前記第1の容器内に発生させる渦流の旋回軸上に設けられた第1の吐出口とを有すると共に、
前記第1の容器は、前記第1の液体導入口が設けられた第1室と、前記第1の吐出口が設けられた第2室とから構成され、前記第1室と前記第2室とが第1の連通孔により接続され、更に、前記第1の容器の第2室内の前記第1の吐出口の近傍であって前記渦流の旋回軸上に燃料を供給する第1のノズルを有して構成され、
前記第2の混合機は、
略円筒状の中空部を有する第2の容器と、
該第2の容器内に渦流を発生させる方向に前記混合槽内の流体を導入する第2の流体導入口と、
前記第2の容器内に発生させる渦流の旋回軸上に設けられた第2の吐出口とを有すると共に、
前記第2の容器は、前記第2の液体導入口が設けられた第3室と、前記第2の吐出口が設けられた第4室とから構成され、前記第3室と前記第4室とが第2の連通孔により接続され、更に、前記第2の容器の第4室内の前記第2の吐出口の近傍であって前記渦流の旋回軸上に水を供給する第2のノズルを有して構成された
混合燃料供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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