説明

温室の加温システム

【課題】太陽エネルギーを利用した環境に優しい温室の加温システムであって、悪天候の場合にも温室内を所定の温度以上に保つことが可能な温室の加温システムを提供する。
【解決手段】温室5の外部に配設される太陽熱温水器10と、該温室5の内部に配設される放熱装置15と、温水を貯溜する貯湯タンク25と、該放熱装置15と該貯湯タンク25とを連通する連通パイプ20a・20bと、該連通パイプ20a・20bに配設される循環ポンプ24と、該温室5内の温度を測定する温度測定装置44と、該温室5内または別棟に配設される加温装置30と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冬季においても野菜や果物の栽培を行うことができる温室の技術に関し、詳しくは、太陽熱集熱器を利用することによって温室内の温度調節を環境にやさしく安価に行うことができる温室の加温システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
冬季における花卉・野菜の温室栽培においては、温室内の空気を加温するために膨大な熱量を要する。そのため、温室に直接降り注ぐ太陽光だけでは熱量が足りず、化石燃料をエネルギー源とする温風発生装置もしくは温油ボイラーを使用することによって、温室内の温度を必要温度以上に保っている。しかし、この方法では大量の化石燃料を消費するためにランニングコストが嵩んでしまい、また大量の二酸化炭素を排出するため地球環境に対して悪影響を与える虞があった。
そこで、近年においては、環境に優しい太陽電池を使用することにより、太陽エネルギーを利用して温調装置を稼動し、温室内の空気を温める方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−125480号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記のような太陽電池を利用する温度調節方法では高価な装置を必要とするため、温度調節用のシステムの設置に多額の費用がかかってしまう。また、雨や曇り等の悪天候が続いた場合には温室内の空気を加温することができなくなり、温室内にストーブを持ち込む必要が生じたり、該ストーブの制御を怠って温室内で栽培している植物を枯らしたりする虞があった。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、太陽エネルギーを利用した環境に優しい温室の加温システムであって、悪天候の場合にも温室内を所定の温度以上に保つことが可能な温室の加温システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
即ち、請求項1においては、温室内の空気を温める温室の加温システムであって、該温室の外部に配設される太陽熱温水器と、該温室の内部に配設される放熱装置と、温水を貯溜する貯湯タンクと、該放熱装置と該貯湯タンクとを連通する連通パイプと、該連通パイプに配設される循環ポンプと、該温室内の温度を測定する温度測定装置と、該温室内または別棟に配設される加温装置と、を具備するものである。
【0006】
請求項2においては、前記温度測定装置によって測定された温室内の測定温度が予め設定された「ポンプ駆動温度」より低い場合に、前記循環ポンプを稼動して前記放熱装置内に温水を通し、該測定温度が該「ポンプ駆動温度」より高い場合に、該循環ポンプを停止するものである。
【0007】
請求項3においては、前記加温装置を連通パイプに設けられるボイラーとし、該ボイラー近傍に、該ボイラーを通過する温水の温度を測定するためのボイラー水温測定装置を配設し、該ボイラー水温測定装置により該温水の温度を測定して、該ボイラーにより該温水の温度を一定に保つものである。
【0008】
請求項4においては、前記連通パイプに三方弁を設け、該三方弁によって、温水が前記放熱装置と前記加温装置との間を循環する状態と、温水が該放熱装置と前記貯湯タンクとの間を循環する状態と、に切換可能としたものである。
【0009】
請求項5においては、前記加温装置を温室内に設けられる温風発生装置とし、前記測定温度が予め設定された「加温装置稼動温度」未満の場合に該温風発生装置によって温室内の空気を温めるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0011】
請求項1においては、太陽エネルギーを利用して温室内の温度を高めるため環境に優しく、該太陽エネルギーによる熱量の供給では不足する分のみを化石燃料等を利用して該加温装置にて補助することができるため温室の加温システムのランニングコストを低減することができる。また、高価な装置を要することなく、温室の加温システム自体を単純な構成にすることができるため、製造コストや設置費用を低減することができる。加えて、太陽エネルギーから得られた熱量を貯湯タンク内の温水に蓄えることが可能となり、蓄えた熱量を天候不順のときや夜間に使用することができる。
【0012】
請求項2においては、温室内の温度が高いときには放熱装置からの放熱を抑えつつ太陽熱温水器を流れる水温を上昇させることができるので、化石燃料等を利用することなく、温室内の温度に合わせてより適切な温室内の加温を行うことができる。即ち、太陽エネルギーから得られた温水の熱量を無駄に消費することなく蓄えることが可能になり、蓄えた熱量を天候不順のときや夜間に使用することができる。
【0013】
請求項3においては、太陽熱温水器と加温装置とが、放熱装置へ繋がる連通パイプ内の温水を共用することができ、エネルギー伝達によるエネルギーロスを小さくすることができる。その結果、温室の加温システムのランニングコストを低減することができる。また、放熱装置を共用することができるため、イニシャルコストを低減することができる。
【0014】
請求項4においては、三方弁を切り替えることにより、温水を放熱装置と貯湯タンクと太陽熱温水器との間に循環させることが可能になるので、温水をボイラーまで循環させる必要がなくなり、エネルギー伝達によるエネルギーロスを小さくすることができる。その結果、ランニングコストを低減することができる。
【0015】
請求項5においては、悪天候時等に循環ポンプを駆動する必要がなくなり、余分なエネルギーを使用することなく温室内の空気を温めることができる。その結果、ランニングコストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の温室の加温システムに係る第1の実施例の全体構成を示す模式図であり、図2は同じく制御構成の一実施例を示すブロック図であり、図3は同じく制御方法の一実施例を示す流れ図であり、図4は本発明の温室の加温システムに係る第2の実施例の全体構成を示す模式図であり、図5は同じく制御構成の一実施例を示す流れ図であり、図6は本発明の温室の加温システムに係る第3の実施例の全体構成を示す模式図であり、図7は同じく制御構成の一実施例を示すブロック図であり、図8は同じく制御方法の一実施例を示す流れ図である。
【実施例1】
【0017】
まず、本発明に係る温室の加温システム(以下、加温システム1とする。)の全体構成について説明する。
図1に示すように、本実施例に係る加温システム1は、主に、温室5、太陽熱温水器(太陽熱集熱器)10、放熱装置15、連通パイプ20a・20b・21a・21b、貯湯タンク25、第1・第2の循環ポンプ24・26、ボイラー30、室温測定装置44、水温測定装置41・42・43、制御盤等から構成されるものであって、該太陽熱温水器10にて温められた温水を温室5内の放熱装置15にて放熱させることにより、温室5内の空気を温める加温システムである。
【0018】
温室5は、建物(ハウス)の一種であって、温室5内の温度を上げることにより、該温室内部で夜間や冬季に農作物を栽培したり、暖かい気候に適する作物を寒冷な気候条件下で栽培したりすることができるものである。
詳しくは、温室5は家状に組み立てた骨組みをビニール等の合成樹脂フィルムまたはガラス等で覆って構成されており、室内に外気が入り込まないように構成したものである。
【0019】
太陽熱温水器10は、住宅の屋根や空き地等の該温室5近傍に設けられて、内部に水を貯溜して、該貯溜した水を太陽熱によって温めることができる装置である。具体的には、該太陽熱温水器10は高さが低い(薄い)パネル状の容器またはパイプ状の容器であって、該容器が熱伝導度の大きい材料によって形成されているものである。
そして、該太陽熱温水器10には2本の(第2の)連通パイプ21a・21bが連結されており、即ち、出水パイプ21aと入水パイプ21bとが太陽熱温水器10内部に連通して連結されている。具体的には、後述する(太陽熱回収側の)第2の循環ポンプ26を稼動させることによって、入水パイプ21bを介して前記貯湯タンク25から該太陽熱温水器10へと低温水を流入させ、出水パイプ21aを介して該太陽熱温水器10から貯湯タンク25へと温水を流出させる構成になっている。
【0020】
放熱装置15は、温室5内に設けられるものであって、前記太陽熱温水器10内にて温められた温水が該放熱装置15内部を通過する際に温室5内の空気へと放熱するための装置である。具体的には、該放熱装置15は、所謂、熱交換器からなり、表面に凹凸等が形成された表面積が大きな容器であって、該容器は熱伝導度の大きい材料から形成されている。該放熱装置15には、例えばエロフィンチューブ15a・15a等が用いられる。
該放熱装置15には後述する2本の(第1の)連通パイプ20a・20bが連結されており、詳しくは、後述する貯湯タンク25内部に連通された第1の出水パイプ20aと第1の入水パイプ20bとが放熱装置15内部と連通して連結されている。具体的には、出水パイプ20aを介して貯湯タンク25から該放熱装置15へと温水が流入し、該温水は該放熱装置15にて放熱し、入水パイプ20bを介して該放熱装置15から該貯湯タンク25へと流出していく構成になっている。
【0021】
該第1の連通パイプ20a・20bは、前述したように、温室5屋外に配設された前記貯湯タンク25と温室5屋内に配設された放熱装置15とを連通するものであって、該貯湯タンク25内部と該放熱装置15内部との間で温水と低温水とを移動させて熱のやり取りを行うものである。ここで、太陽熱温水器10にて温められた温水が途中で放熱してしまわないように、該連通パイプ20a・20bは断熱性能が高い保温付鋼管やポリエステル管等を用いると好ましい。
【0022】
貯湯タンク25は、太陽熱利用側(放熱側)と太陽熱回収側(太陽熱温水器側、換言すれば蓄熱側)との交点に設けられるものであって、前記第1の連通パイプ20a・20b及び第2の連通パイプ21a・21b内の温水若しくは低温水を一時的に貯溜することができるものである。
つまり、該貯湯タンク25によって加温システム1の温水量即ち熱容量を高めることができ、温室5内の温度が高い間に太陽エネルギーを温水に蓄えることができ、逆に温室5内の温度が低い間に蓄えた太陽エネルギーを温室内の空気に放熱することができるのである。
【0023】
第1の循環ポンプ24は、前記第1の連通パイプ20a・20bの一方若しくは両方の中途部に設けられるものであって、連通パイプ20a・20b内の温水若しくは低温水を、出水パイプ20a・放熱装置15・入水パイプ20b・貯湯タンク25の順に循環させる役割をはたしている。
該第1の循環ポンプ24はモータにより駆動され、該モータは制御盤等によって制御されている。本実施例においては、後述する室温測定装置44によって測定された温室5内の測定温度T4が予め設定された「ポンプ駆動温度」未満の場合に、第1の循環ポンプ24を駆動する構成とし、予め設定された「循環ポンプ停止温度」以上になると第1の循環ポンプ24を停止する構成としている。
【0024】
ボイラー30は、前記貯湯タンク25から前記放熱装置15へと向かう連通パイプ(出水パイプ20a)上に備えられるものであって、出水パイプ20a内の温水を化石燃料の燃焼等によって加熱する役割をはたしている。つまり、本実施例に係る加温システム1は、前記太陽熱温水器10によって温められた後に貯湯タンク25内に蓄えられた出水パイプ20a内の温水を、更に該ボイラー30によって温め直すことができる構成となっている。
本実施例においては、循環ポンプ24・26の駆動状態に関わらず、後述する制御盤によってボイラー30が該ボイラー30内の温水の温度を一定とするべく(温水を常に設定温度に保つように)制御されている。
【0025】
室温測定装置44は、温室5内に配設されて、温室5内の空気の温度T4を測定する温度センサ等である。該室温測定装置44は制御盤と接続されており、前述したように、該室温測定装置44によって測定された温室5内の測定温度T4が制御盤へと送信され、(太陽熱利用側の)第1の循環ポンプ24を制御する構成となっている。
水温測定装置41・42・43は、各種装置内や連通パイプ内を流れる水温を測定する水温センサ等である。詳しくは、温水器水温測定装置41は前記太陽熱温水器10の容器内に配設されて該太陽熱温水器10内に貯溜されている温水の温度T1を測定するものであり、貯湯タンク水温測定装置42は前記貯湯タンク25内に配設されて該貯湯タンク25内に貯溜されている温水の温度T2を測定するものであり、ボイラー水温測定装置43は前記ボイラー30内に配設されて該ボイラー30内の温水の温度T3を測定するものである。
【0026】
図1及び図2に示すように、本実施例における制御盤(T1−T2用制御盤・T3用制御盤・T4用制御盤)は、前記測定装置41・42・43・44によって第1・第2の循環ポンプ24・26やボイラー30の稼動を制御するためのものであって、前記室温測定装置44や水温測定装置41・42・43や第1・第2の循環ポンプ24・26やボイラー30等と接続されている。
【0027】
詳しくは、T4用制御盤には温室5内で栽培される作物の種類や季節に合わせて、予め「ポンプ駆動温度」が設定されており、前記室温測定装置44にて測定された温室5内の測定温度T4が該「ポンプ駆動温度」未満である場合には、該T4用制御盤によって第1の循環ポンプ24が駆動される構成となっている。また、T3用制御盤では前記水温測定装置43にて測定された水温T3が該「ボイラー稼動温度」未満であるか否かが判断され、該測定温度T3が「水温設定温度」未満であると判断された場合には該T3用制御盤によってボイラー30が稼動され、該測定温度T3が「加温装置稼動温度」以上に達するとボイラー30の運転が停止される構成になっている。つまり、該ボイラー30はT3用制御盤によって、ボイラー30内の水温T3を予め設定された設定温度に保持することが可能に構成されている。
但し、該ボイラー水温測定装置43によって測定されたボイラー30内の水温T3が設定温度未満であり、且つ室温測定装置44によって測定された温室5内の温度T4が設定温度未満である場合にのみ、該ボイラー30を稼動する構成であっても良い。この場合には、ボイラー水温測定装置43と室温測定装置44の制御盤には、共通の制御盤を用いても良い。
【0028】
以下、本実施例に係る加温システム1の制御方法の一実施例について説明する。
図3に示すように、使用者等が加温システム1を起動すると(S101)、室温測定装置44によって温室5内の温度T4が測定される(S102)。該測定された温室5内の測定温度T4はT4用制御盤へと送信され、該T4用制御盤では該測定温度T4が予め設定された「ポンプ駆動温度」未満であるか否かが判断される(S103)。そして、測定温度T4が該「ポンプ駆動温度」未満である場合には、第1の循環ポンプ24が駆動されて貯湯タンク25の温水が放熱装置15へと送られる(S104)。一方、測定温度T4が該「ポンプ駆動温度」以上であれば温室5内は十分温かいので、前記第1の循環ポンプ24は駆動されない。
【0029】
そして、図1及び図2に示すように、T1−T2用制御盤において、貯湯タンク25内の水温T2と太陽熱温水器10内の水温T1とが比較されて、太陽熱温水器10内の水温T1の方が貯湯タンク25内の水温T2より高い場合には、第2の循環ポンプ26が駆動されて、太陽熱温水器10と貯湯タンク25との間の温水の循環が行われる。
例えば、太陽熱温水器10内の水温T1が貯湯タンク25内の水温T2より3℃以上高いときに第2の循環ポンプ26を駆動するものとし、貯湯タンク25内の水温T2が太陽熱温水器10内の水温T1に近く(0.5℃以内等に)なると第2の循環ポンプ26が停止する構成とすると好ましい。
【0030】
本実施例においては、貯湯タンク水温測定装置42と温水器水温測定装置41とによって測定される太陽熱温水器10内と貯湯タンク25内の温水の測定水温に応じて、第2の循環ポンプ26を稼動するか否かを決定しており、また、ボイラー水温測定装置43によって測定されるボイラー30内の温水の測定水温に応じて、ボイラー30の稼動(ON/OFF)を制御しているが、このような構成に限定するものではなく、室温測定装置44にて測定される温室5内の測定温度に応じて直接ボイラー30を稼動する構成であっても良いものである。
【0031】
このように、温室5内の空気を温める温室の加温システム1であって、該温室5の外部に配設される太陽熱温水器10と、該温室5の内部に配設される放熱装置15と、温水を貯溜する貯湯タンク25と、該放熱装置15と該貯湯タンク25とを連通する連通パイプ20a・20bと、該連通パイプ20a・20bに配設される循環ポンプ24と、該温室5内の温度を測定する温度測定装置44と、該温室5内または別棟に配設される加温装置30と、を具備するので、太陽エネルギーを利用して温室5内の温度を高めるため環境に優しく、該太陽エネルギーによる熱量の供給では不足する分のみを化石燃料等を利用して該加温装置30にて補助することができるため温室の加温システム1のランニングコストを低減することができる。また、高価な装置を要することなく、温室の加温システム1自体を単純な構成にすることができるため、製造コストや設置費用を低減することができる。加えて、太陽エネルギーから得られた熱量を貯湯タンク25内の温水に蓄えることが可能となり、蓄えた熱量を天候不順のときや夜間に使用することができる。
【0032】
また、前記温度測定装置44によって測定された温室5内の測定温度が予め設定された「ポンプ駆動温度」より低い場合に、前記循環ポンプ24を稼動して前記放熱装置15内に温水を通し、該測定温度T4が該「ポンプ駆動温度」より高い場合に、該循環ポンプ24を停止するので、温室5内の温度が高いときには放熱装置からの放熱を抑えつつ太陽熱温水器10を流れる水温を上昇させることができ、化石燃料等を利用することなく、温室5内の温度に合わせてより適切な温室5内の加温を行うことができる。即ち、太陽エネルギーから得られた温水の熱量を無駄に消費することなく蓄えることが可能になり、蓄えた熱量を天候不順のときや夜間に使用することができる。
【0033】
また、前記加温装置を連通パイプ20aに設けられるボイラー30とし、該ボイラー30近傍に、該ボイラー30を通過する温水の温度を測定するためのボイラー水温測定装置43を配設し、該ボイラー水温測定装置43により該温水の温度を測定して、該ボイラー30により該温水の温度を一定に保つので、太陽熱温水器10と加温装置30とが、放熱装置15へ繋がる連通パイプ20a・20b内の温水を共用することができ、エネルギー伝達によるエネルギーロスを小さくすることができる。その結果、温室の加温システム1のランニングコストを低減することができる。また、放熱装置15を共用することができるため、イニシャルコストを低減することができる。
【実施例2】
【0034】
次に、本発明に係る温室の加温システムの第2の実施例について説明する。
図4に示すように、本実施例においては、前記連通パイプ20a・20bに直接、三方弁22a・22bを介して第2の連通パイプ21a・21bが接続されており、前記ボイラー30を通らずに太陽熱温水器10と貯湯タンク25・25と放熱装置15との間で温水等を循環させることができるようになっている。詳しくは、前記第1の出水パイプ20aの中途部に三方弁22aを介して第2の出水パイプ20aが接続されており、前記第1の入水パイプ20bの中途部に三方弁22bを介して第2の入水パイプ21bが接続されている。
後述するように、本発明の加温システム1においては、貯湯タンク25の温度が高い際に、ボイラー30を通過させることなく前記太陽熱温水器10と放熱装置15との間で温水を循環させることが可能な構成になっている。
【0035】
該三方弁22a・22bは、電磁切換弁等より構成され、後述するT2用制御盤によって、貯湯タンク25内の温度が高い場合に、三方弁22a・22bを切り換えることにより、温水が前記放熱装置15と前記加温装置30との間を循環する状態と、温水が該放熱装置15と前記貯湯タンク25との間を循環する状態と、に切り換えることができる。
即ち、晴れている昼間等、温室5内の温度が高いときには、太陽熱温水器10にて温められた温水が放熱装置15へと流れ、前記ボイラー30を迂回することができるのである。
【0036】
図4及び図5に示すように、各制御盤は、前記測定装置41・42・43・44によって測定された室温や水温をもとに、前記三方弁22a・22bや第1・第2の循環ポンプ24・26やボイラー30の駆動を制御するためのものであって、それぞれが前記室温測定装置44や水温測定装置41・42・43や三方弁22a・22bや第1・第2の循環ポンプ24・26やボイラー30等と接続されている。詳しくは、貯湯タンク水温測定装置42から受信した貯溜タンク25内の水温T2に応じてT2用制御弁が該三方弁22a・22bを制御し、温水が該放熱装置15と前記加温装置30との間を循環する状態と、該放熱装置15と前記貯湯タンク25(太陽熱温水器10)との間を循環する状態とに、切り換えることが可能になっている。
【0037】
つまり、貯溜タンク25内の水温T2が予め設定された「タンク設定温度」より高いときには、T2用制御盤が前記三方弁22a・22bを制御して、放熱装置15とボイラー30とを循環する温水の流量を減らして、放熱装置15とボイラー30との間を循環する温水の流量を増やす。逆に、貯溜タンク25内の水温T2が低いときには、T2用制御盤が前記三方弁22a・22bを制御して、放熱装置15とボイラー30とを循環する温水の流量を増やして、放熱装置15と貯溜タンク25との間を循環する温水の流量を減らす。
【0038】
上記のような構成にすることによって、貯湯タンク25内の温水は、温かい場合にのみ第1の循環ポンプ24によって温室5内へと流れて放熱し、貯湯タンク25の温水が温かくない場合には第2の循環ポンプ26によって温水が太陽熱温水器10と貯湯タンク25との間で循環し、貯湯タンク25・25内の温水に太陽エネルギーが蓄えられる。
具体的には、暖房負荷が小さい時間帯(昼間)等に太陽熱利用径路(太陽熱温水器10→放熱装置15)を利用し、夜間等にボイラー利用径路(ボイラー30→放熱装置15循環径路)を利用すると好ましい。
他の装置や制御盤の構成は、第2の実施例と共通である。
【0039】
このように、前記連通パイプ20a・20bに三方弁22a・22bを設け、該三方弁22a・22bによって、温水が前記放熱装置15と前記加温装置30との間を循環する状態と、温水が該放熱装置15と前記貯湯タンク25との間を循環する状態と、に切換可能としたので、三方弁22a・22bを切り替えることにより、温水を放熱装置15と貯湯タンク25と太陽熱温水器10との間に循環させることが可能になるので、温水をボイラー30まで循環させる必要がなくなり、エネルギー伝達によるエネルギーロスを小さくすることができる。その結果、ランニングコストを低減することができる。
【実施例3】
【0040】
次に、本発明に係る温室の加温システムの第3の実施例(以下、加温システム51とする。)について説明する。
図6に示すように、本実施例に係る加温システム51は、前記太陽熱温水器10や連通パイプ20a・20bや循環ポンプ24・26とは別個に、温室5内に温風発生装置45を配設するものである。即ち、第1の実施例におけるボイラー30の代わりに温風発生装置45を具備したものであって、第1の実施例と同様に本実施例に係る加温システム51においても、主に、温室5、太陽熱温水器10、放熱装置15、連通パイプ20a・20b・20c・20d、貯湯タンク25、第1・第2の循環ポンプ24・26、室温測定装置44、制御盤等が具備されている。
【0041】
前記温風発生装置45は、化石燃料やガスや電気によって稼動するストーブ等であって、太陽熱温水器10や連通パイプ20a・20bや循環ポンプ24・26とは独立して温室5内部に設けられる装置である。つまり、日照条件等や外部の天候によって出力は変動しないが、該石油やガスや電気等のエネルギーを消費するものである。
本実施例の場合は、第1の実施例と異なり、天候不順のときや夜間等に循環ポンプ24・26を駆動することなく温室5内の空気を温めることができる。
【0042】
そして、図6及び図7に示すように、制御盤によって第1・第2の循環ポンプ24・26や温風発生装置45の稼動が制御される。詳しくは、前記室温測定装置44から受信した温室5内の測定温度T4に応じて、第2の循環ポンプ26を駆動させたり、温風発生装置45の出力を高めるための命令を送信するものである。
【0043】
本実施例においては、図6乃至図8に示すように、T3用制御盤に、温室5内で栽培される作物の種類や季節に合わせて、予め「加温装置稼動温度」が設定されている。該T3用制御盤では、前記室温測定装置44により測定されて送信されてくる温室5内の測定温度T4が該「加温装置稼動温度」未満であるか否かが判断される。
そして、該測定温度T4が「加温装置稼動温度」未満であると判断された場合には、T3用制御盤によって温風発生装置45が稼動され、該測定温度が「加温装置稼動温度」以上であると判断された場合には、T3用制御盤によって温風発生装置45の運転が停止される構成になっている。
但し、T4用制御盤によって、温風発生装置45と循環ポンプ24とを制御する構成としても良く、例えば、室内の温度T4が予め設定された「ポンプ駆動温度」未満であるときに温風発生装置45と循環ポンプ24とが同時に駆動する構成であっても良い。
また、循環タンク25内の水温T2が予め設定された「タンク設定温度」未満である場合や、太陽熱温水器10内の水温T1が予め設定された「循環温度」未満である場合に、T2用制御盤やT1用制御盤によって循環ポンプ24・26を停止させて、T3用制御盤によって温風発生装置45を稼動する構成であっても良い。
【0044】
以下、本実施例に係る加温システム51の制御方法について説明する。
図6乃至図8に示すように、使用者等が加温システム1を起動する(S201)と、室温測定装置44によって温室5内の温度T4が測定されて(S202)、該測定された温室5内の測定温度T4がT3用制御盤(T4用制御盤でも良い。以下同じ。)へと送信される(S203)。該T3用制御盤では、該測定温度T4が予め設定された「加温装置稼動温度」未満であるか否かが判断される(S204)。測定温度T4が「加温装置稼動温度」未満となると、T3用制御盤によって温風発生装置45が稼動される(S206)。
但し、前述したように水温が該「加温装置稼動温度」未満になった場合には、放熱装置15では温室5内を温めることができないため、水温測定装置41・42等によって水温T1・T2を測定することにより、第1の循環ポンプ24を停止して温風発生装置45を稼動する構成にすることも可能である。
【0045】
このように、前記加温装置を温室内に設けられる温風発生装置45とし、前記測定温度T4が予め設定された「加温装置稼動温度」未満の場合に該温風発生装置45によって温室5内の空気を温めるので、悪天候時等に循環ポンプ24・26を駆動する必要がなくなり、余分なエネルギーを使用することなく温室5内の空気を温めることができる。その結果、ランニングコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の温室の加温システムに係る第1の実施例の全体構成を示す模式図。
【図2】同じく制御構成の一実施例を示すブロック図。
【図3】同じく制御方法の一実施例を示す流れ図。
【図4】本発明の温室の加温システムに係る第2の実施例の全体構成を示す模式図。
【図5】同じく制御構成の一実施例を示す流れ図。
【図6】本発明の温室の加温システムに係る第3の実施例の全体構成を示す模式図。
【図7】同じく制御構成の一実施例を示すブロック図。
【図8】同じく制御方法の一実施例を示す流れ図。
【符号の説明】
【0047】
1 温室の加温システム(実施例1・2)
5 温室
10 太陽熱温水器
15 放熱装置
20a・20b 第1の連通パイプ
21a・21b 第2の連通パイプ
22a・22b 三方弁
24 第1の循環ポンプ
25 貯湯タンク
26 第2の循環ポンプ
30 加温装置(ボイラー)
41・42・43 水温測定装置
44 室温測定装置
45 加温装置(温風発生装置)
51 温室の加温システム(実施例3)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温室内の空気を温める温室の加温システムであって、
該温室の外部に配設される太陽熱温水器と、
該温室の内部に配設される放熱装置と、
温水を貯溜する貯湯タンクと、
該放熱装置と該貯湯タンクとを連通する連通パイプと、
該連通パイプに配設される循環ポンプと、
該温室内の温度を測定する温度測定装置と、
該温室内または別棟に配設される加温装置と、を具備することを特徴とする温室の加温システム。
【請求項2】
前記温度測定装置によって測定された温室内の測定温度が予め設定された「ポンプ駆動温度」より低い場合に、前記循環ポンプを稼動して前記放熱装置内に温水を通し、
該測定温度が該「ポンプ駆動温度」より高い場合に、該循環ポンプを停止することを特徴とする請求項1に記載の温室の加温システム。
【請求項3】
前記加温装置を連通パイプに設けられるボイラーとし、
該ボイラー近傍に、該ボイラーを通過する温水の温度を測定するためのボイラー水温測定装置を配設し、
該ボイラー水温測定装置により該温水の温度を測定して、該ボイラーにより該温水の温度を一定に保つことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の温室の加温システム。
【請求項4】
前記連通パイプに三方弁を設け、
該三方弁によって、温水が前記放熱装置と前記加温装置との間を循環する状態と、温水が該放熱装置と前記貯湯タンクとの間を循環する状態と、に切換可能としたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の温室の加温システム。
【請求項5】
前記加温装置を温室内に設けられる温風発生装置とし、
前記測定温度が予め設定された「加温装置稼動温度」未満の場合に該温風発生装置によって温室内の空気を温めることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の温室の加温システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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