説明

温室用カーテン装置

【課題】 簡易な構造で2層式のカーテン部材を張設する。
【解決手段】 駆動ワイヤ20の第1走行部21と第2走行部22とが上下に異なる高さとなるように設けられ、第1棚線50及び第2棚線60が、第1走行部21及び第2走行部22に対応して上下に異なる高さで設けられる。駆動ワイヤ20は一つの駆動部10により駆動される。異なる高さで配置した2つのカーテン部材70,80を制御できるため、各カーテン部材70,80の開閉量を適宜に調整することにより、両者を共に全開にした状態、両者を共に略半分ずつ閉鎖して、平面視で実質的に一枚のカーテン部材と同じ状態、両者を共に全閉にしてカーテン部材を2層に配置した状態など、放熱率や換気率の高い状態や遮光率や保温率の高い状態等、栽培作物の種類等に合わせて種々に制御できる。また、2つのカーテン部材を制御する駆動部10は1つで済むため、構成が簡易で、製造コストが低い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温室内において、上部付近に張られる遮光用、保温用などとして用いられる温室用カーテン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2には、基端部を温室の一方側と他方側とに位置させた2枚のカーテンを用い、駆動ワイヤによりこのカーテンの先端部を互いに近接させ、平面視で先端部付近同士を相互に重ね合わせることにより、温室の上部空間を仕切ることができる温室用カーテン装置が開示されている。
【特許文献1】特開昭54−146743号公報
【特許文献1】実開昭57−28642号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記した温室用カーテン装置は、駆動モータと該駆動モータにより回転する駆動ドラムとを備えた駆動部を一組のみ用い、駆動ドラムに巻き取り又は巻き戻しされる駆動ワイヤを、温室の一方の側面と他方の側面との間にプーリを介して掛け渡し、プーリによって反転するまでの部分に位置する駆動ワイヤの第1走行部に一方のカーテン部材の先端部を連結し、プーリによって反転した後の部分に位置する駆動ワイヤの第2走行部に他方のカーテン部材の先端部を連結したものである。しかしながら、これらに開示されているカーテン部材は、例えば、温室の対向する側面間に張設されるものであれば、温室の各側面から中央付近に至るまでの長さしか有していない。また、各カーテン部材を支持する棚線は、上下に異なる高さで設けられているわけではなく、同じ高さで設置されている。このため、各カーテン部材は、駆動ワイヤ付近では、上下に互い違いとなるが、その他の部分では、上下に互い違いとならず、先端部同士が衝突し合うようになっている。従って、一方のカーテン部材と他方のカーテン部材の各先端部を近接させて閉鎖した場合、平面から見た場合には、先端部付近同士の重なりあった部分を除いて、実質的には、温室の一方の側面から他方の側面に至るまでの長さを有する1枚のカーテン部材で閉鎖した場合と変わりはない。すなわち、カーテン部材として遮光を目的としたものを使用した場合の遮光率、保温を目的としたものを使用した場合の保温率、あるいは吸湿を目的としたものを使用した場合の吸湿率等は、ともに、1枚のカーテン部材を使用したに過ぎない場合と実質的に同じである。
【0004】
現状、特許文献1や特許文献2に開示されたような2枚のカーテン部材を用いて互いに近接させたり、離間させたりする構造の温室用カーテン装置が普及しているが、遮光率や保温率などを高めるため、特許文献1や特許文献2に開示された構造のものを2組用い、上下に異なる高さで、各カーテン部材を2層に配置して、閉鎖状態ではそれらが上下に完全にオーバーラップするようにした温室用カーテン装置も知られている。しかしながら、かかる構造のものでは、上層のカーテン部材を駆動させる駆動部と、下層のカーテン部材を駆動させる駆動部とを2組必要とする。このため、特許文献1や特許文献2に開示された一層のものと比較して、構造が複雑化し、コストも大幅に増すという問題がある。
【0005】
本発明は上記した点に鑑みなされたものであり、2層式でありながら、従来より簡易な構造でかつ低コストで製造可能な温室用カーテン装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するため、請求項1記載の本発明では、プーリを介して張設され、互いに逆方向に走行する第1走行部及び第2走行部を備えた駆動ワイヤと、
第1棚線上に支持され、基端部が固定されて配設されいると共に、先端部が前記駆動ワイヤの第1走行部に連結され、第1走行部の動作に従って開閉動作される第1カーテン部材と、
第2棚線上に支持され、基端部が前記第1カーテン部材の基端部とは離間した位置に固定されて配設されていると共に、先端部が前記第2走行部に連結され、第2走行部の動作に従って開閉動作される第2カーテン部材と
を具備し、
前記駆動ワイヤの第1走行部と第2走行部とが上下に異なる高さとなるように設けられ、
前記第1棚線及び第2棚線が、前記第1走行部及び第2走行部にそれぞれ対応して上下に異なる高さとなるように設けられ、
前記第1カーテン部材及び第2カーテン部材は、閉鎖した際に、各カーテン部材の先端部が、平面視で、互いの基端部付近に到達する長さを備え、
かつ、前記駆動ワイヤが一つの駆動部により駆動されることを特徴とする温室用カーテン装置を提供する。
請求項2記載の本発明では、前記駆動ワイヤは、温室内に互いに離間して配置される第1滑車ユニットと第2ユニットとの間に掛け渡されており、
前記第1滑車ユニット及び第2滑車ユニットは、前記第1走行部を支持する上段プーリと、該上段プーリの下方に配置され、前記第2走行部を支持する下段プーリとをそれぞれ有していることを特徴とする請求項1記載の温室用カーテン装置を提供する。
請求項3記載の本発明では、前記駆動部は、前記各カーテン部材の上方に配置されており、前記駆動ワイヤは、駆動部から引き出されて、前記第1滑車ユニットの上段プーリに巻き掛けられた後、前記第2滑車ユニットの上段プーリに巻き掛けられ、さらに、前記第2滑車ユニットの下段プーリに巻き掛けられて方向転換され、前記第1滑車ユニットの下段プーリを経た後、前記駆動部に巻き付けられて配設されることを特徴とする請求項2記載の温室用カーテン装置を提供する。
請求項4記載の本発明では、前記駆動部は、前記各カーテン部材の下方に配置されており、前記駆動ワイヤは、駆動部から引き出されて、前記第1滑車ユニットの下段プーリに巻き掛けられた後、前記第2滑車ユニットの下段プーリに巻き掛けられ、さらに、前記第2滑車ユニットの上段プーリに巻き掛けられて方向転換され、前記第1滑車ユニットの上段プーリを経た後、前記駆動部に巻き付けられて配設されることを特徴とする請求項2記載の温室用カーテン装置を提供する。
請求項5記載の本発明では、前記第1滑車ユニットは、前記駆動部との間で動作する駆動ワイヤの各カーテン部材への接触を回避するようにガイドする補助プーリが少なくとも一つ設けられていることを特徴とする請求項3又は4記載の温室用カーテン装置を提供する。
請求項6記載の本発明では、前記駆動ワイヤは、温室の対向する側面間に配設され、温室の一方の側面と他方の側面との間で前記各カーテン部材が開閉動作されるものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1に記載の温室用カーテン装置を提供する。
請求項7記載の本発明では、前記駆動ワイヤの第1走行部及び第2走行部の中途であって、前記第1及び第2滑車ユニットの取り付け高さよりも高所に、各走行部が巻き掛けられる中継プーリを備えた中継滑車ユニットが配設され、前記第1カーテン部材及び第2カーテン部材が、該中継滑車ユニットを挟んだ両側のそれぞれに設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1に記載の温室用カーテン装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の温室用カーテン装置は、異なる高さで配置した2つのカーテン部材を制御できるため、各カーテン部材の開閉量を適宜に調整することにより、例えば、両者を共に全開にした状態、両者を共に略半分ずつ閉鎖して、平面視で実質的に一枚のカーテン部材と同じ状態、両者を共に全閉にしてカーテン部材を2層に配置した状態など、放熱率や換気率の高い状態、あるいは遮光率や保温率の高い状態など、栽培作物の種類、生長過程等に合わせて種々に制御できる。しかも、2つのカーテン部材を制御する駆動部は1つで済むため、構成が極めて簡易で、製造コストが低い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、実施形態に基づき本発明をさらに詳細に説明する。図1〜図4は、本実施形態の温室用カーテン装置を説明するための図であり、この温室用カーテン装置は、駆動部10、駆動ワイヤ20、第1滑車ユニット30、第2滑車ユニット40、第1カーテン部材70、第2カーテン部材80を有して構成される。
【0009】
駆動部10は、駆動ワイヤ20が巻き付けられる駆動ドラム11と該駆動ドラム11を回転させる駆動モータ12とを有して構成される。駆動部10は、所定の位置に配設される第1滑車ユニット30、第2滑車ユニット40に掛け回される駆動ワイヤ20の動作の妨げにならない位置であればいずれに配置してもよい。本実施形態では、温室100において、駆動ワイヤ20や各カーテン部材70,80の上方に配置している。
【0010】
駆動ワイヤ20は、一端が駆動部10の駆動ドラム11に巻き付けられていると共に、該駆動ドラム11から引き出された部分が、第1滑車ユニット30及び第2滑車ユニット40に巻き掛けられ、他端が駆動ドラム11に巻き付けられて配設され、駆動モータ12によって駆動ドラム11が正方向又は逆方向に回転することにより駆動する。
【0011】
具体的には、第1滑車ユニット30は、図2(a)及び図3(a)に示したように、支持枠部材31を備え、該支持枠部材31において上下に離間して挿通される2つの回転軸に、それぞれ上段プーリ32と下段プーリ33とが回転自由に支持されている。また、本実施形態では該上段プーリ32と同軸上に補助上段プーリ34を配設しており、下段プーリ33は、補助上段プーリ34のほぼ真下に位置するように設けられている。第1滑車ユニット30は、支持枠部材31が温室100の一方の側面を形成するフィルム部材等を支持する地面に立設した支柱部材110に取り付けられた鋼材111に支持されている。
【0012】
第2滑車ユニット40は、図2(c)及び図3(b)に示したように、温室100の他方の側面を形成するフィルム部材等を支持し、上記した第1滑車ユニット30が固定される支柱部材110に対向する位置に立設された支柱部材120に取り付けられた鋼材121に、その支持枠部材41が固定されて配設される。第2滑車ユニット40の支持枠部材41には、上下に離間して挿通される2つの回転軸が設けられ、そのそれぞれに上段プーリ42と下段プーリ43とが回転自由に支持される。
【0013】
そして、駆動ドラム11から引き出された駆動ワイヤ20は、図1及び図2に示したように、第1滑車ユニット30の上段プーリ32に巻き掛けられた後、対向する第2滑車ユニット40の上段プーリ42に巻き掛けられ、さらに、第2滑車ユニット40の下段プーリ43に巻き掛けられた後、対向する第1滑車ユニット30の下段プーリ33に巻き掛けられ、補助上段プーリ34を経由した後、他端が上記駆動ドラム11に巻き付けられて配設される。駆動ワイヤ20は、このようにして配設されるため、各滑車ユニット30,40の上段プーリ32,42間に掛け渡されて相対的に上方に位置する第1走行部21と、下段プーリ33,43間に掛け渡されて相対的に下方に位置する第2走行部22とが形成されることになる。なお、第1滑車ユニット30の補助上段プーリ34は、駆動ワイヤ20が下段プーリ33に巻き掛けられた後、直接駆動ドラム11に巻き付けたとすると、駆動ドラム11の配設位置によっては、該駆動ドラム11と下段プーリ33との間に位置する駆動ワイヤ20が各カーテン部材70,80に接触する場合があるため、このようなことを回避するようガイドするために設けられた補助プーリである。従って、駆動ドラム11の配設位置等によっては、必ずしも設けなくてもよい。その一方、駆動ドラム11の配設位置や上段プーリ32の径等によっては、第1滑車ユニット30の上段プーリ32及び補助上段プーリ34のそれぞれの真上付近に、さらなる補助プーリを設けてもよい。
【0014】
また、本実施形態においては、駆動部10を、各カーテン部材70,80の上方に配置しているが、温室の大きさや構造などによっては、各カーテン部材70,80の下方に配置することももちろん可能である。この場合、駆動ドラム11から引き出された駆動ワイヤ20は、第1滑車ユニット30の下段プーリ33に巻き掛けられた後、対向する第2滑車ユニット40の下段プーリ43に巻き掛けられ、さらに、第2滑車ユニット40の上段プーリ42に巻き掛けられた後、対向する第1滑車ユニット30の上段プーリ32に巻き掛けられ、駆動ドラム11に戻されることになる。このように設けた場合には、各カーテン部材70,80との接触を回避する補助プーリ(図示せず)を、第1滑車ユニット30の上段プーリ32の真下付近に設けることになる。また、この場合も、必要に応じて、適宜数の補助プーリをさらに付加することもできる。なお、駆動部10を、各カーテン部材70,80の下方に配置し、駆動ワイヤ20を上記のように巻き掛けた場合でも、駆動ワイヤ20の上段プーリ32,42間は、相対的に上方に位置する第1走行部21として機能し、下段プーリ33,43間は、相対的に下方に位置する第2走行部22として機能する。
【0015】
なお、本実施形態において、第1滑車ユニット30及び第2滑車ユニット40は、いずれも支持部材110,120に取り付けられた鋼材111,121に固定されているが、第1滑車ユニット30及び第2滑車ユニット40を確実に支持できる限り、鋼材ではなく、ワイヤ等を用いて固定支持してもよい。但し、各滑車ユニット30,40における上段プーリ32,42及び下段プーリ33,43間の間隔をより確実に維持できるようにするため、鋼材等の剛体を用いることが好ましい。
【0016】
また、各滑車ユニット30,40は、上段プーリ32,42及び下段プーリ33,43をそれぞれ上下に適宜の間隔で配置するなどして、小径のプーリを用いていながら、駆動ワイヤ20を上下に所定の段差をもって配置している。これは、小径のプーリを用いることにより、上記鋼材111,121に取り付けた際における内方への突出量(幅)を小さくするためであり、例えば、各プーリ32,33,42,43の直径を支柱部材110,120の幅よりも小さくすることによって、支柱部材110,120の幅の範囲に各滑車ユニット30,40の突出量(幅)が収まるようにして、カーテン部材70,80によって被覆されないデッドスペースをできるだけ小さくするためである。従って、このようなデッドスペースをできるだけ小さくするためには、各滑車ユニット30,40の構造は、本実施形態のような構造とすることが好ましいが、デッドスペースが多少大きくなることが許容される場合には、各滑車ユニット30,40において上下に2つのプーリを並置するのではなく、2つのプーリを合わせた程度の直径を有する1つの大径プーリで代用することも可能である。
【0017】
駆動ワイヤ20の第1走行部21より若干上方の位置には、第1棚線50が設けられる。第1棚線50は、駆動ワイヤ20の第1走行部21とほぼ平行に温室100の一方の側面と他方の側面との間に張設されると共に、温室100の奥行き方向に適宜間隔で複数本設けられる。同様に、駆動ワイヤ20の第2走行部22より若干上方の位置には第2棚線60が設けられ、該第2棚線60も、第2走行部22とほぼ平行であると共に、温室100の奥行き方向に適宜間隔で複数本設けられる。この結果、第1棚線50と第2棚線60は、駆動ワイヤ20の第1走行部21と第2走行部22にそれぞれ対応して、上下に段差をもって配設される。各棚線50,60を、駆動ワイヤ20の各走行部21,22より若干高く配置しているのは、各棚線50,60上に支持される各カーテン部材70,80と駆動ワイヤ20との接触を回避するためである。
【0018】
第1棚線50上には、第1カーテン部材70が支持され、第2棚線60上には第2カーテン部材80が支持される。第1カーテン部材70及び第2カーテン部材80は、図1に示したような連棟式の温室100の場合、温室100の一方の側面と他方の側面との対向方向に沿った長さが、例えば、一棟分の上方空間を仕切可能な長さに形成される。従って、図1に示したような2連棟の温室100の場合には、各棟の境界に位置する支柱部材130を境として、一方の側面と他方の側面との対向方向に沿ってそれぞれ2枚配設される。もちろん、これはあくまで一例であり、例えば、4連棟式の温室であれば、各カーテン部材70,80は4枚ずつ配設されることになる。
【0019】
図1において、左方の棟に配設される第1カーテン部材70は、第1棚線50上において、その基端部70aが、一方の側面の支柱部材110側に配設され、側面フィルムを支持する鋼材111あるいはパイプ材等に固定され、それに隣接して配設される2枚目の第1カーテン部材70の基端部70aは、境界用の支柱部材130に支持された鋼材やパイプ材等に固定される。また、各第1カーテン部材70の先端部70bには、温室100の奥行き方向に延びるように第1棚線50上に配置した先導用パイプ材70cがそれぞれ連結される。そして、この先導用パイプ材70cがクリップなどの連結部材70dにより駆動ワイヤ20の第1走行部21に連結される。この結果、各第1カーテン部材70は、一方の側面から他方の側面に向かって先導用パイプ材70cが移動すると、温室100の上方空間を仕切るように閉鎖動作し、先導用パイプ材70cが逆方向に移動すると開放動作する。
【0020】
一方、図1において右方の棟に配設される第2カーテン部材80は、第2棚線60上において、その基端部80aが、温室100の他方の側面の支持部材120側に配置され、側面フィルムを支持する鋼材121あるいはパイプ材等に固定され、それに隣接して配設される2枚目の第2カーテン部材80の基端部80aは、境界用の支柱部材130に支持された鋼材やパイプ材等に固定される。各第2カーテン部材80の先端部80bは、第2棚線60上に位置する先導用パイプ材80cに連結され、第2カーテン部材80は、他方の側面から一方の側面に向かって該先導用パイプ材80cが移動すると閉鎖動作し、逆方向に移動すると開放動作することになる。
【0021】
なお、第1カーテン部材70及び第2カーテン部材80を構成する素材は任意であり、遮光、遮熱、保温、吸湿などの各目的に応じて適宜のものを選択できる。また、図1及び図2において、符号51は第1棚線50に対して上方に数cm程度離間して配設され、第1棚線50上で開閉される第1カーテン部材70が風によって煽られてばたついたりすることを防止するための煽り止め線であり、符号61は、同様の目的で第2棚線60に対して上方に数cm程度離間して配設される第2カーテン部材80用の煽り止め線である。また、符号70e,80eは、各先導用パイプ材70c,80cが閉鎖時に当接可能なように境界用の支柱部材130に支持された鋼材やパイプ材等に設けられ、各先導用パイプ材70c,80cが当接した際の隙間をなくすために設けられたゴム等の弾性部材である。
【0022】
本実施形態によれば、駆動モータ12を駆動すると駆動ドラム11が正方向又は逆方向に回転する。例えば、第1カーテン部材70及び第2カーテン部材80が全開になっている状態、すなわち、図4(a)に示したように先導用パイプ材70c,80cが各カーテン部材70,80の基端部70a,80aに近接して位置し、各カーテン部材70,80が折りたたまれるようになっているとする。また、この状態で、駆動ドラム11が、例えば、正方向に回転し、第1滑車ユニット30の上段プーリ32を介して駆動ワイヤ20の第1走行部21を図4の矢印X方向に動かし、さらに、第2滑車ユニット40の上段プーリ42及び下段プーリ43により、方向転換されて第2走行部22を矢印Y方向に動かすとする。これにより、第1走行部21に連結された第1カーテン部材70の先導用パイプ材70cは矢印X方向に移動し、第1カーテン部材70が展開されていく。同様に、第2走行部22に連結された第2カーテン部材80の先導用パイプ材80cは矢印Y方向に移動し、第2カーテン部材80が展開されていく。
【0023】
例えば、図4(b)に示したように、先導用パイプ材70c,80cが左右から相互に接近してきて、該棟の略中央部に至ると、平面視では、1枚のカーテン部材を張設した場合とほぼ同様となるため、この状態における遮光率は、1枚のカーテン部材を使用した場合とほとんど変わらない。但し、第1カーテン部材70と第2カーテン部材80とは上下高さが異なるため、2つのカーテン部材70,80との間には上下方向に隙間がある。従って、該隙間を通じて空気の移動が生じるため、保温率の点では1枚のカーテン部材を張設した場合より低くなり、換気効率の点では1枚のカーテン部材を張設した場合より高くなる。
【0024】
駆動ドラム11がさらに正方向に回転すると、一方の先導用パイプ材70cは、境界用の支柱部材131に至るまで移動し、他方の先導用パイプ材80cは、一方の側面側に立設された支柱部材110に至るまで移動する。この結果、第1カーテン部材70及び第2カーテン部材80は、図4(c)及び図1に示したように、共に全閉状態となり、平面視では100%のオーバーラップ状態となる。これにより、例えば、各カーテン部材70,80として遮光率50%のものを使用したとすると、太陽光は、第1カーテン部材70により50%遮光され、第2カーテン部材80によりさらにその50%が遮光されるため、第1カーテン部材70を透過する前と比較すると、75%遮光されることになる。また、保温率の点では、第1カーテン部材70と第2カーテン部材80との間には、空気層が形成されるため、この空気層により保温率が向上する。例えば、各カーテン部材70,80の保温率が30%とした場合、すなわち、各カーテン部材70,80を1枚使用した際には、カーテン部材70,80で被覆されている内部の温度が該カーテン部材70,80を通じて70%放熱されてしまうようなものである場合、本実施形態の構成とした場合には、空気層が形成されることにより、第2カーテン部材80の保温率がそれよりも高い保温率に、例えば、60%に向上する。従って、第2カーテン部材80を経て放熱される熱量を100%とした場合には、60%が反射され、40%が放熱される。第2カーテン部材80を経て放熱された40%の熱は、第1カーテン部材70の保温率が30%であるため、28%が第1カーテン部材70を経て放熱され、12%が第1カーテン部材70により反射されることになる。
【0025】
また、駆動部10により、第1カーテン部材70及び第2カーテン部材80を全閉状態よりも多少の隙間があるように調整し、例えば、両者のオーバーラップ率が80%〜90%となるように調整した場合、遮光率の点では、ほとんどの部分で全閉状態と同様の効果を得られるのに対し、隙間を通じて空気の流れが確保されるため、ほとんどの部分が2層となっていながら、高い放熱効果を得ることもできる。
【0026】
従って、本実施形態によれば、異なる高さで配置した2つのカーテン部材70,80を制御できるため、全開状態、実質的に一枚のカーテン部材と同じ状態、カーテン部材を2層に配置した状態とほぼ同じでありながら、放熱率や換気率の高い状態、2枚のカーテン部材70,80が全閉し、遮光率や保温率の極めて高い状態状態など、栽培作物の種類、生長過程等に合わせて種々に制御できる。しかも、2つのカーテン部材70,80を制御する駆動部10は1つで済むため、構成が極めて簡易で、製造コストも低い。
【0027】
なお、上記した説明では、各カーテン部材70,80が、地面に対して略平行に張設されるいわゆる平張りの温室用カーテン装置を例に挙げ説明しているが、図5に示したように、各カーテン部材70,80を傾斜して張るいわゆる傾斜張りにおいて本発明を適用することも可能である。この場合、温室100の一方の側面付近及び他方の側面付近にそれぞれ設けられる第1滑車ユニット30及び第2滑車ユニット40の間に、各滑車ユニット30,40の取り付け高さよりも高所に、駆動ワイヤ20の各走行部21,22が巻き掛けられる中継プーリ91,92を備えた中継滑車ユニット90を配設する。また、第1カーテン部材70及び第2カーテン部材80は、第1滑車ユニット30と中継滑車ユニット90との間、並びに、第2滑車ユニット40と中継滑車ユニット90との間にそれぞれ設ける。この結果、駆動ドラム11が正逆方向に回転することにより、上記と同様、2層に配置された各カーテン部材70,80を全開状態から全閉状態まで種々の状態に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明の一の実施形態にかかる温室用カーテン装置を示す図である。
【図2】図2(a)は図1のA部拡大図であり、図2(b)は図1のB部拡大図であり、図2(c)は図1のC部拡大図である。
【図3】図3(a)は第1滑車ユニットを示す正面図であり、図3(b)は第2滑車ユニットを示す正面図である。
【図4】図4(a)〜(c)は、上記実施形態にかかる温室用カーテン装置の動作を説明するための図である。
【図5】図5は、本発明の他の実施形態にかかる温室用カーテン装置を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
10 駆動部
11 駆動ドラム
12 駆動モータ
20 駆動ワイヤ
21 第1走行部
22 第2走行部
30 第1滑車ユニット
32 上段プーリ
33 下段プーリ
34 補助上段プーリ
40 第2滑車ユニット
42 上段プーリ
43 下段プーリ
50 第1棚線
60 第2棚線
70 第1カーテン部材
80 第2カーテン部材
90 中継用滑車ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プーリを介して張設され、互いに逆方向に走行する第1走行部及び第2走行部を備えた駆動ワイヤと、
第1棚線上に支持され、基端部が固定されて配設されいると共に、先端部が前記駆動ワイヤの第1走行部に連結され、第1走行部の動作に従って開閉動作される第1カーテン部材と、
第2棚線上に支持され、基端部が前記第1カーテン部材の基端部とは離間した位置に固定されて配設されていると共に、先端部が前記第2走行部に連結され、第2走行部の動作に従って開閉動作される第2カーテン部材と
を具備し、
前記駆動ワイヤの第1走行部と第2走行部とが上下に異なる高さとなるように設けられ、
前記第1棚線及び第2棚線が、前記第1走行部及び第2走行部にそれぞれ対応して上下に異なる高さとなるように設けられ、
前記第1カーテン部材及び第2カーテン部材は、閉鎖した際に、各カーテン部材の先端部が、平面視で、互いの基端部付近に到達する長さを備え、
かつ、前記駆動ワイヤが一つの駆動部により駆動されることを特徴とする温室用カーテン装置。
【請求項2】
前記駆動ワイヤは、温室内に互いに離間して配置される第1滑車ユニットと第2ユニットとの間に掛け渡されており、
前記第1滑車ユニット及び第2滑車ユニットは、前記第1走行部を支持する上段プーリと、該上段プーリの下方に配置され、前記第2走行部を支持する下段プーリとをそれぞれ有していることを特徴とする請求項1記載の温室用カーテン装置。
【請求項3】
前記駆動部は、前記各カーテン部材の上方に配置されており、前記駆動ワイヤは、駆動部から引き出されて、前記第1滑車ユニットの上段プーリに巻き掛けられた後、前記第2滑車ユニットの上段プーリに巻き掛けられ、さらに、前記第2滑車ユニットの下段プーリに巻き掛けられて方向転換され、前記第1滑車ユニットの下段プーリを経た後、前記駆動部に巻き付けられて配設されることを特徴とする請求項2記載の温室用カーテン装置。
【請求項4】
前記駆動部は、前記各カーテン部材の下方に配置されており、前記駆動ワイヤは、駆動部から引き出されて、前記第1滑車ユニットの下段プーリに巻き掛けられた後、前記第2滑車ユニットの下段プーリに巻き掛けられ、さらに、前記第2滑車ユニットの上段プーリに巻き掛けられて方向転換され、前記第1滑車ユニットの上段プーリを経た後、前記駆動部に巻き付けられて配設されることを特徴とする請求項2記載の温室用カーテン装置。
【請求項5】
前記第1滑車ユニットは、前記駆動部との間で動作する駆動ワイヤの各カーテン部材への接触を回避するようにガイドする補助プーリが少なくとも一つ設けられていることを特徴とする請求項3又は4記載の温室用カーテン装置。
【請求項6】
前記駆動ワイヤは、温室の対向する側面間に配設され、温室の一方の側面と他方の側面との間で前記各カーテン部材が開閉動作されるものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1に記載の温室用カーテン装置。
【請求項7】
前記駆動ワイヤの第1走行部及び第2走行部の中途であって、前記第1及び第2滑車ユニットの取り付け高さよりも高所に、各走行部が巻き掛けられる中継プーリを備えた中継滑車ユニットが配設され、前記第1カーテン部材及び第2カーテン部材が、該中継滑車ユニットを挟んだ両側のそれぞれに設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1に記載の温室用カーテン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−325401(P2006−325401A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−148909(P2005−148909)
【出願日】平成17年5月23日(2005.5.23)
【出願人】(390010814)株式会社誠和 (31)
【Fターム(参考)】