説明

温室用暖房システム

【課題】電熱式加熱器と燃焼式加熱器の両方を備えた複合型の温室用暖房システムを提供する。
【解決手段】燃焼式加温機2と電熱式加熱器3をビニールダクト4で連結して、燃焼式加温機2の送風機5で取り入れた空気を、燃焼器6又は電熱ヒータ16で加熱する。温室の室温が15℃以下になると、電熱ヒータ16と送風機5を運転するとともに、前記温室の室温が更に低下して、10℃以下になると、電熱ヒータ16と送風機5に加えて、燃焼器6を運転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施設園芸用温室(以下、温室という)に、加温した空気を供給して、前記温室内の空間を所望の温度に保つ温室用暖房システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の温室用暖房システムの熱源として、燃料油を焚いて空気を加温する燃焼式加熱器(例えば、特許文献1)と、電熱で空気を加温する電熱式加熱器(例えば、特許文献2)が知られている。燃焼式加熱器は、大熱量が得られるので、大規模な温室にも容易に対応できるという利点があるが、整備や操作が比較的むずかしい。これに対して、電熱式加熱器は、整備や操作が容易である。そのため、近年、電熱式加熱器が注目されている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−305992号公報
【特許文献2】特開2007−292431号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、商用電源から低電圧(100V又は200V)で供給を受けられる電力は、50kW以下に制限されているので、大規模な温室を電熱式加熱器で加温しようとすると、高電圧(6000V)で受電する受電設備(変圧器等)が必要になるので、設備費が嵩むという問題があった。
【0005】
また、温室の規模を拡大するために、電熱式加熱器を導入する一方で、既設の燃焼式加熱器を活用したいという需要者の要請もある。
【0006】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、電熱式加熱器と燃焼式加熱器の両方を備えた複合型の温室用暖房システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る温室用暖房システムは、燃焼式加熱器、電熱式加熱器、及び送風機を一の送風路に直列に配置して、前記送風機で前記送風路の一端から取り入れた空気を、前記燃焼式加熱器又は前記電熱式加熱器で加熱して、前記送風路の他端から送出することを特徴とする。
【0008】
また、前述の構成に加えて、前記温室の室温が第1の所定温度以下になると、前記電熱式加熱器と前記送風機を運転するとともに、前記温室の室温が前記第1の所定温度から更に低下して、第2の所定温度以下になると、前記電熱式加熱器と前記送風機に加えて、前記燃焼式加熱器を運転する制御手段を備えてもよい。
【0009】
さらに、前述の構成に加えて、前記燃焼式加熱器と前記送風機を一体に構成した燃焼式加温機の下流側に前記電熱式加熱器を配置して、ダクトを介して前記燃焼式加温機と前記電熱式加熱器を連結してもよい。
【0010】
さらに、前記電熱式加熱器を2組備え、前記送風路は、前記燃焼式加温機の出口で二股に分岐して、二股に分岐した前記送風路のそれぞれの先端に前記電熱式加熱器を配置するようにしてもよい。
【0011】
さらに、前記制御手段は、前記電熱式加熱器と前記送風機のみを運転する時は、前記電熱式加熱器から前記送風機に駆動用の電力を供給させ、前記電熱式加熱器と前記送風機に加えて、前記燃焼式加熱器を運転する時は、前記燃焼式加温機から前記送風機に駆動用の電力を供給させる切り替え手段を有してもよい。
【0012】
あるいは、送風路の一端に送風機を、前記送風路の他端に電熱式加熱器をそれぞれに配置して、前記送風機で前記送風路の内部に取り入れた空気を前記電熱式加熱器で加熱して、前記送風路の他端から送出するように構成してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、燃焼式加熱器と電熱式加熱器を一の送風路に直列に配置しているので、大出力の温室用暖房システムを容易に実現できる。また、本発明の温室用暖房システムは、既設の燃焼式加温機に電熱式加熱器を付加して構築することができるので、安価に構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0015】
図1は、本発明に係る温室用暖房システムの概念的な構成図である。図1に示すように、温室用暖房システム1は、1台の燃焼式加温機2と、2台の電熱式加熱器3をビニールダクト4で連結して構成される。
【0016】
燃焼式加温機2は、送風機5、燃焼器6、熱交換器7及び燃焼制御器8を有している。燃焼器6は燃料油(例えば、重油)を焚くバーナであり、燃焼器6で燃料油(例えば、重油)を焚いて発生した熱は、熱交換器7で、送風機5で外部から燃焼式加温機2の内部に取り込まれた空気を加熱する。このように、燃焼器6と熱交換器7は燃焼式加熱器を構成している。なお、この燃焼式加熱器(燃焼器6+熱交換器7)で加熱された空気は、吹き出し口9とビニールダクト4を通って、電熱式加熱器3に送り出される。
【0017】
燃焼制御器8は、温度計10を備えて、温度計10が検出する温度(つまり、温室用暖房システム1が設置される温室の室温)が10℃以下になると、燃焼機動力線11に、燃焼器6を駆動する電流を、送風機動力線12に、送風機5を駆動する電流を流す。ここで、燃焼機動力線11は燃焼器6に接続されるが、送風機動力線12は制御盤13に接続される。つまり、送風機5を駆動する電流は制御盤13を経由して、送風機5に供給される。なお、制御盤13と送風機5の間の電気的な接続は後で詳述する。
【0018】
また、燃焼制御器8と制御盤13の間には信号線14があって、温度計10が検出する温度が10℃以下になると、電気信号が制御盤13に出力される。
【0019】
このように、燃焼式加温機2は、温室用暖房システム1が設置される温室の室温が10℃以下になると、送風機5と燃焼器6に駆動電流が流れ、運転を開始する。また、同時に、信号線14に燃焼式加温機2の運転を示す電気信号が流れる。
【0020】
電熱式加熱器3は、筐体15、電熱ヒータ16及び電熱制御器17を備え、ビニールダクト4を通って、筐体15の一方端から筐体15の内部に流入した空気を、電熱ヒータ16で加熱して、筐体15の他方端から外部(温室用暖房システム1が設置される温室の室内)に送出する装置である。
【0021】
電熱制御器17は、温度計18を備えて、温度計18が検出する温度(つまり、温室用暖房システム1が設置される温室の室温)が15℃以下になると、電熱動力線19に、電熱ヒータ16を駆動する電流を、送風機動力線20に、送風機5を駆動する電流を流す。ここで、電熱動力線19は電熱ヒータ16に接続されるが、送風機動力線20は制御盤13に接続される。つまり、送風機5を駆動する電流は制御盤13を経由して、送風機5に供給される。
【0022】
このように、電熱式加熱器3は、温室用暖房システム1が設置される温室の室温が15℃以下になると、電熱ヒータ16に駆動電流が流れて、運転を開始する。また、同時に送風機動力線20を介して、送風機5に動力を供給する。
【0023】
制御盤13には、図2に示すようなリレー21が装置され、燃焼式加温機2の送風機動力線12と信号線14、及び、電熱式加熱器3の送風機動力線20がリレー21に接続される。また、リレー21と送風機5の間には出力線22(図1を合わせて参照されたい)で連絡される。
【0024】
燃焼式加温機2が運転していない場合は、信号線14に電気信号は流れないから、リレー21のコイル23は励磁されない。この時、リレー21の各接点は図2に示す状態にあり、電熱式加熱器3の送風機動力線20と出力線22が接続される。この状態で、温室の室温が15℃以下になって、電熱式加熱器3が運転を始めると、送風機5を駆動する電力が、電熱制御器17から送風機5に供給される。つまり、燃焼式加温機2が運転を停止した(燃焼器6で燃料油を焚かない)状態で、燃焼式加温機2の送風機5だけが運転される。
【0025】
さて、温室の室温が更に低下して10℃以下になると、燃焼式加温機2が運転を開始(燃焼器6に点火)する。この時、信号線14に電気信号は流れて、リレー21のコイル23が励磁されて、リレー21の各接点が切り替わる。そのため、電熱式加熱器3の送風機動力線20と出力線22の間の接続が遮断され、燃焼式加温機2の送風機動力線12が出力線22に接続される。つまり、送風機5を駆動する電力は、燃焼制御器8から送風機5に供給される。
【0026】
このように、温室用暖房システム1は、温室の室温が比較的に高い時、つまり、温室用暖房システム1の負荷が小さい時は、燃焼式加温機2の運転を停止して、電熱式加熱器3と送風機5だけを運転するので、燃焼式加温機2の燃料油の消費を節減できる。
【0027】
また、温室の室温が低下して、燃焼式加温機2と電熱式加熱器3の両方を運転するので、大負荷に対応することができる。
【0028】
また、本実施形態では、燃焼式加温機2に熱交換器7を備えて、燃焼器6で発生した燃焼ガス(排ガス)が温室内に流入しないようにしたが、本発明の燃焼式加温機はこのような形式のものに限定されない。熱交換器7を省いて、燃焼器6で発生した燃焼ガスを直接温室内に流しこむものであってもよい。あるいは燃焼ガスを新鮮な空気で希釈して温室内に送ってもよい。
【0029】
また、温室用暖房システム1は、既設の燃焼式加温機2に電熱式加熱器3と制御盤13を追加するだけで構築できるので、既存設備を無駄にすることがない。また既存設備の出力を比較的安価に増強することができる。
【0030】
また、送風機5(燃焼式加温機2)と電熱式加熱器3の間を、ビニールダクト4で連結したので、電熱式加熱器3を加温対象の近くに設置することができる。このため、送風機5(燃焼式加温機2)と加温対象の間が離れているような場合でも、その途中の経路(つまりビニールダクト4)における熱損失(温度低下)がないので、効率がよい。
【0031】
また、温室用暖房システム1から、燃焼式加熱器(燃焼器6+熱交換器7)を省いて構成することもできる。例えば既設の燃焼式加温機2の燃焼器6の機能を停止して、送風機5の機能だけを残して温室用暖房システム1を構成してもよい。
【0032】
また、電熱式加熱器3の内部に風圧センサ(例えば、筐体15の中に一端をヒンジされて、送風機5の風を受けて揺動する板と、前記板の動きを検知するリミットスイッチの組合せ)を備えて、前記風圧センサが送風機5の風を検知しない場合に、電熱ヒータ16への給電を停止する安全装置を備えてもよい。
【0033】
なお、本実施形態においては、電熱式加熱器3の運転開始の条件を室温15℃以下、燃焼式加温機2の運転開始の条件を室温10℃以下としたが、これは例示であって、本発明の技術的範囲は、これによって限定されるものではない。もとより、温室用暖房システム1によって管理される温室の温度は、当該温室で栽培される植物の性質によって変動するものであり、電熱式加熱器3及び燃焼式加温機2の運転開始の条件は、種々の条件が選択されることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る温室用暖房システムの概念的な構成図である。
【図2】本発明に係る温室用暖房システムに備えるリレーの接続図である。
【符号の説明】
【0035】
1 温室用暖房システム
2 燃焼式加温機
3 電熱式加熱器
4 ビニールダクト
5 送風機
6 燃焼器
7 熱交換器
8 燃焼制御器
9 吹き出し口
10 温度計
11 燃焼機動力線
12 送風機動力線
13 制御盤
14 信号線
15 筐体
16 電熱ヒータ
17 電熱制御器
18 温度計
19 電熱動力線
20 送風機動力線
21 リレー
22 出力線
23 コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼式加熱器、電熱式加熱器、及び送風機を一の送風路に直列に配置して、
前記送風機で前記送風路の一端から取り入れた空気を、前記燃焼式加熱器又は前記電熱式加熱器で加熱して、
前記送風路の他端から送出することを特徴とする温室用暖房システム。
【請求項2】
前記温室の室温が第1の所定温度以下になると、前記電熱式加熱器と前記送風機を運転するとともに、前記温室の室温が前記第1の所定温度から更に低下して、第2の所定温度以下になると、前記電熱式加熱器と前記送風機に加えて、前記燃焼式加熱器を運転する制御手段を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の温室用暖房システム。
【請求項3】
前記燃焼式加熱器と前記送風機を一体に構成した燃焼式加温機の下流側に前記電熱式加熱器を配置して、ダクトを介して前記燃焼式加温機と前記電熱式加熱器を連結してなる
ことを特徴とする請求項2に記載の温室用暖房システム。
【請求項4】
前記電熱式加熱器を2組備え、
前記送風路は、前記燃焼式加温機の出口で二股に分岐して、二股に分岐した前記送風路のそれぞれの先端に前記電熱式加熱器を配置した
ことを特徴とする請求項3に記載の温室用暖房システム。
【請求項5】
前記制御手段は、前記電熱式加熱器と前記送風機のみを運転する時は、前記電熱式加熱器から前記送風機に駆動用の電力を供給させ、前記電熱式加熱器と前記送風機に加えて、前記燃焼式加熱器を運転する時は、前記燃焼式加温機から前記送風機に駆動用の電力を供給させる切り替え手段を有する
ことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の温室用暖房システム。
【請求項6】
送風路の一端に送風機を、前記送風路の他端に電熱式加熱器をそれぞれに配置して、
前記送風機で前記送風路の内部に取り入れた空気を前記電熱式加熱器で加熱して、前記送風路の他端から送出する
ことを特徴とする温室用暖房システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−29172(P2010−29172A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−251480(P2008−251480)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(303051732)
【出願人】(303043999)天草池田電機株式会社 (6)
【Fターム(参考)】