説明

温度センサ装置

【課題】低電圧で動作可能な、温度センサ装置を提供すること。
【解決手段】定電流回路と、定電流回路から定電流を供給される、ソースフォロワ接続された1つ以上のMOSトランジスタのゲート・ソース電圧間電圧の和に基づいた電圧によって、または、ソースフォロワ接続された1つ以上のMOSトランジスタのゲート・ソース電圧間電圧と、1つ以上のPN接合の順電圧との和の電圧に基づいた電圧によって、温度を検知する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度を検知する温度センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、温度を検知する温度センサ装置としては、PN接合の順電圧VPNを利用したものが、よく知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図5は、従来の温度センサ装置を示す回路図である。従来の温度センサ装置は、定電流回路501と、これによって定電流が提供されるダーリントン接続されたバイポーラトランジスタ502、503、504を、備えている。
【0004】
バイポーラトランジスタ504のエミッタには、出力端子が接続されている。温度センサ装置の出力電圧は、バイポーラトランジスタのPN接合の順電圧VPNの和になる。PN接合の順電圧VPNは、常温において凡そ0.6V程度であることが知られている。また、PN接合の順電圧VPNは、温度に応じて変化する為、この出力電圧は温度に応じて変化する電圧となる。
【0005】
この様な構成の温度センサ装置においては、出力電圧が温度に応じて変化する感度が高いほど、温度センサ装置の温度検知精度が高まる。従って、温度センサ装置の温度検知精度を高めるには、PN接合の順電圧VPNの和を増やせばよい。一般に、PN接合の順電圧VPNの温度感度は、凡そ2.5mV/℃であることが知られている。
【0006】
図5の温度センサ装置の場合、PN接合の有効な段数が3段である為、順電圧和はPN接合の順電圧VPNの3倍となる。従って、常温における出力電圧は、凡そ1.8Vとなり、出力電圧が温度に応じて変化する感度は、凡そ7.5mV/℃となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−248962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の温度センサ装置は、温度センサ装置の出力電圧は、バイポーラトランジスタのPN接合の順電圧の和になる為、動作電圧としては、少なくともPN接合の順電圧和よりも高いことが必要である。この為、動作電圧を低く抑えることができないという、問題点があった。このことは、バッテリーなどから提供される電源電圧を、低電圧まで利用できないという意味において非効率である。
【0009】
本発明は、上記の様な問題点を解決するために考案されたものであり、より低電圧で動作可能な、温度センサ装置を実現するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従来の課題を解決するために、本発明の温度センサ装置は以下のような構成とした。
定電流回路と、定電流回路から定電流を供給される、ソースフォロワ接続された1つ以上のMOSトランジスタのゲート・ソース電圧間電圧の和に基づいた電圧によって、またはソースフォロワ接続された1つ以上のMOSトランジスタのゲート・ソース電圧間電圧と、1つ以上のPN接合の順電圧との和の電圧に基づいた電圧によって温度を検知する温度センサ装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明の温度センサ装置によれば、感度を犠牲にすることなくより低電圧で動作可能な、温度センサ装置を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態の温度センサ装置を示す構成図である。
【図2】本実施形態の温度センサ装置の他の例を示す構成図である。
【図3】本実施形態の温度センサ装置の他の例を示す構成図である。
【図4】本実施形態の温度センサ装置の他の例を示す構成図である。
【図5】従来の温度センサ装置を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本実施形態の温度センサ装置を示す構成図である。
本実施形態の温度センサ装置は、定電流回路501と、これによって定電流が提供されるソースフォロワ接続されたMOSトランジスタ101、102、103を、備えている。また、MOSトランジスタ103のソースに接続される、出力端子を備えている。出力端子には、温度センサ装置の出力電圧VOUTが出力される。
【0014】
次に、本実施形態の温度センサ装置の動作を説明する。
今、MOSトランジスタ101、102、103の閾値電圧を、それぞれ順次、VT101、VT102、VT103とする。
MOSトランジスタ101、102、103は、ソースフォロワ接続となっている為、ゲートに入力された電圧にゲート・ソース間電圧を加算した電圧をソースに出力する。
【0015】
ここで、MOSトランジスタ101、102、103のオーバードライブ電圧は無視できる、と仮定する。MOSトランジスタ101、102、103のゲート・ソース間電圧の和は、MOSトランジスタ101、102、103の閾値電圧の和と等しくなり、この電圧が出力電圧VOUTとして与えられる。従って、出力電圧VOUTは(1)式で与えられる。MOSトランジスタ101、102、103の寸法サイズW/Lが大きい、あるいはドレイン電流が小さい、状態とすることにより、この仮定は成立する。
【0016】
VOUT=VT101+VT102+VT103・・・(1)
(1)式によれば、出力電圧VOUTは、MOSトランジスタ101、102、103の閾値電圧に依る。MOSトランジスタの閾値電圧は、負の温度特性を持つ為、出力電圧VOUTはまた、負の温度特性を持つことになる。従って、出力電圧VOUTとしては、温度に基づいた電圧が出力されることになる。
【0017】
(1)式から、常温における出力電圧VOUTは、凡そ1.8Vとなっていた。MOSトランジスタ101、102、103の閾値電圧を小さい値として制御することにより、出力電圧VOUTを低く抑えることができる。MOSトランジスタの閾値電圧を小さくすることは、例えば、チャネルのインプラ濃度を調整する、または、MOSトランジスタのバックゲート電圧を制御する、ことにより達成される。ここで、MOSトランジスタ101、102、103に対して、閾値電圧を小さい値として制御する対象を、選択的に決めても良い。この場合も、出力電圧VOUTを低く抑えることが可能である。
【0018】
また、出力電圧VOUTの感度をさらに高くしたい場合には、MOSトランジスタのゲート・ソース電圧間の電圧の和を増やせばよい。例えば、図2に示す様に、MOSトランジスタ202を追加する。
【0019】
図2は、本実施形態の温度センサ装置の他の例を示す構成図である。
図2の温度センサ装置は、定電流回路201と、これによって定電流が提供されるソースフォロワ接続されたMOSトランジスタ101、102、103、202を、備えている。また、MOSトランジスタ202のソースに接続される、出力端子を備えている。出力端子には、温度センサ装置の出力電圧VOUTが出力される。
【0020】
今、MOSトランジスタ202の閾値電圧を、VT202とする。
MOSトランジスタ101、102、103、202は、ソースフォロワ接続となっている為、ゲートに入力された電圧にゲート・ソース間電圧を加算した電圧をソースに出力する。
【0021】
ここで、MOSトランジスタ202のオーバードライブ電圧を無視できる、と仮定する。MOSトランジスタ101、102、103、202のゲート・ソース間電圧の和は、MOSトランジスタ101、102、103、202の閾値電圧の和と等しくなり、この電圧が出力電圧VOUTとして与えられる。従って、出力電圧VOUTは(2)式で与えられる。MOSトランジスタ202の寸法サイズW/Lが大きい、あるいはドレイン電流が小さい、状態とすることにより、この仮定は成立する。
【0022】
VOUT=VT101+VT102+VT103+VT202・・・(2)
(2)式と(1)式との相違は、VT202が加算されている点にある。従って、出力電圧の感度としては、MOSトランジスタ202の分だけ高まる。
(2)式は、また例えば、図3の様に飽和接続したMOSトランジスタを追加することによっても、達成される。
【0023】
図3は、本実施形態の温度センサ装置の他の例を示す構成図である。
飽和接続されたMOSトランジスタ202は、MOSトランジスタ103のゲートとMOSトランジスタ102のソースの間に備えられている。
出力電圧VOUTは、明らかに、MOSトランジスタ101、102、103、202の閾値電圧和で決定される為、(2)式と同様の出力電圧VOUTが達成される。
【0024】
なお図3において、トランジスタ202は、MOSトランジスタ103のゲートとMOSトランジスタ102のソースとの間に備えたとしたが、例えはMOSトランジスタ102のゲートと、MOSトランジスタ101のソースとの間に備えてもよく、これに限定されるものではない。
また例えば、図4に示す様に、MOSトランジスタのゲート・ソース間電圧とPN接合の順電圧との和に基づいて、出力電圧VOUTが与えられても良い。
【0025】
図4は、本実施形態の温度センサ装置の他の例を示す構成図である。
図4の温度センサ装置は、定電流回路501と、バイポーラトランジスタ502、503と、MOSトランジスタ401を、備えている。また、MOSトランジスタ401のソースに接続される、出力端子を備えている。出力端子には、温度センサ装置の出力電圧VOUTが出力される。
【0026】
次に、図4の温度センサ装置の動作を説明する。
今、トランジスタ401の閾値電圧を、VT401とする。
バイポーラトランジスタ502、503は、エミッタフォロワ接続となっている為、ベースに入力された電圧にベース・エミッタ間電圧を加算した電圧を、エミッタに出力する。また、MOSトランジスタ401は、ソースフォロワ接続となっている為、ゲートに入力された電圧にゲート・ソース間電圧を加算した電圧をソースに出力する。
【0027】
ここで、MOSトランジスタ401のオーバードライブ電圧を無視できる、と仮定する。バイポーラトランジスタ502、503のベース・エミッタ間電圧と、MOSトランジスタ401のゲート・ソース間電圧との和は、PN接合の順電圧VPNの2倍とMOSトランジスタ401の閾値電圧との和と等しくなり、この電圧が出力電圧VOUTとして与えられる。従って、出力電圧VOUTは(3)式で与えられる。MOSトランジスタ401の寸法サイズW/Lが大きい、あるいはドレイン電流が小さい、状態とすることにより、この仮定は成立する。
【0028】
VOUT=VPN×2+VT401・・・(3)
(3)式によれば、出力電圧VOUTは、MOSトランジスタ401の閾値電圧に依る。また、VPN及び、MOSトランジスタの閾値電圧は、負の温度特性を持つ為、出力電圧VOUTは負の温度特性を持つことになる。従って、出力電圧VOUTとしては、温度に基づいた電圧が出力されることになる。
【0029】
(3)式によれば、出力電圧VOUTは、MOSトランジスタ401の閾値電圧を小さい値として制御することにより、出力電圧VOUTを低く抑えることができる。
【0030】
なお、図4において、バイポーラトランジスタ502、503とMOSトランジスタ401を備えた構成としたが、MOSトランジスタ401はバイポーラトランジスタ502の代わりに備えてもよく、この構成に限定されるものではない。
また、PN接合の順電圧VPNをダーリントン接続したバイポーラトランジスタによって発生させたが、ダイオードによって発生させてもよい。
【0031】
以上説明したように、本実施形態の温度センサ装置においては、従来の温度センサ装置と比べて出力電圧を低く抑えることが可能である。従って、より低電圧で動作可能な、温度センサ装置を提供することが可能である。
【符号の説明】
【0032】
201、501 定電流回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力電圧によって温度を検知する温度センサ装置であって、
定電流を出力する定電流回路と、
前記定電流回路から定電流を供給される、ソースフォロワ接続された1つ以上のMOSトランジスタと、を備え、
前記温度センサ装置の出力電圧が、前記MOSトランジスタのゲート・ソース間電圧の和に基づいて与えられる、
ことを特徴とする、温度センサ装置。
【請求項2】
前記定電流回路から定電流を供給される、エミッタフォロワ接続された1つ以上のバイポーラトランジスタと、を備え、
前記温度センサ装置の出力電圧が、前記MOSトランジスタのゲート・ソース間電圧の和と、前記バイポーラトランジスタのPN接合の順電圧とに基づいて与えられる、
ことを特徴とする、請求項1に記載の温度センサ装置。
【請求項3】
前記定電流回路から定電流を供給される、1つ以上のダイオードと、を備え、
前記温度センサ装置の出力電圧が、前記MOSトランジスタのゲート・ソース間電圧の和と、前記ダイオードの順電圧とに基づいて与えられる、
ことを特徴とする、請求項1に記載の温度センサ装置。
【請求項4】
前記定電流回路と前記MOSトランジスタとの間に、飽和接続されたMOSトランジスタを設けた、
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の温度センサ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−76583(P2013−76583A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215468(P2011−215468)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】