説明

温度補償型圧電発振器

【課題】発熱素子の影響を軽減する。
【解決手段】圧電振動子10と、制御電圧VCに基づき圧電振動子10の発振周波数を制
御する発振回路150と、温度を検出し第1の電圧V1を出力する第1の温度検出器T1
と、温度を検出し第2の電圧V2を出力する第2の温度検出器T2と、第1の電圧V1と
第2の電圧V2との差の電圧である第3の電圧V3を出力する差分回路120と、第1の
電圧V1と第3の電圧V3との和の電圧である第4の電圧V4を出力する加算回路130
と、第4の電圧V4に基づき制御電圧VCを発生する制御電圧発生回路140と、を含む
温度補償型圧電発振器1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度補償型圧電発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話などの小型電子機器は、実装基板上に間欠的に動作する素子が配置されており
、このような素子の中には動作し始めると急激に発熱するものがある。このような発熱す
る素子のそばに温度補償型圧電発振器(TCXO:Temperature Compensated Xtal Oscil
lator)が配置されている場合、温度補償型圧電発振器を構成している温度検出器が素子
の急激な温度変化に追従した電圧値を出力するため、本来検出しなければならない環境温
度の変化とは無関係な制御電圧が発生し、発振周波数に影響が出てしまうという課題があ
った。
【0003】
この問題を解決するために、例えば特許文献1には、温度検出器(温度センサー)の出
力を積分回路(ローパスフィルター)に挿入し、熱衝撃が加わったとき、両者の差電圧を
利用し、急激な温度変化に対する周波数補償を行う方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−145339号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の方法では、急激な温度変化に対応するためには大容量のコンデン
サーと抵抗からなる積分回路が必要になり、集積回路の小型化には不向きであり、デジタ
ル処理が入るのでノイズが大きいという課題がある。また、近傍に発熱する素子が置かれ
た場合の影響を免れることができない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の
形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
圧電振動子と、制御電圧に基づき前記圧電振動子の発振周波数を制御する発振回路と、
温度を検出し第1の電圧を出力する第1の温度検出器と、温度を検出し第2の電圧を出力
する第2の温度検出器と、前記第1の電圧と前記第2の電圧との差の電圧である第3の電
圧を出力する差分回路と、前記第1の電圧と前記第3の電圧との和の電圧である第4の電
圧を出力する加算回路と、前記第4の電圧に基づき前記制御電圧を発生する制御電圧発生
回路と、を含む、ことを特徴とする温度補償型圧電発振器。
【0008】
この構成によれば、温度補償型圧電発振器の近傍に発熱素子が配置された場合に、発熱
素子に近い第1の温度検出器と発熱素子から遠い第2の温度検出器の温度差を合成するこ
とができるので、発熱素子からの熱衝撃による周波数の変動を小さくすることができる。
【0009】
[適用例2]
上記に記載の温度補償型圧電発振器において、前記第1の温度検出器と前記第2の温度
検出器とは、電圧−温度特性が略同一であることを特徴とする温度補償型圧電発振器。
【0010】
この構成によれば、第1の温度検出器と第2の温度検出器とが同一の電圧−温度特性で
あれば、熱衝撃がない場合にも1個の温度検出器で構成した場合と同等の検出結果を得る
ことができる。
【0011】
[適用例3]
上記に記載の温度補償型圧電発振器において、前記第1の温度検出器と前記第2の温度
検出器とは、離れて配置されていることを特徴とする温度補償型圧電発振器。
【0012】
この構成によれば、第1の温度検出器と第2の温度検出器とを離れて配置させることに
より発熱素子からの熱衝撃を受けた場合の温度と熱衝撃を受けない場合の温度との差が大
きくなるので温度差の検出が容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態に係る温度補償型圧電発振器の構成を示す構成図。
【図2】第1実施形態に係る温度補償型圧電発振器の構成を示す回路図。
【図3】(A)第1実施形態に係る温度補償型圧電発振器の基板上での配置方法を示す配置図、(B)第1実施形態に係る温度補償型圧電発振器の温度センサーの動きを示すグラフ。
【図4】変形例1に係る温度補償型圧電発振器の構成を示す構成図。
【図5】変形例2に係る温度補償型圧電発振器の構成を示す構成図。
【図6】変形例2に係る温度補償型圧電発振器の配置方法を示す配置図。
【図7】変形例3に係る温度補償型圧電発振器の構成を示す構成図。
【図8】変形例3に係る温度補償型圧電発振器の配置方法を示す配置図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、温度補償型圧電発振器の実施形態について図面に従って説明する。
【0015】
(第1実施形態)
<温度補償型圧電発振器の構成>
先ず、第1実施形態に係る温度補償型圧電発振器の構成について、図1〜3を参照して
説明する。図1は、第1実施形態に係る温度補償型圧電発振器の構成を示す構成図である
。図2は、第1実施形態に係る温度補償型圧電発振器の構成を示す回路図である。図3(
A)は、第1実施形態に係る温度補償型圧電発振器の基板上での配置方法を示す配置図で
ある。図3(B)は、第1実施形態に係る温度補償型圧電発振器の温度センサーの動きを
示すグラフである。
【0016】
図1に示すように、温度補償型圧電発振器1は、圧電振動子10と、発振回路150と
、第1の温度検出器である温度センサーT1と、第2の温度検出器である温度センサーT
2と、差分回路120と、加算回路130と、制御電圧発生回路140と、EEPROM
(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)160と、から構成さ
れている。なお、図3,4での説明の簡略化のために、差分回路120と加算回路130
と制御電圧発生回路140とを含む回路を検出回路110と名付ける。
【0017】
温度センサーT1は、検出した温度を電圧に変換した第1の電圧である電圧V1を出力
する。温度センサーT2は、検出した温度を電圧に変換した第2の電圧である電圧V2を
出力する。差分回路120は、電圧V1と電圧V2との差を検出し第3の電圧である電圧
V3を出力する。加算回路130は、電圧V1と電圧V3との和を検出し第4の電圧であ
る電圧V4を出力する。制御電圧発生回路140は、電圧V4に基づき制御電圧VCを発
生し出力する。発振回路150は、制御電圧VCによって圧電振動子10の発振周波数の
温度特性をうち消すように制御し出力端子OUTから発振信号を出力する。
【0018】
図2は、温度センサーT1と温度センサーT2と差分回路120と加算回路130の具
体的な回路構成を示している。温度センサーT1は、電源線と接地線との間に抵抗112
と2個のダイオード113,114が直列に接続されている。抵抗112とダイオード1
13との接続線から電圧V1が出力される。温度センサーT2は、電源線と接地線との間
に抵抗116と2個のダイオード117,118が直列に接続されている。抵抗116と
ダイオード117との接続線から電圧V2が出力される。
【0019】
差分回路120は、差動増幅器122と抵抗R1と可変抵抗R2とから構成されている
。差動増幅器122は、+端子に電圧V1が印加され、−端子に抵抗R1を介して電圧V
2が印加され、出力端子から電圧V3を出力する。可変抵抗R2は、差動増幅器122の
−端子と出力端子との間に接続され、EEPROM160に記憶されたデジタル信号VR
に基づき抵抗値を調整できる。EEPROM160は、制御端子CSから制御信号が印加
されるとデータ端子DAから可変抵抗R2を調整するデジタルデータなどのデータが書き
込まれる。
【0020】
加算回路130は、差動増幅器132と抵抗R3,R4とから構成されている。差動増
幅器132は、+端子に電圧V1が印加され、−端子に抵抗R3を介して電圧V3が印加
され、出力端子から電圧V4を出力する。抵抗R4は、差動増幅器132の−端子と出力
端子との間に接続されている。
【0021】
図3(A)に示すように、基板300上に温度補償型圧電発振器1と発熱素子20が配
置された場合、温度センサーT1は発熱素子20の近傍にあるので、発熱素子20が間欠
駆動し発熱すると発熱素子20の温度の影響を受ける。一方、温度センサーT2は発熱素
子20から離れた位置にあるので、発熱素子20の温度の影響を受けるのは遅くなる。
【0022】
図3(B)に示すように、時点t1で発熱素子20が間欠駆動すると、温度センサーT
1が出力する電圧V1は温度が上がるので急激に下降する。一方、温度センサーT2が出
力する電圧V2は電圧V1に比べ緩やかに下降する。これら電圧V1とV2とを合成した
電圧(図2のV4に相当する電圧)は電圧V2に比べて更に緩やかに下降することになる

【0023】
以上に述べた本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
【0024】
従来の温度補償型圧電発振器は温度センサーが1個だったので、発熱素子20の影響を
受け、急激に制御電圧VCが変化したが、本実施形態では、発熱素子20に近い温度セン
サーT1と発熱素子20から遠い温度センサーT2の温度差を合成することができるので
、発熱素子20からの熱衝撃による周波数の変動を小さくすることができる。
【0025】
以上、温度補償型圧電発振器の実施形態を説明したが、こうした実施の形態に何ら限定
されるものではなく、趣旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施し得ることがで
きる。以下、変形例を挙げて説明する。
【0026】
(変形例1)温度補償型圧電発振器の変形例1について説明する。前記第1実施形態で
は、温度補償型圧電発振器1に温度センサーT1と温度センサーT2を配置した場合を説
明したが、温度センサーT2を温度補償型圧電発振器1の外部に配置してもよい。図4は
、変形例1に係る温度補償型圧電発振器の構成を示す構成図である。
【0027】
図4に示すように、温度補償型圧電発振器4は、温度センサーT2を含まず、外部に配
置している。温度センサーT2を温度補償型圧電発振器4に接続するために新たな端子を
設けず、データ端子DAを兼用している。そのために、温度補償型圧電発振器4は、スイ
ッチ回路170を含み、制御端子CSから入力される制御信号がイネーブルの時はスイッ
チ回路170のa端子とb端子を接続状態にし、制御信号がディスエーブルの時はスイッ
チ回路170のa端子とc端子を接続状態にするように動作する。従って、EEPROM
160にデータを書き込む期間は、制御信号はイネーブルなので温度センサーT2は非接
続状態となり、EEPROM160にデータを書き込まない期間は、制御信号はディスエ
ーブルなので温度センサーT2は接続状態となる。
【0028】
図4に示すように、基板400上に発熱素子20と温度補償型圧電発振器4と温度セン
サーT2を配置することにより、温度センサーT2は発熱素子20の温度の影響をさらに
受けにくくなる。
【0029】
(変形例2)温度補償型圧電発振器の変形例2について説明する。前記第1実施形態で
は、2個の温度センサーT1,T2を配置する方法を説明したが、3個以上の温度センサ
ーを配置するようにしてもよい。図5は、変形例2に係る温度補償型圧電発振器の構成を
示す構成図である。図6は、変形例2に係る温度補償型圧電発振器の配置方法を示す配置
図である。
【0030】
図5に示すように、温度補償型圧電発振器5は、温度センサーT1と温度センサーT2
に加えて3個目の温度センサーT3と、差分回路520と、をさらに含んで構成されてい
る。温度センサーT3は、検出した温度を電圧に変換した電圧V5を出力する。差分回路
520は、電圧V1と電圧V5との差を検出し電圧V6を出力する。加算回路530は、
電圧V1と電圧V3と電圧V6との和を検出し電圧V4を出力する。なお、図6での説明
の簡略化のために、差分回路120,520と加算回路530と制御電圧発生回路140
とを含む回路を検出回路510と名付ける。
【0031】
図6(A)に示すように、基板600上に発熱素子20と温度補償型圧電発振器5とを
配置することにより、温度センサーT3は発熱素子20の温度の影響を受けやすくなり、
温度センサーT1,T2は発熱素子20の温度の影響を受けにくくなる。一方、図6(B
)に示すように、基板600上に発熱素子20と温度補償型圧電発振器5とを配置するこ
とにより、温度センサーT1,T3は発熱素子20の温度の影響を受けやすくなり、温度
センサーT2は発熱素子20の温度の影響を受けにくくなる。
【0032】
(変形例3)温度補償型圧電発振器の変形例3について説明する。前記変形例2では、
3個の温度センサーT1,T2,T3と2個の差分回路120,520を配置する方法を
説明したが、1個の差分回路120でも構成できる。図7は、変形例3に係る温度補償型
圧電発振器の構成を示す構成図である。図8は、変形例3に係る温度補償型圧電発振器の
配置方法を示す配置図である。
【0033】
図7に示すように、温度補償型圧電発振器7は、2個の温度センサーT2,T3の出力
する電圧V2,V5をスイッチ回路570で切り替えて差分回路120に入力するように
構成されている。スイッチ回路570は、EEPROM160に書き込まれた制御信号V
Sに基づき、スイッチ回路570のb端子とc端子とが接続するか、a端子とc端子とが
接続するかを切り替えることができる。なお、図8での説明の簡略化のために、差分回路
120と加算回路130とスイッチ回路570と制御電圧発生回路140とを含む回路を
検出回路710と名付ける。
【0034】
図8(A)に示すように、基板800上に発熱素子20と温度補償型圧電発振器7とを
配置する場合は、温度センサーT1,T3が発熱素子20に近く温度センサーT2が発熱
素子20から遠いので、スイッチ回路570のb端子とc端子とが接続するように制御信
号VSを設定する。一方、図8(B)に示すように、基板800上に発熱素子20と温度
補償型圧電発振器7とを配置する場合は、温度センサーT1,T2が発熱素子20に近く
温度センサーT3が発熱素子20から遠いので、スイッチ回路570のa端子とc端子と
が接続するように制御信号VSを設定する。
【符号の説明】
【0035】
1…温度補償型圧電発振器、4…温度補償型圧電発振器、5…温度補償型圧電発振器、
7…温度補償型圧電発振器、10…圧電振動子、20…発熱素子、110…検出回路、1
12…抵抗、113,114…ダイオード、116…抵抗、117,118…ダイオード
、120…差分回路、122…差動増幅器、130…加算回路、132…差動増幅器、1
40…制御電圧発生回路、150…発振回路、160…EEPROM、170…スイッチ
回路、300,400…基板、510…検出回路、520…差分回路、530…加算回路
、570…スイッチ回路、600…基板、710…検出回路、800…基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動子と、
制御電圧に基づき前記圧電振動子の発振周波数を制御する発振回路と、
温度を検出し第1の電圧を出力する第1の温度検出器と、
温度を検出し第2の電圧を出力する第2の温度検出器と、
前記第1の電圧と前記第2の電圧との差の電圧である第3の電圧を出力する差分回路と

前記第1の電圧と前記第3の電圧との和の電圧である第4の電圧を出力する加算回路と

前記第4の電圧に基づき前記制御電圧を発生する制御電圧発生回路と、
を含む、
ことを特徴とする温度補償型圧電発振器。
【請求項2】
請求項1に記載の温度補償型圧電発振器において、前記第1の温度検出器と前記第2の
温度検出器とは、電圧−温度特性が略同一であることを特徴とする温度補償型圧電発振器

【請求項3】
請求項1または2に記載の温度補償型圧電発振器において、前記第1の温度検出器と前
記第2の温度検出器とは、離れて配置されていることを特徴とする温度補償型圧電発振器


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−193134(P2010−193134A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34877(P2009−34877)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.EEPROM
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】