説明

温感素子、温感素子の製造方法、一次相転移温度の調整方法

【課題】一次相転移性物質を有効利用する方法を提供する。
【解決手段】温度によって体積が変化する一次相転移性を有する物質は、一次相転移が生じる温度の前後で、線膨張率が著しく異なる。この性質によって一次相転移性物質は、熱スイッチるいはサーミスタに用いることができる。 一次相転移性物質として、ペロブスカイト型マンガン窒化物結晶の線膨張係数を測定し、感温素子に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温感素子およびその製造方法に関する。また、ペロフスカイト型マンガン窒化物結晶の一次相転移性を示す温度(以下、「一次相転移温度」ということがある)を調整する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、非特許文献1〜5に示すように、一次相転移性を示す物質(以下、「一次相転移性物質」という)が広く知られている。
一次相転移性物質は、その挙動の特殊性から、種々の分野への応用が期待されているが、有用な用途に乏しいのが現状である。
【0003】
【非特許文献1】J. P. Bouchaud, Ann. Chim. 3, 81 (1968).
【非特許文献2】R. Fruchart et al., J. Phys. (Paris) 32, C 1-982 (1971).
【非特許文献3】D. Fruchart and E. F. Bertaut, J. Phys. Soc. Jpn. 44, 781 (1978).
【非特許文献4】Ph. l'Heritier et al., Mat. Res. Bull. 14, 1203 (1979).
【非特許文献5】W. S. Kim et al., Phys. Rev. B 68, 172402 (2003).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題点を解決することを目的とするものであって、一次相転移性物質を有効利用する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、温度によって体積が変化する一次相転移性物質を、何か有効な用途に使えないかと考えた。そして、発明者が検討した結果、このような一次相転移性物質を温感素子として利用可能であることを見出した。この点を見出した経緯には、発明者の鋭意なる検討が含まれている。すなわち、温感素子に求められる要件が厳しく一次転移性物質の体積変化を利用すること自体、想定の範囲外であったことによる。
すなわち、一次相転移性物質の一次相転移温度は、物質ごとに一義的に定まるものである。一方、温感素子はその性質上、用途毎に、求められる温感温度が変わる。さらに、温感素子である以上、微細な温度変化に順応できることが必要となる。
かかる状況のもと、本願発明者は、温度によって体積が変化する一次相転移性を有する物質を、温感素子に用いることを見出した。具体的には、ある温度で体積が急激に大きくなる性質を利用し、熱スイッチやサーミスタを構築できることを見出した。
特に、本発明では、一次相転移性物質において、特定の手段を採用することにより、一次相転移に伴う急峻な体積変化を維持したまま、室温を含む広い温度範囲で一次相転移温度を調整することが可能であることを見出した。とりわけ当該マンガン窒化物の一次相転移温度を上昇させる方法を見出した。これにより、種々の温度における温感素子を作製できることを見出したものである。
【0006】
具体的には、以下の手段により、達成された。
(1)温度によって体積が変化する一次相転移性を有する物質を用いた温感素子。
(2)一次相転移性を有する物質が、ペロフスカイト型マンガン窒化物結晶である(1)に記載の温感素子。
(3)前記一次相転移性を示す物質が、3℃以下の温度幅で、線熱膨張が2×10-3以上変化する、(1)または(2)に記載の温感素子。
(4)前記一次相転移を示す物質が、800℃以上で、焼成されてなるペロフスカイト型マンガン窒化物結晶である、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の温感素子。
(5)前記一次相転移性を示す物質が、下記式(1)で表される組成からなるペロフスカイト型マンガン窒化物結晶の該式(1)で表される組成の一部を変更してなるペロフスカイト型マンガン窒化物結晶である、(1)〜(4)のいずれか1項に記載の温感素子。
式(1)
Mn3AN
(式(1)中、Aは、Mg、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、PbおよびBiから選択される少なくとも1種の原子からなる。)
(6)前記一次相転移性を示す物質が、前記式(1)で表される組成からなるペロフスカイト型マンガン窒化物結晶を構成する原子の0.5〜50%が、他の少なくとも1種の原子で置換されているペロフスカイト型マンガン窒化物結晶である、(5)に記載の温感素子。
(7)前記一次相転移性を示す物質が、前記式(1)で表される組成からなるペロフスカイト型マンガン窒化物結晶を構成する窒素原子の一部が、H原子、B原子、C原子およびO原子の少なくとも1種の原子で置換されているペロフスカイト型マンガン窒化物結晶である、(5)または(6)に記載の温感素子。
(8)前記一次相転移性を示す物質が、前記式(1)で表される組成からなるペロフスカイト型マンガン窒化物結晶を構成する式(1)のAに相当する原子の一部が、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Ir、Pt、AuおよびBiから選択される少なくとも1種の原子で置換されているペロフスカイト型マンガン窒化物結晶である、(5)〜(7)のいずれか1項に記載の温感素子。
(9)前記一次相転移性を示す物質が、前記式(1)で表される組成からなるペロフスカイト型マンガン窒化物結晶を構成するMn原子の一部が、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Ir、Pt、AuおよびBiの少なくとも1種の原子で置換されているペロフスカイト型マンガン窒化物結晶である、(5)〜(8)のいずれか1項に記載の温感素子。
(10)前記式(1)で表される組成からなるペロフスカイト型マンガン窒化物結晶が一次相転移性を有する、(5)〜(9)のいずれか1項に記載の温感素子。
(11)前記一次相転移性を示す物質が、式(2)で表される組成からなるマンガン窒化物結晶である、(1)〜(4)のいずれか1項に記載の温感素子。
式(2)
Mn3A(N1-x2x2
(式(2)中、Aは、Mg、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、PbおよびBiから選択される少なくとも1種の原子からなり、Dは、H、B、CおよびOから選択される少なくとも1種の原子からなり、0.005<x2<0.2である。)
(12)前記一次相転移性を示す物質が、式(3)で表される組成からなるマンガン窒化物結晶である、(1)〜(4)のいずれか1項に記載の温感素子。
式(3)
Mn3(A1-x3x3)N
(式(3)中、Aは、Mg、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、PbおよびBiから選択される少なくとも1種の原子からなり、Eは、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Ir、Pt、AuおよびBiから選択される少なくとも1種の原子からなり、0.005<x3<0.5である。)
(13)前記一次相転移性を示す物質が、式(4)で表される組成からなるマンガン窒化物結晶である、(1)〜(4)のいずれか1項に記載の温感素子。
式(4)
(Mn1-x4x43AN
(式(4)中、Aは、Mg、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、PbおよびBiから選択される少なくとも1種の原子からなり、Gは、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Ir、Pt、AuおよびBiから選択される少なくとも1種の原子からなり、0.005<x4<0.2である。)
(14)前記温感素子が、熱スイッチである、(1)〜(13)のいずれか1項に記載の温感素子。
(15)前記温感素子が、サーミスタである、(1)〜(13)のいずれか1項に記載の温感素子。
(16)下記式(1)で表される組成からなるペロフスカイト型マンガン窒化物結晶を800℃以上で焼成して、一次相転移性を有するペロフスカイト型マンガン窒化物結晶とすることを含む、温感素子の製造方法。
式(1)
Mn3AN
(式(1)中、Aは、Mg、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、PbおよびBiから選択される少なくとも1種の原子からなる。)
(17)下記式(1)で表される組成からなるペロフスカイト型マンガン窒化物結晶の該式(1)で表される組成の一部を変更して一次相転移性を有するペロフスカイト型マンガン窒化物結晶とすることを含む、温感素子の製造方法。
式(1)
Mn3AN
(式(1)中、Aは、Mg、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、PbおよびBiから選択される少なくとも1種の原子からなる。)
(18)前記式(1)で表される組成からなるペロフスカイト型マンガン窒化物結晶を800℃以上で焼成することを含む、(17)に記載の温感素子の製造方法。
(19)前記式(1)で表される組成からなるペロフスカイト型マンガン窒化物結晶を構成する原子の0.5〜50%を、他の少なくとも1種の原子で置換することを含む、(16)〜(18)のいずれか1項に記載の温感素子の製造方法。
(20)前記式(1)で表される組成からなるペロフスカイト型マンガン窒化物結晶を構成する窒素原子の一部を、H原子、B原子、C原子およびO原子の少なくとも1種の原子で置換することを含む、(16)〜(19)のいずれか1項に記載の温感素子の製造方法。
(21)前記式(1)で表される組成からなるペロフスカイト型マンガン窒化物結晶を構成する式(1)のAに相当する原子の一部を、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Ir、Pt、AuおよびBiから選択される少なくとも1種の原子で置換することを含む、(16)〜(20)のいずれか1項に記載の温感素子の製造方法。
(22)前記式(1)で表される組成からなるペロフスカイト型マンガン窒化物結晶を構成するMn原子の一部を、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Ir、Pt、AuおよびBiの少なくとも1種の原子で置換することを含む、(16)〜(21)のいずれか1項に記載の温感素子の製造方法。
(23)前記式(1)で表される組成からなるペロフスカイト型マンガン窒化物結晶を構成する原子の一部を置換して、式(2)で表される組成からなるマンガン窒化物結晶とすることを含む、(16)〜(19)のいずれか1項に記載の温感素子の製造方法。
式(2)
Mn3A(N1-x2x2
(式(2)中、Aは、Mg、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、PbおよびBiから選択される少なくとも1種の原子からなり、Dは、H、B、CおよびOから選択される少なくとも1種の原子からなり、0.005<x2<0.2である。)
(24)前記式(1)で表される組成からなるペロフスカイト型マンガン窒化物結晶を構成する原子の一部を置換して、式(3)で表される組成からなるマンガン窒化物結晶とすることを含む、(16)〜(19)のいずれか1項に記載の温感素子の製造方法。
式(3)
Mn3(A1-x3x3)N
(式(3)中、Aは、Mg、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、PbおよびBiから選択される少なくとも1種の原子からなり、Eは、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Ir、Pt、AuおよびBiから選択される少なくとも1種の原子からなり、0.005<x3<0.5である。)
(25)前記式(1)で表される組成からなるペロフスカイト型マンガン窒化物結晶を構成する原子の一部を置換して、式(4)で表される組成からなるマンガン窒化物結晶とすることを含む、(16)〜(19)のいずれか1項に記載の温感素子の製造方法。
式(4)
(Mn1-x4x43AN
(式(4)中、Aは、Mg、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、PbおよびBiから選択される少なくとも1種の原子からなり、Gは、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Ir、Pt、AuおよびBiから選択される少なくとも1種の原子からなり、0.005<x4<0.2である。)
(26)前記式(1)で表される組成からなるペロフスカイト型マンガン窒化物結晶が一次相転移性を示す、(16)〜(25)のいずれか1項に記載の温感素子の製造方法。
(27)下記式(1)で表される組成からなり一次相転移性を有するペロフスカイト型マンガン窒化物結晶の焼成温度を変えることを含む、一次相転移性を有するペロフスカイト型マンガン窒化物結晶の一次相転移温度の調整方法。
式(1)
Mn3AN
(式(1)中、Aは、Mg、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、PbおよびBiから選択される少なくとも1種の原子からなる。)
(28)下記式(1)で表される組成からなり一次相転移性を有するペロフスカイト型マンガン窒化物結晶の該式(1)で表される組成の一部を変更することを含む、一次相転移性を有するペロフスカイト型マンガン窒化物結晶の一次相転移温度の調整方法。
式(1)
Mn3AN
(式(1)中、Aは、Mg、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、PbおよびBiから選択される少なくとも1種の原子からなる。)
(29)前記式(1)で表される組成からなり一次相転移性を有するペロフスカイト型マンガン窒化物結晶の焼成温度を代えることを含む、(28)に記載の調整方法。
(30)前記式(1)で表される組成からなり一次相転移性を有するペロフスカイト型マンガン窒化物結晶を構成する原子の0.5〜50%を、他の少なくとも1種の原子で置換することを含む、(27)〜(29)のいずれか1項に記載の調整方法。
(31)前記式(1)で表される組成からなり一次相転移性を有するペロフスカイト型マンガン窒化物結晶を構成する窒素原子の一部を、H原子、B原子、C原子およびO原子の少なくとも1種の原子で置換することを含む、(27)〜(30)のいずれか1項に記載の調整方法。
(32)前記式(1)で表される組成からなり一次相転移性を有するペロフスカイト型マンガン窒化物結晶を構成する式(1)のAに相当する原子の一部を、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Ir、Pt、AuおよびBiから選択される少なくとも1種の原子で置換することを含む、(27)〜(31)のいずれか1項に記載の調整方法。
(33)前記式(1)で表される組成からなり一次相転移性を有するペロフスカイト型マンガン窒化物結晶を構成するMn原子の一部を、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Ir、Pt、AuおよびBiの少なくとも1種の原子で置換することを含む、(27)〜(32)のいずれか1項に記載の調整方法。
(34)前記式(1)で表される組成からなり一次相転移性を有するペロフスカイト型マンガン窒化物結晶は、式(2)で表される組成からなるマンガン窒化物結晶である、(27)〜(30)のいずれか1項に記載の調整方法。
式(2)
Mn3A(N1-x2x2
(式(2)中、Aは、Mg、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、PbおよびBiから選択される少なくとも1種の原子からなり、Dは、H、B、CおよびOから選択される少なくとも1種の原子からなり、0.005<x2<0.2である。)
(35)前記式(1)で表される組成からなり一次相転移性を有するペロフスカイト型マンガン窒化物結晶は、式(3)で表される組成からなるマンガン窒化物結晶である、(27)〜(30)のいずれか1項に記載の調整方法。
式(3)
Mn3(A1-x3x3)N
(式(3)中、Aは、Mg、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、PbおよびBiから選択される少なくとも1種の原子からなり、Eは、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Ir、Pt、AuおよびBiから選択される少なくとも1種の原子からなり、0.005<x3<0.5である。)
(36)前記式(1)で表される組成からなり一次相転移性を有するペロフスカイト型マンガン窒化物結晶は、式(4)で表される組成からなるマンガン窒化物結晶である、(27)〜(30)のいずれか1項に記載の調整方法。
式(4)
(Mn1-x4x43AN
(式(4)中、Aは、Mg、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、PbおよびBiから選択される少なくとも1種の原子からなり、Gは、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Ir、Pt、AuおよびBiから選択される少なくとも1種の原子からなり、0.005<x4<0.2である。)
(37)前記マンガン窒化物結晶の一次相転移性を示す温度を、5℃以上移動させることを含む、(27)〜(36)のいずれか1項に記載の調整方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明を採用することにより、新規な温感素子を提供することが可能になった。特に、新規な熱スイッチおよびサーミスタを提供することが可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0009】
本発明における、温感素子とは、温度変化に伴う体積変化を利用した素子をいい、具体例としては、熱スイッチやサーミスタが挙げられる。ここで、熱スイッチとは、温度変化を感知して、ある特定の温度で自動的に、例えば機械的あるいは電気的な開閉を行う機器をいい、サーミスタとは、温度変化に反応する電気抵抗器のことをいう。
【0010】
本発明は、一次相転移に伴う体積変化を利用した温感素子を提供するものである。本発明では、温度の上昇または低下に従って、不連続的な体積変化を有する一次相転移性物質を採用するが、特に、3℃以下の温度幅で、線熱膨張が2×10-3以上変化する一次相転移性物質であることが好ましく、さらには、2℃以下の温度幅で、線熱膨張が3×10-3以上変化することが好ましく、1℃以下の温度幅で、線熱膨張が3×10-3以上変化することがより好ましい。
本発明における一次相転移温度とは、一次相転移性を示すときの熱膨張材料の温度をいう。従って、本発明における一次相転移温度は、必ずしも一点に定まるものではなく、上述のとおり多少の温度幅を有している場合も含む。
また、本発明における一次相転移温度は、温度が上昇したときに、体積が正に膨張しても、負に膨張してもよい。
【0011】
本発明で用いる、一次相転移性物質としては、好ましくは、ペロフスカイト型マンガン窒化物結晶であり、より好ましくは、式(1)で表される組成からなるペロフスカイト型マンガン窒化物結晶の該式(1)で表される組成の一部を変更してなる、および/または、式(1)で表される組成からなるペロフスカイト型マンガン窒化物結晶を800℃以上で焼成してなる、一次相転移性を有するペロフスカイト型マンガン窒化物結晶である。
また、式(1)で表される組成からなるペロフスカイト型マンガン窒化物結晶自身も一次相転移性を有する物質であることが好ましい。
【0012】
式(1)
Mn3AN
(式(1)中、Aは、Mg、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、PbおよびBiから選択される少なくとも1種の原子からなる。)
【0013】
式(1)で表される組成からなるマンガン窒化物中の置換される原子の割合は、目的とする一次相転移温度や式(1)で表される組成によって、適宜定めることができるが、例えば、0.5〜50モル%であり、さらには1〜30モル%であり、特には、2〜20モル%である。
【0014】
式(1)で表される組成からなるマンガン窒化物結晶を構成する原子の一部を置換する原子の種類は、特に定めるものでなく、用途等に応じて適宜定めることができる。
式(1)で表される組成からなるマンガン窒化物結晶を構成する原子のうち置換される原子は、Mn原子の一部であっても、Aに相当する原子の一部であっても、N原子の一部であってもよい。さらに、Mn原子、Aに相当する原子およびN原子のいずれか2以上の原子の一部分が置換されていてもよい。
【0015】
尚、式(1)においてAがMn原子の場合とは、例えばMn3.1Ga0.9Nを意味している。従って、AがMn原子の場合、例えばMn3.1Ga0.9Nの組成のペロフスカイト型マンガン窒化物の一部が置換されたものが本発明の温感素子に用いる一次相転移性物質となる。
【0016】
式(1)で表される組成からなるマンガン窒化物結晶を構成するN原子の一部を置換する場合、置換原子としては、H原子、B原子、C原子およびO原子が好ましい。置換割合としては、例えば、0.5〜20モル%であり、さらには、1〜12モル%であり、特には、1.5〜10モル%である。
【0017】
さらに、式(1)で表される組成からなるマンガン窒化物結晶のN原子の一部を置換する場合、置換後のマンガン窒化物の組成が、式(2)で表されることが好ましい。
式(2)
Mn3A(N1-x2x2
(式(2)中、Aは、Mg、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、PbおよびBiから選択される少なくとも1種の原子からなり、Dは、H、B、CおよびOから選択される少なくとも1種の原子からなり、0.005<x2<0.2である。)
Dとしては、B原子、C原子がより好ましく、B原子が最も好ましい。
x2は、好ましくは0.01<x2<0.12であり、より好ましくは0.015<x2<0.10であり、0.02<x2<0.07がさらに好ましい。
また、式(2)において、Aに相当する部分の一部および/またはMnの一部も置換されていてもよく、この場合、後述する条件で置換されていることが好ましい。
【0018】
式(1)で表される組成からなるマンガン窒化物結晶を構成するAに相当する原子の一部を置換する場合、置換原子としては、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Ir、Pt、AuおよびBiから選択される少なくとも1種の原子であることが好ましく、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sbがより好ましく、(Mg、Al、Si、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Ru、Rh、Pd、Ag、In、SnおよびSbがさらに好ましく、Cu、Zn、Ga、Ge、In、SnおよびSbがよりさらに好ましい。
置換割合としては、例えば、0.5〜0.50モル%であり、さらには1〜30モル%であり、あるいは2〜20モル%である。
さらに、式(1)で表される組成からなるマンガン窒化物結晶のAに相当する原子の一部を置換する場合、置換後のマンガン窒化物の組成が、式(3)で表されることが好ましい。
式(3)
Mn3(A1-x3x3)N
(式(3)中、Aは、Mg、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、PbおよびBiから選択される少なくとも1種の原子からなり、Eは、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Ir、Pt、AuおよびBiから選択される少なくとも1種の原子からなり、0.005<x3<0.5である。)
式(3)中、Eは、例えば、Mg、Al、Si、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Ru、Rh、Pd、Ag、In、SnおよびSbが好ましく、Cu、Zn、Ga、Ge、In、SnおよびSbがより好ましく、Zn、Ga、In、SnおよびSbがさらに好ましい。
x3は、好ましくは0.01<x3<0.3であり、より好ましくは0.05<x2<0.2である。
また、AとEの原子の組み合わせとして、例えば、GaとSn、GaとIn、GaとZn、ZnとSb、GaとGeが挙げられる。
また、式(2)において、Aに相当する部分の一部および/またはMnの一部も置換されていてもよく、この場合、後述する条件で置換されていることが好ましい。
【0019】
式(1)で表される組成からなるマンガン窒化物結晶を構成するMnに相当する原子の一部を置換する場合、置換原子としては、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Ir、Pt、AuおよびBiの少なくとも1種の原子であることが好ましく、Ti、V、Cr、Fe、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Re、Ir、PtおよびAuがより好ましく、Fe、Ta、PtおよびAuがさらに好ましい。
置換割合としては、例えば、0.5〜20モル%であり、さらには、1〜12モル%であり、あるいは1.5〜10モル%であり、または2〜7モル%である。
さらに、式(1)で表される組成からなるマンガン窒化物結晶のMn原子の一部を置換する場合、置換後のマンガン窒化物の組成が、式(4)で表されることが好ましい。
式(4)
(Mn1-x4x43AN
(式(4)中、Aは、Mg、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、PbおよびBiから選択される少なくとも1種の原子からなり、Gは、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Ir、Pt、AuおよびBiから選択される少なくとも1種の原子からなり、0.005<x4<0.2である。)
式(4)中、Gは、例えば、Ti、V、Cr、Fe、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Re、Ir、PtおよびAuが好ましく、Fe、Ta、PtおよびAuがより好ましい。
x4は、好ましくは0.01<x4<0.12であり、より好ましくは0.015<x4<0.10であり、さらに好ましくは0.02<x4<0.07である。
また、式(4)において、Aに相当する部分の一部および/またはNの一部も置換されていてもよく、この場合、前述した条件で置換されていることが好ましい。
【0020】
ここで、本発明で採用するマンガン窒化物は、特に断らない限り、通常の結晶格子(特に、ペロフスカイト型のマンガン窒化物)において生じうる原子の欠陥や過剰がないものをもって記載しているが、この種の結晶格子において通常生じうる欠陥や過剰があっても、本発明の趣旨を逸脱しない限り、本発明の範囲内に含まれる趣旨である。すなわち、本発明における「組成からなる」とは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、他の成分を含んでいることを排除するものではない。
ここで、この種の結晶格子において通常生じうる欠陥や過剰は、合金の一般論に従う。例えば、窒素などの侵入元素は欠損しやすいことが知られており、このことは、西川精一・新版金属工学入門・アグネ技術センター(2001)など多数の文献に記載されている。すなわち、窒素などの侵入元素が欠損しているものも、本発明の効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれる。また、欠損した箇所に通常生じうる程度に他の元素が侵入している場合も、本発明の範囲に含まれる。また、合金の一般論として、Nの他、H、B、C、O等が侵入元素になり得ることは、西川精一・新版金属工学入門・アグネ技術センター(2001)はじめ、多くの文献に記載されている。よって、例えば、本発明で採用する式(1)で表される組成からなるマンガン窒化物は、Mn3ANで表されるが、該マンガン窒化物の窒素原子が、微量の炭素原子等で置換されているものも、本発明でいう式(1)で表される組成からなるマンガン窒化物に相当する。
【0021】
また、上記式(1)で表される組成からなるマンガン窒化物は、「逆ペロフスカイト」構造を持つ。これは代表的な合金であるCu3Au型合金の間隙(中心)に窒素が侵入したもので、侵入型規則合金の1種である。
逆ペロフスカイト結晶格子のモデルを下記に示す。
【化1】

ここで、中央部分には、通常は、窒素原子が入り、黒丸部分には、主として、式(1)のAが入り、白丸部分は、主としてMnが入る。本発明では、このような構造を有する式(1)で表される組成からなるマンガン窒化物結晶の原子の一部を他の少なくとも1種の原子で置換する。ここで、Mnサイト(白丸)とAサイト(黒丸)の選択性は完全でない。すなわち、Mn3ANで表記されるマンガン窒化物において、A原子の一部がMnサイトに入り、同量のMn原子がAサイトに入ることがあってもよい。
【0022】
式(1)で表される組成からなるマンガン窒化物は、立方晶系、および、立方晶系がわずかにひずんだもの(例えば、六方晶系、単斜晶系、斜方晶系、正方晶系、三方晶系等)のいずれであってもよいが、立方晶系が好ましい。
【0023】
ここで、式(1)で表される組成からなるマンガン窒化物結晶を構成する原子の一部を置換する方法としては、公知の方法を採用できる。好ましくは、目的とする組成、すなわち、式(1)で表される組成の一部を変更した後の組成を有するマンガン窒化物結晶を、通常の、一次相転移性を有するペロフスカイト型マンガン窒化物結晶の製造方法に従って製造することができる。
具体的には、原料材料を、焼成する方法により製造される。原料材料の組成を調整することにより、所望の組成を有するペロフスカイト型マンガン窒化物結晶を製造することができる。
ここで、原料材料としては、必要な組成を含んでおり、かつ、焼成により、所定の組成を有するマンガン窒化物結晶を形成するものであれば、特に定めるものではない。
より具体的には、Mn31NおよびMn32N(A1およびA2は、Mg、Al、Si、Scおよび周期表第4〜6周期の4〜15族原子のいずれかの原子等)を、適当な比率で混合した後、焼成して得ることができる。一例として、Mn3GaNとMn3ZnNを焼成して得る方法が挙げられる。また、これらと、Mg、Al、Si、Scおよび周期表第4〜6周期の4〜15族原子のいずれかの単体またはこれらの窒化物、炭化物、硼化物、とを焼成して得ることもできる。その他、Mn33C、Mn33Bを用いることもできる。また、マンガンの窒化物としては、Mn2Nの他、Mn4Nを原料材料とすることもできる。
さらに、金属Mn、Mn2N、Mn4Nのいずれかまたは混合物と原子(Mg、Al、Si、Scおよび周期表第4〜6周期の4〜15族原子等)または該原子の窒化物を原料とし、窒化雰囲気中(例えば窒素ガス1気圧)、500〜770℃で60〜70時間加熱・焼成して得ることもできる。
この他、Mn、上記A1、上記A2を3:(1−x):xのモル比で混合・撹拌した後、窒化雰囲気中(例えば窒素ガス1気圧)で500〜800℃、30〜80時間の加熱を行い、まず粉末を得て、次にそれを窒化雰囲気中(例えば窒素ガス1気圧)で800〜980℃、30〜80時間の加熱を行い、焼成することもできる。この際、出発原料の一部または全部を当該金属・単体の窒化物(例えば、Mn2N、Mn4N、Zn32など)としてもよい。
この他、Mn311-x2xNと単体X(XはB、C)を適当なモル比で混合・撹拌した後、石英管に真空封入し、800〜980℃、60〜80時間焼成することで、Mn311-x2x1-yyを得ることもできる。
【0024】
本発明において、焼成温度は、製造するマンガン窒化物結晶の組成に応じて、適宜定めることができるが、例えば、800℃以上であることが好ましく、830℃〜980℃であることがより好ましく、850℃〜950℃であることがさらに好ましい。特に、発明では、焼成温度を代えることによって、一次相転移温度を調整することができ好ましい。具体的には、800℃〜950℃の範囲で温度を変えることが好ましく、830℃〜920℃の範囲で温度を変えることがより好ましい。
また、焼成は、窒素分圧1気圧以下で行うことが好ましい。窒素気圧1気圧以下とするためには、石英管などに真空封入するほか、減圧して窒素分圧1気圧以下としてもよいし、アルゴンなどの不活性ガス存在下で、窒素分圧1気圧以下の条件を作製してもよい。窒素の替わりにアンモニアガスを使うこともできる。原料材料が窒素を多く含有する場合は、石英管封入に替えて、ガスによる窒素分圧調整が好ましい。
【0025】
また、本発明においては、上記技術を利用して、一次相転移性を有するペロフスカイト型マンガン窒化物結晶の一次相転移温度を調整することができる。すなわち、式(1)で表される組成からなるペロフスカイト型マンガン窒化物結晶において、その組成の一部を変更することにより、または、焼成温度を変えることにより、一次相転移性を維持したまま、その一次相転移温度を移動させることができる。従来から、一次相転移性を有する物質は知られていたが、化合物ごとに一次相転移温度は定まっていた。しかしながら、本発明によって、一次相転移性物質の一次相転移温度を広い範囲で移動させることが可能になったため、種々の用途に応じた利用が可能になる。
【0026】
本発明の温感素子は、所望する特定の温度において、体積を急激に変化させることができる。温感素子としては、熱スイッチやサーミスタに用いることができる。より具体的には、図11に示す通り、特定温度以上で体積が小さくなることを利用し、特定温度以上になると電気回路等を遮断できるような構造とすることができる。
このような熱スイッチ、サーミスタは、例えば、ある一定温度以上で自動的にヒーター電気回路を遮断し、機器の過熱を防止する目的で、温度調節器や調理器具、暖房器具等に広く利用されている。
【実施例】
【0027】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0028】
(1)マンガン窒化物結晶の作製
Mn31NおよびMn32N(A1およびA2は、それぞれ、Zn、Ga、In、Sn、Sb以下同じ)を、Mn2NおよびAがMn:A1またはA2=3:1のモル比になるよう秤量・撹拌した後、石英管に真空封入(〜10―3 torr)し、500〜770℃で60〜70時間加熱・焼成して得た。
そして、固溶系Mn311-x12x1Nは、上記の方法で作製したMn31NとMn32Nの粉末を目的のモル比(1−x):x1で混合・撹拌した後、錠剤型に押し固めて、真空封入もしくは窒素ガス1気圧の雰囲気で800〜980℃、60時間の加熱を行い、焼成して得た。
Mn3AX(AはZnまたはGa、 XはB)は、Mn、A、Xを、順に、3:1:1.05のモル比で、秤量・撹拌した後、石英管に真空封入(〜10×-3 torr)し、550〜850℃で80〜120時間加熱・焼成して得た。ここで、Xの比率が1.05であるのは、焼成中のX元素欠損を補うためである。得られたMn3AXを用い、下記組成となるよう、例えば、Mn311-x2x1-yyの場合、Mn31N、Mn32N、Mn31Bの粉末を(1−x−y): x: yのモル比で混合・撹拌した後、錠剤型に押し固めて、石英管に真空封入し、800〜980℃、60〜80時間加熱・焼成して、硼素置換体を得た。
(Mn1-xx3AN(MはFe、Ta、Pt、Au、AはZnまたはGa)は、原料をMn2N、単体M(もしくはMの窒化物)、単体A(もしくはAの窒化物)として、Mn:M:A=(3−x):3x:1のモル比となるよう秤量・撹拌した後、石英管に真空封入したものを650〜770℃で60〜70時間加熱してまず粉末試料を作製し、それを錠剤型に押し固めたものを真空封入もしくは窒素ガス1気圧の雰囲気で800〜980℃、60時間の加熱を行い、焼成して得た。
上記の試料作製において、原料は全て純度99.9%以上の粉末であった。原料粉などの撹拌は全て窒素ガス中で行った。なお、用いた窒素ガスはフィルター(日化精工、DC−A4およびGC−RX)により水分と酸素を除去した。作製した試料は粉末X線回折(デバイ・シェラー法)により評価し、単相、室温で立方晶であることを確認した。
(2)線熱膨張の測定
一次相転移物質の体積変化は、線熱膨張ΔL/L0で定量的に評価した。線熱膨張は基準温度での長さL0に対する、当該温度Tでの伸びΔL=L(T)−L0の比率で定義される。本出願で実施例において、基準温度は絶対温度300K(26.8℃)もしくは400K(126.8℃)に設定した。つまりL0=L(300K)もしくはL0=L(400K)である。基準温度は実施例縦軸に記載してある。
線熱膨張の測定には歪みゲージ(共和電業製、KFL−02−120−C1−11)を用いた。4×4×1mm3の板状に成形した焼成体試料に、接着剤(共和電業、PC−6)を用いて歪みゲージを貼り付けた。文書用ダブルクリップ(コクヨJ−35)で挟むことで荷重をかけた状態で、窒素ガス1気圧の雰囲気のもと、80℃で1時間、130℃で2時間、150℃で2時間維持した後、クリップをはずして、さらに窒素ガス1気圧の雰囲気のもと、150℃で2時間維持して、焼き付けを行った。歪みゲージの抵抗値Rは物理特性評価システム(カンタム・デザイン、PPMS6000)で測定した。参照試料として無酸素銅板(純度99.99%)を用い、その銅板に同様の方法で焼き付けた歪みゲージの抵抗歪み値ΔR/R(300K)もしくはΔR/R(400K)をまず測定した。次にCuについての線熱膨張の文献値(G. K. White and J. G. Collins, J. Low Temp. Phys. 7, 43 (1972)、G. K. White, J. Phys. D: Appl. Phys. 6, 2070 (1973) )から、試料に焼き付けた歪みゲージの抵抗歪み値から差し引くべき補正値を算出した。それを用いて試料の線熱膨張ΔL/L(300K)もしくはΔL/L(400K)を求めた。
【0029】
以下の表に、本実施例において測定したマンガン窒化物の組成、一次相転移温度、図の番号を示す。
【0030】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明では、一次相転移性物質を用いた温感素子を提供することが可能になった。これまで熱スイッチ、サーミスタは検温部と動作部が別構造になっているものが主流であるが、温度によって体積が変化する一次相転移性を有する物質を用いた熱スイッチやサーミスタは、両者が一つになっており、物質固有の性質を用いて動作している。そのため、小型に作製できる、誤動作が少ない、といった利点があり、高い利用価値がある。また、図11に示すようなサーミスタを構築した場合、高抵抗温度域は力学的に非接触となるため電気抵抗は無限に大きくなり、電気的遮断の信頼性が高まるという利点がある。
【0032】
さらに、本発明を採用することにより、物質の一次相転移温度を調整することが可能になった。特に、本発明では、本来的に一次相転移性を有する物質の、一次相転移性を維持したまま、一次相転移温度を変化させることができるため、上記のような温感素子の各種用途に応じて、適宜、温感温度を調節できる。その結果、従来に比較して著しく多くの温感温度に採用することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、実施例1で作製したマンガン窒化物結晶の一次相転移温度の変化を示す。
【図2】図2は、実施例2で作製したマンガン窒化物結晶の一次相転移温度の変化を示す。
【図3】図3は、実施例3で作製したマンガン窒化物結晶の一次相転移温度の変化を示す。
【図4】図4は、実施例4で作製したマンガン窒化物結晶の一次相転移温度の変化を示す。
【図5】図5は、実施例5で作製したマンガン窒化物結晶の一次相転移温度の変化を示す。
【図6】図6は、実施例6で作製したマンガン窒化物結晶の一次相転移温度の変化を示す。
【図7】図7は、実施例7で作製したマンガン窒化物結晶の一次相転移温度の変化を示す。
【図8】図8は、実施例8で作製したマンガン窒化物結晶の一次相転移温度の変化を示す。
【図9】図9は、実施例9で作製したマンガン窒化物結晶の一次相転移温度の変化を示す。
【図10】図10は、実施例10で作製したマンガン窒化物結晶の一次相転移温度の変化を示す。
【図11】図11は、本発明のサーミスタの一例を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度によって体積が変化する一次相転移性を有する物質を用いた温感素子。
【請求項2】
一次相転移性を有する物質が、ペロフスカイト型マンガン窒化物結晶である請求項1に記載の温感素子。
【請求項3】
前記一次相転移性を示す物質が、3℃以下の温度幅で、線熱膨張が2×10-3以上変化する、請求項1または2に記載の温感素子。
【請求項4】
前記一次相転移を示す物質が、800℃以上で、焼成されてなるペロフスカイト型マンガン窒化物結晶である請求項1〜3のいずれか1項に記載の温感素子。
【請求項5】
前記一次相転移性を示す物質が、下記式(1)で表される組成からなるペロフスカイト型マンガン窒化物結晶の該式(1)で表される組成の一部を変更してなるペロフスカイト型マンガン窒化物結晶である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の温感素子。
式(1)
Mn3AN
(式(1)中、Aは、Mg、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、PbおよびBiから選択される少なくとも1種の原子からなる。)
【請求項6】
前記一次相転移性を示す物質が、前記式(1)で表される組成からなるペロフスカイト型マンガン窒化物結晶を構成する原子の0.5〜50%が、他の少なくとも1種の原子で置換されているペロフスカイト型マンガン窒化物結晶である、請求項5に記載の温感素子。
【請求項7】
前記一次相転移性を示す物質が、前記式(1)で表される組成からなるペロフスカイト型マンガン窒化物結晶を構成する窒素原子の一部が、H原子、B原子、C原子およびO原子の少なくとも1種の原子で置換されているペロフスカイト型マンガン窒化物結晶である、請求項5または6に記載の温感素子。
【請求項8】
前記一次相転移性を示す物質が、前記式(1)で表される組成からなるペロフスカイト型マンガン窒化物結晶を構成する式(1)のAに相当する原子の一部が、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Ir、Pt、AuおよびBiから選択される少なくとも1種の原子で置換されているペロフスカイト型マンガン窒化物結晶である、請求項5〜7のいずれか1項に記載の温感素子。
【請求項9】
前記一次相転移性を示す物質が、前記式(1)で表される組成からなるペロフスカイト型マンガン窒化物結晶を構成するMn原子の一部が、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Ir、Pt、AuおよびBiの少なくとも1種の原子で置換されているペロフスカイト型マンガン窒化物結晶である、請求項5〜8のいずれか1項に記載の温感素子。
【請求項10】
前記式(1)で表される組成からなるペロフスカイト型マンガン窒化物結晶が一次相転移性を有する、請求項5〜9のいずれか1項に記載の温感素子。
【請求項11】
前記一次相転移性を示す物質が、式(2)で表される組成からなるマンガン窒化物結晶である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の温感素子。
式(2)
Mn3A(N1-x2x2
(式(2)中、Aは、Mg、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、PbおよびBiから選択される少なくとも1種の原子からなり、Dは、H、B、CおよびOから選択される少なくとも1種の原子からなり、0.005<x2<0.2である。)
【請求項12】
前記一次相転移性を示す物質が、式(3)で表される組成からなるマンガン窒化物結晶である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の温感素子。
式(3)
Mn3(A1-x3x3)N
(式(3)中、Aは、Mg、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、PbおよびBiから選択される少なくとも1種の原子からなり、Eは、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Ir、Pt、AuおよびBiから選択される少なくとも1種の原子からなり、0.005<x3<0.5である。)
【請求項13】
前記一次相転移性を示す物質が、式(4)で表される組成からなるマンガン窒化物結晶である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の温感素子。
式(4)
(Mn1-x4x43AN
(式(4)中、Aは、Mg、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、PbおよびBiから選択される少なくとも1種の原子からなり、Gは、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Ir、Pt、AuおよびBiから選択される少なくとも1種の原子からなり、0.005<x4<0.2である。)
【請求項14】
前記温感素子が、熱スイッチである、請求項1〜13のいずれか1項に記載の温感素子。
【請求項15】
前記温感素子が、サーミスタである、請求項1〜13のいずれか1項に記載の温感素子。
【請求項16】
下記式(1)で表される組成からなるペロフスカイト型マンガン窒化物結晶を800℃以上で焼成して、一次相転移性を有するペロフスカイト型マンガン窒化物結晶とすることを含む、温感素子の製造方法。
式(1)
Mn3AN
(式(1)中、Aは、Mg、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、PbおよびBiから選択される少なくとも1種の原子からなる。)
【請求項17】
下記式(1)で表される組成からなるペロフスカイト型マンガン窒化物結晶の該式(1)で表される組成の一部を変更して一次相転移性を有するペロフスカイト型マンガン窒化物結晶とすることを含む、温感素子の製造方法。
式(1)
Mn3AN
(式(1)中、Aは、Mg、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、PbおよびBiから選択される少なくとも1種の原子からなる。)
【請求項18】
前記式(1)で表される組成からなるペロフスカイト型マンガン窒化物結晶を800℃以上で焼成することを含む、請求項17に記載の温感素子の製造方法。
【請求項19】
前記式(1)で表される組成からなるペロフスカイト型マンガン窒化物結晶を構成する原子の0.5〜50%を、他の少なくとも1種の原子で置換することを含む、請求項16〜18のいずれか1項に記載の温感素子の製造方法。
【請求項20】
前記式(1)で表される組成からなるペロフスカイト型マンガン窒化物結晶を構成する窒素原子の一部を、H原子、B原子、C原子およびO原子の少なくとも1種の原子で置換することを含む、請求項16〜19のいずれか1項に記載の温感素子の製造方法。
【請求項21】
前記式(1)で表される組成からなるペロフスカイト型マンガン窒化物結晶を構成する式(1)のAに相当する原子の一部を、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Ir、Pt、AuおよびBiから選択される少なくとも1種の原子で置換することを含む、請求項16〜20のいずれか1項に記載の温感素子の製造方法。
【請求項22】
前記式(1)で表される組成からなるペロフスカイト型マンガン窒化物結晶を構成するMn原子の一部を、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Ir、Pt、AuおよびBiの少なくとも1種の原子で置換することを含む、請求項16〜21のいずれか1項に記載の温感素子の製造方法。
【請求項23】
前記式(1)で表される組成からなるペロフスカイト型マンガン窒化物結晶を構成する原子の一部を置換して、式(2)で表される組成からなるマンガン窒化物結晶とすることを含む、請求項16〜19のいずれか1項に記載の温感素子の製造方法。
式(2)
Mn3A(N1-x2x2
(式(2)中、Aは、Mg、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、PbおよびBiから選択される少なくとも1種の原子からなり、Dは、H、B、CおよびOから選択される少なくとも1種の原子からなり、0.005<x2<0.2である。)
【請求項24】
前記式(1)で表される組成からなるペロフスカイト型マンガン窒化物結晶を構成する原子の一部を置換して、式(3)で表される組成からなるマンガン窒化物結晶とすることを含む、請求項16〜19のいずれか1項に記載の温感素子の製造方法。
式(3)
Mn3(A1-x3x3)N
(式(3)中、Aは、Mg、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、PbおよびBiから選択される少なくとも1種の原子からなり、Eは、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Ir、Pt、AuおよびBiから選択される少なくとも1種の原子からなり、0.005<x3<0.5である。)
【請求項25】
前記式(1)で表される組成からなるペロフスカイト型マンガン窒化物結晶を構成する原子の一部を置換して、式(4)で表される組成からなるマンガン窒化物結晶とすることを含む、請求項16〜19のいずれか1項に記載の温感素子の製造方法。
式(4)
(Mn1-x4x43AN
(式(4)中、Aは、Mg、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、PbおよびBiから選択される少なくとも1種の原子からなり、Gは、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Ir、Pt、AuおよびBiから選択される少なくとも1種の原子からなり、0.005<x4<0.2である。)
【請求項26】
前記式(1)で表される組成からなるペロフスカイト型マンガン窒化物結晶が一次相転移性を示す、請求項16〜25のいずれか1項に記載の温感素子の製造方法。
【請求項27】
下記式(1)で表される組成からなり一次相転移性を有するペロフスカイト型マンガン窒化物結晶の焼成温度を変えることを含む、一次相転移性を有するペロフスカイト型マンガン窒化物結晶の一次相転移温度の調整方法。
式(1)
Mn3AN
(式(1)中、Aは、Mg、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、PbおよびBiから選択される少なくとも1種の原子からなる。)
【請求項28】
下記式(1)で表される組成からなり一次相転移性を有するペロフスカイト型マンガン窒化物結晶の該式(1)で表される組成の一部を変更することを含む、一次相転移性を有するペロフスカイト型マンガン窒化物結晶の一次相転移温度の調整方法。
式(1)
Mn3AN
(式(1)中、Aは、Mg、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、PbおよびBiから選択される少なくとも1種の原子からなる。)
【請求項29】
前記式(1)で表される組成からなり一次相転移性を有するペロフスカイト型マンガン窒化物結晶の焼成温度を代えることを含む、請求項28に記載の調整方法。
【請求項30】
前記式(1)で表される組成からなり一次相転移性を有するペロフスカイト型マンガン窒化物結晶を構成する原子の0.5〜50%を、他の少なくとも1種の原子で置換することを含む、請求項27〜29のいずれか1項に記載の調整方法。
【請求項31】
前記式(1)で表される組成からなり一次相転移性を有するペロフスカイト型マンガン窒化物結晶を構成する窒素原子の一部を、H原子、B原子、C原子およびO原子の少なくとも1種の原子で置換することを含む、請求項27〜30のいずれか1項に記載の調整方法。
【請求項32】
前記式(1)で表される組成からなり一次相転移性を有するペロフスカイト型マンガン窒化物結晶を構成する式(1)のAに相当する原子の一部を、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Ir、Pt、AuおよびBiから選択される少なくとも1種の原子で置換することを含む、請求項27〜31のいずれか1項に記載の調整方法。
【請求項33】
前記式(1)で表される組成からなり一次相転移性を有するペロフスカイト型マンガン窒化物結晶を構成するMn原子の一部を、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Ir、Pt、AuおよびBiの少なくとも1種の原子で置換することを含む、請求項27〜32のいずれか1項に記載の調整方法。
【請求項34】
前記式(1)で表される組成からなり一次相転移性を有するペロフスカイト型マンガン窒化物結晶は、式(2)で表される組成からなるマンガン窒化物結晶である、請求項27〜30のいずれか1項に記載の調整方法。
式(2)
Mn3A(N1-x2x2
(式(2)中、Aは、Mg、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、PbおよびBiから選択される少なくとも1種の原子からなり、Dは、H、B、CおよびOから選択される少なくとも1種の原子からなり、0.005<x2<0.2である。)
【請求項35】
前記式(1)で表される組成からなり一次相転移性を有するペロフスカイト型マンガン窒化物結晶は、式(3)で表される組成からなるマンガン窒化物結晶である、請求項27〜30のいずれか1項に記載の調整方法。
式(3)
Mn3(A1-x3x3)N
(式(3)中、Aは、Mg、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、PbおよびBiから選択される少なくとも1種の原子からなり、Eは、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Ir、Pt、AuおよびBiから選択される少なくとも1種の原子からなり、0.005<x3<0.5である。)
【請求項36】
前記式(1)で表される組成からなり一次相転移性を有するペロフスカイト型マンガン窒化物結晶は、式(4)で表される組成からなるマンガン窒化物結晶である、請求項27〜30のいずれか1項に記載の調整方法。
式(4)
(Mn1-x4x43AN
(式(4)中、Aは、Mg、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、PbおよびBiから選択される少なくとも1種の原子からなり、Gは、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Ir、Pt、AuおよびBiから選択される少なくとも1種の原子からなり、0.005<x4<0.2である。)
【請求項37】
前記マンガン窒化物結晶の一次相転移性を示す温度を、5℃以上移動させることを含む、請求項27〜36のいずれか1項に記載の調整方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2008−292402(P2008−292402A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−140479(P2007−140479)
【出願日】平成19年5月28日(2007.5.28)
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【Fターム(参考)】