説明

温水暖房機

【課題】新築工事用、既築工事用の両方の工事に対応でき、かつ、従来の暖房配管、熱動弁および床暖房パネルを使用できることで、施工性を向上させた温水暖房機を提供すること。
【解決手段】熱媒を加熱する熱源機26と、前記熱源機26と暖房端末25とを接続した循環配管27を介して前記熱媒を循環させる循環ポンプ8と、前記熱媒の循環流路中で前記熱源機26に配設された複数の熱動弁10と、制御部23と、リモコン24とを備え、前記リモコン24で前記熱動弁10を使用するか否かを選択する構成としたことを特徴とする温水暖房機で、新築工事用、既築工事用の両方の工事に対応でき、かつ、従来の床暖房パネル等を使用できることで、施工性を向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱源機を用いて生成した温水を循環ポンプで暖房端末に循環し、暖房を行う温水暖房機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の温水暖房機では、機器本体内に熱動弁を内蔵する構成の方が施工しやすく、制御しやすいことで一般的となっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−121763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の温水暖房機の構成では、本体の買い替え時は、各暖房端末に設けられた熱動弁および暖房配管、床暖房コントローラーおよびE−con端子と接続する連絡線などの、設備を更新しなければならず、施工性が悪いという課題を有していた。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、新築工事用、既築工事用の両方の工事に対応でき、かつ、従来の暖房配管、熱動弁および床暖房パネルを使用できることで、施工性を向上させた温水暖房機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明の温水暖房機は、熱媒を加熱する熱源機と、前記熱源機と暖房端末とを接続した循環配管を介して前記熱媒を循環させる循環ポンプと、前記熱媒の循環流路中で前記熱源機に配設された複数の熱動弁と、制御部と、リモコンとを備え、前記リモコンで前記熱動弁を使用するか否かを選択する構成としたことを特徴とするものである。
【0007】
これにより、新築工事用、既築工事用の両方の工事に対応でき、かつ、従来の暖房配管、熱動弁および床暖房パネルを使用でき、施工性を向上させた温水暖房機を提供できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、新築工事用、既築工事用の両方の工事に対応でき、かつ、従来の暖房配管、熱動弁および床暖房パネルを使用できることで、施工性を向上させた温水暖房機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1における温水暖房機の回路構成図
【図2】同実施の形態1における温水暖房機の配管口構成図
【図3】同実施の形態1における試運転ナビの制御フローチャート
【図4】同実施の形態1における試運転時の内蔵熱動弁設定のリモコン表示図
【図5】同実施の形態1における温水暖房機の他の配管口構成図
【図6】同実施の形態1における循環液設定のリモコン表示図
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1の発明は、熱媒を加熱する熱源機と、前記熱源機と暖房端末とを接続した循環配管
を介して前記熱媒を循環させる循環ポンプと、前記熱媒の循環流路中で前記熱源機に配設された複数の熱動弁と、制御部と、リモコンとを備え、前記リモコンで前記熱動弁を使用するか否かを選択する構成としたことを特徴とする温水暖房機である。
【0011】
これにより、新築工事用、既築工事用の機種を分けることなく両方の工事に対応でき、かつ従来の暖房配管、熱動弁および床暖房コントローラーを使用でき、施工性を向上させた温水暖房機を提供できる。
【0012】
第2の発明は、前記リモコンで前記熱動弁の使用否を選択した場合には、前記複数の熱動弁を同時に開閉するように制御することを特徴とするもので、従来の暖房配管、熱動弁および床暖房パネルをそのまま使用することができる。
【0013】
第3の発明は、前記リモコンで循環する熱媒の種類を選択する構成としたことを特徴とするもので、前記1系統のバイパス回路の開閉条件として、使用する循環液が「水道水」か「不凍液」かを、選択可能な項目を設け、「水道水」を選択した場合、かつ、熱動弁設定が「内蔵熱動弁を使用しない」を選択された場合、外気温が凍結の恐れのある温度まで低下したときに、バイパス回路が接続された熱動弁を開閉制御し、循環ポンプを起動させ、本体の凍結を防止する構成として、不凍液を使用する必要がない。
【0014】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における温水暖房機の外観図である。まず、図1を用いて本実施の形態における温水暖房機の構成を説明する。本実施の形態の温水暖房機は、ヒートポンプを加熱源とするヒートポンプ式温水暖房機である。図において右側が冷媒回路、左側が水回路になっており、その中間に位置する水冷媒熱交換器1で、冷媒回路で温められた冷媒と水とが熱交換される。
【0015】
冷媒回路側の構成は、冷媒を圧縮して高温冷媒を吐出する圧縮機2と、水と高温冷媒とを熱交換して温水を生成する水冷媒熱交換器1と、配管内を流れる冷媒の量を調整するための膨張弁3と、空気と冷媒とで熱交換を行う空気熱交換器4と、空気熱交換器に空気の流通を起こす送風機5とを備えている。
【0016】
そして、圧縮機2、水冷媒熱交換器1、膨張弁3、空気熱交換器4を冷媒配管で環状に接続して冷媒回路を構成している。なお、水冷媒熱交換器1の形態としては、プレート式や二重管方式のいずれの形態であっても問題はない。
【0017】
一方、水回路側の構成は、床暖房パネル等の暖房端末25から戻ってきた温水を戻りヘッダ6で受け、そのお湯を水タンク7に貯めて空気を追い出した後、循環ポンプ8で下流に送り出す。
【0018】
下流には、水冷媒熱交換器1が配置されており、そこを通過する間に再加熱されたのち、往きヘッダ9を通って機外に送り出され、暖房端末25に送られる。なお、本実施の形態では、暖房配管を4系統に分けることが出来るよう、戻りヘッダ6および往きヘッダ9は4系統用のものを採用している。
【0019】
そして、加熱源である前記冷媒回路、熱動弁10a〜10d、戻りヘッダ6、往きヘッダ9は、熱源機26に配設されており、前記熱源機26と前記暖房端末25とは、循環配管27を介して接続されている。
【0020】
また、往きヘッダ9には、4系統それぞれの開閉が単独で行えるよう、熱動弁10a〜10dが備えられてある。さらに、湯温をコントロールするため、入水温度センサ11お
よび出湯温度センサ12が水冷媒熱交換器1の上流と下流にそれぞれ配置されている。また、水タンク7の水位を検出するために、水電極13が水タンク7内に設けられ、必要なときに電圧が印加されて、水の減少を検出するようになっている。
【0021】
図1において20は水電極13に接続され、水タンク7内の水の有無を検出する水電極判定回路、21は循環ポンプ8を駆動する循環ポンプ駆動回路で、本実施の形態では直流ポンプを採用し、回転数制御を行っている。22はこの循環ポンプ8の回転数を検出する循環ポンプ回転検出回路、23はこれらの情報を受けて、全体の運転制御を行う制御部、24は制御部23に接続され、制御を行うリモコンである。
【0022】
以上のように構成されたヒートポンプ式温水暖房機において、以下、ヒートポンプ式温水暖房機の動作について説明する。
【0023】
使用者は暖房を開始したいとき、リモコン24の「暖房切/入」SWを操作すると、LEDが点灯するとともに、液晶表示部に表示が現れて、暖房運転が開始する。この情報はリモコン24から制御部23に伝えられ、まず、熱動弁10の4回路のうち、事前に設定された回路に相当する熱動弁10が通電され、回路が開く。この例の場合は、「居間」エリアの床暖房の運転が指示されていて、それに対応する熱動弁が開くことになる。
【0024】
しばらくして、制御部23から循環ポンプ駆動回路21を介して循環ポンプ8に決められた回転数を目指して駆動信号が与えられ、水回路の中で循環が開始される。その後、循環ポンプ回転検出回路22を介して回転数のデータが制御部23にフィードバックされ、そのデータを見て、制御部23は、循環ポンプ駆動回路21から与える駆動信号を変化させて目標の回転数を維持する。
【0025】
さらに運転開始から約3分後に圧縮機2、送風機5、膨張弁3が運転を開始し、冷媒回路で集熱がはじまる。そして、水冷媒熱交換器1で冷媒回路と水回路の間の熱交換が行われ、水が加熱されてお湯となり、往きヘッダ9を通って居間に敷かれた床暖房に供給され、床暖房パネル表面が昇温する。表面温度は、リモコン24の「温調」の設定を変更することで設定でき、この例の場合、ボタンを操作することで、「高」から「低」まで10段階の調節ができる。
【0026】
本実施の形態では、「5」の設定にされており、供給される湯温は約40℃、床暖房パネルの表面温度は約28℃である。また、水タンク7内の水量は、製品設置当初は上限にあたるフィルター17の下面位置まで入れていただくよう、工事説明書や取扱説明書に記載して説明している。従って、この状態では水電極13は充分に水に浸漬した状態にあるので、水電極鑑定回路20は「水あり」を検出し、暖房運転は継続される。
【0027】
なお、暖房運転中は、循環水の温度が上がるため、体積も膨張する。膨張した分は、水タンク7内の水位の上昇となってあらわれ、タンク内の空気の体積が減少する。そしてその分の空気は、キャップ16のスキマからタンクの外に押し出される。
【0028】
図2は温水暖房機の熱源機26の外観図で、基本的な構成は、エアコンの室外機をベースに構成しており、それに、エアコンにはない水タンク7と循環ポンプ8を背面ボックス14に収めて追加している。
【0029】
また、熱動弁10a〜10dを内蔵した往きヘッダ9と戻りヘッダ6を左側面の接続ボックス15に収納している。製品の設置時に工事業者は、この往きヘッダ9と戻りヘッダ6にそれぞれ必要な暖房端末25に接続された暖房配管を接続する。
【0030】
既存の床暖房パネルおよび暖房配管、熱動弁、床暖房コントローラー、E−con端子連絡線は、基本的に建物を建てるときに床下などに配管、配線を通しているため、撤去することが難しく、ましてや新規の配管を接続することは、大掛かりな工事となる。従来の置き換えとして使用するには、従来までは新規製品の熱動弁を使用しない機器が必要であった。
【0031】
既存の配管をそのまま使用する方法を、図1、図2に基づいて説明する。まず、内蔵の熱動弁10a〜10dの出口部を1本の配管で集約し、合わせて戻りヘッダ6の入口も1本に集約することで、既存の配管とそのまま接続することができる。あわせてE−con端子も対応できる端末も備えておくことで、従来構成の設備をそのまま使用できる。
【0032】
この場合、暖房運転中は熱動弁10a〜10dを常に「開」にしておく必要がるが、それを選択するには、試運転時に熱動弁10a〜10dを個別に制御するのか、連動して制御するのか選択する必要がある。
【0033】
図3は、通常運転を行う前の試運転制御ブロック図を示している。試運転時にまず、リモコンに名前を付けるリモコン登録30を行い、複数のリモコン24を取り付けた場合でも各リモコン24を認識できるようにする。
【0034】
次に、内蔵熱動弁設定31を設け、内蔵熱動弁を「使用する」、「使用しない」の選択を行う。その時のリモコン24の表示を図4に示す。「使用する」を選択した場合は、通常動作いわゆるリモコン24の運転に合わせて、別に熱動弁10a〜10dを制御する。
【0035】
個別に制御するための設定を行うのが暖房エリア設定32であり、リモコン24のエリアごとに開閉する熱動弁を割りつける。
【0036】
内蔵熱動弁を「使用しない」を選択したときは、熱動弁を個別に運転せずに「暖房切/入」SWが「入」のとき、かつ、既設の床暖房コントローラーが「入」、E−con端子連絡線が「入」に連動して、熱動弁10a〜10dを同時に開閉するように制御する。
【0037】
各系統の配管は1本に集約して1系統することで、石油ボイラーなど1系統で暖房循環する機器からの置き換えの対応が可能となる。この場合、図3に記載の暖房エリア設定32は必要ないため、循環液設定33に遷移する。
【0038】
また、図5に示すように、熱動弁10a〜10c出口を1本に集約して1系統とする。熱動弁10d出口は、戻りヘッダ6に接続してバイパス回路とする。このとき専用部材として設けておくことで施工が容易となる。
【0039】
熱動弁10a〜10cは、本実施の形態を同じく内蔵熱動弁を「使用しない」を選択したときは、熱動弁を個別に運転せずに「暖房切/入」SWが「入」のとき、かつ、既設の床暖房コントローラーが「入」、E−con端子連絡線が「入」に連動して熱動弁を開閉するように制御する。
【0040】
次に循環液設定33において、図6に示すように「水道水」と「防錆循環液(不凍液)」とを選択する表示を設けている。外気温が0℃以下の凍結の恐れがある場合、本実施の形態の場合、外気温センサが3℃以下、かつ、入水温度センサ11または出湯温度センサ12が3℃以下の場合、外気温センサ暖房運転「入」「切」にかかわらず、熱動弁10dを「開」にして、1分後、循環ポンプ8を駆動させる。
【0041】
4分間循環させた後、入水温度センサ11が5℃以上であれば循環ポンプ8を停止させ
る。20分後同じ動作を繰り返し、4分後入水温度センサ11が5℃未満の場合、圧縮機2を駆動させて循環水の温度を上げる制御をおこなっている。
【0042】
このとき、循環液に防錆循環液を使用している場合循環液設定33において「防錆循環液(不凍液)」を選択した場合、防錆循環液は−20℃までは凍結の恐れがないため、熱動弁10dは「閉」のまま制御を行わない。
【0043】
上記の設定を行うことで、通常は外付けの熱動弁を使用する場合は、外気温度が低い地域は防錆循環液(不凍液)を使用するのが基本であるが、バイパス回路を設け熱動弁10dを「開」にして凍結予防運転を行なうことで、既設の外付けの熱動弁が「閉」状態であっても、機器本体の凍結を防止することができる。
【0044】
その他、時刻設定34と空気抜きを行なうための給水運転35、本体の運転を確認する試運転36を順に行う。
【0045】
また、図3の設定を、試運転時に試運転ナビとして電源投入時にリモコン登録30から試運転36までの設定を完了しなければ、通常の運転状態にならないように制御する。また設定途中で設定を間違えたり、設定が適切に行われなかったりした場合は、試運転ナビを完了しない。
【0046】
試運転ナビを完了する前に電源リセットすると先頭のリモコン登録30に戻り、再度試運転を行なうように導く。以上の試運転ナビ設定により、配管条件、循環液の条件を試運転時に選択して適切な設定を確実に行って、通常運転を行なうことができ、施工上の不具合による不良を低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上のように、本発明にかかる温水暖房機は、新築工事用、既築工事用の両方の工事に対応できるため、温水回路を有した給湯機、暖房機器に適用できる。
【符号の説明】
【0048】
1 水冷媒熱交換器
2 圧縮機
3 膨張弁
4 空気熱交換器
5 送風機
6 戻りヘッダ
7 水タンク
8 循環ポンプ
9 往きヘッダ
10a〜10d 熱動弁
23 制御部
24 リモコン
25 暖房端末
26 熱源機
27 循環配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒を加熱する熱源機と、前記熱源機と暖房端末とを接続した循環配管を介して前記熱媒を循環させる循環ポンプと、前記熱媒の循環流路中で前記熱源機に配設された複数の熱動弁と、制御部と、リモコンとを備え、前記リモコンで前記熱動弁を使用するか否かを選択する構成としたことを特徴とする温水暖房機。
【請求項2】
前記リモコンで前記熱動弁の使用否を選択した場合には、前記複数の熱動弁を同時に開閉するように制御することを特徴とする請求項1に記載の温水暖房機。
【請求項3】
前記リモコンで循環する熱媒の種類を選択する構成としたことを特徴とする請求項1または2に記載の温水暖房機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−88076(P2013−88076A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230509(P2011−230509)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】