説明

測位用信号受信装置

【課題】安価な移動体検出機能を備えた測位用信号受信装置を提供する。
【解決手段】測位用信号受信装置10において、測位用アンテナ12は、測位用衛星からの測位用信号を受信する。局部発振器26は、局部発振信号を生成する。検出用アンテナ34は、局部発振信号を放射するとともに、放射された局部発振信号の反射信号を受信する。ミキサ回路16は、入力された信号と局部発振信号とを混合することにより中間周波信号を生成する。測位用アンテナ電源制御部44、スイッチ制御部46は、ミキサ回路16へ入力される信号を、測位用信号と反射信号とで切り替える。位置算出部48は、ミキサ回路16に測位用信号が入力されたときに出力される中間周波信号に基づいて、測位用信号受信装置10の位置を求める。移動体検出部50は、ミキサ回路16に反射信号が入力されたときに出力される中間周波信号に基づいて、測位用信号受信装置10付近の移動体を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛星からの測位用信号を受信し、位置を検出する測位用信号受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、GPS(Global Positioning System)を利用した、測位用信号受信装置が知られている(例えば、特許文献1)。このような測位用信号受信装置は、車両に搭載されるカーナビゲーションシステムに多く利用されている。
【特許文献1】特開2002−243831号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年、主に盗難防止を目的として、マイクロ波、赤外線、超音波などを用いた移動体検出装置が車両に設けられるようになってきている。カーナビゲーションシステムに加えてこれらの移動体検出装置を車両に設けると、コスト高となる。
【0004】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、測位用信号受信装置に移動体検出機能を安価にもたせることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の測位用信号受信装置は、測位用衛星から発信された測位用信号を受信する測位用アンテナと、所定の周波数の局部発振信号を生成する局部発振器と、局部発振信号を放射するとともに、放射された局部発振信号の反射信号を受信する検出用アンテナと、入力された信号と局部発振信号とを混合することにより中間周波信号を生成するミキサ回路と、ミキサ回路へ入力される信号を、測位用信号と反射信号とで切り替える切替手段と、ミキサ回路に測位用信号が入力されたときに出力される第1中間周波信号に基づいて、当該測位用信号受信装置の位置を求める位置算出手段と、ミキサ回路に反射信号が入力されたときに出力される第2中間周波信号に基づいて、当該測位用信号受信装置付近の移動体を検出する移動体検出手段と、を備える。
【0006】
この態様によると、測位に用いる回路と、移動体検出に用いる回路とで、局部発振器とミキサ回路を、共通化することができる。その結果、別々に局部発振器とミキサ回路を設ける必要がなくなるので、部品点数が減り、安価な移動体検出機能を備えた測位用信号受信装置を実現できる。また、装置の小型化も実現できる。
【0007】
切替手段は、測位用アンテナに供給される電源を制御する測位用アンテナ電源制御部と、局部発振器と検出用アンテナとの間に設けられたスイッチを制御するスイッチ制御部と、を備えてもよい。
【0008】
移動体検出手段が移動体を検出した場合に、音および/または光を発する警告手段をさらに備えてもよい。この場合、測位用信号受信装置を例えば盗難防止装置としても使用できる。
【0009】
切替手段は、移動体検出手段が移動体を検出した場合に、ミキサ回路へ入力される信号を測位用信号に切り替えてもよい。この場合、例えば無線装置と連動して、盗難車の追跡に利用できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、測位用信号受信装置に移動体検出機能を安価にもたせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本実施の形態に係る測位用信号受信装置10を示す機能ブロック図である。この測位用信号受信装置10は、測位衛星の発信する1575.42MHzの測位用信号を受信し、測位用信号受信装置10の現在位置を検出することができるとともに、測位用信号受信装置10の周辺に位置する人や物の移動を検出することができる。
【0012】
図1に示すように測位用信号受信装置10は、測位用アンテナ12と、RFアンプ14と、ミキサ回路16と、IFアンプ18と、リミッタアンプ20と、基準クロック発振器24と、局部発振器26と、Nチャネル復調器22と、スイッチ28と、減衰器30と、低周波アンプ32と、検出用アンテナ34と、制御部36と、を備える。
【0013】
制御部36は、測位用アンテナ電源制御部44と、スイッチ制御部46と、位置算出部48と、移動体検出部50と、を備える。なお、ここに示す各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックとして描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。制御部36には、操作表示部38、警告部42が接続される。
【0014】
測位用アンテナ12は、測位衛星から発信された測位用信号を受信する機能を有する。測位用アンテナ12は、マイクロストリップ円偏波アンテナであってよい。測位衛星から発信される測位用信号の電波を仰角5°以上の範囲より受信するため、測位用アンテナ12の指向特性は略半球面状、すなわち無指向性であることが好ましい。測位用アンテナ12は、RFアンプ14に接続される。
【0015】
本実施の形態に係る測位用信号受信装置10は、測位用アンテナ12に供給される電源のオン/オフを制御する測位用アンテナ電源制御部44を制御部36に有する。測位用アンテナ電源制御部44によって測位用アンテナ12に供給される電源がオフに制御された場合、測位用アンテナ12からミキサ回路16に出力される測位用信号Sは遮断される。また、測位用アンテナ電源制御部44によって測位用アンテナ12に供給される電源がオンに制御された場合、測位用アンテナ12からRFアンプ14に測位用信号Sが出力される。
【0016】
RFアンプ14は、測位用アンテナ12で受信された測位用信号Sを所定の電圧に増幅する。RFアンプ14は、ミキサ回路16に接続される。測位用信号Sは、RFアンプ14で増幅され、ミキサ回路16に入力される。
【0017】
局部発振器26は、基準クロック発振器24の発振周波数fを逓倍することにより、周波数fの局部発振信号を生成する機能を有する。局部発振器26は、位相比較器、低域フィルタ、分周器、VCOを有する。局部発振信号は、基準クロック発振器24に同期している。局部発振器26は、ミキサ回路16に接続される。
【0018】
ミキサ回路16は、入力された信号と局部発振信号とを混合することにより中間周波信号IFを生成する。ミキサ回路16に入力される信号は、後述するように、測位用信号Sと、検出用アンテナ34からの反射信号とが、制御部36の測位用アンテナ電源制御部44、スイッチ制御部46によって切り替えられて入力される。
【0019】
図1に示すように、ミキサ回路16は、IFアンプ18に接続される。また、ミキサ回路16は、低周波アンプ32にも接続されている。ミキサ回路16によって測位用信号Sと局部発振信号とが混合されたとき、中間周波信号IFはIFアンプ18によって所定のレベルまで増幅される。さらに、IFアンプ18の出力は、リミッタアンプ20によって矩形波とされ、中間周波信号IFは、Nチャネル復調器22に入力される。
【0020】
Nチャネル復調器22は、制御部36からの制御信号により定められたGPS衛星の信号を捕捉し追尾する動作を行う。ここで、制御部36からの制御信号により定められたGPS衛星からの信号を捕捉したNチャネル復調器22は、GPS衛星のエフェメリスデータ、アルマナックデータ、その他の補正データ等を制御部36の位置算出部48に出力する。
【0021】
位置算出部48は、GPS衛星からの信号を捕捉したNチャネル復調器22からの入力信号(エフェメリスデータ、アルマナックデータ、その他の補正データ等)により測位用信号受信装置10の位置を計算する。位置算出部48は、この計算結果を操作表示部38に表示する。
【0022】
局部発振器26は、スイッチ28にも接続されている。スイッチ28は、MOSなどの電気的なスイッチであってよい。スイッチ28は、スイッチ制御部46により、オン/オフを制御することができる。減衰器30は、局部発振信号を減衰させる機能を有する。局部発振器26の出力がそれほど大きくない場合には、減衰器30は、設けなくともよい。減衰器30は、検出用アンテナ34に接続される。
【0023】
検出用アンテナ34は、スイッチ28、減衰器30を介して局部発振器26から伝達された局部発振信号を放射する。検出用アンテナ34から放射された局部発振信号は、人や物などにより反射され、その反射信号は再び検出用アンテナ34で受信される。検出用アンテナ34の指向性は、無指向性であってもよいし、狭指向性であってもよい。測位用信号受信装置10を用いるシステムに合わせて選択することができる。
【0024】
検出用アンテナ34にて受信された反射信号は、減衰器30、スイッチ28、局部発振器26を介してミキサ回路16に入力される。また、この反射信号は、減衰器30、スイッチ28、局部発振器26を介さずに、直接ミキサ回路16に入力されるように構成してもよい。
【0025】
図1に示すように、検出用アンテナ34から放射された局部発振信号が移動している移動体Aに当たって反射した場合、その反射信号の周波数fは、ドップラー効果により、局部発振信号の周波数fと異なった値となる。cを電波の速度とすると、移動体の速度Vは、V=|f−f|/f×c/2と表すことができる。
【0026】
本実施の形態に係る測位用信号受信装置10では、ミキサ回路16に局部発振信号および反射信号が入力される構成となっているので、中間周波信号IFとして、局部発振信号の周波数fと反射信号の周波数fの差の絶対値|f−f|を検出することができる。このときの中間周波信号IFは、低周波であるので、低周波アンプ32によって増幅され、制御部36の移動体検出部50に入力される。
【0027】
移動体検出部50は、中間周波信号IFの周波数|f−f|に基づいて、移動体が存在するか否かを判定する。具体的には、移動体検出部50は、まず、|f−f|を算出し、|f−f|がより零より大きいか否かを判定する。そして、|f−f|が零より大きい場合であって、所定時間以上連続して|f−f|が変化している場合には、測位用信号受信装置10の付近に移動体が存在していると判定する。|f−f|が零である場合や、|f−f|が零より大きいが、所定時間以上連続して変化していない場合は、測位用信号受信装置10の付近に移動体が存在しないと判定する。
【0028】
本実施の形態に係る測位用信号受信装置10において、上述した測位機能と、移動体検出機能の切替は、制御部36の測位用アンテナ電源制御部44およびスイッチ制御部46によって行う。
【0029】
測位機能を用いる場合は、測位用アンテナ電源制御部44により測位用アンテナ12の電源をオンに、スイッチ制御部46によりスイッチ28をオフに制御する。例えば、イグニッションキーが差し込まれたとき、このような制御を行う。このとき、位置算出部48は、測位用信号Sに基づいて測位用信号受信装置10の位置を測定することができる。また、スイッチ28によって局部発振信号が遮断されるので、検出用アンテナ34から局部発振信号が発信されることはない。
【0030】
一方、移動体検出機能を用いる場合は、測位用アンテナ電源制御部44により測位用アンテナ12の電源をオフに、スイッチ制御部46によりスイッチ28をオンに設定する。例えば、イグニッションキーが抜かれたとき、このような制御を行う。このとき、検出用アンテナ34から局部発振信号が発信されるので、移動体検出部50は、反射信号に基づいて移動体の有無を検出することができる。
【0031】
以上、説明したように、本実施の形態に係る測位用信号受信装置10は、測位機能に用いる回路と、移動体検出機能に用いる回路とで、局部発振器26とミキサ回路16を、共通化することができる。その結果、別々に局部発振器とミキサ回路を設ける必要がなくなるので、部品点数が減り、安価な移動体検出機能を備えた測位用信号受信装置を実現できる。また、部品点数の削減により、装置の小型化も実現できる。
【0032】
次に、上述した測位用信号受信装置10の応用例について説明する。測位用信号受信装置10は、車両に搭載されるカーナビゲーションシステムに応用することができる。測位用信号受信装置10をカーナビゲーションシステムに応用した場合、測位機能により測定した現在位置を操作表示部38に表示することができるとともに、移動体検出機能を利用することによって、車両の盗難防止装置としても機能させることができる。この場合、移動体検出部50にて移動体を検出したときに、制御部36は、警告部42に音および/または光を発するよう指示をだす。
【0033】
測位機能と移動体検出機能の切替は、例えば、車両のイグニッションキーと連動させて行えばよい。すなわち、車両が停車され、イグニッションキーがキーシリンダが抜かれたときに、測位機能から移動体検出機能に切り替わるように測位用アンテナ電源制御部44、スイッチ制御部46を動作させればよい。具体的には、イグニッションキーが抜かれたとき、測位用アンテナ電源制御部44により測位用アンテナ12の電源をオフに、スイッチ制御部46によりスイッチ28をオンに設定する。また、測位機能と移動体検出機能の切替は、ドアの開閉と連動させてもよいし、イグニッションキーの挿抜とドアの開閉を合わせて切り替えるように構成してもよい。
【0034】
また、イグニッションキーが抜かれてからすぐに測位機能から移動体検出機能に切り替わってしまうと、ドライバー本人に対して警告部42から警告がなされる可能性がある。そのため、例えばイグニッションキーが抜かれてから所定の時間経過後に移動体検出機能に切り替わるよう構成してもよい。
【0035】
測位用信号受信装置10をカーナビゲーションシステムに応用した場合、検出用アンテナ34の指向性を設定することで、検出の対象や検出精度を調整することができる。例えば、検出用アンテナ34を無指向性にして車両のダッシュボード上に測位用信号受信装置10を設けた場合には、あらゆる方向から車両に近づく人を検出することができる。一方、指向性を狭くして、例えば、運転席やドアの位置だけ移動体を検出できるように測位用信号受信装置10を設けた場合には、検出の誤動作を少なくすることが可能となる。
【0036】
上記のように検出用アンテナ34を無指向性のものにした場合、単に車両の近傍を通過した人に対して警告部42から警告がなされる可能性がある。そこで、例えば、所定時間以上連続して検出した速度が変化している場合に、警告部42から警告がなされるよう構成してもよい。これにより、誤動作を少なくすることが可能となる。
【0037】
また、制御部36は、移動体検出機能が動作しているときに、局部発振器26を間欠動作するように制御を行ってもよい。これにより、バッテリーの電力消費を低減することができる。
【0038】
また、カーナビゲーションシステムに、携帯などの無線装置を利用して車両位置を外部に発信する機能が備えられている場合は、移動体検出機能にて移動体を検出した際に、測位機能に切り替わるように構成してもよい。この場合、測位機能により検出した車両位置を無線装置にて外部に発信することで、例えば車両が盗難された場合の追跡に利用することが可能となる。
【0039】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素の組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本実施の形態に係る測位用信号受信装置を示す機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0041】
10 測位用信号受信装置、 12 測位用アンテナ、 14 RFアンプ、 16 ミキサ回路、 18 IFアンプ、 20 リミッタアンプ、 22 Nチャネル復調器、 24 基準クロック発振器、 26 局部発振器、 28 スイッチ、 30 減衰器、 32 低周波アンプ、 34 検出用アンテナ、 36 制御部、 38 操作表示部、 42 警告部、 44 測位用アンテナ電源制御部、 46 スイッチ制御部、 48 位置算出部、 50 移動体検出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位用衛星から発信された測位用信号を受信する測位用アンテナと、
所定の周波数の局部発振信号を生成する局部発振器と、
前記局部発振信号を放射するとともに、放射された前記局部発振信号の反射信号を受信する検出用アンテナと、
入力された信号と前記局部発振信号とを混合することにより中間周波信号を生成するミキサ回路と、
前記ミキサ回路へ入力される信号を、前記測位用信号と前記反射信号とで切り替える切替手段と、
前記ミキサ回路に前記測位用信号が入力されたときに出力される第1中間周波信号に基づいて、当該測位用信号受信装置の位置を求める位置算出手段と、
前記ミキサ回路に前記反射信号が入力されたときに出力される第2中間周波信号に基づいて、当該測位用信号受信装置付近の移動体を検出する移動体検出手段と、
を備えることを特徴とする測位用信号受信装置。
【請求項2】
前記切替手段は、前記測位用アンテナに供給される電源を制御する測位用アンテナ電源制御部と、前記局部発振器と前記検出用アンテナとの間に設けられたスイッチを制御するスイッチ制御部と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の測位用信号受信装置。
【請求項3】
前記移動体検出手段が移動体を検出した場合に、音および/または光を発する警告手段をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の測位用信号受信装置。
【請求項4】
前記切替手段は、前記移動体検出手段が移動体を検出した場合に、前記ミキサ回路へ入力される信号を前記測位用信号に切り替えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の測位用信号受信装置。

【図1】
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【公開番号】特開2007−271491(P2007−271491A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−98491(P2006−98491)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000001177)株式会社光電製作所 (32)
【Fターム(参考)】