説明

測定セル保持機構、及び、バイオセンサー

【課題】 測定時における測定セルのリガンドが固定された平坦面の移動を防止すると共に、流路部材の変形を防止することの可能な測定セル保持機構、及び、この測定セル保持機構を備えたバイオセンサーを提供する。
【解決手段】 押圧スティック27A及びスプリング部27Cでの誘電体ブロック42の挟持部分Kは、誘電体ブロック42の上部側とされている。プリズム押さえ26Kの先端部26Pは、尖った形状とされており、誘電体ブロック42に食い込み、誘電体ブロック26を保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リガンドへアナライトを含むアナライト溶液を供給するための流路を備えた測定セルを測定位置で保持する測定セル保持機構、及び、この測定セル保持機構を備えたバイオセンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、測定セル上にリガンドを固定し、リガンドの固定された部分に流路を構成して、この流路にアナライトを含んだアナライト溶液を供給すると共に、流路の逆側から光ビームを入射させることにより、リガンドとアナライトとの相互作用を測定することが行われている(特許文献1参照)。このような測定は、測定セルが測定中に動くことのないように、しっかりと測定セルを保持しておく必要がある。
【特許文献1】特許第3294605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、流路へのアナライト溶液などの液体の供給が、流路へ直接アクセスすることにより行われる場合には、このアクセス時に測定セルが動きやすくなる。特に、リガンドの固定された測定面の移動は測定に影響を与えるため、測定面の移動を抑制する必要がある。
【0004】
本発明は上記事実を考慮してなされたものであり、測定時における測定セルの移動を効率よく抑制することの可能な測定セル保持機構、及び、この測定セル保持機構を備えたバイオセンサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様の測定セル保持機構は、リガンドの固定される平坦面の形成された誘電体ブロックと、この誘電体ブロックの前記平坦面上に密着されこの平坦面との間に流路を構成すると共に前記流路と連通され上側に開口された開口部の形成された流路部材と、を含んで構成された測定セルと、前記測定セルが載置されるベース部材と、前記開口部に上方から進入して前記流路へ液体を供給する液体供給部材と、前記ベース部材と前記開口部との間の距離を距離Sとして、前記ベース部材から距離Sの30%の高さ位置よりも前記開口部側で前記誘電体ブロックを測定位置に保持する誘電体ブロック保持手段と、を備えている。
【0006】
本発明の測定セル保持機構では、誘電体ブロック保持手段で誘電体ブロックが保持される。誘電体ブロックの保持は、ベース部材に近い側での保持よりも、開口部側での保持の方が、測定面(リガンドの固定される平坦面)の移動を小さい力で規制できる。
【0007】
なお、本願においてリガンドとは、生理活性のある高分子物質をいい、タンパク質、DNA、RNA、糖類などが例示されるがそれらに限られない。
【0008】
そこで、本発明では、保持位置をベース部材と開口部との間の距離Sの30%の高さ位置よりも開口部側とする。この保持位置で誘電体ブロックを保持することで、より小さい保持力で効率的に誘電体ブロックを保持することができる。
【0009】
なお、前記誘電体ブロック保持手段は、前記誘電体ブロックの対向する2つの側面を水平方向に挟み込む挟持部材、を含んで構成することができる。
【0010】
このように、挟持部材で誘電体ブロックの2つの側面を挟み込んで保持することにより、挟み込んだ水平方向の移動を抑制することができる。
【0011】
また、前記誘電体ブロック保持手段は、前記誘電体ブロックの前記平坦面へ押圧力により食い込む食い込み部材、を含んで構成することもできる。
【0012】
ここで、誘電体ブロックの平坦面への食い込みとは、平坦面を変形させて食い込み部材の一部が内側へ入り込むことをいう。このように、食い込み部材を誘電体ブロックの平坦面に食い込ませることにより、誘電体ブロックと誘電体ブロック保持手段との間の滑りによる誘電体ブロックのズレを抑制することができ、効率的に誘電体ブロックの移動を抑制することができる。
【0013】
また、前記誘電体ブロック保持手段は、前記流路部材を前記誘電体ブロックの配置されている側の逆側から押圧する流路押圧部材、を含んで構成することもできる。
【0014】
流路押圧部材で流路部材を押圧することにより、誘電体ブロックは流路部材とベース部材との間に保持され、誘電体ブロックの鉛直方向の移動を抑制することができる。
【0015】
なお、前記流路押圧部材は、前記流路部材へ押圧力により食い込むことを特徴とすることもできる。
【0016】
このように、流路押圧部材を流路部材へ食い込ませることにより、流路部材と流路保持部材との間の滑りによる誘電体ブロックのズレを抑制することができる。
【0017】
本発明の第2の態様のバイオセンサーは、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載された測定セル保持機構と、記測定セルの前記平坦面に前記誘電体ブロックを介して光ビームを入射させる光源と、前記平坦面で反射された光ビームの反射光を受光する受光部材と、を備えている。
【0018】
上記構成によれば、誘電体ブロックを、より小さい力で効率よく保持することができ、正確な測定を行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は上記構成としたので、測定時における測定セルの移動を効率よく抑制でき、正確な測定を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0021】
本実施形態のバイオセンサー10は、金属膜の表面に発生する表面プラズモン共鳴を利用して、リガンドDとアナライトAとの相互作用を測定する、いわゆる表面プラズモンセンサーである。
【0022】
図1に示すように、バイオセンサー10は、トレイ保持部12、搬送部14、容器載置台16、液体吸排部20、押さえ部26、光学測定部54、及び、制御部60を備えている。
【0023】
トレイ保持部12は、載置台12A、及び、ベルト12Bを含んで構成されている。載置台12Aは、矢印Y方向に架け渡されたベルト12Bに取り付けられており、ベルト12Bの回転により矢印Y方向に移動可能とされている。載置台12A上には、トレイTが2枚、位置決めして載置される。トレイTには、センサースティック40が8本収納されている。センサースティック40は、リガンドDの固定されるチップであり、詳細については後述する。載置台12Aの下には、センサースティック40を後述するスティック保持部材14Cの位置まで押し上げる、押上機構12Dが配置されている。
【0024】
センサースティック40は、図2及び図3に示すように、誘電体ブロック42、流路部材44、保持部材46、接着部材48、及び、蒸発防止部材49、で構成されている。
【0025】
誘電体ブロック42は、光ビームに対して透明な透明樹脂等で構成されており、断面が台形の棒状とされたプリズム部42A、及び、プリズム部42Aの両端部にプリズム部42Aと一体的に形成された被保持部42Bを備えている。プリズム部42Aの互いに平行な2面の内の広い側の上面には、図4にも示すように金属膜50が形成されている。この金属膜50上に、バイオセンサー10で解析するリガンドDが固定される。誘電体ブロック42は、いわゆるプリズムとして機能し、バイオセンサー10での測定の際には、プリズム部42Aの対向する互いに平行でない2つの側面の内の一方から光ビームが入射され、他方から金属膜50との界面で全反射された光ビームが出射される。
【0026】
金属膜50の表面には、図4に示すように、リンカー層50Aが形成されている。リンカー層50Aは、リガンドDを金属膜50上に固定化するための層である。リンカー層50A上には、リガンドDが固定されアナライトAとリガンドDとの反応が生じる測定領域E1と、リガンドDが固定されず、前記測定領域E1の信号測定に際しての参照信号を得るための参照領域E2とが形成される。この参照領域E2は、上述したリンカー層50Aを製膜する際に形成される。形成方法としては、例えば、リンカー層50Aに対して表面処理を施して、リガンドDと結合する結合基を失活させる。これにより、リンカー層50Aの半分が測定領域E1となり、残りの半分が参照領域E2となる。このように、結合基を失活させるためには、上記、ブロッキングに用いたエタノールアミン−ヒドロクロライドを用いることができる。参照領域E2の別の構成方法としては、参照領域E2にカルボキシルメチルデキストランの代わりに、例えば、アルキルチオールを配するようにすれば、アルキル基を表面に配することができ、アルキル基は、アミノカップリング法でリガンド結合させることは出来ないので、参照領域E2として使うことができる。
【0027】
図5にも示すように、液体流路45に露出されたリンカー層50Aの、参照領域E2以外の部分には、リガンドDが固定されている。参照領域E2にはリガンドDは固定されていない。参照領域E2、及び、参照領域E2よりも上流側に位置する測定領域E1には、各々光ビームL2、L1が入射される。参照領域E2は、リガンドDの固定された測定領域E1から得られるデータを補正するために設けられた領域である。
【0028】
プリズム部42Aの両側面には、上側の端辺に沿って、プリズム部42Aの上面と垂直な垂直凸部42Dが、各々7箇所に形成されている。また、誘電体ブロック42の下面の長手方向に沿った中央部には、係合溝42Eが形成されている。
【0029】
流路部材44は、誘電体ブロック42よりもわずかに狭幅の直方体状とされ、図3に示すように、誘電体ブロック42の金属膜50上に、互いに離間されて6個配置されている。各々の流路部材44の下面には流路溝44Aが形成されており、上面に形成された供給口45A及び排出口45Bと連通されて、金属膜50との間に、液体流路45が構成される。したがって、1本のセンサースティック40には、独立した6本の液体流路45が構成される。流路部材44の側壁には、保持部材46の内側の図示しない凹部に圧入されて保持部材46との密着性を確保するための凸部44Bが形成されている。
【0030】
なお、液体流路45には、蛋白質を含む液体が供給されることが想定されるので、流路壁への蛋白質の固着を防止するため、流路部材44の材料としては、蛋白質に対する非特異吸着性を有しないことが好ましい。
【0031】
保持部材46は、長尺とされ、上面板46A及び2枚の側面板46Bで構成されている。保持部材46は、6個の流路部材44を間に挟んで誘電体ブロック42上に被せられる。なお、必要に応じて誘電体ブロック42と保持部材46とが係合されるように係合部(例えば、保持部材46の側面板46Bに係合孔を形成し、この係合孔に係合される係合凸部を誘電体ブロックに形成する)を設けてもよい。本実施形態では、保持部材46が誘電体ブロック42上に被せられることにより、流路部材44が誘電体ブロック42に粘着されて取り付けられる。上面板46Aには、流路部材44の供給口45A及び排出口45Bと対向する位置に、流路部材44に向けて狭くなるテーパー状のピペット挿入孔46Dが形成されている。また、1つの流路部材44の供給口45A及び排出口45Bと対向する位置に配置された2つのピペット挿入孔46Dの間には、位置決め用のボス46Eが形成されている。さらに、流路部材44が離間されて配置されている離間部分に対向する位置には、後述するプリズム押さえ部材26Kを挿入可能な押さえ孔46Fが形成されている。
【0032】
保持部材46の上面には、蒸発防止部材49が接着部材48を介して接着されている。接着部材48のピペット挿入孔46Dと対向する位置にはピペット挿入用の孔48Dが形成され、ボス46Eと対向する位置には位置決め用の孔48Eが形成され、押さえ孔46Fと対向する位置には孔48Fが形成されている。また、蒸発防止部材49のピペット挿入孔46Dと対向する位置には十字状の切り込みであるスリット49Dが形成され、ボス46Eと対向する位置には位置決め用の孔49Eが形成され、押さえ孔46Fと対向する位置には、孔49Fが形成されている。ボス46Eを孔48E及び49Eに挿通させて、蒸発防止部材49を保持部材46の上面に接着することにより、蒸発防止部材49のスリット49Dと流路部材44の供給口45A及び排出口45Bとが対向するように構成される。ピペットチップCPの非挿入時には、スリット49D部分が供給口45Aを覆い、液体流路45に供給されている液体の蒸発が防止される。
【0033】
図1に示すように、バイオセンサー10の搬送部14は、上部ガイドレール14A、下部ガイドレール14B、及び、スティック保持部材14C、を含んで構成されている。上部ガイドレール14A及び下部ガイドレール14Bは、トレイ保持部12及び光学測定部54の上部で、矢印Y方向と直交する矢印X方向に水平に配置されている。上部ガイドレール14Aには、スティック保持部材14Cが取り付けられている。スティック保持部材14Cは、センサースティック40の両端部の被保持部42Bを保持可能とされていると共に、上部ガイドレール14Aに沿って移動可能とされている。スティック保持部材14Cに保持されたセンサースティック40の係合溝42Eと下部ガイドレール14Bとが係合され、スティック保持部材14Cが矢印X方向に移動することにより、センサースティック40が光学測定部54上の測定部56に搬送される。
【0034】
測定部56の下部ガイドレール14Bを挟んでスティック保持部材14Cと逆側には、測定時にセンサースティック40を押さえるための押さえ部26が備えられている。押さえ部26は、図6及び図7に示すように、支持部26Aを備え、支持部26Aには、ステージ26Bが取り付けられている。ステージ26Bの側面には、駆動ガイド26Cが取り付けられている。駆動ガイド26Cは、ステージ26Bの上部に配置された駆動モータ26Dの駆動力により、ステージ26Bの側面に沿ってZ方向(鉛直方向)に移動可能とされている。駆動ガイド26Cには、連結部材26Eを介して押さえ用スプリング26Fが取り付けられている。押さえ用スプリング26Fの下側にはスティック26Gが配置され、スティック26Gの下側には板部材26Hが取り付けられ、板部材26Hの下部側面には、押さえ板26Iが取り付けられている。スティック26Gの上方には、図7に示すように、水平方向に孔Hが穿孔されており、連結部材26Eに突設されたピンPが孔Hに挿通されている。孔Hは、孔H内でピンPが下側に移動可能なように下側へ長孔とされている。スティック26G、板部材26H、及び、押さえ板26Iは、駆動ガイド26Cの下降により押さえ用スプリング26Fで押圧されて下方に移動する。押さえ用スプリング26Fは、所定量縮むことによって後述するプリズム押さえ26Kが所定の押圧力で誘電体ブロック42を押圧するように設定されている。ここで、所定の押圧力とは、プリズム押さえ26Kの先端部26Pが誘電体ブロック42に食い込み、プリズム押さえ26で誘電体ブロック42を保持できる程度の押圧力をいう。また、スティック26G、板部材26H、及び、押さえ板26Iは、駆動ガイド26Cの上昇によりピンPで持ち上げられる。
【0035】
押さえ板26Iは、長方形板状とされ、板面がセンサースティック40と対向し長手方向が下部ガイドレール14Bと平行になるように配置されている。押さえ板26Iには、後述するピペットチップCPを挿通可能な2個の孔26Jが形成されている。
【0036】
また、押さえ板26Iの下側には、図8に示すように、プリズム押さえ26K、及び、流路押さえ26Lが設けられている。プリズム押さえ26Kは、センサースティック40の保持部材46に形成された押さえ孔46Fに対応する位置に2本設けられ、押さえ孔46Fに挿通されてプリズム部42Aに当接可能な長さとされている。プリズム押さえ26Kの先端部26Pは、誘電体ブロック42の表面に食い込み可能に尖った形状とされている。流路押さえ26Lは、図9に示すように、基端部が板部材26Hに取り付けられZ方向に弾性変形可能な板バネで構成されている。流路押さえ26Lの板バネがボス46Eに当接して、押さえ用スプリング26Fよりも小さい押圧力でボス46Eを押圧するように設定されている。
【0037】
プリズム押さえ26K、及び、流路押さえ26Lによる押圧力は、下部ガイドレール14Bによって受けられる。
【0038】
測定部56の下側には、挟持部材27が設けられている。挟持部材27は、下部ガイドレール14Bの押さえ部26側に配置された押圧スティック27A、押圧スティック27Aを保持する保持部材27B、及び、下部ガイドレール14Bを挟んで押圧スティック27Aと逆側に配置されたスプリング部27C、を含んで構成されている。スプリング部27Cは、ボール27D及びスプリング27E(図14参照)を含んで構成されており、押圧スティック27Aの押圧力を受ける。押圧スティック27Aとスプリング部27Cとの間でセンサースティック40が挟持され、Y方向の移動が規制される。
【0039】
ここで、押圧スティック27A及びスプリング部27Cでの誘電体ブロック42の挟持位置Kは、図14にも示すように、誘電体ブロック42の上部側、すなわち、測定領域E1、参照領域E2が配置された側に近い位置とされている。具体的には、下部ガイドレール14Bとピペット挿入孔46Dとの間の距離を距離Sとすると、距離Sの30%の高さ位置Hよりも上側とする。
【0040】
これは、図15(B)に示すように誘電体ブロック42の下側の挟持位置K0で保持するよりも、図15(A)に示すように上部側の挟持位置Kで保持した方が、誘電体ブロック42のY方向の回転YRを小さい力で規制できるためである。挟持位置Kで保持した場合には、ピペットアクセスによる外乱力F2がそのまま誘電体ブロック42を回転させるのに対し、挟持位置K0で保持した場合には、外乱力F2による回転挙動が発生する際に、下部ガイドレール14Bと接している底面が外乱力F2と逆方向に水平移動し、この水平移動には底面と下部ガイドレール14Bとの間の摩擦力F3=F1(押さえ板26Iによる押圧力)×μ(摩擦係数)よりも大きい力が必要とされるからである。
【0041】
また、下部ガイドレール14Bから挟持位置Kまでの距離をS2、挟持位置Kからピペット挿入孔46Dまでの距離をS1とすると、S2・F3≧S1・F2のときに、誘電体ブロック42は外乱力F2による影響を受けずに静止していると考えられる。ここで、F1は1000gf(9.8N)、摩擦係数μは0.15程度とすると、摩擦力F3=150gf(1.47N)となり、外乱力F2は30gf(0.294N)程度であると考えられることから、安全率を考慮してF2=30gf×2=60gf(0.588N)とすると、S2≧(S1・60)/150=0.4S1、となる。したがって、距離S2は、距離Sに対して、30%程度より大きい距離(S1≧0.3S)であれば、誘電体ブロック42の静止状態が保たれることになる。
【0042】
なお、距離S2が大きい程、より小さい保持力で効率的に誘電体ブロックを保持することができ、距離Sに対して50%より大きい距離(距離Sの中央より上側)であることが好ましい。
【0043】
また、外乱力F2がY方向にはたらく場合の力量F4は、
60gf(0.588N)/(S2/S)=210gf(2.058N)であることから、押圧スティック27Aでの押圧力は、210gf(2.058N)以上であることが必要になる。
【0044】
図1に示すように、容器載置台16には、アナライト溶液プレート17、回収液ストック容器18、供給液ストック容器19が載置されている。アナライト溶液プレート17は、マトリクス状に区画されており、各種のアナライト溶液をストック可能とされている。回収液ストック容器18は、複数の回収容器で構成されており、各々の回収容器には、後述するピペットチップCPを挿入可能な開口Kが形成されている。供給液ストック容器19は、複数のストック容器で構成されており、回収容器と同様にピペットチップCPを挿入可能な開口Kが形成されている。
【0045】
液体吸排部20は、上部ガイドレール14A、及び、ガイドレール16Bよりも上方で、矢印Y方向に架け渡された横断レール22、及び、ヘッド24を含んで構成されている。横断レール22は、図示しない駆動機構により、矢印X方向移動可能とされている。また、ヘッド24は、横断レール22に取り付けられ、矢印Y方向に移動可能とされている。また、ヘッド24は、図示しない駆動機構により、鉛直方向(矢印Z方向)にも移動可能とされている。ヘッド24には、2本のピペットチップCPが取り付けられている。
【0046】
光学測定部54は、図10に示すように、光源54A、第1光学系54B、第2光学系54C、受光部54D、信号処理部54E、を含んで構成されている。光源54Aからは、発散状態の光ビームLが出射される。光ビームLは、第1光学系54Bを介して、2本の光ビームL1、L2となり、測定部56に配置された誘電体ブロック42の測定領域E1と参照領域E2に入射される(図5参照)。測定領域E1及び参照領域E2において、光ビームL1、L2は、金属膜50と誘電体ブロック42との界面に対して種々の入射角成分を含み、かつ全反射角以上の角度で入射される。光ビームL1、L2は、誘電体ブロック42と金属膜50との界面で全反射される。全反射された光ビームL1、L2も、種々の反射角成分をもって反射される。この全反射された光ビームL1、L2は、第2光学系54Cを経て受光部54Dで受光されて、各々光電変換され、光検出信号が信号処理部54Eへ出力される。信号処理部54Eでは、入力された光検出信号に基づいて所定の処理が行なわれ、測定領域E1及び参照領域E2の全反射減衰角のデータ(以下「全反射減衰データ」という)が求められる。この全反射減衰データが制御部60へ出力される。
【0047】
制御部60は、バイオセンサー10の全体を制御する機能を有し、図10に示すように、光源54A、信号処理部54E、及び、バイオセンサー10の図示しない駆動系と接続されている。制御部60は、図11示すように、バスBを介して互いに接続される、CPU60A、ROM60B、RAM60C、メモリ60D、及び、インターフェースI/F60E、を有し、各種の情報を表示する表示部62、各種の指示、情報を入力するための入力部64と接続されている。
【0048】
メモリ60Dには、バイオセンサー10を制御するための各種プログラムや、各種データが記録されている。
【0049】
次に、センサースティック40の、測定部56への固定手順について説明する。
【0050】
バイオセンサー10の載置台12Aには、リガンドDが固定化され、液体流路45に保存液Cが充填されたセンサースティック40入りのトレイがセットされている。また、アナライト溶液プレート17、供給液ストック容器19には、所定のアナライト溶液、供給液(バッファー液、解離液、洗浄液、など)がセットされている。
【0051】
まず、押上機構12Dにより、1のセンサースティック40がスティック保持部材14Cの位置まで押し上げられ、スティック保持部材14Cにより保持される。そして、スティック保持部材14Cは、センサースティック40を保持したまま下部ガイドレール14Bに沿って移動して、センサースティック40を測定部56へ搬送する。
【0052】
測定部56の測定位置でスティック保持部材14Cは停止し、センサースティック40がプリズム部42Aの側面の垂直凸部42Dで挟持部材27の押圧スティック27Aとスプリング部27Cとで挟持される。
【0053】
また、押さえ部26の駆動ガイド26Cが下側に移動され、押さえ用スプリング26Fに押されてスティック26G、板部材26H、及び、押さえ板26Iが下降する。これにより、プリズム押さえ26Kが、押さえ孔46Fに挿通されて、図12(B)、図16に示すように先端部26Pがプリズム部42Aに食い込む。このとき、図12(A)に示すように、孔26Jは、液体流路45と重なり合う位置に配置される。なお、図12(A)(B)では、センサースティック40を構成する部材の誘電体ブロック42及び流路部材44以外の部材を省略している。
【0054】
駆動ガイド26Cは、あらかじめ設定された所定量だけ押さえ用スプリング26Fが縮むようにZ方向下側へ移動して停止する。これにより、誘電体ブロック42がプリズム押さえ26Kに所定の押圧力で押圧されて固定される。また、流路部材44が保持部材46を介して流路押さえ26Lに所定の押圧力で押圧される。流路部材44への押圧力は誘電体ブロック42への押圧力よりも小さく設定されている。
【0055】
上記のようにして固定されたセンサースティック40へアナライト溶液などの液体を供給したり、供給した液体を回収(廃棄)したりする際には、図13に示すように、ピペットチップCPが上部から挿入孔46Dを経て流路部材44の液体流路45へ挿入されたり、引き抜かれたりする。このとき、ピペットチップCPが保持部材46及び流路部材44に接触することにより外乱力が加えられるが、挟持部材27により誘電体ブロック42の上部か挟持され、プリズム押さえ26Kの先端部26Pが誘電体ブロック42に食い込んで下側へ押圧しており、さらに流路押さえ26Lにより下側へ押圧されて固定されているので、測定中の誘電体ブロック42の移動を防止することができる。
【0056】
また、流路部材44は、誘電体ブロック42よりも小さい押圧力で押圧されているので、流路部材44が強い力で押圧されることに起因して測定時にドリフト状態の信号変動が発生するなどの不都合を防止することができる。
【0057】
なお、本実施形態では、プリズム押さえ26Kを、隣り合う流路部材44の間に構成される離間部に配置したが、プリズム押さえは、他の位置に配置することもできる。
【0058】
例えば、図17に示すように、流路部材44を誘電体ブロック42の短手方向であるY方向に跨ぐように配置したプリズム押さえ26Mとしてもよい。この場合には、保持部材46の上面のプリズム押さえ26Mに対応する位置にプリズム押さえ26Mを挿通するための孔を穿孔する。
【0059】
また、本実施形態では、プリズム押さえ26Kの先端部26Pが誘電体ブロック42に食い込む例について説明したが、必ずしも食い込む必要はない。特に、食い込むことにより、単に当接させて保持する場合と比較して、より効率的に誘電体ブロック42の移動を抑制することができる。
【0060】
また、本実施形態では、流路押さえ26Lは、ボス46Eに当接して保持部材46を介して誘電体ブロック42を押圧したが、図18に示すように、ボス46Eへ食い込ませて押圧してもよい。この場合には、流路押さえ26Lの先端部を尖らせることにより、容易にボス46Eへ食い込ませることができる。このように、ボス46Eへ食い込ませることにより、誘電体ブロック42と流路押さえ26Lとの間の滑りによる誘電体ブロック42のズレを抑制することができ、効率的に誘電体ブロック42の移動を抑制することができる。
【0061】
なお、本実施形態では、バイオセンサーとして、表面プラズモンセンサーを一例として説明したが、バイオセンサーとしては、全反射減衰を利用する、漏洩モードセンサーにも適用することができる。漏洩モードセンサーは、誘電体と、この上に順に層設されたクラッド層と光導波層とによって構成された薄膜とからなり、この薄膜の一方の面がセンサ面となり、他方の面が光入射面となる。光入射面に全反射条件を満たすように光を入射させると、その一部が前記クラッド層を透過して前記光導波層に取り込まれる。そして、この光導波層において、導波モードが励起されると、前記光入射面における反射光が大きく減衰する。導波モードが励起される入射角は、表面プラズモン共鳴角と同様に、センサ面上の媒質の屈折率に応じて変化する。この反射光の減衰を検出することにより、前記センサ面上の反応を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本実施形態のバイオセンサーの全体斜視図である。
【図2】本実施形態のセンサースティックの斜視図である。
【図3】本実施形態のセンサースティックの分解斜視図である。
【図4】本実施形態のセンサースティックの1の液体流路部分の断面図である。
【図5】本実施形態のセンサースティックの測定領域及び参照領域へ光ビームが入射している状態を示す図である。
【図6】本実施形態の押さえ部の斜視図である。
【図7】本実施形態の押さえ部の正面である。
【図8】本実施形態の押さえ部での押さえ位置付近の正面図である。
【図9】本実施形態の押さえ部での押さえ位置付近の側面図である。
【図10】本実施形態のバイオセンサーの光学測定部付近の概略図である。
【図11】本実施形態の制御部とその周辺の概略ブロック図である。
【図12】本実施形態のプリズム押さえを誘電体ブロックへ食い込ませて押さえている状態を示す(A)は上面図であり、(B)は側面図である。
【図13】本実施形態でピペットチップが液体流路へ挿入されている状態を示す図である。
【図14】本実施形態の挟持部材で誘電体ブロックを押さえている状態を示す、誘電体ブロックの長手方向からみた図である。
【図15】本実施形態の誘電体ブロックの挟持位置と回転との関係を説明する図である。
【図16】本実施形態のプリズム押さえ部材を誘電体ブロックへ食い込ませている状態を示す、誘電体ブロックの長手方向からみた図である。
【図17】本実施形態の変形例のプリズム押さえで誘電体ブロックを押さえている状態を示す(A)は上面図であり、(B)は側面図である。
【図18】本実施形態の変形例の流路押さえをボスへ食い込ませて押さえている状態を示すは長手方向からみた図である。
【符号の説明】
【0063】
10 バイオセンサー
26P 先端部
26K プリズム押さえ部材
27C スプリング部
27A 押圧スティック
27 挟持部材
40 センサースティック
42A プリズム部
42 誘電体ブロック
44 流路部材
46E ボス
46 保持部材
54 光学測定部
54A 光源
54D 受光部
56 測定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リガンドの固定される平坦面の形成された誘電体ブロックと、この誘電体ブロックの前記平坦面上に密着されこの平坦面との間に流路を構成すると共に前記流路と連通され上側に開口された開口部の形成された流路部材と、を含んで構成された測定セルと、
前記測定セルが載置されるベース部材と、
前記開口部に上方から進入して前記流路へ液体を供給する液体供給部材と、
前記ベース部材と前記開口部との間の距離を距離Sとして、前記ベース部材から距離Sの30%の高さ位置よりも前記開口部側で前記誘電体ブロックを測定位置に保持する誘電体ブロック保持手段と、
を備えた測定セル保持機構。
【請求項2】
前記誘電体ブロック保持手段は、前記誘電体ブロックの対向する2つの側面を水平方向に挟み込む挟持部材、を含んで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の測定セル保持機構。
【請求項3】
前記誘電体ブロック保持手段は、前記誘電体ブロックの前記平坦面へ押圧力により食い込む食い込み部材、を含んで構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の測定セル保持機構。
【請求項4】
前記誘電体ブロック保持手段は、前記流路部材を前記誘電体ブロックの配置されている側の逆側から押圧する流路押圧部材、を含んで構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の測定セル保持機構。
【請求項5】
前記流路押圧部材は、前記流路部材へ押圧力により食い込むことを特徴とする請求項4に記載の測定セル保持機構。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載された測定セル保持機構と、
前記測定セルの前記平坦面に前記誘電体ブロックを介して光ビームを入射させる光源と、
前記平坦面で反射された光ビームの反射光を受光する受光部材と、
を備えたバイオセンサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−71542(P2007−71542A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−255437(P2005−255437)
【出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【出願人】(000005201)富士フイルムホールディングス株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】