説明

測定装置

【課題】製造コストの高騰および装置の大形化を招くことなく、付加的な処理を実行し得る測定装置を提供する。
【解決手段】ロータリスイッチ4a(処理選択スイッチ)を有する操作部4と、ロータリスイッチ4aの切替え操作によって選択された処理を実行する制御部とを備え、制御部は、所定の条件を満たす切替え操作が実行されたときに、切替え操作によって選択された処理と、予め規定された処理とを実行する。この場合、制御部は、所定の切替え操作が実行されてから予め規定された所定時間内に次の切替え操作が実行されたときに、次の切替え操作を上記の所定の条件を満たす切替え操作として各処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理選択スイッチの切替え操作によって各種の処理を実行可能に構成された測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の測定装置として、出願人は、ファンクションスイッチ(ロータリースイッチ)の切替え操作によって各種の測定処理を実行可能に構成された電気測定器を特開平8−313561号公報に開示している。この電気測定器では、Vレンジ、mAレンジおよびAレンジの3つの測定レンジのうちからファンクションスイッチの切替え操作によって選択された測定レンジによる測定処理を実行可能に構成されている。具体的には、ファンクションスイッチによってOFFレンジが選択されている状態において、例えば、測定対象体の両端電圧を測定する際には、まず、ファンクションスイッチを時計回りに45°回転させてVレンジを選択する。次いで、端子に接続されたテストリードを測定対象体に接続する。これにより、テストリードを介して測定対象体の両端電圧が測定される。
【特許文献1】特開平8−313561号公報(第3−4頁、第1−6図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、出願人が開示している電気測定器には、改善すべき以下の課題がある。すなわち、この種の電気測定器では、ファンクションスイッチを回転させて複数の種類の処理のうちから所望の処理を選択してその処理を実行する構成が採用されている。この場合、出願人が開示している電気測定器では、上記のファンクションスイッチのほかには処理選択スイッチを備えていないため、この電気測定器に例えば自動省電力遷移処理等の付加的な処理を実行させる機能を持たせて、スイッチ操作によって付加的な処理を実行させようとした場合、測定レンジを選択するための上記のファンクションスイッチの他に、付加的な処理を実行させるための専用の操作スイッチを別途に配設する必要が生じる。このため、操作スイッチの別途配設に起因して、電気測定器の製造コストが高騰するおそれがある。また、ファンクションスイッチの他に操作スイッチを配設する場合、そのスイッチの分だけ測定装置の操作パネルが大形化するおそれもある。
【0004】
本発明は、かかる改善すべき課題に鑑みてなされたものであり、製造コストの高騰および装置の大形化を招くことなく、付加的な処理を実行し得る測定装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成すべく請求項1記載の測定装置は、ロータリースイッチまたはスライドスイッチで構成された処理選択スイッチを有する操作部と、前記処理選択スイッチの切替え操作によって選択された処理を実行する制御部とを備え、前記制御部は、所定の条件を満たす前記切替え操作が実行されたときに、当該切替え操作によって選択された処理と、予め規定された処理とを実行する。
【0006】
また、請求項2記載の測定装置は、請求項1記載の測定装置において、前記制御部は、所定の前記切替え操作が実行されてから予め規定された所定時間内に次の切替え操作が実行されたときに、当該次の切替え操作を前記所定の条件を満たす切替え操作として前記各処理を実行する。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の測定装置によれば、所定の条件を満たす切替え操作が実行されたときに、制御部が切替え操作によって選択された処理と予め規定された処理とを実行することにより、予め規定された処理を実行させるための専用の操作スイッチを別途配設することなく、処理選択スイッチの切替え操作によって、選択した処理と、予め規定された付加的な処理とを実行することができる。したがって、製造コストの高騰および装置の大形化を招くことなく、所望の付加的な処理を実行し得る測定装置を提供することができる。
【0008】
また、請求項2記載の測定装置によれば、所定の切替え操作が実行されてから予め規定された所定時間内に次の切替え操作が実行されたときに、制御部が次の切替え操作を所定の条件を満たす切替え操作として各処理を実行することにより、予め規定された処理を実行させる切替え操作を煩雑化させることなく、所定時間内に切替え操作を行うだけで、予め規定された付加的な処理を実行させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係る測定装置の最良の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0010】
図1に示す測定装置1は、本発明に係る測定装置の一例であって、測定部2、制御部3、操作部4および表示部5を備え、後述するように、直流電圧測定レンジ、交流電圧測定レンジ、抵抗測定レンジおよび導通測定レンジの4つの測定レンジのうちから切替え操作によって選択された任意の1つの測定レンジに対応する測定処理(本発明における「処理」の一例)を実行可能に構成されている。また、この測定装置1は、自動省電力遷移処理を実行可能に構成され、予め規定された所定時間(一例として、3分間)に亘って無操作状態が続いたときに、自動的に電源を遮断する。
【0011】
測定部2は、A/Dコンバータおよび演算部などを備え(図示せず)、制御部3の制御に従って入力信号についての電気的パラメータ(電流値や電圧値)を所定の周期でサンプリングしてサンプリングデータを生成すると共に、生成したサンプリングデータに基づいて測定値を演算する。制御部3は、測定装置1を総括的に制御する。具体的には、制御部3は、測定装置1に電源が投入された状態において図3に示す測定処理10を実行し、操作部4の切替え操作によって選択された測定レンジで測定部2に測定処理を実行させると共に、測定部2による測定結果(サンプリングデータに基づく演算値)を表示部5に表示させる。
【0012】
また、制御部3は、2種類の内部タイマを備え、ロータリスイッチ4aの切替え操作が行われたときには、例えば1秒を計測する内部タイマを作動させて次の切替え操作までの時間間隔を計測すると共に次の切替え操作が1秒以内に行われたときには、後述するように付加的な処理を実行する。また、制御部3は、ロータリスイッチ4aの切替え操作が行われたときには、例えば3分を計測する内部タイマを作動させて次の切替え操作までの時間間隔を計測すると共に次の切替え操作が3分以内に行われないとき、つまり無操作状態が3分続いたときには、測定装置1の電源を遮断する。なお、この測定装置1では、電源投入直後においては、自動省電力遷移処理がオフに設定されており、所定の条件を満たす切替え操作が実行されたときに、制御部3が自動省電力遷移処理をオンに設定するように構成されている。
【0013】
操作部4は、図2に示すように、測定装置1の操作パネルに配設されたロータリスイッチ4aを備え、ロータリスイッチ4aの切替え操作に応じた出力信号を制御部3に出力する。この場合、ロータリスイッチ4aは、本発明における処理選択スイッチの一例であって、前述した4つの測定レンジのうちから任意の1つの測定レンジを切替え操作可能に構成されている。表示部5は、制御部3の制御下で測定部2による測定結果(演算結果)を数値表示する。
【0014】
この測定装置1を用いて、例えば任意の2点間の導通の有無を測定する際には、まず、図2に示すように電源遮断(「OFF」)を選択している状態のロータリスイッチ4aを矢印A1の向きに回転させることにより、最も右端に位置する「導通測定レンジ」を選択する(本発明における切替え操作の一例)。この際に、測定装置1に電源が投入されて、制御部3は、図3に示す測定処理10を開始する。この測定処理10では、制御部3は、測定部2を制御することにより、ロータリスイッチ4aの切替え操作によって選択された測定レンジ(この例では、導通測定レンジ)の測定処理(本発明における処理)を実行させる(ステップ11)。これにより、テストプローブ(図示せず)を接触させている任意の2点間の導通の有無が測定部2によって測定されると共に、その測定結果が表示部5に表示される。次いで、制御部3は、ロータリスイッチ4aが操作されたか否かを監視する(ステップ12)。
【0015】
一方、抵抗値を測定する際には、ロータリスイッチ4aを図2に示す矢印A2の向きに回転させることにより、左隣に位置する「抵抗測定レンジ」を選択する(本発明における切替え操作の他の一例)。この際に、制御部3は、切替え操作が実行されたと判別し(ステップ12)、ロータリスイッチ4aの切替え操作によって選択された測定レンジ(この例では、抵抗測定レンジ)の測定処理を実行させる(ステップ13)。これにより、テストプローブ(図示せず)を接触させている任意の2点間の抵抗値が測定部2によって測定されると共に、その測定結果が表示部5に表示される。また、制御部3は、切替え操作が実行された時点において、1秒を計測する内部タイマからの出力信号の有無に基づき、その直前の切替え操作(この例では、「導通測定レンジ」を選択した切替え操作)から1秒以内の切替え操作であるか否かを判別する(ステップ14)。この際には、1秒を超える時間が経過した後の切替え操作であると判別して、制御部3は、ロータリスイッチ4aが操作されたか否かを監視する(ステップ12)。
【0016】
この際に、自動省電力遷移処理をオンに設定したうえで、再び抵抗値の測定を実行する場合には、一例として、ロータリスイッチ4aを矢印A2の向きに回転させることによって例えば左隣に位置する「交流電圧測定レンジ」を選択した後に(本発明における切替え操作の一例)、1秒が経過する以前に、ロータリスイッチ4aを矢印A1の向きに回転させることによって右隣に位置する「抵抗測定レンジ」を再び選択する(本発明における所定時間内に実行される切替え操作の一例)。この際に、制御部3は、1秒を計測する内部タイマの出力信号を監視することで、切替え操作が実行されたと判別し(ステップ12)、ロータリスイッチ4aの切替え操作によって選択された測定レンジ(この例では、抵抗測定レンジ)の測定処理を実行させる(ステップ13)。これにより、テストプローブ(図示せず)を接触させている任意の2点間の抵抗値が測定部2によって測定されると共に、その測定結果が表示部5に表示される。
【0017】
また、制御部3は、上記のステップ12で切替え操作が実行されたと判別した時点において、その直前の切替え操作(この例では、「交流電圧測定レンジ」を選択した切替え操作)から1秒以内に「抵抗測定レンジ」を選択する切替え操作が行われたと判別し(ステップ14)、自動省電力遷移処理をオンに設定する(予め規定された付加的な処理の実行:ステップ15)。この際に、制御部3は、3分を計測する内部タイマの出力信号を監視して、ロータリスイッチ4aに対する無操作状態が3分間に亘って続いたと判別したときに、測定装置1の電源を遮断する。これにより、電源の浪費が回避される。
【0018】
このように、この測定装置1によれば、所定の条件を満たす切替え操作が実行されたときに、制御部3が切替え操作によって選択された処理(測定処理)と予め規定された処理(自動省電力遷移処理)とを実行することにより、予め規定された処理を実行させるための専用の操作スイッチを別途配設することなく、処理選択スイッチ(この例では、ロータリスイッチ4a)の切替え操作によって、選択した測定処理と、予め規定された付加的な処理(この例では、自動省電力遷移処理)とを実行することができる。したがって、製造コストの高騰および装置の大形化を招くことなく、所望の付加的な処理を実行し得る測定装置を提供することができる。
【0019】
また、この測定装置1によれば、所定の切替え操作が実行されてから予め規定された所定時間内(この例では、1秒以内)に次の切替え操作が実行されたときに、制御部3が次の切替え操作を本発明における所定の条件を満たす切替え操作として各処理を実行することにより、予め規定された処理を実行させる切替え操作を煩雑化させることなく、所定時間内に切替え操作を行うだけで、予め規定された付加的な処理を実行させることができる。
【0020】
なお、本発明は、上記の構成に限定されない。例えば、上記の測定装置1では、本発明における処理選択スイッチとして、測定レンジを切替え操作するためのロータリスイッチ4aを備えているが、この処理選択スイッチはこれに限定されず、ロータリスイッチ4aに代えて、スライドスイッチ(図示せず)で構成することができる。この場合、スライドスイッチを採用した構成では、スイッチのスライド位置に応じて本発明における処理に対応する測定レンジが選択され、上記のロータリスイッチ4aの操作時と同様にして、例えば1秒以内に他の処理(測定レンジ)が選択されたときに自動省電力遷移処理等の付加的な処理を実行する。
【0021】
さらに、本発明において所定の条件が満たされたときに実行する付加的な処理については、自動省電力遷移処理に限定されるものではなく、コンパレータ処理、ゼロアジャスト処理(表示残りをキャンセルして強制的にゼロを表示する処理)、および平均化処理等の各種の処理を切替え操作に応じて付加する構成を採用することができる。また、上記の測定装置1では、測定レンジを切替え操作するためのロータリスイッチ4aの操作によって予め規定した処理(この例では、自動省電力遷移処理)を実行する構成を採用しているが、本発明における処理選択スイッチは、これに限定されず、例えば、電圧測定時や電流測定時における分解能を切り替える切替えスイッチを有する測定装置においては、この切替えスイッチの切替え操作によって付加的な処理を実行させるように構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】測定装置1の構成を示すブロック図である。
【図2】測定装置1の正面図である。
【図3】測定処理10のフローチャートである。
【符号の説明】
【0023】
1 測定装置
3 制御部
4 操作部
4a ロータリスイッチ
10 測定処理

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータリースイッチまたはスライドスイッチで構成された処理選択スイッチを有する操作部と、前記処理選択スイッチの切替え操作によって選択された処理を実行する制御部とを備え、
前記制御部は、所定の条件を満たす前記切替え操作が実行されたときに、当該切替え操作によって選択された処理と、予め規定された処理とを実行する測定装置。
【請求項2】
前記制御部は、所定の前記切替え操作が実行されてから予め規定された所定時間内に次の切替え操作が実行されたときに、当該次の切替え操作を前記所定の条件を満たす切替え操作として前記各処理を実行する請求項1記載の測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−20228(P2008−20228A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−190155(P2006−190155)
【出願日】平成18年7月11日(2006.7.11)
【出願人】(000227180)日置電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】