説明

湾曲した形状の長尺部品のための包装支持材とそれを用いた包装支持体および湾曲部品包装体

【課題】自動車のドリップモールのように、長くかつ湾曲した形状であって、自立性に乏しく、変形しやすい部品を、安定的にかつ高い収容効率で収容することのでき、かつ、製造コストや保管スペースも小さくすることのできる、改良された湾曲部品包装体10を提供する。
【解決手段】湾曲部品包装体10は、外箱20と、包装支持体30Sと、湾曲した形状の複数本の長尺部品40とで構成される。包装支持体30Sは包装支持材30で構成され、包装支持材30は、長尺部品の一端部を支持するための段積み可能な第1の支持材30Aと、他端部を支持するための段積み可能な第2の支持材30Bと、長尺部品40の中間部を支持するための段積み可能な第3の支持材30Cとで構成される。長尺部品40の湾曲程度に応じて、第3支持材30Cを多段に段積みする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湾曲した形状の長尺部品のための包装支持材とそれを用いた包装支持体および湾曲部品包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車には、形状の異なる多数の部品が使用されており、それらの部品は、部品の製造工場から自動車の組み立て工場へ、包装材によって包装された湾曲部品包装体として搬送される。部品の中には、自動車のドリップモールのように、長くかつ湾曲した形状のものがあり、通常、そのような部品は自立性に乏しく、また変形しやすいことから、慎重な包装が求められている。
【0003】
そのような部品の包装に好適な包装材として、特許文献1には、長尺部品の湾曲形状に応じて平面形状が湾曲形状をなす複数本の収納溝を所定の間隔をおいて形成するとともに、これら複数本の収納溝の一端部側は寄せ集めて1本の収納溝とした包装材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−58874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載される形態の包装材は、収容部品の形状に応じた湾曲形状をなす複数本の収納溝を所定の間隔をおいて有しており、湾曲した長尺部品の複数本を安定的に収容することができる。しかし、基本的に湾曲形状を平面方向に配置するようにしており、側縁に沿ってリップ部を有しているような部品を収容する場合に、リップ部に損傷を与える恐れがある。そのために、収容する湾曲部品の形状や大きさに応じて、包装材内での収容溝の位置や形状に十分な注意を払う必要があるとともに、異なる部品ごとに、それに対応した収容溝を有する包装材が必要となり、汎用性がないことから、包装材としての製造コストが高くなっている。
【0006】
また、この種の包装材は、通常、1つの成形品として作られており、材料に係るコストも大きく、非使用時に広い保管スペースも必要となる。
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、側縁に沿ってリップ部を有している湾曲形状の長尺部品であっても、リップに損傷を与えない姿勢で、その多数本を安定的に収容することができ、かつ、製造コストや保管スペースも小さくすることのできる、より改良された包装支持材とそれを用いた包装支持体、および湾曲部品包装体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による包装支持材は、湾曲した形状の複数本の長尺部品を湾曲方向を上下方向として収容するための包装支持材であって、複数並行に間隔をあけて形成され、前記長尺部品の一端部を支持する支持凹部および段積み可能な係止部を有する第1の支持材と、複数並行に間隔をあけて形成され、前記長尺部品の他端部を支持する支持凹部および段積み可能な係止部を有する第2の支持材と、複数並行に間隔をあけて形成され、前記長尺部品の中間部を支持する支持凹部および段積み可能な係止部を有する第3の支持材と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明による包装支持体は、前記した包装支持材を用いた包装支持体であって、前記第1の支持材は、長尺部品の一端部が支持されるように配置され、前記第2の支持材は、長尺部品の他端部が支持されるように配置され、前記第3の支持材は、長尺部品の中間部における少なくとも一箇所に配置され、長尺部品の湾曲の程度によって多段に積み重ねられることを特徴とする。
【0010】
また、本発明による湾曲部品包装体は、前記した包装支持体と、該包装支持体に支持された長尺部品を収容する外箱を用いた湾曲部品包装体であって、前記外箱内に長尺部品を収容した包装支持体が2層以上に収容されていることを特徴とする。
【0011】
本発明による上記した包装支持材は、湾曲した形状の長尺部品の両端部と少なくともその間の一箇所を支持する第1〜第3の支持材からなっている。従来の包装支持材のように包装支持材を1つの物として作る場合と比較して、包装支持材に要する材料を少なくすることができ、また、非使用時での第1〜第3の支持材の保管スペースも小さくなる。それにより、コストの低減が図られる。
【0012】
また、本発明による上記した包装支持体は、前記第1〜第3の支持材の段積み数を変えることによって、湾曲の程度が異なる多種類の長尺部品も収容することができる。そのために、包装支持材および包装支持体は、汎用性を持つことができ、この点からも包装支持材および包装支持体に係るコストが低減する。
【0013】
また、本発明による湾曲部品包装体は、長尺部品を湾曲方向が上下方向となるようにして収容する。そのために、収容する長尺部品が、その側縁に沿ってリップ部を有している場合であっても、リップ部に損傷を与えない状態で、容易にかつ安定した姿勢で、収容することができる。また、長尺部品が2段以上に収容されることで、高い収容効率を挙げることができる。
【0014】
本発明による湾曲部品包装体の好ましい態様において、前記外箱の上蓋との間を埋めるべく、長尺部品が収容された包装支持体の上または下に、必要枚数の前記第1の支持材、第2の支持材および第3の支持材がそれぞれ積み重ねられている。この態様の湾曲部品包装体では、別途緩衝材等を必要としないので、湾曲部品包装体を構成する部品数の低減も可能となる。
【0015】
本発明において、外箱は、金属製あるいは木製あるいは段ボール製であって、底部と側壁と上蓋を備えた任意の外箱であってよい。底部の裏面にフォークリフトのフォーク挿入口が備えられた外箱であってもよい。
【0016】
本発明において、前記第1の支持材、第2の支持材および第3の支持材は、所要の緩衝性と機械的強度を備えることを条件に任意の材料で作ることができる。発泡樹脂でもよく、非発泡樹脂でもよい。好ましくは、成形性および軽量性の観点から発泡樹脂成形品であり、より好ましくは型内発泡成形品である。さらに好ましくは熱可塑性樹脂の発泡成形品であることが好ましい。熱可塑性樹脂には、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂等)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリカーボネート系樹脂、ポリ乳酸系樹脂などが挙げられる。なかでも、ポリスチレンとポリエチレンとを含む複合樹脂を用いることが好ましい。発泡体の倍率は、包装しようとする部品の重量や形状等を勘案して適宜設定すればよいが、緩衝性がよく、座屈しない強度を持ち、軽量で経済的である点から、30〜50倍(0.033g/L〜0.020g/L)程度である。発泡成形に限らす、真空成型、射出成形によって作ることもできる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、自動車のドリップモールのように、長くかつ湾曲した形状であって、自立性に乏しく、変形しやすい部品を、安定的にかつ高い収容効率で収容することのできる、湾曲した形状の長尺部品のための包装支持材とそれを用いた包装支持体および湾曲部品包装体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による包装支持体および湾曲部品包装体の一実施の形態を示す側面図。
【図2】図1に示す湾曲部品包装体を上から見た図。
【図3】本発明による包装支持材を構成する各支持材の一例を示す斜視図。
【図4】本発明による包装支持体の一例を示す斜視図。
【図5】図4に示す包装支持体を用いて湾曲した形状の長尺部品を一段に配置した状態の湾曲部品包装体を示す斜視図。
【図6】図4に示す包装支持体を用いて湾曲した形状の長尺部品を多段に配置した状態の湾曲部品包装体を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明を実施の形態に基づき説明する。
本発明による湾曲部品包装体10は、外箱20と、包装支持体30Sとで構成される。この例において、外箱20は段ボール製の箱形容器であり、底部21と、側壁22と、上蓋23とを持つ。
【0020】
包装支持体30Sは、包装支持材30で構成される。包装支持材30は、この例で発砲ポリスチレンの一体成形品であり、図3に示すように、第1の支持材30Aと、第2の支持材30Bと、第3の支持材30Cとで構成される。第1〜第3の支持材30A〜30Cの厚さは例えば50mm程度であり、前記外箱20の高さの1/10程度の厚さとされる。また、第1〜第3の支持材30A〜30Cの長さは、外箱20の底部21の短手方向の長さとほぼ同じとされる。
【0021】
第1の支持材30Aは、包装しようとする湾曲した形状の長尺部品40の一端部を支持するためのものであり、その上面側に複数個の支持凹部31が形成されている。また、その両端部の表面側と裏面側には、第1の支持材30A同士を多段に安定的に段積みするための係止部として、突起32と該突起32が入り込むことのできる形状の切り欠き33が形成されている。
【0022】
第2の支持材30Bは、前記長尺部品40の他端部を支持するためのものであり、第1の支持材30Aと同様に、その上面側に複数個の支持凹部31が形成され、また、その両端部の表面側と裏面側には、係止部としての突起32と該突起32が入り込むことのできる形状の切り欠き33が形成されている。
【0023】
第3の支持材30Cは、包装時に前記した第1の支持材30Aと第2の支持材30Bとの間に配置されて、湾曲した形状の長尺部品40の中間部を支持するためのものであり、1種あるいは2種以上の形態のもので構成される。図示の例では、第1の第3の支持材30C1と第2の第3の支持材30C2の2種類で第3の支持材30Cを構成している。第3の支持材30Cの上面側および必要な場合には下面側には、包装しようとする長尺部品40の中間部を支持するための支持凹溝が形成される。前記凹溝の形状は、包装しようとする長尺部品40の形状と第3の支持材30Cの配置位置等によって適宜設定されるが、図示の例で、第1の第3支持材30C1には、上面側に複数個の上支持凹溝34と下面側に下支持凹溝35が形成されており、第2の第3の支持材30C2には、上面側に複数個の上支持凹溝36が形成されている。さらに、第3の支持材30Cの両端部の表面側と裏面側には、第1支持材30Aおよび第2支持材30Bと同様に、第3支持材30C同士を多段に安定的に段積みするための係止部として、突起32と該突起32が入り込むことのできる形状の切り欠き33が形成されている。
【0024】
上記の包装支持材30を用いて、湾曲した形状の長尺部品40を包装する手順を説明する。最初に、前記した外箱20の上蓋23を開き、底部21の両端に第1の支持材30Aと第22支持材30Bを定置する。また、その中間の位置に、第1の第3支持材30C1と第2の第3支持材30C2とを、適宜の距離をおいて、適宜の段数段積みする。その状態が図4に示されており、本発明による包装支持体30Sの一例である。
【0025】
配置した各支持材30A、支持材30B、30の上に、図5に示すように、湾曲した形状の長尺部品40を湾曲方向を上下方向として配置する。その際に、長尺部品40の両端部を第1の支持材30Aおよび第2の支持材30Bに形成した支持凹部31に位置させると共に、中間部の2か所を、多段に段積みした第1の第3の支持材30C1および第2の第3の支持材30C2における最上位に位置する第1の第3の支持材30C1および第2の第3の支持材30C2の上面側に形成した上支持凹溝34、36内に位置させる。そして、収容しようとする長尺部品40の湾曲形状に応じて、最も安定した状態が得られるように、第1の第3の支持材30C1および第2の第3の支持材30C2の高さ、すなわち段積みする段数と、間隔を調整する。
【0026】
それにより、長尺部品40は、それが自動車のドリップモールのように、長くかつ湾曲した形状であって、自立性に乏しく、変形しやすい部品であっても、安定した状態で湾曲部品包装体10内に収容される。また、縁部に沿ってリップ部を有している場合であっても、リップ部に損傷を与えない状態で収容される。
【0027】
湾曲した形状の長尺部品40を上下方向に多段に収容する場合には、各支持材30A,30B,30Cの上に、同種の支持材を1段だけ段積みし、その上に、1段目と同様にして、2段目の長尺部品40を配置する。以下、同様にして必要とされる段数だけ、長尺部品40を上下方向に配置する。図6はその状態を示しており、図示のものでは、上下方向3段に長尺部品40が配置収容されている。
【0028】
次に、図1に示すように、最上段に位置する各支持材30A,30B,30Cの上に、同種の支持材を、高さが外箱20の上蓋23の位置に達するまでさらに段積みし、その後、上蓋23をすることにより、本発明による湾曲部品包装体10が完成する。必須ではないが、包装に際して、図2に示すように、各支持材30A,30B,30Cが不用意に位置ずれを起こさないように、各支持材30A,30B,30Cの間に、位置規制具37を配置することは望ましい。
【0029】
上記のように、本発明で使用する包装支持材を構成する各包装材30A,30B,30Cは、支持材を1つの物として作る場合と比較して小型のものであり、支持材に要する材料を少なくすることができる。また、非使用時での支持材30A,30B,30Cの保管スペースも小さくすることができる。それにより、コストの低が図られる。さらに、各支持材30A,30B,30Cの段積み数や外箱20内での配置位置を調整することで、湾曲の程度が異なる多種類の長尺部品の収容する場合でも、同じ支持材30A,30B,30Cを用いて対応することが可能であり、包装支持体30Sおよび各支持材30A,30B,30Cは汎用性を持つこととなり、この点からも湾曲部品包装体10に係るコストが低減する。
【符号の説明】
【0030】
10…本発明による湾曲部品包装体、
20…外箱、
21…底部、
22…側壁、
23…上蓋、
30…包装支持材、
30S…包装支持体、
30A…第1の支持材、
30B…第2の支持材、
30C…第3の支持材、
30C1…第1の第3の支持材、
30C2…第2の第3の支持材、
31…支持凹部、
34…上支持凹溝、
35…下支持凹溝、
40…包装しようとする湾曲した形状の長尺部品。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲した形状の複数本の長尺部品を湾曲方向を上下方向として収容するための包装支持材であって、
複数並行に間隔をあけて形成され、前記長尺部品の一端部を支持する支持凹部および段積み可能な係止部を有する第1の支持材と、
複数並行に間隔をあけて形成され、前記長尺部品の他端部を支持する支持凹部および段積み可能な係止部を有する第2の支持材と、
複数並行に間隔をあけて形成され、前記長尺部品の中間部を支持する支持凹部および段積み可能な係止部を有する第3の支持材と、を備えることを特徴とする包装支持材。
【請求項2】
湾曲した形状の複数本の長尺部品を湾曲方向を上下方向として収容するための請求項1に記載の包装支持材を用いた包装支持体であって、
前記第1の支持材は、長尺部品の一端部が支持されるように配置され、
前記第2の支持材は、長尺部品の他端部が支持されるように配置され、
前記第3の支持材は、長尺部品の中間部における少なくとも一箇所に配置され、長尺部品の中間部が支持されるように長尺部品の湾曲の程度によって多段に積み重ねられることを特徴とする包装支持体。
【請求項3】
湾曲した形状の複数本の長尺部品を湾曲した方向を上下方向として収容するための請求項2に記載の包装支持体と、該包装支持体に支持された長尺部品を収容する外箱を用いた湾曲部品包装体であって、
前記外箱内に長尺部品を支持した包装支持体が収容されていることを特徴とする湾曲部品包装体。
【請求項4】
前記外箱内に収容された長尺部品を支持した包装支持体を構成する第1の支持材、第2の支持材および第3の支持材の上に、それぞれ1または複数の第1の支持材、第2の支持材および第3の支持材を積み上げて、2段以上に長尺部品を収容することを特徴とする請求項3に記載の湾曲部品包装体。
【請求項5】
前記外箱の上蓋との間を埋めるべく、長尺部品が収容された包装支持体の上または下に、必要枚数の前記第1の支持材、第2の支持材および第3の支持材がそれぞれ積み重ねられていることを特徴とする請求項3または4に記載の湾曲部品包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−228790(P2010−228790A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79835(P2009−79835)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】