説明

湿式画像形成装置

【課題】現像装置において、保管性と、定着性、現像性および転写性に優れた液体現像剤を生成することが可能な湿式画像形成装置を提供する。
【解決手段】現像装置200には分散媒であるキャリア液のみから希釈液72を貯蔵する希釈液カートリッジ70と、トナー粒子と分散媒であるキャリア液とからなり液体現像剤62よりトナー濃度が高い濃縮液体現像剤82を貯蔵する濃縮液体現像剤カートリッジ80が設けられている。濃縮液体現像剤カートリッジ80中の濃縮液体現像剤82の分散媒の粘度を高くすることにより、トナー粒子の沈降速度が遅くなり、保管安定性を確保する。そして、希釈液カートリッジ70から補給する希釈液72の分散媒の粘度を液体現像剤62の分散媒の粘度より低くして、分散媒同士が混じりあい現像に用いる液体現像剤の分散媒の粘度を低くすることにより定着性等を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置に関し、キャリア液中にトナー粒子を分散させてなる液体現像剤を用いて画像形成を行なう湿式の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置においては、感光体上に形成された静電潜像がトナー粒子により現像されて、そのトナー像が記録用紙に転写されて、画像が形成される。また、中間転写体を備えている場合は、トナー像が、一旦感光体から中間転写体へ一次転写されて、さらに中間転写体から記録用紙へ二次転写されて、画像が形成されることになる。このような画像形成装置の転写プロセスでは、一般に静電転写方式が採用されている。
【0003】
たとえば、感光体上のトナー像を被転写体である中間転写体へ一次転写する場合は、感光体と対向するように配置された中間転写体に電圧を印加し、感光体と中間転写体との間に電界を形成してこの電界によりトナー像を中間転写体に静電吸着させている。
【0004】
また、中間転写体のトナー像を被転写体である用紙へ転写する場合は、中間転写体と対向するように配置された用紙の裏面から転写ローラ等により電圧を印加し、中間転写体と用紙との間に電界を形成してこの電界によりトナー像を用紙に静電吸着させている。
【0005】
感光体上に形成した静電潜像を現像するために用いられる現像剤には、顔料等の着色剤および結着樹脂を含む材料で構成されるトナー粒子を乾式状態で用いる乾式トナーと、トナー粒子を電気絶縁性のキャリア液等に分散した液体現像剤とがある。
【0006】
液体現像剤は、媒体として絶縁性液体を用いていることから、乾式トナーに比べ、微細なトナー粒子を用いることができる。その結果、液体現像剤では、乾式トナーに比べ、細線画像の再現性が良く、階調再現性が良好で、カラーの再現性に優れており、また、高速での画像形成方法としても優れているという特徴を有している。
【0007】
この点で、液体現像剤を生成する種々の方式が提案されている。
例えば、特開2005−84419号公報においては、液体現像剤の定着性および安全性を確保することを目的として不揮発性の溶媒と揮発性の溶媒とを混合したキャリア液を生成する方式が記載されている。
【0008】
また、特開2007−41027号公報においては、トナー粒子が安定して分散した液体現像剤を生成するために、キャリア液として粘度の異なる2種類の液体からなり、粘度の低い液体中でトナー粒子を粉砕し、粘度の高い液体に混合して液体現像剤を生成する方式が記載されている。
【0009】
また、特開平9−160389号公報においては、現像開始時および現像開始後の画像品位を維持するために液体現像剤の粘度を調整する方式が記載されている。
【特許文献1】特開2005−84419号公報
【特許文献2】特開2007−41027号公報
【特許文献3】特開平9−160389号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一方、上述したように液体現像剤は、トナー粒子とそれを分散させる分散媒であるキャリア液とからなり、分散媒であるキャリア液の粘度が低いと定着性は良いが、逆にトナー粒子の沈降が速くなり、トナー粒子が凝集し保管性が悪くなる。
【0011】
逆に、分散媒であるキャリア液の粘度を高くするとトナー粒子の沈降速度は遅くなり、保管性は良くなるが、定着性が悪くなる。また、分散媒であるキャリア液の粘度が高いと電界を印加したときのトナーの移動速度も遅くなり、現像性および転写性も悪くなる。
【0012】
したがって、液体現像剤において、保管性と、定着性、現像性および転写性はトレードオフの関係にある。
【0013】
一般的に、湿式画像形成装置においては、装置中で使用する液体現像剤を生成するために、トナー粒子を補給するための濃縮液体現像剤、分散媒であるキャリア液を補給するための希釈液とが設けられている。
【0014】
この点で、濃縮液体現像剤や希釈液はカートリッジ中に貯蔵され、装置本体に脱着可能であり、装置中の濃縮液体現像剤や希釈液がなくなると新しいカートリッジに交換される。
【0015】
濃縮液体現像剤は装置外で、カートリッジ中で保管される場合が一般的であり、トナー粒子を撹拌するための撹拌機構等は通常設けられていない。したがって、濃縮液体現像剤においては、補給のためのカートリッジ中での保管性を高める必要があるが、保管性と、定着性、現像性および転写性も考慮する必要があり、上記の特許文献のいずれにおいてもこの点については記載されていない。
【0016】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであって、現像装置において、保管性と、定着性、現像性および転写性に優れた液体現像剤を生成することが可能な湿式画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る湿式画像形成装置は、キャリア液にトナーが分散された液体現像剤を用いて像担持体上にトナー像を形成し、像担持体上のトナー像を被転写体に転写する湿式画像形成装置であって、現像に用いる液体現像剤が貯蔵された現像槽と、濃縮されたトナーがキャリア液に分散された濃縮液体現像剤と、濃縮液体現像剤を希釈するキャリア液のみの希釈液とを混合して、現像槽に液体現像剤を供給するための調整部とを備える。濃縮液体現像剤のキャリア液の粘度は、希釈液のキャリア液の粘度よりも高い。
【0018】
好ましくは、希釈液のキャリア液の粘度は、現像に用いる液体現像剤のキャリア液の粘度よりも低い。
【0019】
好ましくは、調整部は、濃縮液体現像剤と、濃縮液体現像剤のキャリア液よりも粘度の低い第1の希釈液とを混合して中間濃縮液体現像剤を生成する第1混合部と、第1混合部で生成された中間濃縮液体現像剤のキャリア液と、同じ粘度のキャリア液のみの第2の希釈液とを混合して現像に用いる液体現像剤を生成する第2混合部とを含む。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る湿式画像形成装置は、調整部において、キャリア液の粘度の高い濃縮液体現像剤と、キャリア液の粘度の低い希釈液を混合して、液体現像剤を生成する。したがって、キャリア液の粘度の高い濃縮液体現像剤を用いることにより、トナー粒子の沈降速度を遅くし、保管安定性を確保するとともに、生成した液体現像剤のキャリア液の粘度を低くすることにより、定着性、現像性および転写性を確保することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明においては同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一であるものとする。
【0022】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に従う湿式画像形成装置の一例を説明する概略構成図である。
【0023】
図1を参照して、本発明の実施の形態1に従う湿式画像形成装置には、ドラム状の像担持体である感光体20が設けられ、感光体20の周辺には矢印で示す回転方向の順に現像装置200、加圧ローラ10、クリーニングブレード22、イレーサランプ24、帯電装置26および露光装置28がそれぞれ配設される。
【0024】
感光体20の表面は、帯電装置26により所定の表面電位に一様に帯電される。そして、その後、露光装置28により画像情報の露光を行ない、感光体20の表面に静電潜像を形成する。次いで、感光体20上の静電潜像は、現像装置200によりトナー粒子およびキャリア液を含む液体現像剤で現像され、感光体20の表面にトナー像が形成される。このとき、トナー粒子だけでなく分散媒であるキャリア液も感光体20の表面に付着する。
【0025】
そして、感光体20の表面に形成されたトナー像は、加圧ローラ10との対向部である転写部に運ばれる。そして、転写部では、被転写体100が矢印の方向に搬送され、加圧ローラ10に印加されたトナー粒子と逆極性の電圧の力により感光体20上のトナー粒子は被転写体100に転写される。そして、トナー粒子が転写された被転写体100は、図示しない定着部に搬送されトナー像が定着される。
【0026】
一方、転写部を通過した後の感光体20上には、クリーニングブレード22が設けられており、感光体20上に残留した転写残トナー粒子および分散媒を回収する。トナー粒子と分散媒とが回収された感光体20はイレーサランプ24により露光され、潜像電位がキャンセルされる。これらの工程を繰り返し行なうことにより、次々に画像が印字される。
【0027】
ここで、液体現像剤は、キャリア液である絶縁性液体と、静電潜像を現像するトナー粒子と、トナー粒子を分散させる分散剤とを主要成分としている。
【0028】
キャリア液としては、一般に電子写真用液体現像剤に用いるものであれば特に制限することなく使用することができるが、中でも不揮発性の液体は好ましい。不揮発性液体としてはたとえば、シリコンオイル、ミネラルオイル、パラフィンオイル、鉱物油等を挙げることができる。
【0029】
トナー粒子としては、一般に電子写真用液体現像剤に用いるものであれば、特に制限することなく使用することができる。トナー用結着樹脂としては、たとえばポリスチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱可塑性樹脂を用いることができる。またこれらの樹脂を複数、混合して用いることも可能である。また、トナーの着色に用いられる顔料および染料も一般に市販されているものを用いることができる。たとえば、顔料としては、カーボンブラック、ベンガラ、酸化チタン、シリカ、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、スカイブルー、ベンジジンイエロー、レーキレッドD等を用いることができる。染料としてはソルベントレッド27やアシッドブルー9等を用いることができる。
【0030】
液体現像剤の調製方法としては、一般に用いられる技法に基づいて調製することができる。たとえば、結着剤樹脂と顔料とを所定の配合比で、加圧ニーダ、ローラミルなどを用いて溶融混練して均一に分散させ、得られた分散体をたとえばジェットミルによって微粉砕する。得られた微粉末をたとえば風力分級機などにより分級することで、所望の粒径の着色トナーを得ることができる。そして、得られたトナー粒子をキャリア液としての絶縁性液体と所定の配合比で混合する。この混合物をボールミル等の分散手段により均一に分散させ、液体現像剤を得ることができる。
【0031】
次に、現像装置200の構成について説明する。
現像装置200には、現像ローラ30が設けられており、現像ローラ30の一部が貯蔵槽40の液体現像剤42に浸漬されている。
【0032】
貯蔵槽40には、着色剤と樹脂とからなるトナー粒子とその粒子を分散させるキャリア液とから成る液体現像剤42が蓄積されている。なお、分散媒であるキャリア液は、粘度が10mPa・sを超えると定着性が悪くなるため、貯蔵槽40の液体現像剤42の分散媒であるキャリア液の粘度は10mPa・s以下であることが望ましい。
【0033】
現像ローラ30が回転することにより液体現像剤42が汲み上げられる。現像ローラ30には、液体現像剤42を一定の厚みに規制するための規制ブレード35が設けられており、汲み上げられた液体現像剤42の厚みは一定になる。また、コロナチャージャ等の帯電装置32により液体現像剤42のトナー粒子は帯電される。
【0034】
図2は、現像前、現像部および分離後の液体現像剤の状態を説明する図である。
図2を参照して、現像前において、図2(a)に示されるように一定に厚みに規制された液体現像剤42は、トナー粒子が帯電された後、感光体20との間においてトナー像を形成する現像部に運ばれ、感光体20と接触される。
【0035】
現像部に搬送される感光体20の表面にはトナー粒子と同極性の静電潜像が形成されており、画像部の電位は低く、非画像部の電位は高い。
【0036】
現像ローラ30には画像部の電位と非画像部の電位の間の電位が印加されている。
現像部では、図2(b)に示されるように、その電位差により画像部のトナー粒子は感光体20表面に、非画像部のトナー粒子は現像ローラ30表面に移動する。
【0037】
その後、図2(c)に示されるように感光体20と現像ローラ30とが分離することで液体現像剤42はそれぞれ感光体20と現像ローラ30とに分断される。
【0038】
感光体20上の画像部にはトナー粒子と分散媒、非画像部には分散媒のみが付着し、消費されることになる。
【0039】
一方、現像ローラ30上の感光体20の画像部に対応する場所には分散媒のみが、非画像部に対応する場所にはトナー粒子と分散媒が存在する。
【0040】
現像後の現像ローラ30上にはクリーニングプレード34が設けられており、現像後のトナー粒子と分散媒をクリーニングし、回収槽50において回収する。
【0041】
回収槽50に回収されたトナー粒子および分散媒を含む回収液は、ポンプ91を介して調整槽60に供給される。
【0042】
現像部を通過した液体現像剤のトナー濃度は元の濃度と異なっているため調整槽60には、トナー濃度を検知する手段(図示せず)が設けられている。
【0043】
トナー濃度を検知する手段は光学的な手段を用いても良いし、液体現像剤62を撹拝するときのトルクから求める手段等を用いても良い。
【0044】
また、調整槽60には、液体現像剤62の量を検知する手段や液体現像剤62を撹拝するための手段が設けられている。
【0045】
調整槽60で調整された液体現像剤62は、ポンプ93を介して貯蔵槽40に供給される。
【0046】
また、現像装置200には分散媒であるキャリア液のみから希釈液72を貯蔵する希釈液カートリッジ70と、トナー粒子と分散媒であるキャリア液とからなり液体現像剤62よりトナー濃度が高い濃縮液体現像剤82を貯蔵する濃縮液体現像剤カートリッジ80が設けられている。
【0047】
これらのカートリッジは装置本体から取り外し可能であり、希釈液72や濃縮液体現像剤82が無くなるとカートリッジごと交換することが可能なように設けられている。これらのカートリッジは装置にセットするまではそれぞれの保管容器となる。
【0048】
濃縮液体現像剤82は、装置にセットされるまでに長期間保管されることが考えられ、その際、トナー粒子が沈降し、トナー粒子同士が凝集する可能性がある。トナー粒子の凝集を防ぐには分散媒であるキャリア液の粘度を高くすることが有効であり、具体的には15mPa・s以上が好ましい。すなわち、濃縮液体現像剤82の分散媒であるキャリア液の粘度は15mPa・s以上が好ましい。
【0049】
濃縮液体現像剤カートリッジ80中の濃縮液体現像剤82の分散媒の粘度を高くすることにより、トナー粒子の沈降速度が遅くなり、保管安定性を確保することが可能である。
【0050】
印字により液体現像剤42が消費されると、調整槽60において、液体現像剤62のトナー濃度や液体現像剤の量を検知し、濃縮液体現像剤カートリッジ80から供給される濃縮液体現像剤82や希釈液カートリッジ70から供給される希釈液72を補給する。
【0051】
湿式現像方式の場合、上述したように画像部でトナー粒子と分散媒、非画像部でも分散媒が消費されるため、分散媒の消費量が多い。
【0052】
具体的には、液体現像剤42のトナー濃度が25wt(重量)%で、画像領域全体に対する画像部(印字部)の割合が20%の画像を印字した場合、1m2あたりトナー粒子は0.3g、分散媒は1.8g消費されることになる。その結果、現像ローラ30から回収される液体現像剤42のトナー濃度は31wt%に増加する。
【0053】
その消費分を補うために、トナー濃度40wt%の濃縮液体現像剤カートリッジ80から濃縮液体現像剤82を0.8g(トナー粒子0.3g、分散媒0.5g)、希釈液カートリッジ70から希釈液を1.3g補給する。
【0054】
これにより、トナー粒子および分散媒の消費分の補給が可能である。
次に、それぞれの分散媒について考える。
【0055】
分散媒は、液体現像剤62の分散媒、濃縮液体現像剤82の分散媒、希釈液72の分散媒が存在する。
【0056】
現像に用いられる液体現像剤42の分散媒は、上述したように定着性の観点から10mPa・s以下が好ましく、濃縮液体現像剤82の分散媒は保管性から15mPa・s以上が好ましい。保管性を考慮して、濃縮液体現像剤82の分散媒に高粘度のものを用いて、調整槽60の液体現像剤62に補給すると、液体現像剤62の分散媒の粘度が増加し、定着性が悪くなる可能性がある。
【0057】
そこで、本発明の実施の形態1に従う方式においては、希釈液カートリッジ70から補給する希釈液72の分散媒の粘度を液体現像剤62の分散媒の粘度より低くする。
【0058】
上述したように、湿式現像方式では濃縮液体現像剤82のみを補給することは少なく、希釈液72も補給することから濃縮液体現像剤82の分散媒に高粘度のものを用いても希釈液72の分散媒に低粘度のものを用いていれば、分散媒同士が混じりあい粘度を低下させることが可能である。
【0059】
図3は、高粘度の分散媒と低粘度の分散媒とを混ぜたときの粘度の変化を説明する図である。
【0060】
図3においては、濃縮液体現像剤82の分散媒としてモレスコホワイトP70((株)松村石油研究所製、粘度15mPa・s)と希釈液72の分散媒としてIPS2028(出光興産(株)製、粘度2.3mPa・s)とを混ぜたときの粘度の変化を示している。
【0061】
具体例として、希釈液72の分散媒としてIPS2028(出光興産(株)製、粘度2.3mPa・s)、液体現像剤62の分散媒としてモレスコホワイトP40((株)松村石油研究所製、粘度4.5mPa・s)、濃縮液体現像剤82の分散媒としてモレスコホワイトP70((株)松村石油研究所製、粘度15mPa・s)を用い、画像領域全体に対する画像部(印字部)の割合が20%の画像を濃縮液体現像剤82と希釈液72とを補給しながら1000枚印字した。
【0062】
そのときの液体現像剤42の分散媒の粘度は5mPa・sであった。
また、液体現像剤62としてモレスコホワイトP40を分散媒としたものを用いたが、濃縮液体現像剤82を希釈液72で薄めたものを液体現像剤として用いることも可能である。
【0063】
なお、本発明の実施の形態に従う分散媒の粘度はCBCマテリアルズ(株)製のVISCOMATE(MODEL VM−10A)を用いて室温25度の環境にて測定した。
【0064】
なお、1000枚印字後の液体現像剤42の分散媒は遠心分離装置H−9R(KOKUSAN社製)にて15000rpm、10minで遠心分離し、分散媒のみを分離した後、粘度測定を行った。
【0065】
したがって、液体現像剤を繰り返し使用する場合であっても、液体現像剤の分散媒の粘度が大きく増加することはなく、濃縮液体現像剤82の分散媒として粘度の高い分散媒を用いることにより、保管性を高めつつ、また、現像に用いる液体現像剤の分散媒の粘度を低くすることにより定着性を向上させることが可能である。
【0066】
そして、貯蔵槽40の液体現像剤42の分散剤の粘度を低く(例えば10mPa・s以下)することにより、電界に対するトナー粒子の移動速度が速く、現像性、転写性も向上させることが可能である。また、ポンプ等による液送等の装置中の液体現像剤の取り扱いも容易となる。
【0067】
また、加熱時の分散剤であるキャリア液の蒸発や、被転写体である紙への浸透が多く、定着性を向上させることが可能である。
【0068】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2に従う現像装置210の構成を説明する図である。
【0069】
図4を参照して、本発明の実施の形態2に従う現像装置210は、現像装置200と比較して、濃縮液体現像剤カートリッジ80を濃縮液体現像剤槽80#に置換するとともに、希釈液97を補給する希釈液カートリッジ95と、濃縮液体現像剤92を補給する濃縮液体現像剤カートリッジ90とをさらに設けた点が異なる。その他の点については同様であるのでその詳細な説明は繰り返さない。
【0070】
濃縮液体現像剤槽80#に貯蔵された濃縮液体現像剤82が無くなった場合、濃縮液体現像剤カートリッジ90を取替え、濃縮液体現像剤92を補給する。
【0071】
したがって、濃縮液体現像剤カートリッジ90中の濃縮液体現像剤92が装置外で保管され、保管性を確保するには濃縮液体現像剤92の分散媒の粘度を高くすることが必要となる。
【0072】
本例においては、一例として液体現像剤62の分散媒、希釈液カートリッジ70の希釈液72の分散媒、濃縮液体現像剤槽80#の濃縮液体現像剤82の分散媒の粘度は全て同じとする。
【0073】
濃縮液体現像剤カートリッジ90の濃縮液体現像剤92の分散媒は上記理由から上記液体現像剤62の分散媒、希釈液72の分散媒、濃縮液体現像剤82の分散媒の粘度より高くする。
【0074】
希釈液カートリッジ95の希釈液97の分散媒の粘度は、液体現像剤62の分散媒、希釈液72の分散媒、濃縮液体現像剤82の分散媒の粘度より低くする。
【0075】
濃縮液体現像剤82が無くなった場合、濃縮液体現像剤カートリッジ90から濃縮液体現像剤92を濃縮液体現像剤槽80#に足す。その際、希釈液カートリッジ95から希釈液97も濃縮液体現像剤槽80#に足し、濃縮液体現像剤82の粘度を所定の値まで低下させる。
【0076】
所定の値としては、希釈液72の分散媒の粘度と同じ値にする。
このようにすることで、液体現像剤62の分散媒、希釈液72の分散媒、濃縮液体現像剤82の分散媒の粘度を同じにすることが可能となり、濃縮液体現像剤82や希釈液72を補給しても液体現像剤62の分散媒の粘度が変化せずに安定し、定着性を満足したまま濃縮液体現像剤カートリッジ90中の濃縮液体現像剤92の保管性も満足することが可能となる。
【0077】
具体例として、液体現像剤62はトナー濃度が25wt%、分散媒は粘度が8mPa・sになるようにIPS2028(出光興産(株)製、粘度2.3mPa・s)とモレスコホワイトP70((株)松村石油研究所製、粘度15mPa・s)を1:4で混合したものを用いている。
【0078】
濃縮液体現像剤カートリッジ90中の濃縮液体現像剤92はトナー濃度が45wt%で、その分散媒はモレスコホワイトP70(粘度15mPa・s)を用いている。
【0079】
希釈液72も粘度が8mPa・sになるようにIPS2028(出光興産(株)製、粘度2.3mPa・s)とモレスコホワイトP70((株)松村石油研究所製、粘度15mPa・s)を1:4で混合したものを用いている。
【0080】
希釈液97は、IPS2028(出光興産(株)製、粘度2.3mPa・s)を用いる。
【0081】
希釈液97を濃縮液体現像剤92に添加し、濃縮液体現像剤82のトナー濃度が40wt%になるように希釈する。このようにすることで濃縮液体現像剤82の分散媒の粘度は8mPa・sとなる。
【0082】
濃縮液体現像剤カートリッジ90中の濃縮液体現像剤92のトナー濃度、濃縮液体現像剤槽80#のトナー濃度、希釈液97の分散媒の粘度により濃縮液体現像剤92の分散媒の粘度を決めることが出来る。その際、分散媒の粘度は15mPa・s以上であれば、特に上記以外のものを適用することも可能である。
【0083】
本発明の実施の形態2に従う方式の如く、補給する濃縮液体現像剤カートリッジ90中の濃縮液体現像剤92について、装置中で液体現像剤62に補給される濃縮液体現像剤82よりも分散媒の粘度を高くすることにより、保管性を高めることが可能である。
【0084】
また、補給する濃縮液体現像剤カートリッジ90中の濃縮液体現像剤92について、装置中で低粘度の希釈液97で希釈し、濃縮液体現像剤82を生成するとともに、装置中の濃縮液体現像剤82の分散媒の粘度を液体現像剤62および希釈液72の分散媒の粘度と同じにすることにより、濃縮液体現像剤82の補給時における液体現像剤62の分散媒の粘度が変化せずに安定させることが可能である。
【0085】
また、上記の実施の形態2においては、希釈液72の分散媒を液体現像剤62の分散媒と同じ粘度のものを用いているが、この希釈液72の分散媒を液体現像剤62の分散媒より低粘度のものを用いることも可能である。例えば、希釈液97と同じものを用いても良い。
【0086】
希釈液72の補給により、液体現像剤62の分散媒の粘度が低くなるが、液体現像剤62の分散媒の粘度が低くなっても問題はない。
【0087】
なお、上記の実施の形態では感光体20から被転写体である紙への直接転写の例について説明したが、中間転写体を用いた構成に適用することも当然に可能である。
【0088】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の実施の形態に従う湿式画像形成装置の一例を説明する概略構成図である。
【図2】現像前、現像部および分離後の液体現像剤の状態を説明する図である。
【図3】高粘度の分散媒と低粘度の分散媒とを混ぜたときの粘度の変化を説明する図である。
【図4】本発明の実施の形態2に従う現像装置210の構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0090】
10 加圧ローラ、20 感光体、22 クリーニングブレード、24 イレーサランプ、26,32 帯電装置、28 露光装置、30 現像ローラ、34 クリーニングブレード、35 規制ブレード、40 貯蔵槽、50 回収槽、60 調整槽、70,95 希釈液カートリッジ、80,90 濃縮液体現像剤カートリッジ、91,93 ポンプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア液にトナーが分散された液体現像剤を用いて像担持体上にトナー像を形成し、前記像担持体上のトナー像を被転写体に転写する湿式画像形成装置であって、
現像に用いる前記液体現像剤が貯蔵された現像槽と、
濃縮されたトナーがキャリア液に分散された濃縮液体現像剤と、前記濃縮液体現像剤を希釈するキャリア液のみの希釈液とを混合して、前記現像槽に前記液体現像剤を供給するための調整部とを備え、
前記濃縮液体現像剤のキャリア液の粘度は、前記希釈液のキャリア液の粘度よりも高い、湿式画像形成装置。
【請求項2】
前記希釈液のキャリア液の粘度は、前記現像に用いる液体現像剤のキャリア液の粘度よりも低い、請求項1記載の湿式画像形成装置。
【請求項3】
前記調整部は、
前記濃縮液体現像剤と、前記濃縮液体現像剤のキャリア液よりも粘度の低い第1の希釈液とを混合して中間濃縮液体現像剤を生成する第1混合部と、
前記第1混合部で生成された中間濃縮液体現像剤のキャリア液と、同じ粘度のキャリア液のみの第2の希釈液とを混合して前記現像に用いる前記液体現像剤を生成する第2混合部とを含む、請求項1記載の湿式画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−300875(P2009−300875A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−156878(P2008−156878)
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】