説明

滑り止め付き履物底

【課題】 優れた滑り止め機能を具備させて、滑り対する高い安全性の確保のもとで、歩行、走行等の活動ができる滑り止め付き履物底を提供と、一部に付加した構成によって釣り用履物に適した滑り止め付き履物底を提供することを課題とする。
【解決手段】 底主体(1) の接地面(7) であって、走、歩行の際の体重移動時における体重支持分布が大となる前踏部(2) の複数箇所及び踵部(3) の一箇所又は二箇所に、いずれの場合も二箇所以上の場合は、相互の間に接地面(7) を確保した滑止領域(4) を形成するにおいて、該滑止領域(4) 内に、金属製線材の多数本を引き揃えて集束したセグメント(5) の多数を、その先端が歩行等における接地違和感を与えることなく、且つ滑止機能を発揮する長さだけ突出させて滑止領域(4) を形成し、底主体(1) の表面には、セグメント(5) を構成する線材の抜け防止手段を施し且つ底主体(1) の表面に一層又は複数層からなる内底体(6) を積層被覆したことを特徴とする滑り止め付き履物底。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、紳士靴、婦人靴、スリッパ、サンダル、釣り用靴等の履物底に滑止機能を具備させた滑り止め付き履物底に関するものである。
【0002】
【従来の技術と解決すべき課題】
一般に、ゴム、スポンジ、ウレタンゴム等の軟質材料で底主体を形成した履物においては、底主体自体に同一材料で凹凸を形成して、この凹凸を舗装面等の固い表面に対しては、体重及び移動やキックによる力で接地面に対して変形させ、また地道面等においては、凹凸部の地表への入り込み及び変形等によって滑り抵抗を増大させることにより滑り止め機能を具備させたものが多いが、このような軟質材料により形成される履物底の凹凸では、路面等の環境、例えば、路面が雨、散水等で濡れていたり、凍結しているような場合には十分な滑り止め機能を期待することができない点に課題がある。
【0003】
本考案は、野球用、サッカー用、ゴルフ用、陸上競技用等の運動用特殊靴を除くカジュアルな履物に、優れた滑り止め機能を具備させて、滑りに対する高い安全性の確保のもとで、歩行、走行等の活動ができる滑り止め付き履物底を提供するとともに、一部に付加した構成によって釣りに適した滑り止め付き履物底を提供することを目的としている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本考案は上記課題を解決しその目的を達成するために成されたものであって、底主体(1) の接地面(7) であって、走、歩行の際の体重移動時における体重支持分布が大となる前踏部(2) 及び/又は踵部(3) の一乃至複数箇所に、いずれの場合も二箇所以上の場合は、相互の間に接地面(7) を確保した滑止領域(4) を形成するにおいて、該滑止領域(4) 内に、金属製線材の多数本を引き揃えて集束したセグメント(5) の多数を、その先端が歩行等における接地違和感を与えることなく、且つ滑止機能を発揮する長さだけ突出させて滑止領域(4) を形成し、底主体(1) の表面には、セグメント(5) を構成する線材の抜け防止手段を施し且つ底主体(1) の表面に一層又は複数層からなる内底体(6) を積層被覆したことを特徴とする滑り止め付き履物底である。
【0005】
【考案の作用及び効果】
本考案に係る滑り止め付き履物底は上記のように構成したから、底主体(1) の接地面(7) での体重の支持が、滑止領域(4) を設けた前踏部(2) の複数箇所と踵部(3) において集中的となるとともに他の面で補助的に支持されることになり、滑止領域(4) による滑止作用が発揮されるのであるが、特に滑止領域(4) 相互の間に接地面(7) を確保するとともに、滑止領域(4) が金属製線材の多数本を引き揃えて集束したセグメント(5) の多数で形成していることから、滑止領域(4) 相互のセグメント(5) が干渉することなく弾力的に変形するようになって、底主体(1) の接地安定性と滑止効果を一層高めるとともに、足裏に感じる違和感を極めて少なくすることができる。
【0006】
そして請求項2に記載のように、前踏部(2) の複数箇所に設ける滑止領域(4) の一つが、ナイロン等の合成樹脂性線材で形成されたセグメント(5) で形成し、これを爪先部(8) に配設することにより、前記作用効果に加えて、爪先部(8) で他人の靴等を踏み付けるようなことがあっても、爪先部(8) のセグメント(5) が金属製線材の場合のように硬くないから傷を付けることがない。
【0007】
また請求項3に記載のように、底主体(1) がフェルト部材で構成され、セグメント(5) を底主体(1) 又は屈撓性材料から形成した中底体(6) に固定して滑止領域(4) を形成し、該中底体(6) の表面に表底体(9) を積層固定することにより、前記滑止効果等と併せて靴内への水の浸入を阻止するとともに、釣り場環境、例えば石ころ、岩場等の存在する水際、水面下、即ち、川底、池底、海の浅瀬等の凹凸に対応してフェルト部材からなる底主体(1) が変形して、歩行しやすく疼痛を緩和するようになって、歩行及び位置移動等の行動安全性を高め、釣り用履物に適した滑り止め付き履物底とすることができる。
【0008】
さらに請求項4に記載したように、底主体(1) をフェルト部材とするとともに前踏部(2) と踵部(3) の間の土踏まず部分(10)にも、滑止機能のあるセグメント(5) を具備する滑止領域(4) を設けることによって、釣り用に一層適した滑り止め付き履物底とできる。それは、釣り環境での歩行が、安全性を考慮して土踏まず部分(10)で、川底、池底、海底等の苔、汚れ等が付着して滑り易くなった石ころ、岩場等を踏むのが自然であることを考慮すれば、土踏まず部分(10)に設けたセグメント(5) は平坦地での歩行に何等支障を与えずに、釣り場環境での歩行において優れた滑止機能を発揮するようになり、滑りやバランス崩れ等による転倒が防止されて歩行安全性を高めることを理解することができる。
【0009】
【考案の実施の形態】及び
【実施例】
(実施例1)
本考案の実施例1に係る、主としてカジュアルシューズを対象とした滑り止め付き履物底の構成を説明すると、図1は履物底の底面図、図2は図1のA−A線における分解断面図、図3は図2のB部分の拡大図、図4は履物底の平面図であって、底主体(1) 、滑止領域(4) を構成するセグメント(5) 内底体(6) 、化粧用中敷(12)とから構成されており、以下、各部分と相互の結合構成について順次説明する。
【0010】 まず底主体(1) は、射出成形手段により製作可能な耐摩耗性及び防滑性に優れたウレタンゴムからなるものであって、走、歩行の際の均衡状態での体重支持分布が大となる接地面(7) 中、前踏部(2) の中央部を基準としてその中央部の幅方向に連続して又は幅方向の両側部及び爪先部(8) の2〜3か所(図面では3か所)と踵部(3) の一箇所に、相互の間に接地面(7) を確保した滑止領域(4) が形成されている。
【0011】
またセグメント(5) は、線径0.1mm 程度、長さ20mm以上の真鍮製の多数本(150 〜200 本程度)を引き揃えて直径2mm程度に集束したものであり、このセグメント(5) の多数(25束程度)を、それぞれ二つ折して前記底主体(1) のそれぞれの滑止領域(4) に貫通させて植設するとともに、底主体(1) の表面側に、セグメント(5) の抜け止めとして二つ折りした折曲部が跨ぐように直径1mm程度の針金材(11)を配設し、さらに底主体(1) の接地面(7) 側へ長く突出したセグメント(5) の先端を、約0.5 〜1mm程度だけ突出して滑止機能を具備するように切り揃えて固定されている構成とする。
【0012】
そして底主体(1) の周囲に胛被(図示省略)の底開口縁を重ねるとともに、底主体(1) の表面に内底体(6) を重着して、底主体(1) の表面に露呈した各滑止領域(4) のセグメント(5) の折曲部と針金材(11)を隠すとともに、さらにこの内底体(6) の表面に化粧用中敷(12)を積層する。
【0013】
なお、滑止領域(4) に多数のセグメント(5) を設けるにおいて、セグメント(5) は、線径0.1mm 程度の極細の金属製線材の多数本を引き揃えて集束した直径3〜6mmの束としたものであり、滑止領域(4) の単一面積を3〜8cm2 程度とすることを基準とし、前踏部(2) の中央部或は踵部(3) において広い滑止領域(4) とする場合は、前踏部(2) の中央部では16cm2 程度以下とし、踵部(3) では該踵部設置面の半分程度以下の面積を滑止領域(4) として踵部(3) の中央部に形成するものとする。
【0014】
このような限定条件以外となる、例えば、線径が0.08mm以下の場合は、線材が座屈して滑止効果が低くなり、また0.15mm以上とした場合には、逆に線材の弾性変形が少なくなって他の底主体(1) の接地面(7) を減少させる結果となって滑り易くなるだけでなく、足裏に違和感を与えることから好ましくなかった。
【0015】
また線径が0.1mm 程度であってもそのセグメント(5) の集束径が太く、所定の面積の範囲以下及び以上で密接状態またはセグメント(5) 相互間に底主体(1) の接地面(7) を確保した場合には、ある程度違和感は軽減されるものの、面積が狭い場合には線材の座屈により、また面積が広い場合には線材の全体としての弾性変形が少なくなることが原因と思われるが、十分な滑止効果を期待することができなかったことによる。
【0016】
(製作方法)
上記構成の滑り止め付き履物底の製造は、底主体(1) の成形金型の前記所定箇所に所定の面積の滑止領域(4) を設定し、該滑止領域(4) 部分にセグメント(5) の数に応じ数の植設用ピンを設けた金型を用いて射出成形手段により底主体(1) を成形し、成形された底主体(1) のピン孔に、一般的なブラシ植設手段、例えば、図に示すように金属製線材の多数本を引き揃えたセグメント(5) を二つ折りにした束とし、その折曲部分からピン孔に通して表面側で折曲部分に針金材(11)を通すことにより、抜け止め機能を果たすように固定し、最後に底主体(1) の接地面(7) から長く突出している各セグメント(5) を、接地面(7) から必要寸法の約0.5 〜1mm程度を残して余分の突出部分を切断除去することにより底主体(1) を完成させる。
【0017】
次にこの底主体(1) に履物底に対応する胛皮部分(図示省略)を組み合わせた後、底主体(1) の表面に内底体(6) を重着して、底主体(1) の表面に露呈した各滑止領域(4) のセグメント(5) の折曲部と針金材(11)を隠すとともに、さらにこの内底体(6) の表面に化粧用中敷(12)を積層して履物を完成させる。
【0018】
なお滑り止め付き履物底の製造としては、上記に限定されるものではなく、例えば、好ましくは底主体(1) と同質の基板にセグメント(5) を植設したセグメントブロックを別に製作しておき、このセグメントブロックを底主体(1) の成形時にインサート手段で一体化するか、底主体(1) にセグメントロックの基板を嵌合固定するための穴を滑止領域(4) に対応して設け、事後工程において一体化する方法等でも実施することができるものであり、当業者であれば、履物底の材料、例えば、合成ゴム、合成樹脂、皮革等によって他の公知手段の内、最適の製造手段を選択的に採用することができるものである。この場合、セグメント(5) の輪郭形状は、必ずしも円形とする必要がなく、図1、図4に細い仮想線で示しているように長円形としたり、図7に示すように横長矩形或は靴踵の輪郭し相似形とするなど、その配設パターンは、本考案の目的を達成する範囲内で適宜に変更されることは言うまでもない。
【0019】
(実施例2)
本考案の実施例2に係る滑り止め付き履物底は、底主体(1) の前踏部(2) に設ける滑止領域(4) の一つが爪先部(8) に配設されていて、該領域にはナイロン等の合成樹脂製線材で形成したセグメント(5) とした構成であって、他の構成は、実施例1に記載した滑り止め付き履物底と同一のため詳細な説明を省略し、また図面も実施例1を示す図1乃至図4の図面を代用し同一の符号を付している。
【0020】
(実施例3)
本考案の実施例3に係る釣り用履物に使用する滑り止め付き履物底について説明すると、図5は釣り用履物の履物底の底面図、図6は図5のC−C線における断面図を示し、その構成は、底主体(1) をフェルト部材で形成し、該底主体(1) の前踏部(2) と踵部(3) 及び土踏まず部分(10)に相当する位置のそれぞれに滑止領域(4) を設定して、該滑止領域(4) に実施例1において説明したのと同一の材料及び条件から構成されるセグメント(5) を設け、さらに底主体(1) の表面に内底体(6) を及び表底体(9) 接着して、履物内への通水を遮断する構成となっている。
【0021】
上記の釣り用履物として使用する滑り止め付き履物底としての別の構成例としては、フェルト部材からなる底主体(1) の滑止領域(4) に、セグメント(5) の集合体の先端を突出させるためのセグメント突出用穴を設け、この底主体(1) の表面に、セグメント(5) を設けた内底体(6) を重着する構成や、既述したように底主体(1) と同質部材からなる内底体(6) にセグメント(5) を固定し、実施例1と同様の手段で液密状態を確保して、内底体(6) を底主体(1) の表面に重着する構成(図示省略、ただし説明中の符号は、実施例3の履物底を示す図面の符号である)等が考えられる。
【0022】
なお上記説明した実施例1乃至実施例3においては、セグメント(5) を底主体(1) 又は内底体(6) に植設した構成として説明したが、底主体(1) の滑止領域(4) 部分に、セグメント(5) 用ブロックが嵌る嵌合穴を開設し、該嵌合穴に嵌合されるブロック基体にセグメント(5) を植設したセグメントブロックの基板を嵌合固定又はインサート成形手段で一体化しても良い。
【0023】
また実施例1乃至実施例3では、走、歩行の際の体重移動時における体重支持分布が大となる前踏部(2) 及び踵部(3) のそれぞれに、セグメント(5) を設けた場合について説明したが、主に前踏部(2) を接地面として使用し踵部(3) を浮かしたり、逆に踵部(3) のみを接地して前踏部(2) を浮かすように履用する、健康鍛練用靴等においては、前踏部(2) のみ又は踵部(3) のみにセグメント(5) を設けて、それぞれの場合に要求される滑止機能を充足させ、転倒等に対する安全性を確保する場合もある。
【0024】
さらに身体に静電気が帯電して、導電性の対象物に接触した際に、放電による疼痛、不快感を人体に与えることも同時に解決する場合には、セグメント(5) の抜け止め機能を果たしている針金材(11)で、各滑止領域(4) のセグメント(5) の相互を電気的に接続するとともに、円形端子板をセグメント(5) に直接又は針金材(11)にハンダ付けし、さらに底主体(1) の表面には、円形端子板に対応する位置に円板露呈用穴を開設した内底体(6) を敷設固定するとともに、露呈用穴に対応して導通用穴を設けた化粧用中敷を積層する構成とすることによって、足裏からセグメントを介して大地にアースされることになって、人体に帯電した静電気を逃がし、放電による疼痛、不快感を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の実施例1に係る、主としてカジュアルシューズを対象とした滑り止め付き履物底の底面図である。
【図2】図1のA−A線における分解断面図である。
【図3】図3は図2のB部分の拡大図である。
【図4】実施例1に係る履物底の平面図である。
【図5】実施例3に釣り靴用の履物底の底面図である。
【図6】図5のC−C線における分解断面図である。
【図7】靴底に配設した滑止領域の形状パターンを横長矩形、靴踵と相似形状とした場合の一例を示した履物底の底面図である。
【符号の説明】
(1) 底主体
(2) 前踏部
(3) 踵部
(4) 滑止領域
(5) セグメント
(6) 内底体
(7) 接地面
(8) 爪先部
(9) 表底体
(10) 土踏まず部分
(11) 針金材
(12) 化粧用中敷

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 底主体(1) の接地面(7) であって、走、歩行の際の体重移動時における体重支持分布が大となる前踏部(2) 及び/又は踵部(3) の一乃至複数箇所に、いずれの場合も二箇所以上の場合は、相互の間に接地面(7) を確保した滑止領域(4) を形成するにおいて、該滑止領域(4) 内に、金属製線材の多数本を引き揃えて集束したセグメント(5) の多数を、その先端が歩行等における接地違和感を与えることなく、且つ滑止機能を発揮する長さだけ突出させて滑止領域(4) を形成し、底主体(1) の表面には、セグメント(5) を構成する線材の抜け防止手段を施し且つ底主体(1) の表面に一層又は複数層からなる内底体(6) を積層被覆したことを特徴とする滑り止め付き履物底。
【請求項2】 前踏部(2) の複数箇所に設ける滑止領域(4) の一個が、ナイロン等の合成樹脂性線材で形成されたセグメント(5) で形成されており、これが爪先部(8) に配設されている請求項1記載の滑り止め付き履物底。
【請求項3】 底主体(1) がフェルト部材で構成され、セグメント(5) を底主体(1) 又は屈撓性材料から形成した中底体(6) に固定して滑止領域(4) を形成し、該中底体(6) の表面に表底体(9) を積層固定した釣り用として使用する請求項1又は2記載の滑り止め付き履物底。
【請求項4】 滑止領域(4) が前踏部(2) と踵部(3) の間の土踏まず部分(10)にも設けられた請求項3記載の釣り用として使用する滑り止め付き履物底。

【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【登録番号】第3044514号
【登録日】平成9年(1997)10月8日
【発行日】平成9年(1997)12月22日
【考案の名称】滑り止め付き履物底
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平9−5175
【出願日】平成9年(1997)6月17日
【出願人】(000114606)モリト株式会社 (198)