説明

漁業用資材洗浄装置

【課題】海苔養殖用の網のみならずロープ、伸子棒、支柱、ヴイ等の各種漁業用資材の洗浄装置を提供する。
【解決手段】漁業用資材を載置する載置面31を有する載置部3と、前期載置面31の上方に前期載置面31の略全面に対して洗浄液を噴射可能に配設された洗浄ノズル2と、前期載置面31に配設されポンプの圧力により前期洗浄ノズル2から噴射された洗浄液を排水する排水口32とから構成される漁業用資材の洗浄装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海苔等の海藻類養殖用網、漁業用の各種網、魚類等の養殖用網、ロープ、伸子棒、支柱、ヴイ等の各種漁業用資材を洗浄する洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に関連する先行技術文献情報として、例えば、下記の特許文献1が存在する。
【特許文献1】特開2002-320418号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、従来の海苔等の海藻類養殖用網、漁業用の各種網、魚類等の養殖用網、ロープ、伸子棒、支柱、ヴイ等の各種漁業用資材の洗浄は、当該漁業用資材を陸揚げして行っている。
この陸揚げ後の洗浄においては、前記網やロープについては、網用の洗濯機を用いて洗浄し、伸子棒、支柱、ヴイ等については、ブラシやたわしを用いて手作業により洗浄している。
しかしながら、付着物が水を含んで漁業用資材に対してこびりついているため、陸揚げ後に直ちに洗浄しても付着物が落ちにくく、その洗浄作業が確実に行われないことが多く見受けられる。
そのため、ほとんどの場合、漁業用資材の陸揚げ後、長期間野積みして、付着物を腐敗させたり乾燥させたりすることで、付着物を落としやすくしているが、この場合、長期間に亘って野積みすることから、腐敗臭やハエ等が発生し、周辺環境を損ねてしまう要因となっていた。
又、陸上での洗浄作業では、使用した洗浄液をそのまま河川に排水しているのが現状であり、この掛け流された洗浄液や洗浄液に含まれる付着物が河川に対する汚染の要因ともなり得る。
【0004】
そこで、最も付着物が多く付着して落としにくい網を洗浄する手段として前記特許文献1に記載の発明が提案されている。
この特許文献1に記載の発明は、船上に網を洗浄する洗浄装置を備え、その船上で網を洗浄するようにしたものであり、この発明によれば、網を陸揚げする必要がない上に、付着物を腐敗させることもないので、前記した周辺環境への悪影響や河川の汚染を防ぐことができる。
しかしながら、前記特許文献1に記載されている発明は、船上に搭載された洗浄装置により海苔養殖用の網を洗浄する洗浄装置であって、この網以外のロープ、伸子棒、支柱、ヴイ等の各種漁業用資材を洗浄することが想定されていない。
又、特許文献1に記載されている発明は、網を取外して回収しながら、船上に搭載された洗浄装置により洗浄するものであるが、回収される網の枚数は、数百枚に達するため、その網の取外し作業や、ロープ、伸子棒、支柱、ヴイ等の取外し回収作業が極めて重労働となる上、相当な時間も要すると思われる。
更に、特許文献1に記載の発明では、船上に設けられる洗浄装置におけるポンプ、洗浄液タンク、エンジン等の総重量が数百kgにおよぶため、一般の海苔収穫用の船舶にこの洗浄装置を搭載することは、その船舶の性能からきわめて難しいものであると思われる。
【0005】
本発明は、海苔養殖用の網のみならずロープ、伸子棒、支柱、ヴイ等の各種漁業用資材を洗浄するとともに、船舶を使用せず効率的に洗浄し、且つ周辺環境への悪影響の防止することを課題とし、この課題を解決した漁業用資材洗浄装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明が採用した第1発明は、陸上載置式の漁業用資材の洗浄装置であって、
漁業用資材を載置する載置面を有する略容器状の載置部と、前記載置面の上方に当該載置面の略全面に対して洗浄液を噴射可能に配設された洗浄ノズルと、前記載置部に配設され、ポンプの圧力により洗浄ノズルから噴射された洗浄液を排水する排水口とを含むことを特徴とする漁業用資材の洗浄装置である。
【0007】
本発明でいう洗浄液は、洗浄剤水溶液や消毒剤水溶液、又はこれらの水溶液を混合した液体、あるいは、真水、海水等であり、これらの洗浄液を洗浄ノズルからポンプの圧力により勢いよく噴射して漁業用資材に付着した付着物を剥がし落とす。
又、本発明でいう排水口は、前記洗浄ノズルから噴射された洗浄液を排水可能な形態であればよく、例えば、載置面に、少なくとも、漁業用資材が通過不可能な大きさとし、これを一個又は複数個開口した形態が挙げられる。
複数個開口した形態の場合、パンチングメタル状とする形態ものやスリット状の開口を並列させた形態等が挙げられる。
前記排水口の大きさは、前記洗浄ノズルから噴射された洗浄液のみを排水可能な大きさの場合、洗浄後の載置面に剥がれ落ちた付着物は載置面に残るので、載置部から漁業用資材を取り出した後に残った付着物を取り除けばよく、又、比較的小さい付着物であれば洗浄液とともに通過したり、噴射圧力によって強制的に通過したりする。
又、排水口の大きさが、付着物が通過可能な大きさの場合、洗浄液とともに通過し、付着物は載置面に残らない。
又、前記洗浄ノズルから噴射された洗浄液の排水を行う手段として、例えば、第2発明のように、前記排水口を介して排水される洗浄液を貯水する貯水槽部を有し、前記貯水槽部には、貯水槽部に貯水された洗浄液を排水又は排水処理装置に配管可能な排水部を備えていることを特徴とする漁業用資材の洗浄装置が挙げられる。
この場合、前記貯水槽部に排水された洗浄液及び付着物は、排水部から排水され又は排水部から配管を介して排水処理装置へと排水される。
貯水槽部からの排水は、ポンプを用いて強制的に行うことで確実に排水できる。
【0008】
前記洗浄ノズルは、前記載置面の略全面に洗浄液を噴射可能な形態であればよく、例えば、載置面の略全面に洗浄液を噴射可能な複数の洗浄ノズルを配設する形態が挙げられるが、この場合、載置面の面積に応じた個数の洗浄ノズルが必要になるため、載置面の面積によっては、数十個以上の洗浄ノズルを要し、夫々の洗浄ノズルへの配管やメンテナンス等が面倒である。
そのため、洗浄ノズルの数を削減した上で、前記載置面の略全面に洗浄液を噴射可能にするという観点から、第3発明のように、洗浄ノズルを載置面の略全面に亘る範囲で移動可能に配設することが好ましい。
第3発明の具体的な形態として、第4発明のように、載置面の一方向に沿って配列した洗浄ノズルを同方向又は他方向に沿って移動可能に配設した形態が例示できる。
又、洗浄ノズルの数を削減するための他の形態として第5発明では、前記載置部が洗浄ノズル下を移動可能に配設されている形態にした。
又、この場合、第6発明のように、洗浄ノズルを前記載置面の一方向に沿って移動不可能に配列してもよい。
又、更に洗浄ノズルの個数を削減するという観点から、第7発明のように、洗浄ノズルを揺動可能に配設した形態が例示できる。
【0009】
又、載置面に載置される漁業用資材を洗浄ノズルからの洗浄液噴射による噴射圧でずれたり跳ね上がったりしないようにするという観点から、第8発明のように、載置面に漁業用資材を保持する保持手段を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、下記の優れた効果が期待できる。
第1発明によれば、海苔養殖用の網のみならずロープ、伸子棒、支柱、ヴイ等の各種漁業用資材を洗浄するとともに、船舶を使用せず効率的に洗浄し、且つ周辺環境への悪影響の防止できる。
又、第2発明によれば、前記洗浄ノズルから噴射された洗浄液を排水することができる。
又、第3発明によれば、洗浄ノズルの数を削減した上で、前記載置面の略全面に洗浄液を噴射できる。
又、第4発明乃至第6発明によれば、洗浄ノズルの数を削減した上で、前記載置面の略全面に洗浄液を噴射できる構成を具体的に提供できる。
又、第7発明によれば、洗浄ノズルの個数をより少なくすることができる。
又、第8発明によれば、載置面に載置される漁業用資材を洗浄ノズルからの洗浄液噴射による噴射圧でずれたり跳ね上がったりしないようにできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る漁業用資材の洗浄装置を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
本形態で例示する洗浄装置1は、図1に示すように、洗浄液タンクTの洗浄液がポンプPにより圧送され、後述の洗浄ノズル2から勢いよく噴射させて漁業用資材を洗浄し、洗浄後の洗浄液と剥がれ落ちた付着物を排水処理装置Aに排水する洗浄システムSに用いられる形態として説明する。
【0012】
洗浄装置1は、図1〜図4に示すように、漁業用資材を載置する載置面31を備えた載置部3と、載置部3の上方に設けられた前述の洗浄ノズル2と、載置部3の下方に設けられた貯水槽部4と、載置部3及び貯水槽部4とを支持する支持脚5とから構成されている。
【0013】
前記洗浄ノズル2は、載置部3の長手方向に沿って並列状に並べられた4個のノズル部21を備え、これらノズル部21は、前記ポンプPを介して圧送される洗浄液を、夫々のノズル部に振り分けるように配管された配管部22により一体に連結されている。
又、洗浄ノズル2は、載置面31の長手方向に沿いその全長に亘って往復動可能にされるとともに、載置面31の短手方向の全長亘って洗浄液が噴射される範囲に揺動可能に支持され、洗浄液の噴射時において往復動及び揺動することにより載置面31の全面に洗浄液を作用させるようにしている。
又、前記配管部22は、洗浄ノズル2の往復動に伴って伸縮するようにされている。
【0014】
前記載置部3は、略直方体形とする容器状に形成され、底部全面を漁業用資材が載置される載置面31としている。
前記載置面31には、略パンチングメタル状の多数の開口からなる排水口32が形成されており、当該排水口32から前記洗浄ノズル2から噴射された洗浄液を排水するようにしている。
又、前記排水口32は、漁業用資材が通過しない程度、且つ漁業用資材から剥がれ落ちた付着物が通過する程度の直径とする円形として開口され、前記洗浄液とともに付着物も排水するようにしている。
又、載置面31には、載置される漁業用資材を載置面31上に保持する保持手段6が設けられている。
本形態の保持手段6は、載置面31に対して長手方向と短手方向とに亘って多数突設された突起状部61と、載置面31の短手方向に沿う固定ベルト62から構成されている。
前記構成の保持手段6によれば、網、ロープ、伸子棒、支柱等の漁業用資材を前記突起状部61の間に挿入することで、突起状部61が挿入された漁業用資材を挟持状に保持し、ヴイのような漁業用資材においては前記固定ベルト62で保持することができる。
尚、本形態の固定ベルト62は、ゴム材製のものであり、当該ゴム材の伸縮性を利用して漁業用資材の保持を行うようにしたものであるが、本発明は、例示したゴム材製のもの以外の締め付けベルト状のものであってもよい。
【0015】
前記貯水槽部4は、正面視略逆三角形状を呈するとともに、平面視において前記載置面31と同一形状とする略容器状に形成され、前記載置部3に対して載置面31の直下に位置させた状態で連結されている。
又、貯水槽部4における正面視略逆三角形状の頂点部分に相当する側壁には、前記排水処理装置Aと配管される排水部41が設けられている。
前記排水部41には、開閉バルブ41Aが設けられており、この開閉バルブ41Aと排水処理部Aとを配管部42により一体に連結されている。
【0016】
前記形態の洗浄システムSは、洗浄装置1が、前記洗浄ノズル2における配管部22と前記洗浄液タンクTとがポンプPを介して配管され、当該ポンプPの圧力により圧送される洗浄液タンクTの洗浄液を洗浄ノズル2から勢いよく噴射し、当該洗浄ノズル2の前記往復動及び揺動することによって、載置面31に載置保持された漁業用資材に付着した付着物を剥がし落とすように洗浄する。
洗浄後の洗浄液及び剥がし落とされた付着物は、前記排水口32を通過して前記貯水槽部4に排水される。
前記貯水槽部4に貯められた洗浄液と付着物は、排水処理装置Aに備えられたポンプ(図示せず)によって吸い取られて排水処理装置Aに排水され、当該洗浄液と付着物は、排水処理装置Aで処理されて廃棄される。
【0017】
したがって、本形態の洗浄装置1は、網のみならずロープ、伸子棒、支柱、ヴイ等の各種漁業用資材を洗浄でき、しかも、船舶を使用せず効率的に洗浄し、且つ周辺環境への悪影響の防止ができる。
その上、洗浄液を4こという少ない個数のノズル部21からなる洗浄ノズル2で、漁業用資材を洗浄でき、しかも、載置面31に載置される漁業用資材を洗浄ノズル2からの洗浄液噴射による噴射圧でずれたり跳ね上がったりしないように保持できる。
【0018】
なお、本発明は、例示した実施の形態に限定するものでは無く、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。
例えば、前記洗浄装置に対して排水処理装置を配管せず、洗浄装置における貯水槽部に洗浄液と付着物とが貯まった時点で、当該洗浄液と付着物とを排水部から容器に排水し、容器を運搬して容器内の洗浄液と付着物とを排水処理装置に排水するようにしてもよい(図示せず)。
又、前記洗浄ノズルは、そのノズル部の個数を例示した4個から増減してもよいし、洗浄ノズルの往復動方向及び揺動方向を例示した方向とは異なる方向にしてもよい(図示せず)。
又、例示した形態は、洗浄ノズルが移動する形態のものであるが、本発明では、前記載置部を移動させるようにした形態も含や、更に、洗浄ノズルを移動不可能にして前記載置部を移動させるようにした形態も含む(図示せず)。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る洗浄装置を用いた洗浄装置の模式図。
【図2】本発明に係る洗浄装置の切欠正面図。
【図3】図1の平面図。
【図4】図1の切欠側面図。
【符号の説明】
【0020】
1:洗浄装置
2:洗浄ノズル
3:載置部
4:貯水槽部
6:保持手段
21:ノズル部
22:配管部
31:載置面
41:排水部
41A:開閉バルブ
61:突起状部
62:固定ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陸上載置式の漁業用資材の洗浄装置であって、
漁業用資材を載置する載置面を有する略容器状の載置部と、前記載置面の上方に当該載置面の略全面に対して洗浄液を噴射可能に配設された洗浄ノズルと、前記載置部に配設され、ポンプの圧力により洗浄ノズルから噴射された洗浄液を排水する排水口とを含むことを特徴とする漁業用資材の洗浄装置。
【請求項2】
前記排水口を介して排水される洗浄液を貯水する貯水槽部を有し、前記貯水槽部には、貯水槽部に貯水された洗浄液を排水するとともに、排水処理装置と配管可能な排水部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の漁業用資材の洗浄装置。
【請求項3】
前記洗浄ノズルを載置面の略全面に亘る範囲で移動可能に配設していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の漁業用資材の洗浄装置。
【請求項4】
前記載置面の一方向に沿って配列した洗浄ノズルを同方向又は他方向に沿って移動可能に配設していることを特徴とする請求項3に記載の漁業用資材の洗浄装置。
【請求項5】
前記載置部が洗浄ノズル下を移動可能に配設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4いずれか1項に記載の漁業用資材の洗浄装置。
【請求項6】
洗浄ノズルが前記載置面の一方向に沿って移動不可能に配列されていることを特徴とする請求項5に記載の漁業用資材の洗浄装置。
【請求項7】
前記洗浄ノズルを揺動可能に配設していることを特徴とする請求項2乃至請求項6いずれか1項に記載の漁業用資材の洗浄装置。
【請求項8】
載置面に漁業用資材を保持する保持手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項7いずれか1項に記載の漁業用資材の洗浄装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate