説明

潤滑油組成物

【課題】合成油を基油とする潤滑油組成物またはグリース組成物において、低温特性および耐熱性の双方を満足せしめたものを提供する。
【解決手段】メタクリレート系重合物および該重合物を溶解させる合成油溶媒からなる粘度指数向上剤を、合成油基油に添加せしめた、低温特性および耐熱性に優れた潤滑油組成物およびこの潤滑油組成物にさらに増稠剤を配合してなるグリース組成物。この潤滑油組成物およびグリース組成物は、合成油を基油とする潤滑油組成物およびグリース組成物において、基油として使用される合成油の特性を阻害することなく、所望の粘度特性、低温粘度特性および耐熱性を達成することができるので、低温特性および耐熱性の双方を同時に満足することができるといった優れた効果を奏する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油組成物に関する。さらに詳しくは、広範囲の温度領域において使用される潤滑部位に有効に適用し得る潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑油に添加する粘度指数向上剤あるいは増粘剤としては、ポリメタクリレート、エチレン-プロピレン共重合体、ポリイソブチレン、ポリアルキルスチレン、スチレン-イソプレン水素化共重合体などが用いられており、特に粘度指数向上能および低温粘度特性を兼ね備えている点からポリメタクリレートが広く使用されている。
【0003】
現在、広く市販されているポリメタクリレート系粘度指数向上剤は、ポリメタクリレート重合物を鉱物油中に分散したものであり、潤滑油の温度粘度特性を向上するためにこれを添加した場合には、最終的な潤滑油製品中に粘度指数向上剤の分散溶媒である鉱物油が必然的に含有されることとなるが、鉱物油を主成分としているエンジン油、油圧作動油、ギア油などに上記鉱物油を溶媒とした粘度指数向上剤を使用しても、いずれも鉱物油を使用しているという点から最終製品特性への大きな影響はみられない。
【特許文献1】特開平8−157855号公報
【0004】
しかるに、近年潤滑油製品に対する低温性、耐熱性向上の要求が厳しくなり、鉱物油よりも低温流動性、耐熱性に優れる合成炭化水素油、エステル油、グリコール油、さらにはシリコン油、フッ素油等の合成油の使用が増えている。これら合成油のうち、粘度指数が比較的小さい合成炭化水素油あるいはエステル油の温度粘度特性をさらに向上させる目的で、上記鉱物油を溶媒とした粘度指数向上剤を使用した場合には、粘度指数向上剤に含まれる鉱物油によって、合成油の優れた低温流動性、耐熱性等の特性が阻害されてしまうといった問題が生じていた。
【0005】
また、潤滑油にさらに増稠剤を配合してなるグリース組成物についても、近年の省エネルギー化の観点から、低温特性、耐熱性に対する要求が厳しくなってきている。このような状況に対応するために、グリースの基油には、合成炭化水素油や、エステル油等の合成油が使用されることが増えてきている。
【0006】
ここで、グリースの低温特性を向上させるためには、基油の粘度を下げることが通常行われているが、基油の粘度を下げることにより、高温時の粘度も低くなってしまうため、高温時の油膜形成が困難となり、その結果耐熱性が低下してしまうこととなる。逆に、グリースの耐熱性を向上させるために、基油の粘度を上昇させた場合には、低温時の粘度が大きくなってしまうため、低温特性を悪化させることとなる。
【0007】
すなわち、グリースの基油についても温度粘度特性を改善するため粘度指数向上剤を添加することが望ましいものの、上述した潤滑油の場合と同様に、鉱物油を溶媒とした粘度指数向上剤を、合成油を基油としたグリースに適用した場合には、粘度指数向上剤に含まれる鉱物油によって、低温特性、耐熱性等の特性が阻害されてしまうようになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、合成油を基油とする潤滑油組成物またはグリース組成物において、低温特性および耐熱性の双方を満足せしめたものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる本発明の目的は、メタクリレート系重合物および該重合物を溶解させる合成油溶媒からなる粘度指数向上剤を、合成油基油に添加せしめた、低温特性および耐熱性に優れた潤滑油組成物およびこの潤滑油組成物にさらに増稠剤を配合してなるグリース組成物によって達成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る潤滑油組成物およびグリース組成物は、合成油を基油とする潤滑油組成物およびグリース組成物において、基油として使用される合成油の特性を阻害することなく、所望の粘度特性、低温粘度特性および耐熱性を達成することができるので、低温特性および耐熱性の双方を同時に満足することができるといった優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
メタクリレートとしては、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、あるいは炭素数1〜22の直鎖または分岐アルキル基を有するメタクリレート、具体的にはメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、デシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、テトラデシルメタクリレート、セチルメタクリレート、ヘプタデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、ノナデシルメタクリレート、エイコシルメタクリレート等が挙げられ、好ましくはアルキルメタクリレートが用いられる。これらは、単独で使用しても良いし、混合して使用することもできる。
【0012】
メタクリレート系重合物の分子量は、十分な粘度指数向上のためには、重量平均分子量(Mw)10,000〜1,000,000のものが用いられ、剪断安定性および摩擦摩耗特性に与える影響といった観点からは、好ましくは10,000〜500,000のものが用いられる。
【0013】
メタクリレート系重合物の溶媒として使用できる合成油については、特に限定されないが、好ましくは合成炭化水素油、エステル油またはこれらの混合物が挙げられる。合成炭化水素油としては、ポリ-α-オレフィン共重合体もしくはその水素化物、エチレン-α-オレフィン共重合体もしくはその水素化物、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン等が挙げられる。また、エステル油としては、ポリオールエステル、二塩基酸エステル、芳香族多価カルボン酸エステル、リン酸エステル、亜リン酸エステル、炭酸エステル等が挙げられる。
【0014】
また、メタクリレート重合物の溶媒としては、潤滑油組成物の基油として使用されるものの少なくとも一成分と同一種類のものを用いることにより、さらに本発明が目的とする特性に合致する潤滑油組成物を得ることが可能となる。なお、合成油基油の特性を損なわないものであれば、合成油については同種異種を問わず、異なる粘度のものを使用することができる。
【0015】
また、これら使用される合成油の粘度は特に限定されないが、好ましくは40℃における動粘度が1〜400mm2/秒、好ましくは1〜100mm2/秒であるものが用いられる。
【0016】
粘度指数向上剤は、メタクリレート系重合物を合成油中で重合して得ることもでき、他の重合溶媒中で重合して得たメタクリレート系重合物を合成油に希釈分散したものでも良い。
【0017】
これらの粘度指数向上剤は、前記メタクリレート系重合物の溶媒として例示した如き合成炭化水素油、エステル油またはこれらの混合物よりなる合成油基油中に、合成油基油との合計量中メタクリレート系重合物として約0.5〜40重量%、好ましくは約1.5〜30重量%の割合で添加される。
【0018】
以上の成分の他、本発明の目的が損なわれない範囲で、必要に応じて一般的な合成油を基油とした潤滑油に使用される流動点降下剤、無灰系分散剤、金属系清浄剤、酸化防止剤、防錆剤、腐食防止剤、消泡剤、耐摩耗剤、油性剤などの公知の添加剤を用途に応じて添加することができる。なお、最終製品の低温流動性、耐熱性を阻害しないために、添加する添加剤に関しても、鉱物油を含む添加剤の使用は極力避けることが好ましい。
【0019】
流動点降下剤としては、例えばジ(テトラパラフィンフェノール)フタレート、テトラパラフィンフェノールの縮合生成物、アルキルナフタレンの縮合生成物、塩素化パラフィン-ナフタレン縮合物、アルキル化ポリスチレン等を挙げることができる。
【0020】
無灰系分散剤としては、例えばコハク酸イミド系、コハク酸アミド系、ベンジルアミン系、エステル系無灰分散剤等を挙げることができる。
【0021】
金属系清浄剤としては、例えばジノニルナフタレンスルホン酸金属塩に代表されるスルホン酸金属塩、アルキルフェノールの金属塩、サリチル酸金属塩などを挙げることができる。
【0022】
酸化防止剤としては、例えば2,6-ジ第3ブチル-4-メチルフェノール、4,4′-メチレンビス(2,6-ジ第3ブチルフェノール)等のフェノール系の酸化防止剤、アルキルジフェニルアミン(アルキル基の炭素数が4〜20のもの)、トリフェニルアミン、フェニル-α-ナフチルアミン、フェノチアジン、アルキル化フェニル-α-ナフチルアミン、フェニチアジン、アルキル化フェニチアジン等のアミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤またはイオウ系酸化防止剤などが挙げられ、これらは単独もしくは2種以上を混合して用いることができる。
【0023】
防錆剤としては、例えば脂肪酸、脂肪酸石けん、アルキルスルホン酸塩、脂肪酸アミン、酸化パラフィン、アルキルポリオキシエチレンエーテル等が挙げられ、また腐食防止剤としては、例えばベンゾトリアゾール、ベンゾイミダゾール、チアジアゾール等が挙げられる。
【0024】
消泡剤としては、例えばジメチルポリシロキサンやポリアクリル酸、金属石けん、脂肪酸エステル、リン酸エステル等を挙げることができる。
【0025】
耐摩耗剤としては、例えばリン酸エステル、亜リン酸エステル、リン酸エステルアミン塩等のリン系化合物、スルフィド類、ジスルフィド類等のイオウ系化合物、塩素化パラフィン、塩素化ジフェニル等の塩素系化合物、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン等の有機金属化合物等を挙げることができる。
【0026】
油性剤としては、例えば脂肪酸、高級アルコール、多価アルコール、多価アルコールエステル、脂肪族エステル、脂肪族アミン、脂肪族モノグリセライド等を挙げることができる。
【0027】
以上の各成分よりなる潤滑油組成物は、さらに増稠剤を添加してグリース組成物として使用される。増稠剤としては、特に制限されないが12-ヒドロキシステアリン酸、Li石けん、Ca石けん、Al石けん、複合Li石けん、複合Ca石けん、複合Ba石けん等に代表される石けん系増稠剤、脂肪族ウレア、脂環族ウレア、芳香族ウレア等のウレア系増稠剤、有機ベントナイト、ポリテトラフルオロエチレンなどが挙げられ、これらは、増稠剤の種類により異なるものの、組成物中0.1〜40重量%の割合で用いられる。
【実施例】
【0028】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0029】
参考例1(粘度指数向上剤Aの調製)
攪拌機、温度計、窒素パージ管等を備えた反応容器に、ジエステル油(ビス(2-エチルヘキシル)セバケート(大八化学工業製品DOS);40℃動粘度=12mm2/秒)646gおよびエイコシルメタクリレート350gを仕込み、窒素を導入しながら攪拌し、80℃まで昇温したところで、重合開始剤(日本ヒドラジン工業製品ABN-E)4gを仕込み、重合を開始させた。さらに100℃まで昇温した後、8時間保持して重合を終了し、粘度指数向上剤A(メタクリレート重合物Mw 15万)を得た。
【0030】
参考例2(粘度指数向上剤Bの調製)
攪拌機、温度計、窒素パージ管等を備えた反応容器に、ポリオールエステル油(日本油脂製品ユニスターH327R;40℃動粘度=21mm2/秒)497.5gおよびラウリルメタクリレート500gを仕込み、窒素を導入しながら攪拌し、80℃まで昇温したところで、重合開始剤(ABN-E)2.5gを仕込み、重合を開始させた。さらに100℃まで昇温した後、10時間保持して重合を終了し、粘度指数向上剤B(メタクリレート重合物Mw 30万)を得た。
【0031】
参考例3(粘度指数向上剤Cの調製)
攪拌機、温度計、窒素パージ管等を備えた反応容器に、芳香族エステル油(トリメリット酸トリ-2-エチルヘキシル(大八化学工業製品TOTM);40℃動粘度=98mm2/秒)597gおよび2-エチルヘキシルメタクリレート400gを仕込み、窒素を導入しながら攪拌し、80℃まで昇温したところで、重合開始剤(ABN-E)3.0gを仕込み、重合を開始させた。さらに100℃まで昇温した後、12時間保持して重合を終了し、粘度指数向上剤C(メタクリレート重合物Mw 35万)を得た。
【0032】
参考例4(粘度指数向上剤Dの調製)
攪拌機、温度計、窒素パージ管等を備えた反応容器に、ポリ-α-オレフィン(Mobil chemical製品SPECTRASYN 6;40℃動粘度=30mm2/秒)495g、エチルメタクリレート250gおよびステアリルメタクリレート250gを仕込み、窒素を導入しながら攪拌し、80℃まで昇温したところで、重合開始剤(ABN-E)5.0gを仕込み、重合を開始させた。さらに100℃まで昇温した後、12時間保持して重合を終了し、粘度指数向上剤D(メタクリレート重合物Mw 20万)を得た。
【0033】
参考例5(粘度指数向上剤Eの調製)
攪拌機、温度計、窒素パージ管等を備えた反応容器に、エチレン-α-オレフィン共重合体(三井化学製品ルーカント HC-10;40℃動粘度=60mm2/秒)350gおよびブチルメタクリレート645gを仕込み、窒素を導入しながら攪拌し、80℃まで昇温したところで、重合開始剤(ABN-E)5.0gを仕込み、重合を開始させた。さらに100℃まで昇温した後、8時間保持して重合を終了し、粘度指数向上剤E(メタクリレート重合物Mw 25万)を得た。
【0034】
実施例1
ジエステル油(DOS)94重量部、粘度指数向上剤A 5重量部および酸化防止剤(チバスペシャルティ・ケミカルズ社製品Irganox L57)1重量部からなる潤滑油試料を調製した。
【0035】
実施例2
ポリオールエステル油(ユニスターH327R)91重量部、粘度指数向上剤B 8重量部および酸化防止剤(Irganox L57)1重量部からなる潤滑油試料を調製した。
【0036】
実施例3
ポリオールエステル油(ユニスターH327R)60重量部、ポリ-α-オレフィン(SPECTRASYN 6)32.5重量部、粘度指数向上剤B 6.5重量部および酸化防止剤(Irganox L57)1重量部からなる潤滑油試料を調製した。
【0037】
実施例4
芳香族エステル油(TOTM)84重量部、粘度指数向上剤C 15重量部および酸化防止剤(Irganox L57)1重量部からなる潤滑油試料を調製した。
【0038】
実施例5
ポリ-α-オレフィン(SPECTRASYN 6)91.5重量部、粘度指数向上剤D 7.5重量部および酸化防止剤(Irganox L57)1重量部からなる潤滑油試料を調製した。
【0039】
実施例6
ポリ-α-オレフィン(Mobil chemical製品SPECTRASYN 10:40℃動粘度68mm2/秒)88重量部、粘度指数向上剤D 11重量部および酸化防止剤(Irganox L57)1重量部からなる潤滑油試料を調製した。
【0040】
実施例7
エチレン-α-オレフィン共重合体(三井化学製品ルーカントHC-10)86重量部、粘度指数向上剤E 13重量部および酸化防止剤(Irganox L57)1重量部からなる潤滑油試料を調製した。
【0041】
実施例8
ポリオールエステル油(ユニスターH327R)67重量部、エチレン-α-オレフィン共重合体(ルーカントHC-10)30重量部、粘度指数向上剤E 12重量部および酸化防止剤(Irganox L57)1重量部からなる潤滑油試料を調製した。
【0042】
以上得られた潤滑油組成物について、以下の各項目についての試験が行われた。
40℃動粘度:JIS K2283に準拠し、40℃で測定
粘度指数:JIS K2283準拠して算出
低温特性:ASTM D2983に準拠し、-20℃または-40℃でBF(ブルックフィールド)粘度を測定
耐熱性:潤滑油試料約0.3mlを、36mm径のアルミ皿に薄膜状に塗布した後、150℃の恒温槽に静置し、24時間後におけるアルミ皿の重量を測定して、蒸発損失率を算出
【0043】
実施例1〜8の潤滑油試料について、得られた結果は、次の表1に示される。
表1
実施例
1 2 3 4 5 6 7 8
40℃動粘度(mm2/秒) 30.9 59.8 60.1 200.8 60.1 201.0 101.0 151.0
粘度指数 230 223 205 200 205 233 198 212
BF粘度(-20℃)(mPas) 8500 3500 9400 4300 6800
BF粘度(-40℃)(mPas) 4500 8800 10300
蒸発損失率(重量%) 7.3 2.3 2.5 0.5 4.9 2.3 4.3 2.5
【0044】
比較例1
実施例1において、ジエステル油量を93重量部に変更し、また粘度指数向上剤Aの代わりに高度精製パラフィン系鉱物油(40℃動粘度=15mm2/秒)ベースメタクリレート系粘度指数向上剤(粘度指数向上剤A相当品)6重量部を用いて潤滑油試料を調製した。
【0045】
比較例2
実施例2において、粘度指数向上剤Bの代わりに高度精製パラフィン系鉱物油(40℃動粘度=22mm2/秒)ベースメタクリレート系粘度指数向上剤(粘度指数向上剤B相当品)を同量用いて、潤滑油試料を調製した。
【0046】
比較例3
実施例3において、粘度指数向上剤Bの代わりに高度精製パラフィン系鉱物油(40℃動粘度=22mm2/秒)ベースメタクリレート系粘度指数向上剤(粘度指数向上剤B相当品)を同量用いて、潤滑油試料を調製した。
【0047】
比較例4
実施例5において、ポリ-α-オレフィン量を92重量部に変更し、また粘度指数向上剤Dの代わりに高度精製パラフィン系鉱物油(40℃動粘度=32mm2/秒)ベースメタクリレート系粘度指数向上剤(粘度指数向上剤D相当品)7重量部を用いて潤滑油試料を調製した。
【0048】
比較例5
実施例6において、ポリ-α-オレフィン量を88.5重量部に変更し、また粘度指数向上剤Dの代わりに高度精製パラフィン系鉱物油(40℃動粘度=32mm2/秒)ベースメタクリレート系粘度指数向上剤(粘度指数向上剤D相当品)10.5重量部を用いて潤滑油試料を調製した。
【0049】
比較例1〜5の潤滑油試料について、得られた結果は、次の表2に示される。
表2
比較例
1 2 3 4 5
40℃動粘度(mm2/秒) 29.0 60.0 61.2 99.3 200.5
粘度指数 235 215 204 203 220
BF粘度(-20℃)(mPas) 6500 10500
BF粘度(-40℃)(mPas) 5700 11500 14500
蒸発損失率(重量%) 9.1 4.2 3.9 7.3 5.9
【0050】
実施例9
実施例1の潤滑油試料85重量部および12-ヒドロキシステアリン酸リチウム15重量部よりなる潤滑グリース組成物が調製された。
【0051】
実施例10
実施例2の潤滑油試料88.5重量部および12-ヒドロキシステアリン酸リチウム11.5重量部よりなる潤滑グリース組成物が調製された。
【0052】
実施例11
実施例2の潤滑油試料97重量部および12-ヒドロキシステアリン酸リチウム3重量部よりなる潤滑グリース組成物が調製された。
【0053】
実施例12
実施例3の潤滑油試料85重量部およびリチウムコンプレックス石けん15重量部よりなる潤滑グリース組成物が調製された。
【0054】
実施例13
実施例3の潤滑油試料67重量部およびバリウムコンプレックス石けん33重量部よりなる潤滑グリース組成物が調製された。
【0055】
実施例14
実施例5の潤滑油試料88重量部および12-ヒドロキシステアリン酸リチウム12重量部よりなる潤滑グリース組成物が調製された。
【0056】
実施例15
実施例5の潤滑油試料70重量部およびバリウムコンプレックス石けん30重量部よりなる潤滑グリース組成物が調製された。
【0057】
実施例16
実施例6の潤滑油試料88重量部およびリチウムコンプレックス石けん12重量部よりなる潤滑グリース組成物が調製された。
【0058】
実施例17
実施例6の潤滑油試料99重量部およびリチウムコンプレックス石けん1重量部よりなる潤滑グリース組成物が調製された。
【0059】
実施例9〜17の潤滑グリース組成物について、以下の各項目の試験が行われた
稠度:JIS K2220.5.3規定の方法で混和稠度を測定し、稠度番号で表示
低温特性:ASTM D2983に準拠し、液状のものについて-40℃でBF(ブルックフィールド)粘度を測定
低温トルク:JIS K2220.5.14に準拠し、液状ではないものについて-30℃における起動トルクを測定
耐熱性:潤滑油試料約0.3mlを、36mm径のアルミ皿に薄膜状に塗布した後、150℃の恒温槽に静置し、24時間後におけるアルミ皿の重量を測定して、蒸発損失率を算出
【0060】
得られた結果は、次の表3に示される。
表3
実施例
10 11 12 13 14 15 16 17
稠度 2 2 2 2 2 2 2
BF粘度(-40℃)(mPas) 37000 54700
起動トルク(-30℃)(N・cm) 9.2 18.7 19.6 20.3 19.2 23.1 35.8
蒸発損失率(重量%) 5.9 1.8 2.1 1.3 0.9 3.6 2.5 1.1 2.1
【0061】
比較例6
実施例9において、実施例1で調製された潤滑油試料の代わりに、比較例1で調製されたものが同量用いられた。
【0062】
比較例7
実施例10において、実施例2で調製された潤滑油試料の代わりに、比較例2で調製されたものが同量用いられた。
【0063】
比較例8
実施例11において、実施例2で調製された潤滑油試料の代わりに、比較例2で調製されたものが同量用いられた。
【0064】
比較例9
実施例13において、実施例3で調製された潤滑油試料の代わりに、比較例3で調製されたものが同量用いられた。
【0065】
比較例10
実施例16において、実施例6で調製された潤滑油試料の代わりに、比較例6で調製されたものが同量用いられた。
【0066】
比較例11
実施例17において、実施例6で調製された潤滑油試料の代わりに、比較例6で調製されたものが同量用いられた。
【0067】
比較例6〜11の潤滑グリース組成物について、実施例9〜17と同様に稠度、BF粘度(-40℃)または起動トルク(-30℃)および蒸発損失率の測定が行われた。得られた結果は、次の表4に示される。
表4
比較例
10 11
稠度 2 2 2 2
BF粘度(-40℃)(mPas) 53500 69000
起動トルク(-30℃)(N・cm) 11.3 21.7 23.4 38.6
蒸発損失率(重量%) 8.1 3.5 3.8 7.0 4.0 5.1
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明に係る潤滑油組成物は、ギア用、チェーン用、油圧作動部品用、自動変速機用、接点用、樹脂用、コンプレッサー用、転がり軸受、焼結含油軸受または動圧軸受等の軸受用途に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタクリレート系重合物および該重合物を溶解させる合成油溶媒からなる粘度指数向上剤を、合成油基油に添加せしめた、低温特性および耐熱性に優れた潤滑油組成物。
【請求項2】
合成油溶媒が、合成炭化水素油および/またはエステル油である請求項1記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
粘度指数向上剤が、合成油溶媒中で重合されたメタクリレート重合物溶液である請求項1または2記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
合成油溶媒として、合成油基油の少なくとも一成分と同一種類のものが用いられた請求項1、2または3記載の潤滑剤組成物。
【請求項5】
合成油基油が、合成炭化水素油および/またはエステル油である請求項1または4記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
ギア用、チェーン用、油圧作動部品用、自動変速機用、接点用、樹脂用、コンプレッサー用または軸受用として用いられる請求項1〜5のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の潤滑油組成物に、さらに増稠剤を配合してなるグリース組成物。

【公開番号】特開2006−77119(P2006−77119A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−262370(P2004−262370)
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【出願人】(000102670)NOKクリューバー株式会社 (36)
【Fターム(参考)】