説明

潤滑油組成物

【課題】潤滑油基油に一次酸化防止剤および二次酸化防止剤を添加した潤滑油組成物において、軸受金属存在下でも潤滑油の急激な分解や蒸発を抑え、また軸受材を腐食させたり、変質させたりすることなくあるいはスラッジを生成させることなく、長期間安定して燒結金属軸受油等として使用し得るものを提供する。
【解決手段】潤滑油基油にジフェニルアミン系酸化防止剤および少くとも1個のフェニルエステル基を有する亜リン酸エステルを添加した潤滑油組成物。本発明に係る潤滑油組成物は、これを焼結金属軸受油として用いたとき、軸受材の腐食防止、スラッジの生成防止が有効に達成されるばかりではなく、軸受金属存在下でも潤滑油の急激な分解や蒸発を抑え、高温条件下でも長期間安定して使用することを可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油組成物に関する。さらに詳しくは、焼結含油軸受等に好適に用いられる潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
焼結含油軸受は、Cu、Fe、Sn、Zn等によって代表される金属粉を押し固め、これを焼結することにより得られる多孔質体に潤滑油を含浸させ、自己給油の状態で使用される滑り軸受の一種である。焼結含油軸受は、低コストでありながら、比較的低摩擦で高精度、自己潤滑方式であることから、自動車用電装部品、音響映像機器、事務用品、家電電装機器、コンピュータ用補助記憶装置駆動部に至る各部位において、モータ軸受として広く用いられている。
【0003】
近年、これらの機器の高性能化に伴い、焼結含油軸受に要求される性能も、小型化、高速化、低電流・低消費電力化と非常に厳しいものとなってきている。こうした要求に対応するには、軸受メーカーによる軸受材質等の検討も行われているが、軸受中に含浸される数 mg 程度の軸受油の性能が、モータの特性や寿命に多大の影響を与えるため、特に重要なものとなってきている。
【0004】
焼結含油軸受油に要求される特性としては、軸受材質との相溶性が良く、腐食やスラッジ等を発生させないこと、広い温度範囲で使用可能であり、高温においては蒸発損失が少ないこと、酸化安定性が良いこと、一方低温においては流動性が損なわれないこと、また防錆性が良いこと、さらに前述の如き近年の要求に対応すべく、耐樹脂性が良いこと、摩擦係数が低いこと、耐摩耗性にすぐれていること等も求められている。
【0005】
このような厳しい要求特性に対応するため、基油としては鉱油よりも温度・粘度特性、耐熱性、低温特性にすぐれた合成炭化水素油、エステル油、シリコーン油、フッ素油等が使用されており、さらにこれらの合成油の特性を向上させるために、従来鉱油に効果のある添加剤の添加が検討されている。
【0006】
しかしながら、焼結含油軸受特有の、表面積が非常に大きい状態の多種金属に曝される状態において、焼結含油軸受が、本来の自己潤滑式でメンテナンスフリーで使用可能であるという特徴が発揮されない事態が生ずる場合がみられるようになってきている。例えば、軸受金属が触媒となり、酸化劣化が非常に早い段階で進行した結果、潤滑油の分解、蒸発による軸受残存油の激減がみられ、また潤滑油中に含まれる添加剤による金属の腐食あるいは生成したスラッジ等が軸受の空孔を塞ぎ、十分な潤滑剤が摺動部に供給されなくなり、油膜切れや潤滑不良をひき起し、最終的には予想よりも非常に短寿命でモータが停止してしまうような事態に至る。
【0007】
そこで、酸化防止剤、より具体的には各種アミン系酸化防止剤およびフェノール系酸化防止剤の少くとも一種を潤滑油に添加することが多く行われているが、このような対処方法ではある程度の改善はみられるものの、焼結含油軸受油の酸化劣化寿命を十分に満足させることはできない。また、このような一次酸化防止剤(ラジカル捕捉剤)に加え、ヒドロペルオキシド分解剤として働く二次酸化防止剤を添加することにより、連鎖的に進行するといわれている酸化機構を防止することも広く行われているが、二次酸化防止剤といわれているものすべてが、焼結含油軸受材に影響せず、安定して使用できる訳ではない。
【0008】
特許文献1には、特定構造のホスファイト(ジヒドロカルビルハイドロジエンホスファイト)およびホスフェート(トリヒドロカルビルホスフェート)を添加した含浸軸受油組成物が記載されているが、これは摩擦・摩耗特性の向上を目的としており、酸化防止性能については何ら触れるところがない。また、軸受適合性を向上させるとしているが、軸受材の腐食防止、スラッジの生成防止という点では不十分である。スラッジについては、アルキルナフタレン等を添加してそれの生成を防止する方法も提案されているが、それも十分ではない。
【特許文献1】特許第3,433,402号公報
【0009】
さらに、特許文献2には、特定のリン酸エステル(アシッドホスフェートと考えられる)またはそのアミン塩および各種酸化防止剤等を併用した潤滑油組成物が提案されているが、これも軸受の腐食防止およびスラッジの生成防止という点では不十分である。
【特許文献2】特開2002−180078号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、潤滑油基油に一次酸化防止剤および二次酸化防止剤を添加した潤滑油組成物において、軸受金属存在下でも潤滑油の急激な分解や蒸発を抑え、また軸受材を腐食させたり、変質させたりすることなくあるいはスラッジを生成させることなく、長期間安定して燒結金属軸受油等として使用し得るものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる本発明の目的は、潤滑油基油にジフェニルアミン系酸化防止剤および少くとも1個のフェニルエステル基を有する亜リン酸エステルを添加した潤滑油組成物によって達成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る潤滑油組成物は、一次酸化防止剤としてのジフェニルアミン系酸化防止剤および二次酸化防止剤としての少くとも1個のフェニルエステル基を有する亜リン酸エステルを潤滑油基油に添加して用いることにより、これを焼結金属軸受油として用いたとき、軸受材の腐食防止、スラッジの生成防止が有効に達成されるばかりではなく、軸受金属存在下でも潤滑油の急激な分解や蒸発を抑え、高温条件下でも長期間安定して使用することを可能とする。
【0013】
このような効果を奏する本発明の潤滑油組成物は、ギァ用、チェーン用、ブッシュ用、油圧作動部品用、自動変速機用、接点用、樹脂用、コンプレッサ用、転がり軸受、焼結含油軸受、動圧軸受等の軸受用の潤滑油として有効に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
潤滑油基油としては、その種類は特に限定されないが、好ましくは耐熱性にすぐれたエステル油または炭化水素系合成油が用いられる。エステル油としては、例えばジ(2-エチルヘキシル)セバケート等のジエステル、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等のポリオールの脂肪酸エステル、コンプレックスエステル、炭酸エステル、芳香族エステル等が用いられる。また、炭化水素系合成油としては、例えばポリα-オレフィン、エチレン・α-オレフィン共重合体オリゴマー、ポリブテン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン等が用いられる。この他、アルキルジフェニルエーテル、ポリプロピレングリコール等のエーテル系合成油、各種シリコーン油、各種フッ素油等の合成油、パラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油またはこれらの溶剤精製、水素化精製等を適宜組合せて精製した鉱油などが用いられる。これらの潤滑用基油は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を混合して用いられる。
【0015】
これらの基油は、その40℃における動粘度が約2〜1000mm2/秒、好ましくは約5〜500mm2/秒のものが用いられる。これ以下の動粘度のものを用いると、蒸発損失の増加、油膜強度の低下など、寿命の低下や摩耗、焼き付きの原因となる可能性があり、一方これ以上の動粘度のものを用いた場合には、粘性抵抗の増加など、消費動力やトルクが大きくなるといった不具合を生ずる可能性がある。
【0016】
潤滑油基油中には、粘度指数向上剤、例えばエチレン・プロピレン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、ポリスチレン、ポリイソブチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート等が配合されて用いられ、好ましくはポリメタクリレートが用いられる。これらの重合体の分子量は特に制限されないが、十分なる粘度指数向上のためには数平均分子量Mnが約3,000〜1,000,000、好ましくは約3,000〜300,000の範囲内のものが用いられる。
【0017】
ポリメタクリレートの配合は、所望の粘度特性(一般には、粘度指数として約120〜350、好ましくは約150〜250)を与えるばかりではなく、低温特性および耐熱性の双方を同時に満足させることができる。ポリメタクリレートを形成させるメタクリレートとしては、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、あるいは炭素数1〜22の直鎖状または分岐状アルキル基を有するメタクリレート、具体的にはメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、デシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、テトラデシルメタクリレート、セチルメタクリレート、ヘプタデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、ノナデシルメタクリレート、エイコシルメタクリレート等が挙げられ、好ましくはアルキルメタクリレートが用いられる。これらは、単独で使用しても良いし、混合して使用することもできる。
【0018】
粘度指数向上剤は、メタクリレート系重合物を基油と同一の合成油中で重合して得ることができ、他の重合溶媒中で重合して得たメタクリレート系重合物を基油である合成油に希釈分散したものでも良い。これらの粘度指数向上剤は、前記メタクリレート系重合物の溶媒としての合成炭化水素油、エステル油またはこれらの混合物よりなる合成油基油中に、合成油基油との合計量中メタクリレート系重合物として約0.5〜40重量%、好ましくは約1.5〜30重量%の割合で添加される。
【0019】
一次酸化防止剤であるジフェニルアミン系酸化防止剤としては、ジフェニルアミンの他、そのフェニル基の一方または両方がプロピル、イソプロピル、ブチル、オクチル、ノニル等の炭素数1〜30、好ましくは3〜18の直鎖状または分岐状のアルキル基またはアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基または炭素数7〜30のアラルキル基等で置換されていてもよく、具体的には、例えばフェニル・プロピルフェニルアミン、フェニル・イソプロピルフェニルアミン、フェニル・ブチルフェニルアミン、ジ(n-ブチルフェニル)アミン、ジ(第3ブチルフェニル)アミン、フェニル・オクチルフェニルアミン、オクチルフェニル・ブチルフェニルアミン、ジ(オクチルフェニル)アミン、フェニル・ノニルフェニルアミン、ジ(ノニルフェニル)アミン、4,4-ビス(α,α-ジメチル)ジフェニルアミン等が挙げられる。
【0020】
これらの一次酸化防止剤は、その一種または二種以上が、基油100重量部当り約0.01〜5重量部、好ましくは約0.5〜3重量部の割合で用いられ、これよりも少ない使用割合では十分な酸化防止効果が得られず、一方これよりも多い割合で使用されると経済的に不利となる。
【0021】
二次酸化防止剤としては、少くとも1個のフェニルエステル基を有する亜リン酸エステル、例えば一般式
(R1R2C6H3O)nPOR33-n
R1、R2:水素原子、炭素数1〜30の直鎖状または分岐状のアルキル基またはアル ケニル基
R3:R1、R2と同じまたは炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアラルキル基
n:1または2
で表わされるホスファイト、具体的には、例えばトリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリス(2,4-ジ第3ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノ-およびジ-混合ノニルフェニル)ホスファイト、ジフェニルハイドロジエンホスファイト、ジフェニルモノ(2-エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、ジノニルフェニルモノ(2-エチルヘキシル)ホスファイト等が挙げられる。
【0022】
これらの二次酸化防止剤は、その一種または二種以上が、基油100重量部当り約0.01〜5重量部、好ましくは約0.5〜3重量部の割合で用いられ、これよりも少ない使用割合では十分な酸化防止効果が得られず、一方これよりも多い割合で使用されると経済的に不利となる。
【0023】
以上の成分の他、本発明の目的が損なわれない範囲で、必要に応じて一般的な合成油を基油とした潤滑油に使用される流動点降下剤、無灰系分散剤、金属系清浄剤、他の酸化防止剤、防錆剤、腐食防止剤、消泡剤、耐摩耗剤、油性剤などの公知の添加剤を用途に応じて添加することができる。なお、最終製品の低温流動性、耐熱性、軸受材との相性を阻害しないために、添加する添加剤に関しても、必要最小限の量とすることが好ましい。
【0024】
流動点降下剤としては、例えばジ(テトラパラフィンフェノール)フタレート、テトラパラフィンフェノールの縮合生成物、アルキルナフタレンの縮合生成物、塩素化パラフィン-ナフタレン縮合物、アルキル化ポリスチレン等を挙げることができる。
【0025】
無灰系分散剤としては、例えばコハク酸イミド系、コハク酸アミド系、ベンジルアミン系、エステル系無灰分散剤等を挙げることができる。
【0026】
金属系清浄剤としては、例えばジノニルナフタレンスルホン酸金属塩に代表されるスルホン酸金属塩、アルキルフェノールの金属塩、サリチル酸金属塩などを挙げることができる。
【0027】
他の酸化防止剤としては、例えば2,6-ジ第3ブチル-4-メチルフェノール、4,4′-メチレンビス(2,6-ジ第3ブチルフェノール)等のフェノール系の酸化防止剤、フェノチアジン、フェニチアジン、アルキル化フェニチアジン等のアミン系酸化防止剤、他のリン系酸化防止剤またはイオウ系酸化防止剤などが挙げられ、これらは単独もしくは2種以上を混合して用いることができる。
【0028】
防錆剤としては、例えば脂肪酸、脂肪酸石けん、アルキルスルホン酸塩、脂肪酸アミン、酸化パラフィン、アルキルポリオキシエチレンエーテル等が挙げられ、また腐食防止剤としては、例えばベンゾトリアゾール、ベンゾイミダゾール、チアジアゾール等が挙げられる。
【0029】
消泡剤としては、例えばジメチルポリシロキサンやポリアクリル酸、金属石けん、脂肪酸エステル、リン酸エステル等を挙げることができる。
【0030】
耐摩耗剤としては、例えばリン酸エステル、亜リン酸エステル、リン酸エステルアミン塩等のリン系化合物、スルフィド類、ジスルフィド類等のイオウ系化合物、塩素化パラフィン、塩素化ジフェニル等の塩素系化合物、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン等の有機金属化合物等を挙げることができる。
【0031】
油性剤としては、例えば脂肪酸、高級アルコール、多価アルコール、多価アルコールエステル、脂肪族エステル、脂肪族アミン、脂肪族モノグリセライド等を挙げることができる。
【0032】
組成物の調製は、以上の各成分を所定量添加し、3本ロールまたは高圧ホモジナイザで十分に混練する方法等によって行われる。
【実施例】
【0033】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0034】
実施例1
トリメチロールプロパントリオクタン酸エステル(40℃動粘度:15〜30mm2/秒)にポリメタクリレート系粘度指数向上剤(Mn:約100000)を配合して、40℃動粘度を約45〜60mm2/秒の範囲内になるように調整したポリエステル系基油100部(重量、以下同じ)に、一次酸化防止剤としてのジ(オクチルフェニル)アミン 1.0部および二次酸化防止剤としてのジフェニルトリデシルホスファイト 0.5部を添加し、40℃動粘度56.4mm2/秒、粘度指数210の潤滑油組成物を調製した。なお、40℃動粘度および粘度指数は、いずれもJIS K2283に準拠して測定、算出された。
【0035】
この潤滑油組成物について、次の各項目の測定または評価が行われた。
通気度変化:潤滑油組成物8g中に鉄系焼結含油軸受(外径18mm、内径8mm、長さ5mm)を170℃で300時間浸漬し、浸漬前後の含油軸受の通気度を測定し、その差を通気度変化とした。通気度としては、含油軸受の内径側に不活性ガスを一定流量流したときの圧力を測定した
スラッジの有無:通気度変化測定の際の潤滑油組成物の状態を目視で観察し、不溶性スラッジなしを○、ありを×と評価した
軸受存在下熱劣化試験(固化時間):潤滑油組成物10g中に鉄系焼結含油軸受(外径18mm、内径8mm、長さ5mm)2個を浸漬して180℃の恒温槽に静置し、一定間隔時間毎に粘度を測定し、固化する迄の固化時間を測定した
【0036】
実施例2
実施例1において、一次酸化防止剤としてジ(ノニルフェニル)アミン 1.0部が用いられ、また二次酸化防止剤量が1.5部に変更された。
【0037】
実施例3
実施例1において、一次酸化防止剤としてジメチルベンジルジフェニルアミン 1.5部が用いられ、また二次酸化防止剤量が0.5部に変更された。
【0038】
比較例1
実施例1において、一次酸化防止剤量が1.5部に変更され、二次酸化防止剤が用いられなかった。
【0039】
比較例2
実施例1において、一次酸化防止剤量が1.5部に変更され、二次酸化防止剤としてジラウリルハイドロジエンホスファイト 1.0部が用いられた。
【0040】
比較例3
実施例1において、一次酸化防止剤としてジ(ノニルフェニル)アミン 1.0部が用いられ、また二次酸化防止剤としてジラウリル 3,3′-チオジプロピオネート 1.0部が用いられた。
【0041】
比較例4
実施例1において、一次酸化防止剤としてジ(ノニルフェニル)アミン 0.5部が用いられ、また二次酸化防止剤としてトリラウリルトリチオホスファイト 0.5部が用いられた。
【0042】
比較例5
実施例1において、一次酸化防止剤としてジメチルベンジルジフェニルアミン 1.0部が用いられ、また二次酸化防止剤としてジラウリル 3,3′-チオジプロピオネート 0.5gが用いられた。
【0043】
比較例6
実施例1において、一次酸化防止剤としてフェニル-α-ナフチルアミン 1.0部が用いられ、また二次酸化防止剤としてジフェニルモノトリデシルホスファイト 1.0部が用いられた。
【0044】
比較例7
実施例1において、一次酸化防止剤としてフェニル-α-ナフチルアミン 1.5部が用いられ、また二次酸化防止剤としてジラウリル 3,3′-チオジプロピオネート 1.5部が用いられた。
【0045】
比較例8
実施例1において、一次酸化防止剤としてジ(オクチルフェニル)アミン 0.5部が用いられ、また二次酸化防止剤としてトリイソドデシルホスファイト 1.5部が用いられた。
【0046】
以上の各実施例および比較例で得られた結果は、次の表に示される。

実施例 比較例
測定・評価項目
40℃動粘度(mm2/秒) 56.4 48.2 53.9 61.0 56.8 52.6 47.8 46.8 54.9 51.7 59.1
粘度指数 210 213 209 201 206 211 216 214 208 209 203
通気度変化 (mPas) 0.0 -3.9 0.0 2.3 9.3 8.4 200 12.8 13.2 7.5 12.3
スラッジの有無 ○ ○ ○ ○ × ○ ○ × × × ×
固化時間 (hrs) 816 960 816 526 720 624 480 816 720 624 480
【0047】
実施例4
本発明に係る潤滑油組成物を含浸させた焼結含油軸受を用いた車両用ファンモータの一態様の構造が、図1に縦断面図として示されている。車両用ファンモータ1において、モータケーシング2はケーシング2aとエンドカバー2bとからなり、これら(2a、2b)にはそれぞれモータ軸3に回転自在に支持された焼結含油軸受4および転がり軸受5が圧入されている。この焼結含油軸受4には、前記実施例1の潤滑油組成物が含浸されている。
【0048】
この実施例1の潤滑油組成物を含浸させた軸受と前記比較例1の潤滑油組成物を含浸させた軸受について、耐久試験を行った。耐久試験は、これら2種類の軸受それぞれにシャフトを挿入し、軸受温度140℃で15秒毎にシャフトを回転−休止させる運転をくり返して行い、スラッジ状劣化物が目視により確認できる迄の時間を測定すると、それぞれ826時間と540時間という値が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】焼結含油軸受を用いたファンモータの一態様の縦断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 車両用ファンモータ
2 モータケーシング
2a ケーシング
2b エンドカバー
3 モータ軸
4 焼結含油軸受
5 転がり軸受

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油基油にジフェニルアミン系酸化防止剤および少くとも1個のフェニルエステル基を有する亜リン酸エステルを添加してなる潤滑油組成物。
【請求項2】
潤滑油基油100重量部当りジフェニルアミン系酸化防止剤および少くとも1個のフェニルエステル基を有する亜リン酸エステルがそれぞれ0.01〜5重量部の割合で添加された請求項1記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
ポリメタクリレート粘度指数向上剤が配合された潤滑油基油が用いられた請求項1または2記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の潤滑油組成物を含浸させた焼結含油軸受。
【請求項5】
請求項4記載の焼結含油軸受を用いたモータ。

【図1】
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【公開番号】特開2008−1734(P2008−1734A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−169840(P2006−169840)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【出願人】(000102670)NOKクリューバー株式会社 (36)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】