説明

火災受信機および防災システム

【課題】特に非火災による感知器の作動要因を統計処理して表示し、誤警報に対する対策を講じられるようにする。
【解決手段】接続された感知器2が作動するごとに、作動要因の選択を受け付けて作動履歴として記憶部18に蓄積させる作動要因入力部11aと、蓄積された作動履歴に基づいた統計情報を表示する統計情報表示部12aとを備え、作動要因入力部11aでは、作動要因は、火災/非火災に区分され、非火災の場合は、あらかじめ想定した作動要因のいずれかを選択させる構成としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、複数の感知器を監視して、火災が発生したときには地区音響装置を鳴動させる火災受信機、およびその火災受信機を備えた防災システムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような火災受信機を用いたシステムの管理者には、その管理を容易にするために、誤報が発生した原因などを把握して有効な対策を講じることが求められる。そのような誤報の発生を表示させる先行技術の例として、次の特許文献1には、受信機が実火災報と非火災報(誤報)が生じた感知器のアドレスと時刻を蓄積したジャーナルを表示する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-096470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1のような構成では、ジャーナルに非火災報の要因に関する記録が残らないため、ジャーナルを調査しても、たとえば喫煙場所を禁煙にするなどの具体的な対策を講じるのが困難であった。
【0005】
そこで、上記のような問題を解決すべく、特に非火災の場合に関して感知器の作動要因を把握できる新規な構成の火災受信機および防災システムを提供することを本発明の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による火災受信機は、接続された感知器が作動するごとに、作動要因の選択を受け付けて作動履歴として記憶部に蓄積させる作動要因入力部と、蓄積された作動履歴に基づいた統計情報を表示する統計情報表示部とを備え、前記作動要因入力部では、前記作動要因は、火災/非火災に区分され、非火災の場合は、あらかじめ想定した作動要因のいずれかを選択させる構成としている。
【0007】
前記統計情報表示部は、前記非火災の場合に選択された作動要因の統計情報を表示する構成とするのが望ましい。
【0008】
また、本発明による防災システムは、前記火災受信機を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、火災受信機は、感知器の作動履歴に基づいた統計情報を表示するので、管理者は、その表示から非火災時における感知器の作動要因を把握して、誤警報に対する適切な対策を講じることができる。それによって、感知器の作動回数が減少すれば、管理者の負担が軽減されるので、管理により集中できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】は本発明をGR型受信機に適用した防災システムの基本的なブロック図である。
【図2】は発報動作時に表示される警報画面の例である。
【図3】は火災の断定画面の例である。
【図4】は作動要因の入力画面の例である。
【図5】は統計情報の表示画面の例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示した受信機1は、マンションあるいは一般の商用ビルなどの建造物に設置されるものである。
【0012】
火災受信機は一般にP型1級、P型2級、R型に分類されるが、R型火災受信機にガス感知器を監視、制御する機能を付加したものがGR型受信機である。R型あるいはGR型受信機を用いたシステムでは、火災感知器2ごとに固有のアドレスが割り当てられており、受信機1と火災感知器2との間では、アドレスを指定した信号伝送がなされる。具体的には、受信機1がアドレスを指定した指令信号を送信し、そのアドレスの火災感知器2が応答信号を返信するポーリングであってもよい。
【0013】
以下本発明を、GR型受信機を用いた防災システムについて説明するが、P型1級、P型2級、あるいはR型火災受信機を用いたシステムにも同様に適用できる。
【0014】
受信機1は、基本的な構成として、操作部11と、液晶表示部12と、地区表示窓13と、音声部14と、火災感知器2やガス感知器5を制御する回線制御部15と、外部に異常を移報する移報部16と、CPU基板17と、記憶部18とを備えている。そして、火災回線21を介して火災感知器2や発信機3が接続され、音響回線41を介して地区音響装置4が接続され、ガス回線51を介してガス感知器5が接続され、制御回線61を介して様々な連動装置6が接続されている。連動装置6には、たとえば防火扉、防排煙装置、散水装置などがある。なお、受信機1は、プリンタ、副表示機などがさらに接続されていてもよい(図示なし)。
【0015】
そして、本発明の特徴的な構成として、受信機1の操作部11は、火災感知器2の作動要因の選択を受け付ける作動要因入力部11aを備える。また液晶表示部12は、その作動履歴に基づいた統計情報を表示する統計情報表示部12aを備えるが、タッチパネルによって各種スイッチの機能を持たせるとよい。なお、作動履歴は記憶部18に蓄積される。作動履歴の統計処理は、CPU基板17でソフトウェア的手段によって実行すればよい。
【0016】
R型あるいはGR型受信機を用いたシステムでは、誤警報を抑制するため、受信機1、火災感知器2のいずれかが検知時間を蓄積し、受信機1は、その蓄積に基づいて注意、発報、連動を判別するが、アナログ式検知器を用いた場合は、感知器2が火災検知をアナログ出力するので、受信機1がそのレベルに基づいて注意、発報、連動を判別する。
【0017】
本発明は、特に非火災時における火災感知器2の作動要因に注目しているので、作動要因入力部11aでは、非火災時における作動要因の選択候補をあらかじめ用意しておき、そこから適宜選択して入力させる構成が望ましい。作動要因の入力は、火災感知器2が作動し、その後、受信機1を復帰させる際に入力させればよい。
【0018】
一方、統計情報表示部12aは、受信機1の管理画面から統計情報の表示画面を呼び出す構成が望ましい。統計情報としては、たとえば火災感知器2ごとに、要因別の作動回数、時間帯別の作動回数、週または月を集計期間とした作動回数の変動傾向等が考えられる。しかしこれらに限定されることはなく、どのような統計情報であってもよい。また、統計情報は数値による表示に限られず、グラフ表示させてもよい。
【0019】
このような構成とすることで、管理者は非火災時における火災感知器2の作動要因を把握して、誤警報に対する適切な対策を講じることができる。たとえばタバコの煙による作動回数が多ければ、そこを禁煙にする、あるいは調理の水蒸気による作動回数が多ければ、換気装置を増設するなどである。そのような対策により火災感知器2の作動回数が減少すれば、管理者の負担が軽減されるので、管理により集中できるようになる。
【0020】
次いで、本発明を適用したシステムの基本動作を説明する。
【0021】
受信機1は、火災感知器2が蓄積を始めると、蓄積中灯を点灯させるが、火災感知器2の蓄積が所定時間以上継続すると火災発報を行う。また、火災感知器2が蓄積中に復旧すると、受信機1は蓄積中灯を消灯して監視状態に戻る。
【0022】
受信機1は、火災発報状態になると、音声部14から主音響を鳴動させ、地区表示窓13に「現場確認」、「火災」、発生場所の「棟、階、地区」などを表示する。このとき、詳細な警報画面を液晶表示部12に表示させ、さらに警報内容をプリントアウトさせてもよい。
【0023】
主音響は、たとえば「ピーピー、火災感知器が作動しました。現場を確認してください」のようなメッセージである。復旧した火災感知器2が所定時間内に再作動することもあるが、その2回目以降は「ピーピー、火事です、火事です。現場を確認してください」というように、メッセージを異ならせてもよい。
【0024】
さらに受信機1は、あらかじめ設定された連動登録に従って、地区音響装置4を鳴動させるとともに、防火扉、防排煙装置、散水装置などの連動装置6を作動させる。どの連動装置6を作動させるかなどの条件は、注意、発報、連動のレベルごとに個別に設定するとよい。たとえば注意レベルであれば、発生現場付近の地区音響装置4だけを鳴動させるなどである。また、経過時間に従って連動レベルを段階的に上げていく、つまり作動させる連動装置6を段階的に増やしていく構成としてもよい。
【0025】
このような発報動作に対して、管理者は、「音響停止」スイッチを操作して地区音響装置4などの連動を一時停止させて現場確認を行い、火災であれば、「火災断定」スイッチを操作して、地区音響装置4などの連動を再開させる。なお、連動装置6は、「制御操作」スイッチにより人手制御も可能である。そして鎮火したあとは、「復旧」スイッチにより、受信機1を監視状態に戻す。一方、火災でない場合は、火災感知器2の作動要因を除去するなどの対処をしてから、復旧スイッチを操作して、受信機1を監視状態に戻すことになる。
【0026】
図2は、発報動作時に自動的に表示される警報画面の例である。画面上部には「感知器が作動しました」という状態メッセージが表示され、その下には、作動した火災感知器2の詳細情報、つまり発生場所の「棟、階、地区」、種別などが火災感知器2ごとに一覧表示されている。そしてその右側には、受信機1の主音声、地区音響装置4の鳴動を停止させるための「音響停止」スイッチ、現場確認後に火災か否かを選択させるための「はい」、「いいえ」スイッチ、副表示機を呼び出すためのスイッチなどが配列されている。
【0027】
図3は、火災の断定画面の例で、火災か否かの選択で火災を選択したときに、このような画面が表示される。画面上部には「感知器が作動しました」という状態メッセージが表示され、その下には、作動した火災感知器2の詳細情報が一覧表示されている。そしてその右側には、火災を断定するための「火災断定」スイッチ、地区音響装置4や連動装置6を人手制御するための「個別操作」スイッチなどが配置されている。ここで「火災断定」スイッチを操作すると、地区音響装置4の鳴動停止だけでなく、全ての連動装置6の連動停止が解除される。
【0028】
受信機1を監視状態に戻す際には、本発明の特徴的な機能として、火災感知器2の作動要因を入力して、それを作動履歴として蓄積させることができる。作動要因は、火災/非火災に区分されており、火災の場合は、「火災」が自動的に選択される。一方、非火災の場合は、あらかじめ想定した要因のいずれかが選択できるとよい。たとえば「タバコ」、「水蒸気」、「いたずら」、「空調等」、「工事・試験」など複数の選択肢を用意しておくとよい。なお作動要因の入力は、この時点に限られず、管理者画面から適宜可能な構成としてもよい。また任意の作動要因を文字入力できるようにしてもよい。
【0029】
図4は、作動要因の入力画面の例で、上記火災か否かの選択で非火災を選択したときに、このような画面が表示される。画面上部には「通常監視中」という状態メッセージが表示され、その下には、作動した火災感知器2の詳細情報が一覧表示されている。そしてその右側には、作動要因を統計分析させるための「統計分析」スイッチ、この画面を終了させるための「終了」スイッチ、「タバコ」〜「工事試験」の要因選択スイッチ、これらの処理を実行させるための「実行」スイッチなどが配置されている。この例では、火災感知器2の作動要因をスイッチ操作で選択する構成としているので、直感的な要因選択が可能である。
【0030】
火災感知器2の作動要因に関する統計情報は、受信機1が監視状態であれば、所定の操作によっていつでも表示できる。同様にプリントアウトも可能である。管理者は、表示された統計情報に基づいて、非火災時における火災感知器2の作動回数を減らすべく、適切な対策を講じればよい。
【0031】
図5は、統計情報の表示画面の例で、上記作動要因の入力画面の「統計分析」スイッチを操作したとき、あるいは管理画面で所定の操作をしたときに、このような画面が表示される。画面上部には、「通常監視中」という状態メッセージが表示され、その下には、火災感知器2ごとの作動履歴と、その火災感知器2についての統計情報が表示されている。この統計情報は、作動要因別の作動回数になっているが、他の統計情報に切り替えることもできる。そしてその右側には、画面をプリントアウトさせるための「画面印字」スイッチ、作動履歴の1件分を消去させるための「データ消去」スイッチ、1台の火災感知器2に関する作動履歴の全体を消去させるための「データ全消去」スイッチ、これら処理を実行するための「実行」スイッチなどが配置されている。
【0032】
なお、上記では火災感知器2の作動要因の入力および統計情報の表示について説明したが、ガス感知器5についても同様の構成が可能であり、効果も同様である。また、本発明は、火災感知器1あるいはガス感知器5ではない感知器を接続した受信機1にも適用できる。
【符号の説明】
【0033】
1 火災受信機
2 感知器
11a 作動要因入力部
12a 統計情報表示部
18 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続された感知器が作動するごとに、作動要因の選択を受け付けて作動履歴として記憶部に蓄積させる作動要因入力部と、
蓄積された作動履歴に基づいた統計情報を表示する統計情報表示部とを備え、
前記作動要因入力部では、前記作動要因は、火災/非火災に区分され、非火災の場合は、あらかじめ想定した作動要因のいずれかを選択させる構成としている火災受信機。
【請求項2】
請求項1において、
前記統計情報表示部は、前記非火災の場合に選択された作動要因の統計情報を表示する火災受信機。
【請求項3】
請求項1、2のいずれか1項に記載の火災受信機を備えた防災システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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