説明

炊込みごはん用調理素材

【課題】調味目的の食品添加物を使用しない、または配合量を低く抑えたことを特徴とし、具材部と調味料部とが別個に包装されてなる炊飯不良が起こらない長期保存可能な炊込みごはん用調理素材を提供することを目的とする。
【解決手段】熱による風味劣化の比較的少ない調味原料を具材の風味や色調を損なわない程度で具材部にブリックスが1.0〜15.0%になるように配合し、だし部のブリックスが40.0〜50.0%になるようにだし部のブリックスを調整することにより、炊飯不良を起こさず、また具材の風味と色調が活かされた風味良好な炊込みごはん用調理素材で、調味目的の食品添加物を使用しないことを特徴とし、具材部とだし部とが別個に包装されてなる長期保存可能な炊込みごはん用調理素材を提供することが可能となった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長期保存可能な具材部とだし部とが別個に包装されてなる炊込みごはん用調理素材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から市販されている長期保存可能な炊込みごはん用調理素材は、一般に炊込みごはんの素あるいは釜飯の素と称されている。炊込みごはん用調理素材の調理方法は炊飯開始前に米や水等の他の素材とともに炊飯器内に入れ、そのまま或いは攪拌した後に炊飯し、炊飯終了後に攪拌し炊込みごはんとする方法が一般的である。
【0003】
長期保存可能な炊込みごはん用調理素材は、具材と調味料等のすべての食品素材が同一の容器包装に密封されレトルト処理されたものと、具材と主たる調味料がそれぞれ別個の容器包装に密封され具材の容器包装のみレトルト処理されて流通販売されるものに大別される。
【0004】
上記の炊込みごはん用調理素材のうち具材と調味料等のすべての食品素材が同一の容器包装に密封されたものは、調味料が具材の中心部まで浸透しているため、具材の風味や色調が損なわれる上に、調味料がレトルト処理の際に受ける過大な加熱により、風味や色調が損なわれたものとなる。一方、具材と主たる調味料が別個の容器包装に密封されてなるもののうち具材のみまたは具材と水分のみを気密性容器に密封しレトルト処理したものは具材に起因する加熱臭やむれ臭が発生しやすく、得られる炊込みごはんの風味も損なわれたものとなる。このほか、両者の風味上の欠点を改善するため、具材と主たる調味料が別個の容器包装に密封され、具材と具材の風味や色調を損ねない程度の濃度の調味料を気密性容器に密封しレトルト処理したものが市販されている。
【0005】
特開平6-46771号公報には、具材と主たる調味料が別個の容器包装に密封され、具材と具材の風味や色調を損ねない程度の濃度の調味料を気密性容器に密封しレトルト処理したものを用いた炊込みごはんの炊飯方法が開示されているが、これは炊飯後に主たる調味料を加えるようにしたことを特徴としており、このような方法では得られた炊込みごはんは水分量が多く、食感が損なわれたものとなる。
【0006】
近年自然志向の高まりに伴い、調味目的の食品添加物を使用しない、いわゆる化学調味料無添加のものが一般消費者に求められており、具材と主たる調味料が別個の容器包装に密封されてなるもので、具材部が具材と具材の風味や色調を損ねない程度の濃度の調味料を気密性容器に密封しレトルト処理したものは、調味目的の食品添加物を使用した場合の呈味を補うために酵母エキス、たんぱく加水分解物、畜肉エキス等のエキス類の使用量が多くなり、調味料のブリックス(可溶性固形分)が上昇する。そのため、調味料が炊飯水中で沈降し、沸点上昇が起こり炊飯器の設定温度に達しても沸騰せず、炊飯器内部で対流が起こらず米が生煮えとなる炊飯不良が発生する場合がある。
【0007】
【特許文献1】特開平6-46771号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点の解決を意図するものであり、おもに調味目的の食品添加物を使用しない、または配合量を低く抑えたことを特徴とし、具材と主たる調味料とが別個に包装されてなる炊飯不良が起こりにくい長期保存可能な炊込みごはん用調理素材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために具材及び主たる調味料のブリックスに着目し、鋭意研究した結果、本発明に到達した。すなわち、具材容器包装(具材部)は、加熱による風味劣化の比較的少ない調味原料を具材の風味や色調を損なわない程度のブリックス1.0〜15.0%になるように配合し、調味料容器包装(だし部)のブリックスは40.0〜50.0%になるように配合することにより、炊飯不良を起こさず、また具材の風味と色調が活かされ風味良好である、調味目的の食品添加物を使用しない、または配合量を低く抑えたことを特徴とする、具材と主たる調味料が別個に包装されてなる炊込みごはん用調理素材を提供することが可能となった。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、炊飯不良を起こさず、また具材の風味と色調が活かされた風味良好な炊込みごはん用調理素材で、調味目的の食品添加物を使用しない、または配合量を低く抑えたことを特徴とし、具材部とだし部とが別個に包装されてなる炊込みごはん用調理素材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明においてブリックスとは可溶性固形分をさし、アタゴ製デジタル糖度計PR-101などを用い、基準温度20℃で測定した値をいう。基準温度20℃以外で測定した場合は、補正表を用いて測定値を基準温度20℃に補正する。

【0012】
本発明において具材部及びだし部に用いられる調味原料としては、例えば淡口醤油、濃口醤油、食塩、砂糖、みりん、酒、野菜エキス、畜肉エキス、魚介エキス、昆布エキス、酵母エキス、たんぱく加水分解物などがあるが特にその種類を制限するものではなく最終的に炊飯した炊込みごはんの風味が良好なものになるように、適宜一種または複数種を組み合わせて使用することが好ましい。
【0013】
本発明において具材部に用いられる具材原料としては、例えば人参、ごぼう、たけのこ、しいたけ、しめじ、油揚げ、こんにゃく、栗、わらび、ぜんまい、山くらげ、きくらげ、畜肉類、魚介類などがあるが特にその種類を制限するものではなく、適宜一種または複数種を組み合わせて使用することが好ましい。
【0014】
本発明において用いられるだし部の内訳は、炊飯一回分の米の量に合わせて個包装されたものであり、炊飯する米の重量に対して主たる調味料の重量が10〜20重量%となるように規定され、だし部のブリックスが40.0〜50.0%となるように調整される。ブリックスが40.0%より低いものは、炊込みごはんに充分な調味ができず薄味になるため好ましくなく、ブリックスが50.0%より高いものは、炊飯時に調味料が炊飯水中で沈降しやすく沸点上昇が起こり、炊飯器の設定温度に達しても沸騰しないため炊飯器内部で対流が起こらず米が生煮えとなる炊飯不良が起こりやすく好ましくない。
【0015】
また、本発明において用いられる具材部の内訳は、炊飯一回分の米の量に合わせて個包装されたものであり、含有する液体部は、ブリックスが1.0〜15.0%になるように調整される。液体部のブリックスが1.0%より低いものは、レトルト処理により具材由来の過熱臭が生じやすくなり、得られた炊込みごはんの風味も損なわれたものとなるため好ましくなく、液体部のブリックスが15.0%より高いものは、具材に調味料が浸透して具材本来の風味や色調が損なわれたものとなるため好ましくない。
【0016】
本発明において調味目的の食品添加物とは、食品衛生法規則別表第1に掲げられる食品添加物で一括表示名が調味料と表示されるもののうち、(1)アミノ酸類は、L−アスパラギン酸、L-アルギニンL-グルタミン酸塩、グリシン、DL-トレオニン、L-バリン、L-フェニルアラニン、L-メチオニン、L-リシン塩酸塩、DL-アラニン、L-イソロイシン、L-グルタミン酸ナトリウム、L-テアニン、L-トリプトファン、L-トレオニン、L-ヒスチジン塩酸塩、DL-メチオニン、L-リシンL-グルタミン酸塩、L-リシンL-アスパラギン酸塩、(2)核酸類は、5’−イノシン酸ニナトリウム、5’−グアニル酸ニナトリウム、5’−リボヌクレオチドカルシウム、5’-リボヌクレオチドニナトリウム、5’−ウリジル酸ニナトリウム、5’−シチジル酸ニナトリウム及び(3)有機酸類は、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、(4)無機塩は、塩化カリウムといった特に旨みを増強する目的で使用される食品添加物をいう。
【0017】
実施例1
以下に示す方法で米3合用の炊込みごはん用調理素材を作成した。
表2に示す配合でアルコールと米油以外の原料を加熱混合し、90℃達温後、冷却し、アルコールを添加して攪拌混合した。得られた液と米油を容器に充填して、ヒートシールで密封し、ブリックス46.0%のだし部を得た。
表3に示す配合の具材を水晒し後、表4に示す配合で混合溶解して得た液体部とともにレトルトパウチに充填し、ヒートシールで密封後、121℃30分でレトルト殺菌を行い、具材部に含まれる液体部のブリックスが11%の具材部を得た。
(表2) だし部



(表3)具材



(表4) 液体部



上記の方法で得られただし部と具材部を米3合に対して使用した。米3合は5訂食品成分表2001より米160gに相当する。米3合にだし部と水647gを加え、攪拌した後、具材部を上にのせ、炊飯器(TOSHIBA製RCK−10DG)で炊飯したところ、炊飯不良を起こさず、また具材の風味と色調が活かされた風味良好な炊込みごはんを得ることができた。
【0018】
以下に示す方法で米3合用の炊込みごはん用調理素材を作成した。
表5に示す配合でアルコールと米油以外の原料を加熱混合し、90℃達温後、冷却し、アルコールを添加して攪拌混合した。得られた液と米油を容器に充填して、ヒートシールで密封し、ブリックス54.0%のだし部を得た。
表3に示す配合の具材を水晒し後、表4に示す配合で混合溶解して得た液体部とともにレトルトパウチに充填し、ヒートシールで密封後、121℃30分でレトルト殺菌を行い、具材部に含まれる液体部のブリックスが11%の具材部を得た。
(表5) 調味料部




上記の方法で得られただし部と具材部を米3合に対して使用した。米3合は5訂食品成分表2001より米160gに相当する。米3合にだし部と水647gを加え、攪拌した後、具材部を上にのせ、炊飯器(TOSHIBA製RCK−10DG)で炊飯したところ、炊飯器内部で対流が起こらず米が生煮えとなる炊飯不良が起こり、良好な炊込みごはんを得ることができなかった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
具材とだしが別個に包装されてなる長期保存可能な炊込みごはん用調理素材で、炊飯する米に対して調味料部の重量が10〜20重量%となるように使用され、主たる調味料を含みブリックス(可溶性固形分)が40.0〜50.0%であるだし部と、調味料を含みブリックスが1.0〜15.0%である液体と具材が一緒に包装された具材部からなる炊込みごはん用調理素材。
【請求項2】
調味原料に調味目的の食品添加物を使用しないことを特徴とする、請求項1記載の炊込みごはん用調理素材。
【請求項3】
前記具材部が気密性容器に密封し加圧加熱殺菌された長期保存可能なレトルト食品であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の炊込みごはん用調理素材。


【公開番号】特開2007−282563(P2007−282563A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−113276(P2006−113276)
【出願日】平成18年4月17日(2006.4.17)
【出願人】(000000228)江崎グリコ株式会社 (187)
【Fターム(参考)】