説明

炭化水素含有供給原料を分析する方法

本明細書の開示は、原油の分析方法である。本方法は、各技術はそれぞれの特性を予測する少なくとも2種の異なる技術を用いる1種以上の研究室独立型装置(laboratory−independent device)で、原油の少なくとも2種の選択された特性を計測すること、計測した特性から原油の同定分析を再構築することができるプロセッサに計測した特性を伝達すること、及び計測した特性から原油の同定分析を再構築することを含む。開示された方法は、たとえば生成物の販売を交渉する業者が、生成物を販売又は購入するか否かを決定するための正確な分析情報を有するように、精油所供給原料のリアルタイム情報を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、供給原料の限定された情報から、原油、合成原油、精製中間体及びバイオ成分などの炭化水素含有供給原料の同定分析を得る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原油などの炭化水素含有供給原料は、変動する分子量及び極性を有する炭化水素類及びヘテロ原子有機化合物の複合混合物である。原油は油井から得られた形態で使用されることは滅多になく、代わりに、典型的には全体として精製として知られている物理的処理及び化学的処理の組み合わせにより広範囲の有用な燃料に転化される。原油は、その精製特性及び商業的価値が大きく変動する。商談及び精油所供給原料などの炭化水素含有供給原料を必要とする化学的処理は、原油の化学的組成及び物理的特性及び性能特性に関する時宜にかなった正確な情報の利益を享受することができる。しかし、しばしば、そのような情報は購入時に単純に入手可能ではなく、したがって、精油所供給原料の購入を交渉する業者は、供給原料源に関する歴史的情報及び同じ源(又は世界の類似の領域)から過去に購入したものと同じ特性を供給原料が実質的に有するという予想に基づいて購入決定を行わなければならない。しかし、供給原料に関するより時宜を得た情報を有していれば、業者は販売検討中の供給原料がその源から得られると通常予測される製品よりもより良いか悪いかを知るという利益を得て、歴史的な情報及び予想に基づく代わりに、特定の製品の実際の化学的組成及び物理的特性及び性能特性に基づく価格交渉をより良く行うことができる。さらに、供給原料中に存在する構成要素−たとえば精油所処理に損傷を与えるかもしれない構成要素又は望ましくない構成要素−が予測できないかもしれないという限りにおいて、業者は、商談時に供給原料に関する完全で正確な情報からの利益を得る。しかし、これまでは、精油所供給原料の夥しい数の特性が決定され、業者に伝えられなければならないので、交渉時及び潜在的な販売時に時宜にかなった正確な情報を得ることは非現実的であった。伝統的には、このような分析は、供給原料の多量のサンプルを必要とし、完了までに1〜2週間を要する。ゆえに、購入した供給原料に関する不完全な(又は決定的でない)分析情報を有する業者によって、精油所供給原料が購入されることが慣習である。
【0003】
同様に、原油分析などの精油所供給原料分析は、原油が精製される前に行われなければならない重要な分析である。典型的には、原油精油所は、それぞれ多数の重要な物理的特性及び性能特性において異なるかもしれない多数の異なる原油(及びこれらのブレンド)を精製し、さらなる製造又は販売のための特定の蒸留カットを得る。再び、精油所の技術者が各供給原料を精製するための最適な精油所処理条件を決定し、精油所設備が有するかもしれない各供給原料に対する潜在的な影響(たとえば、腐食、堆積など)を評価し得る前に、精油所供給原料の夥しい数の特性が分析されなければならない。これらの技術者は、構成要素成分をプロファイリングする歴史的データ及び源に基づく各原油の特性に基づいて特定のブレンド比率及び他の処理工程を決定する。しかし、構成要素成分及び原油の全体特性は、経時的及び源から精油所へと輸送される間に変化する。よって、精油所供給原料が精油所に到着した時には、原油が源から製造されていた時に決定された特性とは異なる特性を有することがしばしばあり得る。これらの差は、所望の蒸留カットを得るために必要なブレンド比率に劇的な影響を与え得る。不完全な情報に基づいて精油所供給原料を購入したならば、精製前に同定分析情報を得るために必要な分析を行わなければならない。上述のように、これらの分析は多量の製品サンプルを必要とし、完了までに1〜2週間を要する。仮に、分析の結果を得た後で、精油所供給原料が予測された化学的組成及び物理的特性及び性能特性を有していないとなれば、精油所技術者は処理を変更しなければならず、非効率的である。
【0004】
市販のソフトウェア製品、たとえばSpiral Software Ltd.(英国)から市販されているソフトウェア製品は、供給原料の限定された情報(たとえば、真の沸騰プロファイル、硫黄含有量、窒素含有量、密度、製品收率など)及び公知の原油、合成原油、精製中間体、バイオ成分の数百(好ましくは数千)の完全な(又は同定)分析を含む包括的データベースに基づいて、精油所供給原料に対する同定分析データ(determinative assay data)を提供することができる。このようなソフトウェア製品を正確に使用するために、データベースは高品質でなければならず、タイプ及び源に基づく原油その他精油所供給原料に関する情報を有していなければならない。これらのソフトウェア製品は、限定された情報を採用して、複雑な数学的処理を行い、供給原料(限定既知情報に基づいて)を最も類似の属性を有する公知の原油の分析と符合させることができる。あるいは、これらのソフトウェア製品は限定された情報を採用して、複雑な数学的処理を行い、種々の特性の相互関係に基づいて、及びデータベースに存在する既知の原油、合成原油、精製中間体などの多様性に基づいて、未知の原油、合成原油、中間体などの同定分析を構築又は再構築することができる。よって、これらのソフトウェア製品は、精油所供給原料のサンプルから得た限定された分析情報の入力及び包括的データベースを必要とする。ソフトウェア製品の実用性と無関係であるのは、限定された分析情報を得るために行う試験の速度及び正確さ、さらには、精油所供給原料の同定分析情報を正確に予測する際の限定された分析情報の価値である。
【0005】
精油所供給原料が販売拠点で評価されている最中であるか又は精油所にまさに到着したかにかかわらず、有意な購入及び処理決定をなすためにできるだけ早く完全な(又は同定)分析情報として有する必要性がある。完全又は同定分析情報は、精油所供給原料の化学的組成及び物理的特性及びその性能特性に関する情報を含み得る。しかし、公知の技術に基づいて、精油所供給原料の迅速同定分析情報を得ることは困難である。限定された分析データに基づいて同定分析情報を予測するソフトウェアは存在するが、労働集約的且つ時間集約的な処理及び分析は、ソフトウェアを用いるために必要な限定された分析データを得ることを要する。特に、ソフトウェアを用いるために必要な限定されたデータを得るためだけに、原油を複数のフラクションに蒸留して、次に各フラクションを分析して多数の物理的特性に関するデータを得ることが必要である。たとえばWO 00/39561 A1に開示されているような当該分野での最近の進展でさえ、分光分析により原油を自動分析する方法を教示するが、大量の原油及び慣用の蒸留設備を必要とする。さらに、このような方法は、完了するまでに約2日間を要する。たとえばWO 03/048759 A1に開示されているような当該分野の他の進展は、同定分析を行うことができる前に、数百のパラメータの分析データを得ることを要する。ゆえに、これらの方法は、精油所供給原料が精油所に到着した際に、供給源で精油所供給原料の購入を交渉する業者又は精油所技術者を有利にアシストしない。
【0006】
限定された分析情報を迅速に得ることができる試験を開発することが所望されている。さらに、炭化水素含有供給原料のいずれの特性が供給原料の正確な同定分析を特に予測するかを決定することも所望されている。このような決定に基づいて、本明細書に開示されている方法により、同定分析を特に予測する結果を与えることができる試験だけが行われることが必要である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示されているのは、限定されるものではないが原油、合成原油、残留成分又は分解ストック(cracked stock)成分などの部分精製中間フラクション、バイオ成分又はこれらのブレンド、及び石油探鉱産出前試験油井サンプルなどの精油所供給原料などの炭化水素含有供給原料を分析する方法である。一実施形態において、この方法は、各計測技術が特性の1種を予測する少なくとも2種の異なる研究室独立型計測技術を用いて炭化水素含有供給原料の少なくとも2種の特性を測定すること、測定値から炭化水素含有供給原料の同定分析を再構築することができるプロセッサに測定値を伝達すること、及び測定値から炭化水素含有供給原料の同定分析を再構築することを含む。好ましい実施形態において、この方法は、一方の技術は沸騰プロファイルを予測し他方の技術は他の特性を予測する少なくとも2種の異なる計測技術で炭化水素含有供給原料の沸騰プロファイル及び少なくとも1種の他の特性を計測すること、測定値から炭化水素含有供給原料の同定分析を再構築することができるプロセッサに測定値を伝達すること、及び測定値から炭化水素含有供給原料の同定分析を再構築することを含む。
【0008】
別の実施形態において、この方法は、研究室独立型装置(laboratory−independent device)で、特定の特性をそれぞれ予測できる少なくとも2種の技術を行うこと、これらの技術から得られたデータを相関させて、炭化水素含有供給原料の少なくとも2種の特性を得ること、測定値から炭化水素含有供給原料の同定分析を再構築することができるプロセッサに特性を伝達すること、及び炭化水素含有供給原料の同定分析を再構築することを含む。これらの技術は、紫外−可視(UV−Vis)吸光度分光分析、赤外(IR)吸光度分光分析、UV蛍光分光分析、中赤外(MIR)吸光度分光分析、近赤外(NIR)吸光度分光分析、X線蛍光(XFR)分光分析、核磁気共鳴、マイクロ−振動、マイクロ−蒸留、マイクロ−質量分析、マイクロ−イオン移動度分光分析及びマイクロ−ガスクロマトグラフィーからなる群より選択される。
【0009】
本開示の追加の特徴は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲から当業者には明らかとなるであろう。
本発明は、限られた量の重要な特性から炭化水素含有供給原料を分析する方法に関する。本方法は、各計測技術が特性の一つを予測する少なくとも2種の異なる研究室独立型計測技術で、炭化水素含有供給原料の少なくとも2種の特性を計測すること、測定値から炭化水素含有供給原料の同定分析を再構築することができるプロセッサに測定値を伝達すること、及び測定値から炭化水素含有供給原料の同定分析を再構築することを含む。好ましい実施形態において、本方法は、一方の技術は沸騰プロファイルを予測し他方の技術は他の特性を予測する2種の異なる研究室独立型計測技術で沸騰プロファイル及び少なくとも1種の他の特性を計測すること、測定値から原油の同定分析を再構築することができるプロセッサに測定値を伝達すること、及び測定値から原油の同定分析を再構築することを含む。好ましくは、他の特性は、密度、比重、総酸価、流動点、粘度、硫黄含有量、金属含有量、窒素含有量及びこれらの組み合わせからなる群より選択される。好ましくは、沸騰プロファイルは真の沸騰プロファイルである。
【0010】
計測工程は、好ましくは、紫外−可視(UV−Vis)吸光度分光分析、赤外(IR)吸光度分光分析、UV蛍光分光分析、中赤外(MIR)吸光度分光分析、近赤外(NIR)吸光度分光分析、X線蛍光(XFR)分光分析、核磁気共鳴、マイクロ−振動、マイクロ−蒸留、マイクロ−質量分析、マイクロ−イオン移動度分光分析及びマイクロ−ガスクロマトグラフィー(GC)からなる群より選択される少なくとも2種の技術を行うことを含む。各場合において、分析方法によって選択される計測技術は、問題の特性を最も予測する技術である。このような選択をなすことによって、本明細書に開示されている分析方法は、限られた数の重要な特性、すなわち少なくとも2種の特性だけを計測することによって、炭化水素サンプルの再構築を可能とする。
【0011】
別の実施形態において、本方法は、研究室独立型装置(laboratory−independent device)で上述の特性予測技術の少なくとも2種を行うこと、これらの技術から得たデータを相関させて、原油の少なくとも2種の特性を得ること、これらの測定値から原油の同定分析を再構築することができるプロセッサに特性を伝達すること、及び原油の同定分析を再構築することを含む。好ましくは、本方法は、研究室独立型装置(laboratory−independent device)で上述の技術の少なくとも2種を行うこと、これらの技術から得たデータを相関させて、原油の沸騰プロファイル及び少なくとも1種の他の特性を得ること、これらの測定値から原油の同定分析を再構築することができるプロセッサに沸騰プロファイル及び他の特性を伝達すること、及び原油の同定分析を再構築することを含む。
【0012】
好ましい実施形態において、計測技術は、中赤外(MIR)吸光度分光分析、近赤外(NIR)吸光度分光分析、核磁気共鳴、マイクロ−振動、マイクロ−蒸留及びマイクロ−ガスクロマトグラフィー(GC)の少なくとも1種で、サンプルの沸騰プロファイルを計測することを含む。これらの分光分析技術を介して得られたスペクトルデータ又は核磁気共鳴、マイクロ−振動、マイクロ−蒸留及びマイクロ−ガスクロマトグラフィー(GC)技術によって得られたデータは、当業者に公知の計量化学分析を用いて、サンプルの沸騰プロファイルに相関させることができる。これらの技術は、原油サンプル自身で行うことができるし、あるいは原油サンプルの蒸留フラクションで行うことができる。たとえば、サンプルをマイクロ−ガスクロマトグラフィー(GC)又はマイクロ−蒸留によって種々のフラクションに分離してもよく、続いて、各フラクションに中赤外(MIR)及び/又は近赤外(NIR)光線を照射してもよい。この照射により得られるスペクトルデータは、計量化学分析を用いて、たとえばスペクトルデータがデータベースに保存されている参照物質の沸騰プロファイルに相関させてもよい。
【0013】
別の好ましい実施形態において、他の特性は、密度、比重、総酸価、流動点、粘度及びこれらの組み合わせからなる群より選択され、計測工程は、紫外−可視(UV−Vis)吸光度分光分析、赤外(IR)吸光度分光分析、UV蛍光分光分析、中赤外(MIR)吸光度分光分析、近赤外(NIR)吸光度分光分析、X線蛍光(XFR)分光分析、核磁気共鳴、マイクロ−振動、マイクロ−蒸留及びマイクロ−ガスクロマトグラフィー(GC)からなる群より選択される少なくとも1種の技術を行うことによって特性を計測することを含む。好ましくは、この技術は、中赤外(MIR)吸光度分光分析、近赤外(NIR)吸光度分光分析及び核磁気共鳴の少なくとも1種である。
【0014】
また別の好ましい実施形態において、他の特性は、硫黄含有量及び金属含有量(たとえば、ニッケル含有量、バナジウム含有量、鉄含有量、など)及びこれらの組み合わせからなる群より選択され、計測工程はX線蛍光(XFR)分光分析で特性を計測することを含む。別の好ましい実施形態において、特性は金属含有量(たとえば、ニッケル含有量、バナジウム含有量、鉄含有量など)であり、計測工程は紫外−可視(UV−Vis)吸光度分光分析で特性を計測することを含む。
【0015】
上述のように、本明細書に開示される分析方法は、一般に、原油などの炭化水素含有供給原料の沸騰プロファイル及び少なくとも1種の他の特性などの少なくとも2種の特性を得ることを含み得る。これは、原油サンプルで少なくとも2種の上述の計測技術を行い、データを得て、その後、当業者に公知の計量化学分析を用いて、得られたデータを沸騰プロファイル及び他の特性に相関させることによって達成される。ここで、計測技術は、常に、最も予測的な特性を決定するように選択される。相関付け工程は、たとえば得られたスペクトルを同定すること、及び原油のどの特性がスペクトルによって予測され得るのかを決定することを含む。相関付け工程は、さらに、得られたデータを同定すること及び原油のどの特性がデータによって予測され得るのかを決定することを含む。相関付け工程は、さらに、好ましくは、得られたスペクトル又はデータをスペクトル又はデータがデータベースに保存されている参照物質の特性と符合させ、あるいは計量化学分析を用いてサンプルの特性を決定することを含む。
【0016】
たとえば原油の密度をNIRスペクトルに相関させるために、将来計測されるべき特性の全範囲をカバーするサンプルの較正セットを選択すべきである。密度についての相関は、700kg/m3及び1100kg/m3の間で均一に分配されているサンプルの密度を含んでいてもよい。それらのサンプルから、NIRスペクトル及び密度は、慣用のASTM方法論(たとえば、NIRについてASTM 1655−00、密度についてIP 365)又は他の周知の標準的な方法論を用いて計測することができる。計量化学分析を用いて、たとえば、部分最小二乗法、多重線形回帰、神経回路網又は遺伝的アルゴリズム、NIRスペクトルと密度との数学的相関のような多重線形相関アルゴリズムを決定することができる。この数学的相関は、次に、それらのNIRスペクトルから未知のサンプルの密度を導くために用いることができる。サンプルの比重(API)は、密度から算出することができる。同様の較正を下記Table 1に示す周知の標準に基づいて原油の他の特性について行うことができる。
【0017】
【表1】

【0018】
上述のように、開示された方法によって計測又は相関付けされるべき特性は、密度、比重、沸騰プロファイル、総酸価、総塩基価、流動点、粘度、硫黄含有量、ニッケル含有量、バナジウム含有量及び窒素含有量からなる群より選択される。しかし、追加の特性が計測されてもよく、選択された特性に基づく情報が、考慮中の炭化水素含有供給原料の同定分析を得るために必要なすべてであることがわかっている。原油の化学的特性としては、限定されるものではないが、元素及び分子組成を挙げることができる。原油の物理的特性としては、限定されるものではないが、密度、粘度、収量構造(yield structure)、煙点及び流動点、曇り点又は凝固点などのコールドフロー特性を挙げることができる。炭化水素含有供給原料の性能特性としては、限定されるものではないが、オクタン価及びセタン数を挙げることができる。原油の他の化学的特性、物理的特性及び性能特性は、一般に原油精製分野の当業者に知られている。
【0019】
本発明の分析方法は、問題となる特性を最も予測する最適な独立計測技術を一部に用いて、限定された重要な特性のデータから炭化水素含有供給原料を再構築することができる。これに関して、たとえば、沸騰プロファイル及び密度を決定するためにNIR技術を、ニッケル、バナジウム又は硫黄含有量を決定するためにXRF技術を、粘度を決定するためにマイクロレオロジカル技術を、酸度を決定するために導電率技術を用いることができる。
【0020】
開示された方法は、組成及び物理的特性及び性能特性が予め計測されており特徴づけられている原油、合成原油、中間物質及びバイオ成分を含む精油所供給原料などの参照のために、更新された完全な(又は同定)炭化水素含有供給原料分析データ源を含むデータベースを用いる。「同定」原油分析は、商談又は処理決定をなすために業者又は技術者にとって望ましくは必要であろう完全な情報として参照することを目的とする。これらの参照原油に対して相関的なデータもまた、データベース内に存在していてもよい。このような相関的なデータとしては、たとえば、スペクトルデータ、化学的特性データ、物理的特定データ及び性能特性データを挙げることができる。データベースにアクセスすることができ、応用数学的方法を利用するソフトウェアを含み得るプロセッサは、正確な再カッティング及び自由度のある他のアプリケーションとのデータ交換を含む原油などの炭化水素含有供給原料についての同定分析情報を生じさせることができる。好ましくはソフトウェアの一部である応用統計方法をプロセッサによって相関的なデータと特定の特性との間の関連を同定し、入手可能な情報から完全な特性を再構築するために用いることができる原油モデルを構築するために利用することができる。わずかに2,3の重要な計測パラメータに基づく場合でさえ、これらの再構築は物理的特性及び化学的特性の全範囲に及ぶ。すべての予測された数値における誤差を排除することで、ユーザー(たとえば、業者、精油所技術者など)が、関連する商談及び処理決定におけるリスクを評価することを可能とする。本明細書に特定されている限定された分析情報と結びつけられたこれらの応用統計学的方法は、驚くべき正確性をもって、限定された測定値から同定炭化水素含有供給原料の再構築を可能とする。したがって、未知の炭化水素含有供給原料を本明細書に記載された少なくとも2種の計測技術を用いて評価する場合には、計測されたデータを未知の炭化水素含有供給原料の同定分析を生じさせるための1種以上の公知の参照のために存在するデータと相関させることができる。適切なソフトウェア製品は、たとえばSpiral Software Ltd.(英国)から入手することができる。適切なプロセッサとしては、限定されるものではないが、典型的には産業用コンピュータ、パーソナルコンピュータ及び携帯情報端末(PDA)に見られるような汎用マイクロプロセッサ及び特定マイクロプロセッサの両方を挙げることができる。
【0021】
任意の多変数技術を相関技術(すなわち、計測したデータを、公知の参照について存在する組成、物理的特性データ及び性能特性データと相関させる)として用いることができる。多変数測定は、多数の測定が問題となるサンプルについてなされるものである。換言すれば、1種以上の変数又は応答が各サンプルについて計測される。よって、たとえば、蒸気サンプルにおいて多数の応答を得るためにセンサー列を用いることが多変数測定である。Beebe et al. "Chemometrics: A Practical Guide," 6 (John Wiley & Sons Inc. 1998)参照。好ましい相関技術は、疎データ技術、たとえば、部分最小二乗法、多重線形回帰、遺伝的アルゴリズム及び神経回路網などの計量化学技術である。よって、多変数技術で得られたデータは、特性に関する情報を発生する組成の固有の特性と数学的に相関する。
【0022】
たとえば、NIRスペクトルは、炭素−水素結合、酸素−水素結合及び窒素−水素結合及び分子のような1分子中の分子振動の倍音の強度を計測するために用いることができる。炭素−水素(C−H)吸収帯域は、典型的には、有機化合物の混合物について有用である。異なるタイプのC−H結合、たとえば、芳香族、脂肪族及びオレフィン性炭化水素類は、異なる固有振動数で光を吸収する。吸収帯域の大きさは、サンプル中のC−H結合の量に比例する。したがって、NIRスペクトルは、サンプル組成のはっきりした特徴を提供することができる。このはっきりした特徴は、サンプルの固有の特性に実験的に相関させることができる。
【0023】
NIR分光分析は、精油所における他の分析方法を凌駕するある種の利点を有し、正確に且つ迅速に多数の反復適用をカバーすることができる。800nmと2500nmとの間のNIR領域は、組み合わせ及び多原子的振動からの倍音の形態で分子情報を総合的に含むが、しかし、この情報を利用して、所望のパラメータを算出するために数学的技術が必要である。米国特許5,490,085号明細書、5,452,232号明細書及び5,475,612号明細書(これらの開示内容は本願明細書に援用される)は、プロセスへの供給物での分析から化学プロセス又は分離プロセスの生成物のオクタン価、收率及び/又は特性、及びプロセスへの供給物での分析からブレンド操作の生成物の収率及び/又は特性を決定するためのNIRの使用を記載する。
【0024】
光が流体に衝突する際、いくつかの現象が生じ得る。たとえば、光の一部が表面から反射され、別の部分が流体中に通過するかもしれない。流体中に通過する光の部分は、流体を通して伝達されるか、又は散乱又は吸収に供される。しばしば、これらの機構のすべてが同時に生じる。所与の波長で吸収された光の量は、光が貫通して移動する物質の一つの特性である。吸収された光は直接測定することはできないが、流体から出てくる光は測定することができる。吸収の結果として、出てくる光の強度は減少又は「減衰する」。所与の組成について減衰するかもしれない光の量は、波長の関数として変動するであろう。よって、所与の源光スペクトルについて、選択された波長で出てくる光の成分の強度を評価することは、流体の組成に関する情報を与える。
【0025】
散乱もまた、光強度の減衰を生じさせる。しかし、吸収の結果としての減衰は、波長の関数として光強度における相対変化を生じさせる、すなわち広帯域スペクトルの形状が変化するが、光の散乱故の減衰は絶対波長にそれほど依存せず、ゆっくりで単調な波長への依存性を有する。したがって、光の散乱は全波長で光強度の低下を示し、任意の所与波長での強度は、他の波長における強度に対して目につくほど変化しない。光を散乱し且つ吸収する流体について、正味の結果は、波長の関数として収集された光の絶対等級でさえ、化学的組成に関して特異的ではなく、波長の関数としての相対的光強度は化学的組成に関係する。光の異なる波長は異なる挙動を示すことがあるので、本明細書に開示された分析方法によれば複数の計測技術が好ましい。
【0026】
本明細書に開示された方法は、1種以上の研究室独立型装置(laboratory−independent device)を用いて行われる。用語「装置(device)」を修飾して本明細書で用いるように、用語「研究室独立型(laboratory−independent)」とは、携帯型、好ましくは手持ち型の装置(デバイス)を意味する。さらに、このような装置は、一人の人間によって操作可能であるべきである。よって、好ましくは、各装置は、約5kg未満の総量を有し、好ましくは約2kg未満の総量を有している。計測工程を行うために適切な1種以上の研究室独立型装置(laboratory−independent device)としては、マイクロ−蒸留ユニット、マイクロ−オシレーターユニット、マイクロ−ガスクロマトグラフ(たとえば、マイクロ−2次元ガスクロマトグラフ)、マイクロ−紫外−可視(UV−Vis)光分光分析器、マイクロ−赤外(IR)分光分析器、マイクロ−UV蛍光分光分析器、マイクロ−中赤外(MIR)分光分析器、マイクロ−近赤外(NIR)分光分析器、携帯型X−線蛍光(XRF)分光分析器、マイクロ−質量分光分析器、マイクロ−イオン移動度分光分析器、携帯型核磁気共鳴分光分析器、マイクロ導電率/静電容量装置、マイクロレオロジカル装置及び音叉センサーを挙げることができる。適切な研究室独立型装置(laboratory−independent device)は、単独の装置が、紫外−可視(UV−Vis)吸光度分光分析、赤外(IR)吸光度分光分析、UV蛍光分光分析、中赤外(MIR)吸光度分光分析、近赤外(NIR)吸光度分光分析、X線蛍光(XFR)分光分析、核磁気共鳴、マイクロ−振動、マイクロ−蒸留、マイクロ−質量分析、マイクロ−イオン移動度分光分析及びマイクロ−ガスクロマトグラフィー(GC)の1種以上を行うことができる多機能性であってもよい。
【0027】
適切な分光分析器は市販されており、原油精製分野の当業者には公知である。たとえば、マイクロ−NIR分光分析器はAxsun Technologies Inc.(Massachusetts, USA)から商標「AXSUN NIR−APS分析装置」として市販されている。マイクロ−ガスクロマトグラフは、Siemens(商標「MicroSAM」)及びSLS(商標「Micro−technology」)から市販されている。XRF分光分析器は、Oxford Instruments(英国)から市販されている。適切なマイクロ−オシレーターユニットは、一般に、米国特許5,827,952号明細書(開示内容を本明細書に援用する)に記載されている。適切な音叉センサーは、一般に、米国特許6,393,895号明細書(開示内容を本明細書に援用する)に記載されている。
【0028】
これらのユニット又は分光分析器の任意のものは、多数の特性と相関し得るデータを与えることができるが、しばしば、ある種のパラメータが1のユニット又は分光分析器により他のものよりもより良好に検出され得ることが知見されている。たとえば、好ましい一実施形態において、検出されるべき特性は、密度、比重、総酸価、流動点及び粘度からなる群より選択され、照射工程は、サンプル炭化水素含有供給原料に近赤外(NIR)光及び中赤外(MIR)光の少なくとも1種を照射することを含む。よって、好ましくは、研究室独立型装置(laboratory−independent device)は、異なる特性のデータを得るために異なるユニット又は分光分析器を利用することができるように、上述のユニット又は分光分析器(たとえば、装置は多機能性である)の1種以上を含む。
【0029】
上述のように、ある種の計測技術は、ある種の特性を他の計測技術よりもより正確に予測する。本明細書に開示されている分析方法は、計測しようとする特性を予測する計測技術を選択することを含む。たとえば、本方法は、沸点を予測する計測技術及び炭化水素含有供給原料の他の特性、密度、比重、総酸価、流動点、粘度、硫黄含有量、金属含有量及び窒素含有量などを予測する他の計測技術を選択することを含んでいてもよい。本明細書で用いる用語「予測」とは、一般に、同一の特性を計測する標準化方法(たとえばASTM)と比較した場合に、測定値が許容可能な誤差範囲内に含まれる技術を包含する意味である。許容可能な誤差範囲は、標準化方法(たとえばASTM)により計測された値の15%以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内であり得る。よって、1の計測技術が標準化方法の15%を超える誤差範囲を有する場合には、そのような技術は、計測されるべき特性を予測するとは考えられない。対比して、別の計測技術が15%以内の誤差範囲を有する場合には、そのような技術は、計測すべき特性を予測すると考えられる。計測技術を選択するための基準としては、限定されるものではないが、高い精度(上述したように)、その技術を行うことができる速度(迅速技術が好ましい)、その技術を行うための相対的費用(廉価な技術が好ましい)、その技術の行いやすさ(熟練した技を要しない技術が好ましい)及び周囲条件の変化に対するその技術の感受性の欠如を挙げることができる。
【0030】
好ましくは、各研究室独立型装置(laboratory−independent device)は、約5kg以下、より好ましくは約2kg以下の質量を有する。さらに、好ましくは、各研究室独立型装置(laboratory−independent device)は、上述の方法を行うために小規模量の原油だけを必要とする。したがって、各研究室独立型装置(laboratory−independent device)は、好ましくは約100mL以下の原油サンプル、より好ましくは約10mL以下、最も好ましくは1mL以下のサンプルを必要とする。このような小規模量の必要量、小型軽量の各研究室独立型装置(laboratory−independent device)で、装置を携帯型とすることができ、まだ分析されるべき原油の位置をたとえば原油油井又は出荷容器などにすることができる。有利なことに、研究室独立型装置(laboratory−independent device)の構成要素が比較的小型であるから、電力要求も比較的低い。よって、装置は、装置全体に質量を有害に加えることなく、適切な電池、たとえば充電式電池などで運転することができる。
【0031】
典型的には、本発明の方法を行うための1又は複数の装置は、2時間以内に1の分析を行い、好ましくは2分以内など、30分以内で1の分析を行う。
精油所プロセスの生成物の分析のために、本明細書に開示されている方法を行うために1又は複数の携帯型装置を用いる場合には、生成物は、精油所プロセス全体における中間物質流、ビチューメン、化学的供給原料として続いて使用される精油所プロセス全体からの生成物、燃料又は潤滑油として又は燃料又は潤滑油のためのブレンド成分として続いて用いられる精油所プロセス全体からの生成物、又は燃料、たとえば航空燃料、ガソリン、ディーゼル燃料又は船舶燃料又は潤滑油そのものであってもよい。
【0032】
携帯型装置内に存在する分析装置は、適切にマイクロ加工され得、センサーの形態であってもよい。マイクロ加工された装置は、装置の重要な分析部分又は検出器がマイクロチップ産業と一致する技術を用いて加工され、被検体との接触に応答してスペクトル又は単純な電気信号を発生させる装置である。単純な電気信号は、入力信号を計測中の特性の値に変換するか又はその信号を計量化学技術を用いてさらに処理する関連する電子機器のセットに供給される。スペクトルは、直接用いられるか又は計量化学技術に供されて所要の1又は複数の特性を得る前に数学的に処理されてもよい。いずれの場合においても、値又はスペクトルは、計測された値又はスペクトルと、予め分析測定値により決定されているそのようなサンプルの既知の組成又は特性との間の関係から得られるモデルに供給してもよい。
【0033】
存在する場合には、マイクロ−蒸留装置又はマイクロ−分別装置は、サンプルを蒸留又は分別して慣用の蒸留で達成されるものと同じフラクションを与えることができる適宜の装置でよい。たとえば、マイクロ−蒸留装置又はマイクロ−分別装置は、原油その他の精油所供給原料を蒸留又は分別して、原油蒸留ユニット(CDU)内で慣用の精油所蒸留により達成されるものと同じフラクションを与えることができる。マイクロ−蒸留装置は、サンプル(たとえば原油)を気化するためのマイクロ−ヒーター、適切なチャネル、たとえば気化したサンプルが通過して蒸気−気体分離を達成する毛細管、チャネルを上向きに通過した気化したサンプルが凝縮する適切な凝縮ゾーン(典型的には、マイクロ−冷凍器などの冷却されたゾーン)及び凝縮ゾーンでサンプルの濃度を計測するマイクロ−センサーを具備するマイクロ加工装置であってもよい。マイクロ−センサーは、光学センサーであってもよい。好ましくは、マイクロ−蒸留装置は、たとえばシリコンウェハ上のマイクロ−加工分離装置である。マイクロ−蒸留装置は、使い捨てタイプであってもよい。マイクロ−蒸留装置が、慣用の蒸留により達成されると同様の一連のフラクションを与える場合、これらのフラクションを1種以上のさらなる分析装置により分析してもよい。
【0034】
マイクロ−オシレーター装置は、存在する場合には、好ましくは音響光学装置又はセンサーである。マイクロ−オシレーター装置は、オシレーターの上の物質の質量で変動する装置の振動の周波数の測定値に基づく。よって、物質が装置上で蒸発又は凝縮されるならば、周波数は変動する。TBPに関する情報はもちろん、音響光学装置は、粘度、コールドフロー特性、揮発性汚染物質及び沈殿物形成に関する情報も与えることができる。適切なマイクロ−オシレーターは、米国特許5,661,233号明細書及び5,827,952号明細書に記載されている。
【0035】
存在する場合には、たとえば、TBPに関する情報を与えるため及びシミュレートされた蒸留曲線を与え、並びに全体として及び/又はマイクロ−蒸留装置などの適切な分離工程から得られるフラクション内のものとしてサンプル中の飽和及び芳香族の量及び密度に関する情報をも提供するために、マイクロ−NIRを用いることができる。硫黄及び/又は曇り点及び凝固点などのコールドフロー特性、酸度(TAN)、リサーチ法オクタン価(RON)、モーター法オクタン価(MON)、セタン数及び煙点もまた計測することができる。適切なマイクロ−NIR分析装置としては、the Axsun NIR−APS分析器(Axsun Technologies Inc., Massachusetts製造)を挙げることができる。
【0036】
密度を計測するための装置は振動センサーであってよく、TANを計測するための装置は電気化学的センサーであってよい。
マイクロ−GCは、存在する場合には、シミュレートされた蒸留曲線を与えることができ、C1−C9炭化水素類のスペシエーションなどの炭化水素スペシエーションを与えることができる。適切なマイクロ−GC装置としては、Siemens MicroSAM process GC装置又はSLS Micro−technology GC装置を挙げることができる。
【0037】
マイクロ−イオン移動度/微分移動度分光分析器は、存在する場合には、特定の分子タイプ、特にサンプル中の極性分子に関する情報、たとえば有機塩素化合物又はメタノールなどの汚染物質並びに硫化物及び窒素化合物に関する情報を提供するために用いることができる。さらに、マイクロ熱分解器と結合したマイクロ−イオン移動度/微分移動度分光分析器は、窒素及び硫黄分析を増強することができる。マイクロ−イオン移動度/微分移動度分光分析器は、マイクロGC及び/又は予備−分別/予備−凝縮装置との組み合わせで最良に実施される。適切なマイクロ−イオン移動度/微分移動度分光分析器としては、the Sionex MicroDMxを挙げることができる。
【0038】
本発明の方法で用いるために、多数の装置を単一の携帯型装置内に配置することができる。この装置は、少なくとも3種の異なる分析装置、好ましくは少なくとも5種の異なる分析装置、たとえば少なくとも10種の異なる分析装置などを含み、装置を用いてサンプル(又はそのフラクション)の多数の特性を確認することができ、分析のための十分な量のデータを直接又は後述する適切なデータベースモデルを介して提供することができる。
【0039】
携帯性ゆえに、本方法を実施するために用いられる装置は、分析されるべきサンプルの位置を取ることができ、得られたサンプルの迅速な分析を行うことができる。たとえば原油分析(アッセイ)のために、たとえば原油タンカー上で又は陸上原油貯蔵タンク内で、又は油探査採油所で原油の「その場(at location)」迅速評価/査定のために本装置を用いて、潜在的な購入者に原油の価値を迅速に確認させることができる。油探査採油所にて、本発明の装置は、原油の迅速な分析を提供するために、たとえば試験油井での原油の特性の迅速なフィードバックを提供して、その原油の評価を可能とするために、採油所の「ウェルヘッド(抗口)」で用いられてもよい。
【0040】
好ましくは、本分析方法と共に用いることができる装置は、少なくとも無線網型回線網などの無線通信、より好ましくは衛星データ通信などの遠隔操作通信手段と対応し、分析結果を潜在的な購入者に容易に通信することができ、分析データが潜在的な購入者に入手されるまでの時間スケールを削減する。
【0041】
特に、適切なマイクロ−装置が入手可能でない場合、本方法を実施するために用いることができる装置は、他の携帯型分析器、特に元素データを得ることができる携帯型分析器、たとえば携帯型X線蛍光(XFR)分光分析及びレーザー誘起ブレークダウン分光分析(LIBS)との組み合わせで用いることができ、分析の幅を改良する。
【0042】
XRFは、たとえば、サンプル、たとえば原油フラクションの硫黄及び金属含有量の分析を行うことができる。適切な携帯型XRF分析器としては、OXFORD instrumentsから入手することができる装置を挙げることができる。
【0043】
一般に、本発明の分析方法を行うために用いられる装置は、任意の他の分析器との組み合わせであってもよく、分析されるべきサンプルの少なくとも2種、好ましくは少なくとも10種の重要な特性に関するデータを生じさせる。
【0044】
本発明の分析方法を用いて得ることができる迅速分析ゆえに、複数の分析をより頻度高く得ることができ、及び/又はプロセス最適化のために用いることができる。たとえば、本方法を精油所にて用いることができ、ブレンド用の精油所の最適な構造を確保するために、(入手可能な2以上の源から)精油所にて製造された精油所供給原料のブレンド、たとえば原油ブレンドで定期的な分析を行うことができる。さらに、精油所又はブレンドステーションに到着した供給原料の一貫性及び/又は品質を確認するために本方法を用いることができ、及び/又はブレンド及びプロセス精油所最適化モデルへの入力用の供給原料品質及び特性データのオンライン(on line)又はアットライン(at line)決定を提供するために用いることができる。
【0045】
本発明の方法を採油所の「ウェルヘッド(抗口)」で用いる場合、共通の輸送機構、たとえば共通のパイプラインを用いて各油井からの原油の分析を提供する多数の装置を異なるウェルヘッド(抗口)で運転させてもよい。個々の原油の分析及び適切な日程計画は、最終的な原油ブレンドのより最適な組成とすることができる。さらに、異なるウェルヘッド(抗口)からの原油の分析を繰り返すことによって、個々の原油における経時的変化を、産出された原油ブレンドの効果を予測するために用いることや、一定品質原油ブレンドを維持するための配合を左右するために用いることができる。
【0046】
同様に、本方法を精油所プロセスから得ることができる生成物の分析のために用いる場合には、精油所又は化学プラント自体などの後続の位置、燃料タンカー又は空港、船舶修理所における固体タンク又は石油スタンドフォアコートなどの燃料ブレンドターミナル又は燃料含有タンク内での生成物の一貫性及び品質を確認するために本方法を用いることができる。
【0047】
さらに別の側面において、本発明はまた、精油所供給原料又は精油所プロセスの生成物の分析方法をも提供する。本方法は、精油所供給原料又は精油所プロセス生成物を上述の携帯型装置を用いて分析することを含む。
本方法は、また、1以上のさらなる携帯型分析器による精油所供給原料又は精油所プロセスの生成物の分析、潜在的購入者への分析結果の通信及び/又は上述のデータベースモデルで得られた分析情報との組み合わせを含んでいてもよい。
【0048】
あるいは、又は追加的に、種特異性センサー、適合pHセンサー、音響センサー、マイクロ−導電率/静電容量設備、マイクロ−レオロジカル設備などの他の分析ツールを本方法で用いる研究室独立型装置(laboratory−independent 装置)に組み込んでもよい。マイクロ−導電率/静電容量設備及び適合pHセンサーは、たとえばサンプルの酸度を決定するために用いることができる。マイクロ−レオロジカル設備及び音響センサーは、たとえばサンプルの粘度を決定するために用いることができる。音響センサーは、さらに、たとえばサンプルの流動点を決定するために用いることができる。
【0049】
好ましくは、研究室独立型装置(laboratory−independent device)は、衛星データ通信などの遠隔操作通信手段を含むか又は少なくとも対応し、分析結果を業者、技術者又は研究室独立型装置(laboratory−independent device)のユーザーに容易に通信できる。
【0050】
本明細書に記載した分析方法は、たとえば、原油油井にて、多数の油井からの原油がブレンドされる原油採油プラットフォームで、ある場所から他の場所へ原油(又はこれらのブレンド)を伝達するパイプライン内で、原油容器/タンカーの荷積み又は荷下ろし港で、精油所への入り口で、又は精油所内の任意の中間物質流中又は生成物流中などの種々の位置で実施することができる。
【実施例】
【0051】
本実施例は本発明の方法を説明する。Bomem FTNIR 分光分析器を用いて、原油サンプルのNIRスペクトルを得た。NIRスペクトルは、路長1mm、温度40℃で、第1倍音領域(6300〜5700波数)内で採取した。
【0052】
スペクトルの第1の派生物を較正モデル構築及び計量のために用いた。
約40〜60個の較正サンプルを用いてTBPデータ及び密度用の較正モデルを構築した。所望の範囲での原油特性の多様性を表示するように、これらの較正サンプルを選択した。較正原油用の参照データは、対応するASTM法及びTable 1に掲載した他の適切な方法を用いて計測した。部分最小二乗法("PLS")を用いてモデルを構築した。the Thermo Electron Corporationから入手可能なGRAMS/A1 ディスクトップ分光分析データ処理及び取り扱いツールを用いてモデルを構築した。原油サンプルの独立セットを用いてモデルの精度を確認した。
【0053】
同じパラメータを用いて、サンプルについてのNIRスペクトルを計測した。得られたスペクトルを較正モデルに供給して、TBPデータ及び密度を算出した。下記Table 2は、モデルによって決定されたままのTBP及び密度の結果を示す。
【0054】
加えて、X−線蛍光分光分析(IP方法437及び477)を用いて、原油サンプルの硫黄、ニッケル及びバナジウム含有量を決定した。このデータもまた下記Table 2に示す。
本発明の方法に従って、TBP、密度、硫黄、ニッケル及びバナジウムデータをSpiral Software Ltd.から入手可能なCrudeManager ソフトウェアを用いて相関させて、再構築された同定分析を生じさせた。下記Table 3は、再構築された分析を示し、慣用の分析技術によって決定されたままの実際の分析値と比較する。容易に明らかであるように、本発明の方法は、同定分析情報を用いて、原油の比較的正確な同定分析を提供する。
【0055】
CrudeManagerは、重要な原油データセットから全体の原油特性の定義されたセット、原油の個々のカットの特性、又は全原油分析を算出(再構築)するためのツールである。典型的には、このデータセットは、TBPデータ及び追加のデータを含む。追加のデータは、限定されるものではないが、密度、硫黄、ニッケル又はバナジウムであってもよい。現定数のデータからの原油データ又は全原油分析の再構築のために、CrudeManagerは、大型の原油分析からのデータで予め訓練しておいた。この較正が、再構築されるであろう原油の多様性をカバーすることが望ましい。
【0056】
【表2】

【0057】
【表3】

【0058】
上述の記載は、明瞭性及び理解のためにのみ提示されるものであって、本開示の範囲を何ら限定するものではなく、本開示の範囲内の変形例は当業者に取って自明であろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素含有供給原料を分析する方法であって、
(a)炭化水素含有供給原料の沸騰プロファイル及び少なくとも1の他の特性を、各個別の特性を予測するように選択された少なくとも2の異なる研究室独立型技術(laboratory−independent technique)で測定する工程;
(b)工程(a)でなされた測定値を、測定値から炭化水素含有供給原料の同定分析(determinative assay)を再構築することができるプロセッサに伝達する工程;及び
(c)測定値から原油の同定分析を再構築する工程
を含む方法。
【請求項2】
他の特性は、密度、比重、総酸価、流動点、粘度、硫黄含有量、金属含有量、窒素含有量及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(a)は、紫外−可視(UV−Vis)吸光度分光分析、赤外(IR)吸光度分光分析、UV 蛍光分光分析、中赤外(MIR)吸光度分光分析、近赤外(NIR)吸光度分光分析、X線蛍光(XFR)分光分析、核磁気共鳴、マイクロ−振動、マイクロ−蒸留、マイクロ−質量分析、マイクロ−イオン移動度分光分析及びマイクロ−ガスクロマトグラフィー(GC)からなる群より選択される少なくとも1の技術を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程(a)は沸騰プロファイル及び他の特性と、当該技術から得たデータとを相関させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
工程(a)は、中赤外(MIR)吸光度分光分析、近赤外(NIR)吸光度分光分析、核磁気共鳴、マイクロ−蒸留及びマイクロ−ガスクロマトグラフィー(GC)の少なくとも1で沸騰プロファイルを測定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
工程(a)は、(i)分光分析から得たスペクトル又は(ii)マイクロ−蒸留又はマイクロ−ガスクロマトグラフィー(GC)から得たデータのいずれかと、サンプルの沸騰プロファイルとを相関させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
他の特性は、密度、比重、総酸価、流動点、粘度及びこれらの組み合わせからなる群より選択され、工程(a)は、紫外−可視(UV−Vis)吸光度分光分析、赤外(IR)吸光度分光分析、UV蛍光分光分析、中赤外(MIR)吸光度分光分析、近赤外(NIR)吸光度分光分析、X線蛍光(XFR)分光分析、核磁気共鳴、マイクロ−振動、マイクロ−蒸留、マイクロ−質量分析、マイクロ−イオン移動度分光分析及びマイクロ−ガスクロマトグラフィー(GC)からなる群より選択される少なくとも1の技術を行うことにより他の特性を測定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
工程(a)は、他の特性と、当該技術から得たデータとを相関させることをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
当該技術は、中赤外(MIR)吸光度分光分析、近赤外(NIR)吸光度分光分析及び核磁気共鳴の少なくとも1である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
他の特性は、硫黄含有量、金属含有量及びこれらの組み合わせからなる群より選択され、工程(a)はX線蛍光(XFR)分光分析で当該特性を測定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
工程(a)は、X線蛍光(XFR)分光分析から得たデータを他の特性と相関させることをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
金属は、ニッケル、バナジウム、鉄及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
特性は金属含有量であり、工程(a)は当該特性を紫外−可視(UV−Vis)吸光度分光分析で測定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
工程(a)は、紫外−可視(UV−Vis)吸光度分光分析から得たデータと、金属含有量とを相関させることをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
金属は、ニッケル、バナジウム、鉄及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
沸騰プロファイルは、真の沸騰プロファイルである、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
原油を分析する方法であって、
(a)それぞれ異なる特性を予測できるように選択され、紫外−可視(UV−Vis)吸光度分光分析、赤外(IR)吸光度分光分析、UV蛍光分光分析、中赤外(MIR)吸光度分光分析、近赤外(NlR)吸光度分光分析、X線蛍光(XFR)分光分析、核磁気共鳴、マイクロ−振動、マイクロ−蒸留、マイクロ−質量分析、マイクロ−イオン移動度分光分析及びマイクロ−ガスクロマトグラフィーからなる群より選択される少なくとも2の技術を、研究室独立型装置(laboratory−independent device)で行う工程;
(b)原油の少なくとも2の特性を得るための技術から得たデータを相関させる工程;
(c)測定値から原油の同定分析を再構築し得るプロセッサに当該特性を伝達する工程;及び
(d)原油の同定分析を再構築する工程
を含む方法。
【請求項18】
特性の1は沸騰プロファイルである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
沸騰プロファイルは真の沸騰プロファイルである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
原油を分析する方法であって、
(a)原油の少なくとも2の特性を、各個別の特性を予測する少なくとも2種の研究室独立型技術(laboratory−independent technique)で測定する工程;
(b)工程(a)でなされた測定値を、測定値から原油の同定分析を再構築し得るプロセッサに伝達する工程;及び
(c)測定値から原油の同定分析を再構築する工程
を含む方法。

【公表番号】特表2008−513785(P2008−513785A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−532521(P2007−532521)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【国際出願番号】PCT/US2005/033247
【国際公開番号】WO2006/034072
【国際公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(597142701)ビーピー オイル インターナショナル リミテッド (16)
【氏名又は名称原語表記】BP OIL INTERNATIONAL LIMITED
【Fターム(参考)】