説明

炭素質材料−ポリマー複合材料の製造方法

【課題】炭素質材料に官能基を有するポリマーを容易にグラフトすることができる炭素質材料−ポリマー複合材料の製造方法を提供する。
【解決手段】炭素質材料と、1)解重合性モノマーと官能基を有するモノマーとの混合物、2)前記混合物を重合してなる官能基含有ポリマー、3)加熱により分解しラジカルを発生させ、かつモノマーやオリゴマー化する解重合性のある官能基含有ポリマー、4)前記官能基含有ポリマー3)の重合単位となる官能基含有モノマーからなる群から選択された少なくとも1種とを混合し混合物を得る工程と、前記混合物を、非開放容器内に設置し、前記ポリマーの分解開始温度以上に加熱する工程を備える、炭素質材料−ポリマー複合材料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素質材料に官能基を有するポリマーをグラフトしてなる炭素質材料−ポリマー複合材料の製造方法に関し、より詳細には、解重合性のモノマーまたは該モノマーのポリマー、もしくは分解温度付近でラジカルを形成するポリマーと、炭素質材料とを混合し、密閉空間で加熱することにより、炭素質材料に官能基を有するポリマーをグラフトしてなる複合材料を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カーボン粒子またはカーボンナノチューブのような炭素質材料と、樹脂との複合材料が種々提案されている。これらの炭素質材料を樹脂に複合化させることにより、弾性率や強度の向上等を図ることができる。また、グラファイトは、SP2の炭素のヘキサゴナルな層状化合物の積層体であり、その積層体を構成している一層はグラフェンと称されている。従来、グラフェンを得るには、シリコンカーバイドを加熱処理する方法や、銅箔などの金属膜上においてグラフェンをCVD法で積層する方法が知られている。
【0003】
他方、黒鉛を強酸で処理し、黒鉛の層間にイオンをドープし、さらに急速加熱処理することにより、元の黒鉛よりもグラフェン積層数が少ない酸化グラフェンや薄片化黒鉛を得る方法が知られている(下記の特許文献1)。
【0004】
また、従来、黒鉛を剥離処理することにより得られた薄片化黒鉛とポリマーとの複合材料が種々検討されている。例えば下記の非特許文献1には、黒鉛を化学的処理により剥離処理することにより得られた薄片の共存下に、重合開始剤及びスチレンモノマー成分を混合し、モノマーを重合するとき、グラフェン表面にスチレンポリマー鎖がグラフトされることが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】US7,658,901 B02
【非特許文献1】第59回 高分子学会年次大会予稿集、3Pb016
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
黒鉛の酸処理とそれに続く急速加熱剥離処理という上記方法においては、黒鉛の酸化が避けられなかった。このような方法で起こる剥離グラフェンの酸化は、グラフェン自体の力学強度を低下させる。このような酸化グラフェンを使った複合体では、最終的に求める複合体に力学強度、導電性、イオン吸着性などの機能を期待する用途においては、原料となる剥離グラフェンが酸化されるので十分な期待機能が得られないという問題もあった。
【0007】
また、炭素質材料をポリマーにブレンドする従来の炭素質材料−ポリマー複合材料では、炭素質材料とポリマーとが結合していない。そのため、物性の改善に限界があった。他方、炭素質材料にポリマーをグラフトさせれば、両者の結合により、複合材料の強度等をより一層高めることができる。さらに、炭素材料にグラフトしたポリマーと、マトリックスとなるポリマー層とが共有結合で強固に結合されるならば、さらに一層複合材料の強度を高めることができると考えられる。
【0008】
しかしながら、炭素質材料にポリマーや官能基を有するポリマーをグラフトさせる場合、炭素質材料の存在下でモノマーを重合する工程が複雑であった。
【0009】
特に、炭素質材料の中でも薄片化黒鉛にポリマーをグラフトさせる場合には、薄片化黒鉛を得た後に、モノマーや開始剤をグラフトし、さらにポリマーをグラフト重合する方法が提案されているが、この方法では、原料の薄片化黒鉛の取り扱いが煩雑であるという問題があった。すなわち、薄片化黒鉛や剥離したグラフェンが空気中に浮遊する程に、剥離処理後の薄片化黒鉛やグラフェンは軽量である。そのため、剥離処理後の薄片化黒鉛の取り扱いが非常に困難であった。さらには、この集塵された薄片化黒鉛粉末を溶剤に再分散し、その分散液に重合開始点となる重合開始剤や共重合反応性の官能基をグラフェン表面に化学変性によってグラフトし、しかる後に溶液中でポリマーを重合していた。グラフェン表面にポリマーをグラフトしていた。従って、工程に非常に長い時間を要し、生産効率も低く、官能基のついたグラフェンを大量に生産する事が困難であった。
【0010】
さらに、分散媒や溶媒に薄片化黒鉛やナノカーボン材料を再分散するに際し、ナノカーボン材料の濃度が高いと、高粘度のスラリーとなる。例えば、溶媒や分散媒に、1重量%程度の薄片化黒鉛を分散するだけでも、非常に高い粘度のスラリー、もしくは硬い凝集塊となる。そのため、分散溶液中での薄片化黒鉛の濃度を非常に低くしなければ、攪拌も容易ではなかった。従って、薄片化黒鉛にポリマーをグラフトしてなる複合材料を容易に得ることは困難であった。
【0011】
薄片化黒鉛を含む炭素質材料に官能基を有するポリマーを容易にグラフトし得る製造方法が望まれていた。
【0012】
また、炭素質材料にグラフトさせ得るポリマーの種類にも制限があった。さらに、ポリマーとして官能基を有するポリマーを炭素質材料にグラフトできれば、官能基の種類に応じて様々な特性を発現し得る複合材料を得ることができる。
【0013】
本発明の目的は、炭素質材料に官能基を有するポリマーを容易にグラフトすることができる、炭素質材料−ポリマー複合材料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る炭素質材料−ポリマー複合材料の製造方法は、炭素質材料と、1)解重合性モノマーと官能基を有するモノマーとの混合物、2)前記混合物を重合してなる官能基含有ポリマー、3)加熱により分解しラジカルを発生させ、かつモノマーやオリゴマー化する解重合性のある官能基含有ポリマー、4)前記官能基含有ポリマー3)の重合単位となる官能基含有モノマーからなる群から選択された少なくとも1種とを混合し混合物を得る工程と、前記混合物を、非開放容器内に設置し、前記ポリマーの分解開始温度以上に加熱する工程とを備える。
【0015】
ここで、上記ポリマーの天井温度以上であり、かつ分解開始温度未満の温度域を、第1の温度域とし、分解開始温度以上、分解完了温度以下の温度域を第2の温度域とし、分解完了温度を超える温度域を第3の温度域とする。なお、分解開始温度とは、ポリマーの10重量%が分解するに至る温度をいうものとし、分解完了温度とは、ポリマーの90重量%が分解するに至る温度とする。より具体的には、ここでいう分解開始温度とは、窒素雰囲気下で、TG/DTA測定をした場合、前記ポリマーの10重量%が分解するに至る温度を指している。また、同様に、分解完了温度についても、上記TG/DTA測定により得られる、ポリマーの90重量%が分解するに至る温度をいうものとする。天井温度の定義は、「ラジカル重合ハンドブック」第112頁(エヌ・ティー・エス発行)に記載されている。
【0016】
なお、以下においては、上記第1の温度域に加熱もしくは維持する工程をA操作と呼ぶ。また、第2の温度域に加熱する工程を、B操作と略すこととする。
【0017】
本発明に係る炭素質材料−ポリマー複合材料の製造方法のある特定の局面では、前記加熱工程において前記分解開始温度以上、分解完了温度以下の第2の温度域で加熱する工程を備える。この場合には、炭素質材料へのポリマーグラフトを促進し、ポリマーの分解による分子量低下を抑制することを可能にする。
【0018】
本発明に係る炭素質材料−ポリマー複合材料の製造方法の他の特定の局面では、前記加熱工程は、前記分解完了温度より高い第3の温度域に加熱する工程を備えることもできる。この第3の温度域に加熱する工程を、以下、C操作と称することとする。この加熱工程において、第3の温度域に加熱する場合においても、この方法の別の形態としては、第2の温度域に加熱する中温加熱工程と、前記分解完了温度より高い第3の温度域に加熱する高温加熱工程とを繰り返してもよい。それによって、グラフトおよび黒鉛の剥離反応をより一層促進することができる。
【0019】
A操作は、熱分解によるラジカル発生がゆっくりと起きる温度領域であるため、比較的ポリマーのグラフト率は低いが、グラフトされるポリマーの長さを長くすることができる。
【0020】
B操作はA操作よりも、ポリマーの熱分解が活発に引き起こされる温度領域であるため、グラフト率を高めることができる。また、黒鉛層の剥離を起こすことも可能となる。
【0021】
C操作はA,B操作よりもさらに、熱分解が活発に引き起こされる温度領域であるため、グラフト反応と同時に、黒鉛層の剥離を進行させることができる。もっとも、分解完了温度から50℃以上のあまりに高い温度領域での熱分解処理は、グラフトするポリマーの長さがモノマーレベルまで短くなってしまう。
【0022】
黒鉛層を原料として用い、単層もしくは数層のグラファイト層に剥離することを主たる目的として、剥離したグラファイト層への長鎖ポリマーグラフトを必要としないときは、B操作、C操作が効率的であり、さらに好ましくは、第2の温度域で、配合物を密閉状態で1時間〜24時間程度、長時間加熱処理するのが効果的である。
【0023】
本発明に係る炭素質材料−ポリマー複合材料の他の特定の局面では、前記官能基を有するポリマーの分解完了温度より高い第3の温度域での分解残渣の最小重量をR,第1の温度域でのポリマーの最大重量をA(吸着水や吸着ガス、含有溶剤は含まない重量),分解開始温度でのポリマーの重量をX,分解完了温度でのポリマーの重量をYとしたときに、分解開始温度は(X−R)/(A−R)=0.9である温度であり、分解完了温度は(Y−R)/(A−R)=0.1である温度である。このように、分解開始温度及び分解完了温度は、上記ポリマーを第3の温度域に加熱した場合に分解残渣が生じるものであっても、分解残渣が生じないものであっても、図1の模式図のように上記式により決定することができる。この分解開始温度および分解完了温度は、窒素雰囲気下でのTG/DTA測定から読み取ることができる。
【0024】
上記第1〜第3の温度域を、メチルメタクリレートとグリシジルメタクリレートの共重合体を例にとり、図2を参照して説明する。図2は、官能基を有するポリマーとしてメチルメタクリレートとグリシジルメタクリレートとの共重合体(日本油脂社製マープルーフ、G−2050M)を用いた場合の加熱温度とポリマーの相対的重量濃度との関係を示す。図2に示す、第1の温度域では該ポリマーの分解速度は遅いが、第2の温度域まで加熱すると、ポリマーが分解し始め、ラジカルを発生させる。さらに、第3の温度域まで加熱するとポリマーが分解し、分解によって形成されたモノマーなどは蒸発し、副反応生成物などからなる分解残渣が形成される。この分解残渣の相対的重量をRとする。この分解残渣の重量Rを考慮して上記式により分解開始温度及び分解完了温度を定義すればよい。
【0025】
なお、上記式において、ポリマーが第3の温度域に加熱されても分解残渣を生じない場合には、Rは0となる。従って、上記分解開始温度及び分解完了温度を決定する式は、分解残渣を生じないポリマーにも適用することができる。
【0026】
また、ポリマーによっては窒素雰囲気下でTG/DTAのデータを採った場合、温度の上昇とともに最初にポリマーの分解パターンを示すS字カーブが観察されるが、さらに温度を上げていった場合に、再度S字カーブに当たる変曲点を観察する場合がある。これは、分解完了温度よりもさらに高い温度領域において、他のモードの熱分解とその後の残渣が生じていると解釈される。この様な場合、分解残渣Rを、最初のS字カーブのすそ野に取るべきか、二度目のS字カーブのすそ野に取るべきかの判断が必要となる。
【0027】
このように、多段階に分解曲線が現れるような場合は、基本的に低温側のSカーブのすそ野のフラットな部分(いわゆるTG/DTA曲線の二次微分の値が0となる変曲点となるころ)の温度における残渣量をRとすればよい。このような場合の第1〜3の温度域の同定について、ポリ塩化ビニルの分解曲線を図3を例に挙げて説明する。
【0028】
この樹脂の場合は300℃と450℃付近に分解のS字カーブの変曲点が観察される。低い方の分解反応の終了点は、分解曲線の微分曲線の山の頂点にあたる350℃にあると同定できる。この温度での残渣量をRとする。(この場合の読み取り値はR=39%)
分解前の重量変化はほとんどないので、Aの値を100(%)とする。
(X−R)/(A−R)=0.9の式にこれらの値を入れると、X=93.9となる。
(Y−R)/(A−R)=0.1の式にこれらの値を入れると、Y=45.1となる。
これらの分解重量に相当する温度である270℃と320℃が、それぞれ分解開始温度、分解完了温度であると読み取れる。つまり、本発明における第2の温度域は270℃〜320℃である。
【0029】
各種のポリマーと黒鉛との混合物を用いて上記のような密閉空間での加熱処理を行う場合、処理後に黒鉛を単層もしくは数層のレベルのグラフェンライク炭素層にまで剥離を効率的に行うための重要な温度範囲である第2の温度域は、使われる共重合体の組成や分子量によって異なるが、たとえば、スチレンと官能基を有するアクリルモノマーとの共重合体やメチルメタクリレートと官能基を有するアクリルモノマーとの共重合体の場合はおよそ300〜400℃、さらに好ましくは、スチレンと官能基を有するアクリルモノマーとの共重合体の場合は320〜380℃付近に入ることが多い。
【0030】
また、本発明に係る炭素質材料−ポリマー複合材料の製造方法のさらに他の特定の局面では、前記モノマーまたはポリマーとして、2種以上のモノマーの混合体を出発物質として得られたポリマーや、すでに重合された複数種のポリマーを混合して用いる場合には、この混合物のTG/DTAパターンから分解開始温度と分解終了温度を読み取り、上記の操作法に従ってグラフト処理を行うことが可能である。
【0031】
また、これらの複数のモノマーまたはポリマーを逐次に処理を行うこともできる。この場合には、複数種のポリマーを炭素質材料に順次グラフトすることができる。この場合に、分解温度の高い方のモノマーもしくはポリマーによってグラフト処理を施したのち、必要に応じては未反応のポリマーを除去したのち、さらに別の比較的分解温度の低いモノマーもしくはポリマーを追加添加し、混合して熱分解操作することによりグラフト処理を繰り返し行うことが好ましい。この方法によって、異種のポリマーを炭素質材料にグラフトすることが可能となり、両親媒性などの様々な物性の複合材料を容易に提供することが可能となる。
【0032】
さらに別の特定の局面では、加熱処理において、超臨界状態にある二酸化炭素もしくは水を混入させる。
【0033】
本発明に係る炭素質材料−ポリマー複合材料の製造方法のさらに別の特定の局面では、前記混合物が重合開始剤を含まない。重合開始剤を用いずとも、本発明によれば、解重合性を有するポリマーの熱分解により生じたラジカル、もしくは解重合性を有するモノマーの自発的重合により発生するラジカルによって、上記モノマーもしくはポリマーを炭素質材料にグラフトすることができる。このように重合開始剤を用いないことのメリットは次のような不具合がないからである。すなわち、モノマーを出発物質として熱重合開始剤を共存した状態で密閉状態での高温加熱反応をした場合、過激な暴走反応がおこり、容器耐圧を超える圧力にまで、高まる場合があり危険である。例えば、グリシジルメタクリレートモノマーと有機過酸化物系の重合開始剤を含有したモノマー組成物を本発明のA操作と呼ばれる加熱操作をした場合には、容器圧力が5MPa以上に一気に昇圧する。
【0034】
それに対して、スチレンのような自発的に重合するモノマーを本組成物に配合し(スチレン/グリシジルメタクリレート=1/1)、重合開始剤を使用しない配合物を調製し、加熱処理をしたところ、過激な暴走反応が起きることなく、第1の温度域において重合を進行させることができる。内部圧力も、1MPa以下となり安定に反応を進めることができる。このことは、反応系をスケールアップした場合、グラフト反応を安全に遂行するという意味において有利である。
【0035】
本発明に係る炭素質材料−ポリマー複合材料の製造方法においては、上記炭素質材料としては、適宜、種々の炭素質材料を用いることができる。このような炭素質材料としては、薄片化黒鉛、黒鉛、カーボン粒子及びカーボンナノチューブ、フラーレン及び表面黒鉛化ナノダイアからなる群から選択された少なくとも1種を用いることができる。特に、炭素質材料としては黒鉛を用いた場合には、該黒鉛を薄片化黒鉛に剥離する工程において同時に官能基を有するポリマーを薄片化黒鉛にグラフトすることができる。
【0036】
本発明に係る炭素質材料−ポリマー複合材料は、本発明の炭素質材料−ポリマー複合材料の製造方法により得られ、炭素質材料に上記官能基を有するポリマーが、グラフトしていることを特徴とする。好ましくは、炭素質材料は、薄片化黒鉛である。
【0037】
また、本発明の別の広い局面によれば、炭素質材料に前述の官能基を有するポリマーがグラフトしており、グラフト率が10重量%以上、100重量%以下の範囲にある炭素質材料−ポリマー複合材料が提供される。この場合、好ましくは、グラフト率は40重量%以上である。
【0038】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0039】
(炭素質材料)
本発明においては、原料として炭素質材料が用いられる。炭素質材料としては、黒鉛、薄片化黒鉛、カーボン粒子、またはカーボンナノチューブ、フラーレン、表面黒鉛化ナノダイアなどを用いることができる。本発明においては、これらの炭素質材料の1種または2種以上を用いることができる。
【0040】
ほとんどの炭素質材料は、その表面にラジカルトラップ性を有する。従って、官能基を有するポリマーまたは前記解重合性モノマーを表面のラジカルトラップ性を利用して容易にグラフトすることができる。
【0041】
上記炭素質材料としては、好ましくは、薄片化黒鉛が用いられる。黒鉛は表面がラジカルトラップ性を有する材料である。黒鉛は、グラフェンが多数積層された層状化合物である。本明細書において、「薄片化黒鉛」とは、上記黒鉛を各層に剥離することにより得られ、元の黒鉛よりもグラフェン積層数が少ないものを指している。薄片化黒鉛におけるグラフェンの積層数は、単層〜200層程度である。なお、原料としての黒鉛におけるグラフェンの積層数は、通常、1000層以上である。このような平均の積層数は、BETから測定される表面積から計算し、平均構造として同定できる。薄片化黒鉛が、完全に一層のグラフェンだけから構成されるならば、この表面積は、グラム当たり、2400〜2600mとなることが理論的に予測される。前述した特許文献1の薄片化の製造方法で作られた、薄片化黒鉛の表面積は2000m/g程度以上のものを得ることが可能となるが、例えばこの場合は、平均的の層数は2層以下であると考えられる。
【0042】
ただし、本発明のようにポリマーをグラフトされた薄層化黒鉛の場合は、グラファイト表面がポリマーに被覆されており、グラファイトの表面がむき出しになっていないため、完全にグラファイトが各層に剥離された状態になったとしても、BETによる測定値は非常に小さな値となる。
【0043】
薄片化炭素の表面積が500mを超えるものを用いた場合は、乾燥状態では空気に浮遊するようなハンドリングの困難な材料となるが、500m以下のものであれば、軽量や装置への投入が可能となるだけの塊としての性状を有する。
【0044】
薄片化黒鉛の原料としては、できるだけその平均的な面積の比較的小さい黒鉛の方が、分散性は向上するが、直径が10μm角程度の比較的大きな薄片化黒鉛であっても、表面へのポリマーグラフトと単層、もしくは数層カーボンシートへの剥離化を達成する事ができる。
【0045】
(解重合性のモノマーまたは該モノマーのポリマー)
本発明の製造方法では、炭素質材料と、1)解重合性モノマーと官能基を有するモノマーとの混合物、2)前記混合物を重合してなる官能基含有ポリマー、3)加熱により分解しラジカルを発生させ、かつモノマーやオリゴマー化する解重合性のある官能基含有ポリマー、4)前記官能基含有ポリマー3)の重合単位となる官能基含有モノマーからなる群から選択された少なくとも1種とを混合し、炭素質材料分散混合物を得る。
【0046】
1)上記解重合性のモノマーと官能基を有するモノマーとの混合物は、重合することにより官能基を有するポリマー2)を生成させる。解重合性のモノマーを非開放容器内で加熱することによって自発的にラジカルが発生し重合が進行する。また、天井温度を超えた温度条件で加熱するため、重合反応と同時に解重合も進行する。
【0047】
上記解重合性を有するポリマーの原料となるモノマーとしては、例えばスチレン、α−エチルアクリル酸メチル、α−ベンジルアクリル酸メチル、α−[2,2−ビス(カルボメトキシ)エチル]アクリル酸メチル、イタコン酸ジブチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジシクロヘキシル、α−メチレン−δ−バレロラクトン、α−メチルスチレン、α−アセトキシスチレンからなるα−置換アクリル酸エステルなどのモノマーが挙げられる。
【0048】
上記解重合性モノマーと複合される官能基を有するモノマーの官能基としては、アミノ基、カルボキシル基、水酸基、グリシジル基、マレイミド基、アルデヒド基、芳香族水酸基、イソシアネート基、アルコキシシリル基、リン酸基などの様々な官能基を用いることができる。特に、好ましくは、上記官能基はグリシジル基と水酸基であり、その場合に用いられるモノマーとしては、グリシジルメタクリレート、3、4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、などが挙げられる。
【0049】
また、アミノ基としては、アリルアミン、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0050】
また、上記官能基はカルボキシル基であることも好ましく、その場合には、メタクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリル酸、クロトン酸、2−アクリロイルオキシエチルサクシネート、2−メタクリロイルオキシエチルサクシネート、2−メタクリロイロキシエチルフタル酸が挙げられる。
【0051】
また、イソシアネート基を有するモノマーとして、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタクリル酸2−(0−[1−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチルが挙げられる。
【0052】
また、リン酸官能基を有するモノマーとしては、ユニケミカル社製のホスマーM、ホスマーCL、ホスマーPE、ホスマーMHまたはホスマーPPが挙げられる。
【0053】
また、アルコキシシリルを有するモノマーとしては、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0054】
これらの解重合性のモノマーを原料として重合してなるポリマーは、第1の温度域ではわずかながら分解反応し、第2の温度域では、平均重合度が下がる程度に分解反応し、第3の温度域では、そのポリマーのユニット単位となるモノマーに近い低分子まで分解反応が進行する。非開放状態でこのような温度域に保持されたポリマーは、加熱時間を長くして保持された場合でも、得られる生成物の分子量は開放系の場合ほど劇的に低下する事はない。これは、開放系での分解反応とは全く異なる現象である。この現象からみると、非開放系での高温加熱では、重合度が迅速に低下しないことから、ラジカル種がポリマーの熱分解によって持続的に生成されているのであろうと想像される。
【0055】
3)官能基含有ポリマー
ほとんどの有機ポリマーが熱分解温度でラジカルを発生するけれども、分解温度付近でラジカルを形成する官能基含有ポリマー3)としては、アミノ基、カルボキシル基、水酸基、グリシジル基、マレイミド基、アルデヒド基、芳香族水酸基、イソシアネート基、アルコキシシリル基、リン酸基などの様々な官能基を有するモノマーを重合してなるポリマー、もしくはこれらのモノマーと他の共重合性モノマーとの共重合体である。
【0056】
無水マレイン酸変性ポリプロピレンや、エチレンアクリル酸共重合体(EAA)、(メタ)アクリル酸エステルと官能基を有するビニル化合物との共重合体や、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルフェノール、ポリフェニルスルホン酸、ポバール、ポリビニルブチラールなどがある。
【0057】
また、ポリアリルアミン、ポリビニルアミンなどを用いると、カーボン材料にアミノ基をグラフトすることができる。ポリビニルフェノールやポリフェノール類を用いると、フェノール性OHを炭素質材料にグラフトすることができる。また、リン酸基を有するポリマーを用いると、リン酸基をグラフトすることができる。
【0058】
上記のような官能基を有するポリマーに加えて、官能基を持たないポリマーを複合させることも可能である。その例としては、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレートのようなビニル系ポリマーがある。
【0059】
また、ポリ塩化ビニルやポリ塩素化塩化ビニル、フッ化エチレン樹脂やフッ化ビニリデン樹脂、塩化ビニリデン樹脂などの、塩素などのハロゲン元素を含有するポリマーなども使用可能である。
【0060】
また、ポリエステル、ポリアミドなどの縮合系ポリマーでは、分解温度で得られるラジカル濃度が低いけれども、分解物はラジカルを発生し、炭素質材料表面にグラフトされる。
【0061】
4)官能基含有ポリマー3)の重合単位であるモノマー
上記モノマー4)としては、官能基含有ポリマー3)重合単位であるモノマーを用いる。
【0062】
本発明では、混合物を得るにあたり、炭素質材料に、前述した1)解重合性モノマーと官能基を有するモノマーとの混合物とを混合してもよい。あるいは、炭素質材料と、混合物1)を重合してなる官能基含有ポリマー2)とを混合して、炭素質材料分散混合物を得てもよい。さらには、炭素質材料と上記モノマー4)とを混合し、混合物を得てもよく、上記炭素質材料と、上記官能基含有4)モノマーの官能基含有ポリマー3)とを混合し、混合物を得てもよい。また、混合物を得るにあたり、上記1)〜4)の1種だけでなく、2種以上を併用してもよい。上記混合に際しては、超音波分散装置やホモジナイザー、遊星撹拌機などの適宜の混合方法を用いることができ、また加熱工程においては、圧力下に加圧することによって、加熱時のポリマーからモノマーへの分解をさらに抑制し、より効率的に官能基を有するポリマーを炭素質材料にグラフトすることができる。
【0063】
圧力をかけるためのアシストガスとしては、炭酸ガスや水などが好ましい。
【0064】
これらのガスによって、圧力を高めることにより、用いない場合に比べて、より低い温度でのグラフェンの剥離とグラフトが可能となる。
【0065】
なお、原料として上記官能基を有するポリマーを用いる場合、ポリマーを炭素質材料と加熱下で十分に混練による分散をして混合物を用意することが望ましい。それによって、混合物を可塑化し、加熱工程における炭素質材料と発生したラジカルとの接触確率をより一層高めることができる。
【0066】
上記炭素質材料と、上記モノマーとの配合割合は、特に限定されないが、重量比で対50〜50対〜0.01対99.9の割合とすることが望ましい。また、上記ポリマーを原料として用いる場合、上記炭素質材料と上記ポリマーとの配合割合は、重量比50対50〜0.5対99.5とすることが望ましい。
【0067】
上記モノマーまたはポリマーは2種以上用いられてもよく、それによって、複数種のポリマーのアロイを炭素質材料に複合させてなる複合材料を得ることを可能となる。この場合、2種以上のモノマーを用いてもよく、2種以上のポリマーを用いてもよく、1種以上のモノマーと1種以上のポリマーとを用いてもよい。
【0068】
(加熱工程)
本発明においては、上記混合物として、解重合性モノマーと炭素質材料とを用いる場合、上記モノマーの揮発しない非開放容器内で、天井温度を超えて、第2の温度域手前の分解開始温度付近まで加熱する。それによって、モノマーがラジカルを発生させながら重合が引き起こされる。この重合反応によって、黒鉛の表面やエッジにポリマーがグラフトする。従って、薄片化黒鉛に官能基を有するポリマーをグラフトした複合材料を得ることができる。
【0069】
さらに、第2の温度域である分解開始温度以上に加熱することにより、ポリマーの分解によって得られた熱分解ラジカルが、炭素質材料にグラフトされる。この温度域では、ポリマーの分解と生成したモノマーの重合とが同時並行に引き起こされる。
【0070】
特に、上記炭素質材料として黒鉛用いた場合には、この重合と熱分解が起こる温度域で形成されたラジカルが、黒鉛の表面やエッジを攻撃して黒鉛が剥離し、薄片化が進行する。この場合には、黒鉛の剥離により薄片化黒鉛を得る工程を同時に達成できる。この場合、上記分解開始温度以上では、ポリマーの分解が少なからず始まり、炭素質材料にグラフトしたポリマーも分子量低下が起きる。
【0071】
この第2の温度域で、ポリスチレンやポリメチルメタクリレートなどのポリマーを密閉溶液中で加熱保存したところ、開放系と同様に高温処理することによる分子量低下が起きるが、その分子量は加熱時間を長くしても、開放系の場合ほど迅速に分子量は低下しない。たとえば、5mlの耐圧容器に、上記の重合体を2g投入し、この密閉容器中で340℃2時間加熱したのち冷却し取り出したところ、元の数平均分子量が約7万であったが、加熱処理後のポリマーの数平均分子量は依然約4万であった。さらに反応時間だけは4時間に延長したほかは、上記と同様の実験をしたところ、ポリマーの数平均分子量はやはり4万程度であり変わらなかった。
【0072】
開放系において340℃でこの樹脂を加熱すると、数秒で低分子に分解した。
【0073】
このように密閉状態での熱分解反応では、活発な反応が起きているが、分子量低下は下げ止まるということが観察された。
【0074】
高温で加熱した反応系を急速に冷却することによって炭素質材料−ポリマー複合材料を回収する事ができる。また、第1の温度域までゆっくりと徐冷すると、炭素質材料に吸着するポリマーの比率を高めることができる。
【0075】
なお、原料として官能基を有するポリマーを用いた場合、第1の温度域の上限までポリマーが加熱され、第2の温度域に至ると、該ポリマーが分解し始め、ラジカルを発生させると共に、その活性種が炭素質材料にグラフトされると考えられる。
【0076】
より好ましくは、上記分解完了温度よりも高い第3の温度域に加熱する高温加熱工程を実施し、次に、第2の温度域に加熱する中温加熱工程を実施する。それによって、ポリマーから熱分解により大量の活性ラジカルを生成され炭素質材料にグラフトするが、吸着されるポリマーの平均的鎖長の低下を抑制する事ができる。あるいは、上記高温加熱工程及び中温加熱工程を繰り返すことにより、鎖長低下を抑制しながら、剥離を促進する事ができる。特に、炭素質材料としては、薄片化黒鉛を用いた場合には、黒鉛の剥離処理をより確実に行うことができる。
【0077】
なお、上記加熱工程は、前述したようにモノマーが分解し、揮発しない密閉空間で行う必要がある。このような圧力は、使用するモノマーの揮発性によっても異なるが、上述したグリシジルメタクリレートを骨格に有するポリメタクリレート系共重合体を用いる場合、また容器と容器に収納されるモノマーの量が多い場合には、熱分解時の圧力が5mPa以上となることがあるが、充填量を適当に下げることにより、熱分解時の圧力が5mPa以下となる条件を設定する方が安全上望ましい。原料としてポリスチレンやαメチルスチレンなどの解重合性モノマーと官能基を有するモノマーとの共重合体を使うときは、容器に混合物の充填量が多い場合でも、熱分解時の容器圧力を1mPa以下に抑制する事ができ、圧力の危険な上昇を抑制することができる。従って、既存の圧力容器を用いて、上記加熱工程を安全に実施することができる。
【0078】
好ましくは、発生したラジカルと炭素質材料との接触確率を高めるため、上記加熱工程に際し不活性ガスを供給することも望ましい。このような不活性ガスとしては、窒素、炭酸ガス、ヘリウムガス、アルゴンガスなどを挙げることができる。さらに、加熱により超臨界状態となる流体を上記混合物に供給し、上記加熱工程を実施することも望ましい。それによって、発生したラジカルと炭素質材料との接触確率をより一層高めることができる。このような超臨界状態の流体としては、加熱により超臨界状態となり、かつラジカルトラップ特性のない二酸化炭素や水などを挙げることができる。
【0079】
さらに、ラジカルと炭素質材料との接触確率を高めるために、第2の温度域と第3の温度域に維持する加熱処理を繰り返してもよい。
【0080】
本発明に係る炭素質材料−ポリマー複合材料は、本発明の製造方法により得られたものであり、炭素質材料に官能基を有するポリマーがグラフトされている炭素質材料−ポリマー複合材料を得ることができる。
【0081】
また、本発明は、炭素質材料に官能基を有するポリマーがグラフトされており、そのグラフト率が10重量%以上である炭素質材料−ポリマー複合材料である。炭素質材料及び官能基を有するポリマーは前述した通りである。グラフト率の上限は100重量%である。好ましくは、グラフト率は40重量%以上であり、その場合には、官能基由来の様々な物性をより効果的に発現させることができる。
【発明の効果】
【0082】
本発明に係る炭素質材料−ポリマー複合材料の製造方法によれば、炭素質材料と、上記解重合性のモノマーまたは該モノマーのポリマーとを混合し、密閉容器内で加熱するだけで、官能基を有するポリマーを炭素質材料へグラフトさせることが可能となる。従って、加熱工程に際して温度制御を行うだけで、すなわちポリマーグラフトの為に多くの工程を実施することなく、炭素質材料−官能基を有するポリマー複合材料を得ることが可能となる。
【0083】
また、無溶剤工程で行うことができるので、排出する揮発性有機化合物の量を低減できる。
【0084】
加えて、従来グラフトが困難だった種々の官能基を有するポリマーを炭素質材料にグラフトすることが可能となる。また、上記ポリマーは官能基を有するため、上記官能基由来の様々な物性を発現し得る複合材料を提供することができる。さらに、異種のポリマーグラフトすることも可能となり、両親媒性のような特徴ある機能を複合材料に持たせることができる。
【0085】
特許文献1のUS7,658,901 B02に記載のような酸処理と急速加熱処理を使う方法では、炭素質材料が酸化し、強度が低下する。本発明の場合は、空気下での酸化処理を行わないために、炭素質材料の酸化による炭素層の強度低下を抑制することができ、複合材料においても強度の高い材料を作成することができる。
【0086】
また、本発明で得られるポリマーをグラフトされた炭素質材料は、そのポリマーの良溶媒に対して溶解分散性が高まる。そのため、ポリマーグラフト炭素質材料は、塗工や配合、もしくは他の化学材料による変性が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】図1は、一般的なポリマーを用いた場合の加熱温度とポリマーの相対的重量濃度との関係を示す図であり、第1〜3の温度域を説明している。
【図2】図2は、ポリマーとしてポリメチルメタクリレートとグリシジルメタクリレートの共重合体を用いた場合の加熱温度とポリマーの相対的重量濃度との関係を示す図である。
【図3】図3は、ポリ塩化ビニルを用いた場合の加熱温度とポリマーの相対的重量濃度との関係を示す図である。
【図4】図4は、比較例1で得た膨張化黒鉛のXRDスペクトルを示す図である。
【図5】図5は、実施例1で得た膨張化黒鉛を電気化学処理したサンプルのXRDスペクトルを示す図である。
【図6】図6は、電気化学ドーピングおよび加熱剥離して得られる薄片化黒鉛の加熱温度とポリマーの相対的重量濃度との関係を示す図である。
【図7】図7は、ポリマーとしてポリメチルメタクリレートとグリシジルメタクリレートの共重合体と実施例1で得た薄片化黒鉛との混合物を用いて、本発明の加熱処理を行った場合の反応生成物の、加熱温度とポリマーの相対的重量濃度との関係を示す図である。
【図8】図8は、ポリマーとしてポリメチルメタクリレートとグリシジルメタクリレートの共重合体と黒鉛との混合物を用いて、本発明の加熱処理を行った場合の反応生成物の、加熱温度とポリマーの相対的重量濃度との関係を示す図である。
【図9】図9は、ポリマーとしてポリメチルメタクリレートとグリシジルメタクリレートの共重合体とSWCNTとの混合物を用いて、本発明の加熱処理を行った場合の反応生成物の、加熱温度とポリマーの相対的重量濃度との関係を示す図である。
【図10】図10は、実施例4で得られた複合材料としての粒子成分のTG/DTA測定結果を示し、生成物である粒子成分の、加熱温度とポリマーの相対的重量濃度との関係を示す図である。
【図11】実施例5で得られた複合材料としての濾過残渣のTG/DTA測定結果を示し、生成物である濾過残渣の、加熱温度とポリマーの相対的重量濃度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0088】
以下、本発明の具体的実施例及び比較例を説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0089】
〔評価方法〕
後述する実施例及び比較例について、以下の評価方法1)〜5)のいずれかを用い、評価した。
【0090】
評価方法1):XRD測定
黒鉛を含有する分散溶液をスライドガラス上に滴下し,室温にて乾燥した。X線回折測定をリガク社製X線回折装置Rint1000を用いて行った。
【0091】
ターゲットにはCuを用い、管電圧50kV,管電流150mAとし、2θ−θ法により回折を得た。検出器にはシンチレーションカウンターを用い、0.2度/分の速度でスキャンした。
【0092】
評価方法2):TG/DTA測定
黒鉛や薄片化黒鉛の2〜10mgを精秤し、エスアイアイナノテクノロジー社製のTG/DTA6300を用いてTG/DTAを測定した。
【0093】
初期温度は25℃とし、一分間に10℃の昇温速度で1000℃まで昇温した。
【0094】
なお、分解開始温度及び分解完了温度は、窒素ガス雰囲気下で、ガス流路を50ml/分として測定した。
【0095】
ポリマーグラフト率は、空気雰囲気下でガス流路を50ml/分として測定した。
【0096】
なお、標準的なホモポリマーを入手し、上記測定法に従って、分解開始温度及び分解完了温度を測定したところ、以下の結果が得られた。ただし、これらの値は、ポリマーの分子量等によって変動し得る。
【0097】
天井温度の定義は、「ラジカル重合ハンドブック」第112頁(エヌ・ティー・エス発行、2010年9月10日発行)に、またα−置換アクリル酸エステルの天井温度Tcについて第113頁に記載されている。ポリスチレンの天井温度は上記によれば150℃と報告されている。もっとも、(商品名:和光純薬社製、スチレンポリマー、重合度2000)であるポリスチレンについて上記のようにして測定したところ、分解開始温度は350℃付近、分解完了温度は390℃付近であった。
【0098】
PMMAの天井温度は、上記ハンドブックによれば155.5℃であることが報告されている。上記評価方法に従って、分解開始温度及び分解完了温度は(商品名:アルドリッチ社製、PMMA、MW350000)について測定したところ、分解開始温度は300℃付近、分解完了温度は350℃付近であった。
【0099】
また、ポリプロピレン(商品名:日本ポリプロ社製、ノバテックPP、MA3H)の分解開始温度は350℃付近、分解完了温度は400℃付近であった。
【0100】
分解開始温度や、分解完了温度の測定は、窒素ガス雰囲気下で行い、ガス流量は、50ml/分とした。
【0101】
ポリマーグラフト率の測定は、空気ガス雰囲気下で行い、ガス流量は、50ml/分であった。
【0102】
評価方法3):薄片化黒鉛へのポリマーグラフト率の測定
高圧加熱反応処理されたカーボン材料を含有するサンプル1〜10gを50倍重量の良溶媒で溶解した。超音波装置を用いて45kHz、100Wの出力で、常温で30分間分散処理を行った。
【0103】
得られた溶液を、3μmの穴径を有するアドバンテック社製PTFE−T300A090Cを用いて、アスピレーターを用いて吸引をしながら濾過した。さらに、溶液量と同量の溶剤を添加して、再度濾過し、グラフェンに未反応のポリマーを洗浄濾過した。
【0104】
ロ紙上のサンプルを、オーブンで乾燥し、含有する溶剤を除去した。該サンプルを用いて、評価方法2)のTG/DTA測定を行った。
【0105】
評価方法4):BETの測定法
得られた複合材料の比表面積測定試料を、島津製作所(株)比表面積測定装置ASAP−2000で窒素ガスを用い、表面積を測定した。
【0106】
評価方法5):黒鉛の剥離度の定量方法
本発明の製造方法によれば、X線回折測定において、原料である黒鉛が有する層結晶由来の26.4度に位置するピークが、剥離すなわち薄片化の進行とともに小さくなっていく。この原理を利用して黒鉛の剥離度を定量化した。内標準サンプルとして、剥離する前の原料の黒鉛を添加することにより定量化を行うことができる。
【0107】
(比較例1)原料黒鉛シートのXRD分析
原料黒鉛として東洋炭素社製、膨張黒鉛粉砕品、品名:PF8Fを用意した。
【0108】
ガラスサンプル瓶に、10mgの原料黒鉛及び20mlのTHFを投入し、超音波処理を行った。超音波処理装置としては、本多電子社製、W−113サンパを用いた。出力100W、発振周波数28kHzで、30分間超音波処理を行った。粒子が見える程度の粗い分散溶液が得られた。この分散溶液について先の評価方法1)に従い、XRD測定を行った。
【0109】
結果を図4に示す。グラファイト層結晶由来のピークが26.4度付近に観察された。
【0110】
(実施例1)部分剥離グラフェンの調製
原料の黒鉛シートとして東洋炭素社製、品番:PF100−UHP、密度0.7、厚み1mmの低密度黒鉛シートを用意した。上記黒鉛シートを3cm×3cmの大きさに切断し、電極材料としてのシート状の黒鉛を得た。このシート状の黒鉛に、カッターナイフにより長さが1cm、幅が1cmのスリットを形成した。上記2本のスリットが形成されたシート状の黒鉛に、Ptからなる電極2を挿入した。このようにして用意したシート状の黒鉛を作用極(陽極)として、Ptからなる対照極(陰極)及び、Ag/AgClからなる参照極と共に60重量%濃度の硝酸水溶液中に浸漬し、直流電圧を印加し電気化学処理を行った。
【0111】
電気化学処理に際しては、0.7Aの電流値となるように電流値を固定して、2時間印加した。その結果、陽極に作用極として用いた黒鉛は、次第に膨張し、厚みが数倍になった。
【0112】
このようにして得た膨張化黒鉛を乾燥し、膨張化黒鉛の多層構造をXRD測定により評価した。図5に膨張化黒鉛のXRDパターンを示す。わずかにグラファイト多層構造が観察されている。
【0113】
上記で得られた膨張化黒鉛を、1cm角に切断し、その1つをカーボンるつぼに入れて電磁誘導加熱処理を行った。誘導加熱装置としてはSKメディカル社製MU1700Dを用いた。アルゴンガス雰囲気下で最高到達温度550度となるように10Aの電流量で行った。電磁誘導加熱により膨張化黒鉛は薄片化された。得られた薄片化黒鉛の粉末を島津製作所(株)の比表面積測定装置ASAP−2000で窒素ガスを用いて測定したところ、674m/gの比表面積を示した。得られた炭素質材料を、TG/DTA測定した結果を図6に示す。
【0114】
官能基を有するポリマーとしてメチルメタクリレートとグリシジルメタクリレートとの共重合体(日本油脂社製マープルーフ、G−2050M)をテトラヒドロフラン溶媒に20重量%となるように溶解した。その溶液11gに、上記において得られた薄片化黒鉛を41.3mg混合し、超音波処理をおこなった。本多電子社製、W−113サンパを用い、出力を100W、発振周波数28kHzで、30分間超音波処理した。処理後の分散混合物を離型性表面を有するポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布、80℃の乾燥オーブンで溶剤を乾燥し、ポリマーと薄片化黒鉛との混合物を作成した。
【0115】
この混合物全量を、パイプの両端をボルト締めできる構造を有する7mlの内容積のパイプに投入した。パイプの両端をボルト締めにより閉成し、温度を340℃に設定したサンドバスに投入し、120分間放置した。
【0116】
加熱処理されたパイプを冷水に投入し冷却した。冷却後にボルトを除去し、パイプを開けたところ、黒色の樹脂の塊が得られた。
【0117】
このパイプのボルトを開放後、100mlのTHFに浸漬して溶解した。30分間超音波処理を行い、粗い分散溶液を作成した。黒色の本分散溶液をとりだし、3μmの穴径を有するアドバンテック社製PTFE−T300A090Cを用いて、アスピレーター吸引をしながら濾過した。濾過残渣をTHFに再分散し、TG/DTA測定を行った。
【0118】
得られた結果を図7に示す。薄片化黒鉛由来のピークが52%、グラフトしたポリマー由来のピークが40%となり、ポリマーグラフト率は、43重量%と見積もられた。
【0119】
(実施例2)
官能基を有するポリマーとしてメチルメタクリレートとグリシジルメタクリレートとの共重合体(日本油脂社製マープルーフ、G−2050M)をテトラヒドロフラン溶媒に20重量%となるように溶解した。この溶液20gに、東洋炭素社製、膨張黒鉛粉砕品、品名:PF8Fを121.6mg混合し、超音波処理をおこなった。超音波処理装置として、本多電子社製、W−113サンパを用いた。出力を100W、発振周波数28kHzで、30分間処理した。処理後の分散混合物を離型性表面を有するポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布、80℃の乾燥オーブンで溶剤を乾燥し、ポリマーと薄片化黒鉛との混合物を作成した。
【0120】
この混合物全量を、パイプの両端をボルト締めにより閉成できる構造を有する5mlの内容積のパイプに投入した。パイプの両端をボルト締めして閉成し、温度を340℃に設定したサンドバスに投入し、120分間放置した。
【0121】
加熱処理されたパイプを冷水に投入し冷却した。冷却後にボルトを除去し、開放したところ、黒色の樹脂の塊が得られた。
【0122】
このパイプのボルトを開放後、100mlのTHFに浸漬して溶解した。30分間超音波処理を行い、粗い黒色の分散溶液を作成した。黒色の分散溶液をとりだし、3μmの穴径を有するアドバンテック社製PTFE−T300A090Cを用いて、アスピレーター吸引をしながら濾過した。濾過残渣をTHFに再分散し、TG/DTA測定を行った。
【0123】
得られた結果を図8に示す。薄片化黒鉛由来のピークが28%、グラフトしたポリマー由来のピークが70%となり、グラフト率は、71重量%と見積もられた。
【0124】
(実施例3)
官能基を有するポリマーとしてメチルメタクリレートとグリシジルメタクリレートとの共重合体(日本油脂社製マープルーフ、G−2050M)をテトラヒドロフラン溶媒に20重量%となるように溶解した。その溶液20gに、Hanwa Chemical社製、SWCNT、CM−250を107mg混合し、超音波処理をおこなった。超音波処理装置としては、本多電子社製、W−113サンパを用いた。出力を100W、発振周波数28kHzで、30分間処理した。処理後の分散混合物を離型性表面を有するポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布、80℃の乾燥オーブンで溶剤を乾燥し、ポリマーと剥離グラフェンの混合物を作成した。
【0125】
この混合物全量を、パイプの両端をボルト締めにより閉成できる構造を有する5mlの内容積のパイプに投入した。パイプの両端をボルト締めして閉成、温度を340℃に設定したサンドバスに投入し、180分間放置した。
【0126】
加熱処理されたパイプを冷水に投入し冷却した。冷却後にボルトを除去し、開放したところ、黒色の樹脂の塊が得られた。
【0127】
このパイプのボルトを開放後、100mlのTHFに浸漬して溶解した。30分間超音波処理を行い、粗い黒色の分散溶液を作成した。黒色の本分散溶液をとりだし、3μmの穴径を有するアドバンテック社製PTFE−T300A090Cを用いて、アスピレーター吸引をしながら濾過した。濾過残渣をTHFに再分散し、TG/DTA測定を行った。
【0128】
得られた結果を図9に示す。SWCNT由来のピークが76%、グラフトしたポリマー由来のピークが13%となり、グラフト率は、14.6重量%と見積もられた。
【0129】
(実施例4)
官能基を有するポリマーとしてメチルメタクリレートとグリシジルメタクリレートとの共重合体(日本油脂社製マープルーフ、G−2050M)をテトラヒドロフラン溶媒に20重量%となるように溶解した。その溶液16.3gに、住石マテリアルズ社製、ナノダイア、クラスタータイプ、平均粒径20nmを0.5258g混合し、超音波処理をおこなった。超音波処理の装置としては、本多電子社製、W−113サンパを用いた。出力を100W、発振周波数28kHzで、30分間処理した。本分散混合物を離型性表面を有するポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布、80℃の乾燥オーブンで溶剤を乾燥し、ポリマーとナノダイアの混合物を作成した。
【0130】
この混合物全量を、パイプの両端をボルト締めにより閉成できる構造を有する7mlの内容積のパイプに投入した。パイプの両端をボルト締めし閉成し、温度を340℃に設定したサンドバスに投入し、180分間放置した。
【0131】
加熱処理されたパイプを冷水に投入し冷却した。冷却後にボルトを除去して開放したところ、ナノダイアと樹脂の混合物が得られた。
【0132】
このパイプのボルトを開放後、100mlのTHFに浸漬して混合物を溶解した。30分間超音波処理を行い、粗い黒色の分散溶液を作成した。黒色の本分散溶液をとりだし、遠心分離により粒子成分を回収した。粒子成分をTHFに再分散後乾燥し、TG/DTA測定を行った。
【0133】
得られた結果を図10に示す。ナノダイア由来のピークが85%、グラフトしたポリマー由来のピークが11%となり、グラフト率は、11.5重量%と見積もられた。
【0134】
(実施例5)
原料黒鉛シートとして東洋炭素社製、膨張黒鉛粉砕品、品名:PF8Fを用意した。
【0135】
該黒鉛シートの200.4mgを、パイプの両端をボルト締めにより閉成できる構造を有する7mlの内容積のパイプに投入した。さらに、グリシジルメタクリレートモノマー2.5g、スチレンモノマー2.5gを投入し、パイプの両端をボルト締めして閉成、温度を200℃に設定したサンドバスに投入し、60分間放置した。さらに、サンドバスの温度を340℃まで高め、240分間加熱処理をした。
【0136】
得られたパイプを冷水に投入し冷却した。冷却後に、ボルトを開け、開放したところ、粘りのある黒色の樹脂の塊が得られた。
【0137】
この樹脂塊をTHFに浸漬して溶解した。30分間超音波処理を行い、粗い分散溶液を作成した。この分散溶液を、3μmの穴径を有するアドバンテック社製PTFE−T300A090Cを用いて、アスピレーター吸引をしながら濾過した。濾過残渣についてTG/DTA測定した。
【0138】
得られた結果を図11に示す。黒鉛由来のピークが32%、グラフトしたポリマー由来のピークが65%となり、グラフト率は、67重量%と見積もられた。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素質材料と、1)解重合性モノマーと官能基を有するモノマーとの混合物、2)前記混合物を重合してなる官能基含有ポリマー、3)加熱により分解しラジカルを発生させ、かつモノマーやオリゴマー化する解重合性のある官能基含有ポリマー、4)前記官能基含有ポリマー3)の重合単位となる官能基含有モノマーからなる群から選択された少なくとも1種とを混合し混合物を得る工程と、前記混合物を、非開放容器内に設置し、前記ポリマーの分解開始温度以上に加熱する工程を備える、炭素質材料−ポリマー複合材料の製造方法。
【請求項2】
前記ポリマーの10重量%が分解するに至る温度を分解開始温度、前記ポリマーの90重量%が分解するに至る温度を分解完了温度とし、前記ポリマーの天井温度以上、分解開始温度未満の温度域を第1の温度域とし、前記分解開始温度以上、分解完了温度以下の温度域を第2の温度域とし、前記分解完了温度を超える温度域を第3の温度域としたときに、前記加熱工程において前記分解開始温度以上、分解完了温度以下の第2の温度域に加熱する加熱工程をさらに備える、請求項1に記載の炭素質材料−ポリマー複合材料の製造方法。
【請求項3】
前記ポリマーの90重量%が分解するに至る温度を分解完了温度としたときに、前記分解完了温度より高い第3の温度域に加熱する加熱工程をさらに備える、請求項1または2に記載の炭素質材料−ポリマー複合材料の製造方法。
【請求項4】
前記第2の温度域に加熱する加熱工程と、前記第3の温度域に加熱する加熱工程とを繰り返す、請求項3に記載の炭素質材料−ポリマー複合材料の製造方法。
【請求項5】
前記ポリマーの分解完了温度より高い温度でありかつ1000℃以下での分解残渣の最小重量をR,第1の温度域でのポリマーの最大重量をA,分解開始温度でのポリマーの重量をX,分解完了温度でのポリマーの重量をYとしたときに、分解開始温度は(X−R)/(A−R)=0.9である温度であり、分解完了温度は(Y−R)/(A−R)=0.1である温度である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の炭素質材料−ポリマー複合材料の製造方法。
【請求項6】
前記モノマーまたはポリマーとして、2種以上のモノマーまたはポリマーを用いる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の炭素質材料−ポリマー複合材料の製造方法。
【請求項7】
加熱処理において、超臨界状態にある二酸化炭素もしくは水を混入させることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の炭素質材料−ポリマー複合材料の製造方法。
【請求項8】
前記混合物が重合開始剤を含まない、請求項1〜7のいずれか1項に記載の炭素質材料−ポリマー複合材料の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の炭素質材料−ポリマー複合材料の製造方法により得られ、炭素質材料に前記官能基を有するポリマーがグラフトしている炭素質材料−ポリマー複合材料。
【請求項10】
前記炭素質材料が薄片化黒鉛である、請求項9に記載の炭素質材料−ポリマー複合材料。
【請求項11】
炭素質材料に官能基を有するポリマーがグラフトしており、グラフト率が10重量%以上、100重量%以下である、炭素質材料−ポリマー複合材料。
【請求項12】
前記グラフト率が40重量%以上である、請求項11に記載の炭素質材料−ポリマー複合材料。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−250892(P2012−250892A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126550(P2011−126550)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】