点火システム
【課題】整合器の設定作業に要する時間を飛躍的に短縮する。
【解決手段】点火システム101は、負荷3A〜3Dと、交流電源2と、伝送ケーブル5A〜5Dと、整合器4A〜4Dとを備える。各伝送ケーブル5A〜5Dの絶縁層22は同一材料で構成され、また、内燃機関ENの非駆動時における負荷3A〜3Dの負荷インピーダンスはそれぞれ同一とされる。絶縁層22の比誘電率をεrとし、絶縁層22の比透磁率をμrとし、真空中の光速をC(m/s)とし、交流電源2の交番周波数をf(Hz)とし、λ0(m)をC/fとし、nを整数としたとき、伝送ケーブル5A〜5D同士の長さの差が[−0.03×λ0×{1/(εr×μr)1/2}×1/2]+[n×λ0×{1/(εr×μr)1/2}×1/2]以上[0.03×λ0×{1/(εr×μr)1/2}×1/2]+[n×λ0×{1/(εr×μr)1/2}×1/2]以下とされる。
【解決手段】点火システム101は、負荷3A〜3Dと、交流電源2と、伝送ケーブル5A〜5Dと、整合器4A〜4Dとを備える。各伝送ケーブル5A〜5Dの絶縁層22は同一材料で構成され、また、内燃機関ENの非駆動時における負荷3A〜3Dの負荷インピーダンスはそれぞれ同一とされる。絶縁層22の比誘電率をεrとし、絶縁層22の比透磁率をμrとし、真空中の光速をC(m/s)とし、交流電源2の交番周波数をf(Hz)とし、λ0(m)をC/fとし、nを整数としたとき、伝送ケーブル5A〜5D同士の長さの差が[−0.03×λ0×{1/(εr×μr)1/2}×1/2]+[n×λ0×{1/(εr×μr)1/2}×1/2]以上[0.03×λ0×{1/(εr×μr)1/2}×1/2]+[n×λ0×{1/(εr×μr)1/2}×1/2]以下とされる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電力により高周波プラズマを発生させる高周波プラズマ点火プラグ用の点火システムに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関に使用される点火システムとしては、高電圧を印加する放電用電源と、中心電極及び接地電極を有し、両電極間に間隙が形成されてなる点火プラグとを備えたものが知られている。このような点火システムにおいては、放電用電源から点火プラグに高電圧を印加することで点火プラグの前記間隙に火花放電を生じさせ、その結果、混合気に対する着火がなされるようになっている。
【0003】
また近年では、着火性の更なる向上を図るべく、交流電源からの交流電力(高周波電力)を前記間隙に投入することで、高周波プラズマを生じさせる点火システムが提案されている(例えば、特許文献1等参照)。
【0004】
このような点火システムは、交流電力を出力する交流電源と、交流電力の投入対象となる複数の負荷(点火プラグや混合器など)と、前記複数の負荷及び交流電源間を電気的に接続する複数の伝送ケーブルとを備える。また、負荷及び交流電源間は、伝送ケーブルにより最短距離で接続され、各伝送ケーブルの長さはそれぞれ異なるのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−183396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、点火プラグのインピーダンスひいては前記負荷の負荷インピーダンスは、プラズマの発生前後で変化するため、伝送ケーブル内では反射波が生じ、電力波形にうねりが生じてしまう。この電力波形のうねりは伝送ケーブルの長さによって相違するため、上述の通り、伝送ケーブルにより負荷及び交流電源間を最短距離で接続すると、点火プラグごとに投入エネルギーに差異が生じてしまい、プラズマ生成効率の低下を招いてしまうおそれがある。
【0007】
そこで、負荷及び交流電源間に、交流電源の出力インピーダンスと負荷の負荷インピーダンスとの整合を取るための整合器を各気筒毎に設け、点火プラグへの投入エネルギーが最大となるように整合器の設定を行うことで、優れたプラズマ生成効率を実現することが考えられる。しかしながら、この場合には、それぞれの整合器の設定を個別に行う必要があり、整合器の設定作業に多くの時間を要することとなってしまう。
【0008】
これに対して、投入エネルギーに多少の差異が生じたとしても、各点火プラグにおいて高周波プラズマをより確実に生成可能とすべく、高出力の交流電源を用いることも考えられるが、この場合には、電源効率の悪化を招いてしまう。
【0009】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、整合器の設定作業に要する時間を飛躍的に短縮することができ、電源効率の悪化を招くことなく、優れたプラズマ生成効率を実現できる点火システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記目的を解決するのに適した各構成につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する構成に特有の作用効果を付記する。
【0011】
構成1.本構成の点火システムは、内燃機関に取付けられる点火プラグを具備してなる複数の負荷と、
前記複数の負荷に交流電力を出力する交流電源と、
前記複数の負荷及び前記交流電源間を電気的に接続する複数の伝送ケーブルと、
前記複数の負荷及び前記交流電源間に設けられ、前記交流電源の出力インピーダンス及び前記負荷の負荷インピーダンスを整合するための複数の整合器と
を備える点火システムであって、
前記伝送ケーブルは、導電性の内部導体と、当該内部導体の外周に配置される導電性の外部導体と、前記内部導体と前記外部導体との間を絶縁する絶縁層とを有するとともに、
前記各伝送ケーブルの前記絶縁層は同一材料により構成され、
前記内燃機関の非駆動時における前記複数の負荷の負荷インピーダンスはそれぞれ同一とされるとともに、
前記伝送ケーブル同士の長さの差が、前記絶縁層の比誘電率をεrとし、前記絶縁層の比透磁率をμrとし、真空中の光速をC(m/s)とし、交流電源の交番周波数をf(Hz)とし、λ0(m)をC/fとし、nを整数としたとき、[−0.03×λ0×{1/(εr×μr)1/2}×1/2]+[n×λ0×{1/(εr×μr)1/2}×1/2]以上[0.03×λ0×{1/(εr×μr)1/2}×1/2]+[n×λ0×{1/(εr×μr)1/2}×1/2]以下とされることを特徴とする。
【0012】
尚、{1/(εr×μr)1/2}は、いわゆる短縮率であり、波長λ0(m)に当該短縮率を乗じた値は、伝送ケーブルを通って伝送される際の交流電力の波長λ(m)を示す。
【0013】
伝送ケーブルを通って伝送される際の交流電力の波形には、λ/2ごとに電力のピークが表れる。この点を踏まえて、上記構成1によれば、各伝送ケーブルの長さの差が、λ/2×n(尚、各伝送ケーブルの長さの差をλ/2×nとすると、各伝送ケーブルにおける電力波形が同一となる)に、λ/2の±3%以下(プラズマをより確実に発生させるという面で許容されるずれ量)を合算したものとなるように構成されている。すなわち、上記構成1によれば、各伝送ケーブルにおいて、電力伝送時の電力波形をほぼ同一のもの(電力波形の位相差をほぼ同一のもの)とすることができる。そのため、1つの気筒のみにおいて、優れたプラズマ生成効率を実現可能となるように、伝送ケーブルの長さの設定や整合器の設定を行い、その他の気筒においては、伝送ケーブルの長さを前記設定された伝送ケーブルの長さに対して差が上記関係を満たすようにしつつ、整合器の設定を同一とすることで、優れたプラズマ生成効率をその他の気筒においても同様に実現することができる。すなわち、上記構成1によれば、各気筒毎に整合器の設定作業を行う必要がなくなり、整合器の設定作業に要する時間を飛躍的に短縮することができる。また、優れたプラズマ生成効率を実現するために、高出力の交流電源を用いる必要はなく、ひいては電源効率の悪化といった事態を防止することができる。
【0014】
尚、各気筒において一層優れたプラズマの生成効率を実現するという点では、各伝送ケーブル同士の差を、λ/2×nにλ/2の±2%以下を合算したものとなるように構成することが好ましい。
【0015】
構成2.本構成の点火システムは、上記構成1において、前記各伝送ケーブルの長さをλ0×{1/(εr×μr)1/2}以下としたことを特徴とする。
【0016】
上記構成2によれば、それぞれの伝送ケーブルの長さは、伝送ケーブルを通って伝送される交流電力の波長λ〔=λ0×{1/(εr×μr)1/2}〕以下とされている。すなわち、各伝送ケーブルは、それぞれの長さに大きな差がなく、比較的短くなるように設定されている。従って、交流電力を伝送する際のエネルギー損失を抑制することができ、プラズマの生成効率をより向上させることができる。
【0017】
構成3.本構成の点火システムは、内燃機関に取付けられる点火プラグを具備してなる複数の負荷と、
前記複数の負荷に交流電力を出力する交流電源と、
前記複数の負荷及び前記交流電源間を電気的に接続する複数の伝送ケーブルと、
前記複数の負荷及び前記交流電源間に設けられ、前記交流電源の出力インピーダンス及び前記負荷の負荷インピーダンスを整合するための複数の整合器と
を備える点火システムであって、
前記伝送ケーブルは、導電性の内部導体と、当該内部導体の外周に配置される導電性の外部導体と、前記内部導体と前記外部導体との間を絶縁する絶縁層とを有するとともに、
前記内燃機関の非駆動時における前記複数の負荷の負荷インピーダンスはそれぞれ同一とされ、
電磁波が真空中を伝播するときの波長をλ0(m)とし、
前記複数の伝送ケーブルのうちの基準ケーブルにおいて、その長さをLaとし、前記絶縁層の比誘電率をεraとし、前記絶縁層の比透磁率をμraとしたとき、La=αa×λ0×{1/(εra×μra)1/2}を満たす係数をαaとし、
前記基準ケーブルと異なる前記伝送ケーブルにおいて、その長さをLbとし、前記絶縁層の比誘電率をεrbとし、前記絶縁層の比透磁率をμrbとしたとき、Lb=αb×λ0×{1/(εrb×μrb)1/2}を満たす係数をαbとし、
nを0以上の整数としたとき、
|αa−αb|=nを満たすことを特徴とする。
【0018】
尚、「|αa−αb|=nを満たす」とあるのは、|αa−αb|を厳密にnとする場合のみならず、|αa−αb|がnから若干程度(例えば、±0.2程度)ずれている場合も含む。
【0019】
上記構成3によれば、基準ケーブルの係数αaに対して、基準ケーブルとは異なる伝送ケーブルの係数αbが、|αa−αb|=nを満たすように構成されている。従って、各伝送ケーブルにおいて、電力波形の位相差をほぼ同一のものとすることができる。そのため、基準ケーブルが接続される1つの気筒において、優れたプラズマ生成効率を実現可能となるように、基準ケーブルの長さLaの設定や整合器の設定を行い、その他の気筒においては、伝送ケーブルの係数αbが|αa−αb|=nを満たし、かつ、整合器の設定を同一とすることで、優れたプラズマ生成効率をその他の気筒においても同様に実現することができる。すなわち、上記構成3によれば、各気筒毎に整合器の設定作業を行う必要がなくなり、整合器の設定作業に要する時間を飛躍的に短縮することができる。また、優れたプラズマ生成効率を実現するために、高出力の交流電源を用いる必要はなく、ひいては電源効率の悪化といった事態を防止することができる。
【0020】
尚、上記構成3は、各伝送ケーブルの絶縁層が同一材料により構成されている場合のみならず、各伝送ケーブルの絶縁層が異なる材料により構成されている場合にも適用可能である。
【0021】
構成4.本構成の点火システムは、上記構成3において、前記係数αa及び前記係数αbが、それぞれ1以下とされることを特徴とする請求項3に記載の点火システム。
【0022】
上記構成4によれば、係数αa及び係数αbがそれぞれ1以下とされている。すなわち、各伝送ケーブルの長さが、優れたプラズマ生成効率を実現可能な長さの中で最も小さくなるように設定されている。従って、交流電力を伝送する際のエネルギー損失を抑制することができ、プラズマの生成効率をより向上させることができる。
【0023】
構成5.本構成の点火システムは、上記構成1乃至4のいずれかにおいて、前記内燃機関に設けられた支柱に対して、前記伝送ケーブルが巻付けられることを特徴とする。
【0024】
負荷及び交流電源間を最短距離で接続する伝送ケーブルと比較して、上記構成1等の伝送ケーブルはより長いものとなり得る。伝送ケーブルが長いと、伝送ケーブルの取回しが難しくなるとともに、伝送ケーブルがたわんだ状態となりやすくなる。伝送ケーブルがたわんでしまうと、内燃機関の動作に伴う振動等の影響が伝送ケーブルに対して強く働き、伝送ケーブルの破損を招いてしまうおそれがある。
【0025】
この点を鑑みて、上記構成5によれば、内燃機関に設けられた支柱に対して伝送ケーブルが巻付けられるように構成されている。従って、伝送ケーブルの取回しが容易になるとともに、伝送ケーブルの撓みを抑制することができ、振動等による伝送ケーブルの破損を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】点火システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】伝送ケーブルの構成を示す断面模式図である。
【図3】点火プラグの構成を示す一部破断正面図である。
【図4】内燃機関に設けられた支柱や、当該支柱に巻付けられた伝送ケーブル等を示す模式図である。
【図5】電圧波形を得る際に用いた点火システムの回路構成を示す概略図である。
【図6】交流電源の交番周波数を0.05MHzとした際の電圧波形を示すグラフである。
【図7】交流電源の交番周波数を0.1MHzとした際の電圧波形を示すグラフである。
【図8】交流電源の交番周波数を0.2MHzとした際の電圧波形を示すグラフである。
【図9】交流電源の交番周波数を0.5MHzとした際の電圧波形を示すグラフである。
【図10】交流電源の交番周波数を1MHzとした際の電圧波形を示すグラフである。
【図11】交流電源の交番周波数を2MHzとした際の電圧波形を示すグラフである。
【図12】交流電源の交番周波数を5MHzとした際の電圧波形を示すグラフである。
【図13】交流電源の交番周波数を10MHzとした際の電圧波形を示すグラフである。
【図14】交流電源の交番周波数を20MHzとした際の電圧波形を示すグラフである。
【図15】交流電源の交番周波数を50MHzとした際の電圧波形を示すグラフである。
【図16】第2実施形態における点火システムの概略構成を示すブロック図である。
【図17】(a)〜(d)は、第2実施形態における各伝送ケーブルの構成を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、実施形態について図面を参照しつつ説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、点火システム101の概略構成を示すブロック図である。
【0028】
点火システム101は、複数の放電用電源1A,1B,1C,1Dと、交流電源2と、複数の負荷3A,3B,3C,3Dと、複数の整合器4A,4B,4C,4Dと、各負荷3A〜3D及び交流電源2を電気的に接続する複数の伝送ケーブル5A,5B,5C,5Dとを備えている。
【0029】
放電用電源1A〜1Dは、例えば、点火コイルからなり、後述する点火プラグ7A,7B,7C,7Dごとにそれぞれ設けられている。また、放電用電源1A〜1Dは、点火プラグ7A〜7Dに比較的低周波数の高電圧(例えば、数〜数十kV)を供給する。
【0030】
交流電源2は、ディストリビュータ(分配器)6を介して点火プラグ7A〜7Dに交流電力を出力するものである。本実施形態では、交流電源2から出力される交流電力の交番周波数(発振周波数)が所定値(例えば、50kHz以上100MHz以下)に設定されており、交流電源2の出力電力(投入される電力量の1秒当たりの平均値)は所定値(例えば、500W)以下とされている。
【0031】
伝送ケーブル5A〜5Dは、図2に示すように、線状の内部導体21と、内部導体21の外周に配置された筒状の絶縁層22と、絶縁層22の外周に配置された筒状の外部導体23と、外部導体23の外周に配置された外皮24とを備えている。
【0032】
内部導体21及び外部導体23は、それぞれ導電性に優れる金属(例えば、銅、金、銀、又は、これらを主成分とする合金など)により形成されている。また、絶縁層22は、所定の絶縁性材料(例えば、ポリエチレンや発泡ポリエチレン等)により形成されており、当該絶縁層22により両導体21,23間が絶縁されている。さらに、外皮24は、絶縁性ゴムや絶縁性樹脂により形成されている。
【0033】
加えて、内部導体21は交流電源2に接続されており、一方で、外部導体23は接地されている。そして、外部導体23により電力の反射や外部への電磁波ノイズの放射が防止され、点火プラグ7A〜7Dに対して交流電力がより確実に供給されるようになっている。また、本実施形態では、各伝送ケーブル5A〜5Dにおいて、少なくとも絶縁層22を構成する材料が同一とされている。
【0034】
図1に戻り、負荷3A〜3Dは、交流電源2から出力される交流電力が入力されるものである。本実施形態において、負荷3Aは、点火プラグ7Aと、これに対応する混合器8Aとから構成され、負荷3Bは、点火プラグ7Bと、これに対応する混合器8Bとから構成されている。また、負荷3Cは、点火プラグ7Cと、これに対応する混合器8Cとから構成され、負荷3Dは、点火プラグ7Dと、これに対応する混合器8Dとから構成されている。
【0035】
点火プラグ7A〜7Dは、内燃機関EN(本実施形態では、4気筒エンジン)の各気筒のエンジンヘッドに対して取付けられており、また、それぞれ同一の仕様により製造され、同一の構成を有している。
【0036】
具体的には、点火プラグ7A〜7Dは、図3に示すように、軸線CL1方向に延びる軸孔14を有する筒状の絶縁碍子12と、軸孔14に挿通された中心電極15及び端子電極16と、絶縁碍子12の外周に配置された筒状の主体金具13と、主体金具13の先端部に固定された接地電極17とを備えている。また、中心電極15及び端子電極16は、導電性のガラスシール層18により絶縁碍子12に固定されるとともに、ガラスシール層18を介して電気的に接続されている。さらに、中心電極15の先端部と接地電極17の先端部との間には間隙19が形成されている。そして、放電用電源1A〜1Dから点火プラグ7A〜7Dの間隙19に高電圧を印加し、間隙19にて火花放電を生じさせた上で、交流電源2から点火プラグ7A〜7Dに対して交流電力を投入することにより、間隙19において高周波プラズマを生成できるようになっている。
【0037】
図1に戻り、混合器8A〜8Dは、放電用電源1A〜1D及び交流電源2と、点火プラグ7A〜7Dとの間に設けられ、放電用電源1A〜1Dからの出力電力と交流電源2からの出力電力とを混合して、点火プラグ7A〜7Dに供給するものである。また、混合器8A〜8Dは、放電用電源1A〜1Dから交流電源2(伝送ケーブル5A〜5D)側に対する電流の流入を防止するためのコンデンサ(図示せず)と、交流電源2から放電用電源1A〜1D側に対する電流の流入を防止するためのコイル(図示せず)とを備えている。尚、点火プラグ7A〜7Dと同様に、混合器8A〜8Dは、それぞれ同一の仕様で製造され、同一の構成を有するものとなっている。
【0038】
整合器4A〜4Dは、伝送ケーブル5A〜5D及び混合器8A〜8D間に配置され、可変コンデンサ及び可変インダクタ(ともに図示せず)を備えている。整合器4A〜4Dは、交流電源2の出力インピーダンスと、負荷3A〜3Dの負荷インピーダンスとの整合を取るために用いられる。尚、各整合器4A〜4Dは、それぞれ同一の仕様で製造され、同一の構成を有するものとなっている。
【0039】
ところで、上述の点火システム101では、間隙19にプラズマが発生する前後において、点火プラグ7A〜7Dのインピーダンスが変化するため、交流電力の投入時には、交流電源2及び負荷3A〜3D間で反射波が生じる。そのため、伝送ケーブル5A〜5D内では、交流電力の進行波に反射波が干渉することで交流電力の波形にうねりが生じ、波形の最大振幅(すなわち、点火プラグ7A〜7Dへの投入エネルギー)が変動し得る。
【0040】
この点を鑑みて、本実施形態では、複数の伝送ケーブル5A〜5Dのうち伝送ケーブル5Aの長さを所定値L(m)に設定した上で、交流電源2から点火プラグ7Aに対する投入エネルギーを最大とできるように整合器4Aが設定される。そして、その他の整合器4B〜4Dには、整合器4Aの設定と同様の設定がなされる。尚、前記所定値L(m)は、交流電源からの出力電力を一定とした上で、伝送ケーブルの長さを種々変更した際に、プラズマの生成量が最も大きくなったときの伝送ケーブルの長さをいう(すなわち、所定値Lは、プラズマ生成効率を最も高めることが可能な伝送ケーブルの長さを示す)。
【0041】
また、本実施形態においては、上述の通り、点火プラグ7A〜7D、及び、混合器8A〜8Dは、それぞれ同一の構成を有するものとされているため、内燃機関ENの非駆動時において、各負荷3A〜3Dの負荷インピーダンスはそれぞれ同一となっている。
【0042】
加えて、伝送ケーブル5A以外の伝送ケーブル5B〜5Dの長さが次のように設定されている。すなわち、伝送ケーブル5B〜5Dは、絶縁層22の比誘電率をεrとし、絶縁層22の比透磁率をμrとし、真空中の光速をC(m/s)とし、交流電源2の交番周波数をf(Hz)とし、λ0(m)をC/fとしたとき、自身の長さと伝送ケーブル5Aの長さLとの差が[−0.03×λ0×{1/(εr×μr)1/2}×1/2]+[n×λ0×{1/(εr×μr)1/2}×1/2]以上[0.03×λ0×{1/(εr×μr)1/2}×1/2]+[n×λ0×{1/(εr×μr)1/2}×1/2]以下となるように設定されている。換言すれば、伝送ケーブル5A〜5D同士の長さの差が、[−0.03×λ0×{1/(εr×μr)1/2}×1/2]+[n×λ0×{1/(εr×μr)1/2}×1/2]以上[0.03×λ0×{1/(εr×μr)1/2}×1/2]+[n×λ0×{1/(εr×μr)1/2}×1/2]以下とされている。
【0043】
ここで、nは整数であり、{1/(εr×μr)1/2}は、いわゆる短縮率である。そして、前記波長λ0(m)に前記短縮率を乗じた値は、伝送ケーブル5A〜5Dを通って伝送される際の交流電力の波長λ(m)を示す。尚、絶縁層22をポリエチレンにより構成した場合、εrは約2.3であり、μrは約1.0であるため、前記短縮率は約66%となる。また、絶縁層22を発泡ポリエチレンにより構成した場合、εrは約1.5であり、μrは約1.0であるため、前記短縮率は約82%となる。
【0044】
また、本実施形態において、伝送ケーブル5A〜5Dの長さは、前記波長λ(m)以下となるように設定されている。その結果、各伝送ケーブル5A〜5Dの長さは、それぞれに大きな差がなく、プラズマの生成効率を最も高められる条件において比較的小さくなるように構成されている。
【0045】
さらに、各伝送ケーブル5A〜5Dは、図4に示すように、内燃機関ENのエンジンヘッドEHに設けられた円柱状の支柱PRに巻付けられている。
【0046】
以上詳述したように、本実施形態によれば、伝送ケーブル5A〜5D同士の長さの差が[−0.03×λ0×{1/(εr×μr)1/2}×1/2]+[n×λ0×{1/(εr×μr)1/2}×1/2]以上[0.03×λ0×{1/(εr×μr)1/2}×1/2]+[n×λ0×{1/(εr×μr)1/2}×1/2]以下とされている。従って、各伝送ケーブル5A〜5Dにおいて、電力伝送時の電力波形をほぼ同一のもの(電力波形の位相差をほぼ同一のもの)とすることができる。そのため、優れたプラズマ生成効率を実現可能な伝送ケーブル5Aの長さLや整合器4Aの設定に基づいて、他の伝送ケーブル5B〜5Dの長さを伝送ケーブル5Aの長さLに対して差が上記関係を満たすようにしつつ、整合器4B〜4Dの設定を整合器4Aの設定と同一とすることで、点火プラグ7B〜7Dにおいても点火プラグ7Aと同様の優れたプラズマ生成効率を実現することができる。すなわち、本実施形態によれば、各気筒毎に整合器の設定作業を行う必要がなくなり、整合器の設定作業に要する時間を飛躍的に短縮することができる。また、高出力の交流電源を用いることなく(すなわち、電源効率の悪化を招くことなく)、優れたプラズマ生成効率を実現することができる。
【0047】
さらに、本実施形態では、各伝送ケーブル5A〜5Dの長さは、前記波長λ以下とされており、各伝送ケーブル5A〜5Dは、それぞれの長さに大きな差がなく、比較的短くなるように設定されている。従って、交流電力を伝送する際のエネルギー損失を抑制することができ、プラズマの生成効率をより向上させることができる。
【0048】
さらに、伝送ケーブル5A〜5Dは、支柱PRに対して巻付けられている。従って、伝送ケーブル5A〜5Dの取回しが容易になるとともに、伝送ケーブル5A〜5Dの撓みを抑制することができ、振動等による伝送ケーブル5A〜5Dの破損を効果的に防止することができる。
【0049】
次いで、上記実施形態によって奏される作用効果を確認すべく、図5に示すように、点火プラグと、交流電源と、放電用電源と、交流電源及び点火プラグ間において直列的に接続された整合器及び混合器と、交流電源及び整合器間を接続する伝送ケーブルとを有する点火システムを作製し、交番周波数fを50kHzから50MHzの範囲で種々異なるものとした際における、点火プラグへと印可される電圧の波形をそれぞれ得た。尚、整合器の有するインダクタのインダクタンスを0.1μHとし、混合器の有するコンデンサの静電容量を50pFとした。
【0050】
図6に、周波数fを0.05MHzとした際の電圧波形を示し、図7に、周波数fを0.1MHzとした際の電圧波形を示し、図8に、周波数fを0.2MHzとした際の電圧波形を示し、図9に、周波数fを0.5MHzとした際の電圧波形を示す。また、図10に、周波数fを1MHzとした際の電圧波形を示し、図11に、周波数fを2MHzとした際の電圧波形を示し、図12に、周波数fを5MHzとした際の電圧波形を示し、図13に、周波数fを10MHzとした際の電圧波形を示す。さらに、図14に、周波数fを20MHzとした際の電圧波形を示し、図15に、周波数を50MHzとした際の電圧波形を示す。
【0051】
加えて、図6〜図15における位相角(°)は電圧波形の波長λ(m)に対応し、位相角180°分がλ/2(m)に相当する。また、図6〜図15において、電圧のピークを挟む2本の点線は、両点線間のX軸方向に沿った幅が180°×±2%(つまり、λ/2×±2%)であり、電圧がピークとなるときの位相角を両点線間におけるX軸方向における中心とするものである。
【0052】
尚、電圧波形において電圧が800V以上であれば、点火プラグにおいて高周波プラズマを生成することができ、電圧が1000V以上であれば、高圧縮比エンジンを用いた場合など、非常に過酷な環境下であっても高周波プラズマをより確実に生成することができる。そこで、各電圧波形において、電圧が800V以上となる範囲を、高周波プラズマを生成する上で好適な範囲として特定し、電圧が1000V以上となる範囲を、高周波プラズマを生成する上で特に好適な範囲として特定した。
【0053】
図6〜図15に示すように、電圧がピークとなるときの位相角を中心とする180°×±3%の範囲において、点火プラグへの印可電圧を800V以上とできることが確認された。すなわち、点火プラグへの印可電圧がピーク電圧となり、プラズマの生成量が最も大きくなるように設定された伝送ケーブルの長さをLとしたとき、その他の伝送ケーブルの長さを、長さLにλ/2×n(nは整数)を足したもの(つまり、前記その他の伝送ケーブルの電圧波形が、プラズマの生成量が最も大きくなるように設定された伝送ケーブルにおける電圧波形と同一となる状態)から、λ/2×±3%以内だけの違いとなるように設定することで、点火プラグへの印可電圧を800V以上とできることが明らかとなった。
【0054】
また特に、電圧がピークとなるときの位相角を中心とする180°×±2%の範囲において、点火プラグへの印可電圧を1000V以上とできることが確認された。
【0055】
上述の結果より、各気筒に対応する整合器の設定を同一としつつ、各気筒において優れたプラズマの生成効率をより確実に実現するという観点から、プラズマ生成量が最大となるように設定された伝送ケーブルの長さに対する、その他の伝送ケーブルの長さの差を(−0.03×λ×1/2)+(n×λ×1/2)以上(0.03×λ×1/2)+(n×λ×1/2)以下とすることが好ましいといえる。換言すれば、伝送ケーブル同士の長さの差を、(−0.03×λ×1/2)+(n×λ×1/2)以上(0.03×λ×1/2)+(n×λ×1/2)以下とすることが好ましいといえる。
【0056】
また、各気筒において一層優れたプラズマの生成効率を実現するためには、伝送ケーブル同士の長さの差を、(−0.02×λ×1/2)+(n×λ×1/2)以上(0.02×λ×1/2)+(n×λ×1/2)以下とすることがより好ましいといえる。
【0057】
尚、波長λ(m)は、伝送ケーブルの絶縁層の比誘電率をεrとし、前記絶縁層の比透磁率をμrとし、真空中の光速をC(m/s)とし、交流電源の交番周波数をf(Hz)とし、λ0(m)をC/fとしたとき、λ0×{1/(εr×μr)1/2}で表すことができる。
〔第2実施形態〕
次いで、第2実施形態について上記第1実施形態との相違点を中心に説明する。上記第1実施形態では、各伝送ケーブル5A〜5Dにおいて、絶縁層22を構成する材料が同一とされている。これに対して、本第2実施形態では、図16及び図17に示すように、整合器4A及び分配器6間を接続する伝送ケーブル31の絶縁層41と、整合器4B及び分配器6間を接続する伝送ケーブル32の絶縁層42と、整合器4C及び分配器6間を接続する伝送ケーブル33の絶縁層43と、整合器4D及び分配器6間を接続する伝送ケーブル34の絶縁層44とがそれぞれ異なる材料から形成されている。
【0058】
そして、絶縁層41の比誘電率がεraとなっており、絶縁層42の比誘電率がεrbとなっており、絶縁層43の比誘電率がεrcとなっており、絶縁層44の比誘電率がεrdとなっている。また、絶縁層41の比透磁率がμraとなっており、絶縁層42の比透磁率がμrbとなっており、絶縁層43の比透磁率がμrcとなっており、絶縁層44の比透磁率がμrdとなっている。
【0059】
さらに、本実施形態では、複数の伝送ケーブル31〜34のうちの1の伝送ケーブル31(基準ケーブル)において、その長さを所定値La(m)に設定した上で、交流電源2から点火プラグ7Aに対する投入エネルギーを最大とできるように整合器4Aが設定されている。そして、その他の整合器4B〜4Dには、整合器4Aの設定と同様の設定がなされる。尚、前記所定値La(m)は、交流電源からの出力電力を一定とした上で、伝送ケーブル31の長さを種々変更した際に、プラズマの生成量が最も大きくなったときの伝送ケーブル31の長さをいう(すなわち、所定値Laは、プラズマ生成効率を最も高めることが可能な伝送ケーブル31の長さを示す)。
【0060】
また、伝送ケーブル31(基準ケーブル)以外の伝送ケーブル32〜34の長さが次のようにして設定されている。すなわち、伝送ケーブル31(基準ケーブル)において、La=αa×λ0×{1/(εra×μra)1/2}を満たす係数αaを求めておく。
【0061】
その上で、伝送ケーブル32においては、|αa−αb|=n(nは0以上の整数)を満たす係数αbが決定されるとともに、その長さLbがαb×λ0×{1/(εrb×μrb)1/2}とされている。
【0062】
さらに、伝送ケーブル33においては、|αa−αc|=nを満たす係数αcが決定されるとともに、その長さLcがαc×λ0×{1/(εrc×μrc)1/2}とされている。
【0063】
また、伝送ケーブル34においては、|αa−αd|=nを満たす係数αdが決定されるとともに、その長さLdがαd×λ0×{1/(εrd×μrd)1/2}とされている。
【0064】
併せて、本第2実施形態では、係数αa,αb,αc,αdがそれぞれ1以下とされている。その結果、各伝送ケーブル31〜34の長さLa,Lb,Lc,Ldは、プラズマの生成効率を最も高められる条件において最も小さなものとなっている。
【0065】
以上、本第2実施形態によれば、伝送ケーブル31(基準ケーブル)の係数αaに対して、伝送ケーブル31(基準ケーブル)とは異なる伝送ケーブル32〜34の係数αb,αc,αdが、それぞれ|αa−αb|=n、|αa−αc|=n、|αa−αd|=nを満たすように構成されている。従って、各伝送ケーブル31〜34において、電力波形の位相差をほぼ同一のものとすることができる。そのため、伝送ケーブル31(基準ケーブル)が接続される1つの気筒において、優れたプラズマ生成効率を実現可能となるように、伝送ケーブル31の長さLaの設定や整合器の設定を行い、その他の気筒においては、伝送ケーブル32〜34の係数αb,αc,αdが|αa−αb|=n、|αa−αc|=n、|αa−αd|=nを満たし、かつ、整合器4B〜4Dの設定を整合器4Aの設定と同一とすることで、優れたプラズマ生成効率をその他の気筒においても同様に実現することができる。すなわち、本第2実施形態によれば、各伝送ケーブル31〜34の絶縁層41〜44が異なる材料により構成されている場合であっても、各気筒毎に整合器の設定作業を行う必要がなくなり、整合器の設定作業に要する時間を飛躍的に短縮することができる。また、優れたプラズマ生成効率を実現するために、高出力の交流電源を用いる必要はなく、ひいては電源効率の悪化といった事態を防止することができる。
【0066】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0067】
(a)上記実施形態では、内燃機関ENの気筒数に合わせて負荷や伝送ケーブルが4つずつ設けられているが、負荷や伝送ケーブルの数は内燃機関ENの気筒数に応じて変更される。
【0068】
(b)上記実施形態では、それぞれの点火プラグ7A〜7Dに対応して放電用電源1A〜1Dが設けられているが、放電用電源を各点火プラグに対応して設けることなく、例えば、1つの放電用電源からディストリビュータを介して各点火プラグに電圧を印加してもよい。
【0069】
(c)上記実施形態では、内部導体21や外部導体23の構成材料として、銅や金等が挙げられているが、内部導体21や外部導体23の構成材料はこれらに限定されるものではない。また、絶縁層22の構成材料としてポリエチレンや発泡ポリエチレン等が挙げられているが、絶縁層22の構成材料はこれらに限定されるものではない。
【0070】
(d)上記実施形態における点火プラグ7A〜7Dの構成は例示であって、本発明の技術思想を適用可能な点火プラグの構成はこれに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0071】
2…交流電源
3A,3B,3C,3D…負荷
4A,4B,4C,4D…整合器
5A,5B,5C,5D…伝送ケーブル
7A,7B,7C,7D…点火プラグ
21…内部導体
22…絶縁層
23…外部導体
31,32,33,34…伝送ケーブル
41,42,43,44…絶縁層
101…点火システム
EN…内燃機関
PR…支柱
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電力により高周波プラズマを発生させる高周波プラズマ点火プラグ用の点火システムに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関に使用される点火システムとしては、高電圧を印加する放電用電源と、中心電極及び接地電極を有し、両電極間に間隙が形成されてなる点火プラグとを備えたものが知られている。このような点火システムにおいては、放電用電源から点火プラグに高電圧を印加することで点火プラグの前記間隙に火花放電を生じさせ、その結果、混合気に対する着火がなされるようになっている。
【0003】
また近年では、着火性の更なる向上を図るべく、交流電源からの交流電力(高周波電力)を前記間隙に投入することで、高周波プラズマを生じさせる点火システムが提案されている(例えば、特許文献1等参照)。
【0004】
このような点火システムは、交流電力を出力する交流電源と、交流電力の投入対象となる複数の負荷(点火プラグや混合器など)と、前記複数の負荷及び交流電源間を電気的に接続する複数の伝送ケーブルとを備える。また、負荷及び交流電源間は、伝送ケーブルにより最短距離で接続され、各伝送ケーブルの長さはそれぞれ異なるのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−183396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、点火プラグのインピーダンスひいては前記負荷の負荷インピーダンスは、プラズマの発生前後で変化するため、伝送ケーブル内では反射波が生じ、電力波形にうねりが生じてしまう。この電力波形のうねりは伝送ケーブルの長さによって相違するため、上述の通り、伝送ケーブルにより負荷及び交流電源間を最短距離で接続すると、点火プラグごとに投入エネルギーに差異が生じてしまい、プラズマ生成効率の低下を招いてしまうおそれがある。
【0007】
そこで、負荷及び交流電源間に、交流電源の出力インピーダンスと負荷の負荷インピーダンスとの整合を取るための整合器を各気筒毎に設け、点火プラグへの投入エネルギーが最大となるように整合器の設定を行うことで、優れたプラズマ生成効率を実現することが考えられる。しかしながら、この場合には、それぞれの整合器の設定を個別に行う必要があり、整合器の設定作業に多くの時間を要することとなってしまう。
【0008】
これに対して、投入エネルギーに多少の差異が生じたとしても、各点火プラグにおいて高周波プラズマをより確実に生成可能とすべく、高出力の交流電源を用いることも考えられるが、この場合には、電源効率の悪化を招いてしまう。
【0009】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、整合器の設定作業に要する時間を飛躍的に短縮することができ、電源効率の悪化を招くことなく、優れたプラズマ生成効率を実現できる点火システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記目的を解決するのに適した各構成につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する構成に特有の作用効果を付記する。
【0011】
構成1.本構成の点火システムは、内燃機関に取付けられる点火プラグを具備してなる複数の負荷と、
前記複数の負荷に交流電力を出力する交流電源と、
前記複数の負荷及び前記交流電源間を電気的に接続する複数の伝送ケーブルと、
前記複数の負荷及び前記交流電源間に設けられ、前記交流電源の出力インピーダンス及び前記負荷の負荷インピーダンスを整合するための複数の整合器と
を備える点火システムであって、
前記伝送ケーブルは、導電性の内部導体と、当該内部導体の外周に配置される導電性の外部導体と、前記内部導体と前記外部導体との間を絶縁する絶縁層とを有するとともに、
前記各伝送ケーブルの前記絶縁層は同一材料により構成され、
前記内燃機関の非駆動時における前記複数の負荷の負荷インピーダンスはそれぞれ同一とされるとともに、
前記伝送ケーブル同士の長さの差が、前記絶縁層の比誘電率をεrとし、前記絶縁層の比透磁率をμrとし、真空中の光速をC(m/s)とし、交流電源の交番周波数をf(Hz)とし、λ0(m)をC/fとし、nを整数としたとき、[−0.03×λ0×{1/(εr×μr)1/2}×1/2]+[n×λ0×{1/(εr×μr)1/2}×1/2]以上[0.03×λ0×{1/(εr×μr)1/2}×1/2]+[n×λ0×{1/(εr×μr)1/2}×1/2]以下とされることを特徴とする。
【0012】
尚、{1/(εr×μr)1/2}は、いわゆる短縮率であり、波長λ0(m)に当該短縮率を乗じた値は、伝送ケーブルを通って伝送される際の交流電力の波長λ(m)を示す。
【0013】
伝送ケーブルを通って伝送される際の交流電力の波形には、λ/2ごとに電力のピークが表れる。この点を踏まえて、上記構成1によれば、各伝送ケーブルの長さの差が、λ/2×n(尚、各伝送ケーブルの長さの差をλ/2×nとすると、各伝送ケーブルにおける電力波形が同一となる)に、λ/2の±3%以下(プラズマをより確実に発生させるという面で許容されるずれ量)を合算したものとなるように構成されている。すなわち、上記構成1によれば、各伝送ケーブルにおいて、電力伝送時の電力波形をほぼ同一のもの(電力波形の位相差をほぼ同一のもの)とすることができる。そのため、1つの気筒のみにおいて、優れたプラズマ生成効率を実現可能となるように、伝送ケーブルの長さの設定や整合器の設定を行い、その他の気筒においては、伝送ケーブルの長さを前記設定された伝送ケーブルの長さに対して差が上記関係を満たすようにしつつ、整合器の設定を同一とすることで、優れたプラズマ生成効率をその他の気筒においても同様に実現することができる。すなわち、上記構成1によれば、各気筒毎に整合器の設定作業を行う必要がなくなり、整合器の設定作業に要する時間を飛躍的に短縮することができる。また、優れたプラズマ生成効率を実現するために、高出力の交流電源を用いる必要はなく、ひいては電源効率の悪化といった事態を防止することができる。
【0014】
尚、各気筒において一層優れたプラズマの生成効率を実現するという点では、各伝送ケーブル同士の差を、λ/2×nにλ/2の±2%以下を合算したものとなるように構成することが好ましい。
【0015】
構成2.本構成の点火システムは、上記構成1において、前記各伝送ケーブルの長さをλ0×{1/(εr×μr)1/2}以下としたことを特徴とする。
【0016】
上記構成2によれば、それぞれの伝送ケーブルの長さは、伝送ケーブルを通って伝送される交流電力の波長λ〔=λ0×{1/(εr×μr)1/2}〕以下とされている。すなわち、各伝送ケーブルは、それぞれの長さに大きな差がなく、比較的短くなるように設定されている。従って、交流電力を伝送する際のエネルギー損失を抑制することができ、プラズマの生成効率をより向上させることができる。
【0017】
構成3.本構成の点火システムは、内燃機関に取付けられる点火プラグを具備してなる複数の負荷と、
前記複数の負荷に交流電力を出力する交流電源と、
前記複数の負荷及び前記交流電源間を電気的に接続する複数の伝送ケーブルと、
前記複数の負荷及び前記交流電源間に設けられ、前記交流電源の出力インピーダンス及び前記負荷の負荷インピーダンスを整合するための複数の整合器と
を備える点火システムであって、
前記伝送ケーブルは、導電性の内部導体と、当該内部導体の外周に配置される導電性の外部導体と、前記内部導体と前記外部導体との間を絶縁する絶縁層とを有するとともに、
前記内燃機関の非駆動時における前記複数の負荷の負荷インピーダンスはそれぞれ同一とされ、
電磁波が真空中を伝播するときの波長をλ0(m)とし、
前記複数の伝送ケーブルのうちの基準ケーブルにおいて、その長さをLaとし、前記絶縁層の比誘電率をεraとし、前記絶縁層の比透磁率をμraとしたとき、La=αa×λ0×{1/(εra×μra)1/2}を満たす係数をαaとし、
前記基準ケーブルと異なる前記伝送ケーブルにおいて、その長さをLbとし、前記絶縁層の比誘電率をεrbとし、前記絶縁層の比透磁率をμrbとしたとき、Lb=αb×λ0×{1/(εrb×μrb)1/2}を満たす係数をαbとし、
nを0以上の整数としたとき、
|αa−αb|=nを満たすことを特徴とする。
【0018】
尚、「|αa−αb|=nを満たす」とあるのは、|αa−αb|を厳密にnとする場合のみならず、|αa−αb|がnから若干程度(例えば、±0.2程度)ずれている場合も含む。
【0019】
上記構成3によれば、基準ケーブルの係数αaに対して、基準ケーブルとは異なる伝送ケーブルの係数αbが、|αa−αb|=nを満たすように構成されている。従って、各伝送ケーブルにおいて、電力波形の位相差をほぼ同一のものとすることができる。そのため、基準ケーブルが接続される1つの気筒において、優れたプラズマ生成効率を実現可能となるように、基準ケーブルの長さLaの設定や整合器の設定を行い、その他の気筒においては、伝送ケーブルの係数αbが|αa−αb|=nを満たし、かつ、整合器の設定を同一とすることで、優れたプラズマ生成効率をその他の気筒においても同様に実現することができる。すなわち、上記構成3によれば、各気筒毎に整合器の設定作業を行う必要がなくなり、整合器の設定作業に要する時間を飛躍的に短縮することができる。また、優れたプラズマ生成効率を実現するために、高出力の交流電源を用いる必要はなく、ひいては電源効率の悪化といった事態を防止することができる。
【0020】
尚、上記構成3は、各伝送ケーブルの絶縁層が同一材料により構成されている場合のみならず、各伝送ケーブルの絶縁層が異なる材料により構成されている場合にも適用可能である。
【0021】
構成4.本構成の点火システムは、上記構成3において、前記係数αa及び前記係数αbが、それぞれ1以下とされることを特徴とする請求項3に記載の点火システム。
【0022】
上記構成4によれば、係数αa及び係数αbがそれぞれ1以下とされている。すなわち、各伝送ケーブルの長さが、優れたプラズマ生成効率を実現可能な長さの中で最も小さくなるように設定されている。従って、交流電力を伝送する際のエネルギー損失を抑制することができ、プラズマの生成効率をより向上させることができる。
【0023】
構成5.本構成の点火システムは、上記構成1乃至4のいずれかにおいて、前記内燃機関に設けられた支柱に対して、前記伝送ケーブルが巻付けられることを特徴とする。
【0024】
負荷及び交流電源間を最短距離で接続する伝送ケーブルと比較して、上記構成1等の伝送ケーブルはより長いものとなり得る。伝送ケーブルが長いと、伝送ケーブルの取回しが難しくなるとともに、伝送ケーブルがたわんだ状態となりやすくなる。伝送ケーブルがたわんでしまうと、内燃機関の動作に伴う振動等の影響が伝送ケーブルに対して強く働き、伝送ケーブルの破損を招いてしまうおそれがある。
【0025】
この点を鑑みて、上記構成5によれば、内燃機関に設けられた支柱に対して伝送ケーブルが巻付けられるように構成されている。従って、伝送ケーブルの取回しが容易になるとともに、伝送ケーブルの撓みを抑制することができ、振動等による伝送ケーブルの破損を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】点火システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】伝送ケーブルの構成を示す断面模式図である。
【図3】点火プラグの構成を示す一部破断正面図である。
【図4】内燃機関に設けられた支柱や、当該支柱に巻付けられた伝送ケーブル等を示す模式図である。
【図5】電圧波形を得る際に用いた点火システムの回路構成を示す概略図である。
【図6】交流電源の交番周波数を0.05MHzとした際の電圧波形を示すグラフである。
【図7】交流電源の交番周波数を0.1MHzとした際の電圧波形を示すグラフである。
【図8】交流電源の交番周波数を0.2MHzとした際の電圧波形を示すグラフである。
【図9】交流電源の交番周波数を0.5MHzとした際の電圧波形を示すグラフである。
【図10】交流電源の交番周波数を1MHzとした際の電圧波形を示すグラフである。
【図11】交流電源の交番周波数を2MHzとした際の電圧波形を示すグラフである。
【図12】交流電源の交番周波数を5MHzとした際の電圧波形を示すグラフである。
【図13】交流電源の交番周波数を10MHzとした際の電圧波形を示すグラフである。
【図14】交流電源の交番周波数を20MHzとした際の電圧波形を示すグラフである。
【図15】交流電源の交番周波数を50MHzとした際の電圧波形を示すグラフである。
【図16】第2実施形態における点火システムの概略構成を示すブロック図である。
【図17】(a)〜(d)は、第2実施形態における各伝送ケーブルの構成を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、実施形態について図面を参照しつつ説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、点火システム101の概略構成を示すブロック図である。
【0028】
点火システム101は、複数の放電用電源1A,1B,1C,1Dと、交流電源2と、複数の負荷3A,3B,3C,3Dと、複数の整合器4A,4B,4C,4Dと、各負荷3A〜3D及び交流電源2を電気的に接続する複数の伝送ケーブル5A,5B,5C,5Dとを備えている。
【0029】
放電用電源1A〜1Dは、例えば、点火コイルからなり、後述する点火プラグ7A,7B,7C,7Dごとにそれぞれ設けられている。また、放電用電源1A〜1Dは、点火プラグ7A〜7Dに比較的低周波数の高電圧(例えば、数〜数十kV)を供給する。
【0030】
交流電源2は、ディストリビュータ(分配器)6を介して点火プラグ7A〜7Dに交流電力を出力するものである。本実施形態では、交流電源2から出力される交流電力の交番周波数(発振周波数)が所定値(例えば、50kHz以上100MHz以下)に設定されており、交流電源2の出力電力(投入される電力量の1秒当たりの平均値)は所定値(例えば、500W)以下とされている。
【0031】
伝送ケーブル5A〜5Dは、図2に示すように、線状の内部導体21と、内部導体21の外周に配置された筒状の絶縁層22と、絶縁層22の外周に配置された筒状の外部導体23と、外部導体23の外周に配置された外皮24とを備えている。
【0032】
内部導体21及び外部導体23は、それぞれ導電性に優れる金属(例えば、銅、金、銀、又は、これらを主成分とする合金など)により形成されている。また、絶縁層22は、所定の絶縁性材料(例えば、ポリエチレンや発泡ポリエチレン等)により形成されており、当該絶縁層22により両導体21,23間が絶縁されている。さらに、外皮24は、絶縁性ゴムや絶縁性樹脂により形成されている。
【0033】
加えて、内部導体21は交流電源2に接続されており、一方で、外部導体23は接地されている。そして、外部導体23により電力の反射や外部への電磁波ノイズの放射が防止され、点火プラグ7A〜7Dに対して交流電力がより確実に供給されるようになっている。また、本実施形態では、各伝送ケーブル5A〜5Dにおいて、少なくとも絶縁層22を構成する材料が同一とされている。
【0034】
図1に戻り、負荷3A〜3Dは、交流電源2から出力される交流電力が入力されるものである。本実施形態において、負荷3Aは、点火プラグ7Aと、これに対応する混合器8Aとから構成され、負荷3Bは、点火プラグ7Bと、これに対応する混合器8Bとから構成されている。また、負荷3Cは、点火プラグ7Cと、これに対応する混合器8Cとから構成され、負荷3Dは、点火プラグ7Dと、これに対応する混合器8Dとから構成されている。
【0035】
点火プラグ7A〜7Dは、内燃機関EN(本実施形態では、4気筒エンジン)の各気筒のエンジンヘッドに対して取付けられており、また、それぞれ同一の仕様により製造され、同一の構成を有している。
【0036】
具体的には、点火プラグ7A〜7Dは、図3に示すように、軸線CL1方向に延びる軸孔14を有する筒状の絶縁碍子12と、軸孔14に挿通された中心電極15及び端子電極16と、絶縁碍子12の外周に配置された筒状の主体金具13と、主体金具13の先端部に固定された接地電極17とを備えている。また、中心電極15及び端子電極16は、導電性のガラスシール層18により絶縁碍子12に固定されるとともに、ガラスシール層18を介して電気的に接続されている。さらに、中心電極15の先端部と接地電極17の先端部との間には間隙19が形成されている。そして、放電用電源1A〜1Dから点火プラグ7A〜7Dの間隙19に高電圧を印加し、間隙19にて火花放電を生じさせた上で、交流電源2から点火プラグ7A〜7Dに対して交流電力を投入することにより、間隙19において高周波プラズマを生成できるようになっている。
【0037】
図1に戻り、混合器8A〜8Dは、放電用電源1A〜1D及び交流電源2と、点火プラグ7A〜7Dとの間に設けられ、放電用電源1A〜1Dからの出力電力と交流電源2からの出力電力とを混合して、点火プラグ7A〜7Dに供給するものである。また、混合器8A〜8Dは、放電用電源1A〜1Dから交流電源2(伝送ケーブル5A〜5D)側に対する電流の流入を防止するためのコンデンサ(図示せず)と、交流電源2から放電用電源1A〜1D側に対する電流の流入を防止するためのコイル(図示せず)とを備えている。尚、点火プラグ7A〜7Dと同様に、混合器8A〜8Dは、それぞれ同一の仕様で製造され、同一の構成を有するものとなっている。
【0038】
整合器4A〜4Dは、伝送ケーブル5A〜5D及び混合器8A〜8D間に配置され、可変コンデンサ及び可変インダクタ(ともに図示せず)を備えている。整合器4A〜4Dは、交流電源2の出力インピーダンスと、負荷3A〜3Dの負荷インピーダンスとの整合を取るために用いられる。尚、各整合器4A〜4Dは、それぞれ同一の仕様で製造され、同一の構成を有するものとなっている。
【0039】
ところで、上述の点火システム101では、間隙19にプラズマが発生する前後において、点火プラグ7A〜7Dのインピーダンスが変化するため、交流電力の投入時には、交流電源2及び負荷3A〜3D間で反射波が生じる。そのため、伝送ケーブル5A〜5D内では、交流電力の進行波に反射波が干渉することで交流電力の波形にうねりが生じ、波形の最大振幅(すなわち、点火プラグ7A〜7Dへの投入エネルギー)が変動し得る。
【0040】
この点を鑑みて、本実施形態では、複数の伝送ケーブル5A〜5Dのうち伝送ケーブル5Aの長さを所定値L(m)に設定した上で、交流電源2から点火プラグ7Aに対する投入エネルギーを最大とできるように整合器4Aが設定される。そして、その他の整合器4B〜4Dには、整合器4Aの設定と同様の設定がなされる。尚、前記所定値L(m)は、交流電源からの出力電力を一定とした上で、伝送ケーブルの長さを種々変更した際に、プラズマの生成量が最も大きくなったときの伝送ケーブルの長さをいう(すなわち、所定値Lは、プラズマ生成効率を最も高めることが可能な伝送ケーブルの長さを示す)。
【0041】
また、本実施形態においては、上述の通り、点火プラグ7A〜7D、及び、混合器8A〜8Dは、それぞれ同一の構成を有するものとされているため、内燃機関ENの非駆動時において、各負荷3A〜3Dの負荷インピーダンスはそれぞれ同一となっている。
【0042】
加えて、伝送ケーブル5A以外の伝送ケーブル5B〜5Dの長さが次のように設定されている。すなわち、伝送ケーブル5B〜5Dは、絶縁層22の比誘電率をεrとし、絶縁層22の比透磁率をμrとし、真空中の光速をC(m/s)とし、交流電源2の交番周波数をf(Hz)とし、λ0(m)をC/fとしたとき、自身の長さと伝送ケーブル5Aの長さLとの差が[−0.03×λ0×{1/(εr×μr)1/2}×1/2]+[n×λ0×{1/(εr×μr)1/2}×1/2]以上[0.03×λ0×{1/(εr×μr)1/2}×1/2]+[n×λ0×{1/(εr×μr)1/2}×1/2]以下となるように設定されている。換言すれば、伝送ケーブル5A〜5D同士の長さの差が、[−0.03×λ0×{1/(εr×μr)1/2}×1/2]+[n×λ0×{1/(εr×μr)1/2}×1/2]以上[0.03×λ0×{1/(εr×μr)1/2}×1/2]+[n×λ0×{1/(εr×μr)1/2}×1/2]以下とされている。
【0043】
ここで、nは整数であり、{1/(εr×μr)1/2}は、いわゆる短縮率である。そして、前記波長λ0(m)に前記短縮率を乗じた値は、伝送ケーブル5A〜5Dを通って伝送される際の交流電力の波長λ(m)を示す。尚、絶縁層22をポリエチレンにより構成した場合、εrは約2.3であり、μrは約1.0であるため、前記短縮率は約66%となる。また、絶縁層22を発泡ポリエチレンにより構成した場合、εrは約1.5であり、μrは約1.0であるため、前記短縮率は約82%となる。
【0044】
また、本実施形態において、伝送ケーブル5A〜5Dの長さは、前記波長λ(m)以下となるように設定されている。その結果、各伝送ケーブル5A〜5Dの長さは、それぞれに大きな差がなく、プラズマの生成効率を最も高められる条件において比較的小さくなるように構成されている。
【0045】
さらに、各伝送ケーブル5A〜5Dは、図4に示すように、内燃機関ENのエンジンヘッドEHに設けられた円柱状の支柱PRに巻付けられている。
【0046】
以上詳述したように、本実施形態によれば、伝送ケーブル5A〜5D同士の長さの差が[−0.03×λ0×{1/(εr×μr)1/2}×1/2]+[n×λ0×{1/(εr×μr)1/2}×1/2]以上[0.03×λ0×{1/(εr×μr)1/2}×1/2]+[n×λ0×{1/(εr×μr)1/2}×1/2]以下とされている。従って、各伝送ケーブル5A〜5Dにおいて、電力伝送時の電力波形をほぼ同一のもの(電力波形の位相差をほぼ同一のもの)とすることができる。そのため、優れたプラズマ生成効率を実現可能な伝送ケーブル5Aの長さLや整合器4Aの設定に基づいて、他の伝送ケーブル5B〜5Dの長さを伝送ケーブル5Aの長さLに対して差が上記関係を満たすようにしつつ、整合器4B〜4Dの設定を整合器4Aの設定と同一とすることで、点火プラグ7B〜7Dにおいても点火プラグ7Aと同様の優れたプラズマ生成効率を実現することができる。すなわち、本実施形態によれば、各気筒毎に整合器の設定作業を行う必要がなくなり、整合器の設定作業に要する時間を飛躍的に短縮することができる。また、高出力の交流電源を用いることなく(すなわち、電源効率の悪化を招くことなく)、優れたプラズマ生成効率を実現することができる。
【0047】
さらに、本実施形態では、各伝送ケーブル5A〜5Dの長さは、前記波長λ以下とされており、各伝送ケーブル5A〜5Dは、それぞれの長さに大きな差がなく、比較的短くなるように設定されている。従って、交流電力を伝送する際のエネルギー損失を抑制することができ、プラズマの生成効率をより向上させることができる。
【0048】
さらに、伝送ケーブル5A〜5Dは、支柱PRに対して巻付けられている。従って、伝送ケーブル5A〜5Dの取回しが容易になるとともに、伝送ケーブル5A〜5Dの撓みを抑制することができ、振動等による伝送ケーブル5A〜5Dの破損を効果的に防止することができる。
【0049】
次いで、上記実施形態によって奏される作用効果を確認すべく、図5に示すように、点火プラグと、交流電源と、放電用電源と、交流電源及び点火プラグ間において直列的に接続された整合器及び混合器と、交流電源及び整合器間を接続する伝送ケーブルとを有する点火システムを作製し、交番周波数fを50kHzから50MHzの範囲で種々異なるものとした際における、点火プラグへと印可される電圧の波形をそれぞれ得た。尚、整合器の有するインダクタのインダクタンスを0.1μHとし、混合器の有するコンデンサの静電容量を50pFとした。
【0050】
図6に、周波数fを0.05MHzとした際の電圧波形を示し、図7に、周波数fを0.1MHzとした際の電圧波形を示し、図8に、周波数fを0.2MHzとした際の電圧波形を示し、図9に、周波数fを0.5MHzとした際の電圧波形を示す。また、図10に、周波数fを1MHzとした際の電圧波形を示し、図11に、周波数fを2MHzとした際の電圧波形を示し、図12に、周波数fを5MHzとした際の電圧波形を示し、図13に、周波数fを10MHzとした際の電圧波形を示す。さらに、図14に、周波数fを20MHzとした際の電圧波形を示し、図15に、周波数を50MHzとした際の電圧波形を示す。
【0051】
加えて、図6〜図15における位相角(°)は電圧波形の波長λ(m)に対応し、位相角180°分がλ/2(m)に相当する。また、図6〜図15において、電圧のピークを挟む2本の点線は、両点線間のX軸方向に沿った幅が180°×±2%(つまり、λ/2×±2%)であり、電圧がピークとなるときの位相角を両点線間におけるX軸方向における中心とするものである。
【0052】
尚、電圧波形において電圧が800V以上であれば、点火プラグにおいて高周波プラズマを生成することができ、電圧が1000V以上であれば、高圧縮比エンジンを用いた場合など、非常に過酷な環境下であっても高周波プラズマをより確実に生成することができる。そこで、各電圧波形において、電圧が800V以上となる範囲を、高周波プラズマを生成する上で好適な範囲として特定し、電圧が1000V以上となる範囲を、高周波プラズマを生成する上で特に好適な範囲として特定した。
【0053】
図6〜図15に示すように、電圧がピークとなるときの位相角を中心とする180°×±3%の範囲において、点火プラグへの印可電圧を800V以上とできることが確認された。すなわち、点火プラグへの印可電圧がピーク電圧となり、プラズマの生成量が最も大きくなるように設定された伝送ケーブルの長さをLとしたとき、その他の伝送ケーブルの長さを、長さLにλ/2×n(nは整数)を足したもの(つまり、前記その他の伝送ケーブルの電圧波形が、プラズマの生成量が最も大きくなるように設定された伝送ケーブルにおける電圧波形と同一となる状態)から、λ/2×±3%以内だけの違いとなるように設定することで、点火プラグへの印可電圧を800V以上とできることが明らかとなった。
【0054】
また特に、電圧がピークとなるときの位相角を中心とする180°×±2%の範囲において、点火プラグへの印可電圧を1000V以上とできることが確認された。
【0055】
上述の結果より、各気筒に対応する整合器の設定を同一としつつ、各気筒において優れたプラズマの生成効率をより確実に実現するという観点から、プラズマ生成量が最大となるように設定された伝送ケーブルの長さに対する、その他の伝送ケーブルの長さの差を(−0.03×λ×1/2)+(n×λ×1/2)以上(0.03×λ×1/2)+(n×λ×1/2)以下とすることが好ましいといえる。換言すれば、伝送ケーブル同士の長さの差を、(−0.03×λ×1/2)+(n×λ×1/2)以上(0.03×λ×1/2)+(n×λ×1/2)以下とすることが好ましいといえる。
【0056】
また、各気筒において一層優れたプラズマの生成効率を実現するためには、伝送ケーブル同士の長さの差を、(−0.02×λ×1/2)+(n×λ×1/2)以上(0.02×λ×1/2)+(n×λ×1/2)以下とすることがより好ましいといえる。
【0057】
尚、波長λ(m)は、伝送ケーブルの絶縁層の比誘電率をεrとし、前記絶縁層の比透磁率をμrとし、真空中の光速をC(m/s)とし、交流電源の交番周波数をf(Hz)とし、λ0(m)をC/fとしたとき、λ0×{1/(εr×μr)1/2}で表すことができる。
〔第2実施形態〕
次いで、第2実施形態について上記第1実施形態との相違点を中心に説明する。上記第1実施形態では、各伝送ケーブル5A〜5Dにおいて、絶縁層22を構成する材料が同一とされている。これに対して、本第2実施形態では、図16及び図17に示すように、整合器4A及び分配器6間を接続する伝送ケーブル31の絶縁層41と、整合器4B及び分配器6間を接続する伝送ケーブル32の絶縁層42と、整合器4C及び分配器6間を接続する伝送ケーブル33の絶縁層43と、整合器4D及び分配器6間を接続する伝送ケーブル34の絶縁層44とがそれぞれ異なる材料から形成されている。
【0058】
そして、絶縁層41の比誘電率がεraとなっており、絶縁層42の比誘電率がεrbとなっており、絶縁層43の比誘電率がεrcとなっており、絶縁層44の比誘電率がεrdとなっている。また、絶縁層41の比透磁率がμraとなっており、絶縁層42の比透磁率がμrbとなっており、絶縁層43の比透磁率がμrcとなっており、絶縁層44の比透磁率がμrdとなっている。
【0059】
さらに、本実施形態では、複数の伝送ケーブル31〜34のうちの1の伝送ケーブル31(基準ケーブル)において、その長さを所定値La(m)に設定した上で、交流電源2から点火プラグ7Aに対する投入エネルギーを最大とできるように整合器4Aが設定されている。そして、その他の整合器4B〜4Dには、整合器4Aの設定と同様の設定がなされる。尚、前記所定値La(m)は、交流電源からの出力電力を一定とした上で、伝送ケーブル31の長さを種々変更した際に、プラズマの生成量が最も大きくなったときの伝送ケーブル31の長さをいう(すなわち、所定値Laは、プラズマ生成効率を最も高めることが可能な伝送ケーブル31の長さを示す)。
【0060】
また、伝送ケーブル31(基準ケーブル)以外の伝送ケーブル32〜34の長さが次のようにして設定されている。すなわち、伝送ケーブル31(基準ケーブル)において、La=αa×λ0×{1/(εra×μra)1/2}を満たす係数αaを求めておく。
【0061】
その上で、伝送ケーブル32においては、|αa−αb|=n(nは0以上の整数)を満たす係数αbが決定されるとともに、その長さLbがαb×λ0×{1/(εrb×μrb)1/2}とされている。
【0062】
さらに、伝送ケーブル33においては、|αa−αc|=nを満たす係数αcが決定されるとともに、その長さLcがαc×λ0×{1/(εrc×μrc)1/2}とされている。
【0063】
また、伝送ケーブル34においては、|αa−αd|=nを満たす係数αdが決定されるとともに、その長さLdがαd×λ0×{1/(εrd×μrd)1/2}とされている。
【0064】
併せて、本第2実施形態では、係数αa,αb,αc,αdがそれぞれ1以下とされている。その結果、各伝送ケーブル31〜34の長さLa,Lb,Lc,Ldは、プラズマの生成効率を最も高められる条件において最も小さなものとなっている。
【0065】
以上、本第2実施形態によれば、伝送ケーブル31(基準ケーブル)の係数αaに対して、伝送ケーブル31(基準ケーブル)とは異なる伝送ケーブル32〜34の係数αb,αc,αdが、それぞれ|αa−αb|=n、|αa−αc|=n、|αa−αd|=nを満たすように構成されている。従って、各伝送ケーブル31〜34において、電力波形の位相差をほぼ同一のものとすることができる。そのため、伝送ケーブル31(基準ケーブル)が接続される1つの気筒において、優れたプラズマ生成効率を実現可能となるように、伝送ケーブル31の長さLaの設定や整合器の設定を行い、その他の気筒においては、伝送ケーブル32〜34の係数αb,αc,αdが|αa−αb|=n、|αa−αc|=n、|αa−αd|=nを満たし、かつ、整合器4B〜4Dの設定を整合器4Aの設定と同一とすることで、優れたプラズマ生成効率をその他の気筒においても同様に実現することができる。すなわち、本第2実施形態によれば、各伝送ケーブル31〜34の絶縁層41〜44が異なる材料により構成されている場合であっても、各気筒毎に整合器の設定作業を行う必要がなくなり、整合器の設定作業に要する時間を飛躍的に短縮することができる。また、優れたプラズマ生成効率を実現するために、高出力の交流電源を用いる必要はなく、ひいては電源効率の悪化といった事態を防止することができる。
【0066】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0067】
(a)上記実施形態では、内燃機関ENの気筒数に合わせて負荷や伝送ケーブルが4つずつ設けられているが、負荷や伝送ケーブルの数は内燃機関ENの気筒数に応じて変更される。
【0068】
(b)上記実施形態では、それぞれの点火プラグ7A〜7Dに対応して放電用電源1A〜1Dが設けられているが、放電用電源を各点火プラグに対応して設けることなく、例えば、1つの放電用電源からディストリビュータを介して各点火プラグに電圧を印加してもよい。
【0069】
(c)上記実施形態では、内部導体21や外部導体23の構成材料として、銅や金等が挙げられているが、内部導体21や外部導体23の構成材料はこれらに限定されるものではない。また、絶縁層22の構成材料としてポリエチレンや発泡ポリエチレン等が挙げられているが、絶縁層22の構成材料はこれらに限定されるものではない。
【0070】
(d)上記実施形態における点火プラグ7A〜7Dの構成は例示であって、本発明の技術思想を適用可能な点火プラグの構成はこれに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0071】
2…交流電源
3A,3B,3C,3D…負荷
4A,4B,4C,4D…整合器
5A,5B,5C,5D…伝送ケーブル
7A,7B,7C,7D…点火プラグ
21…内部導体
22…絶縁層
23…外部導体
31,32,33,34…伝送ケーブル
41,42,43,44…絶縁層
101…点火システム
EN…内燃機関
PR…支柱
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に取付けられる点火プラグを具備してなる複数の負荷と、
前記複数の負荷に交流電力を出力する交流電源と、
前記複数の負荷及び前記交流電源間を電気的に接続する複数の伝送ケーブルと、
前記複数の負荷及び前記交流電源間に設けられ、前記交流電源の出力インピーダンス及び前記負荷の負荷インピーダンスを整合するための複数の整合器と
を備える点火システムであって、
前記伝送ケーブルは、導電性の内部導体と、当該内部導体の外周に配置される導電性の外部導体と、前記内部導体と前記外部導体との間を絶縁する絶縁層とを有するとともに、
前記各伝送ケーブルの前記絶縁層は同一材料により構成され、
前記内燃機関の非駆動時における前記複数の負荷の負荷インピーダンスはそれぞれ同一とされるとともに、
前記伝送ケーブル同士の長さの差が、前記絶縁層の比誘電率をεrとし、前記絶縁層の比透磁率をμrとし、真空中の光速をC(m/s)とし、交流電源の交番周波数をf(Hz)とし、λ0(m)をC/fとし、nを整数としたとき、[−0.03×λ0×{1/(εr×μr)1/2}×1/2]+[n×λ0×{1/(εr×μr)1/2}×1/2]以上[0.03×λ0×{1/(εr×μr)1/2}×1/2]+[n×λ0×{1/(εr×μr)1/2}×1/2]以下とされることを特徴とする点火システム。
【請求項2】
前記各伝送ケーブルの長さをλ0×{1/(εr×μr)1/2}以下としたことを特徴とする請求項1に記載の点火システム。
【請求項3】
内燃機関に取付けられる点火プラグを具備してなる複数の負荷と、
前記複数の負荷に交流電力を出力する交流電源と、
前記複数の負荷及び前記交流電源間を電気的に接続する複数の伝送ケーブルと、
前記複数の負荷及び前記交流電源間に設けられ、前記交流電源の出力インピーダンス及び前記負荷の負荷インピーダンスを整合するための複数の整合器と
を備える点火システムであって、
前記伝送ケーブルは、導電性の内部導体と、当該内部導体の外周に配置される導電性の外部導体と、前記内部導体と前記外部導体との間を絶縁する絶縁層とを有するとともに、
前記内燃機関の非駆動時における前記複数の負荷の負荷インピーダンスはそれぞれ同一とされ、
電磁波が真空中を伝播するときの波長をλ0(m)とし、
前記複数の伝送ケーブルのうちの基準ケーブルにおいて、その長さをLaとし、前記絶縁層の比誘電率をεraとし、前記絶縁層の比透磁率をμraとしたとき、La=αa×λ0×{1/(εra×μra)1/2}を満たす係数をαaとし、
前記基準ケーブルと異なる前記伝送ケーブルにおいて、その長さをLbとし、前記絶縁層の比誘電率をεrbとし、前記絶縁層の比透磁率をμrbとしたとき、Lb=αb×λ0×{1/(εrb×μrb)1/2}を満たす係数をαbとし、
nを0以上の整数としたとき、
|αa−αb|=nを満たすことを特徴とする点火システム。
【請求項4】
前記係数αa及び前記係数αbが、それぞれ1以下とされることを特徴とする請求項3に記載の点火システム。
【請求項5】
前記内燃機関に設けられた支柱に対して、前記伝送ケーブルが巻付けられることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の点火システム。
【請求項1】
内燃機関に取付けられる点火プラグを具備してなる複数の負荷と、
前記複数の負荷に交流電力を出力する交流電源と、
前記複数の負荷及び前記交流電源間を電気的に接続する複数の伝送ケーブルと、
前記複数の負荷及び前記交流電源間に設けられ、前記交流電源の出力インピーダンス及び前記負荷の負荷インピーダンスを整合するための複数の整合器と
を備える点火システムであって、
前記伝送ケーブルは、導電性の内部導体と、当該内部導体の外周に配置される導電性の外部導体と、前記内部導体と前記外部導体との間を絶縁する絶縁層とを有するとともに、
前記各伝送ケーブルの前記絶縁層は同一材料により構成され、
前記内燃機関の非駆動時における前記複数の負荷の負荷インピーダンスはそれぞれ同一とされるとともに、
前記伝送ケーブル同士の長さの差が、前記絶縁層の比誘電率をεrとし、前記絶縁層の比透磁率をμrとし、真空中の光速をC(m/s)とし、交流電源の交番周波数をf(Hz)とし、λ0(m)をC/fとし、nを整数としたとき、[−0.03×λ0×{1/(εr×μr)1/2}×1/2]+[n×λ0×{1/(εr×μr)1/2}×1/2]以上[0.03×λ0×{1/(εr×μr)1/2}×1/2]+[n×λ0×{1/(εr×μr)1/2}×1/2]以下とされることを特徴とする点火システム。
【請求項2】
前記各伝送ケーブルの長さをλ0×{1/(εr×μr)1/2}以下としたことを特徴とする請求項1に記載の点火システム。
【請求項3】
内燃機関に取付けられる点火プラグを具備してなる複数の負荷と、
前記複数の負荷に交流電力を出力する交流電源と、
前記複数の負荷及び前記交流電源間を電気的に接続する複数の伝送ケーブルと、
前記複数の負荷及び前記交流電源間に設けられ、前記交流電源の出力インピーダンス及び前記負荷の負荷インピーダンスを整合するための複数の整合器と
を備える点火システムであって、
前記伝送ケーブルは、導電性の内部導体と、当該内部導体の外周に配置される導電性の外部導体と、前記内部導体と前記外部導体との間を絶縁する絶縁層とを有するとともに、
前記内燃機関の非駆動時における前記複数の負荷の負荷インピーダンスはそれぞれ同一とされ、
電磁波が真空中を伝播するときの波長をλ0(m)とし、
前記複数の伝送ケーブルのうちの基準ケーブルにおいて、その長さをLaとし、前記絶縁層の比誘電率をεraとし、前記絶縁層の比透磁率をμraとしたとき、La=αa×λ0×{1/(εra×μra)1/2}を満たす係数をαaとし、
前記基準ケーブルと異なる前記伝送ケーブルにおいて、その長さをLbとし、前記絶縁層の比誘電率をεrbとし、前記絶縁層の比透磁率をμrbとしたとき、Lb=αb×λ0×{1/(εrb×μrb)1/2}を満たす係数をαbとし、
nを0以上の整数としたとき、
|αa−αb|=nを満たすことを特徴とする点火システム。
【請求項4】
前記係数αa及び前記係数αbが、それぞれ1以下とされることを特徴とする請求項3に記載の点火システム。
【請求項5】
前記内燃機関に設けられた支柱に対して、前記伝送ケーブルが巻付けられることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の点火システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−100808(P2013−100808A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−128762(P2012−128762)
【出願日】平成24年6月6日(2012.6.6)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年6月6日(2012.6.6)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]